JP4121550B2 - ホットメルト接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に関する。詳しくは、本発明は、低温塗布が可能で、熱活性により接着させる加熱温度が低く、接着性能、特に耐クリープ性に優れるとともに、適度の柔軟性を有し刺激臭がないという作業性が良好なホットメルト接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホットメルト接着剤は無溶剤タイプの接着剤であり、環境や健康への影響のを配慮する観点から、及び、瞬間接着や高速接着が可能であるという接着作業上並びに経済上の利点を有するという面から、製本、包装、合板、木工などを初めとする広い分野で大量に使用されている。
【0003】
従来は、エチレン・酢酸ビニル共重合体をベースポリマーとするホットメルト接着剤組成物が主流であった。例えば、特開平2−55783号公報には、紙、各種プラスチックフィルム、アルミ箔等の接着用として、エチレン・酢酸ビニル共重合体、接着付与樹脂及びワックスからなるホットメルト接着剤を使用する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、エチレン・酢酸ビニル共重合体をベースポリマーとするホットメルト接着剤は、熱安定性が十分ではないため、熱により劣化してゲル又はブツ(固形物)が発生することが多い。したがって、透明なフィルムやシートを接着する場合は、このようなゲル又はブツが目立ち、外観的に好ましくない。
【0005】
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体をベースポリマーとするホットメルト接着剤は、酢酸の臭いがするので、例えば使い捨ておむつ、衛生ナプキン、ベッドパッド構成品等の臭いを嫌う用途には適さない。さらに、熱をかけて接着付与樹脂を溶解させる作業中に酢酸臭及び煙が多く発生し、作業環境が悪くなるため、かかる酢酸臭及び煙の発生を抑えて作業性を改善することが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低温塗布が可能で熱活性により接着させる加熱温度が低く、接着性能、特に耐クリープ性に優れるとともに、適度の柔軟性を有し、かつ刺激臭がなく作業性が良好なホットメルト接着剤組成物を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用せず、代わりに特定の性状を有するエチレン・α−オレフィン共重合体をベースポリマーとして用いることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、カミンスキー型触媒を用いて製造されたエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体からなり且つ下記物性(A1)、(A2)及び(A3)を備えたベースポリマー20〜95重量%と、粘着付与樹脂2.0〜75重量%と、フィッシャートロプシュワックス2.0〜50重量%とを含有することを特徴とする、ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【0009】
(A1)メルトフローレートが3.5〜30g/10分であること。
(A2)温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線の最大ピークの温度が15〜85℃であり、該ピークの高さをHとしその3分の1の高さにおける該ピークの幅をWとしたときのH/Wの値が2以上であること。
(A3)ビカット軟化温度が15〜85℃であること。
【0011】
本発明においては、特定の性状を有するエチレン・α−オレフィン共重合体をベースポリマーとして用いることにより、低温塗布性、ポリオレフィン材料との接着性等が各段に向上し、刺激臭も改善される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のホットメルト接着剤組成物は、ベースポリマーと粘着付与樹脂とを含有する。
【0013】
(1)ベースポリマー
本発明で用いられるベースポリマーは、エチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン共重合体」という)からなり、下記物性(A1)、(A2)及び(A3)を備えたものである。
【0014】
(A1)メルトフローレートが0.1〜1000g/10分であること。
(A2)温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線の最大ピークの温度が15〜85℃であり、該ピークの高さをHとしその3分の1の高さにおける該ピークの幅をWとしたときのH/Wの値が2以上であること。
(A3)ビカット軟化点が15〜85℃であること。
【0015】
