JP4119655B2 - 電子顕微鏡の試料移動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ駆動による電子顕微鏡等の試料移動装置および試料移動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
試料像の観察時に、試料を載せたステージを、サブnmオーダーで位置調整することが必要となる電子顕微鏡では、CPUによる正確なステージ駆動方法(サーボ制御)と、操作者がマニュアルで直接サブnmオーダーのステージ操作を行なう非サーボ制御によるステージ駆動方法とを、目的に応じて使い分けることが必要とされている。
【0003】
図1は、通常行なわれているサーボ制御方法を模式的に示したものである。図中、1は、試料移動のサーボ制御を行なうサーボ・ドライバーである。サーボ・ドライバー1は、所定の試料移動量ΔXがパルス電圧として入力されると、入力された試料移動量ΔXに応じた量だけDCモータ2を回転させ、DCモータ軸に螺合された押し子3で試料駆動機構4を「てこ」の原理により押圧し、試料をΔXだけ移動させる。このとき、サーボ・ドライバー1に入力されたパルス電圧は、サーボドライバー1の内部に設けられた第1のカウンター5によってカウントされている。一方、DCモータ2のモータ軸に同軸状にマウントされたロータリー・エンコーダ6から、DCモータ2の回転量に応じて出力されるパルス信号は、サーボ・ドライバー1の内部に設けられた第2のカウンター7でカウントされている。そして、第1のカウンター5のカウント値と第2のカウンター7のカウント値を比較器8で比較して、両者の値が一致するように、DCモータ2の回転量をフィードバック制御する。このように、目標量に相当する回転角度だけモータを回転させ、その位置を維持するようにフィードバック制御をかけることをサーボ制御と呼んでいる。
【0004】
一方、電子顕微鏡の倍率が極めて高い状態において、試料を極めてわずかな量だけ移動させたい場合には、通常、サーボ制御によらない試料移動方法が採用される。図2は、通常行なわれている非サーボ制御方法を模式的に示した図である。図中9は、DCモータ2を駆動させるためのDC電源である。DC電源9とDCモータ2との間には、通電をオン/オフするためのスイッチ10が設けられている。試料移動を行なわせる際には、このスイッチ10をパルス状に短時間だけオンにすることにより、短いパルス電圧をDCモータ2に送り、DCモータ2を「寸動」させることにより、極めてわずかな量だけ、試料の移動を行なわせている。この方法は、ごくわずかな距離だけ試料移動を行なわせたいような場合には、極めて優れた方法であるが、全てがマニュアル操作で行なわれるため、移動距離の定量性や再現性に乏しいという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、位置制御サーボ機構は、電子顕微鏡の倍率が中程度のときに、試料移動を所定の距離だけ定量的に行なわせる目的で使用する際には極めて優れた方法であるが、電子顕微鏡の倍率が極めて高い状態で、ごくわずかな距離だけ試料移動を行なわせたいような場合には、必ずしも優れた方法ではない。なぜなら、モータ軸から実際のステージに至る「てこ」の原理を利用した部分の弾性要素、摩擦要素、ダンパー要素などにより、モータが回転を始めた時点で直ちにステージの移動が開始されるとは限らない。また、ステージが止まっているときは、静止摩擦が支配的であるが、ステージが動き始めると、動摩擦が支配的になるため、モータのトルク負荷が急激に小さくなる。そのため、位置制御サーボ機構でステージの移動を制御しようとすると、ハンチングや振動を発生しやすくなる。
【0006】
また、位置制御サーボ機構を用いると、絶えずフィードバック制御されているため、ステージが停止状態であっても、検出器(例えば、モータのロータリー・エンコーダ)に変位が生じると、その変位を打ち消す方向にモータを駆動しようとするため、微振動を生じやすい。そこで、従来は、この問題を解決するために、サーボ系に、Gain・Lowと呼ばれる振動緩和機能、すなわち、ステージの動きが許容範囲に入ったら、フィードバック系のゲインを下げる機能を設け、ステージの振動が止まりやすくする工夫を凝らしていた。ところが、この機能をオン/オフすると、それによる振動を生じたり、前述したような試料移動機構部の負荷の変化に由来するステージの「押し戻し」を起こしたりする。
【0007】
これらの振動やハンチングは、電子顕微鏡の倍率がさほど高くない場合には、ほとんど目立たないが、電子顕微鏡の倍率が極めて高い場合には、無視できなくなる。
