JP4115783B2 - 回転翼航空機の降着装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転翼航空機の降着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、飛行中の回転翼航空機を地上に安全に降着せしめるための降着装置として、車輪式降着装置やスキッド式降着装置が実用化されている。車輪式降着装置にはオレオ(油圧)緩衝支柱が組み込まれており、通常着陸時における衝撃エネルギを吸収できるようになっている。また、かかる車輪式降着装置にダンパやその他のエネルギ吸収部材を組み込むことによって、非常着陸時における大きな衝撃エネルギを吸収することもできる。
【0003】
一方、スキッド式降着装置は、図3に示すように、回転翼航空機100の機体軸Xに平行に延在する左右1対のスキッドチューブ200と、これらスキッドチューブ200を回転翼航空機100の胴体下部に固定するための支持部材である前後1対のクロスチューブ300と、から構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
かかる従来のスキッド式降着装置のクロスチューブ300は、図4(a)に示すようにその両端部310近傍が下方に曲折した形状を呈するとともに、適度に弾性変形する特性を有している。このため、着陸時にスキッドチューブ200に加えられた衝撃エネルギは、クロスチューブ300が図4(b)に示したように撓んで弾性変形することによってひずみエネルギに変換されて吸収されることとなる。すなわち、従来のスキッド式降着装置においては、クロスチューブ300が着陸時における衝撃エネルギを吸収する機能を果たしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−49097号公報(第1頁、第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記した従来のスキッド式降着装置によると、着陸時に加えられる衝撃エネルギをクロスチューブ300の弾性変形のみによって吸収しているため、衝撃エネルギの吸収量に限界がある。
【0007】
また、図4(a)に示したようなクロスチューブ300の上下方向におけるストローク(垂直ストローク)Svは、図4(b)に示したような左右方向におけるストローク(水平ストローク)Shと比較すると短い。このため、クロスチューブ300が撓んで変形した際に中央部320が地面に接触し、着陸時の衝撃エネルギを十分に吸収することができない場合がある。この結果、通常着陸時における衝撃エネルギを吸収することができても、非常着陸時における大きな衝撃エネルギを吸収することができない場合があった。
【0008】
ここで、非常着陸時における大きな衝撃エネルギを吸収することを目的として、クロスチューブ300の剛性を高めるという手段も考えられる。しかし、かかる手段を採用すると、通常着陸時において回転翼航空機の胴体や搭乗者に作用する反力が大きくなるので好ましくない。
【0009】
本発明の課題は、非常着陸時における大きな衝撃エネルギを効果的に吸収することができ、さらに、通常着陸時に胴体や搭乗者に与える衝撃の増大を抑制することができる回転翼航空機の降着装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、機体軸に略平行に延在する左右1対のスキッドチューブと、前記スキッドチューブを連結するとともに胴体に固定するクロスチューブと、を備える回転翼航空機の降着装置において、前記スキッドチューブの左右への変位速度に比例する抵抗力を前記スキッドチューブに作用させるダンパと、前記スキッドチューブの左右への変位をひずみエネルギに変換する弾性体とが、前記スキッドチューブ間に配置され、前記スキッドチューブの左右への変位により前記弾性体の弾性変形が所定量に達した後に前記スキッドチューブの左右への変位速度が前記ダンパに伝達されることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、スキッドチューブの左右への変位を弾性体によってひずみエネルギに変換することにより、通常着陸時における比較的小さい衝撃エネルギを弾性体によって吸収することができ、スキッドチューブの左右への変位速度に比例する抵抗力を、ダンパによってスキッドチューブに作用させることにより、非常着陸時における比較的大きな衝撃エネルギを吸収することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転翼航空機の降着装置において、前記弾性体が前記ダンパに直列に配置されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、スキッドチューブの左右への変位を弾性体によってひずみエネルギに変換することにより、衝撃エネルギを吸収することができる。