JP4118183B2 - 保護層形成材の塗布装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗装が終了した車両の塗装部を主とした外表面に保護層形成材を塗布する保護層形成材の塗布装置に関し、特に、乾燥後に剥離性保護層として作用する液状の保護層形成材を塗布する保護層形成材の塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両は、製造後にユーザに手渡されるまでに屋外ストックヤードで保管されたり、トレーラ、船等で搬送されることが多い。この間、車両は粉塵、金属粉、塩分、油分、酸、直射日光等に曝されることから、長時間の保管及び搬送の間には、車両の外表面における複数の塗装層のうち表面層の品質が侵されるおそれがある。このような事態を防ぐため、車両出荷前の段階において塗装部に剥離性保護層を形成させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。剥離性保護層は液状ラップ材である保護層形成材(ストリッパブルペイントとも呼ばれる)を塗布して乾燥させることにより形成され、塗装部を保護することができる。また、除去する際には容易に剥離させることができるとともに、通常の保管時には自然に剥離してしまうことがない。
【0003】
剥離性保護層が乾燥する前の保護層形成材を塗布する工程では、ローラに保護層形成材を付着させて、複数の作業者がローラを転がして保護層形成材の塗布を行っている。
【0004】
このような作業の自動化を図り、作業者の負担を軽減させるとともに塗布品質を均一化させるために、ボディ上に保護層形成材を注出した後、エアを吹き付けることによって保護層形成材を広げる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば保護層形成材の塗布工程における作業の多くが自動化され、作業者の負担を軽減するとともに、タクトタイムを向上させることができて好適である。
【0005】
また、車両を生産する工場では、組み立て作業においてボディを傷つけることがないようにスクラッチカバーと呼ばれる樹脂製のカバーを仮付けすることがある。スクラッチカバーは、例えば、ボディの前方横面に仮付けされ、出荷前に外される。スクラッチカバーは車種毎に違う形状のものを用意する必要があり、さらに搬送ラインにおける日々の生産台数に応じて多数用意する必要がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−89697号公報(段落[0022]〜[0027])
【特許文献2】
特開平8−173882号公報(図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記の特許文献2で開示されている方法では、保護層形成材の広がり具合が必ずしも均一ではなく、また、保護層形成材が飛散することを防ぐために、ルーフの縁部には適用していない。
【0008】
さらに、近時の自動車のボディはより複雑な形状となりつつあり、凹凸部や複雑な曲面を有するものがある。このような凹凸部や曲面にはエアノズルによって保護層形成材を広げるということが困難である。さらにまた、塗装品質が特に重要視されている箇所には保護層形成材をより厚く塗る必要があるが、エアノズルで保護層形成材を広げる場合には塗膜の厚さを調整することは困難である。
【0009】
このようなことから、エアノズルで保護層形成材を広げた後に、数人の作業者がルーフの縁部や凹凸部等の細部にローラで保護層形成材を塗布して仕上げの処理を行う必要がある。従って、保護層形成材の塗布処理は一部を人手作業に頼っており、作業者の負担となるとともに、作業者の熟練度によって塗布品質にばらつきが発生する。
【0010】
このような作業者の作業を軽減し、かつ、作業の品質を均一にするためには、作業員が従来用いているローラを産業用のロボットに適用することが検討される。この場合、ポンプを用いて保護層形成材をローラに対して自動的に供給できるようにすると好適である。保護層形成材をローラに供給する方法としては、ローラの内面から保護層形成材を供給して表面に染み出させる方法が考えられる。この方法によれば保護層形成材がローラに対して略均一に染みわたり、好適である。
【0011】
しかしながら、このように保護層形成材をローラの内面から供給する場合、ローラの表面全体に保護層形成材が染みわたるまでには多少時間がかかる。また、最初の段階では保護層形成材が十分均一に染みわたるとは限らず、ローラの表面を形成する材料が保護層形成材に馴染んでいない。従って、実作業を開始するまでに時間がかかるとともに保護層形成材の塗りむらが発生し、又は塗膜厚が不足するおそれがある。
【0012】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、保護層形成材の塗布作業を迅速に開始させるとともに、保護層形成材の塗りむらの発生と塗膜厚が不足することを防止する保護層形成材の塗布装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る保護層形成材の塗布装置は、複数の車両が順次搬送される搬送ラインの近傍に設けられ、ティーチング動作可能なロボットと、前記ロボットに接続され、回転自在であって、乾燥後に剥離性保護層として作用する液状の保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質のローラと、前記保護層形成材を前記ローラに供給する供給機構部と、前記ロボットの動作範囲内に配置され、前記ローラの長尺方向の幅より広く、前記ローラを転がすためのウォームアップ機構と、を有し、前記ウォームアップ機構は、傾斜面と、該傾斜面の4辺のうち傾斜した2辺及び下辺に設定された側壁と、前記下辺の近傍に設けられた前記保護層形成材の排出部と、前記ローラを前記車両に当接させて前記保護層形成材を塗布する前に、前記ローラが前記傾斜面の上方の待機位置に配置されたことを検出する位置検出手段と、を有し、前記傾斜面には、複数の孔と、小凸部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
