JP4122623B2 - 平版印刷用インキ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷用インキに関するものであり、更に詳しくは印刷適性が良好で且つ光沢、網点着肉性等の品質の良い印刷物を得ることができる平版印刷用インキに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、印刷業界では、印刷時の省人、省力化、自動化、高速化の要求が高まってきており、様々な印刷条件下に於いてトラブルレスで長時間安定して高品位な印刷物が得られる印刷用インキが望まれている。
【０００３】
特にオフ輪印刷は、枚葉印刷と比べると数倍の印刷速度があるために、印刷機のローラー上でインキと湿し水が激しい乳化作用を受けて印刷適性が損なわれることがあった。又、印刷適性上の主な問題としては、版非画線部へのインキの付着による地汚れ、ブランケットへのインキの堆積、ローラーへのインキの堆積、インキのローラーからの飛散等の現象があり、これらにより印刷作業の効率を著しく劣化させることがあった。
【０００４】
また、印刷適性上の問題は印刷物品質へも影響を及ぼし、ベタ着肉性の不足、網点形状の不揃い、網点の欠け、網点の太り、光沢不足等の印刷物品質上の問題が発生することがあった。
【０００５】
これらの問題に対処するために、▲１▼インキの粘弾性を高くして凝集力を高めて版非画線部へのインキの拡散を防止する、▲２▼顔料の精製度を高めて汚れ原因物質の量の抑制をする、▲３▼顔料の分散性を高めて流動性を良くする、等の改良がなされてきたが、完全に問題を解決するには至ってはいない。
【０００６】
一方、近年大豆油を使用した印刷インキが環境保護の関心の高まりから使用されてきており、特にアメリカ大豆協会（ＡＳＡ）の承認を得る事ができて且つエコマーク（日本環境協会認定）を取得した平版印刷用インキが注目されてきている。しかしながら、大豆油を含有する印刷インキは、石油系溶剤の一部が大豆油に置換されている為に、一般的に通常のインキと比較すると植物油の含有量は多くなっており、湿し水との乳化は促進され易くなる為に地汚れ等の問題が発生する事もあった。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の技術における印刷適性上の課題を解決する事を目的としている。すなわち長時間の印刷において、地汚れの発生がなく、湿し水との乳化にかかわる問題の発生もなく良好な印刷物を得る事ができる平版印刷用インキを提供しようというものである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式（Ａ）で表される化合物、下記一般式（Ｂ）で表される化合物および下記一般式（Ｃ）で表される化合物から選ばれる少なくとも１種のジオールのうち２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオールから選ばれる少なくとも１種以上を、全インキ組成物に対して０．１〜５重量％含有することを特徴とする平版印刷用インキに関する。
一般式（Ａ）
ＣＨ3 （ＣＨ2 ）j Ｃ（ＣＨ2 ＯＨ）2 （ＣＨ2 ）k ＣＨ3
（但し、式中、ｊ，ｋは０〜３の整数を示す。）
一般式（Ｂ）
ＣＨ3 （ＣＨ2 ）l Ｃ（ＯＨ）ＨＣ（Ｒ1 ）Ｈ（ＣＨ2 ）m ＯＨ
（但し、式中、ｌ，ｍは０〜３の整数を示し、Ｒ1 はメチル基またはエチル基を示す。）
一般式（Ｃ）
ＨＯＣＨ2 ＣＨ（Ｒ2 ）（ＣＨ2 ）n ＣＨ（Ｒ3 ）ＣＨ2 ＯＨ
（但し、式中、ｎは０〜３の整数を示し、Ｒ2 ，Ｒ3 は独立してメチル基またはエチル基を示す。）
【０００９】
更に本発明は、大豆油を全インキ組成物に対し７重量％以上含有する上記平版印刷用インキに関する。
【００１０】
更に本発明は、非芳香族成分からなる石油系溶剤を溶剤とする上記平版印刷用インキに関する。
【００１１】
更に本発明は、アルキルフェノールを成分とするロジン変性フェノール樹脂を樹脂成分とする上記平版印刷用インキに関する。
【００１２】
更に本発明は、上記平版印刷用インキを湿し水を用いる平版印刷方式で印刷することを特徴とする平版印刷方法。
【００１３】