【0008】
また、操作者がトラッカー・ボールなどの操作盤を使って、像を観察しながらステージを移動させる場合、画像表示装置上でのトラッカー・ボール単位回転量当たりの像移動量は、ほぼ一定であることが望ましい。従って、現在の位置制御サーボ機構では、高倍率状態で位置制御の最小ステップをサブnmオーダーに設定した場合、その設定を変えないで倍率を下げて、高速駆動をしようとすると、試料の移動距離が莫大な値になり、膨大な数のパルス信号が必要となって、カウンターフローなどの制御不能に陥ることがあった。
【0009】
一方、位置制御サーボ機構を用いずに、比較的ゆっくりと送出されるパルス電圧による「寸動」でステージを制御すると、モータのトルクの伝達が瞬間的にしか起こらなくなるため、駆動機構のモータ停止時のステージの「押し戻し」現象も少なくなるし、パルス電圧の波形をステージが移動するぎりぎりの条件に設定すれば、モータに附属したロータリー・エンコーダの歯数よりも微小なステップでのステージの移動が実現できる。しかし、言うまでもないが、電子顕微鏡の倍率にステージの移動距離をリンクさせたり、CPUによって定量的にステージを移動させたりすることはできなくなる。
【0010】
本発明の目的は、上述した点に鑑み、位置制御サーボ機構の長所と、非サーボ制御方法の長所とを兼ね備えた電子顕微鏡等の試料移動装置および試料移動方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明にかかる電子顕微鏡の試料移動装置は、
サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御とが共に可能な電子顕微鏡の試料移動装置であって、
観察倍率の値と、試料の移動距離の値と、モニターの解像度の値とに基づいて、サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御のうち、いずれの方法を選択すれば良いかを判断する判断手段と、
該判断手段の判断結果に基づいて、サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御との切り換えを行なう切換手段と
を備えたことを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。一般に、電子顕微鏡のステージには、試料を対物レンズポールピースの上方向から光軸に沿って挿入するトップエントリー・ステージと、試料を対物レンズポールピースの横方向から光軸に直交させて挿入するサイドエントリー・ステージとが存在しているが、どちらのタイプも、DCモータの回転をギヤで減速し、スプラインなどによって並進運動に変換し、「てこ」を作動させることで、X、Y方向の動きに変換する方式を採用している。そこで、以下の説明では、XY駆動機構部の詳細については省略し、DCモータの制御システムを中心に述べることにする。
【0016】
図3は、本発明にかかる電子顕微鏡等の試料移動装置の一実施例である。図中11は、DCモータである。DCモータ11のモータ軸の一端は、XY軸駆動機構12に接続され、他端は、モータ軸に同軸状にマウントされたロータリー・エンコーダ13に接続されている。DCモータ11を駆動させる駆動機構としては、DCサーボ機構14とパルス駆動回路15とがあり、両者は、リレー16を伴ったスイッチ17および18で切り換え可能になっている。リレー16を制御しているのが、制御部19であり、制御部19への入力手段として、トラッカーボール20が備えられている。これらの試料移動装置全体を制御しているのが、ステージ制御用CPU21であり、このCPUは、通信手段を介して、電子顕微鏡のメインCPU22と接続されている。ステージ制御用CPU21と電子顕微鏡のメインCPU22とをつなぐ通信手段は、ステージ制御用CPU21が電子顕微鏡本体の倍率値などを読み取る際に使用される。
【0017】
DCサーボ機構14は、入力された指令パルスの数に相当する分量だけDCモータ11を正確に回転させる位置制御駆動回路である。指令パルスの出力は、トラッカーボール20から制御部19に入力されたステージの駆動指令を、制御部19の内部に設けられたカウンタ23により計数し、計数結果を指令パルス発生器24に与えることによって、指令パルス発生器24から行なわれる。DCモータ11の実際の回転量は、モータ軸にマウントされたロータリー・エンコーダ13の出力信号から、DCサーボ機構14によって正確に読み取られる。DCサーボ機構14は、読み取った結果に基づいて、DCモータ11の実際の回転量を知り、指令した回転量に正確に一致するように補正し、DCモータ11の回転量を常にフィードバック制御する。その具体的なやり方は、「従来の技術」の項で説明したサーボ・ドライバー1の例と同じである。
