[ポリペプチド]
本明細書においては各種アミノ酸残基を次の略号で記述する。
Ala :L−アラニン残基
Arg :L−アルギニン残基
Asn :L−アスパラギン残基
Asp :L−アスパラギン酸残基
Cys :L−システイン残基
Gln :L−グルタミン残基
Glu :L−グルタミン酸残基
Gly :グリシン残基
His :L−ヒスチジン残基
Hyp :L−ヒドロキシプロリン残基
Ile :L−イソロイシン残基
Leu :L−ロイシン残基
Lys :L−リジン残基
Met :L−メチオニン残基
Phe :L−フェニルアラニン残基
Pro :L−プロリン残基
Sar :サルコシン残基
Ser :L−セリン残基
Thr :L−トレオニン残基
Trp :L−トリプトファン残基
Tyr :L−チロシン残基
Val :L−バリン残基
また、本明細書においては、常法に従って、N末端のアミノ酸残基を左側に位置させ、C末端のアミノ酸残基を右側に位置させて、ペプチド鎖のアミノ酸配列を記述する。
本発明の食用組成物は、コラーゲン様の構造を形成する前記特定の合成ポリペプチドで構成されている。このポリペプチドは、少なくとも式Pro-Y-Gly(式中、YはPro又はHypを示す)で表されるアミノ酸配列を有している。前記アミノ酸配列は、3重らせん構造の安定性に寄与するため、前記ポリペプチドは、コラーゲン組織(コラーゲン状の組織)又はコラーゲン様の構造を形成する限り種々のポリペプチドが使用できる。このようなポリペプチドには、前記ポリペプチド(I)と前記ポリペプチド(II)とが含まれる。
前記ポリペプチド(I)において、構成するペプチドユニット(1) [-(OC-(CH2)m-CO)p-(Pro-Y-Gly)n-]は、Pro-Y-Glyの繰返し配列を含むことが必要である。Pro-Y-Glyの繰返し数が、少ないと3重らせん構造の安定性が減少し、繰返し数が多すぎるとペプチドの合成が困難になる。従って、繰返し数nは、1〜20、好ましくは2〜15(例えば、3〜15)、さらに好ましくは5〜15程度である。
前記式(1)において、Yは、Pro又はHypいずれであってもよいが、3重らせん構造の安定性からHypであるのがより好ましい。なお、Hypは、通常、4Hyp(例えば、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン)残基である。
さらに、メチレン鎖(CH2)の繰り返し数を示すmは、ポリペプチドの物理的及び生物学的性質を損なわない範囲であればよいが、通常、1〜18、好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜10(特に2〜6)程度である。pは0又は1である。
前記ペプチドユニット(2)[-(OC-(CH2)m-CO)q-(Z)r-]において、Zは1〜10個のアミノ酸残基で構成された任意の配列のペプチド鎖を表す。Zは、得られるポリペプチドの物理的及び生物学的性質を損なわない限り、どのような配列でもよい。ポリペプチドが有用な物理的及び生物学的性質を発揮するためには、例えば、ペプチド鎖Zは、通常、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、His、Ala、Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ileから選択された1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖(すなわち、これらのアミノ酸から選択されたアミノ酸残基、又はこれらのアミノ酸から選択された2〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖)、特に、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、Arg、Pro、Valから選択された1〜10個のアミノ酸残基からなるペプチド鎖を有している場合が多い。ペプチド鎖Zは、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、Arg-Gly-Asp、Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg、Ile-Lys-Val-Ala-Val、Val-Pro-Gly-Val-Gly、Asp-Gly-Glu-Ala、Gly-Ile-Ala-Gly、His-Ala-Val、Glu-Arg-Leu-Glu、Lys-Asp-Pro-Lys-Arg-Leu、Arg-Ser-Arg-Lysで示される配列を含むのが好ましい。
ペプチド鎖Zの繰り返し数を示すrは、得られるポリペプチドが物理的及び生物学的性質を発揮する範囲であればよい。繰返し数rが多すぎると合成が困難になり、また得られるポリペプチドの物理的性質が変化しやすい。従って、繰返し数rは、通常、1〜20、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5程度である。
メチレン鎖(CH2)の繰り返し数を示すmは、前記式(1)と同様に、1〜18、好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜10(特に2〜6)程度である。qは0又は1である。
前記式(1)及び(2)において、p及びqのうち少なくとも一方が1であるとき、ポリペプチドは、前記式(3)で表されるユニット[-HN-R-NH-]を含んでいる。この前記式(3)で表されるユニットにおいて、Rで表される直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基は、ポリペプチドの物理的及び生物学的性質を損なわない範囲であればよく、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレンなどのC1-18アルキレン基が例示できる。前記アルキレン基Rは、直鎖状のメチレン鎖(CH2)s(sは1〜18の整数を表す)であってもよい。好ましいRは、C2-12アルキレン基(さらに好ましくはC2-10アルキレン基,特にC2-6アルキレン基)である。
前記式(1)で表されるペプチドユニットと前記式(2)で表されるペプチドユニットとの割合(a/b)は、100/0〜30/70(モル比)、好ましくは100/0〜40/60(モル比)、さらに好ましくは100/0〜50/50(モル比)程度である。
さらに、前記式(3)で表されるユニットの割合は、前記式(1)のpの値、前記式(2)のqの値に応じて選択でき、p=1及びq=0であるとき、c=aであり、p=0及びq=1であるとき、c=bである。また、p=1及びq=1であるときc=a+bであり、p=0及びq=0であるときc=0である。
すなわち、前記ポリペプチド(I)には、(a)前記式(1)でp=0であるペプチドユニット[-(Pro-Y-Gly)n-]の繰り返し単位で構成されたポリペプチド、(b)前記式(1)でp=0であるペプチドユニット[-(Pro-Y-Gly)n-]と前記式(2)でq=0であるペプチドユニット[-(Z)r-]とをa:bの割合(モル%)で含む繰り返し単位で構成されたポリペプチド、(c)前記式(1)でp=1であるペプチドユニット[-(OC-(CH2)m-CO)-(Pro-Y-Gly)n-]と前記式(3)で表されるユニット[-HN-R-NH-]とを1:1の割合(モル比)で含む繰り返し単位で構成されたポリペプチド、(d)前記式(1)でp=1であるペプチドユニット[-(OC-(CH2)m-CO)-(Pro-Y-Gly)n-]と前記式(2)でq=1であるペプチドユニット[-(OC-(CH2)m-CO)-(Z)r-]と前記式(3)で表されるユニット[-HN-R-NH-]とをa:b:a+bの割合(モル比)で含む繰り返し単位で構成されたポリペプチドが含まれる。
一方、前記ポリペプチド(II)は、-Pro-Y-Gly-で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(4)を含むことが必要である。-Pro-Y-Gly-で表される配列は、3重らせん構造の安定性に寄与するため、この配列の割合が少ないと3重らせん構造の安定性が減少する。
さらに、このユニット(4)は、3重らせん構造の安定性の点から、ポリペプチド中において、-(Pro-Y-Gly)d-で表される繰返し構造を形成してもよい。この配列の繰返し数dは、例えば、2〜5000、好ましくは2〜4000、さらに好ましくは3〜3000程度である。Yは、ProまたはHypのいずれであってもよいが、前記と同様に、3重らせん構造の安定性からHyp[通常、4Hyp(例えば、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリン)残基]であるのがより好ましい。
また、本発明におけるポリペプチド(II)は、-Pro-V-Gly-W-Ala-Gly-で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニット(5)を含むのが有用である。この配列を含まない場合や少なすぎる場合には、コラゲナーゼによる分解性が低下する。一方、この配列が多すぎると3重らせん構造の安定性が低下する。
VはGln、Asn、Leu、Ile、ValまたはAlaのいずれであってもよいが、Gln、Asn、Leu、Val、Ala、特にGln、Leuがより好ましい。WはIleまたはLeuのいずれでもよいが、Ileがより好ましい。