(i)エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体において、コモノマーであるα−オレフィンとしては、炭素数3〜18のものから選ばれる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。また、コモノマーは1種類に限られず、ターポリマーのように2種類以上のα−オレフィンを用いて多元系共重合体としてもよい。
【0016】
エチレン・α−オレフィン共重合体中のエチレンから誘導される構成単位(エチレン単位)とコモノマーから誘導される構成単位(コモノマー単位)の割合は、エチレン単位が80モル%以上、コモノマー単位が合計で20モル%未満であるのが好ましい。エチレン単位の割合が80モル%未満では、耐熱性及び重合安定性が劣るので好ましくない。なお、これらの構成単位の割合は、13C−核磁気共鳴スペクトル法によって求められる。
【0017】
好ましいエチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・プロピレン2元共重合体、エチレン・1−ブテン2元共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、エチレン・1−ヘキセン2元共重合体、エチレン・1−オクテン2元共重合体等を挙げることができる。
【0018】
(ii)メルトフローレート
本発明で用いられるベースポリマーのメルトフローレート(溶融流量。以下、「MFR」と略す)は0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分である。なお、この場合のMFRはJIS−K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した値である。
【0019】
MFRが上記範囲より大きいと、得られるホットメルト接着剤組成物の粘度が低くなりすぎ、また、耐熱性が低下するので好ましくない。一方、該MFRが上記範囲より小さいと、得られるホットメルト接着剤組成物の粘度が高くなりすぎ、また、粘着付与樹脂及びワックス類の分散が悪くなるので好ましくない。
【0020】
(iii)温度上昇溶離分別による溶出曲線の最大ピーク
本発明で用いられるベースポリマーは、その温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線の最大ピークの温度が15〜85℃、好ましくは20〜65℃であり、かつ該ピークの高さをHとしその3分の1の高さにおける該ピークの幅をWとしたときのH/Wの値が2以上、好ましくは2.5以上である。
【0021】
ここで、温度上昇溶離分別(TREF:Temperature Rising Elution Fraction)とは、一度高温でポリマーを完全に溶解させた後に冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させ、次いで温度を連続又は段階的に昇温して、溶出した成分(ポリマー)を回収し、その濃度を連続的に検出して、その溶出成分の量と溶出温度とを求める方法である。
【0022】
その溶出分率と溶出温度によって描かれるグラフが溶出曲線であり、これによりポリマーの組成分布(分子量及び結晶性の分布)を測定することができる。温度上昇溶離分別(TREF)の測定方法及び装置等の詳細については、Journal of Applied Polymer Science、第26巻、第4217〜4231頁(1981年)に記載されている。
【0023】
TREFによって得られる溶出曲線の形はポリマーの分子量及び結晶性の分布によって異なる。例えばピークが一つの曲線、ピークが2つの曲線、及びピークが3つの曲線があり、さらにピークが2つの曲線には溶出温度の低いピークに比べて溶出温度の高いピークの方が溶出分率が大きい(ピークの高さが高い)場合と、溶出温度の低いピークに比べて溶出温度の高いピークの方が溶出分率が小さい(ピークの高さが低い)場合とがある。
【0024】
これを具体的に図に示して説明すると、図1にはピークが1つの場合の溶出曲線を表し、図2にはピークが2つの場合の溶出曲線を表し、図3にはピークが3つの場合の溶出曲線を表し、さらに図2の(a)には溶出温度の低いピークに比べて溶出温度の高いピークの方がピーク高さが高い場合を表し、図2の(b)には溶出温度の低いピークに比べて溶出温度の高いピークの方がピーク高さが低い場合を表す。
【0025】
本発明における溶出曲線の最大ピークとは、ピークが1つの場合の溶出曲線においてはそのピークを、ピークが2つ以上存在する溶出曲線においては、その溶出分率が最大となるピーク(図2及び図3中、符号pで示したピーク)を表す。
【0026】
