JP4120149B2 - 感光性乳剤、熱現像感光材料、画像記録方法および画像形成方法 - Google Patents

感光性乳剤、熱現像感光材料、画像記録方法および画像形成方法 Download PDF

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  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性乳剤、熱現像感光材料、画像記録方法および画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から印刷製版や医療の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が、作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザ・イメージセッタやレーザ・イメージャにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる写真技術用途の光熱写真材料に関する技術が求められている。
【0003】
このための技術として熱現像処理法を用いて写真画像を形成する熱現像写真感光材料は、例えば米国特許第3,152,904号、同第3,457,075号及びD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)に開示されている。
【0004】
これらの熱現像写真感光材料は感光層中に設置された感光性ハロゲン化銀粒子を光センサーに対して有機銀塩を銀イオンの供給源とし、内蔵された還元剤によって通常80〜140℃で熱現像することで高い銀被覆力を有する現像銀により画像を形成させ、定着を行わないことが特徴である。
そのため、上述の高い被覆力を与える現像銀の色調は、黄色味や緑色味を帯びて画像観察者に不快な印象を与えやすい。この黄色味を帯びる原因は、現像銀サイズが小さく、青色光成分の散乱が増し、黄色味の強い光となるためであるが、上記問題を解決するために現像活性を向上させるなど現像銀サイズを大きくする手段はカブリの上昇を招きやすいため成功には至っていない。
【0005】
また、上記記載の熱現像感光材料においては、ハロゲン化銀や有機銀の凝集体が存在するために、局所的に正常な画像形成が行われにくくなるため、濃度の低下などの課題が残されていた。
一方、ハロゲン化銀や有機銀塩を分散機等を用いて不用意に高いエネルギーで分散や粉砕すると、カブリが上昇するという問題が発生するため、銀量を増加させることなく高い光感度、画像濃度が得られ、かつカブリも低下させる技術が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、分散粒子の粒子径が特定の範囲にある感光性乳剤、露光時の感度が高く、低カブリな熱現像感光材料、それを用いる画像記録方法及び画像形成方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の項目1〜8によって達成された。
1.少なくとも有機銀塩、感光性ハロゲン化銀塩を有し、含有される有機銀塩、感光性ハロゲン化銀塩の粒子体積の2〜35%が、粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする感光性乳剤。
2.銀1gに対してジルコニウムを0.01〜0.5mg含有することを特徴とする前記1に記載の感光性乳剤。
3.前記1または2に記載の感光性乳剤、還元剤及びバインダーを含有する感光性層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
4.感光性層中の総銀量が2.2g/m2以下であることを特徴とする前記3に記載の熱現像感光材料。
5.露光面と走査レーザ光のなす角度が実質的に垂直になることがない露光装置を用いて、前記3または4に記載の熱現像感光材料を露光することを特徴とする画像記録方法。
6.縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて露光することを特徴とする前記5に記載の画像記録方法。
7.前記3または4に記載の熱現像感光材料が溶媒を5〜1000mg/m2含有している状態において現像することを特徴とする画像形成方法。
8.保護層と加熱されたドラムを接触させて、前記3または4に記載の熱現像感光材料を現像することを特徴とする画像形成方法。
9.前記1または2に記載の感光性乳剤を製造するに当たり、セラミックビーズを充填したビーズミルを用いて、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀を分散することを特徴とする感光性乳剤の製造方法。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感光性乳剤について説明する。
本発明の感光性乳剤は、少なくとも有機銀塩、感光性ハロゲン化銀塩を有し、含有される全粒子体積の2〜35%の粒子が、粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にあることが特徴であるが、本発明においては、全粒子とは、有機銀塩粒子の1次粒子、感光性ハロゲン化銀粒子の1次粒子はもちろん、感光性乳剤の作製過程において、適宜、行われる分散工程等によって生じる有機銀塩及び感光性銀塩の二次粒子や、完全に分散されていないような有機銀塩粒子及び感光性ハロゲン化銀粒子、更には、前記の各々の粒子とバインダーを含む凝集体等も含まれる。
【0009】
全粒子体積に係る上記記載の粒子径は以下のようにして求められる。
まず、感光性乳剤をPVB(ポリビニルブチラール)の1%MEK(メチルエチルケトン)溶液にて500倍に希釈し3分間攪拌する。次いで、希釈された資料をレーザー回折/散乱式粒度分布計を用いて粒径を測定する。測定は試料を攪拌しながら行う事が好ましく、また、超音波処理などは凝集体がほぐれてしまうため行わなずに測定を行う。
【0010】
測定の際は、試料の吸光度が70〜90%の濃度になるよう濃度を調節することが好ましい。この際希釈はPVBの1%MEK(メチルエチルケトン)溶液にて行う。
また、粒子の相対屈折率は1.3、粒子径は体積として算出し、測定は少なくとも同一試料を5回測定する。
【0011】
得られた頻度分布グラフより、粒子径が0.1〜1.0μmである粒子体の全粒子体積に対する割合をもとめ、測定回数分の平均値を算出する。
レーザー回折/散乱式粒度分布計としては上記操作が可能なのであれば特に限定はされないが、一例としてHORIBA製LA-920型が挙げられる。
本発明の感光性乳剤を製造するに際しては、含有される有機銀塩粒子及び感光性ハロゲン化銀粒子等を必要に応じバインダーや界面活性剤などと共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザなどで分散粉砕(本分散)することが好ましい。上記予備分散にはアンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0012】
上記予備分散、本分散時に用いられるバインダー量としては、有機銀塩に対して0.1〜10重量%の範囲が好ましく、更に、分散時の温度コントロールすることが好ましく、具体的には、予備分散、本分散を通じて、45℃を越えないことが更に好ましい。
上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミル等の転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミルなどを用いることが可能であり、高圧ホモジナイザとしては壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプなど様々なタイプを用いることができるが、本発明で特に好ましく用いられるのはビーズミルである。