VとWとの組み合わせは、例えば、VがGln、Asn、Leu、Ile、Val及びAlaから選択された一種(例えば、Gln又はLeu)であり、WがIleであるペプチドや、VがGln、Asn、Leu、Ile、Val及びAlaから選択された一種(例えば、Gln又はLeu)であり、WがLeuであるペプチドなどが挙げられる。
YとVとWとの組み合わせは、YがHyp、VがGln、Asn、Leu、Ile、Val及びAlaから選択された一種(例えば、Gln又はLeu)、WがIle又はLeuであるペプチドや、YがPro、VがGln、Asn、Leu、Ile、Val及びAlaから選択された一種(例えば、Gln又はLeu)、WがIle又はLeuであるペプチドなどが挙げられる。
さらに、得られるポリペプチドの物理的及び生物学的性質を損なわない限り、このポリペプチド(II)は他のアミノ酸残基やペプチド鎖(ユニット)を含んでいてもよい。他のアミノ酸残基又はペプチド鎖としては、前記ペプチドユニット(2)の-(Z)r-で表されるペプチド鎖などが挙げられる。すなわち、このポリペプチドが有用な物理的及び生物学的性質を発揮するためには、例えば、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、His、Ala、Val、Leu、Arg、Pro、Tyr、Ileから選択された1〜10個のアミノ酸残基から構成されているペプチド鎖(すなわち、これらのアミノ酸から選択されたアミノ酸残基、又はこれらのアミノ酸から選択された2〜10個のアミノ酸残基から構成されているペプチド鎖)、特に、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、Arg、Pro、Valから選択された1〜10個のアミノ酸残基から構成されているペプチド鎖を有している場合が多い。具体的には、例えば、Gly、Sar、Ser、Glu、Asp、Lys、Arg-Gly-Asp、Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg、Ile-Lys-Val-Ala-Val、Val-Pro-Gly-Val-Gly、Asp-Gly-Glu-Ala、Gly-Ile-Ala-Gly、His-Ala-Val、Glu-Arg-Leu-Glu、Lys-Asp-Pro-Lys-Arg-Leu、Arg-Ser-Arg-Lysで示されるアミノ酸残基やペプチド鎖を含むのが好ましい。
前記ポリペプチド(II)において、前記ペプチドユニット(4)と前記ペプチドユニット(5)との割合(モル比)は、(4)/(5)=99/1〜30/70、好ましくは98/2〜40/60、さらに好ましくは95/5〜50/50程度である。
前記ペプチドユニット(4)及び前記ペプチドユニット(5)の合計量と、他のペプチドユニットとの割合(モル比)は、前者/後者=100/0〜50/50、好ましくは100/0〜60/40、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。
このようなポリペプチド(I)及び(II)は、環化により6員環を形成することなく、鎖状のポリペプチドを形成しており、溶媒(水、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの親水性溶媒又はそれらの混合溶媒)に可溶である。前記ポリペプチドは、水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、球状蛋白質換算で、例えば、分子量5×103〜500×104、好ましくは分子量1×104〜300×104、好ましくは3×104〜200×104、さらに好ましくは5×104〜100×104程度の範囲にピークを示す。
さらに、これらのポリペプチドは、円二色性スペクトルにおいて、波長220〜230nmに正のコットン効果を示し、波長195〜205nmに負のコットン効果を示す。そのため、ポリペプチドの少なくとも一部(すなわち、一部または全部)が3重らせん構造を形成可能であり、コラーゲン様ポリペプチドを形成する。なお、コットン効果とは、旋光性物質において特定の波長で左右の円偏光に対する吸収係数が異なるために起こる現象をいう。
これらのポリペプチドは、コラーゲン組織(コラーゲン状の組織)を形成可能である。上記3重らせん構造を形成したポリペプチド鎖が自己集合して、数nm〜数十nmの原線維を形成し、さらにこれらの原線維が配列して数μm〜数十μmの繊維構造を形成することができる。これらは、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、あるいは原子間力顕微鏡により観察することができる。
前記ポリペプチド(I)(II)は、生分解性、特に生体内分解性を有していてもよい。このような生分解性ポリペプチドはコラゲナーゼ分解性を有している。特に、前記ポリペプチド(II)は高い生分解性を示す。
これらのポリペプチドは、生理学的又は薬理学的に許容される塩であってもよく、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸など)、有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸など)、金属(ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなど)、有機塩基(トリメチルアミン、トリエチルアミン、t−ブチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなど)との塩であってもよい。これらの塩形成化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩は、通常の塩形成反応によって得ることができる。
これらのポリペプチド(I)(II)は、アミノ酸やペプチドセグメントを縮合反応に供する慣用の方法により得ることができ、最終的に前記ユニットがポリペプチド中に含まれている限り特に制限されず、例えば、アミノ酸を縮合反応する方法や、ペプチドセグメントとアミノ酸を縮合する方法により得てもよいが、予め、前記アミノ酸配列を有するペプチド又はその誘導体などのペプチド成分を調製し、このペプチド成分を縮合する方法により得るのが好ましい。
予め調製したペプチド成分を縮合する方法において、ペプチド成分のペプチド鎖の合成は、通常のペプチド合成方法に従って行うことができる。ペプチドは、例えば、固相合成法または液相合成法によって調製できるが、固相合成法が操作上簡便である〔例えば、日本生化学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学(下)」(昭和62年5月20日 株式会社東京化学同人発行)、第641−694頁参照〕。ペプチド合成には、慣用の方法、例えば、縮合剤を用いるカップリング方法、活性エステル法(p−ニトロフェニルエステル(ONp)、ペンタフルオロフェニルエステル(Opfp)などのフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(ONSu)などのN−ヒドロキシジカルボン酸イミドエステル、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル(Obt)など)、混合酸無水物法、アジド法などが利用できる。好ましい方法では、少なくとも縮合剤(好ましくは後述する縮合剤、特に後述する縮合剤と縮合助剤との組合せ)を用いる場合が多い。
さらに、ペプチドの合成では、アミノ酸又はペプチドフラグメントの種類に応じて、アミノ基、カルボキシル基、他の官能基(グアニジノ基、イミダゾリル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、ω−カルボキシル基など)の保護基による保護と、接触還元や強酸処理(無水フッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸など)による保護基の脱離・除去とが繰り返し行われる。例えば、アミノ基の保護基には、ベンジルオキシカルボニル基(Z)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基(Z(OMe))、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、t−ブトキシカルボニル基(Boc)、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル基(Npys)などが利用でき、カルボキシル基の保護基には、ベンジルオキシ基(OBzl),フェナシルオキシ基(OPac)、t−ブトキシ基(OBu)、メトキシ基(OMe)、エトキシ基(OEt)などが利用できる。なお、ペプチド合成には自動合成装置を利用してもよい。
より具体的には、前記ペプチド鎖の固相合成法による調製は、慣用の方法で行うことができる。固相樹脂(又は担体)としては、反応溶媒に不溶性の重合体、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、例えば、クロロメチル化樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂などが利用できる。
固相合成法では、通常、(i)前記重合体(樹脂)に対して、目的とするペプチドのC末端からN末端の方向に向かって、遊離のα−COOH基を有するとともに官能基(少なくともN末端のα−アミノ基など)が保護基で保護されたアミノ酸又はペプチド断片を結合させる操作と、(ii)結合したアミノ酸又はペプチド断片のうちペプチド結合を形成するα−アミノ基の保護基を除去する操作と、(iii)上記結合操作と除去操作とを順次繰り返すことにより、ペプチド鎖を伸長させて目的ペプチドに対応するペプチド鎖を形成する工程と、(iv)ペプチド鎖を重合体(樹脂)から脱離させ、かつ保護されている官能基から保護基を除去することにより、目的とするペプチドを生成させ、生成したペプチドを精製することにより、ペプチドを製造できる。前記アミノ酸又はペプチド断片を結合させる操作(i)では、前記ペプチド鎖のC末端に対応し、かつ遊離のα−COOH基を有するとともに少なくともN末端が保護基で保護されたアミノ酸(例えば、Fmoc−アミノ酸、Boc−アミノ酸など)が使用される。なお、ペプチド鎖の重合体からの脱離及び保護基の除去は、トリフルオロ酢酸を用いて同時に行うのが副反応を抑制する観点から好ましい。また、生成したペプチドの精製は、逆相液体クロマトグラフィーやゲルパーミエイションクロマトグラフィーなどの分離精製手段を利用して行うことができる。
ポリペプチド(I)は、例えば、少なくとも下記式(1a)で表されるペプチド又はその誘導体(A)を縮合し、ポリペプチドを調製する。
X-(Pro-Y-Gly)n-OH (1a)
(式中、XはH又はHOOC-(CH2)m-CO-(mは前記に同じ)を表し、Y及びnは前記に同じ)。
前記式(1a)で表されるペプチド又はその誘導体(A)は、下記式(2a)で示されるペプチド又はその誘導体(B)と共縮合させて、ポリペプチドを調製してもよい。
X-(Z)r-OH (2a)
(式中、XはH又はHOOC-(CH2)m-CO-(mは前記に同じ)を表し、Z及びrは前記に同じ)。
なお、前記X=HOOC-(CH2)m-CO-に対応する化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC3-20の脂肪族ジカルボン酸又はそれらの酸無水物などが例示できる。これらの化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの化合物も慣用のアミド結合生成反応(例えば、後述する第三級アミンなどを触媒とする反応など)や前記ペプチド合成法に従って反応させることにより、前記(1a)及び(2a)で示される化合物を得ることができる。
ペプチド又はその誘導体(A)とペプチド又その誘導体(B)との使用割合は、例えば、前者(A)/後者(B)=100/0〜30/70(モル%)、好ましくは100/0〜40/60(モル%)、さらに好ましくは100/0〜50/50(モル%)程度である。
さらに、前記式(1a)及び/又は式(2a)においてXがHである場合には必要ではないが、XがHOOC-(CH2)m-CO-(mは前記に同じ)であるとき、前記ペプチド又はその誘導体(A)及び/又はペプチド又はその誘導体(B)は、アミド基を形成するため、下記式(3a)で表される化合物(C)との共縮合反応に供される。
H2N-R-NH2 (3a)
(式中、Rは前記に同じ)。
前記式(3a)で表される化合物としては、前記式(3)に対応するジアミン類、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC1-18アルキレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどのポリアルキレンポリアミン類などが例示できる。これらの化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記ジアミン化合物(C)の使用量は、例えば、前記ペプチド又はその誘導体(A)(B)のうち一方のペプチド又はその誘導体がX=HOOC-(CH2)m-CO-(mは前記に同じ)を有する場合、このような基を有するペプチド又はその誘導体1モルに対して、前記ジアミン化合物(C)の使用量は、実質的に1モル(例えば、0.95〜1.05モル程度)用いる必要がある。
ポリペプチド(II)の調製において、前記アミノ酸配列を有するペプチドを少なくとも含むペプチド成分を反応させる方法には、(a)式(4)及び(5)で表される双方のアミノ酸配列を有するペプチド(すなわち、式(4)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットと、式(5)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドユニットとの双方のユニットを有するペプチド)を少なくとも含むペプチド成分を縮合する方法と、(b)式(4)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドと、式(5)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドとを少なくとも含むペプチド成分を縮合する方法とが含まれる。
前者の方法(a)において、式(1)及び(2)で表される双方のアミノ酸配列を有するペプチドは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、この方法において、ペプチド成分としては、前記ペプチドに加え、目的のポリペプチドに応じて他のペプチドを用いてもよい。他のペプチドとしては、例えば、式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチド、式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドの他、前述の他のアミノ酸残基やペプチド鎖を含むペプチドなどが挙げられる。これらの他のペプチドも、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、この方法において、式(1)又は(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを共縮合することにより、容易にユニット(1)又は(2)の割合を調整することができる。
後者の方法(b)においても、式(1)で表されるアミノ酸配列を有するペプチド、式(2)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドは、それぞれ、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。また、この方法においても、ペプチド成分として、これらのペプチド(1)及び(2)に加え、目的のポリペプチドに応じて他のペプチド、例えば、前述の他のアミノ酸残基やペプチド鎖を含むペプチドなどを用いてもよい。これらの他のペプチドも、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらのペプチド成分の縮合反応は、通常、溶媒中で行われる。溶媒は、上記ペプチド成分を溶解又は懸濁(一部または全部を溶解)可能であればよく、通常、水及び/又は有機溶剤が使用できる。溶媒としては、例えば、水、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホロアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、窒素含有環状化合物(N−メチルピロリドン、ピリジンなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなど)、及びこれらの混合溶媒が例示できる。これらの溶媒のうち、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが繁用される。
これらのペプチド成分の反応は、通常、少なくとも脱水剤(脱水縮合剤)又は縮合剤の存在下で行うことができ、脱水縮合剤と縮合助剤との存在下で反応させると、二量化や環化を抑制しつつ、円滑にポリペプチドを生成できる。
脱水縮合剤は、前記溶媒中で脱水縮合を効率よく行える限り特に制限されず、例えば、カルボジイミド系縮合剤[ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC=WSCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(WSCI・HCl)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)など]、フルオロホスフェート系縮合剤[O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾトリアゾール−1−イル−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロリン化物塩(BOP)など]、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)などが例示できる。これらの脱水縮合剤は単独で又は二種以上組み合わせて混合物として使用できる。好ましい脱水縮合剤は、カルボジイミド系縮合剤[例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩]である。
縮合助剤は、上記縮合剤の反応を促進する限り特に制限されず、例えば、N−ヒドロキシ多価カルボン酸イミド類[例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド(HONSu)、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド(HONB)などのN−ヒドロキシジカルボン酸イミド類]、N−ヒドロキシトリアゾール類[例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などのN−ヒドロキシベンゾトリアゾール類]、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン(HOObt)などのトリアジン類、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステルなどが例示できる。これらの縮合助剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい縮合助剤は、N−ヒドロキシジカルボン酸イミド類[HONSuなど]、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール又はN−ヒドロキシベンゾトリアジン類[HOBtなど]である。
