JP4123335B2 - 誘導電動機の速度センサレス制御装置 - Google Patents

誘導電動機の速度センサレス制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、速度検出用のセンサを用いることなく速度制御を行う、誘導電動機の速度センサレス制御装置に関し、特に、低速度回生時における不安定性を低減して脱調を防止する、誘導電動機の速度センサレス制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
速度検出用のセンサを用いない速度制御、すなわち速度センサレス制御によって誘導電動機を駆動する際には、出力周波数が0近傍の低速度回生状態では、電圧誤差の影響が大きくなるため、誘導電動機の動作が不安定になりやすい。また、このような速度センサレス制御では、低速回生で制御不能となる領域が原理的に存在する。この領域では、誘導電動機の動作が不安定になりやすく、脱調して制御を継続することができない場合もある。
【0003】
上述した問題を解決するため、従来では、スリップ周波数指令を0として、1次周波数が低下しないようにしていた。しかし、スリップ周波数指令を0とするだけでは上述の不安定領域を完全に回避することができない。特開平10−033000号公報には、1次周波数の基準値を設定し、1次周波数がその基準値よりも下がった場合にトルク指令を補償する方法が提案されている。また、スリップ周波数指令に負のゲインを乗じて、周波数を上げる手法も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来、速度センサレス制御では、低速回生状態では、誘導電動機の動作を安定させるために、スリップ周波数指令を0として1次周波数が低下しないようにしたり、1次周波数がその基準値よりも下がった場合にトルク指令を補償したり、推定1次磁束による出力電圧指令のフィードバック演算を行ったり、スリップ周波数指令に負のゲインを乗じて周波数を上げたりしていた。
【0005】
しかし、スリップ周波数を0としただけでは、不安定現象を解決することができない。また、1次周波数の基準値に基づいてトルク指令を補償する方法や、スリップ周波数に負のゲインを乗じる方法は、滑り周波数型ベクトル制御装置にのみ適用可能な方法であり、磁束推定値の位相を基準として電圧を出力するような直接型磁束ベクトル制御方式には適用できない。
【0006】
また、滑り周波数型ベクトル制御装置においても、上述の方法を用いた場合には、速度制御手段の積分器の出力をキャンセルするなど、通常状態と低速回生状態との間で制御装置内の切り替え処理が必要となるため、制御装置の構成が複雑になり、切り替え時においてショックが発生する場合もあった。
【0007】
本発明は、直接型磁束ベクトル制御方式や滑り周波数型ベクトル制御方式など、どのような制御方式であっても、制御装置の構成を複雑にすることなく、低速回生状態において制御の安定性を保ち、脱調を防止することができる、誘導電動機の速度センサレス制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、誘導電動機の速度を推定する速度推定手段と、上位装置から入力される速度指令と前記速度推定手段によって求められた速度推定値との偏差に基づいて速度制御を行ってトルク電流指令を計算する速度制御手段と、前記上位装置から入力される磁束指令に基づいて磁束電流指令を計算する磁束制御手段と、前記磁束指令と前記トルク電流指令とに基づいてスリップ周波数を求めるスリップ周波数演算手段とを備える、誘導電動機の速度センサレス制御装置において、前記速度推定値と前記スリップ周波数とを座標軸とする平面上における第2象限と第4象限と原点近傍と領域を通り、前記スリップ周波数が、−1を係数とする前記速度推定値の1次関数で与えられる境界線と、前記誘導電動機の1次抵抗と2次抵抗を係数に持つ前記速度推定値の1次関数もしくは2次関数で与えられる境界線の2つの境界線によって挟まれる領域を不安定領域とし、前記速度推定値と前記スリップ周波数とで決定される前記平面上の座標点が前記不安定領域内にある場合には、当該座標点が不安定領域外となるよう前記速度指令の補正量を計算して出力する速度補正量演算手段と、前記速度補正量演算手段から出力された補正量を前記速度指令に加算する加算手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の誘導電動機の速度センサレス制御装置では、速度推定値とスリップ周波数との関係が不安定領域の領域外となるように、速度指令を補正している。本発明の速度センサレス制御装置では、上位装置から入力される速度指令の補正のみを行うだけで低速回生状態における不安定状態を解消させることができるので、ベクトル制御の方式に関わらず、また、制御装置の構成を複雑にすることなく、低速回生状態において制御の安定性を保ち、脱調を防止することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態の誘導電動機の速度センサレス制御装置について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の誘導電動機の速度センサレス制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この速度センサレス制御装置は、磁束速度推定手段1と、速度制御手段2と、スリップ周波数演算手段3と、磁束制御手段4と、電圧フィードフォワード(FF)演算手段5と、電流制御手段6と、電圧変換手段7と、電圧出力装置8と、電流成分変換手段9と、速度補正量演算手段10と、加算器11と、減算器12とを備えている。
