JP4115324B2 - 木製部材と鋼製部材からなる複合部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築技術分野における、柱・梁架構、大スパン屋根架構、その他の骨組み部材に利用される木製部材又は集成材(以下、「木製部材」という。)と鋼製部材からなる複合材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、木製部材と鋼製部材を組み合わせた部材としては、特開平11−44044号公報には、木製部材の全長に亘って鋼材を埋入一体化したものが開示されている。
また、特開平10−61053号公報には、H形鋼部材のウェブに木製部材を添わせて、木製部材にせん断力を負担させるようにしたものが開示されている。
さらに、特開平11−50532号公報には、2つ割にされた木製部材の端部に鋼製部材をフランジ状にボルトで接合したものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−44044号公報
【特許文献2】
特開平10−61053号公報
【特許文献3】
特開平11−50532号公報
【特許文献4】
特開2001−38708号公報
【特許文献5】
特開2000−145009号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の鋼製部材と木製部材との複合部材では、鋼製部材と木製部材を締結ボルトで締め付けて一体化し、ボルトのせん断抵抗によって木製部材と鋼製部材のずれを止める構造であったため、せん断力が作用した場合、締結ボルトが木製部材にめり込んでしまい、鋼製部材と木製部材の間にずれが生じ、十分な耐力を有する複合部材として機能しないという問題点を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術の持つ問題点を解決する、鋼製部材と木製部材との間のせん断力によるずれを防止した耐久性の高い鋼製部材と木製部材からなる複合部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本第1発明は、前記課題を解決するために、少なくとも1枚の鋼製部材に複数の木製部材又は集成材を締結ボルトで固定し、前記木製部材又は集成材が表面側に配置するようにし、鋼製部材に少なくとも1個のシア部材を固定し、前記シア部材を前記木製部材又は集成部材中に噛み込ませ、前記締結ボルトを前記複合部材全長に渡って等間隔に配し、前記シア部材を前記複合部材の両端部近傍に集中的に配したことを特徴とする。
【0007】
本第2発明は、本第1発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記シア部材がリング状であることを特徴とする。
【0008】
本第3発明は、本第1発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記シア部材が締結ボルト挿入孔を形成した中実状であることを特徴とする。
【0009】
本第4発明は、本第1〜第3発明のいずれか1つの発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記鋼製部材にシア部材挿入用穴を形成し、前記シア部材挿入用穴にシア部材を挿入し、シア部材の両端部が鋼製部材表裏面から突出するように固定したことを特徴とする。
【0010】
本第5発明は、本第1〜第4発明のいずれか1つの発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記木製部材に前記シア部材の噛み込みを容易にするための嵌合凹部又は噛み込み溝を形成したことを特徴とする。
【0011】
本第6発明は、本第5発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記木製部材に形成した嵌合凹部又は噛み込み溝とシア部材との間に一定の隙間を設け、前記隙間に接着剤を充填することを特徴とする。
【0012】
本第7発明は、本第1〜第6発明のいずれか1つの発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記締結ボルトが前記シア部材を貫通して配置することを特徴とする。
【0014】
本第8発明は、本第1〜第7発明のいずれか1つの発明の木製部材と鋼製部材からなる複合部材において、前記複合部材の端部をコ字状金物で固定したことを特徴とする。
【0015】
【作用】
本発明の少なくとも1枚の鋼製部材に複数の木製部材を締結ボルトで固定し、前記木製部材が表面側に配置するようにし、鋼製部材に少なくとも1個のシア部材を固定し、前記シア部材を前記木製部材中に噛み込ませるという構成により、木製部材が鋼製部材に対してズレ止めされ一体化され、木製部材が座屈拘束の機能と、いくらかの応力負担に貢献でき、耐久性の高い建築用複合材となる。