このように、ロボットの動作範囲内にローラを転がすための傾斜面を設けることにより、所定のティーチング動作によって、保護層形成材を供給しながらローラを転がすことができる。従って、保護層形成材の塗布作業を迅速に開始させることができるとともに、保護層形成材の塗りむらの発生と塗膜厚が不足することを防止することができる。また、塗布作業前に、予め保護層形成材を供給しながらローラを転がすことによって、保護層形成材の塗布作業を迅速に開始させることができるとともに、保護層形成材の塗りむらの発生と塗膜厚が不足することを防止することができる。
【0019】
さらにまた、本発明における前記ウォームアップ機構は、傾斜面と、該傾斜面の4辺のうち傾斜した2辺及び下辺に設定された側壁と、前記下辺の近傍に設けられた前記保護層形成材の排出部と、前記ローラを前記車両に当接させて前記保護層形成材を塗布する前に、前記ローラが前記傾斜面の上方の待機位置に配置されたことを検出する位置検出手段とを有し、前記傾斜面には、複数の孔と、小凸部が設けられていることから、保護層形成材が外部に漏出または飛散しにくく、下辺に流れて集められた保護層形成材は排出される。また、前記保護層形成材の材料としてアクリル系コポリマ剤を用いると、車両の塗装部をより確実に保護することができ、しかも除去するときには剥がしやすい。
【0020】
また、本発明では、ウォームアップ機構に複数の孔が設けられていることから、前記傾斜面における過剰な保護層形成材が排出される。
【0021】
さらに、本発明では、ウォームアップ機構に小凸部が設けられていることから、ローラが空回りすることがない。また、ローラに保護層形成材が染み込みやすい。前記ローラが前記傾斜面の上方の待機位置に配置すると、ローラから保護層形成材が滴下しても傾斜面上に落ちることから他の部分を汚すことがない。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る保護層形成材の塗布装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図1〜図11を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る保護層形成材の塗布装置10は、自動車の搬送ライン12に設けられるものであり、塗装の終了した車両14に対して保護層形成材を塗布するものである。塗布装置10は、産業用ロボットである3台のロボット16a、16b、16cと、システム全体の制御を行う制御部18と、保護層形成材が収容されたタンク20と、該タンク20から各ロボット16a、16b、16cに連通する塗布材管路22と、水供給源24からロボット16a、16b、16cへ水を供給する水管路26とを有する。ロボット16a、16b、16cはそれぞれ制御部18に接続されたロボットコントローラ28a、28b、28cによって制御される。制御部18にはキーボードやポインティングデバイス等の入力装置18aと、モニタ画面18bが設けられている。モニタ画面18bには、例えば、ローラ設定メニュー(図7参照)に関する画面が表示される。
【0024】
ロボット16a及び16cは、搬送ライン12における車両14の進行方向左手側に設けられ、ロボット16bは、進行方向右手側に設けられている。また、ロボット16aは進行方向前方、ロボット16bは進行方向の中程、ロボット16cは進行方向後方に備えられている。ロボット16a、16b、16cは搬送ライン12と平行なスライドレール30上を移動可能である。
【0025】
塗布材管路22の途中にはポンプ32が設けられており、タンク20から保護層形成材を吸い上げてロボット16a、16b、16cへ供給する。また、保護層形成材は、図示しないヒータと温度計とによって適温となるように制御されている。ロボット16a、16b、16cの先端部には、それぞれ塗布材管路22及びその先端部のチューブ22a(図2参照)によって保護層形成材が供給されるローラ機構部34が設けられている。
【0026】
保護層形成材の材料は、アクリル系コポリマ剤を主成分とするものであって、好ましくは、ガラス転移温度の異なる2種のアクリル系コポリマ部分を有するものであるとよい。具体的には、例えば、前記の特許文献1で示されている保護層形成材を用いるとよい。また、保護層形成材は、水との混合割合及び温度の変化によって粘度を調整することができ、しかも、乾燥すると車両14に密着して粉塵、金属粉、塩分、油分、酸、直射日光等から車両14の塗装部を化学的及び物理的に保護することができる。さらに、車両14をユーザに納品の際等で除去するときには、容易に剥離させることができる。
【0027】
図2に示すように、ロボット16a、16b、16cは、例えば、産業用の多関節型のロボットであり、ベース部40と、該ベース部40を基準にして順に、第1アーム42、第2アーム44及び第3アーム46とを有し、該第3アーム46の先端にローラ機構部34が設けられている。ローラ機構部34は、第3アーム46に対して着脱自在であり、所謂、エンドエフェクタとして作用する。第1アーム42はベース部40に対して水平及び垂直に回動可能な軸J1、J2によって回動可能である。第2アーム44は第1アーム42と軸J3で回動可能に連結されている。第2アーム44は軸J4によって捻れ回転が可能になっている。第3アーム46は第2アーム44と軸J5で回動可能に連結されている。第3アーム46は軸J6によって捻れ回転が可能になっている。