前記脱水縮合剤と縮合助剤とは適当に組み合わせて使用できる。前記脱水縮合剤と縮合助剤との組合せとしては、例えば、DCC-HONSu(HOBt又はHOObt)、WSCI-HONSu(HOBt又はHOObt)などが例示できる。
脱水縮合剤の使用量は、前記ペプチド成分(前記ジアミン化合物も含む)の総量1モルに対して、通常、水を含まない非水系溶媒を用いる場合0.7〜5モル、好ましくは0.8〜2.5モル、さらに好ましくは0.9〜2.3モル(例えば1〜2モル)程度である。水を含む溶媒(水系溶媒)においては、水による脱水縮合剤の失活があるので、脱水縮合剤の使用量は、前記ペプチド成分の総量1モルに対して、通常、2〜500モル(例えば、2〜50モル)、好ましくは5〜250モル(例えば、5〜25モル)、さらに好ましくは10〜125モル(例えば、10〜20モル)程度である。縮合助剤の使用量は、溶媒の種類に関係なく、前記ペプチド成分の総量1モルに対して、例えば、0.5〜5モル、好ましくは0.7〜2モル、さらに好ましくは0.8〜1.5モル程度である。
前記縮合反応において、反応系のpHを調節してもよく、反応に関与しない塩基を添加してもよい。pHの調節は、通常、無機塩基[水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど]、有機塩基、無機酸[塩酸など]や有機酸を用いて行うことができ、通常、反応溶液が中性付近(pH=6〜8程度)にpH調整される。前記反応に関与しない塩基としては、第三級アミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N−メチルモルホリン、ピリジンなどの複素環式第三級アミン類などが例示できる。このような塩基の使用量は、通常、ペプチドの総モル数の1〜2倍程度の範囲から選択できる。
前記ポリペプチドが3重らせん構造を形成することは、通常、ポリペプチドの溶液について、円二色性スペクトルを測定することにより立証できる。特に、円二色性スペクトルにおいては、3重らせん構造を形成する天然のコラーゲン及びペプチド鎖が、波長220nm〜230nmに正のコットン効果、及び波長195nm〜205nmに負のコットン効果を特徴的に示すことが報告されている(J. M. Biol., Vol.63 pp.85-99, 1972年)。
このようなポリペプチドは、哺乳動物由来のコラーゲンと異なり、病原体や病原性因子[例えば、病原性に転化したタンパク質(例えば、異常型プリオンなど)など]の感染や伝達の危険性がない。そのため、前記ポリペプチドは、安全性が高い。しかも、高い安定性、生分解性及び生体への吸収性を有しており、食用組成物(食品の他、家畜類、ペット類、魚類などの飼料など)の成分として有用である。
[食用組成物]
本発明の食用組成物は、少なくとも前記ポリペプチドを含んでいればよく、粉末状基剤を含む粉末状組成物、固形又は半固形状基剤を含む固形又は半固形組成物、液状基剤を含む液状組成物、あるいはこれらの混合物などのいずれであってもよい。なお、前記ポリペプチドは、ゼラチンなどの熱処理物、ポリペプチド又はゼラチンの分解物(コラーゲンペプチドなど)などの処理物の形態で用いてもよい。
食用組成物は、通常、基剤(又は担体)と、有効成分と、添加剤(食品添加物、調味料など)とを含んでいる。前記ポリペプチドは、これらの成分のうち少なくとも1つの成分として含有されていればよい。
ポリペプチドの含有量は、組成物の種類や形態などに応じて広い範囲、例えば、0.001〜99重量%程度の範囲から選択できる。ポリペプチドを基剤として用いる場合、ポリペプチドの割合は、食用組成物全体に対して、例えば10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%程度であってもよい。添加剤として用いる場合、前記割合は0.001〜40重量%、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜20重量%程度であってもよい。また、有効成分として用いる場合、前記割合は、例えば0.001〜90重量%、好ましくは0.01〜80重量%、さらに好ましくは0.1〜70重量%程度であってもよい。
ポリペプチドは、他の基剤と組み合わせてもよい。基剤のうち粉末状基剤としては、糖類(グルコース、ラクトース、乳糖、白糖、デンプン、コーンスターチなどの単糖類又は多糖類;ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどの糖アルコール;デキストリンなど)、アミノ酸類(セリン、グリシン、スレオニン、アラニンなど)、タンパク質(大豆蛋白などのタンパク質類など)、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
固形又は半固形基剤としては、動植物由来の固形又は半固形油性基剤(カカオ脂、マーガリン、ショートニング、バター、ヘット、ラードなど)、脂肪酸エステル(2−エチルヘキサン酸セチルなどの飽和又は不飽和脂肪酸アルキルエステル;リンゴ酸イソステアリルなどの飽和又は不飽和オキシ酸アルキルエステル;グリセリルモノステアレート、エチレングリコールジステアリン酸エステルなどの飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステルなど)、高級アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの飽和脂肪族アルコールなど)、高級脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸など)、ゲル基剤(粘液質など)などが挙げられる。前記粘液質としては、動植物系粘液質(クインシードガム、トラガントガム、キサンタンガムなどのガム類;ペクチン、デンプンなどの糖類;アルギン酸ナトリウム、プロピレングリコールアルギネートなどのアルギン酸類;ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチンヘパリンなどの多糖類;大豆蛋白、ローヤルゼリーなどのタンパク質類など)、セルロース又はその誘導体(セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、基礎剤(アセチルリシノール酸メチル、酢酸ビニル樹脂などのチューインガム基礎剤など)などが挙げられる。
液状基剤としては、大豆油、なたね油、綿実油、サフラワー油、ピーナッツオイル、コーン油、ごま油、グレープシードオイル、オリーブ油、やし油などの油性基剤;水性基剤、例えば、水、エタノール;乳酸、酢酸の低級カルボン酸類などが挙げられる。
これらの基剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。基剤の割合は、食用組成物全体に対して、10〜99.999重量%、好ましくは10〜99重量%、さらに好ましくは20〜95重量%程度であってもよい。また、ポリペプチドの割合は、基剤100重量部に対して、0.001〜500重量部、好ましくは0.01〜300重量部、さらに好ましくは0.1〜100重量部(例えば、1〜50重量部)程度であってもよい。
ポリペプチドは、他の有効成分と組み合わせてもよい。有効成分としては、栄養成分、例えば、食品又は飼料原料[穀類、豆類、獣鳥類(獣肉、血液、獣皮、獣骨、卵類など)、魚類(魚肉、血液、魚皮、魚骨、魚卵など)、乳類(牛乳など)、貝類(貝殻なども含む)、野菜、牧草、果物、海藻、虫類(さなぎ、組み替えさなぎなども含む)など]の他、酵素(リパーゼ、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、アミラーゼ、リゾチームなど)、ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど)、酵母又は酵母抽出物、微生物(乳酸菌など)、アミノ酸[L−アスパラギン酸又はその塩(L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸カリウム・マグネシウムなど)、アミノエチルスルホン酸(タウリン)など]、ホルモン類、タンパク又はペプチド類(シルクプロテイン、シルクペプチドなど)、糖類(グルコース、ラクトース、フルクトースなどの単糖類又は多糖類;高分子糖類またはそれらの塩(コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなど);糖アルコール類(マンニトール、キシリトール、ソルビトールなど)など)などが挙げられる。有効成分には、薬効成分、例えば、抗ヒスタミン薬成分(クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンおよびそれらの塩(塩酸ジフェンヒドラミンなど)、抗アレルギー薬成分(クロモグリク酸、アンレキサノクス又はそれらの塩(クロモグリク酸ナトリウムなど)など)、健胃薬成分、消化薬成分、抗菌又は殺菌薬成分(スルファメトキサゾールなどのスルホンアミド又はその塩;第4級アンモニウム又はその塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど);オフロキサシンなど)、酸成分(酢酸、黒酢、リンゴ酢など)、生薬成分(ウコン、朝鮮人参などの漢方薬成分など)なども含まれる。なお、前記食品又は飼料原料は、加工品、例えば、破砕物(ペースト、乾燥粉末などの粉砕物など)、圧搾液、圧搾物、抽出物、エキス、発酵物などとして用いてもよい。前記有効成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
