JP4119647B2 - ガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋外から飛来する害虫の屋内への侵入を阻止するガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤に関し、さらに詳しくは、ガラス窓、ショーウインドー等のガラス面に噴き付けて用いる飛来害虫侵入防止用エアゾール剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
日中、物陰に潜む飛翔害虫は、夜間に活動を始めると、スーパーやコンビニエンスストアなどの窓やドアのガラス面から漏れる光に誘われて集まってくる。ガラス面に到達した害虫は、さらに光源に近づくためにガラス面上を徘徊し、やがて窓やドアの隙間を見つけて、そこから店舗内に侵入する。
ガラス面に係留する害虫の群集は、それだけでも客の不快感を催し、集客の障害となるが、さらに店舗内に侵入して、飛び回って客と接触する、食品等の商品の上に止まる、あるいは店舗内に死骸をさらすことによって、店舗と客に対して衛生的、経済的被害をもたらす。
【0003】
上記の問題を解決するために、ガラス面に忌避剤又は殺虫剤を塗布して、害虫の係留を阻止するか、係留した害虫の活動を弱らせる方法が考えられるが、有効成分が析出してガラス面が汚れ、透明性が損なわれるという問題があった。
そこで、特公平6−81825号や特開平10−7505号では、ガラス面などに害虫防除成分を含有する被膜を形成させ、ガラスの透明性を保ちつつ、害虫の侵入を阻もうとする試みがなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各特許公報に記載の防除剤は、処理直後の初期効果(速効性)に乏しく、また風雨や日照に曝されることによって被膜形成成分が蒸散、流亡あるいは分解して、害虫防除成分をガラス面上に保持できず、処理直後から長期間に亘って害虫防除効果を持続させることに関しては充分な解決が図られていないのが実状である。
【0005】
従って、本発明の目的は、風雨や日照に曝される苛酷な環境下での耐候性に優れ、しかもガラス面の透明度を損なわず、べとつかず、処理直後から長期間に亘って害虫防除効果を持続できる飛翔害虫の飛来侵入を阻止するエアゾール剤を提供することにある。
さらに本発明の目的は、このような害虫防除効果を長期間に亘って発揮できる耐候性に優れた透明被膜を簡便に形成できるガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、害虫防除成分、脂肪酸側の炭素数が14〜18でかつアルコール側の炭素数が16〜18である炭素数30〜36の高級脂肪酸エステルである被膜形成成分、及びn−パラフィン系溶剤を噴射剤と共に充填してなることを特徴とするガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤が提供される。
好適な態様によれば、上記被膜形成成分は、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、及びミリスチン酸イソセチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、また、上記害虫防除成分は、トラロメトリンである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、無色透明の被膜を形成できる飛来害虫侵入防止用組成物の効力、特に耐候性を強化するために詳細な検討を行なった結果、脂肪酸側の炭素数が14〜18でかつアルコール側の炭素数が16〜18である炭素数30〜36の高級脂肪酸エステルを被膜形成成分として採用することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の飛来害虫侵入防止用組成物において、被膜形成成分として用いている高級脂肪酸エステルは、脂肪酸側の炭素数が14〜18でかつアルコール側の炭素数が16〜18である炭素数30〜36の高級脂肪酸エステルであるため、▲1▼凝固点が低く、そのため透明な液体の被膜を形成できること、▲2▼油性感が少なく、そのためべとつき感が少ないこと、▲3▼蒸気圧が低く、そのため蒸散し難く、透明被膜の維持能力、害虫防除成分の保持能力が良くなること、▲4▼耐候性(耐水性、耐光性を含む)に優れ、そのため長期間の効力持続が可能であること、などの特徴を有する。その結果、本発明の飛来害虫侵入防止用組成物は、風雨や日照に曝される苛酷な環境下での耐候性に優れ、しかもガラス面の透明度を損なわず、初期効果に優れると共に、長期間透明度を保ったまま高い害虫防除効果を持続でき、飛翔害虫の飛来侵入を効果的に阻止することができる。特にエアゾール剤に製剤した場合、このような害虫防除効果を長期間に亘って発揮できる耐候性に優れた透明被膜を簡便に形成できる。