【0013】
上記記載のビーズミルの材質として好ましく用いられるのはセラミックスビーズであり、例えば、Al2O3、BaTiO3、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO3、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3Beo−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、SiO2−nH2O、窒化珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。
【0014】
本発明においては、分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア(以下、ジルコニアと略す)、ジルコニア強化アルミナが特に好ましく用いられる。
本発明の感光性乳剤を製造する際に用いられる装置類において、含有される有機銀粒子や感光性ハロゲン化銀粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス類および/またはダイヤモンドを用いることが好ましく、有機銀塩粒子や感光性ハロゲン化銀の分散性向上の観点から、特にジルコニアを用いることが好ましい。
【0015】
分散時にジルコニアを使用する場合、本発明の感光性乳剤は、該乳剤中に含有される銀1gあたり0.01mg〜0.5mgのZr(金属としてのジルコニウム)を含有することが好ましく、特に好ましくは0.01mg〜0.3mgのZrを含有する場合である。上記分散をおこなう際の、バインダー濃度、予備分散方法、分散機運転条件、分散回数などを最適化することは、分散性の良好な本発明の感光性乳剤を得る方法として非常に好ましい。
【0016】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子は光センサーとして機能する。
本発明においては、画像形成後の白濁を低く抑えるため、及び良好な画質を得るためには、感光性ハロゲン化銀粒子の1次粒子の平均粒子サイズが小さい方が好ましく、1次粒子の平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に0.02μm〜0.08μmが好ましい。ここで平均サイズとは、電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を指す。但し、本発明に係る1次粒子の粒子サイズとは、感光性ハロゲン化銀粒子同士の凝集等から生成された二次粒子や感光性ハロゲン化銀粒子と有機銀塩、バインダー等から形成される凝集体等は含まれない。また感光性ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下となる粒子である。
【0017】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特に80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)により求めることができる。
【0018】
またもう一つの好ましいハロゲン化銀の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとして垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくはアスペクト比が3以上50以下である。また粒径は0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これらは米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載されており、容易に目的の平板状粒子を得ることができる。
【0019】
ハロゲン組成としては特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等のいずれを用いてもよい。
【0020】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀には、周期表の6族から11族に属する金属イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
これらの金属イオンは金属錯体または金属錯体イオンの形でハロゲン化銀に導入できる。これらの金属錯体または金属錯体イオンとしては、下記一般式で表される6配位金属錯体が好ましい。
【0021】
一般式 〔ML6〕m
式中、Mは周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子、mは0、−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0022】
Mとして特に好ましい具体例は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)である。
以下に本発明に用いられる遷移金属錯体イオンの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
1:〔RhCl6〕3-
2:〔RuCl6〕3-
3:〔ReCl6〕3-
4:〔RuBr6〕3-
5:〔OsCl6〕3-
6:〔IrCl6〕4-
7:〔Ru(NO)Cl5〕2-
8:〔RuBr4(H2O)〕2-
9:〔Ru(NO)(H2O)Cl4〕-
10:〔RhCl5(H2O)〕2-
11:〔Re(NO)Cl5〕2-
12:〔Re(NO)(CN)5〕2-
13:〔Re(NO)Cl(CN)4〕2-
14:〔Rh(NO)2Cl4〕-
15:〔Rh(NO)(H2O)Cl4〕-
16:〔Ru(NO)(CN)5〕2-
17:〔Fe(CN)6〕3-
18:〔Rh(NS)Cl5〕2-
19:〔Os(NO)Cl5〕2-
20:〔Cr(NO)Cl5〕2-
21:〔Re(NO)Cl5〕-
22:〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-
23:〔Ru(NS)Cl5〕2-
24:〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-
25:〔Os(NS)Cl(SCN)4〕2-
26:〔Ir(NO)Cl5〕2-
27:〔Ir(NS)Cl5〕2-
これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属イオン、金属錯体または金属錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。
【0023】
これらの金属を提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。
【0024】
添加に際しては、数回に亘って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。
【0025】
これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。
【0026】
粒子表面に添加する時には、粒子形成直後または物理熟成時途中もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
本発明においては、感光性ハロゲン化銀粒子は粒子形成後に脱塩してもしなくてもよいが、脱塩を施す場合、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができる。
【0027】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることができる。また金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法が適用出来る。
硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7−128768号等に記載の化合物を使用することができる。テルル増感剤としては例えばジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)テルリド類、ビス(カルバモイル)テルリド類、ジアシルテルリド類、ビス(オキシカルボニル)ジテルリド類、ビス(カルバモイル)ジテルリド類、P=Te結合を有する化合物、テルロカルボン酸塩類、Te-オルガニルテルロカルボン酸エステル類、ジ(ポリ)テルリド類、テルリド類、テルロール類、テルロアセタール類、テルロスルホナート類、P−Te結合を有する化合物、含Teヘテロ環類、テルロカルボニル化合物、無機テルル化合物、コロイド状テルルなどを用いることができる。
【0028】
貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、あるいは米国特許第2,448,060号、英国特許第618,061号などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。
還元増感法に用いられる具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上またはpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0029】
本発明に係る有機銀塩は還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に長鎖(10〜30、好ましくは15〜25の炭素原子数)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環が好ましい。配位子が、4.0〜10.0の銀イオンに対する総安定定数を有する有機または無機の銀塩錯体も有用である。
【0030】
好適な銀塩の例は、Research Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものがある:有機酸の塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸,ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸))とのポリマー反応生成物の銀錯体、チオン類の銀塩または錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−(チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン)、イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体また塩は;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプタン誘導体の銀塩)。好ましい銀源はベヘン酸銀、アラキジン酸銀および/またはステアリン酸銀である。
【0031】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、等が好ましく用いられる。また、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法を用いることも可能である。
具体的には,有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、前記ソープに硝酸銀を添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよいが、上記一連の反応工程は、適当な攪拌部材を用いて反応槽内が均一になるように十分に攪拌しながら行う必要がある。
【0032】
本発明において有機銀塩は脱水乾燥されることが好ましい。脱水にはヌッチェや遠心脱水などが、乾燥には温風循環乾燥機や気流式乾燥機が好ましく使用される。
本発明においては有機銀塩は1次粒子の平均粒径が1μm以下でありかつ単分散であることが好ましい。有機銀塩の1次粒子の平均粒径とは、有機銀塩の粒子が例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、有機銀塩粒子の体積と同等な立方体を考えたときの直径をいう。但し、本発明においては、有機銀塩粒子同士の凝集等から生成された二次粒子や有機銀塩粒子と感光性ハロゲン化銀、バインダー等から形成される凝集体等は1次粒子の測定対象としては含まれない。
【0033】
本発明においては、有機銀塩の1次粒子の平均粒径は好ましくは0.01μm〜0.8μm、特に0.05μm〜0.5μmが好ましい。また単分散とは、ハロゲン化銀の場合と同義であり、好ましくは単分散度が1〜30である。本発明においては、有機銀塩の1次粒子の平均粒径が1μm以下の単分散粒子であることがより好ましく、この範囲にすることで濃度の高い画像が得られる。さらに有機銀塩は平板状粒子が全有機銀の60%以上有することが好ましい。本発明において、平板状粒子とは平均粒径と厚さの比、いわゆる下記式で表されるアスペクト比(ARと略す)が3以上のものをいう。
【0034】
AR=平均粒径(μm)/厚さ(μm)
上記記載の形状を有する有機銀塩粒子を得る方法としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態および/または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態など各種条件の最適化が有効である。
本発明に係る熱現像感光材料の失透を防ぐためには、感光性ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は銀量に換算して1m2当たり、2.2g/m2以下であることが好ましいが、更に好ましくは、0.5〜2.2g/m2である。
【0035】
本発明の熱現像写真感光材料には還元剤を内蔵させることが好ましい。好適な還元剤の例は、米国特許第3,770,448号、同第3,773,512号、同第3,593,863号、及びResearch Disclosure第17029及び29963に記載されており、次のものがある。アミノヒドロキシシクロアルケノン化合物(例えば、2−ヒドロキシピペリジノ−2−シクロヘキセノン);還元剤の前駆体としてアミノリダクトン類(reductones)エステル(例えば、ピペリジノヘキソースリダクトンモノアセテート);N−ヒドロキシ尿素誘導体(例えば、N−p−メチルフェニル−N−ヒドロキシ尿素);アルデヒドまたはケトンのヒドラゾン類(例えば、アントラセンアルデヒドフェニルヒドラゾン);ホスファーアミドフェノール類;ホスファーアミドアニリン類;ポリヒドロキシベンゼン類(例えば、ヒドロキノン、t−ブチル−ヒドロキノン、イソプロピルヒドロキノン及び(2,5−ジヒドロキシ−フェニル)メチルスルホン);スルフヒドロキサム酸類(例えば、ベンゼンスルフヒドロキサム酸);スルホンアミドアニリン類(例えば、4−(N−メタンスルホンアミド)アニリン);2−テトラゾリルチオヒドロキノン類(例えば、2−メチル−5−(1−フェニル−5−テトラゾリルチオ)ヒドロキノン);テトラヒドロキノキサリン類(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン);アミドオキシン類;アジン類(例えば、脂肪族カルボン酸アリールヒドラザイド類とアスコルビン酸の組み合わせ);ポリヒドロキシベンゼンとヒドロキシルアミンの組み合わせ、リダクトン及び/またはヒドラジン;ヒドロキサン酸類;アジン類とスルホンアミドフェノール類の組み合わせ;α−シアノフェニル酢酸誘導体;ビス−β−ナフトールと1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体の組み合わせ;5−ピラゾロン類;スルホンアミドフェノール還元剤;2−フェニルインダン−1,3−ジオン等;クロマン;1,4−ジヒドロピリジン類(例えば、2,6−ジメトキシ−3,5−ジカルボエトキシ−1,4−ジヒドロピリジン);ビスフェノール類(例えば、ビス(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、ビス(6−ヒドロキシ−m−トリ)メシトール(mesitol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,5−エチリデン−ビス(2−t−ブチル−6−メチル)フェノール)、紫外線感応性アスコルビン酸誘導体及び3−ピラゾリドン類。中でも特に好ましい還元剤はヒンダードフェノール類である。