【0011】
磁束速度推定手段1は、誘導電動機(M)13の各相の電流検出値を入力し、それらの電流検出値と、磁束方向の軸(d軸)およびトルク方向の軸(q軸)の電圧指令Vd、Vqと、誘導電動機13のモータ定数値とに基づいて、誘導電動機13の速度および磁束を推定し、推定した速度を速度推定値Frとして出力するとともに、推定した磁束から磁極位置θφを求めて出力する。加算器11は、上位装置(不図示)から入力される速度指令Frefに速度指令補正量Fcmpを加算した値を速度指令Fref’として出力する。減算器12は、速度指令Fref'から速度推定値Frを減算した値を速度偏差ΔFrとして出力する。速度制御手段2は、速度偏差ΔFrに基づいて速度制御を行い、トルク電流指令Iq*を計算して出力する。スリップ周波数演算手段3は、トルク電流指令Iq*と、上位装置(不図示)から入力される磁束指令Φrefと、所定のモータ定格スリップ周波数とからスリップ周波数Fsを演算して出力する。
【0012】
磁束制御手段4は、磁束指令Φrefに基づいて磁束電流指令Id*を演算して出力する。電圧FF演算手段5は、トルク電流指令Iq*と、磁束電流指令Id*と、磁束指令Φrefと、速度推定値Frと、スリップ周波数Fsとから出力周波数ωを求め、d軸、q軸のフィードフォワード電圧Vd*、Vq*を以下の(1)、(2)式にしたがって求めて出力する。
【0013】
q*=ω×Φref+R×(Iq*)+ω×L×(Id*)・・・(1)
d*=R×(Id*)+ω×L×(Iq*)・・・(2)
電流成分変換手段9は、磁極位置θφに基づいて、誘導電動機(M)13の3相の電流検出値をトルク成分電流Iqと、磁束成分電流Idとに変換する。電流制御手段6は、トルク電流指令Iq*と、磁束電流指令Id*と、トルク成分電流Iqと、磁束成分電流Idと、フィードフォワード電圧Vq*、Vd*とに基づいて電流制御を行い、d軸、q軸の電圧指令Vd、Vqを求めて出力する。電圧変換手段7は、電圧指令Vd、Vqを誘導電動機13の各相の電圧指令に変換して出力する。電圧出力装置8は、その各相の電圧指令に応じた電圧を誘導電動機13に印加する。
【0014】
速度補正量演算手段10は、速度推定値Frとスリップ周波数Fsとを座標軸とする平面における第2象限と第4象限と原点近傍とを含む領域のうち、2つの境界線によって挟まれる領域を不安定領域とし、磁束速度推定手段1によって推定された速度推定値Frとスリップ周波数演算手段3によって演算されたスリップ周波数Fsで決定される平面上の座標点が不安定領域内にある場合には、その座標点が不安定領域外となるように速度指令Frefの補正量Fcmpを求めて出力する。具体的には、速度補正量演算手段10は、その座標点が不安定領域内にある場合には、各境界線のうちのいずれか1つの境界線上を選択し、その境界線における、スリップ周波数Fsに対応する速度推定値と、磁束速度推定手段1によって推定された速度推定値Frとの差を、前回の速度指令の補正量Fcmpに加算した値を今回の速度指令の補正量Fcmpとして出力する。出力された速度補正量Fcmpは前述のとおり、加算器11によって速度指令Frefに加算される。
【0015】
本実施形態の誘導電動機の速度センサレス制御装置は、速度補正量演算手段10と、加算器11とを備えている点が、従来の速度センサレス制御装置と異なっている。なお、本実施形態の速度センサレス制御装置は、直接型磁束ベクトル方式の制御装置であり、磁束を推定して誘導電動機の位相を演算する。そのため、本実施形態の速度センサレス制御装置では、いわゆる出力周波数指令が存在しないので、従来の技術で述べたような、1次周波数がその基準値よりも下がった場合にトルク指令を補償したり、スリップ周波数指令に負のゲインを乗じて出力周波数を上げたりする方法を適用することができないが、その代わりに、速度補正量演算手段10によって求められた速度補正量Fcmpによって速度制御手段2に入力される速度指令を補正している。
【0016】
速度補正量演算手段10における速度補正量Fcmpの演算方法について説明する。図2は、本実施形態の速度センサレス制御装置において定義された不安定領域の一例を示すグラフである。図2に示すグラフは、横軸が速度推定値Frであり、縦軸がスリップ周波数Fsである。速度補正量演算手段10は、以下の式(3)、(4)で示される直線で囲まれる第2象限および第4象限の領域を不安定領域とする。
【0017】
s=−Fr・・・(3)
s=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr・・・(4)
ここで、K1は、不安定領域の係数(K1>0)であり、R1は誘導電動機13の1次抵抗であり、R2は誘導電動機13の2次抵抗である。
【0018】
