JP4117145B2 - データ検出システムおよびデータ検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、物体に付されたタグなどから非接触で無線信号を読み取り、読み取った信号に含まれるデータを検出するデータ検出システムおよびデータ検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、JRの「Suica」のように、ICカードなどに記憶されたデータを、微弱な無線信号を介して非接触で読み出すシステムが実用化されている。
また、例えば、日経エレクトロニクス誌(2002年2月25日,p112〜)は、非接触でデータの読み出し・書き込みが可能な小型の無線タグを開示する。
このようなシステムにおいては、ICカード・無線タグからの無線信号を確実に受信し、この信号に含まれるデータを確実に検出することが要求される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した背景からなされたものであり、非接触のICカード・無線タグが送信する微弱な無線信号から、確実にデータを検出することができるデータ検出システムおよびデータ検出装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にかかるデータ検出システムは、無線送信される問い合わせ信号を受信し、所定のデータを含み、前記受信した問い合わせ信号に同期する応答信号を無線送信する応答信号送信装置と、データ検出装置とを有するデータ検出システムであって、前記データ検出装置は、前記問い合わせ信号を無線送信する問い合わせ信号送信手段と、前記無線送信される応答信号を受信し、前記受信した応答信号を減衰させる受信・減衰手段と、前記無線送信される問い合わせ信号に同期する検波用信号を用いて、前記減衰された応答信号を検波して検波信号とする検波手段と、前記検波信号から、前記所定のデータを検出するデータ検出手段とを有する。
【0005】
また、本発明にかかるデータ検出装置は、無線送信される問い合わせ信号に同期し、所定のデータを含み、無線送信される応答信号から、前記所定のデータを検出するデータ検出装置であって、前記問い合わせ信号を無線送信する問い合わせ信号送信手段と、前記無線送信される応答信号を受信し、前記受信した応答信号を減衰させる受信・減衰手段と、前記無線送信される問い合わせ信号に同期する検波用信号を用いて、前記減衰された応答信号を検波して検波信号とする検波手段と、前記検波信号から、前記所定のデータを検出するデータ検出手段とを有する。
【0006】
好適には、前記応答信号は、所定の強度で反射された前記問い合わせ信号を含み、前記受信・減衰手段は、前記反射された問い合わせ信号を含む応答信号を受信し、前記検波信号から有意なデータが検出される減衰量を、前記受信した応答信号に対して与える。
【0007】
好適には、前記検出された所定のデータが有意であるか否かに応じて、前記反射された問い合わせ信号を含む応答信号に対する減衰量を制御する減衰量制御手段をさらに有する。
【0008】
好適には、前記検出された所定のデータが有意であるか否かに応じて、前記受信された応答信号または検波用信号を移相させる移相手段をさらに有する。
【0009】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態として、非接触IDタグ読み取りシステム1を説明する。
【0010】
[非接触IDタグ読み取りシステム1]
図1は、本発明にかかる非接触IDタグ読み取りシステム1の構成を示す図である。
図1に示すように、非接触IDタグ読み取りシステム1は、1つ以上の識別対象物12それぞれに付されたIDタグ14、円偏波アンテナ200を含むIDリーダ2およびコンピュータ10などから構成される。
非接触IDタグ読み取りシステム1は、これらの構成部分により、識別対象物12(荷物・書籍など何でもよい)の識別子(ID)など種々の情報を、IDタグ14とIDリーダ2の円偏波アンテナ200とが非接触の状態で、微弱な電波信号を用いて伝送し、識別対象物12の識別などを行う。
【0011】
[IDタグ14]
図2は、図1に示したIDタグ14の構成を示す図である。
図2に示すように、IDタグ14は、アンテナ140、電源回路142、リミッタ144、SW−ON/OFF用クロック発生回路146、ID発生回路148および変調回路150から構成される。
IDタグ14は、これらの構成部分により、本願と同じ出願人による特願2001−167080号にも開示されているように、識別対象物12に付され、IDリーダ2から送信される搬送波の波長λo=数mm〜数十cmの問い合わせ信号に応えて、識別対象物12(図1)のIDを含む応答信号を返す。
なお、IDタグ14は、アンテナ140を含めて短辺・数mm×長辺・数cm程度の小型で薄い、識別対象物12に付しやすい形状とされる。