【0036】
ヒンダードフェノール類としては下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
【化1】
Figure 0004120149
【0038】
式中、Rは水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基(例えば、ブチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基等)を表し、R′及びR″は、各々、炭素原子数1〜5のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基等)を表す。
一般式(A)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、本発明は、これらに限定されない。
【0039】
【化2】
Figure 0004120149
【0040】
【化3】
Figure 0004120149
【0041】
前記一般式(A)で表される化合物を始めとする還元剤の使用量は好ましくは銀1モル当り1×10-2〜10モル、特に1×10-2〜1.5モルである。
本発明の熱現像感光材料中にはかぶり防止剤が含まれて良い。有効なかぶり防止剤として知られているものは水銀イオンであり、感光材料中にかぶり防止剤として水銀化合物を使用することについては、例えば米国特許第3,589,903号に開示されている。しかし、水銀化合物は環境的に好ましくないので、例えば米国特許第4,546,075号及び同第4,452,885号及び特開昭59−57234号に開示されている様な非水銀かぶり防止剤が本発明においては好ましく用いられる。
【0042】
特に好ましい非水銀かぶり防止剤としては、米国特許第3,874,946号及び同第4,756,999号に開示されているような化合物、−C(X1)(X2)(X3)(ここでX1及びX2はハロゲン原子を表し、X3は水素またはハロゲン原子を表す)で表される置換基を1以上備えたヘテロ環状化合物が挙げられる。
【0043】
また、その他に好適なかぶり防止剤としては、特開平9−288328号の段落番号〔0030〕〜〔0036〕に記載されている化合物、特開平9−90550号の段落番号〔0062〕〜〔0063〕に記載されている化合物、米国特許第5,028,523号及び欧州特許第600,587号、同第605,981号、同第631,176号等に開示されている化合物等が使用できる。
【0044】
本発明の熱現像感光材料には、現像後の銀色調を改良する目的で色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はResearch Disclosure第17029号に開示されており、次のものがある。
イミド類(例えば、フタルイミド);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類、及びキナゾリノン(例えば、スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン);ナフタールイミド類(例えば、N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド);コバルト錯体(例えば、コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート)、メルカプタン類(例えば、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(例えば、N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム(isothiuronium)誘導体及びある種の光漂白剤の組み合わせ(例えば、N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)、及び2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組み合わせ);メロシアニン染料(例えば、3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(例えば、4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組み合わせ(例えば、6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組み合わせ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(例えば、フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも1つの化合物との組み合わせ;キナゾリンジオン類、ベンゾオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンゾオキサジン−2,4−ジオン類(例えば、1,3−ベンゾオキサジン−2,4−ジオン);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(例えば、2,4−ジヒドロキシピリミジン)、及びテトラアザペンタレン誘導体(例えば、3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン)。好ましい色調剤としてはフタラゾンまたはフタラジンである。
【0045】
本発明の熱現像感光材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許第4,639,414号、同第4,740,455号、同第4,741,966号、同第4,751,175号、同第4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0046】
本発明に使用される有用な増感色素は例えばResearch Disclosure Item17643IV−A項(1978年12月p.23)、同Item18431(1979年8月p.437)等に記載もしくは引用された文献に記載されている。特に各種スキャナー光源の分光特性に適した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えば特開平9−34078号、同9−54409号、同9−80679号記載の化合物が好ましく用いられる。
【0047】
本発明には現像を抑制あるいは促進させ現像を制御するため、分光増感効率を向上させるため、現像前後の保存性を向上させるためなどにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を含有させることができる。
本発明にメルカプト化合物を使用する場合、いかなる構造のものでも良いが、Ar−SM、Ar−S−S−Arで表されるものが好ましい。式中、Mは水素原子またはアルカリ金属原子であり、Arは1個以上の窒素、イオウ、酸素、セレンまたはテルル原子を有する芳香環または縮合芳香環を表す。