有効成分の割合は、食用組成物全体に対して、0.001〜99.9重量%、好ましくは0.01〜95重量%、さらに好ましくは0.1〜90重量%程度であってもよい。
ポリペプチドは、他の添加剤と併用してもよい。添加剤としては、慣用の食品添加物や飼料用添加物、例えば、強化剤(クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウムなどのカルシウム成分;アスコルビン酸又はその塩又はエステル;塩化第二鉄;チアミン塩;ニコチン酸類;ビタミン類など)、結着剤(ピロリン酸塩など)、糊料(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カゼインなど)、発酵調整剤(硝酸カリウム、硝酸ナトリウムなど)、アルカリ剤(かんすい、炭酸塩、リン酸塩などの中華そば製造用アルカリ剤など)、殺菌料(過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム;サラシ粉など)、酸化防止剤(エリソルビン酸、アスコルビン酸、グアヤク脂、ジブチルヒドロキシトルエン、α−トコフェロール、亜硫酸塩など)、甘味料(ショ糖、D−キシロース、D−ソルビット、てんさい糖、オリゴ糖、はちみつ、水あめなどのデンプン糖、グリチルリチン、ステビオサイトなど)、酸味料又は酸成分(酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、グルコノデルタラクトンなど)、調味料(L−アスパラギン酸ナトリム、DL−アラニン、グルタミン酸、コハク酸一ナトリウム;塩、醤油、みそ、アルコール類(酒、ワイン、みりんなど)、加塩発酵性調味液など)、着香料(アセト酢酸エチルなどの各種エステル類、シトラール、シトロネラール、レモン、ライム、オレンジ、ストロベリーなどの香料;ペパーミント、メントールなどの清涼化剤;香辛料など)、着色料(β−カロチンなどの食用色素など)、抽出剤、粘着防止剤(D−マンニットなど)、発色剤(亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸第一鉄など)、被膜剤(オキシエチレン高級脂肪族アルコール、オレイン酸ナトリウム、酢酸ビニル樹脂など)、漂白剤(亜硫酸水素ナトリウムなど)、品質改良剤(L−システイン塩酸塩、ステアリル乳酸カルシウムなど)、品質保持剤(プロピレングリコールなど)、乳化剤又は懸濁化剤[アニオン性、カチオン性、ノニオン性又は両性界面活性剤などの界面活性剤、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル;コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;水溶性高分子、例えば、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロースエーテル類(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど);大豆リン脂質など]、酵素、溶剤(グリセリンなど)、保存料(安息香酸、ソルビン酸又はこれらの塩など)、防虫剤(ピペロニルブトキサイドなど)、膨張剤(アンモニウムミョウバン、ミョウバン、塩化アンモニウムなど)、離型剤(流動パラフィンなど)などが挙げられる。
さらに、添加剤には、緩衝剤(例えば、リン酸塩、ホウ酸塩などの緩衝液など)、溶解補助剤(例えば、ポリエチレングリコール、エタノール、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなど)、防腐剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、デヒドロ酢酸、ソルビン酸又はその塩など)、金属イオン封鎖剤(フィチン酸など)、塩基成分(アンモニア、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基)なども含まれる。前記添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
前記添加剤の割合は、食用組成物全体に対して、0.001〜40重量%、好ましくは0.01〜30重量%、0.1〜20重量%程度であってもよい。食用組成物を食品として使用する場合、添加剤のうち食品添加物は、食品衛生法等に基づいて指定された割合で使用できる。また、使用基準がない添加物(天然由来の食品添加物など)についても、食品添加物や食品の種類に応じて適宜選択できる。
前記基剤、有効成分及び添加剤は、塩の形態で用いてもよい。このような塩としては、生理的又は薬学上許容できる塩が好ましく、例えば、有機酸塩(例えば、酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩などのカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩などの有機スルホン酸塩など)、無機酸塩(例えば、塩酸塩など)、有機塩基との塩(例えば、トリメチルアミン塩、エタノールアミン塩などの第三級アミンとの塩など)、無機塩基との塩(例えば、アンモニウム塩;ナトリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩など)が挙げられる。
本発明の食用組成物の形態は、特に制限されず、例えば、液状組成物、半固形状組成物(ゲル剤、クリーム剤、スラリー、ペーストなど)、固形状組成物(粉末、顆粒、フレーク、ケーク、製剤、グミ剤、ヌガー剤、チュワブル、フィルムなど)などが挙げられる。前記組成物は、カプセルに封入されたカプセル状組成物であってもよい。また、固形状組成物では、糖衣コーティング、腸溶性コーティングなどのコーティング処理を行ってもよい。
本発明の食用組成物には、必要により、冷凍処理(フリーズドライ処理も含む)、レトルト処理、缶詰処理などの慣用の保存又はパッケージ処理を行ってもよい。
本発明の食用組成物は、健康食品(栄養ドリンクなどの健康飲料など)、健康補助食品(各種サプリメントなどの栄養補助食品、食味向上を目的とする食品など)、特定用途食品(病者用食品、高齢者用食品など)、保健機能食品(栄養機能食品、特定保健用食品など)などの機能性食品などであってもよい。
また、本発明の食用組成物は、天然由来のコラーゲンと同様又は類似の特性、例えば、栄養補給、保湿効果又は老化防止効果(口内やのどの保湿力向上、胃腸粘膜及び内壁の保護、コラーゲン産生促進、骨芽細胞又は繊維芽細胞の増殖促進、新陳代謝促進、皮膚の角層水分量の保持、肌のはりの改善、しわの予防又は改善、皮膚賦活化など)、骨強化(骨粗鬆症の予防及び改善、骨密度の向上なども含む)などの効果を有していてもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
製造例1
式:H-(Pro-Pro-Gly)10-OH(配列番号:1)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)5mg(0.002mmol)を2mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、室温で撹拌した。この混合液に、0.31mg(0.0024mmol)のジイソプロピルエチルアミン、0.32mg(0.0024mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、0.46mg(0.0024mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに室温で7日間撹拌を続けた。
反応溶液を水で20倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superdex 200 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が4万〜20万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration LMW Calibration Kit及びGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られた反応溶液を水で5倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、227nmに正のコットン効果、199nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。得られたポリペプチドをポリペプチド(Ia)とする。
製造例2