また本発明は、植物油として大豆油を７％以上含有し、かつ溶剤として芳香族成分が１％以下の石油系溶剤のみを使用してなる平版印刷用インキに対して、上記の（Ａ）、（Ｂ）又は（Ｃ）のうち２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオールから選ばれるジオールを０．１〜５重量％含有させる事ができる。
【００１４】
【発明の実施の形態】
本発明において印刷インキに含有するジオールの量は、全印刷インキ組成物を基準として０．１〜５重量％、好ましくは０．２〜４重量％、更に好ましくは０．３〜２重量％であり、最も好適なのは０．４〜１重量％の範囲内での含有量である。含有量が上記数値の下限に満たないときは目的とする効果が得られず、一方含有量が上記数値の上限を超える時は、平版印刷用インキとしてのフローが長くなりすぎて、粘度も低くなりすぎる為にミスチング、地汚れ、網点太り等の問題が発生しやすくなるので好ましくない。
【００１５】
本発明の一般式（Ａ）〜（Ｃ）で表されるジオールの特徴は、分子構造的に分岐鎖構造であるところにあり、このため樹脂との相溶性が良くインキの流動性を良好にする。またアルキル基の分岐鎖があることにより分子が疎水的となり耐加水分解性が高く効果の安定持続性にも優れている。
【００１６】
本発明のジオールとしては下記のものがある。２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオール。上記ジオールは必要に応じて２種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【００１７】
また本発明のジオールと、トリデカノール、２ヘキシルオクタノール、２ヘキシルデカノール、２オクチルデカノール等の高級アルコールとの併用して印刷インキの流動性等を調整することもできる。
【００１８】
尚、本発明にかかるジオールを印刷インキに配合する方法としては、ワニス中に溶剤の一部として配合しても良く、インキ製造中に配合しても良い。
【００１９】
本発明にかかるジオールは、大豆油を一定量以上使用する平版印刷用インキに対して所定量含有させる事により、インキのタック、フロー、粘度等の流動特性を最適な値に調整する事ができ、また湿し水と乳化したときの粘弾性を最適に維持する事ができる。
【００２０】
本発明の平版印刷用インキに使用される樹脂成分としては、一般的なロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、エステルガム、ロジンアルキッド等があげられる。これらの樹脂成分としてはロジン変性フェノール樹脂が好ましく、特に、パラノニルフェノール（ＰＮＰ）又はパラノニルフェノールとパラオクチルフェノール（ＰＯＰ）の混合フェノール等の炭素数８〜１５の長鎖アルキル基置換フェノールを使用したものが好ましく使用できる。
このようなロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキに対して本発明のジオールを含有させる事により、乳化インキの流動特性を最適に調整する事が可能となり、印刷適性を良好に保つことができるので好ましい。
【００２１】
本発明における平版印刷用インキは、顔料５〜２５重量％、樹脂ワニス４０〜８０重量％および溶剤５〜４５重量％を含み、さらに植物油として大豆油０〜２０重量％を含んでも良い。溶剤としては、パラフィン成分、ナフテン成分等の非芳香族成分からなり、不純物としての芳香族成分は１重量％以下であり、沸点が２００〜４００℃のものが好ましい。
【００２２】
本発明の平版印刷用インキに最適のロジン変性フェノール樹脂の合成の一例を次に示す。尚、以下において、部とは重量部、％とは重量％である。
【００２３】
（フェノール樹脂製造例１）
撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付き４つ口フラスコにパラノニルフェノール１０３０部、パラホルムアルデヒド２９０部、キシレン８００部からなる混合物を加熱溶解後、４８％水酸化ナトリウム水溶液８０部を添加し、７０〜８０℃で５時間反応させる。反応後６Ｎ塩酸１２５部、水道水２００部を加えて撹拌静置し、上澄み層を取り出し水洗して不揮発分６２％のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液約２１００部を得て、これをＡレゾール液とした。
