JP4120739B2 - 電子天びん - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子天びんに関し、更に詳しくは、ゼロトラッキング機能を備えた電子天びんに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子天びんにおいては、一般に、測定皿上の荷重が荷重感応部に伝達され、その荷重感応部による荷重検出データにスパン係数(感度係数)を乗じることによって測定皿上の質量値を求め、計量値として表示器に表示する。
【0003】
このような電子天びんにおいては、通常、荷重感応部や天びんメカニズムの温度変化によって、測定皿上の荷重の変化がないにも係わらず、計量表示値のゼロ点が徐々に移動する、いわゆるゼロドリフト現象が生じる。このようなゼロドリフトを解消するため、従来、荷重検出データの変化量があらかじめ設定された判断基準値(ゼロトラッキング幅)を越えない場合には、その変化はゼロドリフトに起因する者であると判断して、計量表示値のゼロ点を移動させないゼロトラッキング機能を備えたものが実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電子天びんにおいては、一般に、電源を投入した後、数分ないしは数時間が経過するまでの間は、天びん内部の温度変化が激しく、ゼロドリフト量が大きくなる傾向がある。従って、電源の投入直後からゼロドリフトを生じさせずに電子天びんを使用を可能とするためには、前記したゼロトラッキング機能における判断基準値を大きくする必要がある。
【0005】
ところが、このゼロトラッキング機能における判断基準値を大きくすると、測定皿上に天びんの読み取り限度付近の微量の試料を載せたとき、その試料の負荷による荷重検出データの変化がゼロドリフトによるものであると判断されて計量表示値が変化せず、微量の計量が困難になり、また、計量表示値に含まれる誤差もゼロトラッキング幅を大きくした分だけ大きくなるという問題もある。また、このような問題を解決するために、ゼロトラッキング機能の判断基準値を小さくすると、電源投入直後においてはゼロドリフトが生じて電子天びんの使用が困難となるという問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、電源投入直後からゼロドリトフを生じさせることなく電子天びんの使用を可能とすることと、計量誤差を少なくし、かつ、微量の計量を可能とすることとを両立させることのできる電子天びんの提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の電子天びんは、荷重感応部からの荷重検出データに基づいて計量表示値を決定するとともに、その荷重検出データの変化量があらじめ設定されている判断基準値を越えない範囲で変化した場合には、計量表示値のゼロ点を移動させないゼロトラッキング手段を備えた電子天びんにおいて、当該電子天びんの暖機の程度を判別する判別手段と、その判別結果に基づき、暖機が十分に行われている状態ほど、上記ゼロトラッキング手段における判断基準値を小さくなる向きに自動的に設定変更するゼロトラッキング幅変更手段を備えていることによって特徴づけられる。
【0008】
ここで、本発明において、電子天びんが暖機の程度を判別する判別手段の具体的な判別手法としては、電源投入時点からの経過時間の長短により判別する手法、あるいは、天びん内部の温度の変化速度により判別する手法等を好適に採用することができ、また、これら双方の手法を併用することもできる。
【0009】
また、本発明では、ゼロトラッキング幅変更手段により変更される判断基準値の数、換言すれば変更の段階としては、としては、2以上の任意とすることができる。
【0010】
本発明は、電子天びんのゼロドリフトが、電源投入直後においては大きいものの、十分な暖機状態に到達することによって、ゼロドリフト量は大幅に小さくなることを利用し、暖機の程度によってゼロトラッキング動作を機能させるための判断基準値を自動的に変更することで、所期の目的を達成しようとするものである。
【0011】
すなわち、電子天びんにおけるゼロドリフトは、天びんメカニズムの各部の温度分布にムラがあったり、あるいは例えば電磁力平衡型の荷重感応部ではその永久磁石の温度が定常状態に達していないときに大きくなるが、天びんメカニズムの各部の温度が一様で定常状態に達し、また、永久磁石の温度が定常状態に到達した状態では、ゼロドリフトは小さくなる。そこで、非暖機状態、つまり電源投入直後においてはゼロトラッキング動作を機能させるための判断基準値を大きく設定しておき、暖機の程度が十分になるほどその判断基準値を自動的に小さくすると、電源投入直後においてもゼロ点の移動なしに電子天びんの使用が可能となる一方、十分な暖機状態においては、微量の試料の負荷によっても計量表示値がそれに追随して変化し、また、計量誤差もその分小さくなって正確な計量が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
荷重感応部1は、例えば電磁力平衡型の感応部であって、測定皿1a上の荷重に応じた信号を出力する。この荷重感応部1からの出力信号は、A−D変換器2aによってデジタル化された後、荷重検出データとして演算部3に刻々と取り込まれる。演算部3は、CPU31、ROM32、RAM33および入出力インターフェース34等を主体として構成されており、入出力インターフェース34には計量値を表示するための表示器4が接続されている。また、荷重感応部1の近傍には温度センサ5が設けられており、この温度センサ5の出力についても、A−D変換器2bによってデジタル化された後、温度検出データとして刻々と演算部3に取り込まれる。
【0013】
