JP4116397B2 - 可変圧縮比機構を有する内燃機関 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可変圧縮比機構を有する内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を有する内燃機関が知られている(例えば特許文献1,2)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−54873号公報
【特許文献2】
実開昭62−133939号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高圧縮比と低圧縮比では、燃焼室内における燃焼挙動が多少異なり、これに伴って問題が生じる可能性がある。例えば、低圧縮比では、十分なスキッシュが得られない場合がある。また、高圧縮比では、ピストンの上死点における燃焼室の面積/容積比(S/V比)が大きくなり、燃焼ガスが壁面によってより冷却される結果、火炎伝播が阻害されて燃焼が悪化する場合がある。しかし、従来は、このような圧縮比の違いによる燃焼上の問題に対処する工夫が十分になされていなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、圧縮比の違いによる燃焼上の問題に対処する技術を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の内燃機関は、
燃焼室を構成するシリンダおよびピストンと、
前記燃焼室内に設けられた少なくとも1つの点火プラグと、
前記点火プラグの点火状態を制御するための点火制御部と、
前記燃焼室の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、
を備え、
前記点火制御部は、圧縮比を示す指標値が所定の範囲内の値に設定されている場合と、前記指標値が前記所定の範囲外の値に設定されている場合とにおいて、前記点火プラグの点火個数と点火頻度とのうちの少なくとも一方を変更することによって、圧縮比の変更による燃焼の悪化を緩和する。
【0007】
この構成によれば、圧縮比の変更によって燃焼が悪化する可能性があるときに、点火プラグの点火個数と点火頻度とのうちの少なくとも一部を変更することによってそれを緩和するので、圧縮比の違いによる燃焼上の問題に適切に対処することができる。
【0008】
前記点火制御部は、圧縮比が第1の判定値よりも大きいとき、および、圧縮比が前記第1の判定値よりも小さい第2の判定値よりも小さいときに、前記点火プラグの点火個数と点火頻度とのうちの少なくとも一方を増加させるようにしてもよい。
【0009】
こうすれば、圧縮比が過度に大きいとき、および、圧縮比が過度に小さいときに、それぞれ燃焼の悪化を緩和できる。
【0010】
前記点火制御部は、前記第1と第2の判定値を、前記燃焼室への吸気温度と、前記燃焼室の冷却水温度と、前記内燃機関の要求負荷と、前記内燃機関の回転数と、に基づいて調整するようにしてもよい。
【0011】
こうすれば、2つの判定値を各種のパラメータに応じて適切な値に設定することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、内燃機関や、内燃機関の制御方法、その制御方法を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の態様で実現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
A.第1実施例:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例としての内燃機関10の構成を示す概念図である。この内燃機関10は、シリンダ20と、ピストン21とで構成される燃焼室を有している。シリンダヘッド22には、2つの点火プラグ51,52と、吸気弁41と、排気弁42とが設けられている(右下のA−A図参照)。
【0014】
ピストン21は、コンロッド23に連結されている。このコンロッド23は、第1と第2のコンロッド部材231,233が接続ピン232で連結された構成を有しており、その連結部において屈曲自在である。第1のコンロッド部材231の上端はピストンピン25によってピストン21に連結されており、第2のコンロッド部材233の下端はクランク11に連結されている。第1のコンロッド部材231の下端は、さらに、接続ピン25によってコントロールロッド26に接続されている。コントロールロッド26の他端は、回動可能なコントロール円板28の周縁部に設けられたコントロールシャフト27に連結されている。このコントロールシャフト27は、コントロール円板28の中心軸29から偏心した位置において、中心軸29と平行に設置されている。従って、コントロール円板28を中心軸29回りに回転させると、コントロールシャフト27は中心軸29回りを公転する。コントロール円板28には、円板28の回転位置を検出するための回転位置センサ33が設けられている。