これらの直線は、不安定領域の2つの境界線となる。本実施形態の速度センサレス制御装置では、スリップ周波数Fsと速度推定値Frとの関係が不安定領域にある状態が長く続いた場合には、誘導電動機の動作が不安定になり脱調する場合もある。式(3)、(4)に示すように、不安定領域は、誘導電動機13の1次抵抗R1と2次抵抗R2とによって決まる。誘導電動機13の動作をより安定させるためには、K1<1となるような値を設定することが望ましい。
【0019】
速度補正量演算手段10は、速度指令Frefが一定であって、回生負荷が印加され、スリップ周波数演算手段3によって演算されたスリップ周波数fsが、式(4)における磁束速度推定手段1によって推定された速度推定値frに対応するスリップ周波数fs’よりも大きい場合には、式(4)におけるスリップ周波数fsに対応する速度推定値fr’を求め、以下の式(5)を演算して速度補正量Fcmpを求める。
【0020】
cmp=Fcmp+fr’−fr・・・(5)
なお、式(5)の右辺にあるFcmpは、前回の速度補正量である。速度推定値Frは、前回の補正を行って制御した結果、磁束速度推定手段1によって求められたものであるため、速度推定値Frをfr’に到達させるための速度補正量Fcmpは、前回の速度補正量Fcmpに加算して求める必要がある。
【0021】
しかし、上述のように、式(4)で、K1<1と設定すると、スリップ周波数Fsが大きい場合、すなわち高負荷である場合には、補正後の速度指令Frefの値が大きくなりすぎてしまう場合がある。誘導電動機13の動作は、出力周波数がある程度大きくなると、不安定になりにくくなるため、本実施形態の速度センサレス制御装置では、低速度であるときに、重点的に速度補正量演算手段10による速度指令Frefの補正を行うのが望ましい。つまり、不安定領域の境界線として、式(4)に示す直線ではなく、以下の式(6)に示す、低速域において、その直線よりも同じスリップ周波数に対応する速度推定値の絶対値が大きい2次関数を用いるのがより望ましい。
【0022】
s=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr (Fr≧0)
s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr (Fr<0)・・・(6)
ここで、K2は、不安定領域の係数(K2>0)である。図3に、式(3)と式(6)とによって定義された不安定領域を示す。係数K2は、低速域では、図2に示す不安定領域が完全に含まれるような値を設定するのが望ましい。このようにすれば、本実施形態の速度センサレス制御装置では、より安定した誘導電動機13の動作を保証することができる。しかし、式(6)で速度推定値fr’を求めるためには、平方根の演算が必要となるため、演算量が増大してしまう。したがって、速度補正量演算手段10では、式(6)の代わりに、速度推定値Frにおける式(4)との交点における接線の傾きKsを以下の式(7)を用いて計算する。
【0023】
s=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×2 (Fr≧0)
s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×2 (Fr<0)・・(7)
そして、式(6)により求めたスリップ周波数(図3のfs')と、スリップ周波数fsとの差分に接線の傾きKsの逆数を乗算することにより、すなわち以下の式(8)によって速度補正量Fcmpを求める。
【0024】
cmp=Fcmp+1/Ks×(fs’−fs)・・・(8)
なお、本実施形態の速度センサレス制御装置では、Fcmpが積分演算によって求められる量であるので、接線の傾きKsを単純に一定値としても、速度推定値Frとスリップ周波数Fsとの関係を不安定領域の外側になるように制御することができる。
【0025】
さらに、本実施形態の速度センサレス制御装置では、温度等の要因による誘導電動機13のパラメータの変動や、誤差による影響等によって不安定領域が広がる場合がある。これに対応するために、本実施形態の速度センサレス制御装置では、不安定領域にマージン幅fm(fm>0)を持たせてもよい。この場合、不安定領域の2つの境界線が式(3)、(4)に基づく直線であるとすると、その2つの境界線は、スリップ周波数Fsが正である場合には、以下の式(9)、(10)に示すようになり、スリップ周波数Fsが負である場合には、式(11)、(12)に示すようになる。
【0026】
s=−Fr−fm (Fr≧0) (9)
s=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr+fm (Fr≧0) (10)
s=−Fr+fm (Fr<0) (11)
s=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr−fm (Fr<0)(12)
式(9)〜(12)によって決定される不安定領域を図4に示す。
【0027】
また、不安定領域の2つの境界線の1つを式(6)に基づく2次曲線とし、さらにマージン幅fmをとると、その2次曲線の式は、スリップ周波数Fsが正である場合には、以下の式(13)に示すようになり、スリップ周波数Fsが負である場合には、式(14)に示すようになる。
【0028】
s=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr+fm (Fr≧0)(13)