【0048】
該芳香環としては、芳香族炭素環及び複素芳香族環が用いられるが、本発明においては複素芳香族環が好ましく用いられる。複素芳香族環としては、例えばベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾセレナゾール、ベンゾテルラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピリジン、プリン、キノリンまたはキナゾリノンである。この複素芳香族環は、例えば、ハロゲン原子(例えば、BrおよびCl等)、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、アルキル基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1?4個の炭素原子を有するもの)およびアルコキシ基(例えば、1個以上の炭素原子、好ましくは1?4個の炭素原子を有するもの)からなる置換基群から選択されるものを有してもよい。メルカプト置換複素芳香族化合物としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾチアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトキノリン、8−メルカプトプリン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−ピリジンチオール、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−メルカプト−4−フェニルオキサゾールなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
本発明においては、感光性層側にマット剤を含有することが好ましく、熱現像後の画像の傷つき防止のためには感光材料の表面にマット剤を配することが好ましく、そのマット剤を乳剤層側の全バインダーに対し、重量比で0.5〜30%含有することが好ましい。
本発明に用いられるマット剤の材質は有機物及び無機物のいずれでもよい。
【0050】
例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩等をマット剤として用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号や英国特許第981,198号等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号等に記載のポリスチレン或いはポリメタクリレート、米国特許第3,079,257号等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号等に記載されたポリカーボネートの様な有機マット剤を用いることができる。
【0051】
マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、球形が好ましく用いられる。マット剤の大きさはマット剤の体積を球形に換算したときの直径で表される。本発明においてマット剤の粒径とはこの球形換算した直径のことを示すものとする。
本発明に用いられるマット剤は、平均粒径が0.5μm〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは1.0μm〜8.0μmである。又、粒子サイズ分布の変動係数としては、50%以下であることが好ましく、更に好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下となるマット剤である。
【0052】
ここで、粒子サイズ分布の変動係数は、下記の式で表される値である。
(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明に用いられるマット剤は任意の構成層中に含むことができるが、本発明の目的を達成するためには好ましくは感光性層以外の構成層であり、更に好ましくは支持体から見て最も外側の層である。
【0053】
本発明に用いられるマット剤の添加方法は、予め塗布液中に分散させて塗布する方法であってもよいし、塗布液を塗布した後、乾燥が終了する以前にマット剤を噴霧する方法を用いてもよい。また複数の種類のマット剤を添加する場合は、両方の方法を併用してもよい。
本発明においては帯電性を改良するために金属酸化物および/または導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光性層と下引の間の層などに含まれる。
【0054】
本発明においては米国特許第5,244,773号カラム14〜20に記載された導電性化合物が好ましく用いられる。
各種の添加剤は感光性層、非感光性層、またはその他の構成層のいずれに添加しても良い。本発明の熱現像感光材料には上述した以外に例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はResearch Disclosure Item17029(1978年6月、p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0055】
本発明の熱現像感光材料に好適なバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。親水性でも非親水性でもよい。また感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、感光性層の外側に非感光性層を有することができる。これらの非感光性層に用いられるバインダーは感光性層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。
【0056】
本発明においては、熱現像の速度を速めるために感光性層のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは1.7〜8g/m2である。
本発明で用いられる支持体は現像処理後の画像の変形を防ぐためにプラスチックフイルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0057】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチック(以下SPSと略す)の支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
また熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前記のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とはこれらの支持体を製膜後、感光性層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度で、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することがよい。但し、支持体の融点を超えた温度で加熱しては本発明の効果は得られない。
【0058】
次に用いられるプラスチックについて説明する。
PETはポリエステルの成分が全てポリエチレンテレフタレートからなるものであるが、ポリエチレンテレフタレート以外に、酸成分としてテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、イソフタル酸、ブチレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸等と、グリコール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等との変性ポリエステル成分が全ポリエステルの10モル%以下含まれたポリエステルであってもよい。
