(第1の実施形態)
(実施形態1−1)
以下に本発明の実施形態1−1について図面を参照して説明する。図1は本実施形態の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。図2は、図1に示される空気清浄機の吹出流通路を拡大して示す部分側面断面図である。図3は、図2のIIIA方向から見た吹出流通路を示す断面図(A)、図2の吹出流通路において角度関係を示す断面図(B)である。
図1に示すように、空気清浄機1は、床面Fの上または卓上に設置され、部屋の側壁面W1の近傍に配置されて用いられる空気清浄機である。空気清浄機1は、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口122と、本体に設けられ、吸込口122から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段としてのエアフィルタ150と、本体に設けられ、エアフィルタ150で処理された空気を室内に送り出すための吹出口131と、本体に設けられ、吸込口122から吹出口131まで空気を移動させるための送風手段としての送風機170を備えている。
空気清浄機1の本体は筐体100によって保持されている。筐体100は床面Fの上に設置され、前面(正面)110と後面(背面)120と頂面(天面)130と、床面Fに接触する底面140とを有する。筐体100の後面120は多数の格子状の吸込口122が設けられた穴あきパネル121にて覆われている。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機1の側面を後面120側、その反対側を前面110側とする。
筐体100は、後面120側を部屋の側壁面W1に対向させて側壁面W1から、たとえば、300mmの間隔を設けて床面Fの上に設置される。筐体100の頂面130には、吹出口131が設けられている。吹出口131は筐体100の幅方向に延びる略矩形状に形成され、後方上方に臨んで設けられている。
筐体100の内部には、吸込口122から吹出口131に連通する吸込流通路160および吹出流通路180とかなる送風経路が形成されている。送風経路内には空気を送出する送風機170が配置されている。送風機170に用いられるファンとしては、シロッコファン171が用いられる。送風経路のうち、シロッコファン171の下流側には、シロッコファン171から吹出口131に至るまで空気が流れる吹出流通路180が形成されている。吹出流通路180によって、シロッコファン171により送出される空気を後方上方に案内する。吹出流通路180の断面積は、吹出口131に近づくほど、下流に行くほど拡大する。図2に示すように、吹出流通路180は、送風機170から吹出口131に連通し、上方案内部180aと、傾斜部180bと、後方上方案内部180cから形成される。
図2に示すように、前壁181は、上方案内部180aの終端181aを始点とし、傾斜部180bの前面181bを経て、傾斜部180bの終端位置181cにて後方上方案内部180cに接続し、その接続部181cから吹出口131に至るまで上方へ行くほど後方になるように傾斜して形成された後方上方傾斜部181dを経て、筐体100の頂面130との交点181eを終点とするように形成される。なお、前壁181の流れに沿う方向の長さ(始点:181aから終点:181eまでの長さ)は、シロッコファン171の高さをtとすると、たとえば、4.1tに設定される。また、前壁181の終点181eは、上方案内部180aの終点182aより後方になるように設定される。
後壁182は、上方案内部180aの終端182aを始点とし、傾斜部180bの後面182bを経て、傾斜部180bの終端位置182cにて後方上方案内部180cに接続し、その接続部182cから吹出口131に至るまで上方へ行くほど後方になるように傾斜し、なおかつ、上方へ行くほど前壁181との間の間隔を狭め、流路断面が絞られるように形成された後方上方傾斜部182dを形成し、筐体100の頂面130との交点182eを終点とするように形成される。なお、後壁182の流れに沿う方向の長さ(始点:182aから終点:182eまでの長さ)は、シロッコファン171の高さをtとすると、たとえば、3.8tに設定される。
送風経路を構成する吹出流通路180は、図3に示すように設定される。すなわち、上方案内部180aおよび傾斜部180bは奥行寸法一定で、その流路開き角α1は20°、後方上方案内部180cの流路開き角α2は40°、上方案内部180aと傾斜部180bの接する面と、傾斜部180bと後方上方案内部180cの接する面のなす角(側断面と地面に垂直な面と前壁のなす角)βは20°、後方上方案内部180cの前面側の後方上方傾斜部181dと後面側の後方上方傾斜部182dとのなす角γは8°に設定される。また、上方案内部180aと傾斜部180bの接合部、傾斜部180bと後方上方案内部180cの接合部はそれぞれ接するように接合されるか、曲面で接合部を滑らかに繋いで構成される。なお、上記のα1は10〜30°程度、βは15〜35°程度、γは0〜15°程度に設定されるのが望ましい。このようにすることで、各部における気流の剥離が最小限に抑えられ、流路抵抗が大幅に増大することなく滑らかに気流が流通する。
また、筐体100の後面120側を部屋の側壁面W1に対向して側壁面W1から100mmの間隔を設けて床面Fに設置される場合は、βが10〜25°程度に設定されるのが望ましい。
穴あきパネル121に対向する位置には、吸込口122から吸い込まれた空気中に存在する塵埃、および/または、臭気(汚染物質)を捕集・除去するエアフィルタ150が設けられている。送風経路中のシロッコファン171とエアフィルタ150との間の吸込流通路160には、加湿装置(図示せず)が設けられてもよい。加湿装置(図示せず)が設けられる場合、特に気化式の加湿装置は圧力損失(送風抵抗)が大きいため、送風機によって静圧上昇させる仕事が大幅に増加し、所望の風量を得るためには回転数を大幅に上げる必要があり、運転時の騒音も大幅に大きくなる。本実施形態の空気清浄機によると、低騒音化が可能であるため、運転時の騒音を大きくすることなく、空気清浄機に加湿装置を設けることができる。送風経路中のシロッコファン171と吹出口131との間の吹出流通路180には、イオン発生装置(図示せず)が設けられてもよい。
上記のように構成された空気清浄機1において、運転を開始すると、図1に示すように、送風機170のシロッコファン171が回転駆動され、吸込口122から空気が吸い込まれ、エアフィルタ150によって空気中に存在する塵埃、および/または、臭気(汚染物質)が除去される。
筐体100内に取り込まれ、エアフィルタ150によって塵埃が除去された清浄化空気は、シロッコファン171および吹出流通路180によって流れの向きを規制され、吹出流通路180の傾斜部180bから上方へ行くほど後方に傾斜した前壁181に滑らかに沿って、図1にて矢印Vに示す方向に後方上方に向けて室内に送出される。これにより、空気清浄機1は後方上方に清浄化空気を送出することになる。室内に送出された清浄化空気は、図16に示すように、部屋Rの側壁面W1に到達する。その後、コアンダ効果により側壁面W1から天井面S、空気清浄機1に対向する側壁面W2、床面Fを順次伝って空気清浄機1の両側方から後面120側に配置された吸込口122に吸い込まれる。
図1〜図3に示される本発明の空気清浄機1と、図34に示される従来の空気清浄機を用いて、集塵性能を測定した。集塵性能は気密性の高い部屋と気密性の低い部屋で測定した。
図4は、空気清浄機の配置と空気清浄機による部屋の集塵性能を測定する測定位置を示す図である。
図4に示すように本発明の空気清浄機1(または従来の空気清浄機10)を部屋R内に以下のように配置した。吹出口131(または吹出口1310)の中央位置から部屋の側壁面W1までの距離Lを370mm、吹出口131(または吹出口1310)の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hを2380mm、本発明の空気清浄機1では吹出口131から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方に対してなす角度θをtan−1(L/H)<θ≦35の範囲内で選ばれた一つの値に固定された角度である20°(あるいは、吹出流通路180の中央位置の延びる方向が鉛直上方向に対してなす角度θをtan−1(L/H)<θ≦35の範囲内で選ばれた一つの値に固定された角度である20°)、従来の空気清浄機10では吹出口1310から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方に対してなす角度θを0°、すなわち、吹出口1310から送り出される空気の流れる方向を鉛直上方とした。部屋の集塵性能を測定する測定位置は、側壁面W1から約7m離れた対向する側壁面W2の中央部とした。空気清浄機から送り出される空気の風量は6.2m3/minとした。
図5は、集塵性能を測定するために用いられた気密性の高い部屋(A)と気密性の低い部屋(B)を模式的に示す図である。
図5の(A)に示すように、気密性の高い部屋では、空調機器が設けられた天井面Sの隙間R1と、ドアの隙間R2と、天井面Sと側壁面W1との間の隙間R3には目張りが施されることにより、室内と室外を連通する隙間がほぼなくされている。一方、図5の(B)に示すように、気密性の低い部屋では、上記の隙間R1、R2およびR3には目張りが施されていない。測定条件としては、気密性の高い部屋では室内の粉塵濃度が室外の粉塵濃度よりも高いとし、気密性の低い部屋では室内の粉塵濃度が室外の粉塵濃度よりも低いとした。
図6は、粉塵性能の測定結果として、本発明の空気清浄機1(図中▲)と従来の空気清浄機10(図中■)を、約30畳相当の図5の(A)に示す気密性の高い部屋にて運転した場合の、空気清浄機の前面方向へ遠く離れた図4に示す測定位置における、粉塵濃度の減衰を表す図である。横軸は空気清浄機を運転させてからの時間(単位:min)、縦軸は室内の粉塵濃度(単位:%)を示している。図6から、本発明の空気清浄機1が、従来技術の空気清浄機10に対して、室内、特に空気清浄機から離れた位置の空気をより早く効果的に清浄することができることがわかる。また、同じ粉塵濃度に達する時間は、本発明の空気清浄機1が、従来技術の空気清浄機10に対して、3分程度早いことがわかる。
また、図7は、本発明の空気清浄機1(図中▲)と従来の空気清浄機10(図中■)を、約30畳相当の図5の(B)に示す気密性の低い部屋にて運転した場合の、空気清浄機の前面方向へ遠く離れた図4に示す測定位置における、粉塵濃度の減衰を表す図である。縦軸と横軸は図6と同様である。図7から、本発明の空気清浄機1が、従来技術の空気清浄機10に対して、室内、特に空気清浄機から離れた位置の空気をより早く効果的に清浄することができることがわかる。また、同じ粉塵濃度に達する時間は、本発明の空気清浄機1が、従来技術の空気清浄機10に対して、時間が経過すればするほど早くなることがわかる。つまり、気密性の高い部屋に比べて、気密性の低い部屋においては、本発明の空気清浄機1が、従来技術の空気清浄機10に対して、空気清浄効果の点で大きな優位性を示している。
以上のように、本発明によると、部屋R内の空気、特に空気清浄機1から離れた側壁面W2付近の空気を効果的に清浄することができる。
次に、上記の図6と図7に示すように本発明の空気清浄機の集塵性能が向上するメカニズムについて説明する。
まず、本発明の構成により、部屋の中を流通する気流にどのような変化が生じるのかについて以下の実験結果に基づいて説明する。
図8は、空気清浄機の配置と空気清浄機による風速を測定する測定位置を示す図である。
図8に示すように、図34に示す従来の空気清浄機10を部屋R内に以下のように配置した。吹出口1310の中央位置から部屋の側壁面W1までの距離Lを370mmまたは70mm、吹出口1310の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hを1880mm、従来の空気清浄機10の吹出口1310から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方に対してなす角度θを0°、20°、30°、または、40°とした。このように配置された従来の空気清浄機10を運転して天井面Sに沿った風速を測定した。風速を測定する測定位置は、側壁面W1からそれぞれ、1000mm、1500mm、2000mm、2500mm離れた天井面Sの4つの位置とした。空気清浄機から送り出される空気の風量は4.3m3/minとした。
図9は、風速の測定結果を示す図である。横軸は、測定位置として側壁からの距離(単位:mm)、縦軸は、その測定位置における天井面に沿った風速(単位:m/s)を示している。
図9に示された測定結果において、まず、部屋の側壁面W1から距離300mmの間隔をあけて空気清浄機10を床面Fに設置したとき(L=370mm)において、空気清浄機10の吹出口1310から気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合(図中●)と、空気清浄機10の吹出口1310から気流が斜め後方(θ=20°)に送出される場合(図中▲)、斜め後方(θ=30°)に送出される場合(図中◆)、斜め後方(θ=40°)に送出される場合(図中■)を比較する。図9から、吹出口1310から送出する気流を斜め後方にθ=20°〜30°程度に設定することにより、気流を鉛直上方(θ=0°)に送出した場合に比べて、天井面S近傍の風速が大幅に増加していることがわかる。また、θを40°程度にすると、天井面S近傍の風速は鉛直上方(θ=0°)に送出した場合とほぼ同等となる。
