JP4115176B2 - 少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液の製造方法、該分散液及びその使用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液の製造方法、該分散液及びその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック分散液を建築適用で使用することは従来公知である。プラスチック分散液は、2つの理由から水硬結合系に加えられる。一方では、該分散液添加は建築材料の加工性を簡単にする、それというのも、長い時間帯にわたってそのコンシステンシーが同じに保たれる(セメント安定性:Zementstabilitaet)からである。第2の理由は、機械的特性、例えばモルタルの曲げ強さ及び圧縮強さ、無機流動接着剤の接着力を改良することにある。モルタル混合物の加工性及び機械的特性は、強度に水/セメント比に左右される。水/セメント比が大きければ、モルタルは液状になるが、しかし耐用性及び曲げ強さ及び圧縮強さのような機械的特性は悪くなる。分散液添加は、加工性及び機械的特性に関する該系の最適な調節を可能にする。
【0003】
建築工業においては、種々の利点に基づき分散液は有利にはその乾燥した再分散可能な粉末の形で使用される。水性分散液の搬送は、50質量%の固体含量では重量の半分を水が占有するので、経済的な欠点を有する。該有効物質対搬送重量の割合は全く望ましくない。粉末の搬送が経済的である。使用する際に、初めて水を加える。乾燥粉末は、別の乾燥素材、例えば砂、セメント等と一緒に貯蔵することができる。水性分散液は、分離して貯蔵しなければならないという欠点を有する。更に、分散液は寒気に敏感でありかつ加熱した室内で貯蔵しなければならない。適用する際には、分散液の水量を考慮すべきであり、このことは正確な水の配合を困難にする。
【0004】
確率されたポリマー粉末の製造方法は、水性分散液の熱した空気又は不活性ガス中での噴霧乾燥である。粉末は、分散液、再分散性を改良しかつ乾燥中の塊状化を防止する噴霧助剤、及び粘着防止剤として貯蔵の際でも粉末の流動性を保証する無機固体からなる。噴霧助剤としては、塊状化する、極性の巨大分子又は低分子化合物が使用される。DE−OS2049114においては、ポリビニルアルコール(PVA)及びメラミン−ホルムアルデヒド−ナトリウムスルホネート樹脂が噴霧添加物として使用される。粘着防止剤としては、微粉砕ケイ酸塩、タルク、ドロマイト、ケイソウ土、滴虫土、コロイド状シリカゲル、熱分解法二酸化ケイ素などが適当である。粘着防止剤の量は、粉末粒度及び意図される貯蔵時間次第である。
【0005】
粉末は特に再分散可能である場合、基礎分散液のような比較可能な特性、例えばモルタル内のセメント安定性を有することが判明した。このことは、噴霧乾燥後に約30〜300μmの平均粒度を有する粉末は水を加えると殆ど分散液の初期の粒度(一次粒度)に分解することを意味する。この際、光散乱法に基づく粒度又は粒度分布の測定は広い粒度分布において大きい粒子と小さい粒子の異なる散乱光強度に基づき極めて困難である。再分散可能な粉末を製造する際には、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の分散液を使用するのが有利である。斥力は保護コロイドによる立体的安定化の際には、乳化剤による安定化におけるよりもの遙かに十分である。乾燥すると、粒子は立体的安定化の場合には、水を加えると粒子が再分散しかつ新たに安定な分散液を生じるだけ近づくに過ぎない(C. S. Hirtzel, R. Rajagoplan, Colloidal Phenomena, Advanced Topics Noyes Publications, New Jersey, 1985)。乳化剤安定化の場合には、粒子は乾燥の際に一層近づく。水を加えた場合、粉末は再分散しない。それというのも、粒子はもはや互いに解離することができないからである。
【0006】