【0008】
本発明の飛来害虫侵入防止用組成物に使用できる有効成分としては、下記に示すようなピレスロイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤等の殺虫剤や害虫忌避剤などが挙げられるが、下記に列挙するものに限定されるものではない。
ピレスロイド系殺虫剤の具体例としては、トラロメトリン、アレスリン、dl,d−T80−アレスリン、dl,d−T−アレスリン、d,d−T−アレスリン、d,d−T80−プラレトリン、レスメトリン、エンペントリン、テラレスリン、トランスフルトリン、フタルスリン、dl,d−T−80−フタルスリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、イミプロスリン、フェンバレレート、シペルメトリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、テフルスリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリンなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、長期間に亘って害虫防除効果を持続するためには、常温で蒸散し難く、光安定性の良いトラロメトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、エトフェンプロックスが好ましい。また、トラロメトリン、エトフェンプロックス、ペルメトリン、シペルメトリンなどの持続性に優れる殺虫剤と、トランスフルトリン、フェノトリンなどの即効性に優れる殺虫剤を組み合わせて用いることも好ましい。
【0009】
有機リン系殺虫剤の具体例としては、ダイアジノン、フェニトロチオン、ピリダフェンチオン、マラチオン、ディプテレックス、クロルピリホス、フェンチオン、ジクロルボス、プロペタンホス、アベイト、ホキシムなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、また前記したピレスロイド系殺虫剤と組み合わせて用いることもできる。
【0010】
害虫忌避剤としては、N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、p−ジクロロベンゼン、ジ−n−ブチルサクシネート、カラン−3,4−ジオール、1−メチルプロピル−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、p−メンテン−3,8−ジオール、ユーカリプトール、グアニジンなどが挙げられ、これらを単独で又は又は2種以上を組み合わせて用いることができ、また前記した殺虫剤と組み合わせて用いることもできる。
【0011】
害虫防除成分の配合量は、飛来害虫侵入防止用組成物の剤型にもよるが、一般に被塗布面当り10〜1000mg/m2の割合となるような範囲が好ましい。害虫防除成分の使用量が10mg/m2未満となるような割合の場合、充分な初期効果が得られ難いと共に、効力が持続し難くなるので好ましくない。一方、1000mg/m2超えて多量に使用した場合、被膜から油滴が生じたり、薬剤が析出してガラスが白く曇るといった問題が起こり易くなるので好ましくない。
【0012】
また、本発明の飛来害虫侵入防止用組成物には、本発明の効果を損なわない量的割合で、必要に応じて、効力増強剤、紫外線防止剤、酸化防止剤等の他の成分を併用することができる。
効力増強剤としては、ピペロニルブトキサイド、オクタクロロジプロピルエーテル、チオシアノ酢酸イソボルニル、N−(2−エチルヘキシル)−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタ−5エン−2,3−ジカルボキシイミド、β−ブトキシ−β´−チオシアノジエチルエーテルなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−メトキシベンゾフェノン、2(2´−ヒドロキシ−3´,5´−ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾールなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
酸化防止剤としては、2,2´−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−エチルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3−(4´−ヒドロキシ−3,5´−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、N,N´−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明の飛来害虫侵入防止用組成物においては、前記したように被膜形成成分として、脂肪酸側の炭素数が14〜18でかつアルコール側の炭素数が16〜18である炭素数30〜36の高級脂肪酸エステルを含有する。