s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr−fm (Fr<0)(14)
式(9)、(11)、(13)、(14)の境界線によって囲まれる不安定領域を図5に示す。
【0029】
なお、本実施形態の速度センサレス制御装置では、速度推定値Frの変動の様子に応じてマージン幅fmの値を変えてもよい。例えば、速度推定値Frの絶対値が増加する場合にはfmを小さくし、速度推定値Frの絶対値が減少する場合にはfmを大きくして、不安定領域にヒステリシス特性を持たせることによって、非線形なシステムに適合した、より安定な制御を実現することができる場合もある。
【0030】
図6は、速度補正量演算手段10による速度指令Frefの補正を行わなかったときのトルク−速度特性を示すグラフであり、図7は、速度補正量演算手段10による速度指令Frefの補正を行なったときのトルク−速度特性を示すグラフである。図6に示すように、速度補正量演算手段10による速度指令の補正を行わない場合には、負荷が大きくなると不安定となり、最終的に脱調しているのがわかる。これに対し、図7に示すように、速度補正量演算手段10による速度指令Frefの補正を行った場合には、負荷が大きくなっても、脱調を起こすことなく安定化しているのがわかる。不安定領域であるか否かは、スリップ周波数Fsと速度推定値Frとの関係に基づいて判定されるため、誘導電動機13の速度の上昇は、磁束指令Φrefを変化させることによって、ある程度まで調整することが可能である。
【0031】
また、図7は、速度指令Frefを一定とした場合の特性であるが、加減速中は、速度指令Frefの大きさが変化するため、不安定となりにくい。さらに、回転方向の正逆を切り替えながら誘導電動機13を駆動する場合には、できる限り速度指令Frefに近い速度で動作をさせた方がよい場合もある。このような要求に対応するため、加減速中は、式(4)あるいは式(10)、(12)を境界線とし、一定速度運転中は、式(6)あるいは式(13)、(14)を境界線とすれば、スムーズな正逆切り替え運転と、安定した一定速度運転が可能となる。
【0032】
また、正逆切り替え運転などでは、不安定領域を通過しなければならない場合も生じる。このような場合には、不安定領域の2つの境界線から、速度補正量Fcmpを求めるための境界線を選択する必要がある。例えば、不安定領域を、図4に示す領域とし、誘導電動機13が正転していてスリップ周波数Fsが正である場合には、速度推定値Frとスリップ周波数Fsとの関係が不安定領域にかかることはないが、誘導電動機13が減速して逆転し始めると、式(11)に接して不安定領域にさしかかるようになる。このとき、速度補正量Fcmpは、式(11)に基づいて計算され、速度指令Frefがさらに負側に進んだ場合には、ある時点で速度補正量Fcmpを式(12)を用いて計算するようにする。このようにすれば、不安定領域をスムーズに通過させることができる。なお、減速して式(11)と接した瞬間に式(12)を使うようにしても、同様の効果が得られる。
【0033】
誘導電動機13が逆転していてスリップ周波数Fsが正の場合に、誘導電動機13が減速すると、式(12)に接するようになる。この場合には、式(12)を用いて速度補正量Fcmpを求める。誘導電動機13の停止指令が入力された場合には、スリップ周波数Fsがある程度小さいときには不安定領域にかかる時間も短くため、速度補正量演算手段10による速度補正を行わなくても脱調等は発生しない。そのような場合には、速度補正量演算手段10による速度補正を行わずに誘導電動機13を停止させることができるようになる。それに対し、スリップ周波数Fsが大きいときには、そのまま運転を継続すると脱調するおそれがあるので、式(11)を用いて速度補正量Fcmpを求めて不安定領域を速やかに通過させ、スムーズな停止を行う。停止でなく正転方向に切り替わる場合には、速度指令Frefの符号が切り替わったときに式(11)を用いて速度補正量Fcmpを求め、不安定領域を速やかに通過させる。
【0034】
以上述べたように、本実施形態の速度センサレス制御装置では、誘導電動機13の運転状態によって速度指令Frefの補正方法を適宜変更することによって、あらゆる運転状態に対応することが可能となる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の誘導電動機の速度センサレス制御装置では、速度推定値とスリップ周波数との関係が不安定領域の領域外となるように、速度指令を補正している。本発明の速度センサレス制御装置では、上位装置から入力される速度指令の補正のみを行うだけで低速回生状態における不安定状態を解消させることができるので、ベクトル制御の方式に関わらず、また、制御装置の構成を複雑にすることなく、低速回生状態において制御の安定性を保ち、脱調を防止することができる。したがって、これまで、低速回生時の不安定動作のために適用されなかった用途である巻上・巻下用クレーンなどにも適用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の誘導電動機の速度センサレス制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の速度センサレス制御装置において定義された不安定領域を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態の速度センサレス制御装置において定義された不安定領域を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態の速度センサレス制御装置において定義された不安定領域を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態の速度センサレス制御装置において定義された不安定領域を示すグラフである。
