JP2004020539A - 赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、測定時間および測定精度が改善され、容易にアサイメントが可能な赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法を提供することにある。
【解決手段】干渉計103を通した赤外光源102からの干渉光を、所定の変調周波数の左右円偏光に変換して試料に照射し、検出手段107の検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出するAC信号抽出手段110,111,112と、試料の赤外吸収によるインターフェログラムを抽出するDC信号抽出手段113,112と、円二色性を算出する演算手段114を備えた赤外円二色性測定装置において、前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に透過させる選択透過手段120を備えることを特徴とする赤外円二色性測定装置101および赤外円二色性測定方法。
【選択図】 図1
【解決手段】干渉計103を通した赤外光源102からの干渉光を、所定の変調周波数の左右円偏光に変換して試料に照射し、検出手段107の検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出するAC信号抽出手段110,111,112と、試料の赤外吸収によるインターフェログラムを抽出するDC信号抽出手段113,112と、円二色性を算出する演算手段114を備えた赤外円二色性測定装置において、前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に透過させる選択透過手段120を備えることを特徴とする赤外円二色性測定装置101および赤外円二色性測定方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法、特に測定時間の短縮、測定精度の向上、およびアサイメントの技術改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの化学物質において、その絶対構造、立体構造に関する知見は極めて基本的、且つ重要不可欠な情報となっている。例えば薬物、毒物、生体物質などの生理活性物質のキラリティを解析する手段としては、X線構造解析、円二色性スペクトル解析等が挙げられる。特に円二色性スペクトル解析は、取り扱いが比較的容易であることから、この研究には重要不可欠な手段として広く用いられている。
【0003】
鏡像非対称な分子構造をもつ分子は右回り円偏光と左回り円偏光に対する吸収の大きさが異なるという性質をもつ。この性質は円二色性と呼ばれる。多くの生理活性物質は光学活性をもち、円二色性を測定することにより分子の立体構造に関する情報が得られ、その構造の同定に用いられている。
特に赤外円二色性測定は、例えば紫外・可視領域に吸収をもたない光学活性物質の構造の同定にも用いることができる。
【0004】
従来の赤外円二色性測定装置の概略を図5に示す。同図に示す赤外円二色性測定装置1では、赤外光源2から発した赤外光を、マイケルソン干渉計3に通過させて干渉光を発生させる。干渉光の光路上には偏光子4、光弾性素子5(PEM:Piezo Electric Modulator)、試料6及び検出器7が設置されている。干渉光は偏光子4を透過することにより直線偏光となり、該直線偏光はPEM5により所定の変調周波数で左右交互に発生する円偏光に変換される。PEM5の変調周波数は、PEMコントローラ8により制御されている。このように変調された赤外光は試料6を透過した後、検出器7で検出される。検出器としては、50kHz程度のPEM周波数にも対応できる速い応答が可能なPC型MCT検出器などが使用される。
【0005】
このとき、検出器7では図6に示したような信号が検出される。すなわち、例えばPEMコントローラにより50kHzの変調周波数で左右円偏光を発生させた場合、光学活性物質である試料は左円偏光と右円偏光に対する吸収の大きさが異なるので、試料通過後に検出された信号はPEMの変調周波数で変調された交流成分をもつことになる。そして、この交流成分が干渉計3による変調(3kHz程度)に重畳した、二重に変調された信号が検出されることになる。
【0006】
検出器7で検出された信号は、プリアンプ9で増幅後バンドパスフィルタ10、ロックインアンプ11、データ収集回路12を通過し、左右の各円偏光によるインターフェログラムが抽出される。すなわち、バンドパスフィルタ10でPEM5の変調周波数を含んだ所定周波数帯域の信号のみ通過させ、ロックインアンプ11では、同期信号によりPEMの変調周波数をもつ成分をロックイン検出する。このとき所定の時定数(ある測定信号をロックインアンプが出力してから次の測定信号をロックインアンプが出力するのに要する時間)でサンプリングして、干渉計3による3kHz程度の変調成分の強度変化をもつ交流信号が得られる。
一方、検出器7で検出された信号は、プリアンプ9で増幅後ローパスフィルタ13、データ収集回路12を通過し、赤外吸収によるインターフェログラムが抽出される。
このようにして抽出された左右の各円偏光によるインターフェログラムと赤外吸収によるインターフェログラムに基づき、コンピュータ14ではフーリエ変換を行い左右の各円偏光による吸収スペクトルの差スペクトル(ΔA)である円二色性スペクトルを算出する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