【００２４】
（ロジン変性フェノール樹脂製造例１）
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付きの４つ口フラスコにガムロジン６００部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、２００℃で加熱溶解し、Ａレゾール液８９０部を１２０〜２３０℃で反応後、グリセリン６７部を仕込み、２５０〜２６０℃で、酸価２５以下になるまでエステル化して、分子量１０７，０００、白濁点４０％、樹脂粘度１５０ポイズのロジン変性フェノール樹脂１を得た。
【００２５】
白濁点は次の式で計算される。
白濁点（％）＝樹脂／｛樹脂＋溶剤（Ｘｇ）｝×１００
但しＸは、樹脂２ｇにノルマルテトラデカンを加えて１８０〜２００℃で加熱溶解した後に、２５℃に冷却した時に溶液が白濁するノルマルテトラデカンの最小量である。
また樹脂粘度は、樹脂／アマニ油＝１／２の重量比の混合物を１８０〜２００℃で加熱撹拌溶解して得たワニスのコーンプレート型粘度計による２５℃での粘度である。
【００２６】
本発明の平版印刷用インキの作成の方法について一例を次に記す。
ロジン変性フェノール樹脂１と大豆油、溶剤としてＡＦソルベント７（日本石油（株）製の芳香族成分が１％以下の石油系溶剤）、ＡＬＣＨ（川研ファインケミカル（株）製アルミニウムキレートゲル化剤）を所定量だけ混合、加熱、溶解してゲルワニスを得る。所定量の顔料、ゲルワニス、溶剤を混合し３本ロールミルで練肉した後に、ワックス、添加剤、溶剤等を加えて目的のタック、フロー、粘度に調整して平版印刷用インキを得る。
【００２７】
【実施例】
次に本発明を具体的に更に詳細に説明する。
【００２８】
（フェノール樹脂製造例２）
フェノール樹脂製造例１の工程上で、パラノニルフェノールをパラオクチルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、不揮発分６２％のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液約２１００部を得てこれをＢレゾール液とした。
【００２９】
（ロジン変性フェノール樹脂製造例２）
ロジン変性フェノール樹脂製造例１の工程上で、Ａレゾール液をＢレゾール液６４５部に変更した以外は同様の操作を行い、分子量３５，０００、白濁点４５％、樹脂粘度９０ポイズのロジン変性フェノール樹脂２を得た。
【００３０】
（ロジン変性フェノール樹脂製造例３）
ロジン変性フェノール樹脂製造例１の工程上で、Ａレゾール液を、Ａレゾール液４５０部、Ｂレゾール液４４０部に変更した以外は同様の操作を行い、分子量８９，０００、白濁点４２％、樹脂粘度１２０ポイズのロジン変性フェノール樹脂３を得た。
【００３１】
（ワニス製造例１）
ロジン変性フェノール樹脂１を４４％、大豆油１１％、ＡＬＣＨを０．８％、ＡＦソルベント７を４４．２％として１９０℃１時間加熱撹拌してゲルワニスＡを得た。
【００３２】
（ワニス製造例２）
ロジン変性フェノール樹脂２を４７％、大豆油１１％、ＡＬＣＨを０．８％、ＡＦソルベント７を４１．２％として１９０℃１時間加熱撹拌してゲルワニスＢを得た。
【００３３】
（ワニス製造例３）
ロジン変性フェノール樹脂３を４６％、大豆油１１％、ＡＬＣＨを０．８％、ＡＦソルベント７を４２．２％として１９０℃１時間加熱撹拌してゲルワニスＣを得た。
【００３４】
表１の配合にて３本ロールを用いて、タック６．６になるようにインキを作成し、比較例１〜２、実施例１〜８とした。
【００３５】
【表１】
【００３６】
（印刷試験評価）
実施例及び比較例のインキを、三菱ＢＴ２−８００ＮＥＯオフ輪印刷機にて８００ｒｐｍで用紙をＮＰＩコート紙６６．５ｋｇ（日本製紙（株）製）として各インキ２万枚の印刷試験を行い、印刷物のベタ着肉状態と地汚れの状態を比較した。湿し水はアクワマジックＮＳ（東洋インキ製造（株）製）１．５％の水道水を用いて行い、水巾の下限付近での印刷状態の比較を行うために、水巾の下限値よりも２％高い水ダイヤル値で２万枚の印刷を行った。