この現象を以下の比較により明らかにする。まず、図9において、空気清浄機10の後面1200側を部屋の側壁面W1に面して床面Fに設置し、空気清浄機10の吹出口1310から気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合において、側壁面W1から距離300mmの間隔をあけて空気清浄機10を配置した場合(図中●)と、側壁面W1からの距離を0mmにして、空気清浄機10の後面1200を側壁面W1に接して配置した場合(L=70mm)(図中○)を比較する。図9から、側壁面W1から距離300mmの間隔をあけて空気清浄機10を設置した場合(図中●)に対し、側壁面W1からの距離を0mmにして、空気清浄機10の後面1200を側壁面W1に接して配置した場合(図中○)の方が、空気清浄機10の前面側1100の天井面Sに沿った風速は大きくなっていることがわかる。これは、側壁面W1から距離300mmの間隔をあけて空気清浄機10を設置した場合、気流の一部が空気清浄機10の後面1200側へ回り込み、前面1100側へ流れる気流が損なわれていることを示している。すなわち、空気清浄機の設置位置によって、室内の気流に大きな影響を与えることが図9によって裏付けられる。
また、図9において、側壁面W1からの距離を0mmにして、空気清浄機10の後面1200を側壁面W1に接して配置し、空気清浄機10の吹出口1310から気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合(図中○)と、部屋の側壁面W1から距離300mmの間隔をあけて空気清浄機10を床面Fに配置し、空気清浄機10の吹出口1310から気流が斜め後方(θ=20°)に送出される場合(図中▲)を比較する。図9から、空気清浄機10の後面1200を側壁面W1に接して配置し、空気清浄機10の吹出口1310から気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合(図中○)に対し、空気清浄機10の後面1200側を側壁面W1から距離300mmの間隔をあけて配置し、気流が斜め後方(θ=20°)に送出される場合(図中▲)の方が、空気清浄機の天井面Sに沿った風速は大きくなっていることがわかる。これは、空気清浄機10の後面1200を側壁面W1に接して配置し、気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合、側壁面W1によって気流の拡散は抑制されるが、吹き出し直後から気流が側壁面W1の粘性抵抗の影響を受けるためである。これに対し、側壁面W1から300mmの間隔を設けて空気清浄機10を設置し、気流が斜め後方(θ=20°)に送出される場合、側壁面W1によって気流の拡散が抑制され、かつ、側壁面W1に衝突するまで側壁面W1の粘性抵抗の影響を受けないため、空気清浄機10の前面1100側の天井面Sに沿った風速が損なわれにくい。
さらに、図9において、側壁面W1から300mmの間隔を設けて床面Fに設置し、気流が斜め後方(θ=20°)に送出される場合(図中▲)、斜め後方(θ=30°)に送出される場合(図中◆)、斜め後方(θ=40°)に送出される場合(図中■)を比較する。図9から、θが大きいほど、天井面Sに沿った風速は小さくなっていることがわかる。これは、θが大きいほど、側壁面W1に沿って流れる距離が長くなり、側壁面W1の粘性抵抗の影響を受けやすくなること、および、側壁面W1に衝突する際に気流の運動エネルギーが損なわれやすく、また、気流の進行方向に対して横方向への広がりが大きくなる(図11を参照して後述する)ためである。
以上、説明したように、吹出口から送出される気流の角度と空気清浄機の設置位置によって、室内の気流は大きな影響を受けることが図9によって裏付けられる。
本発明の空気清浄機においては、吹出口の中央位置から部屋の側壁面までの距離をL[mm]、吹出口の中央位置から部屋の天井面までの距離をH[mm]とし、距離Lが100<L<600の範囲で選ばれた位置に当該空気清浄機が配置されて用いられるときに、吹出口から送り出される空気を最初に室内の側壁面に到達させるために、吹出口から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方向に対してなす角度θ[°]をtan−1(L/H)<θ≦35の範囲に設定する。
ここで、θの上限値は、図9の結果に基づいて35°に設定される。θの下限値は、図8において、吹出口1310の中央位置と、部屋Rの側壁面W1と天井面Sとが交差する線上の点Pとを結んだ直線がなす角度であるtan−1(L/H)に設定される。角度θがtan−1(L/H)以上であると、吹出口1310から送り出される空気は、少なくとも側壁面W1に最初に衝突するからである。
ところで、θが15°未満の場合においては、天井面Sの高さと、側壁面W1からの距離によって集塵性能が大幅に高まる場合と、大幅に損なわれる場合があるので、注意が必要である。
例えば、側壁面W1から300mmの間隔を設けて空気清浄機を床面Fに設置し、気流が斜め後方(θ=10°)に送出される場合、吹出口から送出された気流は側壁面W1ではなく、まず天井面Sに衝突する。斜め方向から天井面Sに衝突するため、気流は、衝突した面に対してなす角度が鋭角になる方向(空気清浄機の前面側)には流れにくい。つまり、衝突した面に対してなす角度が鈍角になる方向(空気清浄機の後面側)に流れやすいため、気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合よりも空気清浄機の前面側へ流れる気流が損なわれてしまう。すなわち、気流の一部は空気清浄機の後面側へ回り込み、空気清浄機の後面側と側壁面との間の狭い空間を循環し、直ちに空気清浄機に吸引される。この、空気清浄機の後面側に回り込む気流は、部屋全体へ行き渡ることが困難なため、無駄に送出されているといえる。また、部屋全体へ行き渡る風量は、後面側に回り込む気流の分だけ減少するため、集塵能力が損なわれるとともに、気流の到達距離も短くなってしまう。
しかし、側壁面W1から100mmの間隔を設けて空気清浄機を床面Fに設置し、気流が斜め後方(θ=10°)に送出される場合、吹出口から送出された気流は、まず側壁面に衝突する。従って、この場合、側壁面W1から300mmの間隔を設けて空気清浄機を床面Fに設置し、気流が斜め後方(θ=20°)に送出される場合とほぼ同等の効果が得られる。
次に、側壁面W1に対して従来の空気清浄機の吹出口から送出される気流を角度θにて吹き付け、その気流の進行方向の側壁W1近傍の位置と、気流が側壁面W1に吹き付けられる位置の進行方向に対して直交する横方向の側壁面W1近傍の位置のそれぞれにおいて、上記の角度θを変化させたときの風速の変化を調べた。
図10は、空気清浄機の配置と空気清浄機による風速を測定する測定位置を示す図である。図10の(A)において矢印Bの方向から見た図を(B)に示す。
図10に示すように、図34に示す従来の空気清浄機10を側壁面W1近傍に配置し、空気清浄機10の吹出口から送出される気流Vを側壁面W1に向かって吹き付ける角度θを変化させた。図10の(A)と(B)に示すように、風速の測定点として、その気流の進行方向の側壁面W1近傍の位置を進行方向計測点■とし、図10の(B)に示すように、気流が側壁面W1に吹き付けられる位置の進行方向に対して直交する横方向の側壁面W1近傍の位置を横方向測定点▲とした。
図11は、進行方向計測点■と横方向測定点▲における風速の測定結果を示す図である。横軸は気流Vを側壁面W1に向かって吹き付ける角度θ、すなわち、気流Vと側壁面W1とのなす角度θ(単位:°)、縦軸は、その角度θのときの風速(単位:m/s)を示している。図11から、吹き付け角度θが小さいほど、横方向測定点▲における風速が小さいので、気流の横方向への広がりは小さく、側壁面W1に対してθ=90°、すなわち、側壁面W1に対して気流Vを直角に吹き付けた場合には、横方向測定点▲における風速が最も大きいので、気流の横方向への広がりは最も大きくなることがわかる。
次に、従来の空気清浄機の吹出口から気流を角度θ=0°、20°にて送出し、空気清浄機の後面側を部屋の側壁面W1に対向して床面Fに設置し、側壁面W1からの距離Lを変化させたときに、空気清浄機の前面側から1000mm、つまり側壁面W1からL+1000mm離れた天井面Sの風速がどのように変化するかについて調べた。
図12は、空気清浄機の配置と空気清浄機による風速を測定する測定位置を示す図である。
図12に示すように、図34に示す従来の空気清浄機10を部屋R内に以下のように配置した。吹出口1310の中央位置から部屋の側壁面W1までの距離Lを70mm、170mm、370mm、470mm、570mm、または、770mm、吹出口1310の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hを1880mm、従来の空気清浄機10の吹出口1310から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方に対してなす角度θを0°、または、20°とした。このように配置された従来の空気清浄機10を運転して天井面Sに沿った風速を測定した。風速を測定する測定位置は、側壁面W1から、L+1000mm離れた天井面Sの位置とした。空気清浄機から送り出される空気の風量は4.3m3/minとした。
図13は、風速の測定結果を示す図である。
図13(A)は、従来の空気清浄機10の吹出口1310から気流を角度θ=0°、20°にて送出し、空気清浄機10の後面1200側を部屋の側壁面W1に対向して床面Fに設置(H=1880mm)し、その側壁面からの距離Lを変化させたときに、空気清浄機10の前面1100側から1000mm、つまり側壁面W1からL+1000mm離れた天井面Sの風速がどのように変化するかを示す図である。すなわち、Lの変化に伴って、空気清浄機の設置位置だけでなく、測定位置も移動するように測定した。横軸は、側壁W1から吹出口1310の中央位置までの距離(単位:mm)、縦軸は、空気清浄機の前面側から1000mm(側壁W1からL+1000mm)離れた天井面に沿った風速(単位:m/s)を示している。また、図13(B)は、図13(A)の横軸である「側壁面W1から吹出口1310の中央位置までの距離L(単位:mm)」の代わりに、「気流が通過する吹出口1310の中央位置から測定位置までの距離(単位:mm)」を横軸にして、天井面に沿った風速(単位:m/s)の変化を示したものである。このように表現すると、気流を角度θ=20°にて送出する場合には、距離Lの増加に伴い気流が通過する吹出口1310の中央位置から測定位置までの距離も増加するが、気流を角度θ=0°にて送出する場合には、距離Lを変化させても気流が通過する吹出口1310の中央位置から測定位置までの距離は変化しないことがわかる。
図13(A)において、空気清浄機10の吹出口1310から気流を角度θ=0°にて送出する場合(図中●)と、角度θ=20°にて送出する場合(図中▲)を比較する。図13(A)から、L<100mmではθ=0°の方が、100<L<600mmではθ=20°の方が、L>600mmではθ=0°の方が空気清浄機10の前面1100側から1000mm、つまり側壁面W1からL+1000mm離れた天井面S近傍の風速が大きくなっている。上述したように、図6、図7、図9に示した結果から、天井面S近傍の風速が大きいほど集塵性能が高くなるので、すなわち、θ=20°の場合(本実施形態の空気清浄機に相当する)は、θ=0°(従来の空気清浄機に相当する)に対して、100<L<600mmの領域では、集塵性能において優位性を有することがわかる。
以下に、これらの数値限定の臨界的意義について述べる。
まず、空気清浄機の吹出口から気流を角度θ=0°にて送出する場合(従来の空気清浄機に相当する)について詳細に説明する。上述の通り、図13(B)においては、距離Lの変化に伴って、気流が通過する吹出口中央から測定位置までの距離は変化しない。従って、図13(A)のL>400mmの領域において、天井面に沿った風速はほぼ一定となる。但し、図13(A)のL<400mmの領域においては、空気清浄機10と側壁面W1との距離が近くなり、側壁面W1の影響が現れる。すなわち、空気清浄機10と側壁面W1との距離が近いほど(距離Lが小さいほど)、空気清浄機の後面に回り込む気流は減少してロスが少なくなるため、測定位置における風速は増加する。
次に、空気清浄機の吹出口から気流を角度θ=20°にて送出する場合(本実施形態の空気清浄機に相当する)について詳細に説明する。この場合、距離Lの増加に伴い気流が通過する吹出口の中央位置から測定位置までの距離も増加するので、距離Lの増加に伴い計測位置における風速は低下する。但し、図13(A)、(B)のL<170mmの領域においては、空気清浄機10と側壁面W1との距離が近くなり、側壁面W1の影響が現れる。すなわち、空気清浄機10と側壁面W1との距離が近いほど(距離Lが小さいほど)、気流が側壁面W1に衝突し、運動エネルギーが損なわれて、その分のロスが大きくなるため、測定位置における風速は減少する。なお、170<L<370mmの領域において、計測位置における風速が最も増加する。
次に、角度θ=0°、20°の場合を比較する。
まず、空気清浄機10と側壁面W1との距離が近く、側壁面W1の影響が強く表れるL<100mmの領域において、θ=20°で吹出口から気流を送出すると、気流が側壁面W1に衝突し、運動エネルギーが損なわれるデメリットが大きくなり、測定位置における風速は比較的遅い。θ=0°の場合は、空気清浄機10の後面に回り込む気流は大きく減少してロスが大幅に少なくなるメリットのため、測定位置における風速は比較的速い。従って、L<100mmの領域においては、θ=20°の場合に比べてθ=0°の場合、天井面近傍の風速が大きくなり、集塵性能が高くなる。
次に、100mm<L<600mmの領域において、θ=0°で吹出口から気流を送出すると、気流はまず天井面Sに衝突する。鉛直方向から天井面Sに衝突するため、気流は四方八方に分散してしまう。つまり、空気清浄機10の後面側へ気流の一部が回り込んでしまうロスのデメリットが大きい。これに対して、θ=20°の場合は、吹出口から送出された気流はまず側壁面W1に衝突する。斜め方向から側壁面W1に衝突するため、気流は衝突した面に対してなす角度が鋭角になる方向(床面Fに向かう方向、後述の図16において矢印Dで示す方向で、このとき、θ1は鋭角である)には流れにくいため、気流は衝突した面に対してなす角度が鈍角になる方向(天井面Sに向かう方向、後述の図16において矢印Cで示す方向で、このとき、θ2は鈍角である)に収束する。つまり、空気清浄機10の後面側へ回り込む気流はほとんどない。このメリットが非常に大きい。但し、空気清浄機10の前面側へ導かれる距離はθ=0°に比べて長くなるが、このデメリットは、上記のメリットに比べて小さい。従って、θ=0°で空気清浄機10の後面側へ気流の一部が回り込んで損失する量と、θ=20°で空気清浄機10の前面側へ導かれる距離が長くなることによって損失する量の大小関係により、天井面Sに沿った風速に差が生じる。100<L<600mmの領域においては、θ=20°の方がθ=0°に比べて損失する量が少ないため、θ=20°の方が天井面S近傍の風速が大きくなり、集塵性能が高くなる。なお、両者の差がもっとも大きくなるのは、図13(A)から、L=370mm(側壁面W1と空気清浄機10の後面との距離が300mm)の場合である。