赤外円二色性測定は得られる信号強度が弱く、フーリエ変換型の赤外分光光度計を用いて多波長の赤外光を同時に試料に照射して測定を行う。このため、次の問題点を有していた。
まず、PEMの中心周波数(中心波長)、すなわち円偏光を生成する効率が最も高い光波長の周辺の狭領域では効率よく円偏光が生成されるものの、そこから離れた波長領域では円偏光を生成する効率が落ちてしまい、測定効率が悪くなる。
【0008】
また、PEMの変調周波数で変調された交流成分は、左右の各円偏光による吸収スペクトルの差が非常に小さいため極めて微弱であり(Aは通常1程度であるところ、円二色性測定では10−4〜10−5程度)、S/N比を改善するために複数回の測定を要し、短時間の測定ができない(例えば1〜2時間程度の積算が必要となる)。
【0009】
一方、検出光強度としては、多波長の光を同時に含んでいるため非常に明るく、検出器として50kHz程度のPEM周波数にも対応できる速い応答が可能なPC型MCT検出器を用いた場合、検出光強度があまりに強い領域では光強度に比例した信号を出力できず非線形応答となってしまい測定精度に影響してしまう。
【0010】
また、干渉光による変調信号(インターフェログラム)は図6に示すように急激に強度が減衰するため、テールの部分の強度が弱い部分ではノイズの影響を強く受け、これに起因するS/N比やAD変換時の量子化誤差によりダイナミックレンジが制限されてしまう。
【0011】
また、S/N比の向上という点ではロックインアンプの時定数を長くすることが好ましいが、図6に示すような、干渉計による3kHz程度の変調成分の強度変化をもつ信号をサンプリングすることを想定した場合、あまり時定数を長くすると干渉計による変調成分が得られなくなってしまうので、1m秒以下程度の時定数で測定する必要があり、S/N比の点で一定の限界がある。
【0012】
さらに、次の問題点を有していた。円二色性スペクトルは赤外吸収スペクトルの吸収ピーク位置に対して得られるので、その円二色性スペクトルがどの分子振動に起因しているかを知ることはできる。しかしながら、分子構造に関する情報と円二色性スペクトルの形状との関連性は、赤外円二色に関しては十分に明らかになっていないのが現状である。また、紫外・可視では吸収が数本程度までであるのに対し、赤外のいわゆる指紋領域では非常に多くの吸収があるためそのアサイメントが非常に複雑である。これらの点から、赤外領域においても特定の吸収帯の円二色性スペクトルと分子構造との関係を明らかにするための手段が求められていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記従来技術の課題に鑑み為されたものであり、その目的は測定時間および測定精度が改善され、容易にアサイメントが可能な赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法を提供することにある。
前記課題を解決するために本発明の赤外円二色性測定装置は、
赤外光を発する赤外光源と、
該赤外光を干渉させ、干渉光を発生させる干渉計と、
該干渉光を直線偏光にする偏光発生手段と、
該直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換して試料に照射する円偏光発生手段と、
試料を透過した該円偏光を検出して検出信号を発生する検出手段と、
前記検出信号から試料の赤外吸収によるインターフェログラムを抽出するDC信号抽出手段と、
前記検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出するAC信号抽出手段と、
前記抽出手段で抽出されたインターフェログラムに基づきフーリエ変換するとともに円二色性を算出する演算手段を備えた赤外円二色性測定装置において、
前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に透過させる選択透過手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記装置において、前記円偏光発生手段は光弾性変調素子であることが好適である。
また、前記装置において、前記抽出手段にロックインアンプを備えることが好適である。
【0015】
また、前記課題を解決するために本発明の赤外円二色性測定方法は、
赤外光源から発する赤外光を干渉計で干渉させて干渉光を発生させ、
該干渉光を直線偏光とした後、該直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換して試料に照射し、
試料を透過した該円偏光を検出して検出信号を発生させ、
前記検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出し、
該インターフェログラムに基づきフーリエ変換するとともに円二色性を算出する赤外円二色性測定方法において、
前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に試料に照射することを特徴とする。
【0016】
また、前記方法において、前記円偏光を光弾性変調素子により発生させることが好適である。