【0015】
ECU(Electronic Control Unit)30内に設けられた可変圧縮比制御回路31は、駆動部34を用いて、コントロールシャフト27の位置を略3時の位置から略6時の位置の区間で位置決めすることによって、コンロッド23の屈曲度を調整可能である。コンロッド23の屈曲度が変化すると、シリンダ20内におけるピストン21の上死点と下死点の位置も変化する。従って、コンロッド23の屈曲度の調整によって、燃焼室の圧縮比を変更することが可能である。この説明から理解できるように、コンロッド23と、コントロールロッド26と、コントロール円板28と、可変圧縮比制御回路31と、駆動部34とは、全体として可変圧縮比機構を構成している。
【0016】
この可変圧縮比機構は、本出願人によって開示された特開2000−54873号公報に開示されたものと同じである。但し、可変圧縮比機構としては、これ以外の任意の機構を採用することが可能である。
【0017】
ECU30は、さらに、2つの点火プラグ51,52の点火状態を制御するための点火制御回路32を含んでいる。ECU30には、エンジン回転数や、スロットル開度(アクセルペダルの踏込量)、吸入空気量、シリンダの冷却水温、などの各種のパラメータを示す信号が、各種のセンサから供給されている。ECU30は、これらの各種のパラメータに応じて、圧縮比と点火状態とを制御している。
【0018】
ところで、可変圧縮比機構によって圧縮比を小さく設定すると、ピストン21の上死点におけるピストン頂部とシリンダヘッド22との間のギャップ(以下、「スキッシュクリアランス」と呼ぶ)が大きくなる。スキッシュクリアランスは、中程度の圧縮比において、いわゆるスキッシュ現象を利用して、燃焼が効率よく行われるように設定されている。しかし、圧縮比が過度に小さな値に設定されるとスキッシュクリアランスが過度に大きくなり、スキッシュの効果があまり期待できなくなる。この結果、燃焼特性が悪化してしまい、例えば、未燃燃料が排気ガスとして燃焼室外に排出されてしまうという問題が生じる可能性がある。そこで、第1実施例では、このような問題を解決するために、以下のような制御を行う。
【0019】
図2は、本発明の第1実施例におけるエンジンの制御手順を示すフローチャートである。ステップS1では、ECU30が、エンジン回転数や、スロットル開度、吸入空気量、シリンダの冷却水温などのエンジンの運転状態を検出する。ステップS2では、可変圧縮比制御回路31が、ステップS1で検出されたエンジンの運転状態に対して適切な圧縮比の目標値を演算する。この演算は、例えば、運転状態を規定する複数のパラメータの値の組合せを入力とし、圧縮比の目標値を出力とするマップやルックアップテーブルを用いて実現することができる。ステップS3では、可変圧縮比制御回路31が、回転位置センサ33の検出信号を監視しながらコントロール円板28を回転させて、圧縮比を目標値に設定する。
【0020】
ステップS4では、点火制御回路32が、現在の圧縮比に対応するスキッシュクリアランスDsqを算出し、ステップS5でこの値Dsqを判定値αと比較する。スキッシュクリアランスDsqの値が判定値αよりも小さいとき(圧縮比が大きいとき)には、いわゆるスキッシュの効果が十分大きいので、2つの点火プラグ51,52のうちの一方のみを点火する(ステップS6)。一方、スキッシュクリアランスDsqの値が判定値αよりも大きいとき(圧縮比が小さいとき)には、スキッシュの効果が小さいので、2つの点火プラグ51,52の両方を点火することによって、着実に着火させる(ステップS7)。なお、本明細書においては、燃焼室に複数の点火プラグが設けられている場合に、燃焼の1サイクル中に1つの点火プラグだけが点火することを「1点点火」と呼ぶ。また、燃焼の1サイクル中に複数の点火プラグが点火することを「多点点火」と呼ぶ。
【0021】
以上のように、第1実施例では、スキッシュクリアランスDsqが判定値αよりも大きいときに多点点火を行うようにしたので、スキッシュ効果が小さいときにも確実に着火させることが可能である。
【0022】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例におけるエンジンの制御手順を示すフローチャートである。第1実施例との差異はステップS5のみであり、他の手順およびエンジンの構成は第1実施例と同じである。
【0023】
第2実施例のステップS5aでは、スキッシュクリアランスDsqの値が第1の判定値αと第2の判定値β(β<α)との間の範囲にあるか否かが判断される。スキッシュクリアランスDsqの値がこの範囲内のときには、通常の燃焼が行われると期待されるので、2つの点火プラグ51,52のうちの一方のみを点火する。一方、スキッシュクリアランスDsqの値が第1の判定値αよりも大きいとき、および、スキッシュクリアランスDsqの値が第2の判定値βよりも小さいときには、2つの点火プラグ51,52の両方を点火することによって、燃焼の悪化を防止する。
【0024】
