JP4117714B2 - フーリエ変換型赤外円偏光二色性装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フーリエ変換型赤外円偏光二色性装置に関するもので、特に信号処理系の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
よく知られているように、赤外円偏光二色性法は、紫外・可視領域に吸収を持たない光学活性物質の分子構造を測定する方法として有用な一手段である。さらに、信号強度が弱いことから、フーリエ分光法を用いるようにしている。
【0003】
そして、係る従来の測定装置の構造の一例を示すと、図1のようになっている。すなわち、光源1から出射した赤外光を、マイケルソン干渉計2を通過させ、得られた干渉光の光路上に偏光子3,PEM4,セル5並びに検出器6を配置している。これにより、干渉光は、偏光子3を透過させることにより、直線偏光となり、その直線偏光が、PEM4により左右に回転されることにより左回り,右回りの円偏光を交互に発生させる。そして、係る円偏光をセル5内の試料に照射させ、その透過光を検出器6で受光する。検出器6は、受光した光強度に応じた電気信号に変換し出力するようになっている。なお、PEM4における変調周波数は、PEMコントローラ13により制御されている。
【0004】
すると、CD特性を有する物質は、右円偏光と左円偏光の吸光度が異なるので、PEM4で所定周波数(例えば、20kHz)で右円偏光と左円偏光とを交互に切り替えると、検出器6の検出出力もその周期で変化する一種の交流信号となる。
【0005】
そこで、係る検出器6の出力を、プリアンプ7で増幅後、バンドパスフィルタ8,ロックインアンプ9,ローパスフィルタ10を経てコンピュータ12に入力するようにしている。すなわち、マイケルソン干渉計2側でも、可動鏡を所定速度で移動させることから、光の強度が所定周波数(例えば、0.1〜2kHz程度)で変調されており、PEM4における変調周波数と異なる。
【0006】
従って、バンドパスフィルタ8では、所定の周波数帯域(PEM4の変調周波数を含む帯域)の信号のみ通過させ、ロックインアンプ9では、PEM4の変調周波数に合わせて、20kHzの周波数成分を増幅する。これにより、その強度変化として、マイケルソン干渉計2の強度変調周波数(0.1〜2kHz程度)をもつACインターフェログラムが得られる。
【0007】
よって、係るロックインアンプ9の出力をローパスフィルタ10を介してコンピュータ12に入力することにより、そのコンピュータ12にて係るインターフェログラムをフーリエ変換する。さらに、ロックインアンプ9とローパスフィルタ10の間には、切り替えスイッチ11が設けられ、上記ロックインアンプ9の出力と、プリアンプ7の出力の2つを択一的に選択し、ローパスフィルタ10に導くようになっている。
【0008】
これにより、切り替えスイッチ11が、プリアンプ7側に接続されている場合には、赤外吸収スペクトル強度つまり、DC成分がコンピュータ12に与えられる。そこで、コンピュータ12では、上記求めたフーリエ変換とスペクトル強度の比を求めることにより、CDを算出するようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の装置では、以下に示す問題を有している。すなわち、上記した装置を用いて実際に測定をするには、まず、切り替えスイッチ11をb接点にしてプリアンプ7の出力を直接ローパスフィルタ10に与え、赤外吸収スペクトルを求める。次いで、切り替えスイッチ11をa接点にしてマイケルソン干渉計2の可動鏡を移動しながら受光した検出器6の出力を、ロックインアンプ9,ローパスフィルタ10を通過することにより得られるACインターフェログラム(図2参照)に基づいてフーリエ変換をするが、このフーリエ変換をするには、マイケルソン干渉計2の光路差がゼロになる位置を特定する必要がある。
【0010】
この光路差ゼロの位置は、図2に示すようにACインターフェログラムの出力は小さいので、ACインターフェログラムの出力をリアルタイムで見ながら特定することはできない。その結果、従来は一旦すべてのACインターフェログラムを取り込んだ後、その形状から中心位置を特定し、それに基づいてフーリエ変換をするようにしている。従って、リアルタイムでの処理ができず、処理が遅れるばかりでなく、取り込み中のスペクトルの様子もモニタできない。
【0011】