上記高級脂肪酸エステルの中でも、アルコール側の炭化水素基が分岐したものは凝固点が低く、常温でも液体状態を維持でき、透明な被膜形成能に優れるため好ましい。このような高級脂肪酸エステルとしては、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソセチルなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0016】
高級脂肪酸エステルの配合量は、害虫防除成分の性質にもよるが、害虫防除成分100質量部当り10〜200質量部の割合が好ましい。高級脂肪酸エステルの配合割合が10質量部未満の場合少なすぎて、害虫防除効果を長期間に亘って発揮できる耐候性に優れた透明被膜を形成できなくなるので好ましくない。一方、高級脂肪酸エステルの配合割合が200質量部を超えて多量になると、油滴が生じたり、溶剤と一緒に液だれを起こしたり、汚ならしい跡が残ってしまうなどの問題を生じ易くなるので好ましくない。
【0017】
本発明の飛来害虫侵入防止用組成物は、前記した害虫防除に有効な成分及び被膜形成成分を、必要に応じて溶剤に溶解させて液剤として塗布して用いることもできるが、前記した害虫防除成分及び被膜形成成分を溶剤に溶解させ、噴射剤と共にエアゾール容器に充填し、エアゾール剤として用いることが使用に簡便である。
エアゾール剤中の液剤としては、前記した本発明の効果やコスト等を考慮すると、害虫防除成分が0.04〜15wt%、被膜形成成分が0.004〜30wt%、残部溶剤となる配合割合とすることが好ましい。
【0018】
溶剤としては、20℃での飽和蒸気圧が500Pa以下、好ましくは5〜200Paの炭化水素系溶剤が好ましい。
エタノールやイソプロピルアルコールなどの20℃での飽和蒸気圧が500Paを超える揮発性溶剤は、蒸散する速度が早過ぎるため、害虫防除成分が均一に塗布できず、高濃度になった箇所に油滴が生じたり、白く露出したりする問題点があるので好ましくない。しかし、難揮発性溶剤を使用すると、いつまでも乾燥しないので死んだ害虫がこびりついたり、ゴミやホコリの付着で汚らしくなってしまうので好ましくない。このような観点から、最も好ましい溶剤は、デカン、ウンデカン、ドデカン等のn−パラフィン系溶剤である。
【0019】
噴射剤としては、ジメチルエーテル、液化石油ガス、圧縮窒素ガス、圧縮空気、炭酸ガスなど従来公知の噴射剤を単独で又は2種以上を組み合わせて、通常の量的割合で配合することができる。これらの噴射剤の中でも、害虫防除成分や溶剤とよく混和する液化石油ガス、ジメチルエーテル、及びその混合ガス等の噴射ガスを用いることが好ましい。
【0020】
塗布量としては、害虫防除成分をエアゾールで均一に塗布し、且つ透明に保つには10〜30ml/m2の割合が望ましい。塗布量が10ml/m2未満の割合の場合、有効成分を塗布面全体に均一に行き渡らせることが難しく、ムラになり易くなるので好ましくない。一方、塗布量が30ml/m2を超えると、液だれが生じ易く、ロスが多くなる。また、乾燥するのに時間がかかるので好ましくない。特に最適な塗布量は、15〜25ml/m2の割合である。
【0021】
エアゾール剤の場合、一般に塗布面から約30cm離れたところから噴霧・塗布するので、付着率(噴射した内容物全量に対する塗布面に付着した内容物の割合)が高く(約60%以上が望ましい)、塗布面に付着しなかった成分の舞い散りが少ないことが好ましい。また作業性を考えると、できるだけ短時間で処理できるのが好ましい。1m2当りの処理時間が5〜10秒であると、有効成分を全体に均一に塗布することができ、作業性も良い。
【0022】
上記のような作業性の点からは、エアゾール剤の液ガス比は、一般に前記液剤50〜80容量%に対し噴射ガス20〜50容量%の割合が望ましい。50容量%よりも液の割合が少ない場合、噴射ガスの勢いが強すぎて舞い散りが多く、付着率も低くなり易いので好ましくない。逆に、80容量%よりも液の割合が多い場合、噴射ガスの勢いが弱すぎて、風が吹いたときに舞い散ったり、処理時間が長くなって作業性が悪くなり易いので好ましくない。
【0023】