また、L>600mmの領域において、θ=20°で吹出口から気流を送出すると、距離Hの大きさによっては、気流はまず側壁面W1に到達する場合と、天井面Sに到達する場合がある。
まず、側壁面W1に到達する場合、斜め方向から側壁面W1に衝突するため、気流の運動エネルギーが損なわれにくく、また、気流は衝突した面に対してなす角度が鋭角になる方向(床面Fに向かう方向)には流れにくいため、衝突した面に対してなす角度が鈍角になる方向(天井面Sに向かう方向)に収束するが、空気清浄機10の前面側へ導かれる距離が長くなるため、デメリットが非常に大きくなる。
一方、天井面Sに到達する場合、気流は衝突した面に対してなす角度が鋭角になる方向(空気清浄機10の前面側)には流れにくく、衝突した面に対してなす角度が鈍角になる方向(空気清浄機10の後面側)に流れやすい。つまり、空気清浄機10の後面側へ流れる気流が多くなるため、空気清浄機10の前面側の天井面Sに沿った風速は大きく損なわれる。これに対して、θ=0°で吹出口から気流を送出する場合、上記に示す通り、L>400mmの領域においては、距離Lの大きさに関わらず、デメリットはほぼ一定となる。従って、L>600mmの領域においては、θ=0°のデメリットが、θ=20°のデメリットに対して小さくなるため、θ=0°の方が天井面S近傍の風速が大きくなり、集塵性能が高くなる。
すなわち、上記により、部屋の側壁面W1近傍(100mm<L<600mm)に配置される空気清浄機において、本発明の空気清浄機の構成では天井面S近傍の風速が大きくなり、効果的に室内空気を清浄化できることが図13(A)、(B)の結果によって裏付けられる。
また、図13は、H=1880mm、すなわち、床面Fから天井面Sの高さが2.5mである一般的な部屋における風速の測定結果の一例を示している。吹出口の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hが変化しても、気流が天井面Sに到達するまでの距離の増減は、気流の吹出し角度θによらず、距離Hに依存する。従って、部屋の側壁面W1近傍(100mm<L<600mm)に配置される空気清浄機において、吹出口の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hが長くなれば、それに応じて風量を大きくする必要はあるが、本発明の空気清浄機では、吹出口の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離に関係せず、図13と同様の効果が得られるため、天井面S近傍の風速が大きくなり、効果的に室内空気を清浄化することができる。
ここで、空気清浄機の適用床面積をA(m2)、部屋の高さをh(m)、部屋の体積をV(m3)、空気清浄機の風量をQ(m3/min)、空気清浄機の集塵効率をη(%)とすると、日本電機工業会規格(JEM1467)において、
A=7.7×Q×η/100
と規定されており、適用床面積Aは風量Qに比例する。
A∝Q
また、部屋の体積Vは床面積Aと部屋の高さhに比例する。
V∝A
V∝h
従って、部屋を効果的に清浄化するためには、部屋の体積、つまり、床面積、部屋の高さに応じて風量を変化させる必要がある。
Q∝h
すなわち、部屋の側壁面近傍(100mm<L<600mm)に配置される空気清浄機において、部屋の高さ、つまり、吹出口の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hに比例して風量Qを変化させれば、本発明の空気清浄機では、吹出口の中央位置から部屋の天井面Sまでの距離Hに関係せず、図13と同様の効果が得られるため、天井面S近傍の風速が大きくなり、効果的に室内空気を清浄化することができる。
以上、説明したように、図9、図11の結果から、空気清浄機の吹出口から送出される気流の角度、および、空気清浄機の設置位置によって、室内の空気の流れ、すなわち、天井面S近傍の風速分布、および、気流が側壁面W1に吹き付けられた際の気流の横方向への広がりが大きく変わる。これらの現象を踏まえて、本発明の空気清浄機と従来の空気清浄機における気流の挙動を説明する。
すなわち、従来の空気清浄機のように、空気清浄機の吹出口から気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合、吹出口から送出された気流はまず天井面に衝突する。垂直方向から天井面に衝突するため、気流の運動エネルギーが大きく損なわれ、また、気流は四方八方にほぼ均等に分散してしまう。つまり、空気清浄機の後面側へ気流の一部が回り込んでしまう。このため、空気清浄機の前面側の天井面に沿った風速は著しく低下する。すなわち、空気清浄機の前面側へ流れる気流(風量)が損なわれている。また、気流が天井面に衝突した際に気流は四方八方にほぼ均等に分散してしまうので、気流の方向を制御することができず、空気を清浄化したい空間(居住空間、人が存在する空間)側へ意図して気流を送出することができない。
これに対して、本発明の空気清浄機のように、空気清浄機の吹出口から気流が斜め後方に送出される場合、吹出口から送出された気流はまず側壁面に衝突する。斜め方向から側壁面に衝突するため、気流の運動エネルギーが損なわれにくく、また、気流は衝突した面に対してなす角度が鋭角になる方向(床面に向かう方向)には流れにくいため、衝突した面に対してなす角度が鈍角になる方向(天井面に向かう方向)に収束する。つまり、空気清浄機の後面側へ回り込む気流はほとんどない。また、図11の結果から、気流が側壁面に斜め方向から衝突する箇所においては、気流の横方向への拡散が少ないため、気流は分散しにくく、天井面に向かう方向へ流れる気流はあまり損なわれない。このため、吹出口から送出される気流の角度にもよるが、空気清浄機の前面側の天井面に沿った風速はあまり損なわれない。すなわち、空気清浄機の前面側へ流れる気流(風量)はあまり損なわれない。さらに、気流が側壁面に衝突した際に気流は衝突した面に対してなす角度が鈍角になる方向(天井面に向かう方向)へ収束するため、気流の方向を制御することができる。以上により、本発明の構成により、気流の到達距離が大幅に延長されるので、空気を清浄化したい空間(居住空間、人が存在する空間)側へ意図して気流を送出することができる。
次に、本発明の空気清浄機の構成によって部屋の中を流通する気流が上記のように変化した場合、従来技術の空気清浄機に対して、室内、特に空気清浄機から離れた位置の空気をいかにして効果的に清浄化することができるのかについて、そのメカニズムを説明する。
図14は、従来技術の空気清浄機の室内気流を模式的に示した断面図である。また、図15は、従来技術の空気清浄機の室内気流(壁面に沿った気流)を模式的に示した展開図である。
図14に示すように、従来技術の空気清浄機10から送出される気流は、吹出口から清浄化空気が真上(鉛直上方)に吹き出され、天井面Sに鉛直方向から衝突する。このとき、気流は天井面Sに鉛直方向から衝突するため、衝突する際に運動エネルギーが大きく損なわれ、また、気流は四方八方にほぼ均等に分散する。
したがって、図15に示される気流の関係は次の式で表わされる。
A1≒A2≒A3≒A4≒A5≒A6≒A7≒A8
このとき、その一部A4、A5、A6(約1/4の気流)は空気清浄機の背後に回り込んでしまい、直ちに空気清浄機に吸引される。すなわち、一部(約1/4)の気流A4、A5、A6は部屋全体へ行き渡ることが困難なため、室内空気の清浄化にほとんど寄与しなくなってしまう。従って、従来技術の空気清浄機から送出される気流には、無駄に送出していた気流があるので、従来技術の空気清浄機では効果的に室内空気を清浄化することができない。
同様の観点で、本発明の空気清浄機を考えると、次のようになる。
図16は本発明の空気清浄機の室内気流を模式的に示した断面図である。また、図17は本発明の空気清浄機の室内気流(壁面に沿った気流)を模式的に示した展開図である。
図16に示すように、本発明の空気清浄機1から送出される気流は、吹出口から清浄化空気が斜め後方に吹き出され、まず、背後の側壁面W1に衝突する。気流は、背後の側壁面W1に鉛直方向からではなく、側壁面W1に対して斜め方向から衝突するため、衝突する際に運動エネルギーが損なわれにくい。また、気流は背後の側壁面W1に沿って滑らかに天井面Sに向かう方向(図16に示す矢印Cの方向)へと流れる。
このとき、図17に示す気流の関係は次の式で表わされる。
B1>B2≒B8>B3≒B7>B4≒B6>>B5
このとき、気流は衝突した面に対してなす角度が鋭角になる方向(床面Fに向かう方向、後述の図16において矢印Dで示す方向で、このとき、θ1は鋭角である)には流れにくいため、空気清浄機の背後に回り込む気流は従来に比べて大幅に減少する。
すなわち、図17に示す気流の関係は次の式で表わされる。
A5>>B5
すなわち、気流のほとんど全てが室内空気の清浄化に寄与することになる。従って、本発明の空気清浄機から送出される気流によって効果的に室内空気を清浄化することが可能となる。
本発明の構成による効果は、特に空気清浄機の前面方向へ遠く離れた位置(広い空間)で、より優位性を発揮する。なぜならば、従来の空気清浄機から送出される気流はロス(空気清浄機の背面側へ流れる気流)が多く、本発明の空気清浄機から送出される気流はロスが少ない。つまり、吹出口では同一風量でも、空気清浄機の前面側へ導かれる風量に差が生じる。また、本発明の空気清浄機から送出される気流はコアンダ効果を活用している。側壁面から天井面へと壁面に沿わせているため、気流が拡散しにくく、ポテンシャルコア領域が延長されるため、気流の到達距離が延長される。従来の空気清浄機から送出される気流は空気清浄機から遠く離れた位置に気流が到達しにくいため、気流が届かない離れた位置によどみが生じやすく、そのよどみ領域の空気の清浄化は濃度差に基づく拡散による。これに対して、本発明の空気清浄機から送出される気流はロスが少なく、かつ、コアンダ効果により気流の到達距離が延長されるため、空気清浄機から遠く離れた位置に気流が到達しやすい。従って、本発明の空気清浄機から送出される気流の方が空気清浄機の前面方向へ遠く離れた位置で効果を発揮し、より広い空間を効果的に清浄化することができる。
なお、参考に、従来の空気清浄機から送出される気流の場合と本発明の空気清浄機から送出される気流の場合において、部屋の空間を循環する気流の経路、すなわち流線を、CFD(Computational Fluid Dynamics)解析(コンピュータシミュレーション)を用いて可視化した結果を図18に示す。
解析の条件としては、8畳の部屋において、空気清浄機の吹出しの風速(4m/s)、風量とも同一に設定し、吹出しの角度のみ、従来の空気清浄機から送出される気流の場合は鉛直方向、本発明の空気清浄機から送出される気流の場合は鉛直方向に対してなす角度、または、部屋の側壁面に対してなす角度を20°に設定する。また、時刻:T=0から解析を開始し、新気流(本発明の空気清浄機から送出される気流)において吹出口から送出された流線が最初に吸込口に到達する時刻をT=t0、従来気流(従来の空気清浄機から送出される気流)において吹出口から送出された流線が最初に吸込口に到達する時刻をT=t1、として、時刻:T=0の時に空気清浄機の吹出口にある流れが、時刻:T=t0、T=t1、のそれぞれにおいてどのような軌跡を辿ったか、流線の奇跡を表したものである。なお、図中の上段に記載の各図は、図14、図16に対応する。また、図中の中段に記載の各図は、図15、図17の天井面Sの部分を右方向に90°回転したものに対応する。また、図中の下段に記載の各図は、図8に示す側壁面W2側から側壁面W1を見た図である。
図18から、時刻をT=t0においては、時刻:T=0に吹出された気流は、本発明の空気清浄機から送出される気流においては部屋を大きく循環して再度空気清浄機に到達しているのに対し、従来の空気清浄機から送出される気流においては、部屋の空気清浄機から遠い位置にて大きな渦に巻き込まれて停滞している様子がわかる。また、参考として、時刻:T=t1と時刻:T=t0の関係は、
t1=1.7×t0
となっている。つまり、解析上、従来の空気清浄機から送出される気流が部屋を大きく循環して再度空気清浄機に到達するのに要する時間は、本発明の空気清浄機から送出される気流に比べて、1.7倍の時間を要する。
なお、実際の塵埃の挙動を考えた場合、塵埃の質量>空気の質量のため、気流の流れに対して塵埃の動きは遅れる。つまり、図18の気流の挙動が塵埃の挙動を表すわけではない。但し、気流の流れと塵埃の動きには強い相関があると考えられるため、これらのCFD解析結果からも、本発明の効果が十分に裏付けられる。
また、既に図7を参照して説明したように、本発明の空気清浄機が、従来技術の空気清浄機に対して、気密性が低い部屋の空気をより効果的に清浄化することができるメカニズムについて説明する。
図19は、気密性の低い部屋(図5(B)に示すように室内の壁や窓に微細な隙間がある部屋)において、従来技術の空気清浄機を設置した場合の隙間近傍の様子を模式的に示した断面図である。また、図20は、気密性の低い部屋(図5(B)に示すように室内の壁や窓に微細な隙間がある部屋)において、本発明の空気清浄機を設置した場合の隙間近傍の様子を模式的に示した断面図である。
大気中に飛散する浮遊塵が非常に多い場合、例えば花粉の飛散が極めて多い日などに室内にて空気清浄機を運転すると、室外と室内に浮遊塵の濃度差が生ずる。例えば、気密性の低い部屋の場合、壁や窓の微細な隙間から、上記の濃度差に応じた量の浮遊塵が室外から室内に侵入する。
今、浮遊塵の室外と室内の濃度差をc(g・m-3)、浮遊塵の移動距離をx(m)、浮遊塵の拡散係数をD(m2・s-1)とすると、単位面積あたり、単位時間あたりの室外から室内への浮遊塵の侵入量(拡散束)J(g・m-2・s-1)は、室内外に圧力差がない場合、