また、前記方法において、前記抽出にロックインアンプを用いることが好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。本発明の赤外円二色性測定装置の概略を図1に示す。なお、前記従来技術と対応するものには符号100を付して説明を省略する。同図に示す赤外円二色性測定装置101では、赤外光源102から発した赤外光を、マイケルソン干渉計103(干渉計)に通過させて干渉光を発生させる。干渉光の光路上には光学フィルタ120(選択透過手段)、偏光子104(偏光発生手段)、PEM105(円偏光発生手段)、試料106及び検出器107(検出手段)が設置されている。干渉光は、光学フィルタ120で特定の波長領域の光のみ選択的に透過し、偏光子104を透過することにより直線偏光となり、該直線偏光はPEM105により所定の変調周波数で左右交互に発生する円偏光に変換される。PEM105の変調周波数は、PEMコントローラ108により制御されている。このように変調された赤外光は試料106を透過した後、例えばPC型MCT検出器、PV型MCT検出器、またはInSb検出器等の検出器107(検出手段)で検出される。
【0018】
本発明において特徴的なことは、光学フィルタ120のように赤外光源からの赤外光のうち特定の波長領域の光のみ選択的に透過する選択透過手段を設けたことである。この選択透過手段により透過させる波長は、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域に基づき設定される。すなわち、試料分子の構造解析に必要な波長領域の光を選択して測定を行う。このような振動モードに対応する赤外吸収帯としては例えば以下のものが挙げられる。
・3700−3100cm−1 NH
・3000−2800cm−1 CH伸縮
・1700cm−1 C=O
・1640cm−1 アミドI(タンパク質)
・1550cm−1 アミドII(タンパク質)
・1500−1300cm−1 CH変角
・1100−900cm−1 C−O−C(糖)
なお、選択透過手段としては干渉フィルタなど、特定の波長領域の光のみ選択的に透過するものであれば特に限定されず、複数の振動モードに対応して複数の分離した各波長領域における光を透過するようにしてもよい。また、その設置位置も光路上であれば特に限定されない。
このように選択透過手段を設け、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域に絞ったことにより、そのアサイメントが非常に複雑である赤外領域においても、特定の吸収帯の円二色性スペクトルと分子構造との関係を容易に明らかにするための手段を与える。
【0019】
また、このような光学的に特定の波長領域の光のみ選択的に透過するもの以外に、電気的な処理によりこれと同じ効果が得られるものを使用することもできる。すなわち、検出器からの電気信号の経路上の適当な位置に、電気フィルタを設置し、干渉計による変調信号の構成要素である、各波長の光による干渉信号のうち特定の領域のものを選択的に透過するようにして選択透過手段を構成してもよい。
【0020】
このように本発明では特定の波長領域の光のみ選択的に透過することとしたので、図2に示すようにPEMの中心周波数(中心波長)を該特定の波長領域に合わせることにより全ての測定波長範囲で効率よく円偏光が生成され、効率よく測定を行うことができる。
【0021】
さらに、特定の波長領域に絞ったことで、該波長領域に高い感度をもつ検出器を選択して使用することにより感度の高い測定ができ、S/N比を改善するための積算を少なくすることができるので、測定時間を短縮することができる。
【0022】
また、応答が速くPEMの変調周波数にも対応できる検出器として好適に用いられるPC型MCT検出器を用いた場合には、波長領域を絞り測定に必要のない領域の光をカットしたため、検出器へ入射する光強度が大幅に減少し、線形応答を示す強度領域で測定することができ、測定精度に支障を生じることなく測定することができる。
【0023】
検出器107では図3にその概略を示す信号が検出される。すなわち、例えばPEMコントローラにより50kHzの変調周波数で左右円偏光を発生させた場合、光学活性物質である試料は左円偏光と右円偏光に対する吸収の大きさが異なるので、試料通過後に検出された信号はPEMの変調周波数で変調された交流成分をもつことになる。そして、この交流成分が干渉計103による変調に重畳した、二重に変調された信号が検出されることになる。
【0024】
本発明の装置を用いた場合、検出器で検出される信号は図3に示すようにその干渉計による変調成分の減衰が従来の場合に比して緩やかになり、且つその周波数が低くなり比較的なだらかな形状になる。図4に示すように、赤外光源からの光は無数の各波長をもった光の集合体であり、干渉計ではこれらの各波長をもった光ごとに波長の異なる正弦波状の干渉光を発生する。これらの無数の正弦波状の干渉光が重なりあった光強度の和として干渉計による変調成分が形成される。干渉計の光路差がゼロである状態では無数の正弦波状の干渉光が全て強めあい、強度は最大となるが、干渉計の可動鏡が移動して光路差が大きくなるにつれて無数の正弦波状の干渉光は急激に弱めあい結果として干渉計による変調成分は急激に減衰する。
【0025】
