JP4121303B2 - 床構造及び床構造に用いる幅木 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、床支持材と、前記床支持材上に互いに隣接して横方向に設けられる複数の床基版と、前記各床基版上に互いに離間して横方向に設けられる複数の防音床材と、前記防音床材上の床下地材とを備えており、前記床基版と前記床下地材との間に床下空間を有する床構造に関する。また、本発明は、床支持材と、前記床支持材上の床基版と、前記床基版上に互いに離間して横方向に設けられる複数の防音床材と、前記防音床材上の床下地材と、前記床下地上の床仕上材と、前記床下地材及び前記床仕上材の周辺の壁とを備えており、前記床基版と前記床下地材との間に床下空間を有する床構造に用いる幅木に関する。
【0002】
【従来の技術】
RC造に代表される中高層集合住宅等の剛構造建物では、建築物の構造材である柱、梁、床、壁等の構造部材が一体となり高固定度建物となる。このため、かかる高固定度建物では、重量床衝撃音の対策は、専ら、床スラブ厚を増大させて床スラブ自体を高重量化し、高剛性として、床振動を起こり難くし、放射音量を低減することにより、重量床衝撃音を低減する手段が採られる。
【0003】
一方、木造住宅、ツーバイフォー住宅、鉄骨住宅に代表される戸建住宅や低層集合住宅等の柔構造建物では、柱等の構造部材の固定度が相互に低い低固定度建物になる。かかる低固定度建物では、低固定度であるために、床のみを高重量化し、高剛性とすることはできない。床のみを高重量化する場合、その他の構造部材もそれに適応する構造体とする必要が生じ、重量増やコスト増のため、実用化できるものではない。
【0004】
一方で、住宅自体は、外部音の遮断性能も向上し、通常の状態では非常に静かになっている。その反面、特に、柔構造建物の上下階の間においては、子供の飛び降り、走り回りに代表される重量床衝撃音が耳障りな音として指摘され、対策が要望されている。
【0005】
本発明者等は、かかる柔構造建物の重量床衝撃音の低減に対し、様々な提案を行っており、近年、かなり良いレベルまで重量床衝撃音の対策が進んだことを示している。
【0006】
床構造には、床本体である床構成部材に加え、種々の周辺部品も用いられている。特に、床と壁との間に用いられる幅木は、従来から床と壁との接触部分に美観を与えるために使用されている。かかる幅木は、木質材、プラスチック材等の柔軟性のないものが用いられている(特開昭60−67157号明細書参照)。従来の幅木では床の振動が壁に伝わりやすく、浮床構造の鼓現象を回避し床下地材下部空間の空気圧縮を回避する手段もとられていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現状では、柔構造建物の重量床衝撃音の低減に対し、広範な建物の条件において安定してLH−55レベルを発揮する床構造は知られていない。柔構造建物の重量床衝撃音において、安定してLH−55レベルを得るには、それより1ランク上のLH−50レベルを達成できる技術が必要となる。
【0008】
また、建物の現状躯体構造のままで、重量床衝撃音のLH−55レベルを安定して発揮し、かつ、コストの極端な増加を伴わない防音手段は知られていない。
【0009】
特に、後述するように、本発明者の研究によれば、重量床衝撃音は、床本体の床構成部材による影響に加え、種々の周辺部品の影響も見過ごせないことが分かった。
【0010】
本発明の課題は、前記状況を改善するべく、固定度の低い躯体構造に適用することができ、現状の床基版に強固に固定するだけで重量床衝撃音のLH−55等級をクリアする床構造を得ることである。
また、本発明の課題は、安定した重量床衝撃音の低減性能値を発揮する床構造を得ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、木造住宅、ツーバイフォー住宅、鉄骨住宅に代表される戸建住宅や低層集合住宅のような柔構造建物で、柱、梁、壁、床のような構造部材の固定度が相互に低い低固定度建物に用いる床構造であって、床支持材と、前記床支持材上に水平方向に互いに隣接して設ける複数の床基版と、前記各床基版上に水平方向に互いに離間して設ける複数の防音床材と、前記防音床材上の床下地材とを備え、前記床基版と前記床下地材との間に床下空間を有し、前記各防音床材が、衝撃吸収機構の異なる複数の衝撃吸収部材と細長い支持部材とを備え、前記防音床材が床基版の長辺と同程度迄の長さで細長いタイプの防音床材を形成し、前記衝撃吸収部材のうち、同じ衝撃吸収機構を有する衝撃吸収部材が複数個含まれ、前記各衝撃吸収部材の上面及び下面の少なくとも1方の面上に前記支持部材が設けられ、床構造が複数の細長い制御部材を備え、前記各制御部材が貫通孔を有し、前記各制御部材が、前記貫通孔を貫通する固定部材によって床基版上に固定され、前記各制御部材が少なくとも2つの前記床基版を連結一体化し、重量床衝撃音が抑制されることを特徴とする床構造に係るもの(第1発明)である。
【0012】
また、本発明は、木造住宅、ツーバイフォー住宅、鉄骨住宅に代表される戸建住宅や低層集合住宅のような柔構造建物で、柱、梁、壁、床のような構造部材の固定度が相互に低い低固定度建物の床構造に用いる幅木であって、床構造が、床支持材と、前記床支持材上に水平方向に互いに隣接して設ける複数の床基版と、前記各床基版上に水平方向に互いに離間して設ける複数の防音床材と、前記防音床材上の床下地材と、前記床下地上の床仕上材と、前記床下地材及び前記床仕上材の周辺の壁とを備え、前記床構造が前記床基版と前記床下地材との間に床下空間を有し、前記各防音床材が、衝撃吸収機構の異なる複数の衝撃吸収部材と細長い支持部材とを備え、前記防音床材が床基版の長辺と同程度迄の長さで細長いタイプの防音床材を形成し、前記衝撃吸収部材のうち、同じ衝撃吸収機構を有する衝撃吸収部材が複数個含まれ、前記各衝撃吸収部材の上面及び下面の少なくとも1方の面上に前記支持部材が設けられ、前記床構造が複数の細長い制御部材を備え、前記各制御部材が貫通孔を有し、前記各制御部材が、前記貫通孔を貫通する固定部材によって前記床基版上に固定され、前記各制御部材が少なくとも2つの前記床基版を連結一体化し、前記幅木が連通孔及び隙間防止部材を備え、前記幅木が前記壁と前記床仕上材とに接し、前記壁と前記床下地材及び前記床仕上材との間に隙間が設けられ、前記床下空間が前記隙間と前記連通孔とによって室内に連通し、前記隙間防止部材が前記床仕上材の動きに追従することを特徴とする幅木に係るもの(第2発明)である。
【0013】
本発明者は、所定の防音床材によって床基版と床下地材との間に床下空間が設けられる浮床構造に於いての多くの実験の中から、偶然にではあるが、複数の床基版を複数の制御部材によって強固に拘束することで、低周波の発生が著しく減少するという予期し得ない実験事実を知見するとともに、かかる知見に基づく床構造が防音性能及びコスト面で十分に実用化し得ることを見出し、本発明(第1発明)に至った。
【0014】
また、本発明者は、かかる実験事実に基づき、様々な追加実験を行った結果、壁と床下地材及び床仕上材の間に隙間を設け、かつ、壁下部と床仕上材の納まり部の幅木に、床の動きにすばやく追従する隙間防止部材や連通部を設けることによって、躯体条件等の変化に左右されず、種々の床基版に対応し得る安定した重量床衝撃音の低減度を保つことができることを見出し、本発明(第2発明)に至った。
【0015】
本発明(第1発明)では、床下地材等の浮床構造で衝撃を受けるが、その衝撃を吸収する防音床材等を支持する複数の床基版は、少なくとも2つの隣接する床基版間にまたがる制御部材で強固に固定されている。
【0016】
本発明者は、互いに隣接する床基版を制御部材で強固に拘束することで、制御部材と床基版とのずれや床基板上の制御部材の不要な動きが抑制された状態で床基版間の位相差が解消され、床基版それ自体を制御部材が強固に固定拘束することで、制御部材と床基版とのずれや床基板上の制御部材の不要な動きが抑制された状態で床基版自体の振動モードを変化させることを突き止めた。
【0017】