で表される。
浮遊塵の室内外の濃度差による、室外から室内への浮遊塵の流入圧力をp1とすると、p1は濃度差cの関数として
のように表される。
次に、室内の壁や窓の微細な隙間近傍の圧力を考える。従来の空気清浄機から送出される気流の場合において隙間近傍の圧力をpA、隙間近傍を流通する気流の流速をVAとすると、空気の密度をρ、大気圧をp0として、
と表される。
また、本発明の空気清浄機から送出される気流の場合において隙間近傍の圧力をpB、隙間近傍を流通する気流の流速をVBとすると、上記と同様に、
と表される。
次に、室外の壁や窓の微細な隙間近傍の圧力を考える。
隙間近傍の圧力をpC、隙間近傍を流通する気流の流速をVCとすると、空気の密度をρ、大気圧をp0として、
と表される。
さて、壁や窓の微細な隙間から室内に流入する浮遊塵の流入圧力は、上記の差圧で表される。すなわち、従来の空気清浄機から送出される気流の場合において浮遊塵の流入圧力をΔpA、本発明の空気清浄機から送出される気流の場合において浮遊塵の流入圧力をΔpBとすると、それぞれ次のように表される。
図9の結果から、VA<VBであり、ΔpAおよびΔpBはVAおよびVBのそれぞれの2乗の関数で表わされるので、ΔpA≫ΔpBとなる。つまり、本発明の空気清浄機から送出される気流の場合においては、壁面近傍に比較的風速の大きい気流を沿わせているため、従来の空気清浄機から送出される気流の場合に比べて、壁や窓の微細な隙間に、風速が大きい分の動圧が加わり、その分、室内を陽圧することと同様の効果が得られる。このため、本発明の空気清浄機から送出される気流の場合においては、浮遊塵の室内への流入量が減少する。
つまり、本発明の構成による上記の効果は、特に気密性の低い部屋で、より優位性を発揮する。なぜならば、空気清浄機で室内の空気を清浄化すると、室外に比べて室内の粉塵濃度が低くなる。そういう状態になると、濃度差による拡散(透過圧)が生じ、室外から室内へ粉塵が侵入しやすくなる。ここで、従来の空気清浄機から送出される気流の場合においては、壁面に沿った風速が小さいため、壁面近傍の全圧を陽圧する効果が小さく、本発明の空気清浄機から送出される気流の場合においては、壁面に沿った風速が大きいため、壁面近傍の全圧を陽圧する効果が大きい。つまり、本発明の空気清浄機から送出される気流の方が陽圧効果(シールド効果)の差によって、壁面の隙間から室内へ侵入しようとする粉塵を抑制することができるため、気密性の低い部屋で、より優位な効果を発揮する。
これを明らかにするために、以下のような分析を行う。すなわち、従来の空気清浄機(図34)と本発明の空気清浄機(図1)のそれぞれを、気密性の高い部屋(図5(A))と気密性の低い部屋(図5(B))のそれぞれに設置して運転し、部屋の粉塵の減少の様子を比較する。
図21は、従来の空気清浄機を運転したときの粉塵濃度の時間的変化を示す図であり、従来の空気清浄機を気密性の高い部屋に置いた場合(図中■)と気密性の低い部屋に置いた場合(図中□)とを比較して示す図である。図22は、本発明の空気清浄機を運転したときの粉塵濃度の時間的変化を示す図であり、本発明の空気清浄機を気密性の高い部屋に置いた場合(図中▲)と気密性の低い部屋に置いた場合(図中△)とを比較して示す図である。横軸、縦軸については、それぞれ図6と同様である。
まず、図21から、従来の空気清浄機から送出される気流では、部屋の気密性が低い場合は、気密性が高い場合に比べて著しく清浄化効果が損なわれることがわかる。これは、気密性が低いと室外から室内へ粉塵が侵入しやすいためである。図21中の■と□の差が、部屋の気密性が低い場合に室外から室内に侵入した粉塵量であると見積もることができる。
これに対して、本発明の空気清浄機から送出される気流では、図22から、部屋の気密性の違いによる清浄化効果の差が小さいことがわかる。これは、上記のメカニズムで説明したように、本発明の空気清浄機から送出される気流では、壁面近傍の全圧を陽圧する効果が大きいため、室外から室内へ侵入しようとする粉塵を抑制することができるからである。図22中の▲と△の差が、部屋の気密性が低い場合に室外から室内に侵入した粉塵量であると見積もることができる。
図22中の▲と△の差が図21の■と□の差に対して大幅に減少しているので、部屋の気密性が低い場合に本発明の空気清浄機を運転したときに室外から室内に侵入する粉塵量は、部屋の気密性が低い場合に従来の空気清浄機を運転したときに室外から室内に侵入する粉塵量よりも大幅に減少することがわかる。
ここで、部屋の気密性の違いによる粉塵濃度の差(上記の室外から室内に侵入する粉塵量)を時間的に平均した、単位時間あたりの室外から室内へ侵入する平均粉塵量を比較すると、本発明の空気清浄機は、従来技術の空気清浄機に対して、単位時間あたりの室外から室内へ侵入する平均粉塵量を約1/30に抑制することができている。従って、図21と図22の結果に基づいて、図7に示すように、本発明の空気清浄機が、従来技術の空気清浄機に対して、気密性の低い部屋の空気をより早く効果的に清浄することができる。
また、本発明の空気清浄機が、従来技術の空気清浄機に対して、室内の空気をより効果的に清浄化することができる部屋の大きさと風量の関係について説明する。
本発明の空気清浄機は、従来技術の空気清浄機に対して、吹出口から送出される気流の到達距離が延長される。例えば、図9から、従来の空気清浄機の場合(図9中●:θ=0°)と、本発明の空気清浄機の場合(図9中▲:θ=20°)における、天井面に沿った風速が0m/sになるときの、側壁からの距離、すなわち気流の到達距離を、図9中の側壁からの距離と風速との関係を示すそれぞれの線と横軸との交点から予測すると、風量が4.3m3/minの時、従来技術の空気清浄機では到達距離が約3.5m、本発明の空気清浄機では到達距離が約4.8mとなる。従って、側壁からの距離が3.5m以上の空間では、本発明の空気清浄機が、従来技術の空気清浄機に対して、室内の空気を、より効果的に清浄化することができると考えられる。
ここで、床面積をA(m2)、空気清浄機の後面側の側壁面に接する床面の一方の辺の長さをa(m)、床面の他方の辺の長さをb(m)、空気清浄機の風量をQ(m3/min)とし、風量Qを床面積Aで除した値を考える。図9に示す風速の変化の測定がなされた部屋(図8)において、空気清浄機10の後面側の側壁面W1に接する床面Fの辺の長さは3.5mであるので、従来技術の空気清浄機の場合、
となる。
このことから、本発明の空気清浄機が、従来技術の空気清浄機に対して、室内の空気を、より効果的に清浄することができる範囲は次のように表される。
ここで、a≦bとなるように空気清浄機を配置することが望ましい。
また、本発明の空気清浄機の場合も同様に考えると、
となる。
このことから、本発明の空気清浄機が、従来技術の空気清浄機に対して、室内の空気を、最も効果的に清浄することができる範囲は次のように表される。
さらに、本発明の空気清浄機の構成によると、従来技術の空気清浄機に対して大幅に低騒音化することができる。本発明の構成によると、従来の空気清浄機に対し、約▲4dB、騒音エネルギーを約60%削減することができる。この大幅な低騒音化を可能とするメカニズムについて説明する。
従来の空気清浄機においては、吸込口と吹出口の2つが空気清浄機の大きな騒音発生源となっている。まず、吸込口について考えると、従来、吸込口は、空気を本体に取り込みやすくするために空気清浄機の前面側に配置されていた。しかし、音の問題や、フィルターに蓄積する塵埃を目立たなくするため、また、外観を良くするために、空気清浄機の前面側には、吸込口とフィルターを覆うようにパネルが設けられている場合が多い。この場合、吸込口を空気清浄機の前面側に配置し、空気を本体に取り込みやすくするという本来の目的が大きく損なわれ、パネルによる通風抵抗が大きいために音を低減する効果も大きく損なわれていた。
本発明の空気清浄機においては、吸込口を後面側に配置することによって、吸込口からの音が直接前面側へ漏れることを防止している。前面側へ音が伝わるまでに、音の進行方向は180°向きを変えられることになり、その間に回折効果で音が減衰することによって、低騒音化することができる。また、吸込口を後面側に配置することによって、フィルターに蓄積する塵埃を目立たなくする等の外観上の課題が解消される。つまり、パネルでフィルター全体を覆う必要性も解消されるため、パネルの通風抵抗を大幅に低減することが可能となり、低騒音化が可能となる。
次に吹出口について考えると、従来の空気清浄機においては、吹出口は人に風ストレスを与えないように、また、できるだけ障害物のない方向に気流を送出すること等を考慮して、空気清浄機の頂面側に配置されていた。また、送風機から吹出口に連通する吹出流通路は直線状に形成され、送風機で発生した音が吹出口から直接放出されていた。
本発明の空気清浄機においては、上記の吹出流通路を傾斜させることによって、空気清浄機の吹出口の位置で気流を部屋の側壁面側に曲げる必要がないため、送風経路の圧力損失が低減し、消費電力が改善されるとともに騒音が低減される。
図23は、シロッコファンの高さと吹出流通路を形成する前壁の長さとの関係を示す概略的な断面図である。
図1と図23に示されるように、上記の吹出流通路180を形成する壁面のうち、部屋の側壁面W1から最も遠い位置に配置される壁面、すなわち前壁181の空気流に沿う方向の長さは、シロッコファンの高さをtとすると、t/sinθ以上に設定されるので、鉛直上方から見て吹出口131からシロッコファン171が見えない。従って、送風機170から発生する騒音が吹出口131から放出される前に、吹出流通路180において少なくとも1回は吹出流通路180を形成する壁面に衝突することになる。
音が壁面に衝突すると反射されるが、その全てがそのまま反射されるわけではなく、一部は透過し、また、一部は壁面に衝突した際に熱エネルギーや、壁面の振動エネルギーとして失われ、減衰する。また、音が反射されると吹出流通路180内で音の干渉が生じやすくなり、さらに音が減衰することになる。さらに、吹出流通路180を人が存在する空間と反対方向に傾斜させることにより、吹出口131から放出された音は従来よりも回折して人が存在する空間へと伝播されることになるため、音の減衰効果が高まる。従って、傾斜した吹出流通路180内で反射、干渉を行いながら減衰した音が吹出口131から放出され、さらに回折により音の減衰効果が高められることにより低騒音化が可能となる。
また、本発明によると、吹出流通路180は、一例として、断面積が約20°の角度(奥行寸法一定の場合)で下流に行くほど拡大するので、吹出流通路180の壁面に沿う気流の剥離が抑制される。このため、流路抵抗が小さく、気流の運動エネルギーは効率良く静圧に変換される。すなわち、送風機(ファン)の受け持つ仕事である静圧上昇の一部が、上記の、運動エネルギーが変換されることにより生み出される静圧によってまかなわれるため、送風機(ファン)の仕事に必要となるエネルギーが少なくてすみ、少ない消費電力で所望の仕事をさせることができる。
さらに、本発明によると、吹出流通路は、断面積が下流に行くほど一定の割合(奥行寸法一定の場合、約20°の角度)で拡大し、かつ、奥行寸法は下流に行くほど縮小し、絞られた形状(アスペクト比の高い断面積)を有するので、吹出口の断面積のアスペクト比が高くなり、これに伴い、吹出口から送出される気流の断面のアスペクト比も高くなる。このとき、気流の流通する面積が同じでも壁面と接する割合が増大するため、周囲の気流の影響を受けにくくなる。このため、流れが収束するので、気流のポテンシャルコアが延長される。これにより、気流の到達距離が延長される。すなわち、上記の構成により運動エネルギーが静圧に変換されて流速の低下した気流の到達距離を延長することができる。
本発明の空気清浄機によると、気流が効率良く送出され、到達距離が大幅に延長するので、部屋の空気清浄機から遠い空間の空気をより早く浄化することができるとともに、気流の動圧による陽圧効果により、室外の粉塵が室内に侵入するのを防ぐことができる。また、吸込口を空気清浄機の後面に配置し、吹出流通路を後方上方に傾斜させることによって音の反射、干渉、回折の効果が得られ、低騒音化が可能となる。すなわち、本発明の空気清浄機によると、低騒音で、かつ、使用者の居住領域を効果的に清浄化することが可能で快適な空間を得ることができる。
(実施形態1−2)
以下に本発明の実施形態1−2について図面を参照して説明する。図24は実施形態1−2の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。
図24に示すように、空気清浄機2は、床面Fの上または卓上に設置され、部屋の側壁面W1の近傍に配置されて用いられる空気清浄機である。空気清浄機2は、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口222と、本体に設けられ、吸込口222から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段としてのエアフィルタ250と、本体に設けられ、エアフィルタ250で処理された空気を室内に送り出すための吹出口231と、本体に設けられ、吸込口222から吹出口231まで空気を移動させるための送風手段としての送風機270を備えている。
空気清浄機2の本体は筐体200によって保持されている。筐体200は床面Fの上に設置され、前面(正面)210と後面(背面)220と頂面(天面)230と、床面Fに接触する底面240とを有する。筐体200の後面220は多数の格子状の吸込口222が設けられた穴あきパネル221にて覆われている。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機2の側面を後面220側、その反対側を前面210側とする。
筐体200は、後面220側を部屋の側壁面W1に対向させて側壁面W1から、たとえば、300mmの間隔を設けて床面Fの上に設置される。筐体200の頂面230には、吹出口231が設けられている。吹出口231は筐体200の幅方向に延びる略矩形状に形成され、後方上方に臨んで設けられている。