しかしながら、本発明では選択透過手段で波長領域を絞ったことにより、干渉光同士の急激な弱めあいを緩和して強度の減衰が抑えられる。したがってインターフェログラムのセンターバースト付近と端の部分との強度比が緩和され、また変調周波数が低くなり比較的なだらかな形状になる。これにより、本発明ではインターフェログラムのダイナミックレンジを向上させることができる。すなわち、従来では干渉計による変調成分が著しく減衰した領域では十分な強度が得られず、S/N比が悪くなり雑音成分の寄与が無視できなくなるため、ダイナミックレンジが制限されていた。しかしながら、本発明では強度の急激な減衰が抑えられるため、このような領域でも従来に比して変調成分の強度が高く、S/N比の低下やAD変換時の量子化誤差が抑えられるためダイナミックレンジを向上させることができる。
【0026】
検出器107で検出された信号は、プリアンプ109で増幅後バンドパスフィルタ110、ロックインアンプ111、データ収集回路112からなる信号処理系(AC信号抽出手段)を通過し、左右の各円偏光によるインターフェログラムが抽出される。すなわち、バンドパスフィルタ110でPEM105の変調周波数を含んだ所定周波数帯域の信号のみ通過させ、ロックインアンプ111では、同期信号によりPEMの変調周波数をもつ成分をロックイン検出する。そして所定の時定数でサンプリングを行い、干渉計103による変調成分の強度変化をもつ交流信号が得られる。
【0027】
そして、前述したように本発明では干渉計による変調成分の変調周波数が低くなり比較的なだらかな形状になるため、ロックインアンプの時定数を長くすることができS/N比を改善することができる。
【0028】
一方、検出器107で検出された信号は、プリアンプ109で増幅後ローパスフィルタ113、データ収集回路112を通過し(DC信号抽出手段)、赤外吸収によるインターフェログラムが抽出される。
このようにして抽出された左右の各円偏光によるインターフェログラムと赤外吸収によるインターフェログラムに基づき、コンピュータ114ではフーリエ変換を行い左右の各円偏光による吸収スペクトルの差スペクトル(ΔA)である円二色性スペクトルを算出する。
【0029】
【実施例】
前述の実施形態にかかる赤外円二色性測定装置を用いて(−)−α−pineneのVCDスペクトルを測定した。その結果を図7に示す。測定は30分と短時間で終了し、構造解析のために十分な精度のデータが得られた。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法によれば、赤外光源からの赤外光のうち特定の波長領域の光のみ選択的に透過する選択透過手段を設けることとしたので、以下の点により測定時間および測定精度が改善される。
▲1▼ 該特定の波長領域に高い感度をもつ検出器を選択して使用することにより感度の高い測定ができ、S/N比を改善するための積算を少なくすることができるので、測定時間を短縮することができる。
▲2▼ 選択透過手段で波長領域を絞ったことにより、干渉光同士の急激な弱めあいを緩和して強度の減衰が抑えられ、ダイナミックレンジを向上させることができる。
▲3▼ 円偏光発生手段にPEMを用いた場合には、PEMの中心周波数(中心波長)を該特定の波長領域に合わせることにより全ての測定波長域で効率よく円偏光が生成され、効率よく測定を行うことができる。
▲4▼ 検出手段にPC型MCT検出器を用いた場合には、波長領域を絞り測定に必要のない領域の光をカットしたため、検出器へ入射する光強度が大幅に減少し、線形応答を示す強度領域で測定することができ、測定精度に支障を生じることなく測定することができる。
▲5▼ AC抽出手段にロックインアンプを用いた場合には、干渉計による変調成分の変調周波数が低くなり比較的なだらかな形状になるため、ロックインアンプの時定数を長くすることができS/N比を改善することができる。
また、本発明の赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法によれば、選択透過手段を設け、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域に絞ったことにより、そのアサイメントが非常に複雑である赤外領域においても、特定の吸収帯の円二色性スペクトルと分子構造との関係を容易に明らかにするための手段を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤外円二色性測定装置の概略図である。
【図2】PEMの中心周波数(中心波長)の光波長依存性を示す概略図である。
【図3】検出器で検出される信号の説明図である。
【図4】各波長の赤外光の干渉計による変調成分とインターフェログラムとの関係を示した説明図である。
【図5】従来の赤外円二色性測定装置の概略図である。
【図6】従来の装置において、検出器で検出される信号の説明図である。
【図7】本発明にかかる赤外円二色性測定装置を用いて測定した(−)−α−pineneのVCDスペクトルである。
【符号の説明】
1,101:赤外円二色性測定装置、2,102:赤外光源、3,103:マイケルソン干渉計、4,104:偏光子、5,105:PEM、6,106:試料、7,107:検出器、8,108:PEMコントローラ、9,109:プリアンプ、10,110:バンドパスフィルタ、11,111:ロックインアンプ、12,112:データ収集回路、13,113:ローパスフィルタ、14,114:コンピュータ、120:光学フィルタ
【発明の属する技術分野】