式:H-(Pro-Pro-Gly)5-OH(配列番号:2)で示されるペプチド鎖をペプチド自動合成装置を用いて固相合成法により合成した。すなわち、4−(Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン)−オキシメチル−フェノキシ−メチル基を0.65mmol/g (樹脂)の割合で含むスチレン−ジビニルベンゼン共重合体〔スチレンとジビニルベンゼンの構成モル比:99対1〕からなる粒状樹脂〔米国アプライド・バイオシステムズ社製、HMPグリシン〕0.1mmolを用い、目的とするペプチドのカルボキシル末端からアミノ末端に向かって順次対応するアミノ酸を結合させた。結合反応において、アミノ酸として、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−プロリン〔Fmocプロリン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン〔Fmocグリシン〕を、各結合ステップについてそれぞれ1mmolずつ用いた。
得られたペプチド樹脂(ペプチドを結合した樹脂)を、10mLのジメチルホルムアミドに懸濁し、50mg(0.5mmol)の無水コハク酸と13mg(0.1mmol)のジイソプロピルエチルアミンを加えて、室温で12時間反応した。その後、メチルアルコールとジクロロメタンで交互に洗浄し、減圧乾燥した。
得られたペプチド樹脂を、5%の水を含むトリフルオロ酢酸10mLで3時間処理した。得られた溶液をジエチルエーテルに加えて生じる沈殿をさらに数回ジエチルエーテルで洗浄して、ペプチドの脱保護と樹脂からの脱離を行った。粗生成物を、PD10カラム(アマシャム・バイオサイエンス(株)製)で精製してペプチドを得た。得られた精製ペプチドをアマシャム・バイオサイエンス(株)製「AKTA explorer10XT」〔カラム:ミリポア(株)製「ノバパックC18」 3.9mmφ×150mm、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと水の混合溶媒(アセトニトリル濃度を30分間で5容量%から50容量%に直線的に変化させた)、流速1.0mL/min〕に付したところ、リテンションタイム14.5minに単一のピ−クが示された。FAB法マススペクトルにより求めた精製ペプチドの分子量は1375であった(理論値:1374.52)。
1.4mg(0.001mmol)のHOOC-(CH2)2-CO-(Pro-Pro-Gly)5-OHと、0.06mg (0.001mmol)のエチレンジアミンとを0.05mLの水に懸濁し、混合液に、0.32mg(0.0024mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4.6mg(0.024mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、室温で3日間振盪した。
反応溶液を水で100倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superdex 200 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))により分子量を測定したところ、分子量が3万〜20万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration LMW Calibration Kit及びGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られた反応溶液を水で5倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、228nmに正のコットン効果、198nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。得られたポリペプチドをポリペプチド(Ib)とする。
製造例3
式:H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH(配列番号:3)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)5mg(0.0016mmol)を2mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、室温で撹拌した。この混合液に、0.23mg(0.0018mmol)のジイソプロピルエチルアミン、0.24mg(0.0018mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、0.65mg(0.0034mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに室温で7日間撹拌を続けた。
反応溶液を水で20倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superdex 200 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が6万〜20万以上の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration LMW Calibration Kit及びGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られた反応溶液を水で5倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、225nmに正のコットン効果、197nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。得られたポリペプチドをポリペプチド(Ic)とする。
得られたポリペプチド(Ic)の水懸濁液をフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)シート上に流延した後、風乾することによりキャストフィルムを作製した。このフィルムに金を蒸着した後、走査型電子顕微鏡で観測すると、図1に示すような繊維状の構造物が観測された。
製造例4
式:H-(Pro-Pro-Gly)5-OH(配列番号:2)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)3.5mg(0.0026mmol)と、実施例2と同様の方法で合成した0.92mg(0.0011mmol)のH-(Val-Pro-Gly-Val-Gly)2-OH(配列番号:4)とを所定の割合(70モル%:30モル%)で1.5mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、室温で撹拌した。この混合液に、0.52mg(0.0040mmol)のジイソプロピルエチルアミン、0.51mg(0.0038mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1.45mg(0.0076mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに室温で7日間撹拌を続けた。
反応溶液を水で20倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superdex 200 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))により分子量を測定したところ、分子量が8万〜45万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration LMW Calibration Kit及びGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られた反応溶液を水で5倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、227nmに正のコットン効果、198nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。得られたポリペプチドをポリペプチド(Id)とする。
得られたポリペプチドの水懸濁液をフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)シート上に流延した後、風乾することによりキャストフィルムを作製した。このフィルムを、150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4)に浸漬するとシート状のゲル状物が得られた。このシート状のゲル状物は、室温では透明であったが、40℃以上の温度で可逆的に白濁した。
製造例5
式:H-(Pro-Hyp-Gly)5-OH(配列番号:5)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)5mg(0.0033mmol)を2 mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、室温で撹拌した。この混合液に、0.44mg(0.0034mmol)のジイソプロピルエチルアミン、0.46mg(0.0033mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1.3mg(0.0068mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに室温で14日間撹拌を続けた。