筐体200の内部には、吸込口222から吹出口231に連通する吸込流通路260および吹出流通路280とかなる送風経路が形成されている。送風経路内には空気を送出する送風機270が配置されている。送風機270に用いられるファンとしては、シロッコファン271が用いられる。送風経路のうち、シロッコファン271の下流側には、シロッコファン271から吹出口231に至るまで空気が流れる吹出流通路280が形成されている。吹出流通路280によって、シロッコファン271により送出される空気を後方上方に案内する。吹出流通路280の断面積は、吹出口231に近づくほど、下流に行くほど拡大する。吹出流通路280は、図2と図3に示されるものと同様の構成を有する。
実施形態1−1では、送風機170とシロッコファン171の部分が直立するように設けられているが、本実施形態では、送風機270とシロッコファン271の部分が傾斜して設けられ、送風機270とシロッコファン271を通過する送風経路も吹出流通路280と同様に傾斜している。また、送風経路中のシロッコファン271とエアフィルタ250との間の吸込流通路260には、加湿装置291が設けられている。さらに、空気清浄機2の上部前面側に加湿装置291用の水タンク292が設けられている。
本実施形態の空気清浄機2によると、送風機270とシロッコファン271の部分の送風経路が吹出流通路280と同様に傾斜しているので、送風機270とエアフィルタ250の間の距離が大きくなる。このため、エアフィルタ250全体から均一に空気を取り入れやすくなるため、圧力損失を低減することができる。また、その空間に加湿装置291を設けることもできる。さらに、空気清浄機2の上部前面側の空間に加湿装置291用の水タンク292を設けることができる。水タンク292は、送風経路で発生する音の一部を遮音する効果を有するため、低騒音化することができる。
従って、送風機270とシロッコファン271の部分の送風経路が吹出流通路280と同様に傾斜しているため、空気清浄機2の設置面積はやや大きくなるが、実施形態1−1の空気清浄機1とほぼ同等の効果が得られる。
(第2の実施形態)
(実施形態2−1)
以下に本発明の実施形態2−1について図面を参照して説明する。図25は実施形態2−1の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。前述の図1〜図3に示す実施形態1−1と同様の部分には同一の符号が付されている。
図25に示すように、本実施形態の空気清浄機3では、筐体100の頂面130は、操作部190が設けられる前面110側の第1頂面と、吹出口131が設けられる後面120側の第2頂面とから形成される。操作部190は、空気清浄機3の前面110側に配置されて空気清浄機3の運転モードを切り替えるために用いられる。吹出口131は、空気清浄機3の後面120側に配置されて清浄化空気を送出するためのものである。その他の部分は実施形態1−1の空気清浄機1と同様である。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機3の側面を後面120側、その反対側を前面110側とする。
本実施形態の空気清浄機3によると、実施形態1−1の空気清浄機1と同等の効果を得ることができるとともに、操作部190が設置される第1頂面が使用者の存在する部屋の中央側に設置され、吹出口131が設置される第2頂面が部屋の側壁面W1側に設けられるということが、空気清浄機3の外観により表現される。いいかえれば、使用者が無意識のうちに空気清浄機3の吹出口131を部屋の側壁面W1側に向けて配置するように、使用者に空気清浄機3を設置させることができる。
なお、吹出口131から送出される清浄化空気を部屋の側壁面W1に到達させない場合には、本発明の空気清浄機の本来の効果は損なわれる場合があるが、空気清浄機3の操作部190が上記のように配置されているので、使用者に無意識のうちに、空気清浄機3を操作部190が設置される第1頂面を使用者に向けて設置させることができるので、上記の効果を確実に得ることができる。
さらに、操作部190が空気清浄機3の頂面130の前面110側に配置されているので、操作部の操作性が向上し、空気清浄機3の運転状態を容易に操作することができる。
(実施形態2−2)
以下に本発明の実施形態2−2について図面を参照して説明する。図26は実施形態2−2の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。前述の図1〜図3に示す実施形態1−1と同様の部分には同一の符号が付されている。
図26に示すように、本実施形態の空気清浄機4では、操作部190が空気清浄機4の前面110側の上部に設けられている。その他の部分は実施形態1−1の空気清浄機1と同様である。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機4の側面を後面120側、その反対側を前面110側とする。
本実施形態の空気清浄機4によると、実施形態1−1の空気清浄機1と同等の効果を得ることができるとともに、操作部190が空気清浄機4の前面110側の上部に設けられているので、操作部190の視認性が向上し、空気清浄機4の運転状態を容易に確認することができる。
従って、実施形態2−1に比べて操作性はやや劣るが、実施形態2−1の空気清浄機とほぼ同等の効果が得られる。
(実施形態2−3)
以下に本発明の実施形態2−3について図面を参照して説明する。図27は実施形態2−3の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。前述の図1〜図3に示す実施形態1−1と同様の部分には同一の符号が付されている。
図27に示すように、本実施形態の空気清浄機5では、表示部191が空気清浄機5の前面110側の上部に設けられるとともに、筐体100の頂面130と、筐体100の前面110と、吹出流通路180の後方上方傾斜部181d(図2)との3面によって囲まれる空間に、操作部190および表示部191の制御基板192と電源基板193が配置されている。その他の部分は実施形態1−1の空気清浄機1と同様である。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機5の側面を後面120側、その反対側を前面110側とする。
本実施形態の空気清浄機5によると、実施形態1−1の空気清浄機1と同等の効果を得ることができるとともに、操作部190が空気清浄機5の頂面130の前面110側に設けられているので、操作部の操作性が向上し、空気清浄機の運転状態を容易に操作することができ、さらに、表示部191が空気清浄機5の前面110側の上部に設けられているので、表示部の視認性が向上し、空気清浄機の運転状態を容易に確認することができる。また、上記の空間に制御基板192と電源基板193を収納できるとともに、制御基板192に近接した位置に電源基板193を設置できるので、制御基板192と電源基板193を電気的に結合するためのコードの長さ(図示せず)を短縮することができる。
なお、図35に示すように、従来の空気清浄機20においては、制御基板1920を置くスペースが狭いので、例えば、制御基板1920を送風経路の前方であってエアフィルタ1500の上方の空間に配置し、電源基板1930を筐体1000の底部であって送風機1700の下方に配置して、二つの基板を2箇所に分断して配置する場合がある。このような場合においては、制御基板1920と電源基板1930を電気的に結合するために、長いコード(図示せず)が必要となる。この場合、比較的長いコードの引き回し方法や固定方法に留意しておかないと、例えば、生産組立時や修理時にコードが他の部材にはさみ込まれて損傷を受けるという不具合や、また、送風機の回転に伴って筐体が振動する場合などにコードが筐体に接触して、カタカタ音といった極めて耳障りな騒音を生ずる場合があるので、コードを防振材で包んだり、束ねて固定したりする必要があり、さらに部品点数や工程が増加するといった不都合があった。
本発明の空気清浄機5においては、上述したようにコード(図示せず)の長さを短縮することができるので、従来の場合に生じていた、生産組立時にコードをはさみ込む不具合や、騒音の問題を未然に防ぐとともに、部品点数や工程を削減でき、低コストの空気清浄機を得ることができる。
なお、第2の実施形態を要約すると、以下のとおりである。
(1)空気清浄機は、床上または卓上に設置され、部屋の側壁面の近傍に配置されて用いられる空気清浄機であって、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口と、本体に設けられ、吸込口から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段と、本体に設けられ、除去手段で処理された空気を室内に送り出すための吹出口と、本体に設けられ、吸込口から吹出口まで空気を移動させるための送風手段とを備える。吹出口の中央位置から部屋の側壁面までの距離をL[mm]、吹出口の中央位置から部屋の天井面までの距離をH[mm]とし、距離Lが100<L<600の範囲で選ばれた位置に当該空気清浄機が配置されて用いられるときに、吹出口から送り出される空気を最初に室内の側壁面に到達させるために、吹出口から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方向に対してなす角度θ[°]をtan−1(L/H)<θ≦35の範囲に設定する。
上記のように構成される空気清浄機において、空気清浄機の筐体の頂面は、一方に配置されて空気清浄機の運転モードを切り替える操作部が設けられる第1頂面と、他方に配置されて清浄化空気を送出する吹出口が設けられる第2頂面との2つの異なるほぼ平面に分割されて配置され、鉛直上方から見て、第2頂面に対して、清浄化空気が送出される側と異なる側に第1頂面が配置されることを特徴とする。
この構成によると、操作部が設置される第1頂面が使用者の存在する部屋の中央側に設置され、吹出口が設置される第2頂面が部屋の側壁面側に設けられるということが、空気清浄機の外観により表現される。本空気清浄機の操作部が上記のように配置されているので、使用者が無意識のうちに、吹出口を部屋の側壁面側に向けるように、使用者に本空気清浄機を設置させることができる。
これにより、吹出口が設置される第2頂面が部屋の側壁面側に配置されるので、吹出口から送出される気流が直ちに空気清浄機に吸引される気流が少なくなるとともに、吹出口から送出される気流の横方向への広がりが抑制されるため、気流の到達距離が大幅に延長され、部屋の空気清浄機から遠い位置における風速が大幅に増加する。その結果、部屋の空気清浄機から遠い位置における空気環境の改善効果を高めることができ、広範囲の室内空気を効果的に清浄化することができる。また、無駄に送出されていた気流が少なくてすむため、少ない風量でも所望の空気環境の改善効果を得ることができる。少ない風量で同一の空気環境の改善効果が実現可能なため、騒音が低減される。また、壁面に設けられた窓その他の隙間が存在し、部屋の気密性が低い場合、部屋の壁面近傍の風速を増加することができるため、陽圧効果が得られ、室外から室内へ侵入する粉塵の量を低減することができる。
なお、吹出口から送出される清浄化空気を部屋の側壁面に到達させない場合には、上記の効果は損なわれる場合があるが、本空気清浄機の操作部が上記のように配置されているので、使用者に無意識のうちに、操作部が設置される第1頂面を使用者に向けて本空気清浄機を設置させることができるので、上記の効果を確実に得ることができる。
さらに、操作部をこのように配置することにより、操作しやすい空気清浄機を得ることができる。
(2)上記の構成の空気清浄機において、第2頂面は、第1頂面から離れるに従い、下方になるように傾斜する傾斜面にて構成されることを特徴とする。
この構成によると、吹出口は側壁面に面するように配置される。
このような吹出口から放出される騒音が使用者の存在する部屋の中央側に伝播する経路としては、側壁面に衝突反射して伝播する経路と、吹出口から直接伝播する経路とがある。前者の経路を伝播する騒音は側壁面に反射吸収されて減衰されて伝播するため、低騒音化することができる。また、後者の経路を伝播する騒音は、回折により伝播されるが、吹出口が側壁面に面するように傾斜しているため、回折の効果が高まり、減衰されて伝播するため、低騒音化することができる。
(3)上記の構成の空気清浄機において、第1頂面は、第2頂面から離れるに従い、下方になるように傾斜する傾斜面にて構成されることを特徴とする。
この構成によると、操作部が設置される第1頂面が使用者の存在する部屋の中央側に面するように設置される。これにより、操作部の視認性が向上し、空気清浄機の運転状態を容易に確認することができる。
(4)空気清浄機は、床上または卓上に設置され、部屋の側壁面の近傍に配置されて用いられる空気清浄機であって、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口と、本体に設けられ、吸込口から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段と、本体に設けられ、除去手段で処理された空気を室内に送り出すための吹出口と、本体に設けられ、吸込口から吹出口まで空気を移動させるための送風手段とを備える。吹出口の中央位置から部屋の側壁面までの距離をL[mm]、吹出口の中央位置から部屋の天井面までの距離をH[mm]とし、距離Lが100<L<600の範囲で選ばれた位置に当該空気清浄機が配置されて用いられるときに、吹出口から送り出される空気を最初に室内の側壁面に到達させるために、吹出口から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方向に対してなす角度θ[°]をtan−1(L/H)<θ≦35の範囲に設定する。
上記の構成の空気清浄機において、清浄化空気を送出する吹出口は空気清浄機の筐体の頂面に設けられ、空気清浄機の運転モードを切り替える操作部は空気清浄機の筐体側部の上部に設けられ、鉛直上方から見て、吹出口が設けられる頂面に対して、清浄化空気が送出される側と異なる側の筐体側部の上部に操作部が設けられることを特徴とする。
この構成によると、操作部が配置される空気清浄機の筐体側部が使用者の存在する部屋の中央側に設置されるということが、空気清浄機の外観により表現される。このように本空気清浄機の操作部が配置されているので、使用者が無意識のうちに、吹出し気流が部屋の側壁面側に送出されるように、使用者に空気清浄機を配置させることができる。