本発明は赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法、特に測定時間の短縮、測定精度の向上、およびアサイメントの技術改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの化学物質において、その絶対構造、立体構造に関する知見は極めて基本的、且つ重要不可欠な情報となっている。例えば薬物、毒物、生体物質などの生理活性物質のキラリティを解析する手段としては、X線構造解析、円二色性スペクトル解析等が挙げられる。特に円二色性スペクトル解析は、取り扱いが比較的容易であることから、この研究には重要不可欠な手段として広く用いられている。
【0003】
鏡像非対称な分子構造をもつ分子は右回り円偏光と左回り円偏光に対する吸収の大きさが異なるという性質をもつ。この性質は円二色性と呼ばれる。多くの生理活性物質は光学活性をもち、円二色性を測定することにより分子の立体構造に関する情報が得られ、その構造の同定に用いられている。
特に赤外円二色性測定は、例えば紫外・可視領域に吸収をもたない光学活性物質の構造の同定にも用いることができる。
【0004】
従来の赤外円二色性測定装置の概略を図5に示す。同図に示す赤外円二色性測定装置1では、赤外光源2から発した赤外光を、マイケルソン干渉計3に通過させて干渉光を発生させる。干渉光の光路上には偏光子4、光弾性素子5(PEM:Piezo Electric Modulator)、試料6及び検出器7が設置されている。干渉光は偏光子4を透過することにより直線偏光となり、該直線偏光はPEM5により所定の変調周波数で左右交互に発生する円偏光に変換される。PEM5の変調周波数は、PEMコントローラ8により制御されている。このように変調された赤外光は試料6を透過した後、検出器7で検出される。検出器としては、50kHz程度のPEM周波数にも対応できる速い応答が可能なPC型MCT検出器などが使用される。
【0005】
このとき、検出器7では図6に示したような信号が検出される。すなわち、例えばPEMコントローラにより50kHzの変調周波数で左右円偏光を発生させた場合、光学活性物質である試料は左円偏光と右円偏光に対する吸収の大きさが異なるので、試料通過後に検出された信号はPEMの変調周波数で変調された交流成分をもつことになる。そして、この交流成分が干渉計3による変調(3kHz程度)に重畳した、二重に変調された信号が検出されることになる。
【0006】
検出器7で検出された信号は、プリアンプ9で増幅後バンドパスフィルタ10、ロックインアンプ11、データ収集回路12を通過し、左右の各円偏光によるインターフェログラムが抽出される。すなわち、バンドパスフィルタ10でPEM5の変調周波数を含んだ所定周波数帯域の信号のみ通過させ、ロックインアンプ11では、同期信号によりPEMの変調周波数をもつ成分をロックイン検出する。このとき所定の時定数(ある測定信号をロックインアンプが出力してから次の測定信号をロックインアンプが出力するのに要する時間)でサンプリングして、干渉計3による3kHz程度の変調成分の強度変化をもつ交流信号が得られる。
一方、検出器7で検出された信号は、プリアンプ9で増幅後ローパスフィルタ13、データ収集回路12を通過し、赤外吸収によるインターフェログラムが抽出される。
このようにして抽出された左右の各円偏光によるインターフェログラムと赤外吸収によるインターフェログラムに基づき、コンピュータ14ではフーリエ変換を行い左右の各円偏光による吸収スペクトルの差スペクトル(ΔA)である円二色性スペクトルを算出する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
赤外円二色性測定は得られる信号強度が弱く、フーリエ変換型の赤外分光光度計を用いて多波長の赤外光を同時に試料に照射して測定を行う。このため、次の問題点を有していた。
まず、PEMの中心周波数(中心波長)、すなわち円偏光を生成する効率が最も高い光波長の周辺の狭領域では効率よく円偏光が生成されるものの、そこから離れた波長領域では円偏光を生成する効率が落ちてしまい、測定効率が悪くなる。
【0008】
また、PEMの変調周波数で変調された交流成分は、左右の各円偏光による吸収スペクトルの差が非常に小さいため極めて微弱であり(Aは通常1程度であるところ、円二色性測定では10−4〜10−5程度)、S/N比を改善するために複数回の測定を要し、短時間の測定ができない(例えば1〜2時間程度の積算が必要となる)。
【0009】
一方、検出光強度としては、多波長の光を同時に含んでいるため非常に明るく、検出器として50kHz程度のPEM周波数にも対応できる速い応答が可能なPC型MCT検出器を用いた場合、検出光強度があまりに強い領域では光強度に比例した信号を出力できず非線形応答となってしまい測定精度に影響してしまう。
【0010】
また、干渉光による変調信号(インターフェログラム)は図6に示すように急激に強度が減衰するため、テールの部分の強度が弱い部分ではノイズの影響を強く受け、これに起因するS/N比やAD変換時の量子化誤差によりダイナミックレンジが制限されてしまう。
【0011】
また、S/N比の向上という点ではロックインアンプの時定数を長くすることが好ましいが、図6に示すような、干渉計による3kHz程度の変調成分の強度変化をもつ信号をサンプリングすることを想定した場合、あまり時定数を長くすると干渉計による変調成分が得られなくなってしまうので、1m秒以下程度の時定数で測定する必要があり、S/N比の点で一定の限界がある。
【0012】