【0018】
また、パルス駆動回路15は、パルス状の電圧を発生させる回路であり、電圧とパルス幅とを、ステージ制御用CPU21とステージ制御用CPU21に附属しているメモリー25に収められたデータに基づいて、任意に可変することができるようになっている。メモリー25には、電子顕微鏡本体の観察倍率が高い場合には、電圧を低く、パルス幅を狭く設定させ、電子顕微鏡本体の観察倍率が低い場合には、電圧を高く、パルス幅を広く設定させるような数値表が書き込まれている。パルス駆動回路15がステージを制御する具体的なやり方は、「従来の技術」の項で説明した非サーボ制御方法の例と似ているが、その例を一歩前進させ、手動のスイッチ操作でパルス電圧を発生させていたのを、ほぼ自動的に行なわせるようにしたものである。これは、通信手段を介して読み取った電子顕微鏡本体の観察倍率の値とメモリー25に書き込まれた数値表とに基づいて、ステージ制御用CPU21が、パルス駆動回路15に対して最適なパルス電圧を発生させるように制御するものである。
【0019】
パルス駆動回路15もまた、入力された指令パルスの数に相当する分量だけDCモータ11を正確に回転させる位置制御駆動回路である。指令パルスの出力は、トラッカーボール20から制御部19に入力されたステージの駆動指令パルスを、制御部19の内部に設けられたカウンタ23により計数し、計数結果を指令パルス発生器24に与えることによって、指令パルス発生器24から行なわれる。パルス駆動回路15は、指令パルス発生器24から入力された1個の指令パルスに対して、整数倍のパルス列を発生するパルス列発生回路26を持っており、整数nとパルス列の周期ΔTとは、通信手段を介して読み取った電子顕微鏡本体の観察倍率の値とメモリー25に書き込まれた数値表とに基づいて、ステージ制御用CPU21により設定される。パルス列発生回路26から出力される適切に設定されたパルス列に基づいて、パルス電圧発生回路27がDCモータ11を駆動するためのパルス電圧を発生し、DCモータ11を連続的に「寸動」制御する。
【0020】
DCサーボ機構14とパルス駆動回路15との切り換えは、制御部19の内部に設けられた駆動方法切り換え器28によって行なわれる。この切り換えの目安として用いられる指標が、DCサーボ機構14の最小駆動ステップ(通常は、ロータリー・エンコーダ13の1ステップ当たりの移動量)ΔXと、図示しない像検出器(モニター)の解像度ΔRとの比、ΔR/ΔXの値である。尚、通常、ΔXは数nm、ΔRは数十μmの値を取る。
【0021】
電子顕微鏡の観察倍率Mが、このΔR/ΔXよりも小さな値を取る場合には、DCサーボ機構14の最小駆動ステップは、像検出器(モニター)上では判別できない。また、観察倍率Mが、このΔR/ΔXよりも大きな値を取る場合であっても、トラッカーボール20から入力されたステージの駆動指令パルスに相当するDCモータ11の駆動量が、DCサーボ機構14の最小駆動ステップΔXよりもかなり大きな値であるような場合は、DCサーボ機構14でステージを駆動しても、サーボ制御の欠点である振動や駆動ステップの荒さは目立たなくなる。従って、これらの場合には、ステージをサーボ制御しても差し支えない。
【0022】
一方、それ以外の場合、すなわち、観察倍率Mが、このΔR/ΔXよりも大きな値を取り、かつ、トラッカーボール20から入力されたステージの駆動指令パルスに相当するDCモータ11の駆動量が、DCサーボ機構14の最小駆動ステップΔXに比べ、それぼど大きくない値であるような場合には、ステージをサーボ制御すると、振動、ハンチング、押し戻しなどの現象がモニター上に顕著に現れるようになって、問題が起きる。従って、この場合には、ステージをサーボ制御ではない方法で制御しなければならない。
【0023】
このように、駆動回路の切り換えは、電子顕微鏡の観察倍率Mと、トラッカーボール20からの駆動指令パルスをカウントするカウンタ23の値とを、ステージ制御用CPU21によって定期的に読みに行かせた上で、読み取った値を考慮して行なえば良い。
【0024】
