JP3799937B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無段変速機の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、変速比を連続的に制御可能な無段変速機を具備する無段変速機の制御装置が知られている。この種の無段変速機の制御装置の例としては、例えば特開平8−156655号公報に記載されたものがある。特開平8−156655号公報に記載された無段変速機の制御装置では、ノッキングが発生した時、無段変速機の変速比を変更し機関回転数を増加させることによりノッキングを解消している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開平8−156655号公報に記載された無段変速機の制御装置では、ノッキングが発生した時の無段変速機の変速比補正量が一律に決定される。従って、変速比補正量が比較的小さい値に設定されている場合には、変速比補正量が不足してしまいノッキングを解消することができない。一方、変速比補正量が比較的大きい値に設定されている場合には、ノッキングは解消されるものの、機関運転状態が燃費最適線から外れすぎてしまい熱効率の低下量が大きくなってしまう。つまり、燃費の悪化度合いが大きくなってしまう。
【0004】
前記問題点に鑑み、本発明は、熱効率の低下を最小限に抑制しつつノッキングを確実に解消又は回避することができる無段変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、変速比を連続的に制御可能な無段変速機と、ノッキング強度を検出するためのノッキング強度検出手段とを具備する無段変速機の制御装置において、内燃機関が高回転運転時であるか否かを判断する手段と、内燃機関が高負荷運転時であるか否かを判断する手段とを更に備え、内燃機関が低回転運転時であるか、又は、低負荷運転時であると判断された時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するのに必要な無段変速機の変速比補正量をノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出し、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比を低速側に変更することによりノッキングを解消するようにし、内燃機関が高回転運転時であり、かつ、高負荷運転時であると判断された時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するために無段変速機の変速比を変更するのを中止すると共に、点火時期を遅角させることによりノッキングを解消するようにした無段変速機の制御装置が提供される。
【0008】
請求項1に記載の無段変速機の制御装置では、内燃機関が低回転運転時であるか、又は、低負荷運転時であると判断された時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するのに必要な無段変速機の変速比補正量がノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出され、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比を低速側に変更することによりノッキングが解消される。つまり、ノッキングを解消するのに必要な変速比補正量がノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出され、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比が低速側に変更される。すなわち、ノッキングを解消するのに必要とされる最小限の変速比補正量だけ変速比が低速側に変更される。その結果、変速比補正量が不足するのに伴ってノッキングを解消できない場合や、変速比補正量が過剰なために熱効率の低下量が大きくなってしまう場合が回避される。つまり、熱効率の低下を最小限に抑制しつつノッキングを確実に解消することができる。
【0010】
また、内燃機関が高回転運転時であり、かつ、高負荷運転時であると判断された時、すなわち、内燃機関の高回転高負荷運転時にノッキングが発生した場合、無段変速機の変速比が変更されるのではなく、点火時期が遅角されることによりノッキングが解消される。内燃機関の高回転高負荷運転時には、ノッキング強度が高くなるとプレイグニッションが起こり、機関本体が損傷を受ける可能性が生じる。一方、無段変速機の変速比を変更するよりも点火時期を遅角させる方が制御応答性が良い。そのため、プレイグニッションが起こる可能性がある内燃機関の高回転高負荷運転時にノッキングが発生した場合には、比較的制御応答性の悪い無段変速機の変速比の変更が行われるのではなく、制御応答性の良い点火時期の遅角が行われることにより、ノッキングが解消される。その結果、内燃機関の高回転高負荷運転時に、ノッキングを迅速に解消し、プレイグニッションが起こってしまうのを阻止することができる。