また、アンテナ140を除いたIDタグ14の構成部分は、一辺が数mm〜0.数mm程度の半導体チップ上に形成される。
【0012】
IDタグ14において、アンテナ140は、長方形の導体の長手方向にスロットが形成された構成を採り、スロットアンテナとして動作する。
アンテナ140の導体の幅Dと長さLとは、下式1を満たす値とされ、また、アンテナ140の幅は、下記波長λoに対して十分に短い値(例えば、λo/100〜λo/1000の範囲内)とされる。
【0013】
【数1】
【0014】
波長λoの信号に対するアンテナ140のインピーダンスは、スロットの長手方向の中心においては数百Ω程度の値を取り、スロットの両端に近い部分においては、中心においてよりも低い値を取る。
アンテナ140のスロットにおいて、中心から離れ、IDタグ14の半導体チップ部分の入出力インピーダンスと整合するインピーダンスを示す部分には、図2に示すように、幅が狭められた領域が形成される。
アンテナ140の上記半導体チップは、この幅が狭い領域に、スロットをまたぐように載置され、スロットの両側の導体と接続されて信号の入出力を行う。
つまり、アンテナ140の半導体チップは、アンテナ140に対してオフセット給電を行うように取り付けられ、信号の入出力を行う。
【0015】
電源回路142は、IDリーダ2(図1)から送られ、アンテナ140により捉えられた問い合わせ信号を整流・平滑し、IDタグ14の半導体チップ上の各構成部分に対して電源(Vdd)として供給する。
リミッタ144は、電源回路142が生成する電源Vddの電圧が、一定以上の値にならないように制限する。
IDタグ14の半導体チップ上の構成部分は、電源回路142が発生し、リミッタ144が電圧を制限した電源の供給を受けて動作する。
【0016】
図3は、図1に示したIDリーダ2における信号波形を示す図であって、(A)は問い合わせ信号を示し、(B)は検波波形を示し、(C)はSW−ON/OFF用クロック信号の波形を示し、(D)はアナログスイッチ262(図4)によりスイッチングされ、C11,C12により平滑化された信号の波形を示し、(E)はLPFによりフィルタリングされた信号の波形を示し、(F)は絶対値回路268の出力信号の波形を示す。
ここで、図4を参照して後述するように、IDリーダ2において、問い合わせ信号は、上記波長λoの搬送波信号を、図3(A)に示すように、IDタグ14に対する電源供給のための無変調部、および、IDタグ14の動作のために用いられるクロック部を含む方形波にてオン/オフ(ASK変調)することにより生成され、IDタグ14に対して送信される。
SW−ON/OFF用クロック再生回路146は、アンテナ140から入力される問い合わせ信号に含まれる方形波(図3(A))からクロック信号を再生し、ID発生回路148に対して出力する。
【0017】
ID発生回路148は、識別対象物12のIDなどのデータを記憶するROM・RAM(図示せず)などから構成される。
ID発生回路148は、クロック再生回路146から入力されるクロック信号に同期して、ROM・RAMに記憶したデータを順次、読み出して、識別対象物12のIDを論理値1,0で示すIDデータを生成し、変調回路150に対して出力する。
なお、図3(B),(D)、(E),(F)には、IDタグ14側が、IDリーダ2からの問い合わせ信号8パルスに1回の割合で、応答信号を返す場合が例示されている。
【0018】
例えば、IDデータの論理値が1である場合に、変調回路150が、アンテナ140のインピーダンスを、整合が取れた状態から、整合が取れていない状態に変化させると、IDリーダ2から送信されてきた問い合わせ信号は、IDタグ14により、より強く反射され、IDリーダ2に返る信号の強度が強くなる。
反対に、例えば、IDデータの論理値が0である場合に、変調回路150が、アンテナ140のインピーダンスを、整合が取れた状態のままとすると、IDリーダ2に返る信号の強度は変化しない。
【0019】
このように、変調回路150が、ID発生回路148から入力されるIDデータの論理値に従って、アンテナ140の給電点のインピーダンスを変化させると、図3(B),(D),(E),(F)にデータ成分として示すように、IDリーダ2側に返される応答信号の強度が変化する。
以上説明した各構成部分の動作により、IDタグ14は、IDリーダ2に対して、問い合わせ信号の強度をIDデータの論理値に応じて変化させて反射することにより、問い合わせ信号の搬送波信号およびクロック信号の両方に同期した応答信号を送信する。
【0020】
[IDリーダ2]
図4は、第1のIDリーダ2(図1)の構成を示す図である。
図4に示すように、第1のIDリーダ2は、円偏波アンテナ200、サーキューレータ202、方向性結合器204、送信部22、復調部24および制御部28から構成される。
送信部22は、発信器220、変調器222、問い合わせ信号発生器224、送信アンプ226から構成される。