このように、本発明者は、隣接する床基版間にまたがって床基版を強固に連結一体化する制御部材と防音床材を併用することによって、重量床衝撃音を著しく低減させることに辿り着いた。
【0018】
本発明(第2発明)では、床基版と防音床材と床下地材とで形成された浮床構造の下部空間と、床周囲の壁と床下地材と床仕上材との間の隙間とを設け、この下部空間と隙間とを連通させる。
【0019】
本発明者は、床振動が浮床構造によって絶縁され、かつ、下部空間が床周囲の壁と床下地材と床仕上材との間の隙間と連通し、後述の幅木の連通孔とも連通することで、床衝撃による浮床下部空間の空気圧縮による床基版への悪影響を回避することができ、より一層安定した重量床衝撃音の低減が可能になることを突き止めた。
【0020】
本発明者の研究によれば、重量床衝撃音は、床本体の床構成部材による影響に加え、種々の周辺部品の影響も見過ごせないことが分かった。
【0021】
特に、床と壁とに接するように用いられる幅木は、床衝撃や荷重等が起こす床の沈み込みにより、床と壁との間に隙間を生じさせたり、床衝撃の反動による床の突き上げ等で、床と壁とからの騒音発生に関与することが避けられない。
【0022】
そこで、本発明では、幅木に隙間防止部材を設け、隙間防止部材に床の動きに追従する働きをもたせる。これにより、幅木は、床との間に隙間を発生させず、床の振動を直接壁に伝達することがなくなり、重量床衝撃音を悪化させることがない。
【0023】
本発明(第1発明)によれば、複数の細長い制御部材がその貫通孔を貫通する固定部材によって床基版に強固に固定され、少なくとも2つの床基版が前記制御部材によって連結一体化されるので、制御部材のずれや動きが抑制された状態で床基版自体の振動の抑制が可能となり、床基版上の所定の防音床材が十分な防音性能を発揮し、重量床衝撃音が著しく抑制される。
【0024】
本発明(第2発明)によれば、浮床構造の下部空間が床周囲の壁と床下地材と床仕上材との間の隙間と連通しているので、衝撃を受けた下部空間の空気圧縮による床基版への悪影響を回避することができ、幅木の隙間防止部材が床の動きに追従し幅木と床との間に隙間を発生させないので、床の振動を直接壁に伝達することがなくなり、重量床衝撃音が著しく抑制される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成材について詳細に説明すると共に、かかる構成材の作用についても併せて説明する。
本発明の床構造は、床基版、制御部材、防音床材、床下地材、床仕上材及び幅木によって構成することができる。以下に、各構成材について順次説明する。
【0026】
(1)床基版
本発明で言う床基版とは、梁等の床支持材に支持された床本体を言う。床基版は種々の板状部材から形成することができる。かかる板状部材の具体例には、ALC床版、PC床版、中空押出セメント床版、木質床パネル等を挙げることができる。かかる板状部材は単独で床基版となることができる。
【0027】
本発明にかかる床基版には、施工現場で根太を組み、根太に順次板材を固定する木床基版等が含まれる。木床基版は、1つの床と見做すよりは、重量床衝撃音の観点から見ると、根太に支持された板材は1枚毎が1つの床基版と考えたほうが良い。
【0028】
また、本発明で言う床基版には、ALC床版等の床基版の他、これらの板状部材の上面に、捨貼材等の板部材を固定した床基版も含まれる。
【0029】
低固定度建物に於いては、床基版は各々が独立したものを用い、施工現場で敷設固定される。この時、梁等の床支持材と床基版の間は、床基版の振動をできるだけ床支持材に伝達しないように、振動絶縁材を介在させた方が良い。振動絶縁材は、用いなくても、重量床衝撃音を左右する低周波帯域には大きな影響を与えないことが大半であるが、用いる場合には、高周波域の騒音の発生源を解消する意味がある。
【0030】
また、床基版は床荷重を受け持つ構造材でもあるので、本発明では、各ハウスビルダーが指定した床基版に対してどのような対応にすべきかを対照とする。
【0031】
(2)制御部材
制御部材とは、前記各床基版のうち、隣接設置された床基版間を連結固定して一体化するものである。また、制御部材は、隣接する床基版同士の振動による位相差の解消を行うことと、床基版単体の振動モードを強制的に拘束することによる振動低減を行うことを目的とするものである。
【0032】
床基版上に捨貼板材等を予め固定しておいて、隣接する床基版の連結を行っても良いが、捨貼板材での連結固定のみでは、板振動を防止できないため制御部材と同等以上の効果を発揮することができないので、制御部材を併用する。制御部材は本発明に於いて不可欠の構成部材である。
【0033】
本発明にかかる制御部材は、固定方法により、その作用に大きな差を生じる。つまり、制御部材は、隣接する床基版を、150〜455mmピッチ等の間隔でビス等を用いて、ずれないように固定する必要がある。床の振動時に、床基版と制御部材との間に滑りや無用な動きが生じると、制御部材による重量床衝撃音の低減性能に悪影響が生じる。
【0034】
制御部材が金属を含む場合には、金属には直接ビス固定し難いので、制御部材を2枚の板の間に挟み、例えば、金属板の四隅を予めカットしたり、金属にビスより大きな穴をあけたりして、板と板とを四隅で固定することが考えられる。しかしながら、このように間接的にビス固定している場合には、制御部材としての効果を発揮させることがない。
【0035】
これは、制御部材が振動時に板材間で滑りを生じて床基版をしっかり固定できないためである。
【0036】
このような観点からは、本発明では、制御部材に貫通孔を設け、貫通孔を貫通する固定部材によって、制御部材を床基版上に強固に固定するので、制御部材が床基版上で無用な動きを起こさない。
【0037】
本発明では、好ましくは、制御部材の貫通孔は皿穴であり、固定部材はビスである。制御部材と床基版とを固定する際、ビスの頭を皿穴に固定することで、制御部材と床基版とをより一層強固に固定することができる。
【0038】
また、本発明では、制御部材の下部に接着剤を併用して制御部材自体を下部の床基版又は捨貼板材にビス固定しても良い。ただし、この場合は、床基版等を解体する場合には、板材等のリユースが困難となることがある。
【0039】
そのため、床基版として捨貼板材を使用する場合には、ALC床版等に達するビス等を選定し、捨貼板材と共に隣接するALC床版等を固定する必要がある。
【0040】
制御部材は、金属、木材、FRP等の曲げ剛性の大きい物を単体又は併用することが望ましく、材質によっては防錆対策や開孔処理を行ったり、床基版とのこすれ音等の異音発生防止と振動による固定ビスの緩み防止の為の粘弾性体との併用も適宜行うことができる。但し、制御部材は防音床材と並列で用いる場合は、防音床材の衝撃吸収材の衝撃による最大変位量を考慮して、衝撃吸収材の最大変位時でも床下地材下面が接しない厚みに設定する必要がある。制御部材は、剛性を増すために、幅方向の両端や中央等の任意の部分に曲げ加工や肉厚部を設けることも好ましい。
【0041】
制御部材は、床基版の幅よりも小さい幅で用いることが効果的である。制御部材の固定ピッチは150mm〜455mmが良い。1列で固定するより2列で固定するほうが良い。つまり、制御部材は、床基版と同等サイズの幅広の板状物では、例えば、隣接する複数の床基版にまたがって固定しても、大きな板は板振動し易く、拘束効果が少ないためで、幅の小さな板状物や棒状物はねじれ変形をし難く、床基版の拘束効果が増す。
【0042】
制御部材は床基版に対し2つ以上で設けることが好ましい。制御部材は床基版の長辺方向には基版長辺の70%以上の長さで2列以上で拘束することが好ましい。このとき、制御部材は1列の中で複数の制御部材を用いても良いが、1つの制御部材は床基版の長さの1/5以上の長さとするのが好ましい。床基版の短辺方向に制御部材を用いる場合は、3列以上で、かつ、隣接床基版に跨がって用いるのが良い。
【0043】
(3)防音床材
防音床材は支持材と衝撃吸収材を必須構成材とするものである。
(3−1)支持材