請求項2に記載の無段変速機の制御装置では、変速比を連続的に制御可能な無段変速機と、ノッキング強度を検出するためのノッキング強度検出手段とを具備する無段変速機の制御装置において、筒内直接噴射式内燃機関の圧縮行程噴射時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するのに必要な無段変速機の変速比補正量をノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出し、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比を低速側に変更することによりノッキングを解消するようにし、筒内直接噴射式内燃機関の吸気行程噴射時にノッキングが発生した場合、無段変速機の変速比の変更から点火時期の変更に切り換えられることによりノッキングを解消するようにした無段変速機の制御装置が提供される。
請求項3に記載の無段変速機の制御装置では、ノッキングが発生してノッキングを解消するのに必要な無段変速機の前記変速比補正量が算出される場合には、ノッキングを回避するのに必要な点火時期遅角補正量をノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出し、無段変速機の前記変速比補正量は、算出された点火時期遅角補正量が大きいほどに大きくなるように算出されるようにした請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は本発明の無段変速機の制御装置の第一の実施形態の概略構成図である。図1において、1は変速比を連続的に制御可能な無段変速機、2は内燃機関、3はノッキングの発生に伴う振動を検出するためのノックセンサである。4はノッキングが発生した時にノッキングを解消するために点火時期を遅角させるノックコントロールシステム(KCS)、5は機関回転数センサ、6は負荷センサ、7は車速センサ、8はECU(電子制御装置)である。
【0013】
図2は本実施形態の無段変速機の制御方法を示したフローチャートである。図2に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ100において、機関回転数センサ5により検出された機関回転数が読み込まれる。次いでステップ101では、負荷センサ6により検出された負荷が読み込まれる。次いでステップ102では、車速センサ7により検出された車速が読み込まれる。次いでステップ103では、車両が図3に示す最適燃費線に沿った走行を行っているか否かが判断される。YESのときにはステップ104に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。図3は機関回転数とトルクと最適燃費線と等出力線との関係を示した図である。
【0014】
ステップ104では、ノックコントロールシステム4によりノッキングを解消するための制御が行われているか否かが判断される。YESのときにはステップ105に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。ステップ105では、不図示のステップにより読み込まれたノックセンサ3の出力値に基づきノッキングが発生しているか否かが判断される。YESのときにはステップ106に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。ステップ106では、ノックコントロールシステムによりノッキング強度に基づき点火時期遅角補正量が算出される。図4はノッキング強度と点火時期遅角補正量と変速比補正量との関係を示した図である。詳細には、図4(a)はノッキング強度と点火時期遅角補正量との関係を示した図であり、図4(b)は点火時期遅角補正量と変速比補正量との関係を示した図である。ステップ106において算出される点火時期遅角補正量は、図4(a)に示すようにノッキング強度が大きくなるに従って大きくなる。
【0015】
次いでステップ107では、ノックコントロールシステムにより算出された点火時期遅角補正量に基づき変速比補正量が算出される。ステップ107において算出される変速比補正量は、図4(b)に示すように点火時期遅角補正量が大きくなるに従って大きくなる。次いでステップ108では、ノッキングを解消するために、ステップ107において算出された変速比補正量だけ変速比が変更される。つまり、ノッキングを解消するために、ノックコントロールシステムにより点火時期が遅角されるのではなく、本実施形態の無段変速機の制御装置により変速比が変更される。詳細には、無段変速機1の変速比が低速側、つまり、高回転側に変更されることにより、ノッキングが解消される。その場合、変速比の変更に伴うトルク変動を回避するために、図3に示すように無段変速機1の変速比は等出力線(二点鎖線)に沿って変更される(A1→A2)。また、ノッキングが解消された後に再びノッキングが発生するのを回避するために、無段変速機1の変速比は、A1からA2に変更された後、最適燃費線(実線)ではなくノッキング解消後変速線(点線)に沿って変更される。
【0016】
図5は本実施形態の効果を示した図である。詳細には、図5(a)は点火時期と熱効率とノッキング発生領域との関係を示した図であり、図5(b)は無段変速機の変速比と熱効率とノッキング発生領域との関係を示した図である。ノッキングを解消するために、本実施形態の場合のように無段変速機の変速比が変更されるのではなく、点火時期が最適燃費線上(A1’)からノッキング発生領域外(A2’)まで遅角される場合、図5(a)に示すように熱効率の低下量ΔTE’は比較的大きくなる。一方、ノッキングを解消するために無段変速機の変速比が最適燃費線上(A1)からノッキング発生領域外(A2)まで低速側(高回転側)に変速される場合、図5(b)に示すように熱効率の低下量ΔTEは、点火時期が遅角される場合よりも小さくなる。