【0059】
SPSは通常のポリスチレン(アタクチックポリスチレン)と異なり立体的に規則性を有したポリスチレンである。SPSの規則的な立体規則性構造部分をラセモ連鎖といい、2連鎖、3連鎖、5連鎖、あるいはそれ以上と規則的な部分がより多くあることが好ましく、本発明において、ラセモ連鎖は、2連鎖で85%以上、3連鎖で75%以上、5連鎖で50%以上、それ以上の連鎖で30%以上であることが好ましい。SPSの重合は特開平3−131843号明細書記載の方法に準じて行うことが出来る。
【0060】
本発明に用いられる支持体の製膜方法及び下引製造方法は公知の方法を用いることができるが、好ましくは、特開平9−50094号の段落〔0030〕〜〔0070〕に記載された方法を用いることである。
本発明の熱現像感光材料は、熱現像処理にて写真画像を形成するもので、還元可能な銀源(有機銀塩)、感光性ハロゲン化銀、還元剤及び必要に応じて銀の色調を抑制する色調剤を通常(有機)バインダーマトリックス中に分散した状態で含有している熱現像感光材料であることが好ましい。本発明の熱現像感光材料は常温で安定であるが、露光後高温(例えば、80℃〜140℃)に加熱することで現像される。加熱することで有機銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光でハロゲン化銀に発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の有機銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる。この反応過程は、外部から水等の処理液を供給することなしで進行する。
【0061】
本発明の熱現像感光材料は支持体上に少なくとも一層の感光性層を有している。支持体の上に感光性層のみを形成しても良いが、感光性層の上に少なくとも1層の非感光性層を形成することが好ましい。感光性層に通過する光の量または波長分布を制御するために感光性層と同じ側にフィルター染料層および/または反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層を形成しても良いし、感光性層に染料または顔料を含ませても良い。用いられる染料としては所望の波長範囲で目的の吸収を有するものであればいかなる化合物でも良いが、例えば特開昭59−6481号、特開昭59−182436号、米国特許第4,271,263号、米国特許第4,594,312号、欧州特許公開533,008号、欧州特許公開652,473号、特開平2−216140号、特開平4−348339号、特開平7−191432号、特開平7−301890号などの記載の化合物が好ましく用いられる。
【0062】
またこれらの非感光性層には前記のバインダーやマット剤を含有することが好ましく、さらにポリシロキサン化合物やワックスや流動パラフィンのようなスベリ剤を含有してもよい。
感光性層は複数層にしても良く、また階調の調節のため感度を高感層/低感層または低感層/高感層にしても良い。
【0063】
熱現像感光材料の詳細は前述のとおり例えば米国特許第3,152,904号、同第3,457,075号、及びD.モーガン(Morgan)による「ドライシルバー写真材料(Dry Silver Photographic Material)」やD.モーガン(Morgan)とB.シェリー(Shely)による「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」(イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、スタージ(Sturge)、V.ウォールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第2頁、1969年)等に開示されている。その中でも本発明においては、感光材料を80?140℃で熱現像することで画像を形成させ、定着を行わないことが特徴である。そのため、未露光部に残ったハロゲン化銀や有機銀塩は除去されずにそのまま感光材料中に残る。
【0064】
本発明においては、熱現像処理した後の、400nmにおける支持体を含んだ感光材料の光学透過濃度が0.2以下であることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.2である。
上記熱現像処理時において、本発明の熱現像写真感光材料中に含有される溶剤の量は合計量で5〜1000mg/m2が好ましく、更に好ましくは、10〜300mg/m2である。
【0065】
当該含有量が上記範囲において、高感度でありながら、カブリ濃度が低い感熱材料にすることができる。
本発明の熱現像感光材料中に含有される溶媒としては、例えば、ケトン類としてアセトン、イソフォロン、エチルアミルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。アルコール類としてメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール類としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。エーテルアルコール類としてエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。エーテル類としてエチルエーテル、ジオキサン、イソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0066】
エステル類として酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソプロピル等が挙げられる。炭化水素類としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩化物類として塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0067】
アミン類としてモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。その他として水、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ニトロメタン、ピリジン、トルイジン、テトラヒドロフラン、酢酸等が挙げられるが、但し、これらに限定されない。
また、これらの溶剤は、単独、または、数種類組合わせて使用できる。
【0068】
なお、感光材料中の上記溶剤の含有量は塗布工程後の乾燥工程等における温度条件等の条件変化によって調整できる。また、当該溶剤の含有量は、下記に示すようなガスクロマトグラフィーを用いた方法によって測定できる。即ち、フイルム面積として46.3cm2を切り出し、これを5mm程度に細かく刻んで専用バイアル瓶に収納しセプタムとアルミキャップで密封した後、ヘッドスペースサンプラーにセットする。ヘッドスペースサンプラーと接続したガスクロマトグラフィー(GC)を使用して測定を行う。測定対象溶媒はMEK、メタノールとし、左記溶媒の各々ブタノールにて稀釈された一定量を専用バイアル瓶に収納した後、上記と同様に測定して得られたクロマトグラムのピーク面積を用いて作製した検量線を使用してフイルム中の溶媒量を得ることができる。装置としてはヘッドスペースサンプラーとしてはHP7694型、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)、GCとしてはヒューレット・パッカード社製5971型等を用いることができる。