本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記した問題を解決し、ACインターフェログラムを取得している最中に光路差ゼロの位置を検出でき、リアルタイムでフーリエ変換を行い、赤外円偏光二色性を測定することができ、取り込み中のスペクトルの様子をモニタすることができるフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係るフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置では、赤外光を出射する光源と、その光源から出射する赤外光を干渉させる干渉計と、その干渉計から出力される干渉光を直線偏光にする偏光手(実施の形態では、「偏光子3」に対応)と、その直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換するとともに、試料に照射する手段(実施の形態では、「PEM4」に対応)と、前記試料を透過した光を受光する検出手段(実施の形態では、「検出器6」に対応)と、その検出手段から出力される受信信号に基づいて信号処理して円二色性を求める信号処理手段とを備えたフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置であって、前記信号処理手段は、前記受信信号からACインターフェログラムを抽出する抽出手段(実施の形態では、「プリアンプ7,バンドパスフィルタ8,ロックインアンプ9」等により構成されている)と、その抽出手段で抽出されたACインターフェログラムに基づいてフーリエ変換をするとともに、円二色性を算出する演算手段(実施の形態では、「コンピュータ12」に対応)と、前記抽出手段でACインターフェログラムを抽出するのと同時に前記受信信号中のDCインターフェログラムを監視する監視手段とを備える。そして、その監視中のDCインターフェログラムに基づいて前記干渉計の光路差ゼロの位置を特定し、前記ACインターフェログラムを抽出しながら前記演算手段にてフーリエ変換を実行可能に構成した(請求項1)。
【0013】
干渉計の光路差ゼロの位置ではどの波数も同位相で干渉しているために最大強度を示す。従って、DCインターフェログラムのレベルは、最大となる。よって、係るDCインターフェログラムを監視(モニタ)しながらACインターフェログラムを取り込むと、取り込んだACインターフェログラムの光路差ゼロの位置を認識できる。よって、リアルタイムでフーリエ変換を行うことができ、円二色性を算出できる。
【0014】
そして、好ましくは前記監視手段は、レベル追随型コンパレータであり、そのレベル追随型コンパレータからトリガが出力された際に前記光路差ゼロの位置と特定するように構成することである(請求項2)。係る構成にすると、DCインターフェログラムのレベルが小さくなっても、基準値が自動的に設定され、安定してトリガ信号が得られる。なお、監視手段はこのようにレベル追随型コンパレータにすることなく、例えばDCインターフェログラムを直接コンピュータに与え、ソフト処理によりそのピーク値を求めるなど、各種の方式をとることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図3は、本発明に係るフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置の好適な一実施の形態を示している。同図に示すように、基本的な構成は従来のものと同様であり、対応する部材は同一符号を示している。
【0016】
つまり、光学系としては、光源1から出射された赤外光が、マイケルソン干渉計2にて干渉され、その干渉光が偏光子3を透過することにより直線偏光となる。そして、その直線偏光がPEM4にて、所定の変調周波数ωm(本例では、37kHz)で左右の円偏光に変調されてセル5内の試料に照射され、そのセル5の透過光(セル5内の試料で所定の光成分が吸収された光)が、検出器6に受光されるようになっている。
【0017】
また、前記光学系で受光した光(光強度)は、検出器6で電気信号に変換され、その検出器6に接続された信号処理系で所定の演算処理が行われ、円二色性が求められる。この信号処理系は、入力側にプリアンプ7を備え、検出器6の出力をそのプリアンプ7で増幅する。そして、その増幅した信号をバンドパスフィルタ8(通過周波数帯域:25〜50kHz)の出力をロックインアンプ9に与え、そこにおいて所定周波数の信号を分離検出し、図4(b)に示すように、ACインターフェログラムを取得する。
【0018】
さらに、ロックインアンプ9の出力を、ローパスフィルタ8(通過帯域、5hHz以下)を介してコンピュータ20に与えるようになる。さらにまた、本例では、ローパスフィルタ10とコンピュータ20の間に切り替えスイッチ11を設け、ローパスフィルタ10の出力(ACインターフェログラム)を取得する経路と、プリアンプ7の出力を直接取得する経路とを択一的に選択できるようにしている。上記した各構成は、基本的に従来のものと同様である。
【0019】
ここで本発明では、プリアンプ7の出力をレベル追随型コンパレータ21にも与え、そのレベル追随型コンパレータ21の出力をコンピュータ20に与えるようにしている。そして、このレベル追随型コンパレータ21を通る経路は、常時接続されている(切り替えスイッチ11と別経路)。このレベル追随型コンパレータ21は、入力値の変動に応じて基準値も変化し、入力値がピークのときにとリガを出力するようになっている。
【0020】
このように構成すると、コンピュータ20はACインターフェログラムの取得と同時にレベル追随型コンパレータ21の出力も取得し、その追随型コンパレータ21からトリガを受け取ったときに光路差ゼロ位置であると判断し、ACインターフェログラムのフーリエ変換を行う。そして、そのようにして求めたフーリエ変換の演算結果を、あらかじめ求めた赤外吸収スペクトル強度で割ることによりCD値を求めるようになる。なお、このように光路差ゼロをリアルタイムで検出することを除いたCD値を求める演算処理(光路差ゼロ位置を基準にフーリエ変換を求め、赤外吸収スペクトル強度を用いてCD値を算出すること)は、基本的に従来と同様である。
