以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る折畳み式建屋について説明する。この折畳み式建屋の個室空間(部屋)は、更衣室やシャワー室など各種の用途に使用され得るものであるが、以下では、トイレに適用した例について説明する。第1実施形態では、個室空間を平面視三角形状とした例について説明し、第2実施形態では、個室空間を平面視台形状とした例について説明する。
<第1実施形態>
図1および図2は、折畳み式建屋1の展開状態を示す斜視図であり、図3は、折畳み式建屋1の折畳み状態を示す斜視図である。図4は、図2の平面図である。
折畳み式建屋1は、図1及び図2に示すように展開されて、隣接する二つの個室空間2L,2Rを形成する状態(以下、展開状態という。)にすることができる。また、折畳み式建屋1は、図3に示すように三枚の壁体3a,3b,3cが重なり合って、隣り合う壁体の間に前面壁体4、扉体5、展開保持板6、および屋根体7が折り畳まれて収納される状態(以下、折畳み状態という。)にすることができる。なお、図1の左側の個室空間2Lのみ屋根体7を示し、図1の右側の個室空間2Rおよび図2の左右の個室空間2L,2Rでは、屋根体7を省略している。
個室空間(2L,2R)の数としては、特に限定されるものではないが、本実施形態においては二室のものを例示している。すなわち、折畳み式建屋1は、三以上の個室空間を隣接して有するものであってもよい。本実施形態では、個室空間2L,2Rを簡易トイレに適用しているので、各個室空間2L,2Rの奥側には、折畳み式の棚8と折畳み式の便器9とが設けられている。後述するように、棚8および便器9は、展開保持手段の一つとして機能する。
本実施形態では、二つの個室空間2L,2Rを画成する構造は全く同じであり、且つ二つの個室空間2L,2Rの中に設置される構造も全く同じである。したがって、二つの個室空間2L,2R(折畳み式建屋1)は、中央の壁体3aの中心部で点対称となる構成となっている。もっとも、個室空間2Lと個室空間2Rとを異なる内部構造としてもよい。各個室空間2L,2Rは、平面視(上方から見ると)、略三角形状からなる空間であり、上方を屋根体7で覆われている。
屋根体7は、個室空間2L(または2R)の略三角形状に対応して、平面視、略三角形状からなる。屋根体7の略三角形状の二辺は、隣り合う二つの壁体(3aと3b、または3aと3c)の上部に接着剤等により取り付けられ、残りの一辺側には、前面壁体4および展開保持板6の上部外側に垂下する折曲げ部21が延出されている。折曲げ部21の裏面に設けた貼着手段22により、折曲げ部21と展開保持板6とは密着している。
屋根体7と二つの壁体(3aと3b、または3aと3c)との間は、接着剤等によりシールされている。また、屋根体7は、中央の壁体3aから外側の壁体3b(または3c)にかけて水が流れるように且つ奥側から手前側に水が流れるように、所定の排水勾配(水切り)を有している。
個室空間2L(または2R)の略三角形状の二辺は、隣り合う二つの壁体3aと3b(または3aと3c)により構成され、残りの一辺側には、前面壁体4および扉体5が位置している。三角形状の頂点の角度は任意であるが、個室空間2L,2Rの三角形状は、好ましくは二等辺三角形であり、より好ましくは正三角形である。本実施形態では、正三角形で構成されている。そして、折畳み式建屋1は、平面視、全体として平行四辺形の輪郭を有している(図4参照)。
個室空間2L(または2R)の一辺側(前面側)の左半部は、前面壁体4によって覆われている。個室空間2L(または2R)の前面側の右半部は、個室空間2L(または2R)の出入り口部分25L(または25R)となっており、この出入り口部分25L(または25R)は、扉体5によって適宜開閉される。扉体5を手前に回動させて出入り口部分25L(または25R)を開放することで、利用者は個室空間2L(または2R)に出入りすることが可能となる。
ここで、壁体3a,3b,3c、前面壁体4、扉体5、展開保持板6のほか、後述する板状の各種部材は、焼却処理や再生処理が可能な素材で構成されている。特に、この素材は、燃焼時に毒性の強い有機塩素化合物を発生させない合成樹脂を原料とするもので構成され、例えばPPTやポリプロピレンを原料としている。本実施形態の壁体3a,3b,3c、前面壁体4、扉体5および展開保持板6は、この種のプラスチック製の中空構造板で構成され、剛性および耐久性を有しつつ、軽量に構成されている。中空構造体としては、いわゆるダンプラ(プラスチック段ボール)を適用することができる。
ダンプラからなる中空構造体は、主として二枚の板材の間に複数の縦板を一方向に有した構成からなる。この中空構造体は、例えば縦板の延在方向(中空の目)に沿って一方の板材のみを切り込むとヒンジとして機能する。すなわち、半切りされた中空構造体は、その切込み線を境として折畳み及び展開可能となる。なお、切込み方向を代えて、中空の目に対して直角に半切りしても、中空構造体はヒンジ機能を具備するが、前者の構成に比べて耐久性や復元力などが低下する。
折畳み式建屋1は、この中空構造体のヒンジ機能を有効に活用して構成されている。そして、三枚の壁体3a,3b,3cや、これらに折畳み可能に設けられている全ての部材は、同じ厚さの同素材で構成されている。このため、折畳み状態の時に各部が凹凸なく重なり合い、全体として平板状に折り畳むことが可能となっている(図3参照)。
三枚の壁体3a,3b,3cは、いずれも長方形の板材で構成され、隣り合う二つの壁体3aと3b(または3aと3c)の間に個室空間2L(または2R)が画成される。中央に位置する壁体3aは、隣接する一の個室空間2Lと他の個室空間2Rとの間を仕切り、左右両方の個室空間2L,2Rを画成する共通壁体として機能する。
共通壁体3aの対辺の一方(奥側の一側面)には、左側の壁体3bの対辺の一方が連結されている。また、共通壁体3aの対辺の他方(手前側の他側面)には、右側の壁体3cの対辺の一方が連結されている。以下の説明では、本発明の第一壁体となる左側の壁体3bを「左壁体3b」と称し、第二壁体となる右側の壁体3cを「右壁体3c」と称して説明する。
このような三枚の壁体3a,3b,3cの連結態様によって、一の個室空間2Lの出入り口部分25Lと他の個室空間2Rの出入り口部分25Rとは、折畳み式建屋1において反対側に位置している。すなわち、二つの出入り口部分25L,25Rは共通壁体3aを挟んで対向している。
このため、一の個室空間2Lの利用者と他の個室空間2Rの利用者とが、各々の出入り口部分25L,25Rから出入りする際に、顔を会わす可能性が小さくなるようになっている。これにより、各個室空間2L,2Rに入ってトイレを使用する利用者の気まずさや羞恥心を低減して、利用者の利便性を向上している。
上述のように、二つの個室空間2L,2Rの構造等は点対称であるため、ここでは、主として左側の個室空間2Lを画成する左壁体3bおよび共通壁体3aを中心に説明する。
図5(a)は、左側の個室空間2Lを画成する左壁体3bの正面図であり、図5(b)は、左側の個室空間2Lを画成する共通壁体3aの正面図である。なお、図5では、左壁体3bおよび共通壁体3aにおける各種構成要素が折り畳まれている状態を示している。また、図5では、屋根体7を省略している。
図4および図5(a)に示すように、左壁体3bには、壁連結体30の左半部と、前面壁体4と、後述する棚板32を支持する棚板支持部34の左半部と、後述する便座36を支持する左脚部40と、便座36の上方への抜止めを規制する左抜止め部42と、補助板44を保持するための保持部46と、が設けられている。
図4および図5(b)に示すように、共通壁体3aには、壁連結体30の右半部と、扉体5と、展開保持板6と、棚板32を支持する棚板支持部34の右半部と、便座36を支持する右脚部50と、便座36の上方への抜止めを規制する右抜止め部52と、が設けられている。