スキッシュクリアランスDsqが第2の判定値βよりも小さいときに多点点火を行うのは、以下のような理由である。すなわち、スキッシュクリアランスDsqが小さい高圧縮比の運転状態では、ピストンの上死点における燃焼室の全表面積/容積比(S/V比)が大きくなり、燃焼ガスが壁面によって冷却される効果が増大するので、火炎伝播が阻害されて燃焼が悪化する傾向がある。そこで、スキッシュクリアランスDsqが第2の判定値βよりも小さいときに多点点火を行うようにすれば、燃焼の悪化を緩和または防止することが可能である。
【0025】
なお、判定値α,βの適切な値は、吸気温度や、シリンダの冷却水温、エンジンの要求負荷、エンジン回転数などに応じて変化する。従って、判定値α、βの値は、これらのパラメータに応じて変更することが好ましい。
【0026】
このように、第1および第2実施例では、スキッシュクリアランスDsqが所定の範囲内の値に設定されているときに比べて、この範囲外の値に設定されているときの方が、点火する点火プラグの個数が多くなるように点火プラグの点火個数を変更しており、この結果、圧縮比の変更に伴う燃焼の悪化を緩和することが可能である。
【0027】
なお、スキッシュクリアランスDsqは、圧縮比に直接関連付けられている。従って、スキッシュクリアランスDsqの値は、圧縮比を表す指標値と考えることができる。なお、スキッシュクリアランスDsqの代わりに、圧縮比そのものを用いて図2や図3の制御を実行することも可能である。
【0028】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0029】
C1.変形例1:
上記各実施例では、点火プラグの点火個数を変更することによって、圧縮比の変更に伴う燃焼の悪化を緩和していたが、点火個数の代わりに、点火頻度と点火時期を変更することによって、圧縮比の変更による燃焼の悪化を緩和するようにしてもよい。
【0030】
例えば、点火プラグの点火頻度を変える場合には、上述したステップS6において1つの点火プラグが1燃焼サイクル中に1回だけ点火するものとし、ステップS7では1つの点火プラグが1燃焼サイクル中に複数回点火するものとしてもよい(「多重点火」と呼ぶ)。また、ステップS6とステップS7でいずれも多重点火を行い、ステップS6においてステップS7よりも点火回数が多くなるようにしてもよい。このように点火頻度を増加させることによっても、燃焼の悪化を緩和することが可能である。
【0031】
また、点火時期を変更(進角または遅角)することによって、燃焼の悪化を緩和することも可能である。さらに、点火個数の変更と、点火頻度の変更と、点火時期の変更とのうちのいくつかを組み合わせることによって燃焼の悪化を緩和することも可能である。なお、本発明では、点火個数と点火頻度とのうちの少なくとも一方を変更することによって、圧縮比の変更による燃焼の悪化を緩和することができる。
【0032】
C2.変形例2:
上記実施例では、1つの燃焼室に点火プラグが2つ設けられているものとしていたが、本発明は、1つの燃焼室に点火プラグが1つだけ設けられている場合にも適用可能であり、また、1つの燃焼室に点火プラグが3つ以上設けられている場合にも適用可能である。なお、1つの燃焼室に点火プラグが1つだけ設けられている場合には、点火個数の変更は利用できないので、点火頻度の変更によって圧縮比の変更による燃焼の悪化を緩和することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例としての内燃機関10の構成を示す概念図。
【図2】 本発明の第1実施例におけるエンジンの制御手順を示すフローチャート。
【図3】 本発明の第2実施例におけるエンジンの制御手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
10…内燃機関
11…クランク
20…シリンダ
21…ピストン
22…シリンダヘッド
23…コンロッド
24…ピストンピン
25…接続ピン
26…コントロールロッド
27…コントロールシャフト
28…コントロール円板
29…中心軸
30…ECU
31…可変圧縮比制御回路
32…点火制御回路
33…回転位置センサ
34…駆動部
41…吸気弁
42…排気弁
51,52…点火プラグ
231,233…コンロッド部材
232…接続ピン

Claims (1)

  1. 内燃機関であって、
    燃焼室を構成するシリンダおよびピストンと、
    前記燃焼室内に設けられた少なくとも1つの点火プラグと、
    前記点火プラグの点火状態を制御するための点火制御部と、
    前記燃焼室の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、
    を備え、
    前記点火制御部は、圧縮比が第1の判定値よりも大きいとき、および、圧縮比が前記第1の判定値よりも小さい第2の判定値よりも小さいときに、前記点火プラグの点火頻度を増加させることによって、圧縮比の変更による燃焼の悪化を緩和する、内燃機関。
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