また、本発明におけるH/Wとは、図1〜3に示したように、最大ピークの高さをHとし、その3分の1の高さにおける幅をWとして計算することにより求められる。図1に示したように、ピークが1つの場合は該ピークの高さと幅とから求められるが、ピークが2つ以上存在する溶出曲線においては、最大ピークと他のピークとの間の谷が該最大ピークの高さの3分の1以上となるような場合があり、形状によっては最大ピークの高さの3分の1の高さにおける幅が該最大ピークと該他のピークとから形成される曲線の幅となる場合がある。
【0027】
そのときはその該最大ピークと他のピークとから形成される曲線全体の幅をWとする(図2(a)及び図3参照)。ピークが2以上の場合であっても、最大ピークとの間の谷が該最大ピークの高さの3分の1未満となるような他のピークが存在する場合は、そのような他のピークは幅Wの計算には関与しない(図2(b)及び図3参照)。
【0028】
このようにして求められる本発明のTREFによる溶出曲線の最大ピークの温度及びH/Wが上記範囲内であれば、組成分布が狭く結晶性が均一なエチレン・α−オレフィン共重合体が得られ、接着性及び低温での溶融性が向上する。
【0029】
一方、TREFによる溶出曲線の最大ピークの温度が上記範囲より大きいと、樹脂に高結晶成分が多く存在し、接着性及び低温での溶融性、並びに柔軟性が低下するので好ましくない。
また、該最大ピーク温度が上記範囲より小さいと、耐熱性が低下するので好ましくない。また、H/Wの値が上記範囲より小さいと、樹脂の結晶性分布が広がりすぎ、接着性及び低温での溶融性が低下するので好ましくない。
【0030】
(iv)ビカット軟化温度
本発明で用いられるベースポリマーは、JIS−K7206に準拠して測定されるビカット軟化温度が15〜85℃、好ましくは15〜80℃、さらに好ましくは25〜65℃である。
【0031】
該ビカット軟化温度が上記範囲より高いと、接着性及び低温での溶融性、並びに柔軟性が低下するので好ましくない。一方、該ビカット軟化温度が上記範囲より低いと、耐熱性が低下するので好ましくない。
【0032】
(v)エチレン・α−オレフィン共重合体の製造
本発明のベースポリマーであるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法は、得られるポリマーが上記物性(A1)〜(A3)を満足する限り特に制限されない。
【0033】
例えば、触媒については、チーグラー型触媒(担持または非担持ハロゲン含有チタン化合物と有機アルミニウム化合物の組合せに基づくもの)、フィリップス型触媒(担持酸化クロム(Cr6+)に基づくもの)、カミンスキー型触媒(担持または非担持メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物、特にアルモキサンの組み合わせに基づくもの)が挙げられる。
【0034】
重合方法としては、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法(例えば、特開昭59−23011号公報に記載の方法)や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等が挙げられる。
【0035】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、比較的狭い組成分布が望ましいので、触媒としてカミンスキー型触媒を用いる方法が特に好ましい。
また、分子量及び結晶性の分布を制御する公知の方法として、重合温度やコモノマー量を調節する方法を適宜採用することにより、所望の物性のポリマーを得ることができる。
【0036】
(2)粘着付与樹脂
粘着付与樹脂とは、ホットメルト接着剤組成物に粘着性(接着性)を付与し得る樹脂一般をいう。本発明で用いられる粘着付与樹脂としては、ロジン系、テルペン系、石油樹脂系、クロマン樹脂系のもの等が挙げられる。
【0037】
ロジン系の粘着付与樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、二量化ロジン等が挙げられ、さらにこれら各種ロジンとペンタエリスリトール、グリセリン、ジエチレングリコール等とのエステル、ロジンフェノール樹脂なども例示される。
【0038】
テルペン系の粘着付与樹脂としては、テルペン樹脂、テルペンとスチレンとの共重合体、テルペンとα−メチルスチレンとの共重合体、テルペンとフェノールとの共重合体及びこれらの水添物などが例示される。
【0039】
石油樹脂系の粘着付与樹脂としては、脂肪族石油樹脂(イソブチレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、ピペリジンなどのC4〜C5モノ又はジオレフィンを主成分とする重合体等)、脂環族石油樹脂(スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化2量体化後重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂等)、芳香族石油樹脂(ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC9〜C10のビニル芳香族炭化水素を主成分とした樹脂等)、脂肪族−芳香族共重合体等の石油樹脂及びこれらの水添物などが例示される。