【0017】
本実施形態によれば、ステップ105においてノッキングが発生したと判断されたとき、ステップ106においてノッキングを解消するのに必要な点火時期遅角補正量が算出され、次いでステップ107においてその点火時期遅角補正量に応じて無段変速機の変速比補正量が算出され、次いでステップ108においてその変速比補正量だけ無段変速機の変速比が変更されることにより、ノッキングが解消される。つまり、ノッキングを解消するのに必要な変速比補正量が、ノッキングを解消するのに必要な点火時期補正量に応じて算出され(図4(b)参照)、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比が変更される。すなわち、ノッキングを解消するのに必要とされる最小限の変速比補正量だけ変速比が変更される(図5(b)参照)。その結果、変速比補正量が不足するのに伴ってノッキングを解消できない場合や、変速比補正量が過剰なために熱効率の低下量が大きくなってしまう場合が回避される。つまり、熱効率の低下を最小限に抑制しつつノッキングを確実に解消することができる。
【0018】
以下、本発明の無段変速機の制御装置の第二の実施形態について説明する。本実施形態の構成は、図1に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。図6は本実施形態の無段変速機の制御方法を示したフローチャートである。図6に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ100において、機関回転数センサ5により検出された機関回転数が読み込まれる。次いでステップ101では、負荷センサ6により検出された負荷が読み込まれる。次いでステップ102では、車速センサ7により検出された車速が読み込まれる。次いでステップ103では、車両が図7に示す最適燃費線に沿った走行を行っているか否かが判断される。YESのときにはステップ104に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。図7は機関回転数とトルクと最適燃費線と等出力線とノッキング発生予測領域との関係を示した図である。
【0019】
ステップ104では、ノックコントロールシステム4によりノッキングを回避するための制御が行われているか否かが判断される。YESのときにはステップ200に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。ステップ200では、無段変速機1の変速比が図7に示す最適燃費線(実線)に沿って変更されている結果、ノッキング発生予測領域(ハッチング部分)に侵入しそうになっているか否か、つまり、ノッキングの発生が予測されるか否かが判断される。YESのときにはステップ201に進み、NOのときにはこのルーチンを終了する。ステップ201では、ノックコントロールシステムにより、図7に示すノッキング回避線(点線)に沿った運転を行うための点火時期遅角補正量が算出される。
【0020】
次いでステップ202では、ノックコントロールシステムにより算出された点火時期遅角補正量に基づき変速比補正量が算出される。図8は点火時期遅角補正量と変速比補正量との関係を示した図である。ステップ202において算出される変速比補正量は、図8に示すように点火時期遅角補正量が大きくなるに従って大きくなる。次いでステップ203では、ノッキングを回避するために、ステップ202において算出された変速比補正量だけ変速比が変更される。つまり、ノッキングを回避するために、ノックコントロールシステムにより点火時期が遅角されるのではなく、本実施形態の無段変速機の制御装置により変速比が変更される。詳細には、無段変速機1の変速比が低速側、つまり、高回転側に変更されることにより、ノッキングが回避される。その場合、ノッキングが回避された後に再びノッキングが発生しないようにするために、無段変速機1の変速比は、図7に示すように最適燃費線(実線)ではなくノッキング回避線(点線)に沿って変更される。
【0021】
図9は本実施形態の効果を示した図である。詳細には、図9(a)は点火時期と熱効率とノッキング発生予測領域との関係を示した図であり、図9(b)は無段変速機の変速比と熱効率とノッキング発生予測領域との関係を示した図である。ノッキングを回避するために、本実施形態の場合のように無段変速機の変速比が変更されるのではなく、点火時期が最適燃費線上(B1’)からノッキング発生予測領域外(B2’)まで遅角される場合、図9(a)に示すように熱効率の低下量ΔTE’は比較的大きくなる。一方、ノッキングを回避するために無段変速機の変速比が最適燃費線上(B1)からノッキング発生予測領域外(B2)まで低速側(高回転側)に変速される場合、図9(b)に示すように熱効率の低下量ΔTEは、点火時期が遅角される場合よりも小さくなる。
【0022】
本実施形態によれば、ステップ200においてノッキングの発生が予測されると判断されるとき、ステップ201においてノッキングを回避するのに必要な点火時期遅角補正量が算出され、次いでステップ202においてその点火時期遅角補正量に応じて無段変速機の変速比補正量が算出され、次いでステップ203ではその変速比補正量だけ無段変速機の変速比が変更されることにより、ノッキングが回避される。つまり、ノッキングを回避するのに必要な変速比補正量が、ノッキングを回避するのに必要な点火時期補正量に応じて算出され(図8参照)、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比が変更される。すなわち、ノッキングを回避するのに必要とされる最小限の変速比補正量だけ変速比が変更される(図9(b)参照)。その結果、変速比補正量が不足するのに伴ってノッキングを回避できない場合や、変速比補正量が過剰なために熱効率の低下量が大きくなってしまう場合が回避される。つまり、熱効率の低下を最小限に抑制しつつノッキングを確実に回避することができる。