反応溶液を水で20倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superdex 200 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が4万〜10万以上の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration LMW Calibration Kit及びGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られた反応溶液を水で5倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、224nmに正のコットン効果、199nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。得られたポリペプチドをポリペプチド(Ie)とする。
製造例6
5mg(0.0016mmol)の式:H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH(配列番号:3)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)を0.5mLの10mMリン酸塩緩衝液(8.1mMのNa2HPO4・12H2O、1.5mMのKH2PO4、2.7mMのKCl、pH 7.4)に溶解し、20℃で撹拌した。この溶液に、0.24mg(0.0018mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、31mg(0.16mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で24時間撹拌を続けた。
反応溶液を水で60倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM リン酸塩緩衝液(pH 7.4))に供したところ、平均分子量40万に相当するポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration LMW Calibration Kit及びGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られた反応溶液を水で5倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去した。得られたポリペプチドの円二色性スペクトルを測定したところ、225nmに正のコットン効果、197nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。得られたポリペプチドをポリペプチド(If)とする。
製造例7
式:H-(Pro-Hyp-Gly)1-OHで示されるペプチド((株)ペプチド研究所)1gを20mLの10mMリン酸塩緩衝液(pH7.4)に溶解し、473mgの1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、3.35gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を加えて、4℃で2時間、その後20℃で46時間撹拌を続けた。反応液をミリQ水(超純水)に対して48時間透析した。
得られた透析後の溶液を水で50倍に希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superdex 200 HR 10/30、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が10万〜60万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。
また、得られた透析後の溶液を水で100倍に希釈し、円二色性スペクトルを測定したところ、225nmに正のコットン効果、198nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
式:(Pro-Hyp-Gly)10(配列番号:3)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)の215nmにおける吸光度から検量線を作成し、得られた3重らせん構造を形成するポリペプチドの濃度を測定すると約20mg/mLであった。得られたポリペプチドをポリペプチド(Ih)とする。
製造例8
式:H-(Pro-Hyp-Gly)4-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Gly-(Pro-Hyp-Gly)4-OH(配列番号:6)で示されるペプチド鎖を、ペプチド自動合成装置を用いて固相合成法により合成した。すなわち、4−(Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン)−オキシメチル−フェノキシ−メチル基を0.65mmol/g(樹脂)の割合で含むスチレン−ジビニルベンゼン共重合体〔スチレンとジビニルベンゼンの構成モル比:99対1〕からなる粒状樹脂〔米国アプライド・バイオシステムズ社製、HMPグリシン〕0.1mmolを用い、目的とするペプチドのカルボキシル末端からアミノ末端に向かって順次対応するアミノ酸を結合させた。結合反応において、アミノ酸として、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−プロリン〔Fmocプロリン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン〔Fmocグリシン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−Nγ−トリチル−L−グルタミン〔Fmocグルタミン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−イソロイシン〔Fmocイソロイシン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アラニン〔Fmocアラニン〕、バッケム社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−t−ブチル−L−ヒドロキシプロリン〔Fmocヒドロキシプロリン〕を、各結合ステップについてそれぞれ1mmolずつ用いた。
得られたペプチド樹脂を、5%の水を含むトリフルオロ酢酸10mLで3時間処理した。得られた溶液をジエチルエーテルに加えて生じる沈殿をさらに数回ジエチルエーテルで洗浄して、ペプチドの脱保護と樹脂からの脱離を行った。粗生成物を、PD10カラム(アマシャム・バイオサイエンス(株)製)で精製してペプチドを得た。得られた精製ペプチドをアマシャム・バイオサイエンス(株)製「AKTA explorer10XT」〔カラム:ミリポア(株)製「ノバパックC18」 3.9mmφ×150mm、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと水の混合溶媒(アセトニトリル濃度を30分間で5容量%から50容量%に直線的に変化させた)、流速1.0mL/min〕に付したところ、リテンションタイム12.4minに単一のピ−クが示された。FAB法マススペクトルにより求めた精製ペプチドの分子量は2681.3であった(理論値:2679.9)。
2.5mg(0.0009mmol)のH-(Pro-Hyp-Gly)4-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Gly-(Pro-Hyp-Gly)4-OHを1mLのジメチルスルホキシドに懸濁し、室温で撹拌した。この混合液に、0.12mg(0.0009mmol)のジイソプロピルエチルアミン、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、0.34mg(0.0018mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で3倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、ポリペプチド(IIa)を得た。ペプチドユニット(4)と(5)の割合((4)/(5))は8/1(88.9/11.1)(モル比)であった。
得られたポリペプチド(IIa)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が7万〜100万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチド(IIa)の円二色性スペクトルを測定したところ、223nmに正のコットン効果、198nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
製造例9
1.2mg(0.00045mmol)の式:H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH(配列番号:3)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)と、1.2mg(0.00045mmol)の製造例8で得られた式:H-(Pro-Hyp-Gly)4-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Gly-(Pro-Hyp-Gly)4-OH(配列番号:6)で示されるペプチドを0.25mLの10mMリン酸塩緩衝液(pH=7.4)に溶解し、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、15.7mg(0.082mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で10倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、ポリペプチド(IIb)を得た。ペプチドユニット(4)と(5)の割合((4)/(5))は、18/1(94.7/5.3)(モル比)であった。