例えば、上記の液ガス比で、噴射バルブはステム孔の径が約0.5mm×2もしくは3、ハウジング孔の径が約1.5〜2.0mm、ベーパーダップ孔は約0.3〜0.5mmにすると、1m2当りの処理時間が約5〜10秒で、且つ付着率がよく、舞い散りの少ないエアゾールができる。噴射ボタンは噴射口の径が約0.7〜1.2mmのものが良く、最も好適なものは塗料用ボタンで、比較的均一に幅広く噴射できる、楕円状のスプレーパターンを持つボタンである。塗料用ボタンを使用することによって、無駄やむらがなく、均一に噴射することができる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。
【0025】
実施例1〜8及び比較例1〜15
下記表1及び表2に示す処方(成分及び配合割合)で飛来害虫侵入防止用組成物を調製した。これらの組成物をガラス板上に塗布し、乾燥被膜の透明性を評価した。その結果を表1及び表2に併せて示す。
【表1】
【0026】
【表2】
前記表1及び表2に示される結果から明らかなように、本発明に従って処方した実施例1〜8の被膜は油滴、くもり、埃の付着もなく透明性に優れていた。但し、実施例5〜8のように高級脂肪酸エステルの配合量が多いと被膜に若干べとつき感を生じた。そこで、透明性及びべとつき感共に良好であった実施例1〜4の組成物を用い、また比較例については透明性が良好であった比較例2〜7の組成物を用い、以下の試験に供した。
【0027】
試験例1(初期効果を評価するための効力試験)
ガラス板強制接触試験:
0.01m2のガラス板に、実施例1〜4及び比較例2〜7の各処方の供試液を15ml/m2相当の量で均一に塗布し、完全に風乾させた供試ガラス板に、アカイエカ雌成虫を10匹強制接触させ、接触開始からノックダウン虫数をカウントし、ブリス(Bliss)のプロビット(Probit)法によりKT50値を算出した。その結果を図1に示す。
図1に示される結果から明らかなように、被膜形成成分が高級脂肪酸エステルである実施例1〜4、比較例2〜5では高い殺虫効果が認められた。
【0028】
試験例2(耐候性を評価するための効力試験)
苛酷な屋外環境の要因である風、雨、日照を想定して、次の3種類の試験を行なった。
(1)屋外試験
0.01m2のガラス板に、実施例4、比較例3及び比較例7の各供試液を15ml/m2相当の量均一に塗布した後、完全に風乾させた。供試ガラス板を、直接雨や日照の当たらない屋外の風通しの良い場所に放置した。1週間毎にガラス板を回収し、前記試験例1と同様にガラス板強制接触試験により、KT50値を求めた。結果を図2に示す。
【0029】
図2に示される結果から明らかなように、本発明の実施例4の供試液を用いた場合、耐候性に優れ、4週間経過後もそれほど効力低下がなく、長期に亘って安定した殺虫効果が認められた。これに対して、比較例3の供試液の場合、前記試験例1では初期効果は認められたが、4週間経過後には初期効果が認められなかった比較例7よりもむしろ効力が低下した。すなわち、被膜形成成分として高級脂肪酸エステルを用いても、アルコール側の炭素数が14〜18の範囲を外れる場合(脂肪酸側の炭素数が16〜18の範囲を外れる場合も同様)には耐候性に劣り、長期に亘って安定した殺虫効果が得られないことがわかる。
【0030】
(2)耐水試験
実施例1〜4及び比較例2〜7の各処方の供試液を用い、前記屋外試験(2)と同じ方法で供試ガラス板を調製した。
各供試ガラス板上に、ハンドスプレー容器に詰めたイオン交換水を、30cm離れた距離から約25ml/回、均一に吹き付けた。2時間風乾後、再び同じ操作を繰り返し、完全に風乾させた後、前記試験例1と同様にガラス板強制接触試験を行ない、KT50値を求めた。結果を図3に示す。
図3に示される結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の供試液を用いた場合、耐水性に優れていたが、比較例2〜7の供試液の場合、耐水性が悪く、特に被膜形成成分としてアルコール側の炭素数が14〜18の範囲を外れる高級脂肪酸エステルを用いた比較例2〜4、また脂肪酸側の炭素数が16〜18の範囲を外れる高級脂肪酸エステルを用いた比較例5の場合には耐水性に劣ることがわかる。
【0031】
(3)キセノン試験
耐光性を調査する目的で行なった。実施例1〜4及び比較例2〜7の各処方の供試液を用い、前記屋外試験(2)と同じ方法で供試ガラス板を調製した。得られた各供試ガラス板を、キセノンテスター(東洋精機 Ci4000アトラスウェザオメータ)に入れて、照射を開始した。24、72、120、180、240時間後に供試ガラス板を回収し、前記試験例1と同様にガラス板強制接触試験を行ない、KT50値を求めた。120時間照射後の結果を図4に、また、実施例4及び比較例3、7についての照射時間の変化に伴うKT50値の変化を図5に示す。
図4及び図5に示される結果から明らかなように、本発明の実施例1〜4の供試液を用いた場合、耐光性に優れていたが、比較例2〜7の供試液の場合、いずれも耐光性が劣っていた。
【0032】
試験例3(実地効力試験)
本発明の飛来害虫侵入防止用組成物の耐候性の高さを検証するために、直接の風雨と日照に曝される条件のガラス面を選択して、実施効力試験を行なった。