図4は、DCモータ11を駆動させる駆動機構として、DCサーボ機構14とパルス駆動回路15とを、どのように切り換えて使用すれば良いかの判断過程を流れ図で示したものである。まず、観察倍率Mが、ΔR/ΔXの値よりも小さい場合は、制御部19の内部に設けられた駆動方法切り換え器28により、DCサーボ機構14側に、ステージの駆動方法が切り換えられる。次に、観察倍率Mが、ΔR/ΔXの値よりも大きく、しかもトラッカーボール20から入力される駆動指令パルスのカウント値が所定の値Lよりも小さい場合には、制御部19の内部に設けられた駆動方法切り換え器28により、パルス駆動回路15側に、ステージの駆動方法が切り換えられる。尚、このとき、ステージ制御用CPU21に接続されたメモリー25の数値表に基づいて、電子顕微鏡の倍率Mが大きな場合には、DCモータ11を駆動させるパルス電圧の電圧値を低く、パルス幅を狭く設定させ、電子顕微鏡の倍率Mが小さな場合には、DCモータ11を駆動させるパルス電圧の電圧値を高く、パルス幅を広く設定させる。次に、観察倍率Mが、ΔR/ΔXの値よりも大きく、しかもトラッカーボール20から入力される駆動指令パルスのカウント値が所定の値Lよりも大きい場合には、制御部19の内部に設けられた駆動方法切り換え器26により、DCサーボ機構14側に、ステージの駆動方法が切り換えられる。
【0025】
尚、トラッカーボール20から入力される駆動指令パルスのカウント値が大きいか小さいかを見極めるための基準となる所定の値Lには、例えば、観察視野の大きさの1/2の値とか、ΔXの10倍の値とかを便宜的に採用すれば良い。また、この基準値Lは、電子顕微鏡の観察条件などで最適値が変化するため、任意に設定できるようにしておき、ステージ調整時に、ステージ制御用CPU21にその都度記憶させることが望ましい。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の電子顕微鏡等の試料移動装置及び試料移動方法によれば、観察倍率の値と、試料の移動距離の値と、モニターの解像度の値とに基づいて、サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御とを切り換えるようにしたので、位置制御サーボ機構の長所と、非サーボ制御方法の長所とを兼ね備えた電子顕微鏡等の試料移動装置および試料移動方法を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】サーボ機構による従来のステージ制御方法を示す図である。
【図2】サーボ機構によらない従来のステージ制御方法を示す図である。
【図3】本発明にかかる電子顕微鏡等の試料移動装置の一実施例である。
【図4】本発明にかかる電子顕微鏡等の試料移動方法の一実施例である。
【符号の説明】
1・・・サーボ・ドライバー、2・・・DCモータ、3・・・押し子、4・・・試料駆動機構、5・・・第1のカウンター、6・・・ロータリー・エンコーダ、7・・・第2のカウンター、8・・・比較器、9・・・DC電源、10・・・スイッチ、11・・・DCモータ、12・・・X軸Y軸駆動機構、13・・・ロータリー・エンコーダ、14・・・DCサーボ機構、15・・・パルス駆動回路、16・・・リレー、17・・・スイッチ、18・・・スイッチ、19・・・制御部、20・・・トラッカーボール、21・・・ステージ制御用CPU、22・・・メインCPU、23・・・カウンター、24・・・指令パルス発生器、25・・・メモリー、26・・・パルス列発生回路、27・・・パルス電圧発生回路、28・・・駆動方法切り換え器。
Claims (1)
- サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御とが共に可能な電子顕微鏡の試料移動装置であって、
観察倍率の値と、試料の移動距離の値と、モニターの解像度の値とに基づいて、サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御のうち、いずれの方法を選択すれば良いかを判断する判断手段と、
該判断手段の判断結果に基づいて、サーボ機構によるステージ制御とサーボ機構によらないステージ制御との切り換えを行なう切換手段と
を備えたことを特徴とする電子顕微鏡の試料移動装置。
Priority Applications (1)
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JP2002050993A JP4119655B2 (ja) | 2002-02-27 | 2002-02-27 | 電子顕微鏡の試料移動装置 |
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2002
- 2002-02-27 JP JP2002050993A patent/JP4119655B2/ja not_active Expired - Fee Related
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