得られたポリペプチド(IIb)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が14万〜100万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチド(IIb)の円二色性スペクトルを測定したところ、224nmに正のコットン効果、196nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
製造例10
2.2mg(0.00081mmol)の式:H-(Pro-Hyp-Gly)10-OH(配列番号:3)で示されるペプチド((株)ペプチド研究所)と、0.24mg(0.00009mmol)の製造例8で得られた式:H-(Pro-Hyp-Gly)4-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Gly-(Pro-Hyp-Gly)4-OH(配列番号:6)で示されるペプチドを0.25mLの10mMリン酸塩緩衝液(pH=7.4)に溶解し、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、15.7mg(0.082mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で10倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、ポリペプチド(IIc)を得た。ペプチドユニット(4)と(5)の割合((4)/(5))は、98/1(≒99/1)(モル比)であった。
得られたポリペプチド(IIc)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が14万〜40万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチド(IIc)の円二色性スペクトルを測定したところ、224nmに正のコットン効果、197nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
試験例1
製造例8〜10で得られたポリペプチドのそれぞれ0.025mgを、0.05mLの50mMのNaClと10mMのCaCl2を含む50mM Tris/HCl緩衝液(pH=7.5)に溶解した。さらに、同じ緩衝液0.05mLに溶解した200ngのコラゲナーゼ(MMP-1, human rheumatoid synovial fibroblast)を添加し、37℃で24時間静置した。その後、0.1M HCl水溶液を0.01mL添加して、酵素反応を停止した後、150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4)で希釈して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))で分子量分布の変化を測定した。
その結果、製造例8のポリペプチドではコラゲナーゼを加えない場合のピーク分子量約100万が約54万に低下した。同様に製造例9、10のポリペプチドでも、それぞれ約80万が約40万、約70万が約30万に低下した。
製造例11
式:H-(Pro-Hyp-Gly)4-Pro-Leu-Gly-Ile-Ala-Gly-(Pro-Hyp-Gly)4-OH(配列番号:7)で示されるペプチド鎖を、ペプチド自動合成装置を用いて固相合成法により合成した。すなわち、4−(Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン)−オキシメチル−フェノキシ−メチル基を0.65mmol/g(樹脂)の割合で含むスチレン−ジビニルベンゼン共重合体〔スチレンとジビニルベンゼンの構成モル比:99対1〕からなる粒状樹脂〔米国アプライド・バイオシステムズ社製、HMPグリシン〕0.1mmolを用い、目的とするペプチドのカルボキシル末端からアミノ末端に向かって順次対応するアミノ酸を結合させた。結合反応において、アミノ酸として、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−プロリン〔Fmocプロリン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン〔Fmocグリシン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−ロイシン〔Fmocロイシン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−イソロイシン〔Fmocイソロイシン〕、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アラニン〔Fmocアラニン〕、バッケム社製のNα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−t−ブチル−L−ヒドロキシプロリン〔Fmocヒドロキシプロリン〕を、各結合ステップについてそれぞれ1mmolずつ用いた。
得られたペプチド樹脂を、5%の水を含むトリフルオロ酢酸10mLで3時間処理した。得られた溶液をジエチルエーテルに加えて生じる沈殿をさらに数回ジエチルエーテルで洗浄して、ペプチドの脱保護と樹脂からの脱離を行った。粗生成物を、PD10カラム(アマシャム・バイオサイエンス(株)製)で精製してペプチドを得た。得られた精製ペプチドをアマシャム・バイオサイエンス(株)製「AKTA explorer10XT」〔カラム:ミリポア(株)製「ノバパックC18」 3.9mmφ×150mm、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと水の混合溶媒(アセトニトリル濃度を30分間で5容量%から50容量%に直線的に変化させた)、流速1.0mL/min〕に付したところ、リテンションタイム15minに単一のピ−クが示された。FAB法マススペクトルにより求めた精製ペプチドの分子量は2666.3であった(理論値:2664.9)。
1.2mg(0.00045mmol)のH-(Pro-Hyp-Gly)4-Pro-Leu-Gly-Ile-Ala-Gly-(Pro-Hyp-Gly)4-OHを0.25mLの10mMリン酸塩緩衝液(pH=7.4)に溶解し、0.12mg(0.0009mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、15.7mg(0.082mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩を添加して、さらに20℃で2日間撹拌を続けた。得られた反応溶液を水で10倍に希釈し、水に対して3日間透析して、縮合剤などの試薬と未反応モノマーを除去し、ポリペプチド(IId)を得た。ペプチドユニット(4)と(5)の割合((4)/(5))は、8/1(88.9/11.1)(モル比)であった。
得られたポリペプチド(IId)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(アマシャム・バイオサイエンス(株)製、AKTApurifierシステム、カラム:Superose 6 HR GL、流速:0.5mL/min、溶離液:150mMのNaClを含む10mM phosphate buffer(pH 7.4))に供したところ、分子量が8万〜100万の範囲にポリペプチドのピークが認められた。分子量はアマシャム・バイオサイエンス(株)製のGel Filtration HMW Calibration Kitを標準物質として使用し、算出した。
得られたポリペプチド(IId)の円二色性スペクトルを測定したところ、224nmに正のコットン効果、197nmに負のコットン効果が観測され、3重らせん構造を形成していることが確認された。
実施例1(栄養飲料)
製造例7で得られたポリペプチド(Ih)を凍結乾燥することに粉末状のポリペプチドを得た。得られた粉末状ポリペプチド0.02gを、ビタミンC0.1g,乳酸カルシウム0.01g,ブドウ糖10g,クエン酸1gとともに精製水100mLに溶解して栄養飲料とした。
実施例2(栄養補助食品)
製造例7で得られたポリペプチド(Ih)を凍結乾燥することに粉末状のポリペプチドを得た。得られた粉末状ポリペプチド0.05gを、ビタミンC0.1g,乳酸カルシウム0.1g,しょ糖脂肪酸エステル0.1とともに混和後、ペレット状に加圧成型して栄養補助食品とした。
試験例
6週令のWistar系雌性ラットの卵巣を摘出して実験的に骨粗鬆症ラットを作成した。卵巣を露出した後、卵巣摘出操作のみを行なわない群をコントロール(シャムコントロール)とした。卵巣摘出3ヵ月後より3ケ月間実施例1で得られた栄養飲料1mL/日、または実施例2で得られた栄養補助食品0.1g/日を毎日摂取させた。投与終了後、大腿骨を摘出して大腿骨頭から1/10遠位側の皮質骨の骨密度をpQCT測定により求めた。シャムコントロールの0.27g/cm3に対して、製造例7で得られたポリペプチド(Ih)を含まない栄養飲料、または栄養補助食品を投与した対照ラットではそれぞれ0.23g/cm3、0.21g/cm3、と有意に低下したが、実施例1で得られた栄養飲料、または実施例2で得られた栄養補助食品を投与したラットではそれぞれ0.25g/cm3、0.26g/cm3といずれも対照ラットに比較して有意に骨密度が増大した。