支持材は複数の衝撃吸収材を一つの防音床材としてまとまった形にして、施工及び取り扱いを容易にするという役目と、支持材を床基版側に用いる場合は、支持材に、複数の衝撃吸収材で吸収しきれなかった衝撃エネルギーが点状で入力され、再度、衝撃エネルギーが支持材の面積に分散されて、支持材の曲げ応力によってエネルギーロスをさせる役目を行う。支持材を床下地材側に用いる場合は、床下地材の動きを、より広い面積で受けて、より多くの衝撃吸収材で吸収するため、衝撃エネルギーを分散し、ロスしやすくする役目と、床下地材をより強固に固定し、かつ、床下地材の衝撃による変形を支持材の曲げ剛性によりエネルギーロスを行わせる役目があり、曲げ剛性の大きい材料が好ましく、床下地材をネジ止めし易い材質であることも好ましい。しかし、ネジ止めし難い材質の場合は粘弾性体で接着固定してもよい。
【0044】
支持材の材質としては、金属、木質、FRP、プラスチック等を例示することができ、単体もしくは併用して用いことができる。
【0045】
支持材は、床基版やその上の捨貼材に固定し、衝撃吸収材と固定し、床下地材と固定し、その結果、衝撃反力で床基版や床下地材から分離しないことが必要である。
【0046】
支持材は一方で固定相手との間での異音が発生しないように、ネジ等の緩みが発生しないように繊維質材や発泡体シートや粘弾性体を設けても良い。
【0047】
(3−2)衝撃吸収材
衝撃吸収材は、衝撃吸収機構が異なる種類を複数で用いると衝撃吸収作用が大きくなり、そのとき、少なくとも一種類を複数で用いると衝撃吸収作用が大きくなる。
【0048】
衝撃吸収材の支持材への配置は、特に制限されないが、任意間隔で用いることができる。衝撃吸収機構が異なる物の組合せの場合、配置方法により衝撃吸収作用が異なる。それ故、個々の衝撃吸収材の力を発揮し易い組合せを予め決定しておくのがよい。
【0049】
衝撃吸収材は粘弾性体やバネが好適である。粘弾性体は粘性成分の高い粘弾性体と弾性成分の高い粘弾性体との組合せがよい。バネは円錘状のものが底突きを生じ難いので好ましい。
【0050】
衝撃吸収材は設定高さを変化させ、他の衝撃吸収材が一定量変化してはじめて衝撃吸収作用を全体として発揮するようにしても良い。このような手段は、金属バネや弾性要素の高い粘弾性体を他より低く設定することにより、衝撃反力を作用させないことができるので好まし方法である。
【0051】
支持材を衝撃吸収材の上下一方のみに用いることができる。かかる場合は、衝撃吸収材の支持材に固定した反対側に粘着成分の強い粘弾性体を貼り付け、防音床材を接地圧着することにより固定することができる。この場合は、床下地材の動きを少なくとも2つの防音床材の支持材に受け、より広い面積に衝撃を分散させ、多くの衝撃吸収材で吸収でき、衝撃吸収材の選択の幅が拡がるメリットがある。また、床下地材を接地圧着することにより固定する手段を用いても良く、接着剤で固定しても、前記粘着成分の強い粘弾性体と接着剤を併用して固定しても良い。
【0052】
以上のようにして、防音床材を形成し、床高さに制約がない場合は、防音床材は前記制御部材と積層しても良い。
(4)制御部材と防音床材との積層
制御部材と後述する防音床材とは任意配置で用いれば良いが、特に制御部材と防音床材とを積層して用いると効果が高くなる。つまり、床衝撃を受けると、床仕上材、床下地材の各層で曲げ変形によるエネルギーロスを伴い、広い面積で変形を行い、防音床材の支持材の変形と衝撃吸収材の変形でエネルギーロスを行う。残りのエネルギーは、制御部材部分に集中し、制御部材で補強拘束された床基版を曲げ変形することでエネルギーロスをするため、直接床基版を曲げ変形させるよりエネルギーロスが大きく、床基版がより一層振動し難くなるためと思われる。
【0053】
一方で、制御部材と防音床材の配置では、制御部材に跨がって防音床材と直交させて用いる方法も効果が高い方法である。このときは、制御部材の近傍に防音床材の衝撃吸収材が必然的に位置するようになり、これも前記の積層時と近い状況が生じ、補強された床基版の近傍に曲げ応力をかけることになり、床基版が曲げ振動を受け難くなると思われる。
【0054】
このように、制御部材は、床基版を拘束し、補強することで、衝撃力の入力時点で床基版が曲げ振動を受け難くする効果があるだけでなく、衝撃力が入力した後は、制御部材により隣接床版が連結一体化され重くなっていることと拘束されていることから、床基版自体に対し、振動し難く、振動を継続し難くする作用を生じさせる。
【0055】
(5)防音床材の設置
防音床材は、床周辺の壁から60cm以内の距離の位置に壁と平行して1列以上で用いることにより、際根太としても有効である。このとき、木材等の際根太では重量衝撃音を悪化させるが、防音床材を用いることで悪化を防止することが可能となる。
【0056】
防音床材を1列に長く用いる場合は、防音床材同士は少なくとも5mm以上の間隔を空けるのがよい。支持材の接触による異音を防ぐためである。防音床材の配置ピッチは200mm以上1000mm以内が望ましい。
【0057】
防音床材の寸法は特に規制は無いが、床基版の長辺と同程度迄の長さで細長いタイプが望ましい。この理由は、施工面での効率が良いからであり、ある程度の変位が起こり易く音性能面でよいためである。
【0058】
防音床材の端部は50mm〜200mmに衝撃吸収材が無いことが好ましい。これは施工面で端部を切断しても衝撃吸収材の総数に影響がなく、音性能面で安定しているためである。
【0059】
(6)床下地材
床下地材は防音床材に架設固定され、浮床構造を形成するものである。床下地材は複数の板材を各々積層固定して形成すれば良いが床のたわみをできるだけ少なくして衝撃時になるべく広い面積で、かつ、変位量を少なく設定する必要がある。
【0060】
つまり、床の荷重変位量は、床下地材の積層方法により、例え同一材料を積層したとしても、大きな違いが生じ、歩行感、床変位量に与える影響が大きいだけでなく、音性能にも少なからず影響を与える。このため、床下地材の最下層には一番曲げ剛性の大きい板材を用いることが良い。
【0061】
また、積層時には直下の板材の長辺に対して長辺を直交する方向に用い、板材端部に相当する板材の継目は直下の継目から少なくとも100mm以上、好ましくは200mm以上ずらすのが良く、固定はネジが好ましい。ネジ頭は板材面より1〜2mm程度沈み込むように、上下の板材をしっかり固定することが好ましい。つまり、ネジ頭が板材面より上にあると後日、床鳴り現象の一因となる可能性があることと、前記の床下地材全体として、たわみにくい床下地とするためにも効果があるためである。
【0062】
床下地材としては、パーチクルボードや合板等の木質系板材が汎用品でコスト面でも有利である。浮床部の重量確保のために、石膏ボードやアスファルトに鉄粉等の高比重物質を混入し成型した板材や鉄板等も遮音材として用いることもできる。
【0063】
前記石膏ボードやアスファルトに鉄粉等の高比重物質を混入し成型した板材(以下「アスファルト系高比重板材」という。)は脆いので、これらの板材は必ずしも直下板材の長辺に長辺を直交し、継目を100mm以上ずらすとか直接ビス止めする必要はない。しかしながら、前記石膏ボードやアスファルト系高比重板材はその上にビス固定できる板材を用い、石膏ボードやアスファルト系高比重板材の直下の板材に対して、長辺を直交する方向で、継目を100mm以上ずらして用いることとビス固定することが必要である。
【0064】
鉄板を用いる場合には、鉄板と直下の板材は接着による固定でも、ビス止めによる固定でも、鉄板の四隅をカットしたり、穴をあけて板材間に間接的に固定しても良い。ビス止めの場合は、予め皿穴を設け、ビス頭が鉄板面の上に出ないようにするか、鉄板面にゴムシート等を貼り付けてビス頭がシート面の下になるようにビス固定する必要がある。鉄板上の床下地板材は接着固定がよい。
【0065】
(7)床仕上材
床仕上材は、フローリング、クッションフロアー、カーペット、畳等の通常の床仕上材を用いれば良い。本発明の床構造は、重量床衝撃音はもとより、軽量床衝撃音に対する低減効果も高いので、床仕上材にフローリングを用いる場合は、防音フローリングを用いる必要はない。本発明では床下地材の状態で重量床衝撃音が決定し、床仕上材によりほとんど変わらないが、化学畳等の厚みの厚い仕上材は重量床衝撃音を悪化させる場合があるので、仕様決定に際しては予め確認する必要がある。
【0066】
(8)床下地材及び床仕上材の施工