シア部材をリング状又は締結ボルト挿入孔を形成した中実状とすることにより、締結ボルトの挿入が容易であり、木製部材と鋼製部材との締め付け一体化を容易にする。
鋼製部材にシア部材挿入用孔を形成し、前記シア部材挿入用孔にシア部材を挿入し、シア部材の両端部が鋼製部材表裏面から突出するように固定する構成により、鋼製部材へのシア部材の固定作業が容易になる。
木製部材に前記シア部材の噛み込みを容易にするための嵌合凹部又は噛み込み溝を形成する構成により、シア部材の先端部を先鋭化することなく容易に木製部材に噛み込ませることが可能になる。
木製部材に形成した嵌合凹部又は噛み込み溝とシア部材との間に一定の隙間を設け、前記隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填する構成により、木製部材と鋼製部材に固定されたシア部材を確実に固定でき、耐久性の高い複合材となる。
また、一定の隙間を設けることで、木製部材と鋼製部材の組立てを、隙間の範囲で製作誤差を吸収しながら行うことができるようになる。
締結ボルトを前記シア部材を貫通して配置する構成により、木製部材と鋼製部材のズレ止め一体化が促進される。
締結ボルトを前記複合部材全長に渡って等間隔に配し、前記シア部材を前記複合部材の両端部近傍に集中的に配する構成により、せん断力が大きく作用する両端部が確実に一体化される。
複合部材の端部をコ字状金物で固定する構成により、木製部材の端部での口開きを防止する。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1(a)(b)は本発明の一実施形態を示すもので、複合部材1は、一枚の板状の鋼製部材2の表裏面に木製部材3を締結ボルト4で締め付け固定して一体化したものである。板状の鋼製部材2の表裏面には複数のシア部材5が固定され、シア部材5は木製部材3中に噛み込ませ、シア部材5を貫通して締結ボルト4が挿入され、締結ボルト4により板状の鋼製部材2と木製部材3が一体化され複合部材となる。図1に示される実施形態では、板状の鋼製部材2を木製部材3の両端から突出させ、継手部6としているが、鋼製部材2と木製部材3の両端を揃えた形状にしても良い。
図2(a)(b)は、締結ボルト位置とシア部材位置が、必ずしも完全に一致しない場合を示すものである。
【0017】
図3(a)(b)に示される実施形態に示される複合部材1は、2枚の板状の鋼製部材2の表裏面に木製部材3を締結ボルト4で締め付け固定して一体化したものである。板状の鋼製部材2の表裏面には複数のシア部材5が固定され、シア部材5は木製部材3中に噛み込ませ、シア部材5を貫通して締結ボルト4が挿入され、締結ボルト4により板状の鋼製部材2と木製部材3が一体化され複合部材1となる。いずれの実施形態においても、複合部材1は、表面側に木製部材3が位置するようにすることで美観状優れた建築用部材となる。
【0018】
図4(a)に示されるように、シア部材5は、締結ボルト挿通孔7を形成した中実状としても良く、図4(b)に示されるようにリング状としても良い。シア部材5の鋼製部材2の表裏面への取り付けは、図4(a)に示すように鋼製部材2に締結ボルト挿通用孔8を形成し、それぞれシア部材5を鋼製部材2の締結ボルト挿通用孔8に位置合わせしてに溶接等の手段で固定しても、図4(b)に示すように鋼製部材2にシア部材嵌合用孔9を形成し、シア部材5が鋼製部材2の表裏面から突出するように溶接等の手段により固定しても良い。
【0019】
図5(a)〜(d)には、鋼製部材2に固定されたシア部材5を木製部材3に噛み込ませる一実施形態を示す。図5に示されるのはリング状のシア部材3の例を示している。木製部材3に締結ボルト挿通孔10を形成し、その周囲にリング状のシア部材5が噛み込む溝11を形成したものである。シア部材5が、中心部に締結ボルト挿通孔7を形成した中実状の場合には、木製部材3に締結ボルト挿通孔10を形成し、さらに中実状のシア部材5が嵌合する嵌合凹部を形成する。木製部材3に、噛み込み溝11又は嵌合凹部を木製部材3に形成する場合、噛み込み溝11又は嵌合凹部とシア部材5との間に所定の隙間を設け、その隙間にエポキシ樹脂系接着剤等の接着剤を充填すると一層ずれ止め効果が発揮される。
【0020】
図6(a)(b)は、複合部材1におけるシア部材5と締結ボルト4の配置状態を示すもので、図6(a)は、複合部材1の全長に亘り千鳥状に配置した例を示すもので、図6(b)は、シア部材5と締結ボルト4とを複合部材1の端部付近と中央部付近に集中配置した例を示す。シア部材5が配置された部分には必ず締結ボルト4がシア部材5を貫通して配置されるが、締結ボルト4は、シア部材5の配置されていない箇所でも必要に応じて配置される。