復調部24は、分配器240、移相器242、第1および第2の信号発生部26−1,26−2、加算器244、IDデータ検出回路246から構成される。
【0021】
信号発生部26−1,26−2はそれぞれ、検波器260−1,260−2、アナログスイッチ(SW)262−1,262−2、ローパスフィルタ264−1,264−2、受信アンプ266−1,266−2、絶対値回路268−1,268−2、および、アナログスイッチ262−1,262−2の出力に接続されたコンデンサC11,C21から構成される。
制御部28は、メモリおよびCPU(図示せず)などから構成される制御回路280およびSW−ON/OFF用クロック発生器282から構成される。
【0022】
IDリーダ2は、これらの構成部分により、本願と同じ出願人による特願2002−14664号にも開示されているように、近距離(例えば、IDリーダ2〜IDタグ14間の距離20〜30cm)にあるIDタグ14(図2)に対して微弱な問い合わせ信号を送信し、この問い合わせ信号に応じて返される応答信号から、IDデータを検出し、コンピュータ10に対して出力する。
【0023】
制御回路280は、コンピュータ10からの指示に従って、IDリーダ2の各構成部分の動作を制御する。
また、制御回路280は、IDリーダ2の各構成部分により検出されたIDデータを、コンピュータ10に対して出力する。
【0024】
SW−ON/OFF用クロック発生器282は、図3(C)に示したような、例えば100kHzのSW−ON/OFF用クロック信号を発生し、変調器222および信号発生部26−1,26−2のアナログスイッチ262−1,262−2に対して出力する。
【0025】
発信器220は、IDタグ14に対して送信する問い合わせ信号の搬送波信号(波長λo)を生成し、変調器222に対して出力する。
【0026】
問い合わせ信号発生器224は、制御回路280の制御に従って、SW−ON/OFF用クロック発生器282が発生するSW−ON/OFF用クロック信号に同期し、先頭部にIDタグ14に電力を供給する無変調部を含む問い合わせ信号を発生し、変調器222に対して出力する。
【0027】
変調器222は、問い合わせ信号発生器224から入力される問い合わせ信号(100kHz)により、発信器220から入力される搬送波信号(波長λo)をオン/オフ(ASK変調)し、送信アンプ226に対して出力する。
【0028】
送信アンプ226は、変調器222から入力される問い合わせ信号によりASK変調された搬送波信号(単に「問い合わせ信号」とも記す)を、所望の電力まで増幅し、方向性結合器204に対して出力する。
【0029】
方向性結合器204は、例えば、送信アンプ226から入力される問い合わせ信号を、電力として1/10(−10dB)だけ、バイアス信号(図7を参照して後述)として検波器260−1,260−2に供給し、問い合わせ信号の残りの電力の分を、サーキューレータ202に対して出力する。
バイアス信号と問い合わせ信号とは、電力値が異なるだけなので、これらの信号の振幅および搬送波信号は同期している。
従って、問い合わせ信号、バイアス信号および応答信号の振幅および搬送波信号は、互いに同期している。
【0030】
サーキューレータ202は、方向性結合器204から入力された問い合わせ信号を円偏波アンテナ200に対して出力し、送信する。
また、サーキューレータ202は、円偏波アンテナ200から入力された応答信号を、分配器240に対して出力する。
【0031】
分配器240は、サーキューレータ202から入力された応答信号を2等分して、移相器242、および、信号発生部26−1の検波器260−1に対して出力する。
【0032】
移相器242は、分配器240から入力された応答信号の位相を、例えば+90°シフトし、信号発生部26−2の検波器260−2に対して出力する。
なお、応答信号は、上述のように、問い合わせ信号の反射波であり、移相器242は、応答信号の搬送波信号の位相を、例えば+90°移相する。
【0033】
図5は、移相器242の動作を模式的に示す図である。
このように、移相器242が応答信号の位相を90°シフトする理由は、以下の通りである。
図5に実線の曲線で示すように、IDタグ14とIDリーダ2との間の距離dに応じて応答信号とバイアス信号との位相関係が変化するので、検波出力(図3(B),(D),(E)の波形のデータ成分)の強度もまた、距離dに応じて+側または−側に変化する(但し、図3(F)に示した波形は、絶対値を求める処理がなされているので、+側にのみ変化する)。
従って、距離dによっては、検波出力の強度は0になってしまうので、IDデータの検出が不可能になることがある。
これに対し、図5点線の曲線で示すように、応答信号の位相を適切な量だけシフトすると、距離dの値にかかわらず、移相した応答信号からの検波出力(点線)および移相しない応答信号の検波出力(実線)の少なくとも一方から、常に、IDデータを検出することができる。