床下地材は、後述の床仕上材と共に、防音床材と床基版に支持された浮床構造であり、床衝撃により変位することで衝撃力の緩和を行う。このため、床下地材及び床仕上材は床周囲の壁に接触させることは避ける必要がある。
【0067】
例えば、床の周囲と壁とが向き合う、壁の下部の所々に予めスペーサーを設けておき、床仕上材を施工後、スペーサーを除去するか、スペーサーを床仕上面より低くし、クッション層付きとして埋め殺しにしても良い。この場合、床下地材及び床仕上材の振動は壁に伝達されなくなる。一方で、床基版と防音床材と床下地最下層板により囲まれた空間内の空気は、床周囲でスペーサー厚さと同じ厚さの隙間が確保されるため、前記空間の空気は圧縮されることがなく、太鼓現象は回避される。
【0068】
(9)幅木
幅木は通常のもので良い。幅木下部にクッション材を設けたり、幅木背面に発泡体シートを設けたり、幅木と床仕上材や幅木と壁との納まり部に振動絶縁処理をするのが好ましい。かかる幅木や処理は、床振動を壁に伝えないようにすることができる。
【0069】
本発明では、幅木を隙間防止材と共に用いることができる。隙間防止材は、床と壁との振動伝達を抑制すると共に、床衝撃等による床の沈み込み時に生じる隙間の発生を防止する働きを有する。
【0070】
また、本発明では、幅木は、特に浮き床の下部において、空気の逃げ道を確保する連通孔を有することができる。連通孔により空気が逃げることで、床構造の変形に伴うエネルギー消費が促進され、重量床衝撃音が低減する。
【0071】
床下地材や床仕上材と床周囲の壁との隙間を設け、床下地材の下部空間と連通させ、床衝撃による空間の空気圧縮による床衝撃音への悪影響を回避することができる。
【0072】
幅木の連通孔は、幅木に孔やスリットを設けることで得ることができる。幅木に孔やスリット等の空気の通り道ができ、空気が圧縮されなくなり、より安定した音性能が確保できる。
【0073】
上記目的で設ける幅木の孔等は、外観上の美感を損なわず、違和感がないのが好ましい。かかる幅木の孔等は、幅木に化粧溝を設け、その化粧溝に孔等の開口部を設けることで得ることができる。
【0074】
以下、本発明を、図面に基づいて、より一層詳細に説明する。
図1は本発明の1例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。図2は図1のA−A断面図である。図3は図1の床構造を床下地材及び床仕上材を含めて示す断面図である。
【0075】
図4は本発明の他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。 図5〜7は、それぞれ、本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。図8〜10は、それぞれ、本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【0076】
図11は、本発明にかかる幅木を用いる1例の床構造の断面図である。図12は図11の幅木の斜視図である。図13は図11の幅木のA−A断面図である。図14は図11の幅木のB−B断面図である。図15は図11の幅木のC−C断面図である。
【0077】
図1〜3に示すように、床構造1は、一連の梁組からなる床支持材2(大梁2a、小梁2b、控梁2c、四隅のジョイントボックス2d)と、床支持材2上に互いに隣接して横方向に設置するALC床版等からなる床基版3とを備える。
【0078】
また、床構造1は、各床基版3上に互いに離間して横方向に設けられる複数の防音床材4と、防音床材4上の床下地材5とを備えている。床基版3と床下地材5との間には床下空間6が設けられている。
【0079】
各防音床材4は、衝撃吸収機構の異なる複数の衝撃吸収部材7a,7b等と、細長い支持部材8とからなる。各衝撃吸収部材7a,7b等のうち、少なくとも1種の衝撃吸収機構を有する衝撃吸収部材7a,7b等は複数個用いられる。各衝撃吸収部材7a,7b等の上面及び下面の少なくとも1方の面上に支持部材8が設けられる。
【0080】
本発明では、床構造は複数の細長い制御部材を備える。床構造1では、制御部材9は貫通孔を有しており、各制御部材9は、貫通孔を貫通する固定部材によって前記床基版上に固定されている。
【0081】
各制御部材9は、少なくとも2つの床基版3を連結一体化しており、床基版3の無用な振動を抑制する。
【0082】
このように、床基版2上には、防音床材4及び複数の制御部材9が、一定の間隔で敷き並べられて配置され、防音床材4の働きが十分に生かされ、床構造1の重量床衝撃音が抑制される。
【0083】
図4に示すように、床構造11では、ALC床版からなる床基版13上に、防音床材14と制御部材19とが配置される。
【0084】
図5〜7に示すように、床構造21,31,41では、ALC床版とALC床版上の捨貼材23a,33a,43aとからなる床基版23,33,43上に、防音床材24,34,44と制御部材29,39,49とが配置される。なお、図7の床構造41では、制御部材49上に防音床材44が積層される。
【0085】
図8〜10に示すように、床構造51,61,71では、根太と板材とからなる木床とこの木床上の捨貼材53a,63a,73aとからなる床基版53,63,73上に、防音床材54,64,74と制御部材59,69,79とが配置される。なお、図9の床構造61では、制御部材69上に防音床材64の全体が積層される。また、図10の床構造71では、防音床材74は、支持部材78が制御部材79上で交差するように設けられる。
【0086】
図11〜15に示すように、床構造81では、床下地材と床仕上材と壁及び幅木を取り付ける。
床構造81には、床基版53の上部の捨貼板材53aと床下地材85とに囲まれた床下空間86が存在する。床下空間86は、壁91と床下地材85及び床仕上材90との間の隙間92と連通している。さらに、床下空間86は幅木93の連通孔94と連通しており、最終的に開孔部94aで室内に開口している。
【0087】
これによって、床仕上材の表面に衝撃が加わった時に、床基版と床下地材とに囲まれた空間で圧縮される空気は、壁と床下地材及び床仕上材との間の隙間を通り、幅木の連通孔を通って、室内に開放され、浮き床構造内部の空気は圧縮されてもすぐに抜ける仕組みが形成される。
【0088】
幅木93は、その下部に隙間防止材95を有する。隙間防止材95は、床仕上材90とその接点95aで接触する。これにより、隙間防止材95は、幅木93と床仕上材90との間に隙間を生じさせないと共に、床の振動が壁91に直接伝わらないようにする。
【0089】
隙間防止材95は、壁91と床下地材85及び床仕上材90との間の隙間92と幅木93の連通孔94との連通を妨げないように、幅木93の室内側に設けられる。
【0090】
【実施例】
以下、本発明を、図面を参照して、実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
図1〜3に示すような床構造を施工する。
実験室開口部外周の四隅に角パイプ状のボルト締結用穴を設けたジョイントボックスを実験室床に固定する。
【0091】
H型鋼梁(両端はジョイントボックスのボルト締結穴に合わせた鉄板を溶接固定している。)をジョイントボックスにボルト固定し、実験室床躯体から浮かせる。H型鋼梁は長辺2本と短辺1本を大梁とし、残る短辺は小梁とし、長辺中央に控梁を大梁と面一にして床梁組を作る。
【0092】
短辺梁3本で床基版を支持する。梁と床基版の間に、6mm厚×40mm幅×1720mm長さの防振ゴム101を取り付ける。
【0093】
この例で用いる床梁組は以下の構成を有する。H型鋼大梁は200mm高さ×100mm幅×4mm厚(高さ)×5mm厚(幅)の断面を有し、長辺方向長さは3.54m、短辺方向長さは1.72mである。H型鋼小梁は200mm高さ×100mm幅×3.0mm厚(高さ)×4.5mm厚(幅)の断面を有し、1.72m長さである。H型鋼控梁は190mm高さ×100mm幅×3.2mm厚(高さ)×3.5厚(幅)の断面を有し、1.72m長さである。
【0094】