このため、吹出口から送出される気流が直ちに空気清浄機に吸引される気流が少なくなるとともに、吹出口から送出される気流の横方向への広がりが抑制されるため、気流の到達距離が大幅に延長され、部屋の空気清浄機から遠い位置における風速が大幅に増加する。その結果、部屋の空気清浄機から遠い位置における空気環境の改善効果を高めることができ、広範囲の室内空気を効果的に浄化することができる。また、無駄に送出されていた気流が少なくてすむため、少ない風量でも所望の空気環境の改善効果を得ることができる。少ない風量で同一の空気環境の改善効果が実現可能なため、騒音が低減される。また、壁面に設けられた窓その他の隙間が存在し、部屋の気密性が低い場合、部屋の壁面近傍の風速を増加することができるため、陽圧効果が得られ、室外から室内へ侵入する粉塵の量を低減することができる。
なお、吹出口から送出される清浄化空気を部屋の側壁面に到達させない場合には、上記の効果は損なわれる場合があるが、本空気清浄機の操作部は、使用者が無意識のうちに、操作部が配置される筐体側部の上部を使用者に向けるように、使用者に本空気清浄機を設置させることができるので、上記の効果を確実に得ることができる。
さらに、操作部をこのように配置することにより、離れた位置から操作部を見やすい空気清浄機を得ることができる。
(5)上記の構成の空気清浄機において、頂面は、操作部が設けられた筐体側部の上部から離れるに従い、下方になるように傾斜する傾斜面にて構成されることを特徴とする。
この構成によると、吹出口は部屋の側壁面に面するように配置される。
このような吹出口から放出される騒音が使用者の存在する部屋の中央側に伝播する経路としては、側壁面に衝突反射して伝播する経路と、吹出口から直接伝播する経路とがある。前者の経路を伝播する騒音は側壁面に反射吸収されて減衰されて伝播するため、低騒音化することができる。また、後者の経路を伝播する騒音は、回折により伝播されるが、吹出口が側壁面に面するように傾斜しているため、回折の効果が高まり、減衰されて伝播するため、低騒音化することができる。
(6)上記の構成の空気清浄機は、表示部をさらに備え、鉛直上方から見て、吹出口が設けられる頂面に対して、清浄化空気が送出される側と異なる側の筐体側部の上部に表示部が設けられることを特徴とする。
この構成によると、表示部が設置される空気清浄機の筐体側部が使用者の存在する部屋の中央側に配置されるということが、空気清浄機の外観により表現される。
このように本空気清浄機の操作部が配置されているので、使用者が無意識のうちに、吹出口を部屋の側壁面側に向けるように、使用者に本空気清浄機を設置させることができる。これにより、上記の効果をさらに確実に得ることができる。
さらに、このように表示部を配置することにより、離れた位置から表示部を見やすい空気清浄機を得ることができる。
(7)上記の構成の空気清浄機において、吹出口は筐体の頂面かつ部屋の側壁面に近接する位置に設けられ、送風機は、筐体内の下部であって部屋の側壁面から離れた位置に送風機の出口を上方に向けて設けられ、送風機の出口と吹出口を連通する吹出流通路は、筐体内の上部であって部屋の側壁面から離れた位置に設けられた送風機の出口と、筐体の頂面かつ部屋の側壁面に近接する位置に設けられた吹出口とを連通するとともに送風機の出口から吹出口に向けて傾斜して構成され、頂面と、鉛直上方から見て吹出口から清浄化空気が送出される側と異なる側の筐体側部と、吹出流通路の側壁であって鉛直上方から見て吹出口から清浄化空気が送出される側と異なる側の吹出流通路の側壁との3面によって囲まれる空間に、操作部および/または表示部の制御基板、ならびに、電源基板が設置されることを特徴とする。
この構成によると、上記の3面によって囲まれる部分に空間が生まれ、この部分に操作部および/または表示部の制御基板、ならびに、電源基板が設置される。
これにより、制御基板に近接した位置に電源基板を設置できるので、制御基板と電源基板を電気的に結合するコードの長さを短縮することができる。
(第3の実施形態)
(実施形態3−1)
以下に本発明の実施形態3−1について図面を参照して説明する。図28は実施形態3−1の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。前述の図1〜図3に示す実施形態1−1と同様の部分には同一の符号が付されている。
図28に示すように、本実施形態の空気清浄機6では、筐体100の頂面が段差部を介して二つの上方頂面部130aと下方頂面部130bから構成され、吹出口131aが上記の段差部に配置され、部屋の側壁面W1に対向するように設けられている。吹出口131aと送風機170の出口とを連通するように吹出流通路180aが形成されている。その他の部分は実施形態1−1の空気清浄機1と同様である。
本実施形態の空気清浄機6によると、吹出口131aから放出される音は、直接使用者のいる居住領域へ伝播せず、回折により伝播する。吹出口131aから回折により伝播する音のエネルギーは、直接使用者の居住領域へ伝播された場合に比べてはるかに音のエネルギーが減衰されるため、吹出口131aから使用者のいる居住領域へ伝播される音が大幅に減少する。この作用により、吹出口131aから放出された音は回折効果により大幅に減衰されて居住領域に伝播するため、空気清浄機6の吹出口131aから放出される騒音を大幅に低騒音化することができる。
従って、吹出口131aが側壁面W1に対向して設けられるため、空気清浄機6の高さ方向の寸法はやや大きくなるが、第1の実施形態の空気清浄機よりもさらに低騒音化の効果が得られる。
(実施形態3−2)
以下に本発明の実施形態3−2について図面を参照して説明する。図29は実施形態3−2の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。前述の図1〜図3に示す実施形態1−1と同様の部分には同一の符号が付されている。
図29に示すように、本実施形態の空気清浄機7では、筐体100の頂面が段差部を介して二つの上方頂面部130aと下方頂面部130bから構成され、吹出口131bが上記の段差部に配置され、部屋の側壁面W1に対向するように設けられている。吹出口131bと送風機170の出口とを連通するように吹出流通路180bが形成されている。特に、本実施形態の空気清浄機7では、吹出流通路180bを部屋の側壁面W1側に屈曲させ、吹出口131bが部屋の側壁面W1に対向するように設けられている。その他の部分は実施形態1−1の空気清浄機1と同様である。
本実施形態の空気清浄機7によると、吹出流通路180bを送風機170の出口から吹出口131bまで滑らかに屈曲させて接続しているため、流路抵抗の増加を抑制できる。
さらに、吹出口131bから放出される音は、直接使用者のいる居住領域へ伝播せず、回折により伝播する。吹出口131bから回折により伝播する音のエネルギーは、直接使用者の居住領域へ伝播された場合に比べてはるかに音のエネルギーが減衰されるため、吹出口131bから使用者のいる居住領域へ伝播される音が大幅に減少する。この作用により、吹出口131bから放出された音は回折効果により大幅に減衰されて居住領域に伝播するため、空気清浄機7の吹出口131bから放出される騒音を大幅に低騒音化することができる。
従って、吹出口131bが部屋の側壁面W1に対向して設けられるため、空気清浄機7の高さ方向の寸法はやや大きくなるが、第1の実施形態の空気清浄機よりも、流路抵抗の増加を抑制しつつ、さらに低騒音化の効果が得られる。
なお、第3の実施形態を要約すると、以下のとおりである。
(1)空気清浄機は、床上または卓上に設置され、部屋の側壁面の近傍に配置されて用いられる空気清浄機であって、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口と、本体に設けられ、吸込口から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段と、本体に設けられ、除去手段で処理された空気を室内に送り出すための吹出口と、本体に設けられ、吸込口から吹出口まで空気を移動させるための送風手段と、この送風手段から吹出口に至るまで空気が流れる吹出流通路とを備える。
上記のように構成される空気清浄機において、吹出流通路は、部屋の側壁面側に屈曲および/または傾斜することを特徴とする。
この構成によると、吹出口から放出される音は、部屋の側壁面側に放出される。音波は直進性がよいので、放出された音が居住領域へ伝播するためには、部屋の側壁面に反射して伝播する、または、吹出口から回折により伝播する、ことになるので、吹出口から直接使用者の居住領域へ伝播される音が大幅に減少する。さらに、吹出流通路内においても音が壁面で反射する。
これにより、部屋の側壁面に反射した音は、一部が部屋の側壁面により音のエネルギーを吸収されて減衰し、他の一部が反射の際の干渉により減衰する。また、吹出口から回折により伝播する音のエネルギーは、直接使用者の居住領域へ伝播された場合に比べてはるかに減衰される。さらに、吹出流通路内においても音が壁面で反射するので、一部は壁面により音のエネルギーを吸収されて減衰し、他の一部は反射の際の干渉により、音のエネルギーが減衰する。すなわち、吹出口から放出された音は反射による干渉効果と回折効果により大幅に減衰されて居住領域に伝播するため、空気清浄機の吹出口から放出される騒音を大幅に低騒音化することができる。
(2)上記の構成の空気清浄機において、吹出流通路は、10°〜35°の範囲内で屈曲および/または傾斜することを特徴とする。
この構成によると、吹出流通路の屈曲部および/または傾斜部における流路抵抗の増加が抑制される。
これにより、吹出流通路を屈曲および/または傾斜させるほど、反射、干渉の効果は高まるが、流路抵抗は大きく増加し、低騒音化の効果が損なわれてしまう。そこで、屈曲および/または傾斜させる角度を10°〜35°の範囲内とすることにより、流路抵抗の増加を抑制しつつ、音の反射、干渉の効果も得られるため、低騒音化の効果が高まる。
(3)上記の構成の空気清浄機において、吹出口は、部屋の側壁面に対向して設けられることを特徴とする。
この構成によると、吹出口から放出される音は、部屋の側壁面側に放出される。音波は直進性がよいので、放出された音が居住領域へ伝播するには、部屋の側壁面に反射して伝播する、または吹出口から回折により伝播する、ことになるので、吹出口から直接使用者の居住領域へ伝播される音が大幅に減少する。
これにより、吹出口から放出される音は、直接使用者のいる居住領域へ伝播せず、回折により伝播する。吹出口から回折により伝播する音のエネルギーは、直接使用者の居住領域へ伝播された場合に比べてはるかに音のエネルギーが減衰されるため、吹出口から使用者のいる居住領域へ伝播される音が大幅に減少する。この作用により、吹出口から放出された音は回折効果により大幅に減衰されて居住領域に伝播するため、空気清浄機の吹出口から放出される騒音を大幅に低騒音化することができる。
(第4の実施形態)
(実施形態4−1)
以下に本発明の実施形態4−1について図面を参照して説明する。図30は実施形態4−1の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。
図30に示すように、空気清浄機8は、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口822と、本体に設けられ、吸込口822から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段としてのエアフィルタ850と、本体に設けられ、エアフィルタ850で処理された空気を室内に送り出すための吹出口831と、本体に設けられ、吸込口822から吹出口831まで空気を移動させるための送風手段としての送風機870を備えている。
空気清浄機8の本体は筐体800によって保持されている。筐体800は床面Fの上に支持部890によって保持されて設置され、前面(正面)810と後面(背面)820と頂面(天面)830と、底面840とを有する。筐体800の後面820は多数の格子状の吸込口822が設けられた穴あきパネル821にて覆われている。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機8の側面を後面820側、その反対側を前面810側とする。
筐体800の頂面830には、吹出口831が設けられている。吹出口831は、筐体800の幅方向に延びる略矩形状に形成され、筐体800を傾斜させることにより、後方上方に臨むことができるように設けられている。
筐体800の内部には、吸込口822から吹出口831に連通する吸込流通路860および吹出流通路880とかなる送風経路が形成されている。送風経路内には空気を送出する送風機870が配置されている。送風機870に用いられるファンとしては、シロッコファン871が用いられる。送風経路のうち、シロッコファン871の下流側には、シロッコファン871から吹出口831に至るまで空気が流れる吹出流通路880が形成されている。吹出流通路880は、傾斜しておらず、直線状の流路である。筐体800を部屋の側壁面W1に向かって傾斜させることにより、吹出流通路880によって、シロッコファン871により送出される空気を後方上方に案内する。本実施形態では、送風機870とシロッコファン871と吹出流通路880の部分が直線状に整列するように設けられ、筐体800を傾斜させることにより、送風機270とシロッコファン271を通過する送風経路も吹出流通路880と同様に傾斜するようになっている。その他の構成は、実施形態1−1の空気清浄機1と同様である。
本実施形態の空気清浄機8によると、空気清浄機8の駆動時には、筐体800を部屋の側壁面W1に向かって傾斜させるため、空気清浄機8の吹出口831の位置で気流を側壁面W1に向かう方向に曲げる必要がないので、送風経路の圧力損失が低減し、消費電力が改善される。
従って、吹出流通路880が傾斜していないため、低騒音化の効果はやや劣るが、第1の実施形態の空気清浄機よりもさらに省エネルギーの効果が得られる。
また、支持部890の傾斜角θの設定を変更することにより、筐体800を使用者の要望に応じた角度に設定変更可能な構成となるので、部屋の高さや、設置する位置に応じて傾斜角θを変更することができ、空気清浄機の最適な設置場所の範囲を拡げることができる。