【0021】
図7は、複合部材1の端部での木製部材3の口開きを防止するため、一対のコ字形金物12で締め付け拘束した例を示す。
【0022】
【発明の効果】
本発明の少なくとも1枚の鋼製部材に複数の木製部材を締結ボルトで固定し、前記木製部材が表面側に配置するようにし、鋼製部材に少なくとも1個のシア部材を固定し、前記シア部材を前記木製部材中に噛み込ませるという構成により、木製部材が鋼製部材に対してズレ止めされ一体化され、木製部材が座屈拘束の機能と、いくらかの応力負担に貢献でき、耐久性の高い建築用複合材となる。
シア部材をリング状又は締結ボルト挿入孔を形成した中実状とすることにより、締結ボルトの挿入が容易であり、木製部材と鋼製部材との締め付け一体化を容易にする。
鋼製部材にシア部材挿入用穴を形成し、前記シア部材挿入用穴にシア部材を挿入し、シア部材の両端部が鋼製部材表裏面から突出するように固定する構成により、鋼製部材へのシア部材の固定作業が容易になる。
木製部材に前記シア部材の噛み込みを容易にするための嵌合凹部又は噛み込み溝を形成する構成により、シア部材の先端部を先鋭化することなく容易に木製部材に噛み込ませることが可能になる。
木製部材に形成した嵌合凹部又は噛み込み溝とシア部材との間に一定の隙間を設け、前記隙間に接着剤を充填する構成により、木製部材と鋼製部材に固定されたシア部材を確実に固定でき、耐久性の高い複合材となる。
締結ボルトを前記シア部材を貫通して配置する構成により、木製部材と鋼製部材のズレ止め一体化が促進される。
締結ボルトを前記複合部材全長に配し、前記シア部材を前記複合部材の両端部近傍に集中的に配する構成により、せん断力が大きく作用する両端部が確実に一体化される。
複合部材の端部をコ字状金物で固定する構成により、木製部材の端部での口開きを防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)(b) 本発明の一実施形態を示す図。
【図2】(a)(b) 本発明の一実施形態を示す図。
【図3】(a)(b) 本発明の一実施形態を示す図。
【図4】(a)(b) 本発明の一実施形態を示す図。
【図5】(a)(b)(c)(d) 本発明の一実施形態を示す図。
【図6】(a)(b) 本発明の一実施形態を示す図。
【図7】 本発明の一実施形態を示す図。
【符号の説明】
1:複合部材
2:鋼製部材
3:木製部材
4:締付ボルト
5:シア部材
6:継手部
7:シア部材の締結ボルト挿通孔
8:鋼製部材の締結ボルト挿通孔
9:シア部材嵌合孔
10:木製部材の締結ボルト挿通孔
11:噛み込み溝
12:コ字状金物
Claims (8)
- 少なくとも1枚の鋼製部材に複数の木製部材又は集成材を締結ボルトで固定し、前記木製部材又は集成材が表面側に配置するようにし、鋼製部材に少なくとも1個のシア部材を固定し、前記シア部材を前記木製部材又は集成部材中に噛み込ませ、
前記締結ボルトを前記複合部材全長に渡って等間隔に配し、前記シア部材を前記複合部材の両端部近傍に集中的に配したことを特徴とする木製部材と鋼製部材からなる複合部材。 - 前記シア部材がリング状であることを特徴とする請求項1に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
- 前記シア部材が中実状であることを特徴とする請求項1に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
- 前記鋼製部材にシア部材挿入用穴を形成し、前記シア部材挿入用穴にシア部材を挿入し、シア部材の両端部が鋼製部材表裏面から突出するように固定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
- 前記木製部材又は集成材に前記シア部材の噛み込みを容易にするための嵌合凹部又は噛み込み状溝を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
- 前記木製部材又は集成材に形成した嵌合凹部又は噛み込み溝とシア部材との間に一定の隙間を設け、前記隙間に接着剤を充填することを特徴とする請求項5に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
- 前記締結ボルトが前記シア部材を貫通して配置することを特徴とする請求項1〜6に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
- 前記複合部材の端部をコ字状金物で固定したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の木製部材と鋼製部材からなる複合部材。
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