つまり、IDリーダ2は、移相しない応答信号を検波器260−1で検波し、移相した応答信号を検波器260−2で検波して、加算器244で加算することにより、IDリーダ2〜IDタグ14の間の距離dの値にかかわらず、常に、IDデータが検出できるように構成されている。
【0034】
図6は、図4に示した信号発生部26−1,26−2の検波器260−1,260−2の構成を示す図である。
検波器260(検波器260−1,260−2のいずれかを特定せずに示す場合には、単に検波器260などと記す)は、図6に示すような回路から構成され、方向性結合器204から入力されるバイアス信号と、分配器240または移相器242から入力される応答信号とを加算してダイオード検波し、図3(B)に示すようにデータ成分を含む検波信号を出力する。
【0035】
図7は、図4,図6に示した検波器260の検波特性を示す図である。
検波器260は、ダイオードの非線形特性により、図7に示したように、入力される応答信号の電力が小さいと検波出力の値が著しく小さくなり、反対に、入力される応答信号の電力が大きくなると、検波出力の値が大きくなる。
つまり、検波器260は、図7の左下の点線の楕円で示すように、入力電力が小さい領域では低感度になり、同じく右上の点線の楕円で示すように、入力電力が大きい領域では高感度になる。
通常、応答信号の電力は非常に小さく、何らの対策しない場合、検波器260の低感度な領域で検波されるので、得られる検波出力も小さい。
これに対し、応答信号に問い合わせ信号の一部を応答信号に加算して検波することにより、応答信号を、問い合わせ信号に同期したタイミングで、検波器260の高感度な領域で検波することができるので、大きい検波出力が得られる。
【0036】
アナログスイッチ262−1,262−2は、それぞれ検波器260−1,260−2から入力される検波信号(図3(B))を、SW−ON/OFF用クロック発生器282から入力されるSW−ON/OFF用クロック信号(図3(C))に同期してスイッチングして整流し、コンデンサC11,C21により平滑化し、図3(D)に示す波形の信号として、ローパスフィルタ264−1,264−2に対して出力する。
【0037】
ローパスフィルタ264−1,264−2は、それぞれアナログスイッチ262−1,262−2から入力される信号の低周波成分のみを通過させ、図3(E)に示す波形の信号を受信アンプ266−1,266−2に対して出力する。
【0038】
受信アンプ266−1,266−2はそれぞれ、ローパスフィルタ264−1,264−2から入力される信号を増幅し、絶対値回路268−1,268−2に対して出力する。
【0039】
絶対値回路268−1,268−2は、それぞれローパスフィルタ264−1,264−2の出力信号の波形において、正・負、両方のレベルを取りうるデータ成分の値の絶対値を取り、例えば正レベルの信号として加算器244に対して出力する。
【0040】
加算器244は、受信アンプ266−1,266−2から入力される信号を加算し、IDデータ検出回路246に対して出力する。
【0041】
IDデータ検出回路246は、加算器244から入力された信号からIDデータを検出し、制御回路280に対して出力する。
【0042】
[全体動作]
以下、非接触IDタグ読み取りシステム1(図1)の全体動作を説明する。
送信部22(図4)が問い合わせ信号を発生すると、その一部はバイアス信号として検波器260−1,260−2に供給され、他の大部分はサーキューレータ202および円偏波アンテナ200を介して、IDタグ14に対して送信される。
IDタグ14において、電源回路142およびリミッタ144(図2)は、問い合わせ信号を受けると、IDタグ14の各構成部分に対して動作電力を供給する。
【0043】
クロック再生回路146は、問い合わせ信号に同期するクロック信号を再生し、ID発生回路148は、記憶している識別対象物12(図1)のIDなどを示すIDデータを生成し、クロック信号に同期したタイミングで変調回路150に対して出力する。
変調回路150は、IDデータの論理値に応じてアンテナ140のインピーダンスを変化させ、応答信号をIDリーダ2に対して送信する。
IDリーダ2において、分配器240は、円偏波アンテナ200を介して応答信号を受けると、受けた応答信号を2等分して、それぞれを検波器260−1および移相器242に対して出力する。
移相器242は、入力された応答信号を90°移相し、検波器260−2に対して出力する。
検波器260−1,260−2はそれぞれ、入力された応答信号にバイアス信号を加算し、検波して、図3(B)に示す検波信号を出力する。
【0044】
アナログスイッチ262−1,262−2は、これらの検波信号をクロック信号に同期してスイッチングして整流し、C11,C12により平滑化して図3(D)に示す信号とする。