壁連結体30は、共通壁体3aと左壁体3bとを回動可能に連結する蝶番として機能する部材であり、共通壁体3aおよび左壁体3bを上下方向に亘って連結している。壁連結体30は、例えば上記のダンプラからなる中空構造体を半切りして構成され、半切りされた右半部を共通壁体3aの対辺の一方の近傍に接着または溶着され、半切りされた左半部を左壁体3bの対辺の一方の近傍に接着または溶着されている。
壁連結体30の構成により、左壁体3bは、壁連結体30を中心に共通壁体3aに対し約60度の回動角度で回動する。すなわち、左壁体3bは、共通壁体3aに重なり合うように折り畳まれる折畳み状態と、この折畳み状態から展開されて共通壁体3aから離間して、共通壁体3aに対し約60度の角度をなす展開状態と、の間を回動する。なお、壁連結体30については、図8では、省略している。
前面壁体4は、左壁体3bの一辺側(手前側の対辺)に折畳みおよび展開可能に連結されている。前面壁体4は、折畳み状態では左壁体3bの内面に重なり合う。一方、展開状態の前面壁体4は、左壁体3bに対し約60度の角度で個室空間2Lの左半部を前面側から覆い、左壁体3bの展開状態を補強する。
前面壁体4の上部には、前面壁体4を展開保持板6に連結させるための一対の連結孔61,61が穿設されている。前面壁体4の下端部には、フランジ部62が折畳み可能に設けられている。また、前面壁体4の上下中間部には、補助板44を保持するための保持部63が設けられている。
フランジ部62は、展開状態においては前面壁体4に対して略垂直方向(手前側の方向)へと展開されて地面に着座し、折畳み状態においては前面壁体4の表面側(個室空間2Lの外側の面)に重なり合うように折り畳まれる。なお、展開状態において、フランジ部62の上面に土嚢などの錘を載せたり、あるいはフランジ部62に杭を打ち込んだりして、左壁体3bおよび共通壁体3aの展開状態を安定させるとよい。
扉体5は、共通壁体3aの一辺側に(手前側の対辺)に折畳みおよび展開可能に連結されている。この共通壁体3aの一辺側は、一方の面に扉体5およびその上側の展開保持板6が連結され、他方の面に壁連結体30を介して右壁体3cが連結されている。扉体5は、折畳み状態で共通壁体3aの内面に重なり合う。一方、展開状態の扉体5は、出入り口部分25Lを開閉可能に構成され、手前側に回動させると出入り口部分25Lを開放し、奥側に回動させると出入り口部分25Lを閉塞する。
扉体5の縦方向の大きさは、折畳み状態で展開保持板6およびフランジ部62と重なり合わない程度の大きさで構成されている。なお、扉体5の下端部には、フランジ部62用に確保した地面との間隙を隠すように、目隠し用のカーテン71が取り付けられている(図1及び図2参照)。
扉体5の横方向の大きさは、折畳み状態で右脚部50と重なり合わない程度の大きさで構成され、且つ展開状態で前面壁体4の前面側の一部に重なり合う程度の大きさで構成されている。展開状態において、扉体5が前面壁体4と重なり合う部分の近傍には、扉体5を前面壁体4に対しロックさせるロック機構72が設けられている。なお、図1及び図2では、ロック機構72を省略している。
図6は、ロック機構72の一例を示す斜視図である。
ロック機構72は、図6に示すように、扉体5の内側に取り付けられたロック片81および表示体82で構成される。ここで、扉体5の内側とは、個室空間2Lの内部側をいう。
板状のロック片81は、扉体5と前面壁体4との間に差し渡されるように配置され、表示体82の下部に90度の回動角度で回動するように支持されている。表示体82は、前面壁体4と同じ厚みを有する板状の部材であり、下端部が円弧状に形成されている。表示体82の上部は、扉体5に穿設した表示穴84に臨む部分に、赤色などで着色されている。
図6に示す位置にロック片81が回動すると、ロック片81によって扉体5の開放動作が規制され、扉体5を前面壁体4に対しロック状態にし得る。この状態では、個室空間2Lの外側にいる人は、表示穴84を介して表示体82の赤色部分を見ることができ、個室空間2Lの使用中であることが確認できる。一方、ロック片81を矢印の方向に回動させると、このロック状態が解除されて、扉体5の開放が許容される。
展開保持板6は、図2および図5(b)に示すように、扉体5と同じ厚みからなる一方、扉体5よりも横方向に長い寸法で形成されている。展開保持板6の先端側には、前面壁体4の一対の連結孔61,61に対応して一対の固定孔91,91が穿設されている。
展開保持板6は、折畳み状態において、扉体5の上側に沿うようにして共通壁体3aの内面に重なり合う。一方、展開状態において、展開保持板6の先端側は、一対の連結孔61,61および一対の固定孔91,91を介して、蝶ボルトおよび蝶ナットからなる連結手段92,92により前面壁体4の前面側に固定されている。展開保持板6によって、左壁体3bおよび共通壁体3aの展開状態を出入り口部分25L側で保持することができる。
図7は、棚8の構成を示す説明図である。
棚8は、展開状態において設置される棚板32と、この棚板32を着脱可能に支持する棚板支持部34と、で構成されている。
棚板支持部34は、右端部101が共通壁体3aに折畳み可能に取り付けられ、左端部102が左壁体3bに折畳み可能に取り付けられている。折畳み状態においては、棚板支持部34は、その左右の中間部103を中心として奥側に二つ折りになることで、共通壁体3aと左壁体3bとの間に挟みこまれる。一方、展開状態においては、棚板支持部34は、共通壁体3aと左壁体3bとの間に梁状に展開されることで、棚板32を支持可能となる。
棚板32は、略台形状の板材からなる。棚板32は、共通壁体3aおよび左壁体3bにそれぞれ接触する二つの接触辺111,111と、略台形の下底側の左右中間部に形成された凹部112と、を有している。凹部112は、棚板支持部34の左右中間の上端から上方に突出された凸部104に係脱可能に構成されている。
棚8を組み立てる場合、展開状態において、棚板支持部34、共通壁体3aおよび左壁体3bにより構成される奥側の三角地帯に棚板32を上側から挿入し、棚板32の凹部112と棚板支持部34の凸部104とを係合させる。
この係合状態とすることで、棚板32は、凹部112の左右両側の下面が棚板支持部34の上端面に支持され、二つの接触辺111,111が共通壁体3aおよび左壁体3bにそれぞれ接触される。これにより、棚板32は、水平方向の移動および下方への抜けを規制され、荷物を安定して載置することが可能となる。
また、組み立てられた棚8は、左壁体3bおよび共通壁体3aの展開状態を個室空間2Lの奥側で且つ個室空間2Lの上側で保持することが可能となる。すなわち、本実施形態の棚8は、左壁体3bおよび共通壁体3aの両方に全体として係合して、これらの展開状態を個室空間2Lの奥側且つ上側で保持する展開保持手段として機能する。
図8は、便器9の構成を示す説明図である。
便器9は、便座孔120が中央部に穿設された便座36と、便座36の下面を着脱可能に支持する左脚部40および右脚部50と、左脚部40および右脚部50に対する便座36の上方への移動を規制する左抜止め部42および右抜止め部52と、左脚部40および右脚部50に亘って梁状に架け渡される開脚保持体122と、便座36の上面から一部が露出して取り付けられ、便座36と開脚保持体122との間に主要部が位置する排泄物処理袋124と、を有している。便器9は、左右対称の構造となっている。また、便座36、開脚保持体122および排泄物処理袋124は、展開状態において設置される。
便座36は、略台形状の板材からなり、略台形の下底側が扇形に湾曲して形成されている。便座36は、略台形の斜辺側となる部分に、共通壁体3aおよび左壁体3bにそれぞれ接触する二つの接触辺131,131を有している。また、便座36の下面には、便座孔120の左右外側に一対のスライド溝132,132が形成されている。一対のスライド溝132,132は、便座36の略台形の上底側から便座36の中央付近にまで、便座36の下面を一直線状に切り込むことで略平行に且つ溝幅を漸次縮小して形成されている。