【００３７】
評価結果は下記に示した。
インキ ベタ着肉状態 地汚れ 光沢
比較例１ 輪郭の欠けあり 有り 普通
比較例２ 輪郭の欠けあり 有り 良
比較例３ 輪郭の欠けあり 無し 良
実施例１ 良 無し 良
実施例２ 良 無し 良
実施例５ 良 無し 良
実施例８ 良 無し 良
【００３８】
上記の通り本発明にかかる実施例１〜８のインキは、水巾下限での印刷において、印刷物に地汚れの発生がなく、且つベタ部の輪郭の欠けが発生することもなく良好な着肉状態を保つことができた。比較例１は何も添加剤を含まず、比較例２はトリデカノールのみを含有し、比較例３は本発明に関わらない直鎖で炭素数６のジオールであるがいずれも、地汚れの発生防止とベタ部の輪郭の欠けの発生防止の両方を満足させる事はできないものであった。
【００３９】
【発明の効果】
本発明の平版印刷用インキは、長時間の印刷においても地汚れの発生がなく、湿し水との乳化にかかわる問題も発生しないで、安定した品質の印刷物を得ることができる。また、環境対応型印刷インキである非芳香族系溶剤や大豆油を配合したインキにおいても、上記の安定した品質の印刷物を得ることができる。又、アルキルフェノール、特に長鎖アルキルフェノールを成分とするロジン変性フェノール樹脂とすることによりパラフィン系溶剤に溶解可能でインキの流動特性に優れた印刷インキ組成物とすることができ、本発明のジオールの添加効果を高めることができる。更に、印刷インキ組成物に本発明のジオールを適当量添加し、湿し水を用いて平版印刷すると、版非画線部へのインキの付着による地汚れ、ブランケットへのインキの堆積、ローラーへのインキの堆積、インキのローラーからの飛散等の印刷適性上の問題を減少させ等の印刷作業の効率を高めることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷用インキに関するものであり、更に詳しくは印刷適性が良好で且つ光沢、網点着肉性等の品質の良い印刷物を得ることができる平版印刷用インキに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、印刷業界では、印刷時の省人、省力化、自動化、高速化の要求が高まってきており、様々な印刷条件下に於いてトラブルレスで長時間安定して高品位な印刷物が得られる印刷用インキが望まれている。
【０００３】
特にオフ輪印刷は、枚葉印刷と比べると数倍の印刷速度があるために、印刷機のローラー上でインキと湿し水が激しい乳化作用を受けて印刷適性が損なわれることがあった。又、印刷適性上の主な問題としては、版非画線部へのインキの付着による地汚れ、ブランケットへのインキの堆積、ローラーへのインキの堆積、インキのローラーからの飛散等の現象があり、これらにより印刷作業の効率を著しく劣化させることがあった。
【０００４】
また、印刷適性上の問題は印刷物品質へも影響を及ぼし、ベタ着肉性の不足、網点形状の不揃い、網点の欠け、網点の太り、光沢不足等の印刷物品質上の問題が発生することがあった。
【０００５】
これらの問題に対処するために、▲１▼インキの粘弾性を高くして凝集力を高めて版非画線部へのインキの拡散を防止する、▲２▼顔料の精製度を高めて汚れ原因物質の量の抑制をする、▲３▼顔料の分散性を高めて流動性を良くする、等の改良がなされてきたが、完全に問題を解決するには至ってはいない。
【０００６】
一方、近年大豆油を使用した印刷インキが環境保護の関心の高まりから使用されてきており、特にアメリカ大豆協会（ＡＳＡ）の承認を得る事ができて且つエコマーク（日本環境協会認定）を取得した平版印刷用インキが注目されてきている。しかしながら、大豆油を含有する印刷インキは、石油系溶剤の一部が大豆油に置換されている為に、一般的に通常のインキと比較すると植物油の含有量は多くなっており、湿し水との乳化は促進され易くなる為に地汚れ等の問題が発生する事もあった。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の技術における印刷適性上の課題を解決する事を目的としている。