【0028】
このような6軸構成のロボット16a、16b、16cの動作によって、先端部に接続されたローラ機構部34は車両14の近傍における任意の位置に移動可能であって、かつ、任意の向きに設定可能である。換言すれば、ローラ機構部34は6自由度の移動が可能である。ロボット16a、16b、16cは、回転動作以外にも伸縮動作、平行リンク動作等の動作部を有するものであってもよい。
【0029】
各ロボット16a、16b、16cの近傍には容器台47が備えられており、該容器台47上には、ウォーミングアップ機構110と超音波駆動回路部130bを有するモイスチャーボックス130が固定されている。容器台47は、ローラ48が到達可能な動作範囲内に備えてあればよい。これらのウォーミングアップ機構110及びモイスチャーボックス130の各ロボット16a、16b、16cに対する相対位置は制御部18に記憶されている。ウォーミングアップ機構110及びモイスチャーボックス130の詳細な構成については後述する。
【0030】
図3に示すように、ローラ機構部34は、第3アーム46の先端部に取り付けられており、円筒形状で保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質のローラ48と、ロボット16aの第3アーム46に対する取付部であるスラスト回転機構69とを有する。該スラスト回転機構69は、第3アーム46に対する取付部材70と、該取付部材70に対してベアリングを介して回転自在に支持されているスラスト回転部材74と、該スラスト回転部材74の下に取り付けられたローラ機構ベース部76とを有する。ローラ48の材質は、例えば、スポンジ及び植毛体等を挙げることができる。
【0031】
また、ローラ機構部34は、ローラ機構ベース部76の両端部に設けられた空気圧シリンダ78及び80と、ローラ機構ベース部76の略下端の揺動軸82に揺動自在に軸支された揺動部材84と、ローラ48を保持するホルダ86と揺動部材84とを接続するホルダ接続部88とを有する。ローラ48は揺動軸82を中心として、径方向に揺動自在である。揺動部材84は、上方に延在する2つの上方延在部84aを有し、該上方延在部84aの略上端には、揺動軸82と平行なピン90が設けられている。ピン90は揺動軸82より上方に設定されている。
【0032】
さらに、ローラ機構部34は、前記空気圧シリンダ78及び80のロッド78a及びロッド80aから力を受けて、前記揺動軸82を中心として回転する2つのピン押圧部材92及び94を有する。ピン押圧部材92の押圧面92aは、ロッド78aが縮退するとき前記ピン90の一端面を押圧し、ピン押圧部材94の押圧面94aは、ロッド80aが縮退するとき前記ピン90の他端面を押圧する。
【0033】
2つの上方延在部84aの間には、ローラ機構ベース部76から下方に延在する2つの下方延在部76aが配置され、該2つの下方延在部76aの間に押圧面92a及び94aが配置されている。
【0034】
スラスト回転部材74には回転規制部材96が設けられており、該回転規制部材96の上面の凹部96aには、取付部材70から下に突出する小突起98が配置されている。小突起98の幅は凹部96aの幅よりやや小さく、この隙間の範囲においてスラスト回転部材74はスラスト方向に回転自在となっている。ここでいうスラスト方向とは、ローラ48自体の軸心と直交する方向であり、第3アーム46の軸心を中心とした回転方向である。
【0035】
ホルダ接続部88には上部と下部で対向する2つのクランパ102及び104が設けられている。これらのクランパ102及び104はアルミパイプ106を保持しており、該アルミパイプ106により揺動部材84とホルダ86が連結されている。アルミパイプ106の表面には環状溝106aが設けられている。
【0036】
ローラ48の両端はホルダ86により回転自在に保持されており、塗布材管路22の先端部のチューブ22aはホルダ86の一端部を介してローラ48の内部に連通している。ローラ48はホルダ86に対して着脱自在である。
【0037】
図4に示すように、ウォーミングアップ機構110は、ローラ48及び該ローラ48を保持するホルダ86の幅より広い幅に設定されている。ウォーミングアップ機構110は、傾斜面112と、該傾斜面112の傾斜した2つの辺に接するように設けられた側壁114aと、下辺に接するように設けられた側壁114bと、下辺の近傍に設けられた排出口116とを有する。排出口116には、必要に応じて着脱可能な栓を設けてもよい。傾斜面112の上辺は両端部が小壁114cで支持されている。側壁114a、114b及び小壁114cは、底面板118と接続されている。傾斜面112には、アルミニウム板が用いられており、該アルミニウム板は容易に着脱可能である。
【0038】
傾斜面112の下辺には、切欠凹部(排出部)112aが設けられている。傾斜面112には全面にわたり小さな網目状の凸部112bが設けられているとともに、所定の間隔で小さな孔112cが設けられている。
【0039】
傾斜面112はローラ48の外周径より長く設定されており、該傾斜面112上でローラ48を転がしたとき少なくとも360°回転させることができる。
【0040】
側壁114bの上部には、回動レバー120aを備えるリミットスイッチ120が設けられている。回動レバー120aは弱い弾性力によって傾斜面112の方向に傾斜しており、このときリミットスイッチ120はオフである。回動レバー120aがウォーミングアップ機構110の外方へ向かって回動されたとき(図11参照)、リミットスイッチ120はオンになる。リミットスイッチ120のオン・オフに関する信号は、ロボットコントローラ28a、28b、28cを介して制御部18に供給される。
【0041】