使用した供試液は、下記処方のエアゾール剤(原液が実施例4及び比較例7の処方と同じ)である。
<実施例4>
原液:トラロメトリン0.55gとイソステアリン酸イソセチル0.33gをドデカン(C=12)に溶解し、全体量を330mlになるように液量を調整した。
噴射ガス:LPG/DME混合ガス(混合比71/29)を120ml充填した。
<比較例7>
原液:トラロメトリン0.55gとリン酸トリブチル1.1gをドデカン(C=12)に溶解し、全体量を330mlになるように液量を調整した。
噴射ガス:LPG/DME混合ガス(混合比71/29)を120ml充填した。
【0033】
試験方法:スーパーの店舗正面に並んだ3枚のガラス窓(3.7m2:縦2m×横1.85m)を試験区とした。窓ガラスの汚れやクモの巣を取り除いた後、各々1枚に上記のエアゾール剤(実施例4及び比較例7)の有効成分量が約0.025g/m2になるように、約26秒(原液にして約55.5mlの割合)噴霧処理した。残りの1枚は何も処理せず無処理区とした。
処理翌日(1日後)から継続的に、飛来して窓ガラス上に係留している個体数を害虫の種類別にカウントした。カウントは毎回午後9時に行なった。害虫種類別の飛来付着状況の結果を表3〜5に示す。
また別に、ガラス面上にクモの巣が張られているかどうか肉眼で観察した。クモの巣の発生状況の結果を表6に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
上記表3〜5の結果を図6にまとめて示す。図6に示される結果から明らかなように、比較例7では、処理後3週間を過ぎると防除効果が衰える傾向を示し、7週目以降では無処理区と同程度にまで効果が低下した。これに対して、実施例4では少なくとも8週間効果が持続したことから、本発明の飛来害虫侵入防止用組成物は、実地においても、長期間に亘って高い効果を維持することが確認できた。
【0037】
【表6】
表6に示される結果から明らかなように、無処理区の場合は1週間後に、比較例7の場合は4週間後にクモの巣が張られているのが観察された。これに対して実施例4の場合は、8週間クモの巣が観察されなかった。本発明の飛来害虫侵入防止用組成物は、クモに対しても高い効果があることが確認できた。
【0038】
【発明の効果】
以上のように、本発明のガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤は、脂肪酸側の炭素数が14〜18でかつアルコール側の炭素数が16〜18である炭素数30〜36の高級脂肪酸エステルを被膜形成成分として採用したことによって、べとつき感がなく、初期効果に優れ、ガラス面の透明性を損なわず、耐候性の高い被膜を形成することができ、屋外からの害虫の侵入を阻止したい店舗等の建物のガラス面に噴き付けることによって、長期間に亘って高い効果を維持できる。また、エアゾール剤としたことにより、極めて簡便に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】初期効果を評価するための試験例1におけるガラス板強制接触試験によるKT50値の結果を示すグラフである。
【図2】耐候性を評価するための試験例2の屋外試験におけるガラス板強制接触試験によるKT50値の結果を示すグラフである。
【図3】耐候性を評価するための試験例2の耐水試験における結果を示すグラフである。
【図4】耐候性を評価するための試験例2のキセノン試験における120時間照射後の結果を示すグラフである。
【図5】耐候性を評価するための試験例2のキセノン試験における実施例4及び比較例3、7についての照射時間の変化に伴うKT50値の変化を示すグラフである。
【図6】実地での効力の持続効果を評価するための試験例3の実地効力試験における害虫の飛来付着状況の結果を示すグラフである。
Claims (3)
- 害虫防除成分、脂肪酸側の炭素数が14〜18でかつアルコール側の炭素数が16〜18である炭素数30〜36の高級脂肪酸エステルである被膜形成成分、及びn−パラフィン系溶剤を噴射剤と共に充填してなることを特徴とするガラス面塗布用の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤。
- 前記被膜形成成分が、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、及びミリスチン酸イソセチルよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤。
- 前記害虫防除成分が、トラロメトリンである請求項1又は2に記載の飛来害虫侵入防止用エアゾール剤。
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