左脚部40は、左側面側を左壁体3bの下部に対して折畳み可能に取り付けられ、展開状態において右側面側を左壁体3bの内面に当接可能に構成されている。左脚部40の左右中央部には、切り込みによって形成された折返し部140が設けられており、折返し部140を中心に略「L」字状に折り曲げることが可能となっている。
左脚部40は、折返し部140の右側に(奥側に)、開脚保持体122を挿入可能な挿入孔141が穿設されている。また、折返し部140の右側に位置する左脚部40の上端部142は、その左側に位置する上端部143に比べて上方に突出しており、この突出した上端部142がスライド溝132に係脱可能に構成されている。
右脚部50は、右側面側を共通壁体3aの下部に対して折畳み可能に取り付けられ、展開状態において左側面側を共通壁体3aの内面に当接可能に構成されている。右脚部50の左右中央部には、切り込みによって形成された折返し部150が設けられており、折返し部150を中心に略「L」字状に折り曲げることが可能となっている。
右脚部50は、折返し部150の左側に(奥側に)、開脚保持体122を挿入可能な挿入孔151が穿設されている。また、折返し部150の左側に位置する右脚部50の上端部152は、その右側に位置する上端部153に比べて上方に延在しており、この突出した上端部152がスライド溝132に係脱可能に構成されている。
左抜止め部42は、左脚部40と同じ厚みを有する略長方形状の板材からなる。左抜止め部42は、左壁体3bの下部に接着または溶着され、便座36の厚みだけ左脚部40の上側に位置している。左抜止め部42の手前側の先端は、大きく面取りされており、その先端の下部には、内側に折り曲げ可能な(回動可能な)ストッパ160が設けられている。
ストッパ160は、左壁体3bに対し90度以上折り曲げられた状態では、左抜止め部42と左脚部40との間に便座36を挿入することを許容する。一方、ストッパ160は、左壁体3bに沿うように左抜止め部42の先端から垂下された状態では、左抜止め部42と左脚部40との間に挿入した便座36の手前側への移動を規制する。すなわち、ストッパ160は、本発明の水平規制手段の一つとして機能する。またこの状態では、左抜止め部42の下面は、便座36の左側の接触辺131の上面に辺方向に亘って接触して、便座36の上方への移動を規制する。
右抜止め部52は、右脚部50と同じ厚みを有する略長方形状の板材からなる。右抜止め部52は、右壁体3cの下部に接着または溶着され、便座36の厚みだけ右脚部50の上側に位置している。右抜止め部52の手前側の先端は、大きく面取りされており、その先端の下部には、内側に折り曲げ可能な(回動可能な)ストッパ161が設けられている。
ストッパ161は、右壁体3cに対し90度以上折り曲げられた状態では、右抜止め部52と右脚部50との間に便座36を挿入することを許容する。一方、ストッパ161は、右壁体3cに沿うように右抜止め部52の先端から垂下された状態では、右抜止め部52と右脚部50との間に挿入した便座36の手前側への移動を規制する。すなわち、ストッパ161は、本発明の水平規制手段の一つとして機能する。またこの状態では、右抜止め部52の下面は、便座36の右側の接触辺131の上面に辺方向に亘って接触して、便座36の上方への移動を規制する。
開脚保持体122は、略台形の板材からなる。開脚保持体122は、略台形の斜辺となる部分に、共通壁体3aおよび左壁体3bにそれぞれ接触する二つの接触辺163,163を有している。また、開脚保持体122の略台形の上底側には、左右に離間した一対の係合溝164,164が形成されている。
一対の係合溝164,164は、左右の脚部40,50の挿入孔141,151に係脱可能に構成されている。各係合溝164,164が各挿入孔141,151に係合した状態で、開脚保持体122は、左脚部40および右脚部50の開脚状態を保持し、且つ上面に排泄物処理袋124を安定して載置可能となる。
便器9を組み立てる場合、図8(a)に示すように、左脚部40および右脚部50をそれぞれ略「L」字状に折り曲げ、これらの挿入孔141,151に開脚保持体122を挿入して係合させる。この係合状態では、開脚保持体122の二つの接触辺163,163が左壁体3bおよび共通壁体3aにそれぞれ面接触し、且つ左脚部40および右脚部50の奥側の端面がそれぞれ左壁体3bおよび共通壁体3aに面接触する。
次いで、図8(b)に示すように、便座36の各スライド溝132,132を左右の脚部40,50の各上端部142,152に案内させて、左右の脚部40,50と左右の抜止め部42,52との間に差し込むように挿入させる。この挿入動作の際、左右のストッパ160,161をそれぞれ内側に90度折り曲げておく。
そして、図8(c)に示すように、便座36の挿入が完了した後で、左右のストッパ160,161を下側に戻す。これにより、左右のストッパ160,161の奥側の端面が便座36の手前側の端面に接触して、便座36の手前側への移動が規制される。
またこの状態では、便座36の下面が左右の脚部40,50に支持され、且つ便座36の二つの接触辺131,131が左壁体3bおよび共通壁体3aにそれぞれ面接触する。
またこの状態では、便座36の左右の接触辺131,131の全体が左右の抜止め部42,52に下側から接触または僅かに間隙を存して、便座36の上方への移動が規制される。最終的に、排泄物処理袋124を開脚保持体122の上面にセットし、排泄物処理袋124を便座孔120に臨ませる。
このように、組み立てられた便器9では、便座36の水平方向への移動が規制されているため、利用者は便座36に安定して着座することができる。また、便座36の上方への移動が左右の抜止め部42,52によって規制されているため、利用者の便座36に座る位置によって便座36が左右の脚部40,50から浮き上がるような便座36の位置ずれや、便座36から立ち上がる利用者の体の一部が引っ掛ることによる便座36の位置ずれを抑制することができる。
また、組み立てられた便器9は、左壁体3bおよび共通壁体3aの展開状態を個室空間2Lの奥側で且つ個室空間2Lの下側で保持することが可能となる。すなわち、本実施形態の便器9は、左壁体3bおよび共通壁体3aの両方に全体として係合して、これらの展開状態を個室空間2Lの奥側且つ下側で保持する展開保持手段として機能する。
図9は、保持部46、保持部63、および補助板44からなる第3の展開保持手段170の構成を示す説明図である。展開保持手段170の構成について、図2および図4をも参照して説明する。
第3の展開保持手段170は、個室空間2Lの略三角形の一つの頂点側に設けられており、その高さレベルは、第1の展開保持手段(棚8)と第2の展開保持手段(便器9)との間に設定されている。なお、上記したように、展開保持板6と前面壁体4とも展開保持手段として機能している。
前面壁体4の保持部63は、前面壁体4の一部を方形状に穿設してなる開口部171と、開口部171の上半部に出入可能なブロック172と、で構成されている。ブロック172は、開口部171の上半部の縁部に回動可能に設けられており、開口部171の上半部に嵌合する嵌合状態と、開口部171から外れて前面壁体4の前面側に回動する非嵌合状態と、の間を移動する。
左壁体3bの保持部46は、前面壁体4の保持部63と同様に構成されており、左壁体3bの一部を方形状に穿設してなる開口部181と、開口部181の上半部に出入可能なブロック182と、で構成されている。ブロック182は、開口部181の上半部の縁部に回動可能に設けられており、開口部181の上半部に嵌合する嵌合状態と、開口部181から外れて左壁体3bの外側に(個室空間2Lの外側に)回動する非嵌合状態と、の間を移動する。
補助板44は、略長方形状の板材からなる。補助板44の上端部の中央には、つり革191をかけるための引掛け凹部192が形成されている。また、引掛け凹部192を挟んで左右対称となるように、補助板44の下半部の左右には、各開口部171,181の縁部に上側から係合するための係合凹部193,193が形成されている。補助板44は、全体として各開口部171,181の縦方向の長さと同じ長さを有し、各係合凹部193,193は、各開口部171,181の下半部の縦方向の長さと同じ長さを有している。