さらに、傾斜角度θを0°に設定して筐体800を保持する時には、空気清浄機8の奥行き寸法が最小となり、傾斜角度θを90°に設定して筐体800を保持する時には、空気清浄機8の高さ寸法が最小となるため、収納時などにコンパクトとなり、使用者の利便性を大幅に向上させることができる。
(実施形態4−2)
以下に本発明の実施形態4−2について図面を参照して説明する。図31は実施形態4−2の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。前述の図30に示す実施形態4−1と同様の部分には同一の符号が付されている。
図31に示すように、本実施形態の空気清浄機9では、支持部990の構造が実施形態4−1と異なる。その他の部分は実施形態4−1と同様である。
本実施形態の空気清浄機9によると、支持部990は筐体800の側面に設けられ、その支持部990を回転させることにより筐体800を傾斜させて保持するように設定される。
従って、実施形態4−1に比べて、筐体800の底面840の一部が床面Fに接するため、空気清浄機9の前面810側の空気をやや吸い込みにくくなるが、実施形態4−1の空気清浄機とほぼ同等の効果が得られる。
なお、第4の実施形態を要約すると、以下のとおりである。
(1)空気清浄機は、床上または卓上に設置され、部屋の側壁面の近傍に配置されて用いられる空気清浄機であって、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口と、本体に設けられ、吸込口から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段と、本体に設けられ、除去手段で処理された空気を室内に送り出すための吹出口と、本体に設けられ、吸込口から吹出口まで空気を移動させるための送風手段と、筐体を保持して筐体の姿勢を保つ支持部とを備える。吹出口の中央位置から部屋の側壁面までの距離をL[mm]、吹出口の中央位置から部屋の天井面までの距離をH[mm]とし、距離Lが100<L<600の範囲で選ばれた位置に当該空気清浄機が配置されて用いられるときに、吹出口から送り出される空気を最初に室内の側壁面に到達させるために、吹出口から送り出される空気の流れる方向が鉛直上方向に対してなす角度θ[°]をtan−1(L/H)<θ≦35の範囲に設定する。
上記のように構成される空気清浄機において、支持部は、空気清浄機の駆動時に、筐体を鉛直上方に対してtan−1(L/H)<θ≦35の範囲内に設定される角度θをもって後方に傾斜させて保持することを特徴とする。
この構成によると、空気清浄機の駆動により吹出口から送出された清浄化空気は、鉛直上方に対して上記の角度θをなして後方上方に送出される。本空気清浄機を部屋の側壁面近傍に設置し、本空気清浄機の前面を部屋の中央側に向けて配置した場合には、吹出口から送出された清浄化空気は、最初に部屋の側壁面に到達し、この側壁面に沿って上方へ流通し、天井、他の側壁面に沿って部屋内に清浄化空気が循環し、そして吸込口から吸引されるといった挙動を示す。このような気流が生ずると、吹出口から送出される気流が直ちに空気清浄機に吸引される気流が少なくなるとともに、吹出口から送出される気流の横方向への広がりが抑制されるため、気流の到達距離が大幅に延長され、部屋の空気清浄機から遠い位置における風速が大幅に増加する。また、部屋の壁面近傍の風速も大幅に増加する。
その結果、部屋の空気清浄機から遠い位置における空気環境の改善効果を高めることができ、広範囲の室内空気を効果的に清浄化することができる。また、無駄に送出されていた気流が少なくてすむため、少ない風量でも所望の空気環境の改善効果を得ることができる。少ない風量で同一の空気環境の改善効果が実現可能なため、騒音が低減される。また、壁面に設けられた窓その他の隙間が存在し、部屋の気密性が低い場合、部屋の壁面近傍の風速を増加することができるため、陽圧効果が得られ、室外から室内へ侵入する粉塵の量を低減することができる。
なお、空気清浄機の駆動時には、筐体を部屋の側壁面に向かって傾斜させるため、空気清浄機の吹出口の位置で気流を側壁面に向かう方向に曲げる必要がないので、送風経路の圧力損失が低減し、消費電力が改善される。また、吹出口から発生する音が直接使用者の居住領域へ伝播されないので騒音が低減される。さらに、空気清浄機が駆動していない時には、筐体を傾斜させる必要がないので、空気清浄機の設置面積を小さくすることができる。
(2)上記の構成の空気清浄機において、支持部は、傾斜角θを上記の範囲内の任意の値に設定して筐体を保持することを特徴とする。
この構成によると、支持部の傾斜角θの設定を変更することにより、筐体を使用者の要望に応じた角度に設定変更可能な構成となる。これにより、部屋の高さや、設置する位置に応じて傾斜角θを変更することができ、空気清浄機の最適な設置場所の範囲を拡げることができる。
(3)上記の構成の空気清浄機において、支持部は、空気清浄機が駆動しない時に、傾斜角θを0°、および/または、90°に設定して、筐体を保持することを特徴とする。
この構成によると、傾斜角度θを0°に設定して筐体を保持する時には、空気清浄機の奥行き寸法が最小となり、傾斜角度θを90°に設定して筐体を保持する時には、空気清浄機の高さ寸法が最小となる。これにより、収納時などにコンパクトとなり、使用者の利便性を大幅に向上させることができる。
(第5の実施形態)
以下に本発明の第5の実施形態について要約して説明する。
(1)空気清浄機は、部屋の側壁面の近傍の床上または卓上に設置され、室内の空気を取り入れるための吸込口と、この吸込口から取り入れて清浄化された空気を室内に送出するとともに側壁面から所定の間隔を隔てて配置される吹出口と、送風機と、この送風機と吹出口を連通する吹出流通路とを筐体内に備え、送風機の上流側かつ吸込口の下流側の空間にはフィルタ設置スペースが設けられ、このフィルタ設置スペースには、吸込口から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を捕集・除去する空気清浄化手段と、吸込口から取り入れられた空気に湿度を含ませる加湿手段とが備えられ、送風機は送風機吸込口をフィルタ設置スペースに対向して設置するとともに送風機吹出口を上方に向けて設置し、吹出口はフィルタ設置スペースの鉛直上方に設けられたことを特徴とする。
なお、フィルタ設置スペースには、例えば、吸込口から取り入れられた空気に含まれる塵埃、および/または、物質を捕集・除去する空気清浄化手段(例えばエアフィルタ、活性炭フィルタ、電気集塵装置、光触媒脱臭素子、等)と、吸込口から取り入れられた空気に湿度を含ませる加湿手段とが備えられる。
この構成によると、フィルタ設置スペースの上方に広がるデッドスペースに吹出流通路の終端部と吹出口が配置される。例えば、空気清浄機の側断面が長方形断面の場合、吹出流通路は一辺の方向に設置されず、対角線の方向に配置される。長方形断面の対角線の長さは一辺の長さに比べて必ず長いため、予め設定された空気清浄機の筐体の占有体積中で、吹出流通路の長さがより延長される。
これにより、例えば、吹出流通路の断面積を下流に行くほど緩やかに拡大するように構成すれば、吹出流通路内を流通する気流の風速は徐々に低下され、気流の運動エネルギーが効率良く静圧に変換される。すなわち、送風機(ファン)の受け持つ仕事である静圧上昇の一部が、上記の、運動エネルギーが変換されることにより生み出される静圧によってまかなわれるため、送風機(ファン)の仕事に必要となるエネルギーが少なくてすみ、少ない消費電力で所望の仕事をさせることができる。これにより、省エネ性の高い空気清浄機を得ることができる。
(2)上記の構成の空気清浄機において、吹出流通路は、空気清浄機の後方に向かって傾斜することを特徴とする。望ましくは、上記の構成の空気清浄機において、吹出流通路は、空気清浄機の後方に向かって屈曲することを特徴とする。さらに望ましくは、上記の構成の空気清浄機において、吹出口は、空気清浄機の筐体の後面部(背面部)に設けられることを特徴とする。
この構成によると、送風機は、空気清浄機の筐体の前面側または部屋の側壁面に遠い側に配置され、フィルタ設置スペースは、空気清浄機の筐体の後面側(背面側)または部屋の側壁面に近い側に配置され、吹出口はフィルタ設置スペースの鉛直上方であって空気清浄機の筐体の後面側(背面側)または部屋の側壁面に近い側に配置される。このような構成の空気清浄機の場合、吹出口から放出される音は、空気清浄機の後方または部屋の側壁面側に放出される。ところで、音波は直進性がよいので、放出された音が居住領域へ伝播するには、部屋の側壁面に反射して伝播することによって、または、吹出口から回折により伝播することによって、吹出口から直接使用者の居住領域へ伝播される音が大幅に減少する。さらに、吹出流通路内においても音が吹出流通路の壁面で反射する。
吹出流通路が空気清浄機の後方に向かって傾斜する場合には、吹出流通路内を直進して伝播する音は、少なくとも1回は吹出流通路の壁面に衝突してその一部は吸収され、その他の部分は反射されるため、音は減衰する。また、反射された音の一部は干渉により減衰する。
また、吹出流通路は、空気清浄機の後方に向かって屈曲する場合には、吹出流通路を直進して伝播する音は、少なくとも1回は吹出流通路の壁面に衝突してその一部は吸収され、その他の部分は反射されるため、音は減衰する。また、反射された音の一部は干渉により減衰する。さらに、吹出流通路のある部分で急激に風向を変更されることがないため、吹出流通路での圧力損失を低減できる。
さらに、吹出口が空気清浄機の筐体の後面部(背面部)に設けられる場合には、吹出口から回折により伝播する音の回折の角度がさらに大きくなるため、それに伴い回折による音の減衰効果が大きくなり、居住領域へ伝播する音は大幅に減衰する。
これにより、居住空間に伝播する騒音が大幅に減衰されるため、居住空間を静寂に保つことができる。なお、騒音が大幅に低減された分、ファンの回転数を増加するなどして送風機の送風量を増加すれば、空気清浄機の集塵性能を大幅に向上させることができる。
(3)上記の構成の空気清浄機において、筐体の後面(背面)に吸込口を設け、吸込口の前面にフィルタ設置スペースを設け、フィルタ設置スペースの前面に送風機を設け、送風機の後方上方であってフィルタ設置スペースの上方に吹出口を設け、送風機、吹出流通路、および、吹出口からなる一連の経路は、筐体の底面前部(下部前方)から筐体の上部後方にかけて設けられ、清浄化空気は吹出口から筐体の後方上方に送出されることを特徴とする。
言い換えれば、上記の構成の空気清浄機において、部屋の側壁面に対向するとともに、鉛直上方から見て、清浄化空気が送出される側の空気清浄機の側面に吸込口を設け、吸込口に対して部屋の側壁面と反対側にフィルタ設置スペースを設け、フィルタ設置スペースに対して部屋の側壁面と反対側に送風機を設け、送風機の上方かつ部屋の側壁面側であってフィルタ設置スペースの上方に吹出口を設け、送風機、吹出流通路、および、吹出口からなる一連の経路は、筐体の底面かつ部屋の側壁面から離れた位置から、筐体の頂面かつ部屋の側壁面に近接する位置にかけて設けられ、清浄化空気は吹出口から上方かつ部屋の側壁面に向けて送出されることを特徴とする。
この構成によると、吸込口が後面側(背面側)に配置されるので、吸込口から放出される音が直接前面側、すなわち居住空間側への漏れが防止される。前面側の居住空間に音が伝わるまでに、音の進行方向が180°向きを変えられるので、回折効果により音が大幅に減衰される。
これにより、居住空間に伝播する騒音が大幅に減衰されるため、居住空間を静寂に保つことができる。なお、騒音が大幅に低減された分、ファンの回転数を増加するなどして送風機の送風量を増加すれば、空気清浄機の集塵性能を大幅に向上させることができる。
また、この構成によると、吸込口が後面(背面)に配置されるので、フィルタ設置スペースに設置される例えばエアフィルタに蓄積する塵埃が居住空間側から目立ちにくくなる。
これにより、外観上の美観の課題が大きく軽減される。従来においては、空気清浄機の美観を保つ手段として、例えばパネルでエアフィルタ全体を覆い隠し、エアフィルタに蓄積する塵埃を目立ちにくくするといった手法が用いられてきた。しかし、この従来の構成によると、パネルの通風抵抗による圧力損失のため大幅に風量が低下し、同一の風量を確保するためには騒音が増加していた。上記のこの発明の構成によれば、吸込口の美観を保つ必要性も大きく軽減されるため、吸込口の圧力損失を大幅に低減することができ、空気清浄機の騒音を大幅に低減することができる。なお、騒音が大幅に低減された分、ファンの回転数を増加するなどして送風機の送風量を増加すれば、空気清浄機の集塵性能を大幅に向上させることができる。
さらに、この構成によると、予め設定された空気清浄機の筐体の占有体積中で、吹出流通路の長さがより延長されるとともに、例えば、送風機の駆動モータや、空気清浄化手段、加湿手段といった、構成中の重量物が空気清浄機の筐体の下方に集約されるので、空気清浄機の重心は空気清浄機の筐体の下部に位置づけられる。
これにより、上記の効果を得るとともに、空気清浄機の筐体の高さが高い場合においても、転倒しにくく、空気清浄機の姿勢を安定に保つことができる。
(4)上記の構成の空気清浄機において、送風機および/または吹出流通路のさらに前面に、遮音部を設けたことを特徴とする。
言い換えれば、上記の構成の空気清浄機において、送風機および/または吹出流通路に対して、部屋の側壁面と反対側に遮音部を設けたことを特徴とする。
この構成によると、居住領域に最も近接して配置される送風機および/または吹出流通路から発生する音が居住領域に伝播する経路に遮音部が配置され、送風機および/または吹出流通路から発生する音の一部は遮音部により遮音される。
これにより、居住空間に伝播する騒音がさらに減衰されるため、居住空間を静寂に保つことができる。なお、騒音が低減された分、ファンの回転数を増加するなどして送風機の送風量を増加すれば、空気清浄機の集塵性能をさらに向上させることができる。
(5)上記の構成の空気清浄機において、送風機および/または吹出流通路のさらに前面に、吸音部を設けたことを特徴とする。
言い換えれば、上記の構成の空気清浄機において、送風機および/または吹出流通路に対して、部屋の側壁面と反対側に吸音部を設けたことを特徴とする。