【図6】速度補正量演算手段による速度指令の補正を行わなかったときのトルク−速度特性を示すグラフである。
【図7】速度補正量演算手段による速度指令の補正を行なったときのトルク−速度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 磁束速度推定手段
2 速度制御手段
3 スリップ周波数演算手段
4 磁束制御手段
5 電圧フィードフォワード(FF)演算手段
6 電流制御手段
7 電圧変換手段
8 電圧出力装置
9 電流成分変換手段
10 速度補正量演算手段
11 加算器
12 減算器
13 誘導電動機(M)

Claims (15)

  1. 誘導電動機の速度を推定する速度推定手段と、上位装置から入力される速度指令と前記速度推定手段によって求められた速度推定値との偏差に基づいて速度制御を行ってトルク電流指令を計算する速度制御手段と、前記上位装置から入力される磁束指令に基づいて磁束電流指令を計算する磁束制御手段と、前記磁束指令と前記トルク電流指令とに基づいてスリップ周波数を求めるスリップ周波数演算手段とを備える、誘導電動機の速度センサレス制御装置において、
    前記速度推定値と前記スリップ周波数とを座標軸とする平面上における第2象限と第4象限と原点近傍との領域を通り、前記スリップ周波数が、−1を係数とする前記速度推定値の1次関数で与えられる境界線と、前記誘導電動機の1次抵抗と2次抵抗を係数に持つ前記速度推定値の1次関数もしくは2次関数で与えられる境界線の2つの境界線によって挟まれる領域を不安定領域とし、
    記速度推定値と前記スリップ周波数とで決定される前記平面上の座標点が前記不安定領域内にある場合には、当該座標点が不安定領域外となるよう前記速度指令の補正量を計算して出力する速度補正量演算手段と、前記速度補正量演算手段から出力された補正量を前記速度指令に加算する加算手段とを備えることを特徴とする、誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  2. 前記速度補正量演算手段は、前記速度推定値と前記スリップ周波数とで決定される前記平面上の座標点が前記不安定領域内にある場合には、前記各境界線の中から1つの境界線を選択し、当該境界線における前記スリップ周波数に対応する速度推定値と、前記速度推定手段によって推定された速度推定値との差を、前回の速度指令の補正量に加算した値を今回の速度指令の補正量として出力する、請求項1記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  3. 前記各境界線には、前記速度推定手段によって推定された速度推定値をFrとし、前記スリップ周波数演算手段によって演算されたスリップ周波数をFsとしたときに、Fs=−Frで表される直線が含まれている、請求項1または2記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  4. 前記各境界線には、K1を不安定領域の係数(K1>0)とし、R1を前記誘導電動機の1次抵抗とし、R2を前記誘導電動機の2次抵抗としたときに、Fs=−((K1×R2)/(R1+R2))×Frで表される直線が含まれている、請求項3記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  5. 前記各境界線には、K2を不安定領域の係数(K2>0)とし、R1を前記誘導電動機の1次抵抗とし、R2を前記誘導電動機の2次抵抗としたときに、Fs=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr (Fr≧0)
    s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr (Fr<0)
    で表される2次曲線が含まれている、請求項3または4記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  6. 前記速度補正量演算手段は、同じスリップ周波数に対応する速度推定値の絶対値が大きい境界線を前記各境界線の中から選択する、請求項3から5のいずれか1項記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  7. 前記速度補正量演算手段は、前記速度指令が変化している場合には、Fs=−Frs=−((K1×R2)/(R1+R2))×Frで表される各境界線の中から1つの境界線を選択し、前記速度指令が変化していない場合には、Fs=−Frs=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr (Fr≧0)