床基版としては、100mm厚×606mm幅×1.818mm長さのALC床を仕様する。ALC床短辺を、H型鋼梁短辺で前記防振ゴム101上に支持する。H型鋼とALC床を落下防止金具で固定する。このようにして、H型鋼の床梁組上にALC床基版を6枚設置する。尚、実験室直下に受音室を設ける。受音室は12.5mmの厚さを有する石膏ボード1枚貼りからなる独立天井であり、天井内に16Kグラスウールを100mmの厚さで敷く。
【0095】
ALC床基版上に、ALC床基版の長辺に直交する方向で、制御部材としての帯鋼(4.5mm厚×120mm幅×1500mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する。)を芯/芯300mmピッチで長辺方向2列で70mmDACビスで12枚固定する。
【0096】
防音床材(支持材:20mm厚×100mm幅×1700mm長さ/衝撃吸収材A:22mmφ上底、14mmφ下底、25mm高さ7個、衝撃吸収材B:22mmφ上底、44mmφ下底、25mm高さ7個、衝撃吸収材C:3.5mmφ線径、4回巻、22mm高さ、円錘バネ2個)を床周囲と、芯/芯300mmピッチでALC床基版上の帯鋼の間に設ける。
【0097】
この際、防音床材は、衝撃吸収材A及びBの下面に貼ってある1mm厚のブチルゴム系粘弾性体で床基版に計17個接着固定する。
【0098】
次に、防音床材上に、防音床材の長辺に長辺が直交する方向で、20mm厚×910mm幅×1820mm長さのパーチクルボード5aを敷設固定する。
【0099】
次に、その上に、8mm厚×455mm幅×190mm長さのアスファルト系遮音材5b(比重3.0、8mm厚)を敷並べる。その上に、15mm厚×910mm幅×1820mm長さの上部パーチクルボード5cを、アスファルト系遮音材5b直下の下部パーチクルボード5aに対し、長辺同士が直交し、継目が300mmずれるように敷設する。上部パーチクルボード5cを、下部パーチクルボード5aへアスファルト系遮音材5bを介して固定して床下地材5とする。
【0100】
この上に、床仕上げ材としての12mm厚×303mm幅×188mm長さのフローリング材を、直下のパーチクルボード5cの長辺に長辺を直交させる方向で、継目が一致しないようにフロアーネイルで固定して供試体を作製する。
【0101】
供試体の試験はJIS−A−1418−2:2000に従って行なう。衝撃力特性(1)の衝撃源により重量床衝撃音を測定し、結果を表1に示す。尚、この試験では、前記JISで評価対象としていない16Hz、31.5Hzも測定する。
【0102】
(実施例2)
図4に示すような床構造を施工する。
実施例1で用いた実験条件と同様の条件で実験する。床基版は同じALC基版とする。床基版を固定する制御部材としては、帯鋼(4.5mm厚×120mm幅×3400mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する。)6本を用いる。
【0103】
制御部材は、ALC床基版の長辺方向で、ALC床基版の長辺に平行に、ALC床基版2枚を留めるように、DACビスで固定する。これらの制御部材間に、防音床材16本を、衝撃吸収材A,Bに予め貼り付けたブチルゴム系粘弾性体で床基版に貼り付け固定する。尚、防音床材は実施例1に用いた同じ構成の防音床材とする。以下床下地材、床仕上材も実施例1と同じ構成で同様にする。試験も実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定し、表1に結果を示す。
【0104】
(実施例3)
図5に示すような床構造を施工する。
実施例1と同じ条件とし、床基版も同じくALC床基版とする。ALC床基版上に、15mm厚×909mm幅×1818mm長さのパーチクルボードを捨貼材として設ける。捨貼材は、ALC床基版の長辺方向に長辺を直交する方向で敷設し、DACビスで床基版に固定する。
【0105】
次に、実施例1と同様に、制御部材としての帯鋼(4.5mm厚×120mm幅×1500mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する。)12本を、ALC床基版の長手方向と長手方向が直交する方向で、DACビスにより捨貼材を貫通させて床基版に固定する。
【0106】
次に、制御部材の間に、実施例1と同じ構成の防音床材17本を捨貼材に貼り付ける。次に、床下地材と床仕上材とを実施例1と同じ構成で積層固定し、供試体を得る。試験は実施例1と同様に重量床衝撃音を測定して行い、結果を表1に示す。
【0107】
(実施例4)
図6に示すような床構造を施工する。
ALC床基版までの実験条件は、実施例1とは同一条件である。ALC床基版上に、実施例3と同様に、15mm厚のパーチクルボードをALC床基版の長辺に対し、長辺を直交する方向で敷設し、DACビスにて固定する。
【0108】
次に、制御部材は、帯鋼(4.5mm厚×100mm幅×3400mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する。)を6本用いる。1本の帯鋼は、ALC床基版に平行で、かつ、ALC床基版の短辺を突き合わせる部分で、2枚分のALC床基版を固定するように、DACビスにてALC床基版に達するように固定する。
【0109】
次に、防音床材を床基版の外周近くに配置固定する。床基版の中央部は制御部材と直交方向で、かつ衝撃吸収材が制御部材間に位置する間隔で、床基版上のパーチクルボード上に計17本固定する。
【0110】
防音床材上に、20mm厚のパーチクルボードを架設する。防音床材の支持材に、木ネジを頭が1〜2mm沈み込む位置に固定する。
【0111】
次に、アスファルト系遮音材(比重3.0,8mm厚)を敷設し、その上に、15mm厚のパーチクルボードを下層のパーチクルボードの長辺に長辺が直交する方向で、かつ、継目が100mm以上ずれるように敷設して、アスファルト系遮音材を挟んで下層パーチクルボードにビス固定する。このときも、ビス頭はパーチクルボード面より1〜2mm沈み込むように固定する。
【0112】
このようにして、床下地材を形成した後、フローリング材(12mm厚×303mm幅×1818mmの長さ)を、下地パーチクルボードの長辺と長辺が直交する方向で、かつ継目をずらして、フロアーネイルで固定して、供試体を得る。実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定する。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例5)
図7に示すような床構造を施工する。
ALC床基版までの実験条件は、実施例1と同様のものとする。ALC床基版上の15mm厚の捨貼パーチクルボードは、実施例3と同様のものにする。制御部材は、帯鋼(4.5mm厚×120mm幅×1500mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する。)とする。制御部材は、ALC床基版の内側でALC床基版の長手方向に直交する方向で12本と、ALC床基版外周近くでALC床基版の長手方向と平行方向でALC基版の両端に4本との合計16本を用いる。制御部材は、DACビスでALC床基版に達するように固定する。
【0114】
次に、防音床材の衝撃吸収材側を、ブチル系粘弾性体で制御部材上に積層固定する。防音床材上に、20mm厚のパーチクルボードを敷設しビス固定する。ビス頭はパーチクルボード面より1〜2mm沈むようにする。
【0115】
次に、パーチクルボード上に、アスファルト系遮音材(比重3.0、8mm厚)を敷設する。その上に、15mm厚のパーチクルボードを敷設する。このパーチクルボードは、ビスを用いて、アスファルト系遮音材と共に、下部パーチクルボードに固定する。ビス頭はパーチクルボード面より1〜2mm沈むようにする。尚、下部パーチクルボードの長辺に対し、上部パーチクルボードの長辺を直交方向とし、継目は100mm以上ずらす。
【0116】
前記方法により床下地材を形成し、その上に、フローリング材(12mm厚×303mm幅×1818mm長さ)を、下部パーチクルボードの長辺と長辺が直交する方向で、かつ継目をずらせてフロアーネイルで固定する。得られる供試体は、実施例1と同様に重量床衝撃音を測定する。結果を表1に示す。
