JP4122988B2 - セメント系固化材 - Google Patents

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  • Soil Conditioners And Soil-Stabilizing Materials (AREA)
  • Consolidation Of Soil By Introduction Of Solidifying Substances Into Soil (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラリー流動性の改善されたセメント系固化材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セメント系固化材は、軟弱土の保持力の強化や不透水性付与等、土質の改良のために使用されるセメントを主材とする固化材である。セメント系固化材には固化処理の対象となる軟弱土の性状・土質によって硬化促進剤等の添加材が配合されるが、そのような添加材の一種にせっこうがある。せっこうは、セメント中のアルミネート相と反応して針状結晶であるエトリンガイトを生成し、セメントだけでは固化し難い軟弱土を効率的に固化すると考えられている。
【0003】
固化材を使用して軟弱土の改良を行うにあたっては、粉体のまま対象土と混合する乾式工法、あらかじめ固化材と水とを混合してスラリー状とした後に土と混合する湿式工法、スタビライザー等を用いる浅層処理工法等がある。これらの工法はそれぞれ目的に応じて選定されるが、いずれの場合も、固化材と軟弱土とが十分混合される必要がある。しかし、セメントと比較してせっこうを多く含有するため、特に夏場等の高温時に固化材スラリーを用いる湿式工法において流動性が低下し打設ができなくなると言う問題があった。
【0004】
一方、塩素バイパスは、セメント原料焼成系内におけるコーチングトラブルを防止する目的で、セメンとキルンに付加設置される公知の装置であり、セメントキルンの排ガスの一部を抽気した後、含まれる塩化アルカリ等の揮発性成分を系外で固定化処理してセメント原料焼成系内におけるその量を低減させるのがその原理である。
この装置による抽出物の中、ガス成分は、集塵機を経て再びセメント原料焼成系に戻されたり大気中に放出されるが、同時に塩素バイパスダストが発生する。該ダストは、KCl等の塩化アルカリとセメント原料の仮焼物より成る固形物であるが、強アルカリ性であることと高濃度の塩素を含有していることからその処理が問題であり、種々の技術が開示されている。たとえば、特許文献1には、集塵機で捕集されたバイパスダストを、高炉スラグまたは、フライアッシュの一種以上を含むセメントの強度増進材として利用する方法が開示されているが、更に有効な使用方法の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平10-218657号公報(2ページ)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、固化材スラリーを用いる湿式工法において夏場等の高温時にスラリーの流動性が改善されたセメント系固化材の提供を目的としている。
【0007】
【課題解決の手段】
本発明者らは、セメント系固化材に所定量の塩素バイパスダストを添加することにより、固化材スラリーの流動性が改善されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、セメント、せっこう及び塩素バイパスダストからなり、三酸化硫黄の含有量が6〜15量%、塩素の含有量が0.1〜2.0質量%であることを特徴とするセメント系固化材に関する。
以下に本発明を、詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のセメント系固化材のベースとなるセメントとしては、JIS規格のポルトランドセメントならびに、ポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石、シリカフューム等の混和材を1種以上混合して製造される混合セメントを挙げることができる。ポルトランドセメントしては普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントが特に好ましい。また、混和材の種別と混合量は対象土の土質によって決定されるが、混和材としては高炉スラグを15〜50質量%含有することが特に好ましい。この範囲の高炉スラグを含有する固化材は、高有機質土のような特定の軟弱土の固化に特に適しているためである。
【0009】
せっこうは、天然せっこうや排煙脱硫処理によって副成する副産せっこう、天然無水せっこう、ふっ酸の製造過程で副産するふっ酸せっこう等が使用できるが、せっこうの含有量は、三酸化硫黄として6〜15質量%となるように調整する。この範囲を外れると固化強度が低くなるのに加え、多すぎると高温時のスラリー流動性が大幅に低下し、打設作業が困難になるだけでなく、固化処理土の膨張破壊を生じるという問題が発生する。
【0010】
本発明における塩素バイパスダストは、集塵機で捕集された固形物を言うが、その添加量は、塩素の含有量として0.1〜2.0質量%となるようにする。塩素の含有量が0.1質量%より小ではスラリー流動性の改善効果は得られない。また、2.0質量%を超えると流動性は逆に低下するとともに、強度発現性が低下し好ましくない。塩素量に伴う流動性の低下傾向は、特に高温において著しい。
なお、塩素バイパスダストを、本発明にあるようなセメント系固化材のスラリー流動性の改善に使用した例は見られない。
【0011】
本発明のセメント系固化材は、セメントに所定量のせっこうと塩素バイパスダストを添加して混合することによって製造することができる。また、クリンカーに所定量のせっこうと塩素バイパスダスト、更に必要に応じて高炉スラグを添加して混合粉砕することによっても製造することができる。
【0012】
本発明のセメント系固化材は、一般の固化材と同様に使用できる。処理対象土への添加量は、対象土の含水比や土質、有機物の含有量等によって当然異なるが、通常は対象土1mあたり砂質系の土で50〜200kg、粘土質系の土で50〜300kg、高含水土や高有機質土で100〜500kg程度の範囲で選択して使用する。
【0013】
【実施例】
以下では、具体例を示し、本発明をさらに詳しく説明する。
実施例1〜3、比較例1、2
(1)セメント系固化材の調製
セメント系固化材は普通ポルトランドセメントと所定量の排脱せっこうと塩素バイパスダストとを卓上の混合機で2分間混合して調製した。塩素バイパスダストは、塩素含有量3〜35質量%、KOの含有量4〜55質量%のものを用いた。
【0014】
(2)スラリーの流動性試験
固化材の作業性はマーシュファンネル粘度計で固化材スラリーの流下時間を測定して行った。流下時間が短いほど粘度が低く、流動性が良いと判断される。スラリーの調製は固化材に60質量%となるように水を加えてミキサーで3分間混合して行った。測定は20℃と35℃とで行い、スラリー調製直後と15分後の流下時間を測定した。
【0015】
(3)土壌固化処理試験
対象土として含水比55.5質量%、湿潤密度1.65g/cmの粘性土を用い、固化材を70kg/m添加した場合について、養生期間7日での一軸圧縮強さを測定した。測定は次のように行った。対象土に所定量のセメント系固化材を添加し、ホバートミキサーで5分間混練し、径5×長さ10cmの供試体を調製した。供試体は7日間20℃で密閉養生した後、一軸圧縮強さをJIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に準拠して測定した。
結果を、塩素バイパスダストを添加しなかった場合(比較例1)ならびに塩素バイパスダストを過剰に添加した場合の例(比較例2)とともに表1に示す。
【0016】
【表1】
Figure 0004122988
【0017】
セメント系固化材スラリーの混練15分後の流下時間は35℃になると急激に長くなるが、これに塩素バイパスダストを添加して塩素含有量を増すと流下時間は短くなることが分かる。しかし、塩素バイパスダストを添加した場合でも塩素含有量が高くなりすぎると流下時間は逆に増大することが分かる。また、このような効果は、固化処理土の強度低下をもたらすことなく発現していることが分かる。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、塩素バイパスダストを利用することによって、高温時のスラリー流動性が向上したセメント系固化材を得ることができる。夏場の湿式工法での作業性を改善することができるのに加え、処理が問題であった塩素バイパスダストの有効利用を図ることができる。