ローパスフィルタ264−1,264−2は、これらの信号をフィルタリングして図3(E)に示す信号とする。
受信アンプ266−1,266−2は、これらの信号を増幅して絶対値回路268−1,268−2に対して出力する。
絶対値回路268−1,268−2は、これらの信号の絶対値をとり、加算機244に対して出力する。
加算器244は、絶対値回路268−1,268−2からの信号を加算し、IDデータ検出回路246は、加算された信号からIDデータを検出し、制御回路280に対して出力する。
制御回路280は、IDデータ検出回路246から入力されたIDデータを、コンピュータ10に対して出力する。
【0045】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態を説明する。
以上、第1の実施形態として示したIDリーダ2(図1,図4)は、受信した応答信号を2等分し、一方を移相して検波するので、IDリーダ2〜IDタグ14の間の距離dにかかわらず、応答信号からIDデータを安定に検出することができる。
しかしながら、IDリーダ2においては、受信した応答信号が2等分されるので、検波器260−1,260−2それぞれに入力される応答信号のパワーも、当然、円偏波アンテナ200が捉えた応答波の電力の1/2となり、損失が生じる。
以下に説明する第2のIDリーダ3は、このような点に着目して第1のIDリーダ2を改良したものであって、非接触IDタグ読み取りシステム1(図1)において第1のIDリーダ2の代わりに用いられ、受信した応答信号のパワーを無駄なく用いて、より確実にIDデータを検出できるように構成されている。
【0046】
図8は、第2のIDリーダ3の構成を示す図である。
なお、図8においては、図4に示した第1のIDリーダ2の構成部分と実質的に同じ第2のIDリーダ3の構成部分には、同様な符号が付してある。
図8に示すように、IDリーダ3は、IDリーダ2(図4)の復調部24を復調部30で置換し、制御回路280が、復調部30の可変移相器300を制御する構成を採る。
【0047】
復調部30は、復調部24(図4)の分配器240および移相器242を可変移相器300で置換し、信号発生部26−1,26−2を1系統の信号発生部26だけとし、加算器244を削除した構成を採る。
IDリーダ3は、IDデータ検出回路246が有意なIDデータを識別したか否かに応じて適応的に応答信号を移相し、応答信号の損失なく、IDデータの識別に用いることができるように構成されている。
【0048】
[可変移相器300]
図9は、図8に示した可変移相器300の構成を示す図である。
図9に示すように、可変移相器300は、ハイブリッド回路および可変容量ダイオードなどから構成される。
可変移相器300は、制御回路280からの制御に応じて、サーキューレータ202から入力される応答信号を移相せずに、または、例えば90°移相して、信号発生部26の検波器260に対して出力する。
【0049】
[制御回路280の制御]
IDリーダ3において、制御回路280は、可変移相器300が応答信号を90°移相している状態でIDデータ検出回路246が有意なIDデータを検出できない場合に、応答信号を移相せずに検波器260に対して出力するように可変移相器300を制御する。
また、制御回路280は、可変移相器300が応答信号を移相しない状態でIDデータ検出回路246が有意なIDデータを検出できない場合に、応答信号を90°移相して検波器260に対して出力するように可変移相器300を制御する。
【0050】
IDデータ検出回路246が有意にIDデータを検出した場合とは、例えば、IDデータ検出回路246が複数回、検出したIDデータが連続して一致した場合、IDデータに誤り検出符号が付加されているときに、この符号を用いた誤り検出によって誤りが検出されない場合、および、IDリーダ3にデータ成分(図3(B),(D),(E))の強度を測定可能なときに、十分に強度が大きいデータ成分からIDデータが識別された場合などである。
つまり、有意なIDデータとは、信頼性が十分に高いと認められる条件で検出されたIDデータを指す。
【0051】
[IDリーダ3の動作]
以下、IDリーダ3を用いた非接触IDタグ読み取りシステム1の全体動作を説明する。
送信部22および方向性結合器204は、第1のIDリーダ2においてと同様に、問い合わせ信号を発生し、円偏波アンテナ200を介してIDタグ14に対して送信し、また、検波器260に対してバイアス信号を供給する。
IDタグ14は、IDリーダ3からの問い合わせ信号に対して、上述したように、応答信号を返す。
【0052】
IDタグ14からIDリーダ3に返された応答信号は、可変移相器300を介して信号発生部26に入力され、信号発生部26およびIDデータ検出回路246によりIDデータが検出される。