第3の展開保持手段170を組付ける場合、図9(a)に示すように、保持部63のブロック172を前面壁体4の前面側に回動して、開口部171を完全に開放する。同様にして、左壁体3bの開口部181も完全に開放する。次いで、図9(b)に示すように、補助板44を開口部171に挿入し、つり革191を引掛け凹部192にかけた後、さらに補助板44を開口部181に挿入する。
その後、図9(c)に示すように、補助板44の各係合凹部193,193を各開口部171,181の縁部に係合させる。これにより、補助板44が左壁体3bと前面壁体4との間に梁状に架け渡される。
次いで、図9(d)に示すように、各ブロック172,182を回動させて各開口部171,181に嵌合させる。これにより、図9(e)および(f)に示すように、各ブロック172,182の下面が補助板44の上面に接触するため、補助板44は開口部171,181から抜けることを阻止される。すなわち、補助板44は、二つの保持部46,63に抜落ち状態で保持されることになる。
ここで、本実施形態の折畳み式建屋1の作用について、特に展開状態での全体の強度および安定性について簡単に説明する。上記したように、折畳み式建屋1は、共通壁体3aで仕切られた二つの略三角形状の個室空間2L,2Rを有するものである。ここで略三角形状について着目するに、その一つの頂点の内側には、棚8および便器9が設けられている。このため、この頂点は固定されていることはもとより、この頂点を挟む略三角形の二辺(例えば共通壁体3aおよび左壁体3b)は、強固に固定されている。
また、略三角形状の他の一つの頂点の内側には、補助板44などの第3の展開保持手段170が設けられている。このため、この頂点は固定されていることはもとより、この頂点を含む略三角形の二辺(左壁体3bおよび前面壁体4)は、強固に固定されている。さらに、残りの一つの頂点の外側には、隣接する他方の個室空間(2R)内の棚8および便器9が設けられている。このため、この頂点についても、実質的に強固に固定された状態にある。
このように、本実施形態の折畳み式建屋1によれば、一の個室空間2L(または2R)の三頂点を実質的に固定することができる。これにより、個室空間2L(または2R)の三頂点の強度が高まるため、展開状態の折畳み式建屋1の強度を高めることができると共に、その安定性を高めることができる。特に、個室空間2L(または2R)内に設けた棚8および便器9が、隣の個室空間2R(または2L)の略三角形の一頂点を実質的に固定する構造であるから、一方の個室空間2R(または2L)内の構造を有効に利用して、他の個室空間2L(または2R)の展開状態を強固に且つ安定に維持することができる。
また、折畳み式建屋1における唯一の可動壁体となる扉体5は、隣の個室空間2R(または2L)で便器9等側がある共通壁体3aの部分に設けられている。上述のように、この部分は便器9等によって強固に固定されている。このため、扉体5の開け閉めによる折畳み式建屋1全体への影響を最小限に抑制することができる。
なお、本実施形態は、様々な変形例を適用できる。例えば、補助板44などの第3の展開保持手段170を省略してもよいし、この態様を変更してもよい。また、棚8または便器9を省略してもよい。便器9を省略した場合には、別途、既製のトイレを個室空間2L,2R内に配置すれば、折畳み式建屋1は簡易トイレとして機能する。
さらに、車椅子を必要とする人や、体の不自由な方や、お年寄りなどを考慮して、個室空間2L,2R内に手摺などを配置するようにしてもよい。また、屋外に折畳み式建屋1を設置する場合に、風の影響を考慮して、ロープを併用して折畳み式建屋1を安定に設置してもよい。
<第2実施形態>
次に、図10ないし図13を参照して、第2実施形態に係る折畳み式建屋1について相違点を中心に説明する。第1実施形態との大きな相違点は、上方から見て略台形状の個室空間2L,2Rとしたことである。第1実施形態と共通する構成については、同一符号を付してその説明を適宜省略する。
図10は、折畳み式建屋1の展開状態を示す斜視図である。図11は、左右両側の個室空間2L,2Rの棚8を取り外し、さらに右側の個室空間2Rの便座36を取り外した状態を示す図である。図12は、折畳み式建屋1の折畳み方向を説明する模式図であり、図13は、折畳み式建屋1の折畳み状態を示す斜視図である。なお、図10ないし図12では、図1で示した屋根体7を省略している。
本実施形態の折畳み式建屋1の壁体などを構成する素材は、上記同様にそれぞれが同じ厚さのダンプラが用いられている。折畳み式建屋1は、展開状態で二つの隣接する個室空間2L,2Rを構成する五枚の長方形の壁体3a,3b,3c,3d,3eを有している。折畳み式建屋1は、図10および図11に示す展開状態から、図12に示す移行状態を経て、図13に示すように、各部が凹凸なく重なり合う全体として平板状の折畳み状態となる。
折畳み状態では、一つの個室空間2L(または2R)の台形状の斜辺を構成する二つの壁体3aと3d(または3aと3e)の間に、上底側の壁体3b(または3c)を二つ折りで挟み、さらにこれら二つの壁体3aと3d(または3aと3e)の間に、下底側の前面壁体4、扉体5、および展開保持板6を挟んで重なり合うようになっている。また折畳み状態では、二つの個室空間2L,2Rにそれぞれ設けられる二つの屋根体7が、収納形態の最も外側に位置するようになっている(図13参照)。
なお、個室空間2L側の屋根体7は、壁体3aから壁体3bにかけて水が流れるように且つ奥側から手前側に水が流れるように、所定の排水勾配(水切り)を有している。同様に、個室空間2R側の屋根体7は、壁体3aから壁体3dにかけて水が流れるように且つ奥側から手前側に水が流れるように、所定の排水勾配(水切り)を有している。そしてこの排水機能を奏するべく、壁体3aは、他の壁体3b,3c,3d,3eよりも長さ(高さ)が大きく形成されている。なお、個室空間2L,2Rの数としては、特に限定されるものではなく、例えば、三以上の個室空間が横方向に隣接して設けられる折畳み式建屋1であってもよい。
折畳み式建屋1は、二つの個室空間2L,2Rを画成する構造が全く同じで、且つ二つの個室空間2L,2Rの中に設置される構造も全く同じである。したがって、二つの個室空間2L,2Rは、中央の共通壁体3aの中心部で点対称となる構成となっている。もっとも、個室空間2L,2Rの内部構造などを異ならせてもよい。
各個室空間2L,2Rの奥側には、折畳み式の棚8と折畳み式の便器9とが設けられており、一方の個室空間2Lの棚8や便器9と、他方の個室空間2Rの棚8や便器9とは、点対称となるように対向している。これら棚8および便器9は、第一実施形態と構造が僅かに異なるものの、個室空間2L、2Rの展開状態を保持する展開保持手段として機能する点では第一実施形態と同様である。
個室空間2L(または2R)の略台形状の三辺は、隣り合う三つの壁体3a,3b,3d(または3a,3c,3e)により構成され、下底側となる残りの一辺側には、前面壁体4および扉体5が位置している。略台形状の各頂点の角度は任意であるが、好ましくは、鋭角となる内角が75度で、鈍角となる内角が105度である。
前面壁体4は、個室空間2L(または2R)の一辺側(前面側)の左半部を覆い、扉体5は、個室空間2L(または2R)の前面側の右半部の出入り口部分25L(または25R)を開閉可能に設けられている。一の個室空間2Lの出入り口部分25Lと他の個室空間2Rの出入り口部分25Rとは、折畳み式建屋1において反対側に位置している。各出入り口部分25L,25Rは、車椅子が通過可能な75cm以上に設定されることが好ましい。