また、かかる弾性体をダンパに直列に配置し、弾性体の弾性係数及びダンパの減衰係数を調整することにより、ダンパに先立って弾性体を機能させることができ、比較的小さい衝撃エネルギを弾性体によって効率良く吸収することができる。この結果、通常着陸時における比較的小さい衝撃エネルギを弾性体によって吸収することができるとともに、非常着陸時における比較的大きい衝撃エネルギをダンパによって吸収することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態においては、回転翼航空機のスキッド式降着装置(以下、「スキッド式降着装置」という)1について説明する。図1(a)は、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1の構成を説明するための概念図であり、図1(b)は、(a)に示したスキッド式降着装置1によって着陸時の衝撃エネルギを吸収している状態を示す概念図である。
【0016】
本実施の形態に係るスキッド式降着装置1は、図1に示すように、スキッドチューブ10と、クロスチューブ20と、ダンパ30と、コイルスプリング40と、を備えている。なお、本発明の主要部であるダンパ30及びコイルスプリング40を、図1の斜線領域で示した。
【0017】
スキッドチューブ10は、図示していない回転翼航空機の機体軸に平行に延在するように左右1対設けられた橇状のすべり材であり、離着陸時に回転翼航空機を下方から支持するという機能を果たす。回転翼航空機の着陸時には、クロスチューブ20の弾性変形によってこれらスキッドチューブ10は左右に広げられる。
【0018】
クロスチューブ20は、スキッドチューブ10を、図示していない回転翼航空機の胴体下部に固定するために前後1対設けられた支持部材である。クロスチューブ20は、左右のスキッドチューブ10間に架設されており、その一端部が一方のスキッドチューブ10に、その他端部が他方のスキッドチューブ10に、各々固定されている。クロスチューブ20は適度な弾性を有しており、回転翼航空機の着陸時には、スキッドチューブ10に固定されたクロスチューブ20が弾性変形し、その両端部21が図1(b)に示すように左右に広がって、着陸時の衝撃エネルギを吸収することができる。
【0019】
ダンパ30は、本発明の主要部であって、図1(a)に示すように、クロスチューブ20の両端部21を繋ぐリンク31の一部に設けられている。ダンパ30は、着陸時の衝撃エネルギを受けてスキッドチューブ10が左右に広がる際に、スキッドチューブ10の左右への変位速度に比例する抵抗力をスキッドチューブ10に作用させることにより、衝撃エネルギを吸収するという機能を果たす。なお、リンク31の両端部31aは、クロスチューブ20の両端部21に回動自在に取り付けられている。
【0020】
コイルスプリング40は、図1(a)に示すように、クロスチューブ20の両端部21を繋ぐリンク31の一部に設けられ、ダンパ30に直列に配置されている。コイルスプリング40は、着陸時の衝撃エネルギをひずみエネルギに変換して吸収するという機能を果たす。
【0021】
なお、着陸時の衝撃エネルギは、かかる衝撃エネルギを受けたスキッドチューブ10が左右に広がり、スキッドチューブ10の左右への変位によってコイルスプリング40が圧縮されることによって、ひずみエネルギに変換される(図1(b)参照)。そして、本実施の形態においては、コイルスプリング40の弾性係数及びダンパ30の減衰係数を調整することによって、コイルスプリング40が許容変形量まで圧縮された後に、スキッドチューブ10の左右への変位速度がダンパ30に伝達されるように構成されている。
【0022】
なお、クロスチューブ20の弾性変形によるスキッドチューブ10の左右方向におけるストローク(水平ストローク)Sh(図1(b)参照)は、クロスチューブ20の弾性変形による上下方向におけるストローク(垂直ストローク)Sv(図1(a)参照)と比較すると長いことは前記したとおりである。本発明は、かかる水平ストロークの長さに着目して、着陸時におけるスキッドチューブ10の左右への変位及び変位速度を、着陸時の衝撃エネルギの吸収に積極的に利用したものである。
【0023】
次に、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1の動作を説明する。
【0024】
<通常着陸時における動作>
最初に、回転翼航空機の通常着陸時におけるスキッド式降着装置1の動作について説明する。通常着陸時の衝撃エネルギは、スキッドチューブ10を介してクロスチューブ20に伝達される。かかる衝撃エネルギを受けたクロスチューブ20は弾性変形し、これに伴ってスキッドチューブ10が左右に広げられる。スキッドチューブ10が左右に広げられると、かかるスキッドチューブ10の左右への変位に伴ってコイルスプリング40が圧縮され、衝撃エネルギがひずみエネルギに変換されて吸収される。
【0025】