【0040】
クロマン樹脂系の粘着付与樹脂としては、クロマン樹脂、クロマン−インデン樹脂等が挙げられる。
また、上記以外に、キシレン樹脂、スチレン系樹脂等も粘着付与樹脂として使用することができる。
【0041】
上記粘着付与樹脂は各々単独で用いても良く、また種類や軟化点の異なるものを2種以上併用してもよい。
これらの粘着付与樹脂は、液状ロジン樹脂、液状テルペン樹脂等の液状の粘着樹脂であってもよい。さらに、上記粘着付与樹脂は無水マレイン酸、マレイン酸エステルなどでグラフト変性したものであってもよい。
【0042】
上記粘着付与樹脂としては、環球法軟化点(測定法:JAI−7−1991に準拠)が30〜160℃のものが好ましく、より好ましくは環球法軟化点が60〜120℃のものである。また、常温で液状のものは単独で使用すると接着剤の凝集力を低くしすぎる場合があるが、常温で固形のものと併用することにより使用することができる。
【0043】
また、上記粘着付与樹脂としては、ホットメルト接着剤組成物を速やかに固化させるために、できるだけ高いガラス転移温度(Tg)を有するものを選択することが好ましい。
【0044】
(3)ワックス類
本発明におけるホットメルト接着剤組成物には、必要に応じてワックス類が配合されていてもよい。ワックス類は、低粘度化や固化速度の向上が必要な場合に用いられる。また、ワックス類を配合することによりブロッキング防止効果が向上する。
【0045】
このようなワックス類としては、フィッシャートロプシュワックスが用いられる。
【0046】
(4)組成
本発明のホットメルト接着剤組成物中におけるベースポリマーの割合は、該組成物全量に対し、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは25〜85重量%である。
【0047】
また、本発明のホットメルト接着剤組成物中における粘着付与樹脂の割合は、該組成物全量に対し、好ましくは1.5〜80重量%、より好ましくは2.0〜75重量%である。該接着剤組成物中における粘着付与樹脂の割合が少なすぎると、接着剤組成物の溶融粘度が高くなるため塗工性や作業性が悪くなる傾向にある。一方、粘着付与樹脂の割合が多すぎると、接着剤組成物の凝集力が不足し、耐寒性や柔軟性が低下する場合がある。
【0048】
本発明のホットメルト接着剤組成物にワックス類を配合する場合、該ワックス類の割合は、組成物全量に対し好ましくは1.5〜60重量%、より好ましくは2.0〜50重量%である。ワックス類の割合が少なすぎるとブロッキング防止効果が低下する場合がある。一方、ワックス類の割合が多すぎると、接着力が著しく低下する場合がある。
【0049】
(5)その他の成分
本発明のホットメルト接着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、上記必須成分及び任意成分としてのワックス類の他に、さらに必要に応じて軟化剤、充填剤、安定剤、着色剤(顔料、染料)、紫外線吸収剤等が添加されていてもよい。
【0050】
軟化剤としては、ゴム展開油として知られるパラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイル等のプロセスオイル類;フタル酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤;液状ポリブテン、液状ポリブタジエン及びこれらの水添物;液状ポリイソプレン及びその水添物;等が挙げられる。これらは単独で用いられても良く、また2種類以上が併用されていてもよい。
【0051】
充填剤としては炭酸カルシウム、クレー、タルク、カーボンブラック、シリカ等が挙げられ、安定剤としてはフェノール性抗酸化剤、立体障害フェノール性抗酸化剤、リン系抗酸化剤、イオウ系抗酸化剤等が挙げられるが、これらに限られず、ホットメルト接着剤分野でよく知られているものを適宜用いることができる。また、これらは単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0052】
(6)ホットメルト接着剤組成物の製造
本発明のホットメルト接着剤組成物の製造にあたっては、通常のホットメルト接着剤の製造方法を採用することができる。すなわち、該ホットメルト接着剤組成物の構成成分を混合・撹拌し、加熱・混練することにより得られる。
【0053】
ホットメルト接着剤組成物の製造設備としては、混合・加熱・撹拌・混練等の機能を適宜備えたものであればよく、従来よりホットメルト接着剤の製造に用いられている設備をそのまま使用することができる。そのような製造設備としては、例えば一軸又は二軸スクリュー押出機、シグマブレードミキサー、リボンブレンダー、バタフライミキサー、ニーダー等が挙げられる。