演算部3では、ROM32に書き込まれた計量値決定プログラムに従い、荷重検出データを採取するごとにそのデータをRAM33内に格納するとともに、例えば最新の所定個数の荷重検出データを平均化し、その平均値にあらかじめ設定されているスパン係数を乗じ等の公知の演算によって測定皿1a上の質量値を求め、計量値として表示器5に表示する。
【0014】
この計量値決定プログラムは、ゼロトラッキング機能に係る公知のルーチンを含み、このゼロトラッキング機能に係るルーチンでは、例えば荷重検出データを採取するごとに算出される荷重検出データの平均値の変化量が、あらかじめ設定されている時間内において判断基準値を越えて変化した場合に限り計量表示値のゼロ点を変化させるが、荷重検出データの平均値の変化量が判断基準値を越えない場合にはゼロ点を変化させない。より具体的には、表示器5による計量表示値がゼロである状態において、荷重検出データの平均値が判断基準値以下において変化しても、表示器5はゼロの表示を継続する。
【0015】
そして、以上のゼロトラッキング機能に係るルーチンで用いられる判断基準値は、以下に示す判断基準値自動変更プログラムによって、電子天びんの暖機の程度に基づいて自動的に設定変更される。
【0016】
図2はROM32に書き込まれた測定用のプログラムの全体を示すフローチャートであル。なお、この図2においては、上記したゼロトラッキング機能を含む公知の計測値決定プログラムについては、その詳細手順を省略して示している。
【0017】
電子天びんの電源を投入すると、まず、ゼロトラッキング機能で用いる判断基準値が所定の値Aに設定される。そして、電源投入後の経過時間があらかじめ設定された時間t0 を越えたか否かが判別され、越えていない場合には、刻々と取り込まれる温度検出データの変化速度(単位時間当たりの変化量)が設定値より小さくなったか否かが判別され、小さくなっていない場合には、判断基準値を当初のAに維持して、ゼロトラッキング機能を含む計量値決定プログラムを実行して測定皿1a上の質量値を決定し、表示器5に表示する。この状態では、前記したように、荷重検出データを取り込むごとに算出される荷重検出データの平均値が判断基準値Aを越えて変化しない場合には、その平均値の変化にも係わらず表示器5による表示値をゼロに維持する。
【0018】
電源投入後の経過時間が時間t0 を越えたとき、あるいは、越えていなくても温度検出データの変化速度が設定値よりも小さくなったとき、判断基準値を当初のAからA/2に変更する。これにより、以後、計量値決定プログラムでは、荷重検出データの平均値がA/2を越えて変化しない場合においてのみ、表示器5による表示値をゼロに維持する。
【0019】
以上のプログラムが書き込まれた本発明の実施の形態によると、電源投入直後の非暖機状態においては、荷重検出データが比較的大きく変化しても計量表示値のゼロ点は変化せず、従って、電源投入直後からゼロ点の移動のない状態で電子天びんの使用が可能となる。
【0020】
一方、電源投入後に一定時間が経過するか、あるいは天びんの内部温度の変化が緩やかになった暖機状態においては、荷重検出データの小さな変化に対してもそれに追随して計量表示値が変化し、従って、測定皿1a上に天びんの読み取り限度に近い微量の試料を載せた場合でも、その試料の計量が可能となると同時に、ゼロトラッキングに起因する誤差分が小さくなる関係上、正確な計量が可能となる。
【0021】
なお、以上の実施の形態では、電子天びんの暖気の程度を判別するのに、電源投入後の経過時間と、天びん内部の温度の変化速度とをパラメータとして用いたが、これらのいずれか一方としてもよい。
【0022】
また、以上の実施の形態では、電子天びんの暖気の程度を、非暖機状態と暖機状態の2状態に分け、それぞれに対応してゼロトラッキング動作を機能させるための判断基準値を2段階に変化させたが、上記したパラメータを用いて暖機の程度を3状態以上に分け、それぞれに対応して上記判断基準値を3段階以上に変化させてもよく、その段階数を増やすほど、より天びんの状態にあったゼロトラッキングを行うことが可能となる。
【0023】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、電子天びんの暖機の程度に応じて、ゼロトラッキング動作を機能させるための判断基準値を自動的に変化させ、電源投入直後の非暖機状態ではその判断基準値を大きく、十分に暖機された状態では判断基準値を小さくするから、電源投入直後においても計量表示値のゼロ点が移動しない状態での計量が可能であり、かつ、十分な暖機状態においては天びんの読み取り限度付近の微量の試料の負荷に際しても計量表示値がそれに追随して変化してその計量を可能とするとともに、ゼロトラッキングに伴う誤差分を小さくして正確な計量が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1におけるROM32に書き込まれた測定用プログラムの内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 荷重感応部
1a 測定皿
2a,2b A−D変換器
3 演算部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 入出力インターフェース
4 温度センサ
5 表示器

Claims (1)

  1. 荷重感応部からの荷重検出データに基づいて計量表示値を決定するとともに、その荷重検出データの変化量があらじめ設定されている判断基準値を越えない範囲で変化した場合には、計量表示値のゼロ点を移動させないゼロトラッキング手段を備えた電子天びんにおいて、
    当該電子天びんの暖機の程度を判別する判別手段と、その判別結果に基づき、暖機が十分に行われている状態ほど、上記ゼロトラッキング手段における判断基準値を小さくなる向きに自動的に設定変更するゼロトラッキング幅変更手段を備えていることを特徴とする電子天びん。
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