すなわち長時間の印刷において、地汚れの発生がなく、湿し水との乳化にかかわる問題の発生もなく良好な印刷物を得る事ができる平版印刷用インキを提供しようというものである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記一般式（Ａ）で表される化合物、下記一般式（Ｂ）で表される化合物および下記一般式（Ｃ）で表される化合物から選ばれる少なくとも１種のジオールのうち２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオールから選ばれる少なくとも１種以上を、全インキ組成物に対して０．１〜５重量％含有することを特徴とする平版印刷用インキに関する。
一般式（Ａ）
ＣＨ3 （ＣＨ2 ）j Ｃ（ＣＨ2 ＯＨ）2 （ＣＨ2 ）k ＣＨ3
（但し、式中、ｊ，ｋは０〜３の整数を示す。）
一般式（Ｂ）
ＣＨ3 （ＣＨ2 ）l Ｃ（ＯＨ）ＨＣ（Ｒ1 ）Ｈ（ＣＨ2 ）m ＯＨ
（但し、式中、ｌ，ｍは０〜３の整数を示し、Ｒ1 はメチル基またはエチル基を示す。）
一般式（Ｃ）
ＨＯＣＨ2 ＣＨ（Ｒ2 ）（ＣＨ2 ）n ＣＨ（Ｒ3 ）ＣＨ2 ＯＨ
（但し、式中、ｎは０〜３の整数を示し、Ｒ2 ，Ｒ3 は独立してメチル基またはエチル基を示す。）
【０００９】
更に本発明は、大豆油を全インキ組成物に対し７重量％以上含有する上記平版印刷用インキに関する。
【００１０】
更に本発明は、非芳香族成分からなる石油系溶剤を溶剤とする上記平版印刷用インキに関する。
【００１１】
更に本発明は、アルキルフェノールを成分とするロジン変性フェノール樹脂を樹脂成分とする上記平版印刷用インキに関する。
【００１２】
更に本発明は、上記平版印刷用インキを湿し水を用いる平版印刷方式で印刷することを特徴とする平版印刷方法。
【００１３】
また本発明は、植物油として大豆油を７％以上含有し、かつ溶剤として芳香族成分が１％以下の石油系溶剤のみを使用してなる平版印刷用インキに対して、上記の（Ａ）、（Ｂ）又は（Ｃ）のうち２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオールから選ばれるジオールを０．１〜５重量％含有させる事ができる。
【００１４】
【発明の実施の形態】
本発明において印刷インキに含有するジオールの量は、全印刷インキ組成物を基準として０．１〜５重量％、好ましくは０．２〜４重量％、更に好ましくは０．３〜２重量％であり、最も好適なのは０．４〜１重量％の範囲内での含有量である。含有量が上記数値の下限に満たないときは目的とする効果が得られず、一方含有量が上記数値の上限を超える時は、平版印刷用インキとしてのフローが長くなりすぎて、粘度も低くなりすぎる為にミスチング、地汚れ、網点太り等の問題が発生しやすくなるので好ましくない。
【００１５】
本発明の一般式（Ａ）〜（Ｃ）で表されるジオールの特徴は、分子構造的に分岐鎖構造であるところにあり、このため樹脂との相溶性が良くインキの流動性を良好にする。またアルキル基の分岐鎖があることにより分子が疎水的となり耐加水分解性が高く効果の安定持続性にも優れている。
【００１６】
本発明のジオールとしては下記のものがある。２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオール。上記ジオールは必要に応じて２種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【００１７】
また本発明のジオールと、トリデカノール、２ヘキシルオクタノール、２ヘキシルデカノール、２オクチルデカノール等の高級アルコールとの併用して印刷インキの流動性等を調整することもできる。
【００１８】
尚、本発明にかかるジオールを印刷インキに配合する方法としては、ワニス中に溶剤の一部として配合しても良く、インキ製造中に配合しても良い。
【００１９】
本発明にかかるジオールは、大豆油を一定量以上使用する平版印刷用インキに対して所定量含有させる事により、インキのタック、フロー、粘度等の流動特性を最適な値に調整する事ができ、また湿し水と乳化したときの粘弾性を最適に維持する事ができる。
【００２０】