通常着陸時においてクロスチューブ20に伝達される衝撃エネルギは比較的小さく、スキッドチューブ10の左右への変位は比較的短いため、コイルスプリング40のみによって衝撃エネルギを吸収することができる。この場合、コイルスプリング40は許容変形量まで圧縮されることはなく、スキッドチューブ10の左右への変位速度がダンパ30に伝達されることはない。
【0026】
<非常着陸時における動作>
次いで、回転翼航空機の非常着陸時におけるスキッド式降着装置1の動作について説明する。非常着陸時の衝撃エネルギは、スキッドチューブ10を介してクロスチューブ20に伝達される。かかる衝撃エネルギを受けたクロスチューブ20は弾性変形し、これに伴ってスキッドチューブ10が左右に広げられる。スキッドチューブ10が左右に広げられると、かかるスキッドチューブ10の左右への変位に伴ってコイルスプリング40が圧縮され、衝撃エネルギがひずみエネルギに変換されて吸収される。
【0027】
非常着陸時における機体の降下速度は一般的に大きいため、クロスチューブ20に伝達される衝撃エネルギは比較的大きく、スキッドチューブ10の左右への変位は比較的長くなる。コイルスプリング40のみによっては着陸時の衝撃エネルギを吸収することができない場合には、コイルスプリング40は許容変形量まで圧縮され、スキッドチューブ10の左右への変位速度がダンパ30に伝達される(図1(b)参照)。ダンパ30は、伝達されたスキッドチューブ10の左右への変位速度に比例する抵抗力をスキッドチューブ10に作用させて、大きい衝撃エネルギを吸収する。
【0028】
続いて、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1による非常着陸時の衝撃エネルギ吸収効果について、図2を用いて説明する。
【0029】
図2(a)は、クロスチューブ300の弾性変形のみによって着陸時の衝撃エネルギを吸収する従来のスキッド式降着装置(図3及び図4参照)による非常着陸時の衝撃エネルギ吸収効果を示すグラフである。また、図2(b)は、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1(図1参照)による非常着陸時の衝撃エネルギ吸収効果を示すグラフである。なお、図2(a)、(b)においては、回転翼航空機の降下速度(V)を縦軸にとり、時間(t)を横軸にとっている。
【0030】
従来のスキッド式降着装置によると、非常着陸時の衝撃エネルギは、クロスチューブ300の弾性変形によってひずみエネルギに変換される。しかし、かかるエネルギ変換による胴体の降下速度の減少分ΔV1は、図2(a)に示したように小さいことがわかる。このため、胴体の降下速度の残存分ΔV2に起因する残存衝撃エネルギは依然として大きく、かかる残存衝撃エネルギは胴体構造のつぶれ・破損等によって吸収されることとなる。
【0031】
これに対し、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1によると、非常着陸時の衝撃エネルギは、クロスチューブ20の弾性変形によってひずみエネルギに変換されるとともに、コイルスプリング40及びダンパ30によって効果的に吸収される。図2(b)のαは、コイルスプリング40及びダンパ30によって衝撃エネルギが吸収されたことに起因する胴体の降下速度の減少分を示しており、このαの分だけ、胴体の降下速度の減少分ΔV3は大きくなる(図2(b)参照)。この結果、胴体の降下速度の残存分ΔV4に起因する残存衝撃エネルギは小さくなるため、胴体構造のつぶれ・破損等を緩和することができる。
【0032】
本実施の形態に係るスキッド式降着装置1においては、非常着陸時の衝撃エネルギを受けたスキッドチューブ10が左右に広がる際に、かかるスキッドチューブ10の左右への変位速度に比例する抵抗力を、ダンパ30によってスキッドチューブ10に作用させることにより、比較的大きな衝撃エネルギを吸収することができる。この結果、回転翼航空機の胴体構造のつぶれ・破損等を緩和することができる。
【0033】
また、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1においては、着陸時の衝撃エネルギを受けたスキッドチューブ10が左右に広がる際に、かかるスキッドチューブ10の左右への変位をコイルスプリング40によってひずみエネルギに変換することにより、衝撃エネルギを吸収することができる。
【0034】
また、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1においては、コイルスプリング40をダンパ30に直列に配置し、コイルスプリング40の弾性係数及びダンパ30の減衰係数を調整することにより、ダンパ30に先立ってコイルスプリング40を機能させて、比較的小さい衝撃エネルギをコイルスプリング40によって効率良く吸収することができる。この結果、通常着陸時における比較的小さい衝撃エネルギをコイルスプリング40によって吸収することができるとともに、非常着陸時における比較的大きい衝撃エネルギをダンパ30によって吸収することができる。