本発明において、露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、感光材料の露光面と走査レーザ光のなす角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いることが好ましい。
【0069】
ここで、「実質的に垂直になることがない」とはレーザ走査中に最も垂直に近い角度として、露光面を基準として、好ましくは55度以上88度以下、より好ましくは60度以上86度以下、更に好ましくは65度以上84度以下、最も好ましくは70度以上82度以下であることをいう。
レーザ光が、感光材料に走査されるときの感光材料露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより干渉縞様のムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減じることが出来る。
【0070】
また、本発明に用いられる露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことが好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様のムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、などの方法がよい。なお、縦マルチとは、露光波長が単一でないことを意味し、通常露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常60nm程度である。
【0071】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
(支持体の作製)
濃度0.170(コニカ(株)製デンシトメータPDA-65)に青色着色した、厚み175μmのPETフィルムの両面に8W/m2・分のコロナ放電処理を施した。
【0072】
(感光性ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中に平均分子量10万のオセインゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(98/2)のモル比の臭化カリウムと沃化カリウム(上記硝酸銀と等モル量)を含む水溶液370ml及び塩化イリジウムを銀1モル当たり1×10-4モルを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で10分間かけて添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.3gを添加しNaOHでpHを5に調整して平均粒子サイズ0.06μm、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率87%の立方体沃臭化銀粒子を得た。この乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させ脱塩処理後フェノキシエタノール0.1gを加え、pH5.9、pAg7.5に調整して、感光性ハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0073】
(粉末有機銀塩Aの調製)
4720mlの純水にベヘン酸111.4g、アラキジン酸83.8g、ステアリン酸54.9gを80℃で溶解した。次に1.5Mの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸ナトリウム溶液を得た。上記の有機酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、上記感光性ハロゲン化銀乳剤A(銀0.038モルを含む)と純水450mlを添加し5分間攪拌した。
【0074】
次に、1Mの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌し有機銀塩分散物を得た。その後、得られた有機銀塩分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させて有機銀塩分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、水分率が60〜70%の範囲になるよう遠心脱水を行った。
【0075】
40℃にて重量減がなくなるまで温風循環乾燥機にて乾燥を行い、粉末有機銀塩Aを得た。
(粉末有機銀塩Bの調製)
気流式乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)を用いて、乾燥機入口熱風温度75℃の運転条件により含水率が0.1%になるまで乾燥して粉末有機銀塩Bを得た。有機銀塩組成物の含水率測定には赤外線水分計を使用した。
【0076】
(予備分散液Aの調製)
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社 Butvar B-79)14.57gをMEK(メチルエチルケトン)1457gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら粉末有機銀塩A500gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液Aを調製した。
【0077】
(予備分散液Bの調製)
粉末有機銀塩Bを使用する他は予備分散液Aを調製するのと全く同様にして予備分散液Bを調製した。
(感光性乳剤1の調製)
予備分散液Aをポンプを用いてミル内滞留時間が2分間となるような流量にて、0.5mmジルコニアビーズ(東レ製)を80%充填したメディア型分散機(VMA−GETZMANN社製 DISPERMAT SL−C12EX型)に供給し、ミル周速13m/秒にて分散を行なうことにより感光性乳剤1を調製した。
【0078】
(感光性乳剤2の調製)
ミル内滞留時間が5分間とする以外は感光性乳剤1を調製したのと全く同様にして感光性乳剤2を調製した。
(感光性乳剤3の調製)
エスエムテー社製GM−2型圧力式ホモジナイザーを用いて、予備分散液Aを2パス分散することにより感光性乳剤3を調製した。尚、この際、1パス時の処理圧は27.46MPaであり、2パス時の処理圧は54.92MPaとした。
【0079】
(感光性乳剤4の調製)
予備分散液Bを使用する他は感光性乳剤1を調製するのと全く同様にして感光性乳剤4を調製した。
(感光性乳剤5の調製)
予備分散液Bを使用する他は感光性乳剤3を調製するのと全く同様にして感光性乳剤5を調製した。
【0080】
《感光性乳剤に含有される粒子の粒径評価》
感光性乳剤1〜5について、各々PVB(ポリビニルブチラール)の1%MEK溶液にて500倍に希釈し3分間攪拌した。レーザー回折/散乱式粒度分布計(HORIBA製 LA−920型バッチセル方式)を用いて、0.1〜1.0μmの範囲にある分散粒子の粒径を測定し、且つ、全粒子における割合(体積%で算出)を算出した。測定は1試料につき5回おこなった。得られた結果を表1に示す。
【0081】
《赤外増感色素液の調製》
350mgの赤外増感色素1、13.96gの2−クロロ−安息香酸および5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール2.14gをメタノール73.4mlに暗所にて溶解し赤外増感色素液を調製した。
《安定剤液の調製》
1.0gの安定剤1、0.5gの酢酸カリウムをメタノール8.5gに溶解し安定剤液を調製した。
【0082】
《現像剤液の調製》
17.74gの還元剤A−3をMEKに溶解し、100mlに仕上げ、現像剤液とした。
《かぶり防止剤液の調製》
5.81gのかぶり防止剤2をMEKに溶解し、100mlに仕上げ、かぶり防止剤液とした。
【0083】
《感光層塗布液の調製》