さらに、次の問題点を有していた。円二色性スペクトルは赤外吸収スペクトルの吸収ピーク位置に対して得られるので、その円二色性スペクトルがどの分子振動に起因しているかを知ることはできる。しかしながら、分子構造に関する情報と円二色性スペクトルの形状との関連性は、赤外円二色に関しては十分に明らかになっていないのが現状である。また、紫外・可視では吸収が数本程度までであるのに対し、赤外のいわゆる指紋領域では非常に多くの吸収があるためそのアサイメントが非常に複雑である。これらの点から、赤外領域においても特定の吸収帯の円二色性スペクトルと分子構造との関係を明らかにするための手段が求められていた。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記従来技術の課題に鑑み為されたものであり、その目的は測定時間および測定精度が改善され、容易にアサイメントが可能な赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法を提供することにある。
前記課題を解決するために本発明の赤外円二色性測定装置は、
赤外光を発する赤外光源と、
該赤外光を干渉させ、干渉光を発生させる干渉計と、
該干渉光を直線偏光にする偏光発生手段と、
該直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換して試料に照射する円偏光発生手段と、
試料を透過した該円偏光を検出して検出信号を発生する検出手段と、
前記検出信号から試料の赤外吸収によるインターフェログラムを抽出するDC信号抽出手段と、
前記検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出するAC信号抽出手段と、
前記抽出手段で抽出されたインターフェログラムに基づきフーリエ変換するとともに円二色性を算出する演算手段を備えた赤外円二色性測定装置において、
前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に透過させる選択透過手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記装置において、前記円偏光発生手段は光弾性変調素子であることが好適である。
また、前記装置において、前記抽出手段にロックインアンプを備えることが好適である。
【0015】
また、前記課題を解決するために本発明の赤外円二色性測定方法は、
赤外光源から発する赤外光を干渉計で干渉させて干渉光を発生させ、
該干渉光を直線偏光とした後、該直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換して試料に照射し、
試料を透過した該円偏光を検出して検出信号を発生させ、
前記検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出し、
該インターフェログラムに基づきフーリエ変換するとともに円二色性を算出する赤外円二色性測定方法において、
前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に試料に照射することを特徴とする。
【0016】
また、前記方法において、前記円偏光を光弾性変調素子により発生させることが好適である。
また、前記方法において、前記抽出にロックインアンプを用いることが好適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について説明する。本発明の赤外円二色性測定装置の概略を図1に示す。なお、前記従来技術と対応するものには符号100を付して説明を省略する。同図に示す赤外円二色性測定装置101では、赤外光源102から発した赤外光を、マイケルソン干渉計103(干渉計)に通過させて干渉光を発生させる。干渉光の光路上には光学フィルタ120(選択透過手段)、偏光子104(偏光発生手段)、PEM105(円偏光発生手段)、試料106及び検出器107(検出手段)が設置されている。干渉光は、光学フィルタ120で特定の波長領域の光のみ選択的に透過し、偏光子104を透過することにより直線偏光となり、該直線偏光はPEM105により所定の変調周波数で左右交互に発生する円偏光に変換される。PEM105の変調周波数は、PEMコントローラ108により制御されている。このように変調された赤外光は試料106を透過した後、例えばPC型MCT検出器、PV型MCT検出器、またはInSb検出器等の検出器107(検出手段)で検出される。
【0018】
本発明において特徴的なことは、光学フィルタ120のように赤外光源からの赤外光のうち特定の波長領域の光のみ選択的に透過する選択透過手段を設けたことである。この選択透過手段により透過させる波長は、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域に基づき設定される。すなわち、試料分子の構造解析に必要な波長領域の光を選択して測定を行う。このような振動モードに対応する赤外吸収帯としては例えば以下のものが挙げられる。
・3700−3100cm−1 NH
・3000−2800cm−1 CH伸縮
・1700cm−1 C=O
・1640cm−1 アミドI(タンパク質)
・1550cm−1 アミドII(タンパク質)
・1500−1300cm−1 CH変角
・1100−900cm−1 C−O−C(糖)
なお、選択透過手段としては干渉フィルタなど、特定の波長領域の光のみ選択的に透過するものであれば特に限定されず、複数の振動モードに対応して複数の分離した各波長領域における光を透過するようにしてもよい。また、その設置位置も光路上であれば特に限定されない。