実際上、ウォーミングアップ機構110は、樹脂製容器の一部を加工し、傾斜面112に相当するアルミニウム板を小壁114cに立てかけるだけの簡便な構造である。アルミニウム板は容易に着脱可能であることから、適時取り外して表面に付着した保護層形成材を取り剥がすとよい。また、必要に応じて水で洗浄するとよい。ウォーミングアップ機構110は、保護層形成材を廃棄するための排水ピット上に配置すれば、底面板118は省略可能である。
【0042】
図5に示すように、モイスチャーボックス130は、上面開放の貯水ボックス130aと、該貯水ボックス130aに隣接する超音波駆動回路部130bとを有する。貯水ボックス130aは、ローラ48及び該ローラ48を保持するホルダ86よりやや広い幅を有するとともにホルダ86の2倍以上の高さを有する。貯水ボックス130aの内面には、超音波駆動回路部130bによって高周波で振動する超音波振動体130cが設けられている。超音波振動体130cを振動させることにより、貯水ボックス130aに溜まっている水を蒸発(又は霧化)させて貯水ボックス130a内を湿潤に保つことができる。この方式によれば超音波振動体130cを振動させた後、極めて迅速に水を蒸発させることができる。超音波振動体130cの振動周波数は、水蒸気粒子の細かさが適切な大きさとなるように設定しておく。
【0043】
貯水ボックス130aには上部の供給口132から水が供給されて溜められる。供給口132は電磁弁134に接続されており、該電磁弁134を制御部18で操作することによって保護層形成材を貯水ボックス130aに供給することができる。貯水ボックス130aには液面計136が設けられており、保護層形成材の液面が低下したことを検出し、電磁弁134に作用して水を自動的に補給することができる。通常、水位が貯水ボックス130aの略半分の高さとなるように水を補給する。
【0044】
図6に示すように、ローラ48、ウォーミングアップ機構110及びモイスチャーボックス130に保護層形成材及び水を供給するための液圧及び空圧の複合回路150は、コンプレッサ152と、該コンプレッサ152の吐出部に接続されたエアタンク154と、空気圧の供給・遮断の切り換えを行う手動の空圧投入弁156と、制御部18から供給される電気信号によって2次側圧力を減少させるレギュレータ158と、該レギュレータ158の2次圧によってパイロット操作されて塗布材管路22の圧力を減少させるレギュレータ操作弁160とを有する。また、複合回路150は、レギュレータ操作弁160の2次側管路及び水管路26が接続されたMCV162を有する。MCV162の2次側とローラ48との間にはトリガー弁164が設けられている。MCV162の内部には、塗布材管路22及び水管路26の連通・遮断の切り換えを行う切換弁162a、162bが設けられており、該切換弁162a、162bの2次側は連通している。なお、図6の破線は空気圧管路を示す。
【0045】
MCV162及びレギュレータ操作弁160は、空気圧パイロット式に限らず電気ソレノイド等の駆動方式のものでもよい。
【0046】
複合回路150は、さらに、空圧投入弁156から供給される空気圧を切り換えることによって切換弁162a、162bをパイロット形式で操作するMCV切換電磁弁166と、トリガー弁164を空気圧によりパイロット操作するトリガー切換電磁弁168とを有する。
【0047】
MCV切換電磁弁166は制御部18から供給される電気信号によって、切換弁162a、162bのいずれか一方を連通させるとともに他方を遮断し、水と保護層形成材とを切り換えてトリガー弁164に供給する。トリガー切換電磁弁168は、制御部18から供給される電気信号によってトリガー弁164を連通・遮断に切り換えてローラ48に水又は保護層形成材を供給する。
【0048】
塗布材管路22及び水管路26の途中には、それぞれ手動の止め弁170、172が設けられている。通常、止め弁170及び172は連通させておく。複合回路150において空気の排出口にはそれぞれサイレンサ174が設けられており、排気音を低減させている。コンプレッサ152、ポンプ32及び水供給源24には、過剰な圧力上昇を防止するリリーフ弁(図示せず)が設けられている。
【0049】
水管路26には前記の電磁弁134が接続されており、該電磁弁134を介してモイスチャーボックス130に水を供給することができる。
【0050】
なお、複合回路150におけるコンプレッサ152、エアタンク154、水供給源24及びポンプ32は、各ロボット16a、16b、16cに共通であり、それ以外の機器は各ロボット16a、16b、16cに個別に備えられている。
【0051】
図7に示すように、モニタ画面18bに表示されるローラ設定メニューは、洗浄時間テーブル140と、材料充填時間テーブル142とを有する。洗浄時間テーブル140は、各ロボット16a、16b、16c毎に、後述する洗浄動作を実行させる時間(以下、洗浄設定時間という)を設定するテーブルである。材料充填時間テーブル142は、各ロボット16a、16b、16c毎に、後述する第1動作(ウォーミングアップ機構110の傾斜面112上でローラ48転がす動作)を実行させる時間(以下、材料充填設定時間という)を設定するテーブルである。洗浄時間テーブル140及び材料充填時間テーブル142はそれぞれ「設定値」行と「経過時間」行とを有し、入力装置18aを操作することによって、各ロボット16a、16b、16c毎に洗浄設定時間及び材料充填設定時間を入力する。洗浄設定時間及び材料充填設定時間は所定の記録部に保持される。
【0052】
洗浄時間テーブル140及び材料充填時間テーブル142の「経過時間」は、各ロボット16a、16b、16cの動作の経過時間が表示される行である。また、洗浄動作及び第1動作が実行される度に「0.0」にリセットされ、その直後自動的に計時を再開し経過時間を表示する。
【0053】