本発明の平版印刷用インキに使用される樹脂成分としては、一般的なロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、エステルガム、ロジンアルキッド等があげられる。これらの樹脂成分としてはロジン変性フェノール樹脂が好ましく、特に、パラノニルフェノール（ＰＮＰ）又はパラノニルフェノールとパラオクチルフェノール（ＰＯＰ）の混合フェノール等の炭素数８〜１５の長鎖アルキル基置換フェノールを使用したものが好ましく使用できる。
このようなロジン変性フェノール樹脂を含有する印刷インキに対して本発明のジオールを含有させる事により、乳化インキの流動特性を最適に調整する事が可能となり、印刷適性を良好に保つことができるので好ましい。
【００２１】
本発明における平版印刷用インキは、顔料５〜２５重量％、樹脂ワニス４０〜８０重量％および溶剤５〜４５重量％を含み、さらに植物油として大豆油０〜２０重量％を含んでも良い。溶剤としては、パラフィン成分、ナフテン成分等の非芳香族成分からなり、不純物としての芳香族成分は１重量％以下であり、沸点が２００〜４００℃のものが好ましい。
【００２２】
本発明の平版印刷用インキに最適のロジン変性フェノール樹脂の合成の一例を次に示す。尚、以下において、部とは重量部、％とは重量％である。
【００２３】
（フェノール樹脂製造例１）
撹拌機、水分離器付還流冷却器、温度計付き４つ口フラスコにパラノニルフェノール１０３０部、パラホルムアルデヒド２９０部、キシレン８００部からなる混合物を加熱溶解後、４８％水酸化ナトリウム水溶液８０部を添加し、７０〜８０℃で５時間反応させる。反応後６Ｎ塩酸１２５部、水道水２００部を加えて撹拌静置し、上澄み層を取り出し水洗して不揮発分６２％のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液約２１００部を得て、これをＡレゾール液とした。
【００２４】
（ロジン変性フェノール樹脂製造例１）
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付きの４つ口フラスコにガムロジン６００部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら、２００℃で加熱溶解し、Ａレゾール液８９０部を１２０〜２３０℃で反応後、グリセリン６７部を仕込み、２５０〜２６０℃で、酸価２５以下になるまでエステル化して、分子量１０７，０００、白濁点４０％、樹脂粘度１５０ポイズのロジン変性フェノール樹脂１を得た。
【００２５】
白濁点は次の式で計算される。
白濁点（％）＝樹脂／｛樹脂＋溶剤（Ｘｇ）｝×１００
但しＸは、樹脂２ｇにノルマルテトラデカンを加えて１８０〜２００℃で加熱溶解した後に、２５℃に冷却した時に溶液が白濁するノルマルテトラデカンの最小量である。
また樹脂粘度は、樹脂／アマニ油＝１／２の重量比の混合物を１８０〜２００℃で加熱撹拌溶解して得たワニスのコーンプレート型粘度計による２５℃での粘度である。
【００２６】
本発明の平版印刷用インキの作成の方法について一例を次に記す。
ロジン変性フェノール樹脂１と大豆油、溶剤としてＡＦソルベント７（日本石油（株）製の芳香族成分が１％以下の石油系溶剤）、ＡＬＣＨ（川研ファインケミカル（株）製アルミニウムキレートゲル化剤）を所定量だけ混合、加熱、溶解してゲルワニスを得る。所定量の顔料、ゲルワニス、溶剤を混合し３本ロールミルで練肉した後に、ワックス、添加剤、溶剤等を加えて目的のタック、フロー、粘度に調整して平版印刷用インキを得る。
【００２７】
【実施例】
次に本発明を具体的に更に詳細に説明する。
【００２８】
（フェノール樹脂製造例２）
フェノール樹脂製造例１の工程上で、パラノニルフェノールをパラオクチルフェノールに変更した以外は同様の操作を行い、不揮発分６２％のレゾール型フェノール樹脂のキシレン溶液約２１００部を得てこれをＢレゾール液とした。
【００２９】
（ロジン変性フェノール樹脂製造例２）
ロジン変性フェノール樹脂製造例１の工程上で、Ａレゾール液をＢレゾール液６４５部に変更した以外は同様の操作を行い、分子量３５，０００、白濁点４５％、樹脂粘度９０ポイズのロジン変性フェノール樹脂２を得た。
【００３０】
（ロジン変性フェノール樹脂製造例３）