このように選択透過手段を設け、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域に絞ったことにより、そのアサイメントが非常に複雑である赤外領域においても、特定の吸収帯の円二色性スペクトルと分子構造との関係を容易に明らかにするための手段を与える。
【0019】
また、このような光学的に特定の波長領域の光のみ選択的に透過するもの以外に、電気的な処理によりこれと同じ効果が得られるものを使用することもできる。すなわち、検出器からの電気信号の経路上の適当な位置に、電気フィルタを設置し、干渉計による変調信号の構成要素である、各波長の光による干渉信号のうち特定の領域のものを選択的に透過するようにして選択透過手段を構成してもよい。
【0020】
このように本発明では特定の波長領域の光のみ選択的に透過することとしたので、図2に示すようにPEMの中心周波数(中心波長)を該特定の波長領域に合わせることにより全ての測定波長範囲で効率よく円偏光が生成され、効率よく測定を行うことができる。
【0021】
さらに、特定の波長領域に絞ったことで、該波長領域に高い感度をもつ検出器を選択して使用することにより感度の高い測定ができ、S/N比を改善するための積算を少なくすることができるので、測定時間を短縮することができる。
【0022】
また、応答が速くPEMの変調周波数にも対応できる検出器として好適に用いられるPC型MCT検出器を用いた場合には、波長領域を絞り測定に必要のない領域の光をカットしたため、検出器へ入射する光強度が大幅に減少し、線形応答を示す強度領域で測定することができ、測定精度に支障を生じることなく測定することができる。
【0023】
検出器107では図3にその概略を示す信号が検出される。すなわち、例えばPEMコントローラにより50kHzの変調周波数で左右円偏光を発生させた場合、光学活性物質である試料は左円偏光と右円偏光に対する吸収の大きさが異なるので、試料通過後に検出された信号はPEMの変調周波数で変調された交流成分をもつことになる。そして、この交流成分が干渉計103による変調に重畳した、二重に変調された信号が検出されることになる。
【0024】
本発明の装置を用いた場合、検出器で検出される信号は図3に示すようにその干渉計による変調成分の減衰が従来の場合に比して緩やかになり、且つその周波数が低くなり比較的なだらかな形状になる。図4に示すように、赤外光源からの光は無数の各波長をもった光の集合体であり、干渉計ではこれらの各波長をもった光ごとに波長の異なる正弦波状の干渉光を発生する。これらの無数の正弦波状の干渉光が重なりあった光強度の和として干渉計による変調成分が形成される。干渉計の光路差がゼロである状態では無数の正弦波状の干渉光が全て強めあい、強度は最大となるが、干渉計の可動鏡が移動して光路差が大きくなるにつれて無数の正弦波状の干渉光は急激に弱めあい結果として干渉計による変調成分は急激に減衰する。
【0025】
しかしながら、本発明では選択透過手段で波長領域を絞ったことにより、干渉光同士の急激な弱めあいを緩和して強度の減衰が抑えられる。したがってインターフェログラムのセンターバースト付近と端の部分との強度比が緩和され、また変調周波数が低くなり比較的なだらかな形状になる。これにより、本発明ではインターフェログラムのダイナミックレンジを向上させることができる。すなわち、従来では干渉計による変調成分が著しく減衰した領域では十分な強度が得られず、S/N比が悪くなり雑音成分の寄与が無視できなくなるため、ダイナミックレンジが制限されていた。しかしながら、本発明では強度の急激な減衰が抑えられるため、このような領域でも従来に比して変調成分の強度が高く、S/N比の低下やAD変換時の量子化誤差が抑えられるためダイナミックレンジを向上させることができる。
【0026】
検出器107で検出された信号は、プリアンプ109で増幅後バンドパスフィルタ110、ロックインアンプ111、データ収集回路112からなる信号処理系(AC信号抽出手段)を通過し、左右の各円偏光によるインターフェログラムが抽出される。すなわち、バンドパスフィルタ110でPEM105の変調周波数を含んだ所定周波数帯域の信号のみ通過させ、ロックインアンプ111では、同期信号によりPEMの変調周波数をもつ成分をロックイン検出する。そして所定の時定数でサンプリングを行い、干渉計103による変調成分の強度変化をもつ交流信号が得られる。
【0027】
そして、前述したように本発明では干渉計による変調成分の変調周波数が低くなり比較的なだらかな形状になるため、ロックインアンプの時定数を長くすることができS/N比を改善することができる。
【0028】
一方、検出器107で検出された信号は、プリアンプ109で増幅後ローパスフィルタ113、データ収集回路112を通過し(DC信号抽出手段)、赤外吸収によるインターフェログラムが抽出される。
このようにして抽出された左右の各円偏光によるインターフェログラムと赤外吸収によるインターフェログラムに基づき、コンピュータ114ではフーリエ変換を行い左右の各円偏光による吸収スペクトルの差スペクトル(ΔA)である円二色性スペクトルを算出する。
【0029】
【実施例】