【0023】
以下、本発明の無段変速機の制御装置の第三の実施形態について説明する。本実施形態の構成は、図1に示した第一の実施形態の構成とほぼ同様である。図10は本実施形態の無段変速機の制御方法を示したフローチャートである。図10に示すように、このルーチンが開始されると、まずステップ100において、機関回転数センサ5により検出された機関回転数が読み込まれる。次いでステップ101では、負荷センサ6により検出された負荷が読み込まれる。次いでステップ102では、車速センサ7により検出された車速が読み込まれる。次いでステップ300ではノックセンサ3により検出されたノッキング強度が読み込まれる。次いでステップ105では、読み込まれたノッキング強度に基づきノッキングが発生しているか否かが判断される。YESのときにはステップ301に進み、NOのときにはステップ103に進む。
【0024】
ステップ301では、機関回転数NEが閾値KNE以上であるか否かが判断される。YESのときにはステップ302に進み、NOのときにはステップ303に進む。ステップ302では負荷Qが閾値KQ以上であるか否かが判断される。NOのときにはステップ303に進み、YESのときにはステップ305に進む。ステップ303では、ステップ300において読み込まれたノッキング強度に基づき変速比補正量が算出される。図11はノッキング強度と変速比補正量と点火時期遅角補正量との関係を示した図である。詳細には、図11(a)はノッキング強度と変速比補正量との関係を示した図であり、図11(b)はノッキング強度と点火時期遅角補正量との関係を示した図である。ステップ303において算出される変速比補正量は、図11(a)に示すようにノッキング強度が大きくなるに従って大きくなる。次いでステップ304では、ノッキングを解消するために、ステップ303において算出された変速比補正量だけ変速比が変更される。つまり、ノッキングを解消するために、変速比が一律に変更されるのではなく、本実施形態の無段変速機の制御装置により変速比がノッキング強度に応じて変更される。詳細には、無段変速機1の変速比が低速側、つまり、高回転側に変更されることにより、ノッキングが解消される。その場合、変速比の変更に伴うトルク変動を回避するために、図3に示した第一の実施形態と同様に無段変速機1の変速比は等出力線に沿って変更される。
【0025】
ステップ305では、ステップ300において読み込まれたノッキング強度に基づき点火時期遅角補正量が算出される。ステップ305において算出される点火時期遅角補正量は、図11(b)に示すようにノッキング強度が大きくなるに従って大きくなる。次いでステップ306では、ノッキングを迅速に解消するために、ステップ305において算出された点火時期遅角補正量だけ点火時期が遅角される。つまり、ノッキングを迅速に解消するために、無段変速機の変速比が変更されるのではなく、本実施形態の無段変速機の制御装置により点火時期が遅角される。
【0026】
ステップ103では、車両が最適燃費線に沿った走行を行っているか否かが判断される。YESのとき、つまり、ノッキングが発生しておらずかつ車両が最適燃費線に沿って走行しているときには、ノッキングを解消するための制御も最適燃費線に沿った走行に戻すための制御も必要でないため、このルーチンを終了する。一方、NOのとき、つまり、ノッキングは発生していないものの最適燃費線に沿った走行が行われていないときにはステップ307に進む。ステップ307では、最適燃費線に沿った走行に戻すために必要な変速比補正量が算出される。次いでステップ304では、最適燃費線に沿った走行に戻すために、ステップ307において算出された変速比補正量だけ変速比が変更される。
【0027】
本実施形態によれば、ステップ105においてノッキングが発生していると判断されたとき、ステップ303においてノッキングを解消するのに必要な無段変速機の変速比補正量がノッキング強度に応じて算出され、ステップ304においてその変速比補正量だけ無段変速機の変速比が変更されることにより、ノッキングが解消される。つまり、ノッキングを解消するのに必要な変速比補正量がノッキング強度に応じて算出され(図11(a)参照)、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比が変更される。すなわち、第一の実施形態と同様に、ノッキングを解消するのに必要とされる最小限の変速比補正量だけ変速比が変更される。その結果、変速比補正量が不足するのに伴ってノッキングを解消できない場合や、変速比補正量が過剰なために熱効率の低下量が大きくなってしまう場合が回避される。つまり、熱効率の低下を最小限に抑制しつつノッキングを確実に解消することができる。
【0028】