【0054】
上記ホットメルト接着剤組成物の製造手順としては、従来公知の製造手順を採用することができる。例えば100〜250℃、好ましくは140〜200℃に加熱された上記設備に、上記ホットメルト接着剤組成物の構成成分を投入して加熱、混合することにより行われる。
【0055】
製造されたホットメルト接着剤組成物は、製造装置からそのまま加熱配管や加熱容器を経て塗布装置に供給してもよいが、通常のホットメルト接着剤で行われているように、冷却して固形の状態で供給してもよい。固形の状態で供給する場合は、接着剤組成物単体からなるペレット、ビーズ、短冊、スティック、シート、フィルム、塊等の形状の成形物として供給する方法が挙げられる。この場合には、該接着剤組成物からなる成形物自体がその表面に粘着性を有しないことが望ましい。
【0056】
上記接着剤組成物からなる成形物自体の表面が粘着性を有する場合は、成形物表面に非粘着性のコーティングを施して供給される。接着時には、この非粘着性のコーティングが施されたままの状態で使用される。
【0057】
上記非粘着性のコーティングとしては、例えばシリコンオイル、ワックス、滑剤等の薄層コーティング、ポリエチレン、アモルファスポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等のフィルムによるコーティングなどが挙げられる。
【0058】
また、上記接着剤組成物からなる成形物の表面が粘着性を有する場合は、除去可能な非粘着化処理を施してもよい。非粘着化処理の例としては、離型処理した紙やプラスチックのフィルムで包んだ状態にする方法、離型処理した紙やプラスチックから得られた容器に充填した状態にする方法等が挙げられる。
【0059】
紙やフィルムで包んだ状態にする方法においては、接着時にはこの包みを解いて除去してから使用する。また、容器に充填した状態にする方法では、接着時には容器から取り出して使用するほか、例えば容器内で直接上記接着剤組成物を溶融させた後これを取り出して使用することもできる。容器内で直接溶融できるような状態で充填されたものとして、金属、缶、金属製や紙製のドラムに充填されたものが挙げられる。
【0060】
(7)用途
本発明のホットメルト接着剤組成物は、ポリオレフィン材料同士又はポリオレフィン材料と他の材料との接着に好適に使用される。
【0061】
ポリオレフィン材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルム、シート、発泡体、不織布、成形品等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン材料と他の材料とを接着剤、熱融着、共押出によってラミネートしたものでもよく、ポリオレフィン材料に他の材料をコーティングしたものであってもよい。
【0062】
上記他の材料としては、例えば、紙、鉄、アルミニウム、ニッケル、錫、鉛及びこれら合金を含む金属材料、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂、ガラスを含むセラミックス材料のフィルム、シート、成形品等が挙げられる。
【0063】
本発明のホットメルト接着剤組成物の具体的な使用方法を(a)〜(c)に示す。
【0064】
(a)貼り合わせるべき材料のうちの一方に加熱溶融状態の接着剤組成物を塗布し、該接着剤組成物が固形化するまでの間に他方の材料を貼り合わせる方法として、
イ.接着剤組成物をホットメルトアプリケーターで加熱・溶融し、ノズルやスリットを通して点状、ビート状、らせん状、面状に塗布する方法、
ロ.接着剤組成物を加熱ロール上で溶融してロール塗布する方法、
ハ.押出機を用いて接着剤組成物を押出コーティングする方法、
等が挙げられる。
【0065】
(b)一方の材料に加熱溶融状態の接着剤組成物を塗布し、一旦冷却してから他方の材料を貼り合わせる方法として、
イ.貼り合わせる際に接着剤組成物を再加熱して溶融する方法、
ロ.接着剤組成物の塗布されていない材料の接着面を該接着剤組成物の軟化点以上に加熱して貼り合わせる方法、
等が挙げられる。
再加熱の方法としては、接着剤組成物又は貼り合わせる材料を、熱板、熱風、赤外線等で加熱する方法や、電磁波誘導加熱等で発熱させる方法等が挙げられる。
【0066】
(c)シート状又はフィルム状に成形された接着剤組成物を材料間に挿入し、加熱プレス等の手段で接着する方法が挙げられる。
さらに、接着剤組成物を塗布する際に炭酸ガス、窒素ガス等を混入させて発泡状態として塗布してもよい。
【0067】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、段ボール、カートン等の紙器の組立や封緘、自動車部品、電気・電子部品、衛生用品、書籍、合板、木工、雑誌等の製造等に用いることができる。