前述の実施形態にかかる赤外円二色性測定装置を用いて(−)−α−pineneのVCDスペクトルを測定した。その結果を図7に示す。測定は30分と短時間で終了し、構造解析のために十分な精度のデータが得られた。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法によれば、赤外光源からの赤外光のうち特定の波長領域の光のみ選択的に透過する選択透過手段を設けることとしたので、以下の点により測定時間および測定精度が改善される。
▲1▼ 該特定の波長領域に高い感度をもつ検出器を選択して使用することにより感度の高い測定ができ、S/N比を改善するための積算を少なくすることができるので、測定時間を短縮することができる。
▲2▼ 選択透過手段で波長領域を絞ったことにより、干渉光同士の急激な弱めあいを緩和して強度の減衰が抑えられ、ダイナミックレンジを向上させることができる。
▲3▼ 円偏光発生手段にPEMを用いた場合には、PEMの中心周波数(中心波長)を該特定の波長領域に合わせることにより全ての測定波長域で効率よく円偏光が生成され、効率よく測定を行うことができる。
▲4▼ 検出手段にPC型MCT検出器を用いた場合には、波長領域を絞り測定に必要のない領域の光をカットしたため、検出器へ入射する光強度が大幅に減少し、線形応答を示す強度領域で測定することができ、測定精度に支障を生じることなく測定することができる。
▲5▼ AC抽出手段にロックインアンプを用いた場合には、干渉計による変調成分の変調周波数が低くなり比較的なだらかな形状になるため、ロックインアンプの時定数を長くすることができS/N比を改善することができる。
また、本発明の赤外円二色性測定装置および赤外円二色性測定方法によれば、選択透過手段を設け、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域に絞ったことにより、そのアサイメントが非常に複雑である赤外領域においても、特定の吸収帯の円二色性スペクトルと分子構造との関係を容易に明らかにするための手段を与える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤外円二色性測定装置の概略図である。
【図2】PEMの中心周波数(中心波長)の光波長依存性を示す概略図である。
【図3】検出器で検出される信号の説明図である。
【図4】各波長の赤外光の干渉計による変調成分とインターフェログラムとの関係を示した説明図である。
【図5】従来の赤外円二色性測定装置の概略図である。
【図6】従来の装置において、検出器で検出される信号の説明図である。
【図7】本発明にかかる赤外円二色性測定装置を用いて測定した(−)−α−pineneのVCDスペクトルである。
【符号の説明】
1,101:赤外円二色性測定装置、2,102:赤外光源、3,103:マイケルソン干渉計、4,104:偏光子、5,105:PEM、6,106:試料、7,107:検出器、8,108:PEMコントローラ、9,109:プリアンプ、10,110:バンドパスフィルタ、11,111:ロックインアンプ、12,112:データ収集回路、13,113:ローパスフィルタ、14,114:コンピュータ、120:光学フィルタ
Claims (6)
- 赤外光を発する赤外光源と、
該赤外光を干渉させ、干渉光を発生させる干渉計と、
該干渉光を直線偏光にする偏光発生手段と、
該直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換して試料に照射する円偏光発生手段と、
試料を透過した該円偏光を検出して検出信号を発生する検出手段と、
前記検出信号から試料の赤外吸収によるインターフェログラムを抽出するDC信号抽出手段と、
前記検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出するAC信号抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された各々のインターフェログラムに基づきフーリエ変換するとともに円二色性および赤外吸収を算出する演算手段を備えた赤外円二色性測定装置において、
前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収帯の波長領域の光を選択的に透過させる選択透過手段を備えることを特徴とする赤外円二色性測定装置。 - 請求項1記載の装置において、前記円偏光発生手段は光弾性変調素子であることを特徴とする赤外円二色性測定装置。
- 請求項1または2に記載の装置において、前記AC信号抽出手段にロックインアンプを備えることを特徴とする赤外円二色性測定装置。
- 赤外光源から発する赤外光を干渉計で干渉させて干渉光を発生させ、
該干渉光を直線偏光とした後、該直線偏光を所定の変調周波数で左右の円偏光に変換して試料に照射し、
試料を透過した該円偏光を検出して検出信号を発生させ、
前記検出信号から左右の各円偏光によるインターフェログラムを抽出し、
該インターフェログラムに基づきフーリエ変換するとともに円二色性を算出する赤外円二色性測定方法において、
前記赤外光源からの赤外光のうち、試料分子内の特定構造の振動モードに対応する赤外吸収波長域の光を選択的に試料に照射することを特徴とする赤外円二色性測定方法。 - 請求項4記載の方法において、前記円偏光を光弾性変調素子により発生させることを特徴とする赤外円二色性測定方法。
- 請求項4または5に記載の方法において、前記抽出にロックインアンプを用いることを特徴とする赤外円二色性測定方法。
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