また、モニタ画面18bには、所定のポインティングデバイスの操作で指示されるスタートボタン144、停止ボタン146及び待機姿勢ボタン148が設けられている。スタートボタン144及び停止ボタン146は、ロボット16a、16b、16cの動作を開始及び停止させるボタンである。待機姿勢ボタン148は、ロボット16a、16b、16cを車両14等と干渉することのない所定の待機姿勢にするボタンである。具体的には、ローラ48およびホルダ86をリミットスイッチ120(図11参照)の回動レバー120aを回動させる位置に移動させる。スタートボタン144、停止ボタン146及び待機姿勢ボタン148は、所定の操作によってロボット16a、16b、16cに対して個別に動作指示が可能である。
【0054】
次に、このように構成される保護層形成材の塗布装置10を用いて、車両14に保護層形成材を塗布する方法について説明する。
【0055】
まず、予め、各ロボット16a、16b、16cに対して保護層形成材を塗布する動作の教示を行う。ロボット16a、16b、16cに車両14のボンネット部14a(図1参照)、ルーフ中央部14b及びルーフ後方部14cをそれぞれ分担させて、各担当部に保護層形成材を塗布させるように教示し、教示したティーチングデータは制御部18の所定の記録部に記録し、保持しておく。車両14がセダン型であるときには、ロボット16cはトランク部を分担する。
【0056】
保護層形成材を塗布する処理は、搬送ライン12において1台の車両14毎に設定されているタクトタイム内で終了するように教示を行う。
【0057】
また、各ロボット16a、16b、16cに対して、以下に示す第1動作、第2動作及び第3動作を教示させておく。
【0058】
第1動作は、ウォーミングアップ機構110(図4参照)の傾斜面112上でローラ48を複数回(例えば、10回)往復して転がす動作である。この第1動作はローラ48を塗布に適した状態となるように準備するための動作であり、ウォーミングアップ動作とも呼ばれる。
【0059】
第2動作は、ローラ48をモイスチャーボックス130(図5参照)の貯水ボックス130aに挿入する動作であり、ローラ48を貯水ボックス130aに溜めた水に接触させないように教示する。
【0060】
第3動作は、ホルダ86をモイスチャーボックス130(図8参照)の貯水ボックス130aに挿入する動作であり、ホルダ86のチューブ接続部86a(図8参照)を貯水ボックス130aに溜めた水に沈めるように教示する。このとき、ローラ48はホルダ86から取り外しておく。
【0061】
次に、ロボット16a、16b、16cに対する動作の教示が終了後、車両14に保護層形成材を塗布する方法について図9及び図10を参照しながら説明する。
【0062】
先ず、ステップS1において、ウォーミングアップ機構110及びモイスチャーボックス130の貯水ボックス130aにそれぞれ保護層形成材及び水を規定液位となるように供給する。この処理は、液面計136、電磁弁134によって自動的に行われる。
【0063】
次に、ステップS2において、ロボット16a、16b、16cを待機姿勢にし、ホルダ86にローラ48を装着する。このローラ48は、未使用のもの又は洗浄して保護層形成材が洗い流されたものを用いる。
【0064】
ここで、待機姿勢とは、図11に示すように、ホルダ86を回動レバー120aに押し当てて、該回動レバー120aを回動させる位置にロボット16a、16b、16cを移動させた姿勢である。このようにすることにより、ローラ48を装着する作業者は、モニタ画面18b(図1参照)によって、各ロボット16a、16b、16cがローラ48を交換する姿勢に至ったことを集中的に管理、認識することができる。また、各ロボット16a、16b、16cが正しい動作を行っていることを確認することができる。
【0065】
次いで、ステップS3において、所定の初期処理を行う。すなわち、保護層形成材を所定のヒータによって適温に加温するとともに、コンプレッサ152、水供給源24及びポンプ32を動作させる。また、ロボット16a、16b、16cを待機姿勢に保ち、空圧投入弁156を連通させる。
【0066】
さらに、ステップS4において、予め教示したウォーミングアップ動作を実行させる。すなわち、チューブ22aからローラ48の内面に保護層形成材を供給しながら傾斜面112上でローラ48を複数回往復して転がす。
【0067】
チューブ22aから供給される保護層形成材は、ローラ48の表面に染み出るまでやや時間がかかるが、塗布作業を行う前段階でウォーミングアップ動作を実行させることによって保護層形成材を予め十分に染み込ませておくことができ、塗布作業を直ちに開始することができる。また、保護層形成材をローラ48に染み込ませることによって、ローラ48を構成する材料(例えば、植毛体)は柔らかくなって保護層形成材に馴染む。
【0068】
さらに、傾斜面112は3方を側壁114a及び114bで囲われていることから、保護層形成材が外部に漏出又は飛散しにくい。また、ローラ48を転がしたときににじみ出た余分な保護層形成材は傾斜面112を流れ落ちて切欠凹部112aを通り底面板118に流れ込み、排出口116から排出される。ローラ48からにじみ出る保護層形成材の量が過剰であるときには、孔112cから底面板118に滴下する。従って、傾斜面112上には適量の保護層形成材が残ることとなり、この傾斜面112をローラ48が転がることにより、ローラ48の植毛体(又はスポンジ)が保護層形成材に馴染む。
【0069】
傾斜面112は、ローラ48の外周径より長いので、ローラ48を360°以上回転させることができ、保護層形成材をローラ48の全周の面に均一に染み込ませることができる。ローラ48は傾斜面112に設けられた網目状の凸部112bによって抵抗を受けるので、空回りすることがない。また、前記凸部112bによりローラ48の表面は小さい圧縮・伸張を繰り返すことになり、保護層形成材が染み込みやすい。