【0117】
(実施例6)
図8に示すような床構造を施工する。
ツーバイフォ―住宅の6畳間にて実験する。外壁側の胴差部は、2×10木材の2枚重ねで15mm厚合板を支持し、6畳間の長辺方向に、根太は2×6木材で合板を支持する。根太は2×10木材で支持する。
【0118】
床基版は、前記根太と15mm厚の合板(910mm幅×1818mm長さ)で構成される。天井は、周囲の2×10材木で支持した天井スチール根太45×100に、12.5mm厚×909mm幅×1818mm長さの石膏ボードの2層貼り天井である。天井上部には、ロックウールを100mm厚で全面に配置する。
【0119】
捨貼板材としての15mm厚のパーチクルボードを、前記床基版の面材である15mm厚合板の長辺に、その長辺を直交させ、かつ継目を一致させないようにしてビス固定する。
【0120】
制御部材は、帯鋼(4.5mm厚×120mm幅×3400mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する長尺品と4.5mm厚×120mm幅×700mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する短尺品)を、パーチクルボードの長辺に対し直交方向で、6畳の間の短辺方向に長尺品と短尺品を一列にして、長尺品、短尺品を各々7本づつ用いて、木床基版に捨貼板材と共にビス固定する。
【0121】
次に、防音床材を、床の周囲と、制御部材に隣接する部分に固定する。防音床材としては、支持材を20mm厚×100mm幅×1600mm長さのものとし、衝撃吸収材A,Bを各々7個、衝撃吸収材Cを2個設けた長尺品と、支持材を20mm厚×100mm幅×900mm長さのものとし、衝撃吸収材A,Bを各々4個、衝撃吸収材Cを1個設けた短尺品を用い、長尺品を11本、短尺品を7本設置固定する。
【0122】
次に、防音床材上に、20mm厚のパーチクルボードを敷設固定する。固定にはビスを使用し、ビス頭はパーチクルボード面より1〜2mm沈めて固定する。
【0123】
次に、パーチクルボード上に、アスファルト系遮音材を敷設し、その上に、15mm厚のパーチクルボードを敷設し、上層パーチクルボードをアスファルト系遮音材と共に下層パーチクルボードにネジで固定し、床下地材を形成する。この際、ネジ頭はパーチクルボード面より1〜2mm沈める。尚、下層パーチクルボードの長辺に対し、上層のパーチクルボードの長辺を直交方向とし、継目が100mm以上ずれるようにする。
【0124】
次に、床仕上材としてのフローリング材(12mm厚×303mm幅×1818mm長さ)を、下層パーチクルボードの長辺に対し長辺を直交させる方向で、継目がずれるようにして、フロアーネイルで固定する。上記方法で形成した供試体について、実施例1と同様に重量床衝撃音を測定する。結果を表1に示す。
【0125】
(実施例7)
図8、図11〜15に示すような床構造を施工する。
実施例6と同一の床基版、捨貼板材、防音床材の条件にする。壁と床下地材及び床仕上材の間に隙間を設け、下部に振動絶縁材を設け、内部と背後連通部と表面化粧溝内に通気孔を有する幅木を設ける。この幅木による重量床衝撃音の影響をチェックする。なお、この例では、図11に示すような根太102を用いる。
【0126】
壁の下部に、スペーサーとして合板(3mm厚×10cm幅×30cm長さ)を仮止めし、防音床材上に、20mm厚パーチクルボードを架設する。このパーチクルボードを、防音床材の支持材に、ビス頭がパーチクルボード面より1〜2mm沈むようにビス固定する。
【0127】
次に、アスファルト系遮音材(比重3.0mm、8mm厚)を敷設し、その上に、下層パーチクルボードの長辺に対し、長辺が直交する方向で、継目を100mm以上ずらして上層パーチクルボードを敷設し、これを下層パーチクルボードにビス固定する。この時、ビス頭はパーチクルボード面より1〜2mm沈める。
【0128】
このようにして形成した床下地上に、フローリング材(12mm厚×303mm幅×1818mm長さ)を、床下地表面のパーチクルボードの長辺に対し、長辺を直交させ、かつ継目がずれるようにして、フロアーネイルにより固定する。壁に仮止めしたスペーサーを除去し、前記幅木を設けて供試体とする。供試体について、実施例1と同様にして重量衝撃音を測定する。結果を表2に示す。
【0129】
なお、幅木は、図11〜15に示すように設ける。
木床基版53上の捨貼板材53aと防音床材54と床下地材85の最下層のパーチクルボード85aと壁91とに囲まれた空間86は、壁91と床下地材85及び床仕上げ材90との隙間92を通って、幅木93の下部の床仕上げ材90との接点に設けられるゴム製の隙間防止材95の裏側を通って、幅木93の裏面の発泡シート103付き合板104と木質材105との間の連通孔94を通って、幅木93の化粧溝106内の開孔部94aを通って、室内と連通する。
【0130】
これによって、床仕上げ材面への衝撃が加わったときに、捨貼板材と防音床材と床下地材の最下層のパーチクルボード85aと壁91とに囲まれた空間86内で圧縮される空気は、壁91と床下地材85と床仕上げ材90との隙間92を通って、幅木93の下部の隙間防止材95の裏側の空間を通って幅木93の連通孔94を通り、幅木93の化粧溝106内の開孔部94aから圧縮された空気が室内に抜けて、床上部構造下の空気は圧縮されてもすぐに抜ける仕組みが形成される。
【0131】
幅木93は、下部に床仕上げ材90との隙間を防止し、床からの振動伝達を防止するゴム製の隙間防止材95を設ける。幅木93の裏面は発泡シート103と合板104とが積層され、部分的に合板104と木質材105とが積層され、連通孔94は木質材105の厚みを薄くした部分で、空間が形成できるように作製する。なお、図13は連通孔94がある部分の断面であり、図14は連通孔94の内部分の断面である。連通孔94は、図13に示すように連通孔94がある部分と、図14に示すように連通孔94が内部分とが、幅木93の長辺方向に、交互に形成される。幅木93の長辺方向では、図15に示すように、幅木93の裏面の発泡シート103を積層する合板104と、幅木93の木質材105の厚さの薄い部分で貼り合わせることにより、必然的に木質材105の化粧面107の裏側に空間が形成され、この空間が連通孔94となる。
【0132】
(実施例8)
図9に示すような床構造を施工する。
実施例7と同一の床基版、捨貼板材とする。制御部材を帯鋼(9mm厚×120mm幅×3400mm長さで、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する長尺品と9mm厚×120mm幅×2400mm長さ、長辺方向2列で300mmピッチの皿穴を有する短尺品)とする。
【0133】
6畳間の長辺方向に、制御部材の長尺品を7本、6畳間の短辺方向の両端に、制御部材の短尺品を各々1本、計2本を、床基版に達するようにビス固定する。
【0134】
防音床材は、前記制御部材上に、衝撃吸収材側を下にして、衝撃吸収A,Bに予め取付けていたブチル系粘弾性体の離型紙を除去して貼り付ける。防音床材は、支持材をパーチクルボード(20mm厚×100mm幅×1650mm長さ)とし、粘弾性体からなる衝撃吸収材A,B各7個と円錘状バネからなる衝撃吸収材Cを2個支持体に固定した長尺品と、支持材をパーチクルボード(20mm厚×100mm幅×900mm長さ)とし、前記衝撃吸収A,Bを各々順に4個,4個,1個設けた短尺品を、各々長尺品を16本、短尺品を2本使用する。
【0135】
次に、壁下部にスペーサーの合板(3mm厚×10cm幅×30cm長さ)を仮止めし、前記防音床材上に、20mm厚のパーチクルボードを架設固定する。固定にはビスを用い、ビス頭がパーチクルボード面より1〜2mm沈むようにする。
【0136】
次に、アスファルト系遮音材を積層し、更に15mm厚の上層パーチクルボードを下層のパーチクルボードの長辺に対し、長辺を直交する方向で、かつ、継目が100mm以上ずれるようにして、下層のパーチクルボードにビス固定する。
【0137】