    s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr (Fr<0)
    で表される各境界線の中から1つの境界線を選択する、請求項5記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  8. 前記各境界線には、前記速度推定手段によって推定された速度推定値をFrとし、前記スリップ周波数演算手段によって演算されたスリップ周波数をFsとし、マージン幅をfmとしたときに、Fs=−Fr−fm (Fr≧0)
    s=−Fr+fm (Fr<0)
    で表される直線が含まれている、請求項1または2記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  9. 前記各境界線には、K1を不安定領域の係数(K1>0)とし、R1を前記誘導電動機の1次抵抗とし、R2を前記誘導電動機の2次抵抗としたときに、Fs=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr+fm (Fr≧0)
    s=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr−fm (Fr<0)
    で表される直線が含まれている、請求項8記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  10. 前記各境界線には、K1を不安定領域の係数(K1>0)とし、R1を前記誘導電動機の1次抵抗とし、R2を前記誘導電動機の2次抵抗とし、K2を不安定領域の係数(K2>0)としたときに、Fs=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr+fm (Fr≧0)
    s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr−fm (Fr<0)
    で表される2次曲線が含まれている、請求項8または9記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  11. 前記速度補正量演算手段は、同じスリップ周波数に対応する速度推定値の絶対値が大きい境界線を前記各境界線の中から選択する、請求項8から10のいずれか1項記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  12. 前記速度補正量演算手段は、前記速度指令が変化している場合には、Fs=−Fr−fm (Fr≧0)
    s=−Fr+fm (Fr<0)
    s=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr+fm (Fr≧0)
    s=−((K1×R2)/(R1+R2))×Fr−fm (Fr<0)
    で表される各境界線の中から1つの境界線を選択し、前記速度指令が変化していない場合には、Fs=−Fr−fm (Fr≧0)
    s=−Fr+fm (Fr<0)
    s=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr+fm (Fr≧0)
    s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×Fr−fm (Fr<0)
    で表される各境界線の中から1つの境界線を選択する請求項10記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  13. 前記速度補正量演算手段は、前記速度推定値の絶対値が増加する場合には前記マージン幅を狭くし、前記速度推定値の絶対値が減少する場合には前記マージン幅を広くする、請求項8から12のいずれか1項記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  14. 前記速度補正量演算手段は、選択された境界線が前記2次曲線である場合、前記2次曲線の前記速度推定値での接線の傾きをKsとし、Ks=−((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×2 (Fr≧0)
    s=((K2×R2)/(R1+R2))×Fr×2 (Fr<0)
    によって接線の傾きを求め、前記2次曲線における前記速度推定値に対応するスリップ周波数と、前記スリップ周波数との差分に前記接線の傾きの逆数を乗算した値を前回の速度指令の補正量に加算して今回の速度指令の補正量とする、請求項5または10記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
  15. 前記速度補正量演算手段は、選択された境界線が前記2次曲線である場合、前記2次曲線における前記速度推定値での接線の傾きを一定値とし、前記2次曲線における前記速度推定値に対応するスリップ周波数と、前記スリップ周波数との差分に前記接線の傾きの逆数を乗算した値を前回の速度指令の補正量に加算して今回の速度指令の補正量とする、請求項5または10記載の誘導電動機の速度センサレス制御装置。
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