【0035】
また、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1においては、クロスチューブ20の両端部21がリンク31によって繋がれており、リンク31にはダンパ30及びコイルスプリング40が設けられている。このため、クロスチューブ20が弾性変形してその両端部21が左右に広がった場合においても、水平ストロークSh及び垂直ストロークSvが所定の長さ以下にはならない。従って、クロスチューブ20の中央部22が地面に接触して破損することがない。
【0036】
また、本実施の形態に係るスキッド式降着装置1は、従来から用いられているスキッドチューブ及びクロスチューブを備えるスキッド式降着装置に、所定の部品を介してダンパ30及びコイルスプリング40を組み込んで改修することにより、容易に製造することができる。
【0037】
なお、以上の実施の形態においては、弾性体としてコイルスプリング40を採用しているが、スキッドチューブ10の左右への変位をひずみエネルギに変換して着陸時の衝撃エネルギを吸収することができるものであればこれに限られるものではない。
【0038】
また、以上の実施の形態に係るスキッド式降着装置1には、ダンパ30及びコイルスプリング40の双方を備えているが、ダンパ30のみを備えるようにしてもよい。この場合にも、ダンパ30の減衰係数を調整することにより、通常着陸時における衝撃の増大を抑制するとともに、非常着陸時における胴体の損傷を防止することができる。
【0039】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、スキッドチューブの左右への変位を弾性体によってひずみエネルギに変換することにより、通常着陸時における比較的小さい衝撃エネルギを弾性体によって吸収することができ、スキッドチューブの左右への変位速度に比例する抵抗力をダンパによってスキッドチューブに作用させることにより、非常着陸時における比較的大きい衝撃エネルギを吸収することができる。
【0040】
請求項2に記載の発明によれば、スキッドチューブの左右への変位を弾性体によってひずみエネルギに変換することにより、着陸時における衝撃エネルギを吸収することができる。また、弾性体をダンパに直列に配置し、弾性体の弾性係数とダンパの減衰係数を調整することにより、通常着陸時における比較的小さい衝撃エネルギを弾性体によって吸収することができるとともに、非常着陸時における比較的大きい衝撃エネルギをダンパによって吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本実施の形態に係るスキッド式降着装置の構成を説明するための概略図であり、(b)は、(a)に示したスキッド式降着装置によって着陸時の衝撃エネルギを吸収している状態を示す概略図である。
【図2】(a)は、従来のスキッド式降着装置による非常着陸時の衝撃エネルギ吸収効果を示すグラフであり、(b)は、本実施の形態に係るスキッド式降着装置による非常着陸時の衝撃エネルギ吸収効果を示すグラフである。
【図3】従来のスキッド式降着装置の構成を説明するための概略図である。
【図4】(a)は、図3に示した従来のスキッド式降着装置のクロスチューブの弾性変形前の状態を示す概略図であり、(b)は、(a)に示したクロスチューブの弾性変形後の状態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 スキッド式降着装置
10 スキッドチューブ
20 クロスチューブ
21 両端部
22 中央部
30 ダンパ
31 リンク
31a 両端部
40 コイルスプリング
100 回転翼航空機
200 スキッドチューブ
300 クロスチューブ
310 両端部
320 中央部

Claims (2)

  1. 機体軸に略平行に延在する左右1対のスキッドチューブと、前記スキッドチューブを連結するとともに胴体に固定するクロスチューブと、を備える回転翼航空機の降着装置において、
    前記スキッドチューブの左右への変位速度に比例する抵抗力を前記スキッドチューブに作用させるダンパと、前記スキッドチューブの左右への変位をひずみエネルギに変換する弾性体とが、前記スキッドチューブ間に配置され
    前記スキッドチューブの左右への変位により前記弾性体の弾性変形が所定量に達した後に前記スキッドチューブの左右への変位速度が前記ダンパに伝達されることを特徴とする回転翼航空機の降着装置。
  2. 前記弾性体が前記ダンパに直列に配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の回転翼航空機の降着装置。
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