ここで、演算処理の原理を簡単に説明すると、マイケルソン干渉計2から出力される赤外光は、干渉計の光路差Xの関数として、下記のように示される。
【0021】
【数1】
干渉計の可動鏡の移動速度をvcm/secとすると、X=2vtであるので、波数νの光は、4πνvのフーリエ周波数で強度変調される。
【0022】
よって、光学活性試料を通過した後の光は、次式で与えられる。
I(X)=(DC)+(AC)
但し
【数2】
偏光変調されていない光路差Xに依存する(DC)の第2項は、通常の吸収スペクトル測定のインターフェログラムである。また、偏光変調された(AC)の第2項(sinωmfcos2πXν)に依存する信号は、フーリエ周波数4πνv,および円偏光変調周波数ωmで2重に変調されている。この信号を周波数ωmに同期したロックインアンプで同期整流することにより、次式が得られる。
【0023】
【数3】
ここで、G1およびG2は、信号処理系のゲインであり、2重変調された信号から上記した式(3)のインターフェログラムIAC(X)をロックインアンプにより分離検出するためには、干渉計の可動鏡の駆動速度vcm/secは、
4πνv<<ωm
になるように調整する。
【0024】
そして、IDC(X)およびIAC(X)のインターフェログラム(図4参照)をフーリエ変換し、その比をとるとCD強度を得ることができる。
【0025】
このとき、AC分のインターフェログラムは、光路差ゼロの位置で最大強度が出てこないが、DC分については、光路差ゼロの位置ではどの波数も同位相で干渉しているために最大強度を示す。従って、DCインターフェログラムをモニタしながらACを取り込むと、取り込んだACインターフェログラムの光路差ゼロの位置を認識できる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置では、DCインターフェログラムを監視しながらACインターフェログラムを取得することができるので、そのDCインターフェログラムのピークから干渉計の光路差ゼロの位置を特定できる。よって、ACインターフェログラムを取得している最中に光路差ゼロの位置を検出でき、リアルタイムでフーリエ変換を行い、赤外円偏光二色性を測定することができる。従って、取り込み中のスペクトルの様子をモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例を示す図である。
【図2】従来の測定原理を説明する図である。
【図3】本発明に係るフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置の好適な位置実施の形態を示すブロック図である。
【図4】作用を説明する図である。
【符号の説明】
1 光源
2 マイケルソン干渉計
3 偏光子
4 PEM
5 セル
6 検出器
7 プリアンプ
8 バンドパスフィルタ
9 ロックインアンプ
10 ローパスフィルタ
11 切り替えスイッチ
13 PEMコントローラ
20 コンピュータ
21 レベル追随型コンパレータ
Claims (2)
- 赤外光を出射する光源と、その光源から出射する赤外光を干渉させる干渉計と、その干渉計から出力される干渉光を直線偏光にする偏光手段と、その直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換するとともに、試料に照射する手段と、前記試料を透過した光を受光する検出手段と、その検出手段から出力される受信信号に基づいて信号処理して円二色性を求める信号処理手段とを備えたフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置であって、
前記信号処理手段は、前記受信信号からACインターフェログラムを抽出する抽出手段と、その抽出手段で抽出されたACインターフェログラムに基づいてフーリエ変換をするとともに、円二色性を算出する演算手段と、前記抽出手段でACインターフェログラムを抽出するのと同時に前記受信信号中のDCインターフェログラムを監視する監視手段とを備え、
その監視中のDCインターフェログラムに基づいて前記干渉計の光路差ゼロの位置を特定し、前記ACインターフェログラムを抽出しながら前記演算手段にてフーリエ変換を実行可能としたことを特徴とするフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置。 - 前記監視手段は、レベル追随型コンパレータであり、
そのレベル追随型コンパレータからトリガが出力された際に前記光路差ゼロの位置と特定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のフーリエ変換型赤外円偏光二色性装置。
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