Claims (6)

  1. 軟弱土の土質を改良するセメント系固化材であって、セメントと、せっこうと、塩素バイパスダストとからなり、
    セメント系固化材中の三酸化硫黄の含有量が6〜15質量%、塩素の含有量が0.1〜1.6質量%である、ことを特徴とするセメント系固化材。
  2. 軟弱土の土質を改良するセメント系固化材であって、セメントと、せっこうと、塩素バイパスダストと、高炉スラグとからなり、
    セメント系固化材中の三酸化硫黄の含有量が6〜15質量%、塩素の含有量が0.1〜1.6質量%であり、高炉スラグが、セメント、せっこう及び塩素バイパスダストの合計量に対して15〜50質量%含有される、ことを特徴とするセメント系固化材。
  3. 塩素バイパスダストが、塩素を3〜35質量%、K Oを4〜55質量%含有するものである、請求項1又は2記載のセメント系固化材。
  4. 軟弱土の土質を改良するためにセメント系固化材を使用するスラリー工法であって、
    セメント系固化材が、セメントと、せっこうと、塩素バイパスダストとからなり、セメント系固化材中の三酸化硫黄の含有量が6〜15質量%、塩素の含有量が0.1〜1.6質量%であるセメント系固化材を調製する工程と、
    セメント系固化材を固化材基準で軟弱土1m 当たり50〜300kgで軟弱土に混合する工程と、
    を含むことを特徴とするスラリー工法。
  5. 軟弱土の土質を改良するためにセメント系固化材を使用するスラリー工法であって、
    セメント系固化材が、セメントと、せっこうと、塩素バイパスダストと、高炉スラグとからなり、セメント系固化材中の三酸化硫黄の含有量が6〜15質量%、塩素の含有量が0.1〜1.6質量%であり、高炉スラグが、セメント、せっこう及び塩素バイパスダストの合計量に対して15〜50質量%含有されるセメント系固化材を調製する工程と、
    セメント系固化材を固化材基準で軟弱土1m 当たり50〜300kgで軟弱土に混合する工程と、
    を含むことを特徴とするスラリー工法。
  6. 塩素バイパスダストが、塩素を3〜35質量%、K Oを4〜55質量%含有するものである、請求項4又は5記載のスラリー工法。
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