次に、床仕上材として、フローリング材を、下層のパーチクルボード長辺に対し、長辺を直交し、継目をずらしてフロアーネイルで固定する。スペーサーを除去し、実施例7と同様に幅木を取付けて供試体を得る。実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定する。結果を表2に示す。
【0138】
(実施例9)
図10に示す床構造を施工する。
実施例8の制御部材の配置において、床周囲の長尺品2本と短尺品2本を除去する。
【0139】
防音床材は、実施例8で用いる防音床材の支持材のみを変え、幅方向両端を折り曲げた鉄板(2.3mm厚×100mm幅×1650mm長さ)に粘着層付ブチルゴムテープを上面に貼っている長尺品と、前記の支持材の長さが900mmである短尺品を用いる。この防音床材の支持材は、制御部材をまたぐように直交方向に用いる。衝撃吸収材A,Bは全て、床基版上の捨貼材上にあり、衝撃吸収材A,Bはブチル系粘弾性体で固定し、衝撃吸収材Cはバネ固定板に固定したものを支持材に接着し、捨貼材から浮かせる。
【0140】
防音床材上に、20mm厚のパーチクルボードを敷設し、支持材上のブチルゴムテープにより固定する。
【0141】
次に、アスファルト系遮音材を敷設し、その上に、15mm厚の上層パーチクルボードを、下層のパーチクルボードの長辺に対し長辺が直交する方向で、かつ継目が100mm以上ずれるようにして、下層のパーチクルボードにビス固定する。
【0142】
次に、床仕上材のフローリング材(12mm厚×303mm幅×1818mm長さ)を、下層のパーチクルボードの長辺に長辺が直交する方向で、継目をずらせてフロアーネイルで固定する。
【0143】
スペーサーを除去し、実施例7で用いる幅木と同じものを同様に設けて供試体を得る。実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定する。結果を表2に示す。
【0144】
(比較例1)
図16に示すような床を施工する。
図16は比較例1の床について防音床材の配置を示す平面図である。
図16に示すように、比較例1では制御部材は使用されていない。
実施例1と同様のALC床基版111の条件で、捨貼材と制御部材とを除外する。その他のものは、実施例1と同様の防音床材112、床下地材及び床仕上材と同一品を使用し、配置、積層方法も実施例1と同じとする。実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定する。結果を表2に示す。
【0145】
(比較例2)
図17に示すような床を施工する。
図17は比較例2の床について防音床材の配置を示す平面図である。
図17に示すように、比較例2では制御部材は使用されていない。
実施例7と同様の木床基版に、パーチクルボード113aを捨貼した床基版113の条件で、制御部材を除外する。その他のものは、実施例7と同様の防音床材114、床下地材、床仕上材及び幅木と同一品を使用し、配置、積層方法も実施例7の場合と同じとする。実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定する。結果を表2に示す。
【0146】
(比較例3)
実施例3と同じALC床基版の条件で、制御部材を鉄板(4.5mm厚×300mm幅×455mm長さ、四隅を50mmの直角二等辺三角形分でカットする。)とし、ALC床版上に、全面敷き並べ、その上に、パーチクルボード(15mm厚×909mm幅×1818mm長さ)を捨貼材として敷設し、そのパーチクルボードを、90mm長さのDACビスで、ビスが鉄板の四隅の切り欠き部を通るようにしてALC床版に固定する。
【0147】
次に、実施例1と同じ構成の防音床材17本を、捨貼材のパーチクルボードに貼り付ける。次いで、床下地材と床仕上材とを、実施例1と同じ構成で積層固定して供試体を得る。実施例1と同様にして重量床衝撃音を測定する。結果を表2に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
【表2】
【0150】
以下、実施例及び比較例の実験事実を説明する。
実施例1は、ALC床基版に帯鋼からなる制御部材を固定し、防音床材、床下地材及び床仕上材の床構成としたものである。その結果、比較例1の床との差は、制御部材の有無だけであるのに拘らず、LH値が、比較例1:LH −56であるのに対して、実施例1:LH −53と大きく改善する。比較例1の床が現状のトップレベルの低減量であることを考慮すると、非常に大きな改善と言える。
【0151】
実施例2の床構造は、実施例1と同様にLH −53となり、LH −50等級に限りなく近い値となっている。制御部材はALC床基版の長手方向に対し平行で用いても直交で用いても同様な効果があることが解る。
【0152】
実施例3は、実施例1の床基版に対し予め捨貼板材を固定して、その上から制御部材を用いた例である。実施例3の床構造では、捨貼材はALC床基版全面に用いているが、LH −53からLH −52へ若干効果があり、2dB許容を用いるとLH −50等級になっている。
【0153】
実施例4は、実施例3と同様に、実施例2の床基版に捨貼板材を用いてALC床基版の長辺に平行に制御部材を用いた例であり、防音床材を20mm厚パーチクルボードから両端折り曲げ鉄板に変更した例である。実施例3と同様に、LH −53からLH −52へ若干効果があり、2dB許容を用いるとLH −50等級になっている。ここでも、制御部材によるALC床基版の制御の方向性は見られない。しかし、捨貼材をALC床基版に併用する効果は若干見られる。また、支持材は両端折り曲げ鉄板2.3mm厚にしても、パーチクルボード20mm厚と大差なく、厚みを下げ得ることが判る。
【0154】
実施例5は、実施例3で用いる床基版の長辺方向の端部に、2本づつ計4本の制御部材を加えて、かつ、全部の制御部材の上に防音床材を貼り付けた例である。実施例3の床構造に比べて、更に63Hzで1dB低減できており、LH −51となり、LH −50等級である。制御部材に防音床材を積層することで、重量床衝撃音の低減性能が更に良くなることを示している。
【0155】
実施例6は、木床基版に制御部材を用いた例であり、制御部材のない比較例2の床よりも重量床衝撃音が63Hzで3dB低減されている。木床基版に於いても、ALCの床基版と同様に、重量床衝撃音が3dBと大きく改善でき、LH −55等級となっている。
【0156】
実施例7は、実施例6の床構造で、床下地材と床仕上材と床周囲の壁との間に隙間を設け、床仕上材と壁との納まり部の下部に、隙間防止材を設け、幅木の背後及び内部に空気連通部を設けたもので、幅木表面の化粧溝に開孔部を設けた幅木を用いた例である。このことにより、実施例7では、床構造の振動が壁に伝達することが防止されると共に、浮床構造となる床下地材下部の空気が床衝撃により圧縮され床衝撃音が悪化するのを防止できている。この結果、実施例7の床構造は、実施例6の床構造よりも重量床衝撃音で更に1dBの改善ができている。
【0157】
実施例8は、床の短辺方向の両端に2本の制御部材と、床の長辺方向に5本の制御部材とを設けて、これらの上に、防音床材を積層固定させた例である。この時、制御部材は、板厚を4.5mmから9mmに増加しているので、剛性も重量も増している。この結果、実施例8の床構造では、重量床衝撃音の63Hzの決定周波数が、実施例6の床構造と比べ、3dBも低減でき、重量床衝撃音の低減効果が非常に高く、2dB許容を使えばLH −50等級となっている。
【0158】
実施例9は、制御部材の板厚を、実施例8と同様に、4.5mmから9mmに増加し、床の短辺方向で、両端の制御部材2本を取り去っている例である。防音床材の支持材は、制御部材の長辺方向に対し長辺方向を直交させている。その結果、実施例9の床構造では、実施例8の床構造より更に決定周波数の63Hzで、重量床衝撃音が1dB改善され、LH −51となり、LH −50等級となっている。
【0159】
比較例1の床は、実施例1の床構造と比べ、制御部材がない。比較例1では、LH −56であるが、制御部材を用いる実施例1では、LH −53になる。比較例2の床は、実施例6の床構造から制御部材を取り去ったものである。比較例2では、LH −58であるが、制御部材を用いる実施例6では、LH −55に改善できる。