【0068】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における物性の測定及び接着性能評価は以下に示す方法によって実施した。
【0069】
(1)MFR
ベースポリマーのMFRはJIS−K7210のポリエチレン試験方法(190℃、2.16kg荷重)に従って測定した。
【0070】
(2)温度上昇溶離分別(TREF)によって得られる溶出曲線の測定
本実施例におけるTREFによる溶出曲線の測定は、一度高温でポリマーを完全に溶解させた後に冷却し、不活性担体表面に薄いポリマー層を生成させ、次いで温度を連続又は段階的に昇温して溶出した成分(ポリマー)を回収し、その濃度を連続的に検出して、その溶出成分の量(溶出量)と溶出温度とを求める方法によって行った。これによって描かれるグラフ(溶出曲線)により本発明の溶出曲線のピークが求められ、ポリマーの組成分布が測定される。
【0071】
該溶出曲線の測定は、具体的には以下のようにして行った。測定装置としてクロス分別装置(三菱化学株式会社製、CFC・T150A)を使用し、附属の操作マニュアルの測定法に従って行った。このクロス分別装置は、試料を、溶解温度の差を利用して分別する温度上昇溶離分別(TREF)機構と、分別された区分を更に分子サイズで分別するサイズ排除クロマトグラフ(Size Chromatography:SEC)とをオンラインで接続した装置である。
【0072】
まず、測定すべきサンプル(エチレン・α−オレフィン共重合体)を溶媒(o−ジクロロベンゼン)を用いて濃度が4mg/mlとなるように、140℃で溶解し、これを測定装置内のサンプルループ内に注入した。以下の測定は、設定条件に従って自動的に行われた。
【0073】
サンプルループ内に保持された試料溶液は、溶解温度の差を利用して分別するTREFカラム(不活性担体であるガラスビーズが充填された内径4mm、長さ150mmの装置附属のステンレス製カラム)に0.4ml注入された。該サンプルは、1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却され、上記不活性担体にコーティングされた。このとき、高結晶成分(結晶しやすいもの)から低結晶成分(結晶しにくいもの)の順で不活性担体表面にポリマー層が形成される。
【0074】
TREFカラムを0℃で更に30分間保持した後、0℃の温度で溶解している成分2mlを、1ml/分の流速でTREFカラムからSECカラム(昭和電工株式会社製、AD80M・S、3本)へ注入した。SECで分子サイズでの分別が行われている間に、TREFカラムでは次の溶出温度(5℃)に昇温され、その温度に約30分間保持された。SECでの各溶出区分の測定は39分間隔で行われた。溶出温度としては以下の温度が用いられ、段階的に昇温された。
【0075】
溶出温度(℃):0,5,10,15,20,25,30,35,40,45,49,52,55,58,61,64,67,70,73,76,79,82,85,88,91,94,97,100,102,120,140℃。
【0076】
該SECカラムで分子サイズによって分別された溶液について、装置附属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度を測定し(波長3.42μm、メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムを得た。内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理した。各クロマトグラムの面積が積分され、積分溶出曲線が計算された。また、この積分溶出曲線を温度で微分して、微分溶出曲線が計算された。計算結果の作図はプリンターに出力した。出力された微分溶出曲線の作図は、横軸に溶出温度を100℃当たり89.3mm、縦軸に微分量(溶出分率:全積分溶出量を1.0に規格し、1℃の変化量を微分量とした)0.1当たり76.5mmで行った。
【0077】
次に、この微分溶出曲線から最も高さの高いピーク(最大ピーク)における温度を最大ピーク温度とし、また、この最大ピークのピーク高さをHとし、その3分の1の高さにおける幅をWとして、H/Wの値を算出した。
【0078】
(3)ビカット軟化温度
ベースポリマーのビカット軟化温度はJIS−K7206の試験方法に従って測定した。
【0079】
(4)ホットメルト接着剤組成物の性能評価
(i)耐クリープ性
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、約50μmの厚さとなるように接着剤組成物を塗布した後、直ちに厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせて積層体を得た。この積層体を25mm幅に切断して試料片を作製した後、この試料片に50℃で100gの荷重をかけてT剥離クリープ試験を行い、3時間後に剥離距離(単位:mm)を測定した。