前記感光性乳剤1(50g)およびMEK15.11gを攪拌しながら21℃に保温し、かぶり防止剤1(10%メタノール溶液)390μlを加え、1時間攪拌した。さらに臭化カルシウム(10%メタノール溶液)889μlを添加して30分攪拌した。次に、赤外増感色素液1.416mlおよび安定剤液667μlを添加して1時間攪拌した後に温度を13℃まで降温してさらに30分攪拌した。
【0084】
13℃に保温したまま、ポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)13.31gを添加して30分攪拌してから、さらに攪拌を続けながら以下の添加物を15分間隔で添加した。
フタラジン 305mg
テトラクロロフタル酸 102mg
4−メチルフタル酸 137mg
赤外染料1 37mg
上記を添加し15分攪拌した後、
かぶり防止剤液 5.47ml
現像剤液 14.06ml
DesmodurN3300(モーベイ社、脂肪族イソシアネート)10%
MEK溶液 1.60ml
を順次添加し攪拌することにより感光層塗布液1を得た。
【0085】
感光性乳剤2〜5についても同様な調製を行い感光層塗布液2〜5とした。
【0086】
【化4】
Figure 0004120149
【0087】
【化5】
Figure 0004120149
【0088】
《バック面塗布液の調製》
メチルエチルケトン830gに攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社、CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。
【0089】
溶解した液に、0.30gの赤外染料1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解した4.5gのF系活性剤(旭硝子社、サーフロンKH40)と2.3gのF系活性剤(大日本インク社、メガファッグF120K)を添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、メチルエチルケトンに1wt%の濃度でディゾルバ型ホモジナイザにて分散したシリカ(W.R.Grace社、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌しバック面の塗布液を調製した。
【0090】
次いで、支持体上に以下の各層を順次形成し、感光材料1〜7(感光層塗布液1?7を各々、使用した。)を作製した。尚、乾燥は各々75℃、5分間で行った。
《バック面の塗布》
上記記載のバック面塗布液を、乾燥膜厚が3.5μmになるように押し出しコーターにて塗布乾燥を行った。乾燥温度100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0091】
《感光層面側塗布》
感光層 :前記の組成の液を塗布銀量2g/m2になる様に塗布した。
表面保護層 :以下の組成の液を感光層の上に塗布した。
MEK(メチルエチルケトン) 17ml/m2
酢酸セルロース 2.3g/m2
マット剤:単分散度10%平均粒子サイズ4μm単分散シリカ70mg/m2
《Zr(ジルコニウム)含有量の評価》
フィルム10×10cmを切り出し、感光層をMEK(メチルエチルケトン)で剥離した。プロラボ社製マイクロダイジェストA300型マイクロウェーブ式湿式分解装置にて硫硝酸分解し、VGエレメンタル社製PQ−Ω型ICP−MS(誘導結合型プラズマ質量分析装置)を用い、検量線法により分析を行った。
【0092】
得られた結果を表1に示す。
《フィルム中の溶媒含有量の測定》
フィルム面積として46.3cm2を切り出し、これを5mm程度に細かく刻んで専用バイアル瓶に収納しセプタムとアルミキャップで密閉した後、ヒューレット・パッカード社製ヘッドスペースサンプラーHP7694型にセットした。
【0093】
ヘッドスペースサンプラーと接続したガスクロマトグラフィー(GC)は検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を装着した、ヒューレット・パッカード社製5971型を使用した。主な測定条件は下記のとおりである。
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度:150℃
カラム:J&W社製 DB−624
昇温:45℃、3分保持→100℃(8℃/分)
上記の測定条件を用いてガスクロマトグラムを得た。測定対象溶媒はMEK、メタノールとし、左記溶媒の各々ブタノールにて希釈された一定量を専用バイアル瓶に収納した後、上記と同様に測定して得られたクロマトグラムのピーク面積を用いて作製した検量線を使用してフィルム中の溶媒含有量を得た。
【0094】
《露光及び現像処理》
上記のように作製した感光材料の乳剤面側から、高周波重畳にて波長800nm〜820nmの縦マルチモード化された半導体レーザを露光源とした露光機によりレーザ走査による露光を与えた。この際に、感光材料の露光面と露光レーザ光の角度を75度として画像を形成した。(なお、当該角度を90度とした場合に比べムラが少なく、かつ予想外に鮮鋭性等が良好な画像が得られた。)
その後、ヒートドラムを有する自動現像機を用いて感光材料の保護層とドラム表面が接触するようにして、最高濃度部分を50μJ/cm2になるような露光量で、123℃で16.5秒、熱現像処理した。その際、露光及び現像は23℃、50%RHに調湿した部屋で行った。得られた画像の評価を濃度計により行った。測定の結果は、感度(未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の比の逆数)およびカブリで評価し、感光材料1の感度を100とする相対値で表1に示した。
【0095】
【表1】
Figure 0004120149
【0096】
表1から、本発明の感光性乳剤を用いて調製した熱現像感光材料試料は十分な感度があり、カブリが低い良好な感材であることが明らかである。
【0097】
【発明の効果】
本発明により、分散粒子の粒子径が特定の範囲にある感光性乳剤、露光時の感度が高く、低カブリな熱現像感光材料、それを用いる画像記録方法及び画像形成方法を提供することが出来た。

Claims (9)

  1. 少なくとも有機銀塩、感光性ハロゲン化銀塩を有し、含有される有機銀塩、感光性ハロゲン化銀塩の粒子体積の2〜35%が、粒子径が0.1〜1.0μmの範囲にあることを特徴とする感光性乳剤。
  2. 銀1gに対してジルコニウムを0.01〜0.5mg含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性乳剤。
  3. 請求項1または2に記載の感光性乳剤、還元剤及びバインダーを含有する感光性層を有することを特徴とする熱現像感光材料。
  4. 感光性層中の総銀量が2.2g/m2以下であることを特徴とする請求項3に記載の熱現像感光材料。
  5. 露光面と走査レーザ光の露光面への入射の角度が実質的に垂直になることがない露光装置を用いて、請求項3または4に記載の熱現像感光材料を露光することを特徴とする画像記録方法。
  6. 縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて露光することを特徴とする請求項5に記載の画像記録方法。
  7. 請求項3または4に記載の熱現像感光材料が溶媒を5〜1000mg/m2含有している状態において現像することを特徴とする画像形成方法。
  8. 熱現感光材料は保護層を有し、該保護層と加熱されたドラムを接触させて、請求項3または4に記載の熱現像感光材料を現像することを特徴とする画像形成方法。
  9. 請求項1または2に記載の感光性乳剤を製造するに当たり、セラミックビーズを充填したビーズミルを用いて、有機銀塩、感光性ハロゲン化銀を分散することを特徴とする感光性乳剤の製造方法。
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