更に本実施形態によれば、ステップ105においてノッキングが発生していると判断されたときであって、ステップ301において内燃機関の高回転運転時であると判断され、かつ、ステップ302において内燃機関の高負荷運転時であると判断されたときに、無段変速機の変速比が変更されるのではなく、ステップ306において点火時期が遅角されることによりノッキングが解消される。内燃機関の高回転高負荷運転時には、ノッキング強度が高くなるとプレイグニッションが起こり、機関本体が損傷を受ける可能性が生じる。一方、無段変速機の変速比を変更するよりも点火時期を遅角させる方が制御応答性が良い。そのため、本実施形態では、プレイグニッションが起こる可能性がある内燃機関の高回転高負荷運転時にノッキングが発生した場合には、比較的制御応答性の悪い無段変速機の変速比の変更が行われるのではなく、制御応答性の良い点火時期の遅角が行われることにより、ノッキングが解消される。その結果、内燃機関の高回転高負荷運転時に、ノッキングを迅速に解消し、プレイグニッションが起こってしまうのを阻止することができる。
【0029】
尚、内燃機関が筒内直接噴射式内燃機関である場合、好適には、成層領域、つまり、圧縮行程噴射においては、失火に対する余裕度が比較的小さく点火時期をあまり変更することができないため、無段変速機の変速比の変更が行われる。一方、均質領域、つまり、吸気行程噴射においては、失火に対する余裕度が比較的大きく点火時期を変更することができるため、無段変速機の変速比の変更から点火時期の変更に切り換えられる。
【0031】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、内燃機関の低回転運転時又は低負荷運転時に、変速比補正量が不足するのに伴ってノッキングを解消できない場合や、変速比補正量が過剰なために熱効率の低下量が大きくなってしまう場合が回避される。つまり、熱効率の低下を最小限に抑制しつつノッキングを確実に解消することができる。
【0032】
また、内燃機関の高回転高負荷運転時に、ノッキングを迅速に解消し、プレイグニッションが起こってしまうのを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無段変速機の制御装置の第一の実施形態の概略構成図である。
【図2】第一の実施形態の無段変速機の制御方法を示したフローチャートである。
【図3】機関回転数とトルクと最適燃費線と等出力線との関係を示した図である。
【図4】ノッキング強度と点火時期遅角補正量と変速比補正量との関係を示した図である。
【図5】第一の実施形態の効果を示した図である。
【図6】第二の実施形態の無段変速機の制御方法を示したフローチャートである。
【図7】機関回転数とトルクと最適燃費線と等出力線とノッキング発生予測領域との関係を示した図である。
【図8】点火時期遅角補正量と変速比補正量との関係を示した図である。
【図9】第二の実施形態の効果を示した図である。
【図10】第三の実施形態の無段変速機の制御方法を示したフローチャートである。
【図11】ノッキング強度と変速比補正量と点火時期遅角補正量との関係を示した図である。
【符号の説明】
1…無段変速機
2…内燃機関
3…ノックセンサ
4…ノックコントロールシステム
8…ECU
Claims (3)
- 変速比を連続的に制御可能な無段変速機と、ノッキング強度を検出するためのノッキング強度検出手段とを具備する無段変速機の制御装置において、内燃機関が高回転運転時であるか否かを判断する手段と、内燃機関が高負荷運転時であるか否かを判断する手段とを更に備え、内燃機関が低回転運転時であるか、又は、低負荷運転時であると判断された時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するのに必要な無段変速機の変速比補正量をノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出し、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比を低速側に変更することによりノッキングを解消するようにし、内燃機関が高回転運転時であり、かつ、高負荷運転時であると判断された時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するために無段変速機の変速比を変更するのを中止すると共に、点火時期を遅角させることによりノッキングを解消するようにした無段変速機の制御装置。
- 変速比を連続的に制御可能な無段変速機と、ノッキング強度を検出するためのノッキング強度検出手段とを具備する無段変速機の制御装置において、筒内直接噴射式内燃機関の圧縮行程噴射時にノッキングが発生した場合、ノッキングを解消するのに必要な無段変速機の変速比補正量をノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出し、算出された変速比補正量だけ無段変速機の変速比を低速側に変更することによりノッキングを解消するようにし、筒内直接噴射式内燃機関の吸気行程噴射時にノッキングが発生した場合、無段変速機の変速比の変更から点火時期の変更に切り換えられることによりノッキングを解消するようにした無段変速機の制御装置。
- ノッキングが発生して無段変速機の前記変速比補正量が算出される場合には、ノッキングを回避するのに必要な点火時期遅角補正量をノッキング強度が大きいほど大きくなるように算出し、無段変速機の前記変速比補正量は、算出された点火時期遅角補正量が大きいほどに大きくなるように算出されるようにした請求項1又は2に記載の無段変速機の制御装置。
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