制御回路280は、IDデータ検出回路246が有意なIDデータを検出したか否かに応じて可変移相器300を制御する。
【0053】
図10は、第2のIDリーダ3(図8)における制御回路280の制御処理(S10)を示すフローチャートである。
つまり、図10に示すように、ステップ100(S100)において、上述のように、復調部30(図8)がIDデータを検出し、検出したIDデータを制御回路280に対して出力する。
【0054】
ステップ102(S102)において、制御回路280は、有意なIDデータが検出されたか否かを判断する。
有意なIDデータが検出された場合には、制御回路280はS110の処理に進んで検出したIDデータをコンピュータ10に対して出力し、これ以外の場合にはS104の処理に進む。
【0055】
ステップ104(S104)において、制御回路280は、有意なIDデータが検出されず、可変移相器300による移相を一定回数繰り返したか否かを判断する。
この処理を一定回数繰り返した場合、制御回路280はS108の処理に進み、これ以外の場合にはS106の処理に進む。
【0056】
ステップ106(S106)において、制御回路280は、可変移相器300を制御して、受信された応答信号を移相させる。
【0057】
以上説明したように、IDリーダ3においては、制御回路280が有意なIDデータが検出されたか否かに応じて、適応的に可変移相器300を制御する。
従って、IDリーダ2におけるような応答信号の損失は発生しない。
また、IDリーダ2において2系統必要であった信号発生部26が、IDリーダ3においては1系統で済むので、装置規模を小さくすることができ、また、消費電力を抑えることができる。
【0058】
[変形例]
なお、IDリーダ3は、図8に示すように、可変移相器300が、応答信号を移相するのではなく、バイアス信号を移相するように変形することができる。
このように、バイアス信号を移相すると、可変移相器300が応答信号に与える減衰をなくすことができるので、IDリーダ3の性能がより向上する。
【0059】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。
図11は、本発明にかかる第3のIDリーダ4が発明されるに至った背景を説明する図である。
図11に示すように、IDタグ14が、金属製など、電波を反射する材料で作られた識別対象物16に付されることがある。
このように反射が大きい場合には、円偏波の電波が利用される。
円偏波アンテナ200から放射された円偏波の電波が、識別対象物16により1回、反射されて1回反射波として戻っても、この反射波の旋回方向は逆なので、円偏波アンテナ200には受信されない。
しかしながら、IDタグ14および識別対象物16〜円偏波アンテナ200の間の距離dが短い場合には、円偏波アンテナ200と識別対象物16との間で2回、反射された2回反射波の影響、および、円偏波アンテナ200の偏波特性の誤差が無視できなくなるので、IDタグ14からの応答信号が円偏波アンテナ200に返るだけでなく、識別対象物16によって反射された問い合わせ信号も、円偏波アンテナ200で受信されてしまう。
識別対象物16により反射された問い合わせ信号は、妨害信号として働き、IDデータの正常な検出を妨げる。
【0060】
この不具合を解消するためには、有意なIDデータを検出するために十分な強度の検波信号が得られ、かつ、妨害信号の影響を有効に排除することができるように減衰量を調整して、円偏波アンテナ200が受けた妨害信号を含む応答信号を減衰すればよい。
以下に示す本発明にかかる第3のIDリーダ4は、このような背景からなされたものである。
【0061】
図12は、本発明にかかる第2の非接触IDタグ読み取りシステム5の構成を示す図である。
第2の非接触IDタグ読み取りシステム5においては、第1の非接触IDタグ読み取りシステム1(図1)における第1のIDリーダ2が、第3のIDリーダ4に置換されており、識別の対象が、識別対象物12から、金属などから作られ、問い合わせ信号を反射する識別対象物16になっている。
【0062】
図13は、図12に示した第3のIDリーダ4の構成を示す図である。
なお、図13に示した第3のIDリーダ4の各構成部分の内、第1および第2のIDリーダ2,3(図4,図8)と同じものには、同一または対応する符号が付されている。
図13に示すように、第3のIDリーダ4は、第2のIDリーダ3(図8)のサーキューレータ202〜検波器260の間に、可変減衰器40を挿入した構成を採る。
IDリーダ4は、これらの構成部分により、識別対象物16により反射された問い合わせ信号(妨害信号)を含む応答信号を、IDデータの検出結果に応じて、適応的に移相および減衰させることにより、常に有意なIDデータを検出する。
【0063】
可変減衰器40は、制御回路280の制御に従って、サーキューレータ202から入力される妨害信号を含む応答信号を、所定の減衰量を与えて、あるいは、何ら減衰せずに可変移相器300に対して出力する。