【0080】
(ii)剥離強度
2mm厚のポリプロピレン板に180℃に加熱されたホットメルト接着剤を約3g/mの塗布量で1本のビート状に塗布し、約2秒後に40μm厚のポリプロピレンフィルムを貼り合わせて、試験片を作製した。次いで、島津製作所製「オートグラフDSC2000」を用いて、ビートの方向と直角に引張速度300mm/minで180度剥離試験を行い、ピーク強度を剥離強度とした。
【0081】
(iii)臭い評価
約50gのホットメルト接着剤組成物を180℃で加熱・溶融したときに、酢酸のような刺激臭がするかどうかを調べ、刺激臭がしなかった場合を○、刺激臭がしたときを×とした。
【0084】
【実施例1】
ベースポリマーとして商品名「カーネルKS340」(日本ポリケム(株)製。MFR;3.5g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:40℃、H/W;3.8、ビカット軟化温度;47℃)を40重量%、粘着付与樹脂として商品名「アルコンP−100」(荒川化学(株)製、水添脂環族飽和炭化水素樹脂)を40重量%、及びワックス類として商品名「FT100」(シェル(株)製、フィッシャートロプシュワックス)を20重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表1に示す。
【0085】
【実施例2】
ベースポリマーとして商品名「カーネルKS340」(日本ポリケム(株)製。MFR;3.5g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:40℃、H/W;3.8、ビカット軟化温度;47℃)を40重量%、粘着付与樹脂として商品名「YSポリスターS145」(安原ケミカル(株)製、テルペンフェノール樹脂)を40重量%、及びワックス類として商品名「FT100」(シェル(株)製、フィッシャートロプシュワックス)を20重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表1に示す。
【0088】
【実施例3】
ベースポリマーとして商品名「カーネルKJ640」(日本ポリケム(株)製。MFR;30g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:38℃、H/W;3.4、ビカット軟化温度;44℃)を40重量%、粘着付与樹脂として商品名「アルコンP−100」(荒川化学(株)製、水添脂環族飽和炭化水素樹脂)を40重量%、及びワックス類として商品名「FT100」(シェル(株)製、フィッシャートロプシュワックス)を20重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表2に示す。
【0089】
【実施例4】
ベースポリマーとして商品名「カーネルKJ640」(日本ポリケム(株)製、「カーネル」は登録商標。MFR;30g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:38℃、H/W;3.4、ビカット軟化温度;44℃)を40重量%、粘着付与樹脂として商品名「YSポリスターS145」(安原ケミカル(株)製、テルペンフェノール樹脂)を40重量%、及びワックス類として商品名「FT100」(シェル(株)製、フィッシャートロプシュワックス)を20重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表2に示す。
【0090】
【比較例1】
ベースポリマーとして商品名「ノバテックLL・UJ480」(日本ポリケム(株)製、ノバテックは登録商標。MFR;30g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:85℃、H/W;0.92、ビカット軟化温度;83℃)を55重量%、及び、粘着付与樹脂として商品名「アルコンP−100」(荒川化学(株)製、水添脂環族飽和炭化水素樹脂)を45重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表3に示す。このものは、臭いの評価結果はよいが、耐クリープ性が劣り、剥離強度が低下している。
【0091】
【比較例2】
ベースポリマーとして商品名「ノバテックLL・UJ480」(日本ポリケム(株)製。MFR;30g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:85℃、H/W;0.92、ビカット軟化温度;83℃)を55重量%、及び、粘着付与樹脂として商品名「YSポリスターS145」(安原ケミカル(株)製、テルペンフェノール樹脂)を45重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表3に示す。このものは、臭いの評価結果はよいが、耐クリープ性が劣り、剥離強度が低下している。