左側の個室空間2Lを画成する壁体としては、略台形状の斜辺を構成する共通壁体3aと、略台形状のもう一方の斜辺を構成する斜辺壁体3dと、略台形状の下底よりも長さの短い上底を構成する背面壁体3bと、がある。また、右側の個室空間2Rを画成する壁体としては、共通壁体3aと、略台形状のもう一方の斜辺を構成する斜辺壁体3eと、略台形状の下底よりも長さの短い上底を構成する背面壁体3cと、がある。
ここで、斜辺壁体3dは本発明の第一斜辺壁体に相当し、斜辺壁体3eは本発明の第二斜辺壁体に相当している。また、背面壁体3bは本発明の第一壁体に相当し、背面壁体3cは本発明の第二壁体に相当している。以下では、左側の個室空間2Lについて説明し、右側の個室空間2Rについては、左側の個室空間2Lと同一となる部分については説明を適宜省略する。
背面壁体3bは、その右端部211が共通壁体3aの対辺の一方に回動可能に連結されていると共に、その左端部212が斜辺壁体3dの対辺の一方に回動可能に連結されている。背面壁体3bの左右方向の中間部には、切り込みによって形成された折返し部213が設けられており、背面壁体3bは、折返し部213を中心に個室空間2Lの内側に折り曲げることが可能となっている。
背面壁体3bは、展開状態において平板状に展開される。一方、折返し部213を中心に二つ折りとなる折畳み状態の背面壁体3bは、その二つ折りされた部分の外面同士が略隙間無く重なり合うようになって、共通壁体3aと斜辺壁体3dとの間に挟まれ且つこれらに重なり合う。
斜辺壁体3dは、その一端部が背面壁体3bの左端部212に回動可能に連結され、且つその他端部が前面壁体4の一端部に回動可能に連結されている。前面壁体4は、折畳み状態では斜辺壁体3dの内面に重なり合う。一方、展開状態の前面壁体4は、斜辺壁体3dに対し約75度の角度で個室空間2Lの左半部を前面側から覆い、斜辺壁体3dの展開状態を補強する。そして、前面壁体4の上部は、展開保持板6に連結具92,92を介して連結され、前面壁体4の下端部は、その表面側に折畳み可能で且つ展開されて地面に着座可能なフランジ部62を有している。
扉体5は、共通壁体3aの一辺側、すなわち背面壁体3cが連結された共通壁体3aの一辺側に回動可能に連結されている。扉体5は、折畳み状態で共通壁体3aの内面に重なり合う。一方、展開状態の扉体5は、出入り口部分25Lを開閉可能に構成され、手前側に回動させると出入り口部分25Lを開放し、奥側に回動させると出入り口部分25Lを前面壁体4と共に閉塞する。
なお、扉体5には、上記実施形態のカーテン71が設けられていない。また、図示省略したが、扉体5の内面には、上記実施形態と同様のロック機構72が設けられている。また、共通壁体3aと背面壁体3bとの連結部分や、背面壁体3bと斜辺壁体3dとの連結部分など、各種の壁体の回動部分に上記実施形態同様の壁連結体30を用いてもよい。
そして、棚8は、個室空間2Lの奥側で共通壁体3aの上部および斜辺壁体3dの上部に接触して、背面壁体3bの展開状態および斜辺壁体3dの展開状態を保持する。同様に、便器9は、個室空間2Lの奥側で共通壁体3aの下部および斜辺壁体3dの下部に接触して、背面壁体3bの展開状態および斜辺壁体3dの展開状態を保持する。
以上のように、本実施形態の折畳み式建屋1によれば、第1実施形態に比べて有用となる点は、三角形状の個室空間2L,2Rに比べて、台形状の個室空間2L,2Rであるために、個室空間内のデッドスペースを少なくすることができることである。また、第1実施形態に比べて、展開状態での折畳み式建屋1の全体の強度および安定性が高まると共に、設置時の安定性も確保し易くなる。さらに、棚8や便器9についても、第1実施形態に比べて大きなサイズで構成することができるなど、その設計の自由度も高め得る。
<第3実施形態>
次に、図14を参照して、第3実施形態に係る折畳み式建屋1の便器9について相違点を中心に説明する。第2実施形態との相違点は、便器9の構成を第1実施形態と同様の構成(図8に示す構成)としたことであり、具体的には、便座36の上方および手前側への移動を規制した構成を付加したことであり、他の点は第2実施形態と同様である。
以下では、第2実施形態と同様に、左側の個室空間2Lについて説明し、右側の個室空間2Rに設ける便器9についての説明を省略する。また、便器9の構成については、第1実施形態と共通する部分については、第1実施形態の便器9に付した符号と同一の符号を付して、その詳細な説明を省力する。
図14に示すように、第1実施形態と同様に、便器9は、便座孔120を有する便座36と、便座36の下面を着脱可能に支持する左脚部40および右脚部50と、左脚部40および右脚部50に対する便座36の上方への移動を規制する左抜止め部42および右抜止め部52と、左脚部40および右脚部50に亘って梁状に架け渡される開脚保持体122と、便座36と開脚保持体122との間に主要部が位置する排泄物処理袋124と、を有している。
便座36の略台形の一対の斜辺は、共通壁体3aおよび斜辺壁体3dにそれぞれ接触する二つの接触辺131,131となっている。また、便座36の下面には、一対のスライド溝132,132が形成されている。一対のスライド溝132,132は、それぞれ、左脚部40の上端部142および右脚部50の上端部152に手前側から係脱可能に構成されている。
左脚部40は、斜辺壁体3dに折畳み可能に取り付けられており、折返し部140を挟んで段状に連なる上端部142および上端部143を有している。同様に、右脚部50は、共通壁体3aに折畳み可能に取り付けられており、折返し部150を挟んで段状に連なる上端部152および上端部153を有している。そして、左脚部40および右脚部50には、開脚保持体122用の挿入孔141,151がそれぞれ穿設されている。
左抜止め部42は、斜辺壁体3dの内面に固着されている。左抜止め部42の先端の下部には、斜辺壁体3dに対して少なくとも90度の範囲で回動可能なストッパ160が設けられている。同様に、右抜止め部52は、共通壁体3aの内面に固着されている。右抜止め部52の先端の下部には、共通壁体3aに対して少なくとも90度の範囲で回動可能なストッパ161を有している。
開脚保持体122の略台形の一対の斜辺は、共通壁体3aおよび斜辺壁体3dにそれぞれ接触する二つの接触辺163,163となっている。また、開脚保持体122の略台形の上底側には、挿入孔141,151の縁部に係脱可能な一対の係合溝164,164が形成されている。
便器9を組み立てる場合、図14(a)に示すように、左脚部40および右脚部50をそれぞれ略「L」字状に折り曲げ、これらの挿入孔141,151から開脚保持体122を挿入して係合させる。この係合状態では、開脚保持体122の二つの接触辺163,163が斜辺壁体3dおよび共通壁体3aにそれぞれ面接触し、左脚部40および右脚部50の開脚状態を保持すると共に、斜辺壁体3dおよび共通壁体3aの展開状態を保持する。
次いで、図14(b)に示すように、便座36の各スライド溝132,132を左右の脚部40,50の各上端部142,152に手前側から案内させて、左右の脚部40,50と左右の抜止め部42,52との間に差し込むように挿入させる。この挿入動作の際、左右のストッパ160,161をそれぞれ内側に90度折り曲げておく。
そして、図14(c)に示すように、便座36の挿入が完了した後で、左右のストッパ160,161を下側に戻す。この状態では、左右のストッパ160,161は、その奥側の端面が便座36の手前側の端面に接触して、便座36の手前側への移動を規制している。またこの状態では、便座36の下面が左右の脚部40,50に支持される。そして、便座36の二つの接触辺131,131が、斜辺体3dおよび共通壁体3aにそれぞれ面接触し、斜辺壁体3dおよび共通壁体3aの展開状態を保持する。
またこの状態では、便座36の左右の接触辺131,131の全体が左右の抜止め部42,52に下側から接触して、便座36の上方への移動が規制されている。さらにこの状態では、便座36の上底側の左右端部が、背面壁体3bの左端部212および右端部211に突き当たっている。組立ての最終段階では、排泄物処理袋124を便座孔120に臨ませた状態で開脚保持体122の上面にセットする。