ロジン変性フェノール樹脂製造例１の工程上で、Ａレゾール液を、Ａレゾール液４５０部、Ｂレゾール液４４０部に変更した以外は同様の操作を行い、分子量８９，０００、白濁点４２％、樹脂粘度１２０ポイズのロジン変性フェノール樹脂３を得た。
【００３１】
（ワニス製造例１）
ロジン変性フェノール樹脂１を４４％、大豆油１１％、ＡＬＣＨを０．８％、ＡＦソルベント７を４４．２％として１９０℃１時間加熱撹拌してゲルワニスＡを得た。
【００３２】
（ワニス製造例２）
ロジン変性フェノール樹脂２を４７％、大豆油１１％、ＡＬＣＨを０．８％、ＡＦソルベント７を４１．２％として１９０℃１時間加熱撹拌してゲルワニスＢを得た。
【００３３】
（ワニス製造例３）
ロジン変性フェノール樹脂３を４６％、大豆油１１％、ＡＬＣＨを０．８％、ＡＦソルベント７を４２．２％として１９０℃１時間加熱撹拌してゲルワニスＣを得た。
【００３４】
表１の配合にて３本ロールを用いて、タック６．６になるようにインキを作成し、比較例１〜２、実施例１〜８とした。
【００３５】
【表１】
（印刷試験評価）
実施例及び比較例のインキを、三菱ＢＴ２−８００ＮＥＯオフ輪印刷機にて８００ｒｐｍで用紙をＮＰＩコート紙６６．５ｋｇ（日本製紙（株）製）として各インキ２万枚の印刷試験を行い、印刷物のベタ着肉状態と地汚れの状態を比較した。湿し水はアクワマジックＮＳ（東洋インキ製造（株）製）１．５％の水道水を用いて行い、水巾の下限付近での印刷状態の比較を行うために、水巾の下限値よりも２％高い水ダイヤル値で２万枚の印刷を行った。
【００３７】
評価結果は下記に示した。
インキ ベタ着肉状態 地汚れ 光沢
比較例１ 輪郭の欠けあり 有り 普通
比較例２ 輪郭の欠けあり 有り 良
比較例３ 輪郭の欠けあり 無し 良
実施例１ 良 無し 良
実施例２ 良 無し 良
実施例５ 良 無し 良
実施例８ 良 無し 良
【００３８】
上記の通り本発明にかかる実施例１〜８のインキは、水巾下限での印刷において、印刷物に地汚れの発生がなく、且つベタ部の輪郭の欠けが発生することもなく良好な着肉状態を保つことができた。比較例１は何も添加剤を含まず、比較例２はトリデカノールのみを含有し、比較例３は本発明に関わらない直鎖で炭素数６のジオールであるがいずれも、地汚れの発生防止とベタ部の輪郭の欠けの発生防止の両方を満足させる事はできないものであった。
【００３９】
【発明の効果】
本発明の平版印刷用インキは、長時間の印刷においても地汚れの発生がなく、湿し水との乳化にかかわる問題も発生しないで、安定した品質の印刷物を得ることができる。また、環境対応型印刷インキである非芳香族系溶剤や大豆油を配合したインキにおいても、上記の安定した品質の印刷物を得ることができる。又、アルキルフェノール、特に長鎖アルキルフェノールを成分とするロジン変性フェノール樹脂とすることによりパラフィン系溶剤に溶解可能でインキの流動特性に優れた印刷インキ組成物とすることができ、本発明のジオールの添加効果を高めることができる。更に、印刷インキ組成物に本発明のジオールを適当量添加し、湿し水を用いて平版印刷すると、版非画線部へのインキの付着による地汚れ、ブランケットへのインキの堆積、ローラーへのインキの堆積、インキのローラーからの飛散等の印刷適性上の問題を減少させ等の印刷作業の効率を高めることができる。
Claims (5)
- ２，２ジメチル１，３プロパンジオール、２，２ジエチル１，３プロパンジオール、２ブチル２エチル１，３プロパンジオール、２エチル１，３ペンタンジオール、および２，４ジエチル１，５ペンタンジオールから選ばれる１種以上のジオールを、全インキ組成物に対して０．１〜５重量％含有することを特徴とする平版印刷用インキ。
- 大豆油を全インキ組成物に対し７重量％以上含有する請求項１記載の平版印刷用インキ。
- 非芳香族成分からなる石油系溶剤を溶剤とする請求項１または２記載の平版印刷用インキ。
- 長鎖アルキルフェノールを成分とするロジン変性フェノール樹脂を樹脂成分とする請求項１ないし４いずれか記載の平版印刷用インキ。
- 請求項１記載の平版印刷用インキを湿し水を用いる平版印刷方式で印刷することを特徴とする平版印刷方法。
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