【0070】
さらに、傾斜面112の上辺は両端が小壁114cで支えられており、それ以外の部分は開放されている。従って、開放された部分からローラ48を傾斜面112上に進入させやすい。また、小壁114cの幅は狭いことからホルダ86に干渉することがない。
【0071】
ウォーミング動作を実行させて保護層形成材をローラ48に染み込ませた後、ロボット16a、16b、16cを待機姿勢に戻す(ステップS5)。
【0072】
このとき、ローラ48は、傾斜面112の上方に配置されることになり、ローラ48から保護層形成材が滴下しても傾斜面112上に落ちることからウォーミングアップ機構110以外の部分を汚すことがない。
【0073】
次に、ステップS6において、塗装の終了した車両14を搬送ライン12によって搬入し、ロボット16a、16b、16cの近傍で停止させる。制御部18は、車両14が搬入されたことを搬送ライン12から供給される信号又はセンサ(図示せず)によって確認して次のステップS7に移る。車両14の搬入が確認されない場合はそのまま待機する。
【0074】
ステップS7においては、各ロボット16a、16b、16cを教示データに基づいて動作させ、車両14の表面に保護層形成材を塗布する。このとき、制御部18はレギュレータ158(図6参照)を介してレギュレータ操作弁160を制御し、塗布材管路22を適当な圧力に制御する。また、MCV切換電磁弁166を介してMCV162を制御し、塗布材管路22を連通させるとともに水管路26を遮断する。さらに、制御部18はトリガー切換電磁弁168を操作することによってトリガー弁164を連通させる。このような制御部18の作用によって保護層形成材は適当な圧力及び適温に保たれながらローラ機構部34のローラ48の内面に供給される。
【0075】
また、ローラ48の内面に供給された保護層形成材はローラ48の表面ににじみ出るまでにやや時間がかかるが、前記のステップS4において予めウォーミングアップ動作を実行しているので、直ちに塗布作業を行うことができる。
【0076】
レギュレータ158による圧力制御と、ロボット16a、16b、16cの動作速度及びロッド78a及び80aに加える力の制御とによって車両14に塗布する保護層形成材の厚みを調整することができる。
【0077】
このときの車両14は塗装が終了していればよく、部品等が取り付けられていない未完成車であってもよいことはもちろんである。
【0078】
ロボット16a、16b、16cによって保護層形成材が塗布された車両14は、搬送ライン12によって次工程へ搬送される。塗布された保護層形成材は、自然乾燥又は送風しながら乾燥させて可剥離性保護層を形成し、車両14の塗装部を保護する。
【0079】
次に、ステップS8において、材料充填時間テーブル142(図7参照)の「設定値」の行で示される材料充填設定時間が経過したか否かを確認する。材料充填設定時間が経過しているときには、対応するタイマカウンタを「0.0」にリセットした後ステップS4へ戻りウォーミングアップ動作を行う。材料充填設定時間が経過していないときには次のステップS9へ移る。
【0080】
材料充填設定時間が経過したときにはステップS4に戻るので、定期的なウォーミングアップ動作によりローラの表面を形成する材料を保護層形成材に馴染ませることができる。従って、車両14に対して保護層形成材の塗りむらの発生を防止するとともに塗膜厚が不足することを防止することができる。
【0081】
ステップS9においては、洗浄時間テーブル140(図7参照)の「設定値」の行で示される洗浄設定時間が経過したか否かを確認する。洗浄設定時間が経過しているときには、対応するタイマカウンタを「0.0」にリセットした後、図10に示す休止モードに移る。洗浄設定時間が経過していないときには次のステップS10へ移る。
【0082】
ステップS10においては、所定の休止時間であるか否かを確認する。休止時間であるときには図10に示す休止モードに移り、それ以外のときにはステップS5へ戻り、その後次の車両14が搬入されるまで待機する(ステップS6)。
【0083】
ここで、休止時間とは終業時間、昼休みの開始時間及び工場操業上の所定の区切り時間等で搬送ライン12が停止する時間である。
【0084】
図10に示す休止モードでは、まずステップS101において、ロボット16a、16b、16cを待機姿勢に戻し、ローラ48をホルダ86から取り外す。取り外したローラ48は、専用の洗浄装置で洗浄し、その後乾燥させる。
【0085】
次に、ステップS102において、洗浄動作を行う。洗浄動作とは、MCV切換電磁弁166(図6参照)を介してMCV162を操作し、切換弁162aを遮断するとともに切換弁162bを連通させる動作である。この洗浄動作によって、水管路26から水が供給され、MCV162、トリガー弁164、チューブ22aを洗浄することができる。ローラ48はステップS101で取り付けたままとし、ステップS102において洗浄動作により洗浄し、その後取り外して、さらに専用の洗浄装置で洗浄してもよい。
【0086】
次いで、ステップS103において、休止時間が小休止に対応するものであるか長休止に対応するものであるかを確認する。小休止は、昼休み及び工場操業上の所定の区切り時間等の休止時間であり、長休止は、終業時間後の夜間等の休止時間である。小休止に対応した休止時間であるときにはステップS104へ移り、長休止に対応した休止時間であるときにはステップS108へ移る。
【0087】
ステップS104においては、前記のステップS2と同様にホルダ86にローラ48を装着する。このローラ48は、未使用のもの又は洗浄して保護層形成材が洗い流されたものである。
【0088】