このように、組み立てられた便器9は、第1実施形態と同様に、便座36の水平方向への移動および上方への移動が規制されているため、利用者は便座36に安定して着座することができる。また、組み立てられた便器9は、斜辺壁体3dおよび共通壁体3aの両方に全体として係合して、これらの展開状態を個室空間2Lの奥側且つ下側で保持する展開保持手段として機能する。
<第4実施形態>
次に、図15ないし図17を参照して、第4実施形態に係る折畳み式建屋1について相違点を中心に説明する。第2実施形態および第3実施形態との相違点は、便器9を組み込み式でなくて既製の簡易トイレ230を設置するようにしたことと、上棚231および下棚232まわりのスライド構造を変更したことと、第3の展開時保持手段としての連結板233を設けたことである。
図15は、折畳み式建屋1の展開状態をその屋根を省略して示す斜視図である。図16は、左右両側の個室空間2L,2Rから簡易トイレを取り外し、さらに左側の個室空間2Lから上棚231の棚板250を取り外した状態を示す平面図である。左右の個室空間2L,2Rの構造は同一とすることができる。以下では、上記実施形態と同様に、左側の個室空間2Lについて説明し、右側の個室空間2Rに設ける棚8等ついては説明を省略する。
図17(b)に示すように、洋式の簡易トイレ230は、例えば左右前後にパイプ状または円柱状の四本の脚体241,242,243,244を有している。簡易トイレ230は、この四本の脚体241,242,243,244が中間部および上部で複数のパイプまたは円柱状の棒で連結されて組まれており、その正面中央部に便座を配し、その左右に手摺を配した構成となっている。
図15に示すように、上棚231および下棚232は、個室空間2Lにおいて上下に離間して設けられている。上棚231と下棚232とは、下棚232に簡易トイレ230用の二つの穴265,265を設けた点以外は、全く同一に構成されている。そこで以下では、下棚232についてのみ詳細に説明し、下棚232の構成要素と同一なる上棚231の構成要素については、下棚232の構成要素と同一の符号を付してその説明を省略する。
図16および図17に示すように、下棚232は、展開状態において設置される棚板250と、棚板250を着脱可能に支持する六つの棚板支持部251,252,253,254,255,256と、で構成されている。
棚板250は、個室空間2Lの台形状に対応して台形状の板材からなる。棚板250は、台形の斜辺となる一対の接触辺261,262と、台形の上底側に位置して背面壁体3dに接触する接触辺263と、を有している。また、棚板250には、左右に離間して二つの穴265,265が設けられており、この各穴265,265に簡易トイレ230の後側の二つの脚体243,244が挿通するようになっている。
六つの棚板支持部251,252,253,254,255,256は、左右対称となるように設けられており、それぞれ棚板250を挟持することで水平に支持する。
ストッパ272付きの棚板支持部251は、共通壁体3aの内面に取り付けられたブロック状の部材であり、ストッパ282付きの棚板支持部252は、斜辺壁体3dの内面に取り付けられたブロック状の部材である。これらの棚板支持部251,252は、棚板250の台形の斜辺方向に延びるスリット271,281を、上下の中間部にそれぞれ有している。また、各ストッパ272,282は、各棚板支持部251,252の先端の下部に回動可能に設けられており、共通壁体3aおよび斜辺壁体3dに対して少なくとも90度の範囲で回動する。
背面壁体3bの内面には、二つの棚板支持部253,254が折返し部213を挟んで左右に離間して設けられている。この二つの棚板支持部253,254は、ブロック状の部材であり、棚板250の台形の上辺に沿って延びるスリット291,292を、上下の中間部にそれぞれ有している。そして、残りの二つの棚板支持部255,256は、背面壁体3bの右端部211および左端部212の一部を、棚板250の台形の斜辺方向に沿って切り欠いたスリット293,294で形成されている。上記した六つのスリット271,281,291,292,293,294の高さは、棚板250の厚みと略同一となっている。
下棚232を組み付ける場合、図17(a)に示すように、先ず、左右のストッパ272,282をそれぞれ内側に90度折り曲げておき、棚板250を手前側から二つの棚板支持部251,252に案内して、各接触辺261,262を各スリット271,281に水平にスライドさせる。そして、各接触辺261,262を各棚板支持部255,256のスリット293,294にもスライド挿入させ、さらに、上底側の接触片263を背面壁体3b側の各棚板支持部253,254のスリット291,292にスライド挿入させる。その後、図17(b)に示すように、左右のストッパ272,282を下側に戻す。
この状態となると、左右のストッパ272,282は、その奥側の端面が棚板250の下底側の端面に接触して、棚板250の手前側への移動(水平移動)を規制する。またこの状態では、棚板250の二つの接触辺261,262は、共通壁体3aおよび斜辺壁体3dに面接触しつつ且つ四つの棚板支持部251,252,255,256に挟持され、もう一つの接触辺263は、背面壁体3bに面接触しつつ且つ二つの棚板支持部253,254に挟持される。
これにより、棚板250は、下側から支持されて下方への抜落ち及び上方への移動を規制されるように、六つの棚板支持部251〜256に挟持される。そして、図17(b)および(c)に示すように、簡易トイレ230の後側の各脚体243,244を下棚232の各穴265,265に挿通させて、地面に設置する。
このようにして、個室空間2Lに設けられた下棚232は、共通壁体3a、斜辺壁体3dおよび背面壁体3bに亘って接触(係合)して、これらの展開状態を個室空間2Lの奥側且つ下側で保持する展開保持手段として機能する。特に、下棚232が背面壁体3bの左右方向に亘って接触するため、背面壁体3bの展開状態を好適に保持することができる。また、棚板250が6点で支持されるため、特に上棚231の棚板250については、比較的重量の大きいものでも適切に載置することができる。
連結板233は、図15および図16に示すように、左側の個室空間2Lにおいて、斜辺壁体3dと前面壁体4とで構成される台形の一つの頂点側に設けられている。なお、右側の個室空間2Rにおいても、連結板233は、斜辺壁体3eと前面壁体4とで構成される台形の一つの頂点側に設けられている。以下では、個室空間2L側の連結板233について中心に説明する。
連結板233は、略長方形状の板部材からなる。連結板233は、斜辺壁体3dと前面壁体4との間に位置する本体部301を有し、本体部301の一端部302が斜辺壁体3dの内面下部に固着され、本体部301の他端部303が前面壁体4の内面下部に固着されている。各端部302,303と各壁体3d,4との固着は、テープや接着剤を用いてもよいし、ビスなどの留め具を用いてもよい。連結板233は、折畳み式建屋1の折畳み状態では組みつけられておらず、展開状態とした際に、所定位置にビスなどにより取り付けられる。
連結板233は、第1実施形態の第3の展開保持手段170と同様に、前面壁体4と隣接する壁体(斜辺壁体3dまたは斜辺壁体3e)を固定して、折畳み式建屋1の展開状態を保持する。これにより、個室空間2Lの略台形の四つの頂点が、実質的に強固に固定された状態となる。
これを詳述するに、先ず、略台形の上底側の二つの頂点側については、上棚231および下棚232により固定される。そして、略台形の下底側の一つの頂点側については、隣室(個室空間2R)の上棚231および下棚232により実質的に固定され、もう一つの頂点側については、連結板233により固定される。したがって、展開状態の折畳み式建屋1の強度および安定性を全体として高めることができる。