【0160】
比較例3の床は、実施例3の床構造において、制御部材を直接ALCの床基版にDACビスで固定するのではなく、ALCの床基版上の全面に、4.5mm厚×300mm幅×455mm長さの鉄板を敷き並べ、その上の15mm厚の捨貼材パーチクルボードで、鉄板を貫通させることなく間接的に固定する例である。その結果、比較例3では、LH −57となり、実施例3の床構造のLH −52と比べて改善量が低い。比較例3の床は、全面に鉄板を敷き並べたにもかかわらず、実施例3の床構造のように、制御部材を捨貼材と共に床基版にDACビスで固定した方が、重量床衝撃音に対してはるかに効果的であることが判る。
【0161】
上述するように、床基版に直接、若しくは捨貼板材と併用して、制御部材を用いることで、ALCの床基版、木質の床基版とも、床構造の重量床衝撃音が大きく改善される。
【0162】
また、かかる床構造は、防音床材との組合せや、用いる制御部材等の種類によって、更に重量床衝撃音を改善することができる。
【0163】
さらに、かかる床構造は、床周囲の壁との隙間を確保し、幅木により浮床構造で生じる空気の連通部をもたせることで、床衝撃による空気の圧縮を防止し、重量床衝撃音への悪影響を回壁でき、より一層安定した重量床衝撃音の低減性能を得ることができる。
【0164】
【発明の効果】
本発明(第1発明)によれば、複数の細長い制御部材がその貫通孔を貫通する固定部材によって床基版に強固に固定され、少なくとも2つの床基版が前記制御部材によって連結一体化されるので、制御部材のずれや動きが抑制された状態で床基版自体の振動の抑制が可能となり、床基版上の所定の防音床材が十分な防音性能を発揮し、重量床衝撃音が著しく抑制される。
【0165】
本発明(第2発明)によれば、浮床構造の下部空間が床周囲の壁と床下地材と床仕上材との間の隙間と連通しているので、衝撃を受けた下部空間の空気圧縮による床基版への悪影響を回避することができ、幅木の隙間防止部材が床の動きに追従し幅木と床との間に隙間を発生させないので、床の振動を直接壁に伝達することがなくなり、重量床衝撃音が著しく抑制される。
【0166】
本発明の床構造は、主として、低固定度建物の重量床衝撃音の改善床として有用であるが、RC造等の高固定度建物である中高層住宅に適用して、スラブ厚を減少しても重量床衝撃音を悪化させないというメリットが生じ、充分なコストメリットが期待できる。本発明は、各種床構造を用いる広範な産業分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 図1の床構造を床下地材及び床仕上材を含めて示す断面図である。
【図4】 本発明の他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図5】 本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図6】 本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図7】 本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図8】 本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図9】 本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図10】 本発明の更に他の例の床構造について制御部材等の配置を示す平面図である。
【図11】 本発明にかかる幅木を用いる1例の床構造の断面図である。
【図12】 図11の幅木の斜視図である。
【図13】 図11の幅木のA−A断面図である。
【図14】 図11の幅木のB−B断面図である。
【図15】 図11の幅木のC−C断面図である。
【図16】 比較例1の床について防音床材の配置を示す平面図である。
【図17】 比較例2の床について防音床材の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
1,11,21,31,41,51,61,71,81 床構造
2 床支持材
3,13,23,33,43,53,63,73 床基版
4,14,24,34,44,54,64,74 防音床材
5,85 床下地材
6,86 床下空間
7a,7b 衝撃吸収部材
8,78 支持部材
9,19,29,39,49,59,69,79 制御部材
53a,63a,73a 捨貼材
90 床仕上材
91 壁
92 隙間
93 幅木
94 連通孔
95 隙間防止材
Claims (6)
- 木造住宅、ツーバイフォー住宅、鉄骨住宅に代表される戸建住宅や低層集合住宅のような柔構造建物で、柱、梁、壁、床のような構造部材の固定度が相互に低い低固定度建物に用いる床構造であって、床支持材と、前記床支持材上に水平方向に互いに隣接して設ける複数の床基版と、前記各床基版上に水平方向に互いに離間して設ける複数の防音床材と、前記防音床材上の床下地材とを備え、前記床基版と前記床下地材との間に床下空間を有し、前記各防音床材が、衝撃吸収機構の異なる複数の衝撃吸収部材と細長い支持部材とを備え、前記防音床材が床基版の長辺と同程度迄の長さで細長いタイプの防音床材を形成し、前記衝撃吸収部材のうち、同じ衝撃吸収機構を有する衝撃吸収部材が複数個含まれ、前記各衝撃吸収部材の上面及び下面の少なくとも1方の面上に前記支持部材が設けられ、床構造が複数の細長い制御部材を備え、前記各制御部材が貫通孔を有し、前記各制御部材が、前記貫通孔を貫通する固定部材によって床基版上に固定され、前記各制御部材が少なくとも2つの前記床基版を連結一体化し、重量床衝撃音が抑制されることを特徴とする床構造。
- 前記制御部材と前記防音床材とが積層される、請求項1の床構造。
- 前記制御部材と前記防音床材との配置で、前記制御部材に跨って前記防音部材を交差させる、請求項1の床構造。
- 前記床構造が、壁と、床仕上材と、幅木とを備え、前記床仕上材が前記床下地上に設けられ、前記壁が前記床下地材及び前記床仕上材の周辺に設けられ、前記幅木が前記壁と前記床仕上材とに接し、前記壁と前記床下地材及び前記床仕上材との間に隙間が設けられ、前記幅木が連通孔及び隙間防止部材を備え、前記床下空間が前記隙間と前記連通孔とによって室内に連通し、前記隙間防止部材が前記床仕上材の動きに追従する、請求項1〜3の何れか1項の床構造。
- 前記床支持材と前記床基版との間に振動絶縁材を介在させる、請求項4の床構造。
- 木造住宅、ツーバイフォー住宅、鉄骨住宅に代表される戸建住宅や低層集合住宅のような柔構造建物で、柱、梁、壁、床のような構造部材の固定度が相互に低い低固定度建物に用いる幅木であって、床構造が、床支持材と、前記床支持材上に水平方向に互いに隣接して設ける複数の床基版と、前記各床基版上に水平方向に互いに離間して設ける複数の防音床材と、前記防音床材上の床下地材と、前記床下地上の床仕上材と、前記床下地材及び前記床仕上材の周辺の壁とを備え、前記床構造が前記床基版と前記床下地材との間に床下空間を有し、前記各防音床材が、衝撃吸収機構の異なる複数の衝撃吸収部材と細長い支持部材とを備え、前記防音床材が床基版の長辺と同程度迄の長さで細長いタイプの防音床材を形成し、前記衝撃吸収部材のうち、同じ衝撃吸収機構を有する衝撃吸収部材が複数個含まれ、前記各衝撃吸収部材の上面及び下面の少なくとも1方の面上に前記支持部材が設けられ、前記床構造が複数の細長い制御部材を備え、前記各制御部材が貫通孔を有し、前記各制御部材が、前記貫通孔を貫通する固定部材によって前記床基版上に固定され、前記各制御部材が少なくとも2つの前記床基版を連結一体化し、前記幅木が連通孔及び隙間防止部材を備え、前記幅木が前記壁と前記床仕上材とに接し、前記壁と前記床下地材及び前記床仕上材との間に隙間が設けられ、前記床下空間が前記隙間と前記連通孔とによって室内に連通し、前記隙間防止部材が前記床仕上材の動きに追従することを特徴とする幅木。
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