次に、ステップS105において、前記のステップS4と同様にウォーミングアップ動作を実行させる。ウォーミングアップ動作によって、新しく装着したローラ48の表面を形成する材料を馴染ませることができるとともに保護層形成材を染み込ませることができる。
【0089】
次いで、ステップS106において、予め教示した第2動作を実行させる。つまり、ローラ48を、水に接触しない程度にモイスチャーボックス130(図5参照)の貯水ボックス130aに挿入する。このとき、超音波振動体130cを振動させて水を蒸発させることにより貯水ボックス130aの内部を湿潤に保ち、ローラ48を加湿する。また、保護層形成材の供給は止めておく。
【0090】
なお、ローラ48は、必ずしも貯水ボックス130a内の水によって加湿することはなく、他の部分に溜めた水を蒸発させて、発生した蒸気をローラ48に当てるように導いてもよい。
【0091】
保護層形成材は、車両14に塗布した後は迅速に乾燥・固化することが望ましいことから、乾燥・固化しやすいように調整されているものがある。しかしながら、車両14に塗布する前段階でローラ48に染み込んでいるときには乾燥・固化することは不都合である。本実施の形態においては、昼休み等の小休止時にはモイスチャーボックス130を用いてローラ48を加湿し、保護層形成材の乾燥・固化を防止することができる。また、前のステップS105においてローラ48には保護層形成材が十分に染み込んでいるので、小休止が終了したときには、直ちに保護層形成材の塗布を開始することができる。
【0092】
ところで、熱式の蒸気発生器を用いる場合には、蒸気が発生するまでに時間がかかる。従って、ローラ48を貯水ボックス130aに挿入する所定時間前から通電等の発熱処理を行う必要があり、エネルギ消費量が大きい。また、例えば、搬送ライン12を臨時に停止させローラ48を急きょ加湿する必要が生じたときには、熱式の蒸気発生器では水蒸気の発生が間に合わず、ローラ48に染み込んだ保護層形成材が乾燥・固化するおそれがある。
【0093】
本実施の形態で用いるモイスチャーボックス130は超音波式であることから、ローラ48を貯水ボックス130aに挿入した後、超音波振動体130cを振動させることにより迅速に水蒸気を発生させることができるので、保護層形成材の乾燥・固化をより確実に防止できる。ローラ48を急きょ加湿する必要が生じたときにも対応可能である。また、ローラ48を貯水ボックス130aに挿入していないときには水蒸気の発生を停止させることができるのでエネルギ消費量が少ない。また、モイスチャーボックス130は、熱式と異なり発熱することがないので取り扱いが容易である。
【0094】
なお、小休止時にはステップS101〜S105においてローラ48を洗浄、交換するとともにウォーミングアップ動作を実行すると説明したが、小休止の時間が短いときには、これらのステップS101〜S105を省略してステップS106へ移り、その時点で用いているローラ48をそのままモイスチャーボックス130内で加湿してもよい。ステップS101、ステップS102及びS104のローラ48の洗浄、交換処理のみを省略し、ウォーミングアップ動作を実行(ステップS105)させた後に、ステップS106へ移ってもよい。
【0095】
次に、ステップS107において、制御部18は休止時間が終了したか否かを確認する。このとき、各ロボット16a、16b、16cのローラ48は貯水ボックス130aに挿入したままとし、超音波振動体130cによって水蒸気を発生させて湿潤状態に保つ。休止時間が終了したときにはステップS5に移り、休止時間であるときにはそのまま待機する。なお、休止時間が終了したときにはステップS4へ戻りウォーミングアップ動作を実行してもよい。
【0096】
ステップS108、つまり、夜間等の長休止であるときには、ローラ48をホルダ86から取り外したまま、予め教示した第3動作を実行させる。つまり、ホルダ86を、モイスチャーボックス130(図8参照)の貯水ボックス130aに挿入し、ホルダ86のチューブ接続部86aを貯水ボックス130aに溜めた水に沈める。このとき、超音波振動体130cは停止させたままとし、水蒸気は発生させない。
【0097】
このように、チューブ接続部86aを水に沈めておくことにより、トリガー弁164及びチューブ22a等に多少残留している保護層形成材の乾燥・固化によって管路が詰まることを防止できる。
【0098】
なお、長休止としては、通常の夜間における休止と、連休等の24時間以上の休止が挙げられるが、24時間以上の休止時には貯水ボックス130aに蓄える水の量を多くし、ホルダ86を深く沈めておくとよい。このように、休止時間の長さに応じて水を補充することによって、自然蒸発による水位の低下を補うことができる。
【0099】
このステップS108により保護層形成材の塗布作業は終了し、再稼働する際には前記のステップS1から実行する。
【0100】
図9及び図10における処理は主に制御部18のプログラム処理によって自動的に行われ、一部の補助的な作業だけを担当の作業員が行えばよい。補助的な作業とは、例えば、ステップS2、S102及びS104におけるローラ48の着脱作業等である。貯水ボックス130aへの水の補給は、液面計136等を用いることなく作業員が目視判断で行ってもよい。
【0101】
上記したように、本実施の形態に係る保護層形成材の塗布方法及び塗布装置10によれば、塗布作業を行う以前に保護層形成材を供給しながら簡便な構成のウォーミングアップ機構110を用いてウォーミングアップ動作を実行させる。従って、ローラ48に保護層形成材を染み込ませることができ、その後、塗布作業を直ちに開始することができる。
【0102】
また、車両14に対する保護層形成材の塗りむらの発生を防止するとともに塗膜厚が不足することを防止することができる。
【0103】