可変減衰器40が応答信号に与える減衰量は、上述のように、妨害信号の強度に応じて、識別対象物16から円偏波アンテナ200に返る妨害信号がIDデータの検出に与える悪影響が最小になり、有意なIDデータが検出されるように調整される。
【0064】
可変減衰器40が応答信号に減衰を与えるか否か、可変移相器300が応答信号を移相するか否かで、移相・減衰には4つの組み合わせ(移相なし・減衰あり、移相なし・減衰あり、移相あり・減衰あり、移相あり・減衰なし)がある。
制御回路280は、これらの組み合わせのいずれかを応答信号に与えるように可変減衰器40および可変移相器300を制御して、応答信号を適応的に移相・減衰させ、常に有意なIDデータの検出を可能とする。
【0065】
[IDリーダ4の動作]
以下、IDリーダ3を用いた非接触IDタグ読み取りシステム1の全体動作を説明する。
送信部22および方向性結合器204は、第1および第2のIDリーダ2,3においてと同様に、問い合わせ信号を発生し、円偏波アンテナ200を介してIDタグ14に対して送信し、また、検波器260に対してバイアス信号を供給する。
識別対象物16(図12)に付されたIDタグ14は、IDリーダ3からの問い合わせ信号に対して、上述したように、妨害信号を含む応答信号を返す。
【0066】
IDタグ14からIDリーダ4に返された応答信号は、可変減衰器40および可変移相器300を介して信号発生部26に入力され、信号発生部26およびIDデータ検出回路246によりIDデータが検出される。
制御回路280は、IDデータ検出回路246が有意なIDデータを検出したか否かに応じて、図14を参照して以下に説明するように可変移相器300を制御する。
【0067】
図14は、第3のIDリーダ4(図12,図13)における制御回路280の制御処理(S12)を示すフローチャートである。
なお、図14に示した第3のIDリーダ4の処理の内、第2のIDリーダ3の処理(図10)と同じものには、同一の符号が付してある。
つまり、図10に示すように、ステップ100(S100)において、上述のように、復調部30(図13)がIDデータを検出し、検出したIDデータを制御回路280に対して出力する。
【0068】
ステップ102(S102)において、制御回路280は、有意なIDデータが検出されたか否かを判断する。
有意なIDデータが検出された場合には、制御回路280はS110の処理に進んで、検出したIDデータをコンピュータ10に対して出力し、これ以外の場合にはS120の処理に進む。
【0069】
ステップ120(S120)において、制御回路280は、上述した可変減衰器40による減衰と、可変移相器300による移相との4つの組み合わせの全てが試されたか否かを判断する。
応答信号に対して、全ての組み合わせで減衰・移相が行われた場合には、制御回路280はS108の処理に進み、これ以外の場合にはS122の処理に進む。
【0070】
ステップ122(S122)において、制御回路280は、可変減衰器40および可変移相器300を制御して、上述した移相・減衰の4つの組み合わせの内、S12の処理においてまだ試されていないいずれかにより、受信された応答信号を移相・減衰させ、S100の処理に戻る。
【0071】
ステップ108(S108)において、制御回路280は、有意なIDデータが検出できなかったと判断し、その旨をコンピュータ10に通知する。
【0072】
[変形例]
例えば、識別対象物16の形状、および、識別対象物16(IDタグ14)〜非接触IDタグ読み取りシステム5の円偏波アンテナ200の間の距離dが固定的であるような場合には、円偏波アンテナ200に、常に同じ強度の妨害信号が入力される。
このような場合には、第3のIDリーダ4において、妨害信号および応答信号の強度に対して最適な減衰量を与える固定減衰器を、可変減衰器40の代わりに用いて、常に一定量の減衰を応答信号に与えることにより、常に有意なIDデータを検出することができる。
【0073】
また、識別対象物16(IDタグ14)〜非接触IDタグ読み取りシステム5の円偏波アンテナ200の間の距離dが固定的であるようなときには、距離dを適切に選ぶことにより、常に応答信号に対する移相なしの状態で、あるいは、常に応答信号を移相した状態で、有意なIDデータを検出することができる。
応答信号に対して、常に一定量の移相を行う場合には、第3のIDリーダ4において、可変移相器300に対する制御回路280の制御は不要である。
また、応答信号に対して移相を行なわない場合には、第3のIDリーダ4において、可変移相器300を省略することが可能である。
【0074】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかるデータ検出システムおよびデータ検出装置によれば、非接触のICカード・無線タグが送信する微弱な無線信号から、確実にデータを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる非接触IDタグ読み取りシステムの構成を示す図である。