なお、連結板233は、個室空間2Lの下方に設ける場合だけでなく、上方や中間部などにも設けてもよく、その数は複数であってもよい。また、第2実施形態および第3実施形態の折畳み式建屋1についても、連結板233を設けてもよい。さらに、連結板233に代えて、例えば第1実施形態の展開保持手段170を本実施形態の折畳み式建屋1に適用してもよい。
次に、図18を参照して、展開状態の折畳み式建屋1の地面への安定した設置を補助するフランジ320について説明する。このフランジ320は、図15および図16に示すように、斜辺壁体3dおよび斜辺壁体3eの下部にそれぞれ着脱可能に設けられている。以下では、斜辺壁体3d側のフランジ320を中心に説明し、斜辺壁体3e側のフランジ320については同一の符号を付して説明を省略する。
図16および図18に示すように、フランジ320は、全体として方形に形成された板状部材からなる。フランジ320は、斜辺壁体3dの外側に張り出すように設置される本体部331と、本体部321の一つの辺側に形成されて斜辺壁体3dの下部を挟持する挟持部332と、で構成されている。
挟持部332は、斜辺壁体3dの外面に当接する外側挟持片341と、挟持片を挟んで前後に(斜辺壁体3dの斜辺方向の前後に)設けられ、斜辺壁体3dの内面に当接する一対の内側挟持片342,342と、で構成されている。外側挟持片341および一対の内側挟持片342,342は、本体部321に対して90度の角度で回動可能に構成されている。斜辺壁体3の下端部の中間部には、フランジ320を取り付けるための凹部350が形成されている。
フランジ320を斜辺壁体3dに取り付ける場合には、図18(a)に示す扁平状態のフランジ320から、図18(b)にように、挟持部332のうち外側挟持片341のみを本体部321に対して垂直となるように90度回動させる。そして、一対の内側挟持片342,342を個室空間2L内へと凹部350から挿入し、外側挟持片341を凹部350のまわりの斜辺壁体3dの外面に当接させる。
その後、図18(c)に示すように、個室空間2L内において、一対の内側挟持片342,342を本体部321に対して垂直となるように90度回動させる。これにより、斜辺壁体3dの下部が挟持部322により挟持されると共に、本体部320が地面に着座して、フランジ320の取り付けが完了する。そして必要に応じて、フランジ320の取付け後に、本体部321の上面に土嚢などの錘を載せたりしてもよい。
なお、フランジ320を斜辺壁体3dに設ける箇所は一箇所に限らない。また、フランジ320を共通壁体3aに設けてもよいし、第1実施形態〜第3実施形態の折畳み式建屋1にも適用してもよい。さらに、フランジ320に代えて、前面壁体4とフランジ62との関係のように、斜辺壁体3dの下部に一体にフランジを設けてもよい。
<変形例>
次に、図19を参照して、本発明の折畳み式建屋1の変形例について簡単に説明する。ここでは、上記のように共通壁体として機能する壁体を「壁体3a」で表し、この対辺に回動可能に連結された壁体を「壁体3b」、「壁体3c」で表す。その他の壁体を「壁体3d」、「壁体3e」などと表示する。また、前面壁体および扉体についても、同様に「前面壁体4」および「扉体5」として表示する。折畳み式建屋1の各個室空間2L、2Rには、棚8や便器9などの展開保持手段が上記実施形態と同様に配設することができるが、ここでは省略している。
図19(a)に示すように、個室空間2L,2Rを正方形などの方形にしてもよい。
図19(b)に示すように、個室空間2L,2Rを台形状として、下底側(背面壁体3b,3c)よりも長さの短い上底側に、前面壁体4や扉体5を設けてもよい。
図19(c)に示すように、個室空間2L,2Rを略六角形などの五角形以上の多角形状としてもよい。
図19(d)に示すように、個室空間2L,2Rを台形状とし、共通壁体3aを各個室空間2L,2Rの上底側としてもよい。すなわち、個室空間2L,2Rを台形状とする場合に、その台形状の斜辺を共通壁体3aに設定しなくてもよい。
<第5実施形態>
次に、図20ないし22を参照して、第5実施形態に係る折畳み式建屋1について相違点を中心に説明する。上記各実施形態との相違点は、前面壁体(4)と扉体(3d)との連結構造、及び扉体(5)と壁体(3a)との連結構造を工夫したことである。なお、折畳み式建屋1の壁体などを構成する素材は、上記同様にそれぞれが同じ厚さのダンプラである。
図20に示す折畳み式建屋1は、図19(a)に示す方形の折畳み式建屋の変形例である。この折畳み式建屋1は、隣接する略長方形の二つの個室空間2L,2Rを、五枚の長方形の壁体3a,3b,3c,3d,3eで構成している。折畳み式建屋1は、上記同様に展開状態から全体として平板状の折畳み状態に変形可能に構成されている。そのために、壁体3b及び3cは、それぞれ個室空間2L及び2Rの内側へと折り込み可能に構成されている。以下、個室空間2Lを中心に説明する。
図21は、壁体3dに連結する前の前面壁体4の展開図である。図20及び図21に示すように、前面壁体4は、連結部401、前面部402、展開保持部403、及び連結部404を一体的に有している。
連結部401は、壁体3dとほぼ同じ高さ延在しており、壁体3dの端部内面に連結される。連結部401は、水平方向に切り込まれた複数のスリット411を有している。複数のスリット411は、連結部401の高さ方向において等間隔で形成されており、各スリット411は、連結部401の水平面内の全域を切り込むように形成されている。連結部401は複数のスリット411によって高さ方向に区画され、この区画された領域は接着領域412(図21で斜線を付した領域)又は非接着領域413となっている。
接着領域412と非接着領域413とは、交互に位置している。接着領域412には、両面テープなどが貼着される。非接着領域413には、リベットなどの固定部材が挿通される孔414が貫通形成されている。連結部401は、接着領域412の両面テープを介して壁体3dの内面に接着されると共に、非接着領域413の孔414に挿入した固定部材を介して壁体3dの内面に固定される。これにより、前面壁体4が連結部401を介して壁体3dに連結される。
このように、連結部401にスリット411を形成しておくことで、接着後の前面壁体4と壁体3dとの間に生じ得る相対的な引張り力をスリット411で逃がすことができる。これにより、接着後の前面壁体4と壁体3dとのゆがみを抑制することができる。なお、スリット411は複数であることが好ましいが、一つであってもよい。また、スリット411を壁体3dに形成してもよい。
前面部402は、連結部401と同じ高さを有している。前面部402は、展開状態において、連結部401との間の折れ線(境界線)を中心として、連結部401に対しほぼ直角に折り曲げられる。この展開状態では、前面部402は、個室空間2Lの前面側の一部を覆い、一部が扉体5に対面する。
展開保持部403は、前面部402の上部及び下部に連なるように、上下に一対が形成されている。展開保持部403は、展開状態において、前面部402との間の折れ線(境界線)を中心として、前面部402の背面側へと折り曲げられる。展開保持部403は、前面壁体4の他の部位(連結部401、前面部402及び連結部404)と協同して、展開状態を保持するのに機能する。
連結部404は、上下一対の展開保持部403に連なるように、上下に一対が形成されている。連結部404は、展開状態において、展開保持部403との間の折れ線(境界線)を中心として、壁体3dに沿うように折り曲げられる。上側及び下側の連結部404は、固定孔416に挿通されたリベットなどの固定部材を介して、壁体3dの内面上部及び内面下部に固定される。折畳み式建屋1の折畳み状態では、上下の連結部404は、固定孔416から固定部材を取り外され、壁体3dとの連結を解除される。