さらに、ローラ48を装着した後にはウォーミングアップ動作を行うようにしたので、ローラ48の表面を形成する材料を保護層形成材に対して馴染ませて、柔らかくすることができる。このウォーミングアップ動作の再実行は、車両14の所定台数毎に実行してもよい。
【0104】
また、ローラ48を備えるローラ機構部34をロボット16a、16b、16cで操作するとともにローラ48に保護層形成材を供給することにより、保護層形成材を塗布する工程を自動化し、塗布品質を均一化することができる。
【0105】
さらに、車両14の表面に保護層形成材を塗布する工程を、従来技術よりもさらに自動化させることができる。
【0106】
さらにまた、自動化によって作業者が保護層形成材を塗布する工程がなくなることから、工程数を減少させて生産効率を向上させることができる。また、作業者用の空調設備を省略することができる。従って、空調に要する電力の低減により省エネルギ化を図ることができ、耐環境性を向上させることができるとともに工場の操業コストが低減化される。
【0107】
保護層形成材により形成される剥離性保護層は、車両14の出荷後において塗装部を保護することができる一方、工場内においても塗装部を保護することができスクラッチカバーの代用となる。従って、車種毎に違う形状の多数のスクラッチカバーを省略することができる。
【0108】
なお、前記のステップS5では、ロボット16a、16b、16cは待機姿勢で待機すると説明したが、ステップS106と同様にモイスチャーボックス130の貯水ボックス130aにローラ48を挿入し、水蒸気で加湿しながら待機してもよい。
【0109】
車両14のバンパには着色されていて塗装が不要のものがあるが、保護層形成材はこのようなバンパ等の塗装部以外の箇所に塗布してもよい。
【0110】
本発明に係る保護層形成材の塗布装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至ステップを採り得ることはもちろんである。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る保護層形成材の塗布装置によれば、保護層形成材の塗布作業を迅速に開始させるとともに、保護層形成材の塗りむらの発生と塗膜厚が不足することを防止することができる。
【0112】
また、保護層形成材の材料としてアクリル系コポリマ剤を用いることによって、車両をより確実に保護することができ、しかも除去するときには剥がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る保護層形成材の塗布装置の斜視図である。
【図2】ロボット、該ロボットに設けられたローラ機構部、ウォーミングアップ機構及びモイスチャーボックスの斜視図である。
【図3】ローラ機構部の拡大斜視図である。
【図4】ウォーミングアップ機構の一部断面斜視図である。
【図5】モイスチャーボックスの貯水ボックスでローラを加湿する様子を示す一部断面側面図である。
【図6】液圧及び空圧の複合回路を示す回路図である。
【図7】モニタ画面に表示されるローラ設定メニューを示す図である。
【図8】モイスチャーボックスの貯水ボックスにホルダを沈める様子を示す一部断面側面図である。
【図9】本実施の形態に係る保護層形成材の塗布方法の一部を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態に係る保護層形成材の塗布方法の一部である休止モードを示すフローチャートである。
【図11】ウォーミングアップ機構に設けられたリミットスイッチの回動レバーにホルダを押し当てた状態を示す一部断面斜視図である。
【符号の説明】
10…塗布装置 12…搬送ライン
14…車両 16a、16b、16c…ロボット
18…制御部 20…タンク
22…塗布材管路 22a…チューブ
26…水管路 30…スライドレール
32…ポンプ 34…ローラ機構部
47…容器台 48…ローラ
110…ウォーミングアップ機構 112…傾斜面
112a…切欠凹部 112b…凸部
112c…孔 114a、114b…側壁
116…排出口 118…底面板
120…リミットスイッチ 120a…回動レバー
130…モイスチャーボックス 130a…貯水ボックス
130b…超音波駆動回路部 130c…超音波振動体
132…供給口 134…電磁弁
136…液面計 140…洗浄時間テーブル
142…材料充填時間テーブル 150…複合回路
162…MCV 162a、162b…切換弁
164…トリガー弁

Claims (2)

  1. 複数の車両が順次搬送される搬送ラインの近傍に設けられ、ティーチング動作可能なロボットと、
    前記ロボットに接続され、回転自在であって、乾燥後に剥離性保護層として作用する液状の保護層形成材を吸収して蓄えることのできる材質のローラと、
    前記保護層形成材を前記ローラに供給する供給機構部と、
    前記ロボットの動作範囲内に配置され、前記ローラの長尺方向の幅より広く、前記ローラを転がすためのウォームアップ機構と、
    を有し、
    前記ウォームアップ機構は、傾斜面と、
    該傾斜面の4辺のうち傾斜した2辺及び下辺に設定された側壁と、
    前記下辺の近傍に設けられた前記保護層形成材の排出部と、
    前記ローラを前記車両に当接させて前記保護層形成材を塗布する前に、前記ローラが前記傾斜面の上方の待機位置に配置されたことを検出する位置検出手段と、
    を有し、
    前記傾斜面には、複数の孔と、小凸部が設けられていることを特徴とする保護層形成材の塗布装置。
  2. 請求項1記載の保護層形成材の塗布装置において、
    前記保護層形成材の材料は、アクリル系コポリマ剤であることを特徴とする保護層形成材の塗布装置。
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