【図2】図1に示したIDタグの構成を示す図である。
【図3】図1に示したIDリーダにおける信号波形を示す図であって、(A)は問い合わせ信号を示し、(B)は検波波形を示し、(C)はSW−ON/OFF用クロック信号の波形を示し、(D)はアナログスイッチ(図4)によりスイッチングされ、C11,C12により平滑化された信号の波形を示し、(E)はLPFによりフィルタリングされた信号の波形を示し、(F)は絶対値回路の出力信号の波形を示す。
【図4】第1のIDリーダ(図1)の構成を示す図である。
【図5】移相器の動作を模式的に示す図である。
【図6】図4に示した信号発生部の検波器の構成を示す図である。
【図7】図4,図6に示した検波器の検波特性を示す図である。
【図8】第2のIDリーダの構成を示す図である。
【図9】図8に示した可変移相器の構成を示す図である。
【図10】第2のIDリーダ(図8)における制御回路の制御処理(S10)を示すフローチャートである。
【図11】本発明にかかる第3のIDリーダが発明されるに至った背景を説明する図である。
【図12】本発明にかかる第2の非接触IDタグ読み取りシステムの構成を示す図である。
【図13】図12に示した第3のIDリーダの構成を示す図である。
【図14】第3のIDリーダ(図12,図13)における制御回路の制御処理(S12)を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1,5・・・非接触IDタグ読み取りシステム
10・・・コンピュータ
2,3,4・・・IDリーダ
200・・・円偏波アンテナ
202・・・サーキューレータ
204・・・方向性結合器
22・・・送信部
220・・・発信器
222・・・変調器
224・・・問い合わせ信号発生器
226・・・送信アンプ
24,30・・・復調部
240・・・分配器
242・・・移相器
244・・・加算器
246・・・IDデータ検出回路
248・・・絶対値回路
300・・・可変移相器
26・・・信号発生部
260・・・検波器
262・・・アナログスイッチ
264・・・ローパスフィルタ
266・・・受信アンプ2
28・・・制御部
280・・・制御回路
282・・・SW−ON/OFF用クロック発生器
40・・・可変減衰器
12・・・識別対象物
14・・・IDタグ
140・・・アンテナ
142・・・電源回路
144・・・リミッタ
146・・・クロック再生回路
148・・・ID発生回路
150・・・変調回路
Claims (3)
- 無線送信される問い合わせ信号を受信し、所定のデータを含み、前記受信した問い合わせ信号に同期する応答信号を無線送信する識別対象物に付された応答信号送信装置と、データ検出装置とを有するデータ検出システムであって、
前記データ検出装置は、前記問い合わせ信号を無線送信する問い合わせ信号送信手段と、
前記識別対象物から反射した問い合わせ信号と前記応答信号とを受信し、前記識別対象物から反射された問い合わせ信号と前記受信した応答信号を減衰させる受信・可変減衰手段と、
前記検出された所定のデータが有意であるか否かに応じて、前記識別対象物から反射された問い合わせ信号と応答信号に対する減衰量を制御する減衰量制御手段と、
前記無線送信される問い合わせ信号に同期する検波用信号を用いて、前記減衰された応答信号を検波して検波信号とする検波手段と、
前記検波信号から、前記所定のデータを検出するデータ検出手段と
を有するデータ検出システム。 - 無線送信される問い合わせ信号を受信し、識別対象物に付された応答信号送信装置から返され、所定のデータを含み、前記受信した問い合わせ信号に同期する応答信号から、前記所定のデータを検出するデータ検出装置であって、
前記問い合わせ信号を無線送信する問い合わせ信号送信手段と、
前記識別対象物から反射された問い合わせ信号と前記応答信号とを受信し、前記識別対象物から反射された問い合わせ信号と前記受信した応答信号を減衰させる受信・可変減衰手段と、
前記検出された所定のデータが有意であるか否かに応じて、前記識別対象物から反射された問い合わせ信号と応答信号に対する減衰量を制御する減衰量制御手段と、
前記無線送信される問い合わせ信号に同期する検波用信号を用いて、前記減衰された応答信号を検波して検波信号とする検波手段と、
前記検波信号から、前記所定のデータを検出するデータ検出手段と
を有するデータ検出装置。 - 前記検出された所定のデータが有意であるか否かに応じて、前記識別対象物から反射された問い合わせ信号と、前記応答信号または検波用信号とを移相させる移相手段を
さらに有する請求項2に記載のデータ検出装置。
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