この構成によると、居住領域に最も近接して配置される送風機および/または吹出流通路から発生する音が居住領域に伝播する経路に吸音部が配置され、送風機および/または吹出流通路から発生する音の一部は吸音部により吸音される。
これにより、居住空間に伝播する騒音がさらに減衰されるため、居住空間を静寂に保つことができる。なお、騒音が低減された分、ファンの回転数を増加するなどして送風機の送風量を増加すれば、空気清浄機の集塵性能をさらに向上させることができる。
(6)上記の構成の空気清浄機において、フィルタ設置スペースには、吸込口から取り入れられた空気に湿度を含ませる加湿手段が備えられ、送風機および/または吹出流通路のさらに前面に、加湿手段に供給する水を保持する水保持手段を設けたことを特徴とする。
言い換えれば、上記の構成の空気清浄機において、フィルタ設置スペースには、吸込口から取り入れられた空気に湿度を含ませる加湿手段が備えられ、送風機および/また吹出流通路に対して部屋の側壁面と反対側に、加湿手段に供給する水を保持する水保持手段を設けたことを特徴とする。
この構成によると、居住領域に最も近接して配置される送風機および/または吹出流通路から発生する音が居住領域に伝播する経路に水保持手段が配置される。この水保持手段が遮音壁の役割を果たし、遮音効果をもたらすため、送風機および/または吹出流通路から発生する音の一部は水保持手段により遮音される。
これにより、居住空間に伝播する騒音が減衰されるため、居住空間を静寂に保つことができる。なお、騒音が低減された分、ファンの回転数を増加するなどして送風機の送風量を増加すれば、空気清浄機の集塵性能を向上させることができる。
また、水保持手段が遮音部の役割を果たすため、別途遮音部を設ける必要がなく、省スペースとなるとともに、低コストで静寂な空気清浄機を得ることができる。
(7)上記の構成の空気清浄機において、吹出流通路は、清浄化空気の送出方向が鉛直上方に対して傾斜する方向と同じ方向に傾斜するとともに、吹出流通路の傾斜角度が鉛直上方に対してなす角度をψとすると、その角度ψを
0<ψ≦θ
の範囲内の角度に設定して、筐体の内部に配置されることを特徴とする。
この構成によると、送風機から送出された清浄化空気は、吹出流通路のある部分で急激に風向を変更されることなく、吹出流通路を流通する間に段階的に風向を変え、上記の設定されたなす角度にて吹出口から送出される。
これにより、吹出流通路での圧力損失を低減でき、送風効率を向上させることができるため、少ない消費電力で同一の集塵性能を得ることができ、省エネ性の高い空気清浄機を得ることができる。また、同一の風量を得るために必要なファンの回転数を低下することができ、騒音を低減することができ、静寂な空気清浄機を得ることができる。
(8)上記の構成の空気清浄機において、吹出流通路を形成する吹出流通路の壁面のうち、部屋の側壁面から最も遠い位置に配置される吹出流通路の壁面の側断面形状は、中心角が上記のθ°の円弧で形成されており、送風機に連通する位置で送風機のケーシングの壁面と正接してなることを特徴とする。
この構成によると、送風機から送出された清浄化空気は、吹出流通路のある部分で急激に風向を変更されることなく、吹出流通路を流通する間に徐々に滑らかに風向を変え、上記の設定されたなす角度にて吹出口から送出される。
これにより、吹出流通路での圧力損失を低減でき、送風効率を向上させることができるため、少ない消費電力で同一の集塵性能を得ることができ、省エネ性の高い空気清浄機を得ることができる。また、同一の風量を得るのに必要なファンの回転数を低下することができ、騒音を低減することができ、静寂な空気清浄機を得ることができる。
(比較の形態)
以下に本発明の比較の形態について図面を参照して説明する。
図32は本発明の比較の形態の空気清浄機を模式的に示す側面断面図である。
図32に示すように、空気清浄機50は、床面Fの上または卓上に設置され、部屋の側壁面W1の近傍に配置されて用いられる空気清浄機である。空気清浄機50は、本体と、この本体に設けられ、室内の空気を取り入れるための吸込口5022と、本体に設けられ、吸込口5022から取り入れられた空気中に存在する塵埃、および/または、物質を除去する除去手段としてのエアフィルタ5050と、本体に設けられ、エアフィルタ5050で処理された空気を室内に送り出すための吹出口5031と、本体に設けられ、吸込口5022から吹出口5031まで空気を移動させるための送風手段としての送風機5070を備えている。
空気清浄機50の本体は筐体5000によって保持されている。筐体5000は床面Fの上に設置され、前面(正面)5010と後面(背面)5020と頂面(天面)5030と、床面Fに接触する底面5040とを有する。筐体5000の後面5020は多数の格子状の吸込口5022が設けられた穴あきパネル5021にて覆われている。ここで、鉛直上方から見て、清浄化された空気が矢印Vで示される方向に送り出される側の空気清浄機50の側面を前面5010側、その反対側を後面5020側とする。
筐体5000は、後面5020側を部屋の側壁面W1に対向させて側壁面W1から、所定の間隔を設けて床面Fの上に設置される。筐体5000の頂面5030には、吹出口5031が設けられている。吹出口5031は筐体5000の幅方向に延びる略矩形状に形成され、前方上方に臨んで設けられている。
筐体5000の内部には、吸込口5022から吹出口5031に連通する吸込流通路5060および吹出流通路5080とかなる送風経路が形成されている。送風経路内には空気を送出する送風機5070が配置されている。送風機5070に用いられるファンとしては、シロッコファン5071が用いられる。送風経路のうち、シロッコファン5071の下流側には、シロッコファン5071から吹出口5031に至るまで空気が流れる吹出流通路5080が形成されている。吹出流通路5080によって、シロッコファン5071により送出される空気を前方上方に案内する。吹出流通路5080の断面積は、吹出口5031に近づくほど、下流に行くほど拡大する。吹出流通路5080は、図2と図3に示されるものと同様の構成を有する。
比較の形態の空気清浄機50では、吹出流通路5080を人が存在する空間(空気を清浄化したい空間)の方向へ傾斜させている。その他の部分は実施形態1−1と同様である。
比較の形態の空気清浄機50によると、吹出口5031から清浄化空気を鉛直上方に対してtan−1(L/H)<θ≦35の範囲内で選ばれた一つの角度をなして空気を清浄化したい空間側へ送出して天井面に到達させている。斜め方向から天井面に衝突するため、気流は、衝突した壁面に対してなす角度が鋭角になる方向には流れにくい。つまり、衝突した壁面に対してなす角度が鈍角になる方向(空気を清浄化したい空間側)に流れやすいため、気流が鉛直上方(θ=0°)に送出される場合よりも空気を清浄化したい空間側へ流れる気流が多くなる。すなわち、空気を清浄化したい空間側へ意図して気流を送出することができ、気流の到達距離が延長される。
従って、人が存在する空間(空気を清浄化したい空間)の方向へ吹出流通路5080が傾斜しているため、低騒音化の効果はやや劣るが、第1の実施形態とほぼ同等の効果が得られる。
ここで、吹出口5031から清浄化空気が鉛直上方に対して35°よりも大きな角度をなして空気を清浄化したい空間側へ送出される場合は、不快なドラフト感により風ストレスを与える恐れがある。
次に、上述した実施形態1−1(図1)、実施形態1−2(図24)、実施形態3−1(図28)、実施形態3−2(図29)、比較の形態(図32)の空気清浄機を用いて測定した騒音の結果について、従来の空気清浄機(図34)と比較して説明する。
図33は空気清浄機の風量と騒音の関係を示す図である。横軸は、空気清浄機の風量(単位:m3/min)、縦軸は、空気清浄機の前面、左右側面、および、天面の中央からそれぞれ1m離れた位置における騒音の平均値(単位:dB)を示している。
まず、図33に示された測定結果において、実施形態1−1の空気清浄機(図中□)と従来技術の空気清浄機(図中●)を比較する。
実施形態1−1の空気清浄機は、吸込口を後面側(背面側)に配置することによって、吸込口からの音が直接前面側へ漏れることを防止している。前面側へ音が伝わるまでに、音の進行方向は180°向きを変えられることになり、その間に回折効果で音が減衰することによって、低騒音化することができる。また、吸込口を後面側(背面側)に配置することにより、フィルターに蓄積する塵埃を目立たなくする等の外観上の問題が解消される。つまり、パネルでフィルター全体を覆う必要性も解消されるため、パネルの通風抵抗を大幅に低減することが可能となり、低騒音化が可能となる。
また、吹出流通路を傾斜させ、鉛直上方から見て吹出口からシロッコファンが見えないようにしているため、吹出流通路において少なくとも1回は吹出流通路を形成する壁面に衝突することになる。音が壁面に衝突すると反射されるが、そのすべてがそのまま反射されるわけではなく、一部は透過し、また、一部は壁面に衝突した際に熱エネルギーや、壁面の振動エネルギーとして失われ、減衰する。また、音が反射されると吹出流通路内で音の干渉が生じやすくなり、さらに音が減衰することになり、低騒音化することができる。
さらに、吹出流通路を人が存在する空間と反対方向に傾斜させることにより、吹出口から放出された音は従来よりも回折して人が存在する空間へと伝播することになるため、音の減衰効果が高まり、低騒音化することができる。
従って、実施形態1−1の空気清浄機は、従来技術の空気清浄機に比べて、風量が約4m3/minのとき、約4dBの低騒音化ができる。
次に、実施形態3−1の空気清浄機(図中△)と、従来技術の空気清浄機(図中●)を比較する。
実施形態3−1の空気清浄機は、実施形態1−1の吹出口が空気清浄機の後面側(背面側)の壁面に対向するように設けられている。すなわち、実施形態3−1の空気清浄機では、実施形態1−1の空気清浄機よりも吹出口から放出される音の回折効果が高まり、低騒音化することができる。
従って、実施形態3−1の空気清浄機は、従来技術の空気清浄機に比べて、風量が約4m3/minのとき、約4.5dBの低騒音化ができる。
次に、実施形態3−2の空気清浄機(図中◆)と従来技術の空気清浄機(図中●)を比較する。
実施形態3−2の空気清浄機は、実施形態1−1の吹出流通路を人が存在する空間と反対方向に屈曲させ、吹出口が空気清浄機の後面側(背面側)の壁面に対向するように設けられている。すなわち、実施形態3−2の空気清浄機では、吹出流通路を滑らかに屈曲させているので、吹出流通路のある部分で急激に風向を変更されることなく、吹出流通路を流通する間に徐々に滑らかに風向を変更されるため、実施形態1−1の空気清浄機よりも吹出流通路の流路抵抗の増加を抑制できる。また、吹出口が空気清浄機の後面側(背面側)の壁面に対向するように設けられているので、実施形態1−1の空気清浄機よりも吹出口から放出される音の回折効果が高まり、実施形態3−1とほぼ同様の低騒音化の効果が得られる。
従って、実施形態3−2の空気清浄機は、実施形態1−1の空気清浄機よりも吹出流通路の流路抵抗の増加を抑制でき、実施形態3−1の空気清浄機とほぼ同様の低騒音化の効果が得られるため、従来技術の空気清浄機に比べて、風量が約4m3/minのとき、約4.5dBの低騒音化ができる。
次に、実施形態1−2の空気清浄機(図中○)と従来技術の空気清浄機(図中●)を比較する。
実施形態1−2の空気清浄機は、実施形態1−1の送風機とシロッコファンの部分の送風経路が吹出流通路と同様に傾斜しているため、実施形態1−1よりも吹出流通路内での反射、干渉による効果は損なわれるが、従来技術の空気清浄機に比べて、風量が約4m3/minのとき、約3dBの低騒音化ができる。
次に、比較の形態の空気清浄機(図中×)と従来技術の空気清浄機(図中●)を比較する。
比較の形態の空気清浄機は、実施形態1−1の吹出流通路を人が存在する空間側へ傾斜させているため、吹出口から放出される音の回折効果は大きく損なわれるが、従来技術の空気清浄機に比べて、風量が約4m3/minのとき、約2dBの低騒音化ができる。
最後に、本発明の空気清浄機の設置方法について説明する。空気清浄機の構成は図1〜図3に示す第1の実施形態と同一である。本発明の空気清浄機の設置方法においては、上述したように、気流の鉛直上方に対する角度と、部屋の側壁面との位置関係が極めて重要である。
上記の空気清浄機は、吹出口から送出される清浄化空気の進行方向と、吹出口から送出される清浄化空気が最初に壁面に衝突した後に空気が壁面に沿って進行する方向とのなす角度が鈍角になるように配置される。言い換えれば、吹出口から送出される清浄化空気の流束(流れの束)と、吹出口から送出される清浄化空気が最初に壁面に衝突する箇所における清浄化空気の流束とを連通して清浄化空気が流通する気流の流束を含んだ面と、側壁面とのなす角度の大きさは、空気を清浄化したい空間側に鈍角となるように、空気清浄機が配置される。そして、上記の角度の大きさは、空気を清浄化したい空間(居住空間、人が存在する空間)側に145°〜170°の範囲となるように配置される。
また、上記の空気清浄機は、吹出口から送出される清浄化空気の流束(流れの束)と、吹出口から送出される清浄化空気が最初に壁面に衝突する箇所における清浄化空気の流束とを連通して清浄化空気が流通する気流の流束を含んだ面で、空気清浄機が設置された部屋に内包する空間を2分割したとき、2分割された空間のうち大きい方の空間に使用者の居住領域が配され、かつ、最初に壁面に衝突した後の気流の主たる進行方向が2分割された空間のうち大きい方になるように配置される。また、吸込口は、2分割された空間のうち小さい方の空間に面するように設けられる。
上記の配置によれば、第1の実施形態に記載の空気清浄機の効果を確実に得ることができる。
以上により、本発明に係る空気清浄機を第1〜第5の実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるわけではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施することができる。
以上に開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
1:空気清浄機、100:筐体、110:前面、120:後面、130:頂面、140:底面、122:吸込口、131:吹出口、150:エアフィルタ、170:送風機、171:シロッコファン、180:吹出流通路、190:操作部、W1:側壁面。