【0092】
【比較例3】
ベースポリマーとして商品名「ノバテックHD・HJ560」(日本ポリケム(株)製。MFR;7g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:98℃、H/W;8.7、ビカット軟化温度;128℃)を55重量%、及び、粘着付与樹脂として商品名「アルコンP−100」(荒川化学(株)製、水添脂環族飽和炭化水素樹脂)を45重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表3に示す。このものは、臭いの評価結果はよいが、耐クリープ性がかなり劣り、剥離強度が低下している。
【0093】
【比較例4】
ベースポリマーとして商品名「ノバテックHD・HJ560」(日本ポリケム(株)製。MFR;7g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:98℃、H/W;8.7、ビカット軟化温度;128℃)を55重量%、及び、粘着付与樹脂として商品名「YSポリスターS145」(安原ケミカル(株)製、テルペンフェノール樹脂)を45重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表3に示す。このものは、臭いの評価結果はよいが、耐クリープ性がかなり劣り、剥離強度が低下している。
【0094】
【比較例5】
ベースポリマーとして商品名「カーネルKS340」(日本ポリケム(株)製。MFR;3.5g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:40℃、H/W;3.8、ビカット軟化温度;47℃)を15重量%、粘着付与樹脂として商品名「アルコンP−100」(荒川化学(株)製、水添脂環族飽和炭化水素樹脂)を10重量%、及びワックス類として商品名「FT100」(シェル(株)製、フィッシャートロプシュワックス)を75重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表4に示す。このものは、臭いの評価結果はよいが、耐クリープ性が劣り、剥離強度が低下している。
【0095】
【比較例6】
ベースポリマーとして商品名「ノバテックEVA・LV440」(日本ポリケム(株)製、エチレン・酢酸ビニル共重合体。MFR;2.0g/10分、TREF溶出曲線の最大ピーク温度:43℃、H/W;4.3、ビカット軟化温度;64℃)を55重量%、及び、粘着付与樹脂として商品名「アルコンP−100」(荒川化学(株)製、水添脂環族飽和炭化水素樹脂)を45重量%配合し、混合物1000gを2リットルのビーカーに仕込み、これを180℃で1時間溶融撹拌混合して接着剤組成物を得た。評価の結果を表4に示す。このものは、耐クリープ性の評価はそこそこ満足できるものであるが、剥離強度が低く、また刺激臭がして環境的に好ましくない。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【発明の効果】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、上述の構成とすることにより、低温塗布が可能で熱活性により接着させる加熱温度が低く、また接着性能、特に耐クリープ性に優れるとともに、適度の柔軟性を有し且つ刺激臭がせず作業性が良好である。よって、段ボール、カートン等の紙器の組立や封緘、自動車部品、電気・電子部品、衛生用品、書籍、合板、木工、雑誌等の分野において活用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ピークが1つの場合の溶出曲線を表す。
【図2】 ピークが2つの場合の溶出曲線を表す。図2(a)は溶出温度の低いピークより溶出温度の高いピークの方がピーク高さが高い場合を表し、図2(b)は溶出温度の低いピークより溶出温度の高いピークの方がピーク高さが低い場合を表す。
【図3】 ピークが3つの場合の溶出曲線を表す。
【符号の説明】
p・・・最大ピーク
Claims (1)
- カミンスキー型触媒を用いて製造されたエチレンと炭素数3〜18のα−オレフィンとの共重合体からなり且つ下記物性(A1)、(A2)及び(A3)を備えたベースポリマー20〜95重量%と、粘着付与樹脂2.0〜75重量%と、フィッシャートロプシュワックス2.0〜50重量%とを含有することを特徴とする、ホットメルト接着剤組成物。
(A1)メルトフローレートが3.5〜30g/10分であること。
(A2)温度上昇溶離分別によって得られる溶出曲線の最大ピークの温度が15〜85℃であり、該ピークの高さをHとしその3分の1の高さにおける該ピークの幅をWとしたときのH/Wの値が2以上であること。
(A3)ビカット軟化温度が15〜85℃であること。
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