図22は、共通壁体3aに連結する前の扉体5の展開図である。図20及び図22に示すように、扉体5は、連結部501(第二の連結部)と、扉本体502とを一体的に有している。扉体5では、連結部501が共通壁体3aの対辺の一方に連結され、扉本体502が連結部501との境界線を基点として共通壁体3aに対して回動する。
連結部501は、細長い板状からなり、共通壁体3aとほぼ同じ高さ延在している。連結部501は、共通壁体3aの連結部3aaに回動可能に連結される。連結部3aaは、本特許請求の範囲に記載の「第一の連結部」に対応する部位であり、本実施形態では、連結部3aaは、共通壁体3aの対辺の一方側の端部内面に相当する。
連結部501は、連結部401と同様に、水平方向に切り込まれた複数のスリット511を有している。複数のスリット511は、連結部501の高さ方向において等間隔で形成されており、各スリット511は、連結部501の水平面内の全域を切り込むように形成されている。連結部501は複数のスリット511によって高さ方向に区画され、この区画された領域は接着領域512(図22で斜線を付した領域)又は非接着領域513となっている。
接着領域512と非接着領域513とは、交互に位置している。接着領域512には、両面テープなどが貼着される。非接着領域513には、リベットなどの固定部材が挿通される孔514が貫通形成されている。連結部501は、接着領域512の両面テープを介して共通壁体3aの連結部3aaに接着されると共に、非接着領域513の孔514に挿入した固定部材を介して共通壁体3aの連結部3aaに固定される。これにより、扉体5が連結部501を介して共通壁体3aの対辺の一方に連結される。
このように、連結部501にスリット511を形成しておくことで、接着後の扉体5と共通壁体3aとの間に生じ得る相対的な引張り力をスリット511で逃がすことができる。これにより、接着後の扉体5と共通壁体3aとのゆがみを抑制することができる。なお、スリット511は1以上であればよいが、複数であることが好ましい。別の態様では、1以上のスリット511を連結部3aaに形成してもよいし、連結部3aa及び連結部501の両方に形成してもよい。
扉本体502は、戸尻側が連結部501に回動可能に一体的に連結され、戸先側が前面壁体4の前面部402に面するようになっている。扉本体502が連結部501との境界線を基点として回動することで、個室空間2Lの出入り口部分25Lが開閉される。扉本体502は、全体的に連結部501と同じ高さを有している一方、下端部に凹部521を有している。凹部521は、上方に対して凹むように形成されており、扉本体502の下端中央部に位置している。
扉本体502の下端部は、凹部521を挟むように両端部、すなわち戸尻側端部522及び戸先側端部523を有している。戸尻側端部522及び戸先側端部523は、凹部521から下方に突出するように形成されている。折畳み式建屋1を地面に設置した状態では、扉本体502の下端面は地面から離間する。具体的には、戸尻側端部522の下端面は、地面とのクリアランスがH1に設定され、戸先側端部523の下端面は、地面とのクリアランスがH2に設定されている。H1とH2とは異なっており、ここではH1はH2よりも大きく設定されている。
このように、扉体5が凹部521を有しているので、扉体5の下端部が平坦である場合に比べて、扉体5の開閉を円滑に行うことができるようになる。また、戸尻側端部522及び戸先側端部523の下端面は地面とのクリアランスが異なるため、扉体5の開閉をより一層円滑に行い得る。なお、戸尻側端部522及び戸先側端部523の図22における左右方向の長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1実施形態と同様に、凹部521には、目隠し用のカーテン(71)を取り付けてもよい。
なお、本実施形態では長方形タイプの折畳み式建屋1を例に説明したが、もちろん上記実施形態で説明した三角形や台形タイプの折畳み式建屋1にも、本実施形態の連結構造(扉体5と共通壁体3aとの連結構造や、前面壁体4と壁体3dとの連結構造)を適用することができることは言うまでもない。また、本実施形態の連結構造は、あらゆる壁体と壁体との間、例えば図16に示す共通壁体3aと壁体3bとの間にも適用できる。さらに、他の実施形態で説明した棚や便器などの各種構成を本実施形態に適用できる。
<第6実施形態>
次に、図23を参照して、第6実施形態に係る折畳み式建屋1について相違点を中心に説明する。第5実施形態との相違点は、個室空間2Lの出入り口部分25Lに固定パーツ600を設けたことである。
固定パーツ600は、共通壁体3aと壁体3dとの間に位置している。固定パーツ600は、本体部601と、左右一対の固定部602,602と、水平突出部603と、により一体的に構成されている。
本体部601は、長方形に形成されている。本体部601は、出入り口部分25Lに位置し、地面に設置される。一対の固定部602は、本体部601の左右側端から外方に突出しており、本体部601の上側に折り曲げ可能に構成されている。一対の固定部602は、本体部601に対して直角となるように上方に折り曲げられた状態で、固定孔610に挿通されるリベットなどの固定部材によって、共通壁体3a及び壁体3dの前部下部に固定される。なお、図23は、折り曲げられてない一対の固定部602を示している。
水平突出部603は、扉体5の戸尻側に位置し、本体部601と同様に地面に設置される。水平突出部603は、全体として矩形又は舌形状からなり、本体部601の前端右側から手前に水平に突出している。水平突出部603は、扉体5の回動の基点(連結部501と扉本体502との境界線)よりも、手前に突出している。水平突出部603の角部は、丸面取りされている。水平突出部603の左右方向の幅は、戸尻側下端部522のそれと同程度に設定されている。また、水平突出部603の上面は、戸尻側下端部522の下端面との間に僅かなクリアランスを設定されている。
以上説明した本実施形態によれば、共通壁体3aと壁体3dとの展開状態を固定パーツ600によって適切に保持することができる。また、水平突出部603が扉体5の回動の基点よりも手前側に位置しているので、扉体5を開く際には、水平突出部603が地面により密着するようになる。一方、本体部601が扉体5の回動の基点よりも奥側に位置しているので、扉体5を閉じる際には、本体部601が地面により密着するようになる。このような構成により、本実施形態によれば、扉体5の開閉をより一層円滑に行うことができる。
特に、水平突出部603と上記した扉体5の戸尻側端部522とがあることによって、扉体5が自重により戸先側に向かって垂れ下がることを抑制でき、ひいては折畳み式建屋1全体のゆがみを抑制できる。この作用効果を別の観点から検討すれば、扉本体502のサイズについて設計の自由度を高めることができると言える。したがって、本実施形態によれば、幅広の扉本体502を用いても、建屋1全体のゆがみを抑制でき、しかも出入り口部分25L(開口部)の大きさを確保することができることになり、個室空間2Lを例えば車椅子でもアクセス可能なものとすることができる。
1:折畳み式建屋、 2L,2R:個室空間、3a:共通壁体、3b:左壁体(第一壁体)、3c:右壁体(第二壁体)、4:前面壁体、5:扉体、6:展開保持板、7:屋根体、8:棚、9:便器、 25L,25R:出入り口部分、32:棚板、34:棚板支持部、36:便座、40:左脚部40、42:左抜止め部、44:補助板、46:保持部、50:右脚部、52:右抜止め部、62:フランジ部、63:保持部、71:カーテン、72:ロック機構、120:便座孔、122:開脚保持体、124:排泄物処理袋、131:接触辺、132:スライド溝、 160,161:ストッパ、170:第3の展開保持手段、
3b:背面壁体(第一壁体)、3c:背面壁体(第二壁体)、3d:斜辺壁体(第一社編壁体)、3e:斜辺壁体(第二斜辺壁体)、213:折返し部、230:簡易トイレ、231:上棚、232:下棚、233:連結板、251〜256:棚板支持部、 272,282:ストッパ、320:フランジ