建築適用で使用されるポリマーベースは多種多様である。例えば、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートエチレンコポリマー及びビニルアセテートビニルエステルコポリマーが使用される。高い鹸化安定性が要求される場合には、スチレン−アクリレート−、純アクリレート−及びスチレン−ブタジエン−コポリマーが使用される。水硬系のために特に適当であるのは、高い鹸化安定性に基づきスチレン−ブタジエン−コポリマーである。更に、カルボキシル化スチレン−ブタジエン−コポリマーは極性の下地に対して良好な付着力を有する。
【0007】
水性分散液の場合には、アクリレート及びスチレン−ブタジエン−コポリマーを使用するのが有利である。それに対して、粉末は殆どもっぱらビニルアセテート−エチレン−及びビニルアセテートビニルエステル−コポリマーをベースとする。それというのも、これらは伝統的なかつ化学的理由から保護コロイドで安定化されておりかつこの理由から良好に再分散可能でありセメント安定な粉末を得ることができるからである。ビニルアセテートは、その高い極性に基づき極性保護コロイドにより良好に安定化される。主に、部分鹸化ポリビニルアセテート(PVA)が保護コロイドとして使用される。それというのも、PVAとビニルアセテートの類似した極性に基づきPVAはビニルアセテート含有分散液のための極めて良好な保護コロイドであるからである。
【0008】
PVA又はヒドロキシエチルセルロース(HEC)のような極性保護コロイドで安定化されるスチレン又はブタジエンのような疎水性モノマーは有する分散液は、これらは極めて粘性であるので、製造するのが困難である(US4670505)。そのためにこれらのコポリマーは一般に、プロセスにおいて粘度を低下させる有効なイオン性及び非イオン性乳化剤により安定化される。技術的にビニルアセテート含有粉末と等価であるべきである、純アクリレート、スチレン−アクリレート又はスチレン−ブタジエンベースの粉末を製造することができるためには、分散液が立体的に保護コロイドで安定化されておりかつ乳化剤を放棄するのが有利である。再分散性の他に、保護コロイドは分散液に、更に分散液の耐水性を劣化する乳化剤とは別の流動学的及び付着特性を付与する。従って、保護コロイドで安定化された疎水性コポリマーの製造は極めて重要である。
【0009】
スチレン−アクリレート又はスチレン−ブタジエンのような疎水性コポリマーをベースとする保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の分散液のための多数の製造方法が公知であり、これらの分散液はプロセス中に粘度を調節することを可能にするが、しかし方法に関しては欠点を有する。
【0010】
保護コロイドとしてPVA又はHECを使用したビニルアセテート割合50%未満を有するビニルアセテート−(メタ)アクリレート分散液の粘度は、安定化助剤、例えばアリルアルコール(USP4670505)、プロパノール、又はエチレングリコール(GB−PS1278813)により低下せしめられる。EP−A013478では、粘度は水と混和可能な化合物、例えばメタノール及びエタノールで低下せしめられる。液状の有機化合物は、重合後に除去されねばならない。
【0011】
EP−A538571においては、スチレン割合>50質量%及び/又はC1〜C8−アルキル(メタ)アクリレートを有する分散液の粘度を調節するために全量の保護コロイドが装入されかつ酸性ペルオキシド及びレドックス系からなる混合開始剤系、又は酸性ペルオキシド又はレドックス系が単独で使用される。更に、粘度は粘度調節化合物としてトリエタノールアミンを使用することにより低下させることができる。
【0012】
EP−A821016及びEP−A723975には、保護コロイドとして部分鹸化ポリビニルアセテートを有するスチレン−アクリレートの重合の際の、ヒドロキシエチルメタクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレートのような、既に重合中に架橋することができる極性コモノマーの粘度調節作用が言及されている。スチレン−ブタジエン−コポリマーの重合は達成されない。
【0013】
WO99/16794には、表面張力が異なる保護コロイドの混合物を使用することにより、セメント安定な際分散可能な粉末に噴霧乾燥することができる、立体的に安定化されたスチレン−ブタジエン−コポリマー分散液が製造可能であることが記載されている。一方の保護コロイドは2%の水溶液として表面張力>40mN/mを有し、他方は2%の水溶液として<40mN/mを有する。このようにして製造したスチレン−ブタジエン分散液は固体含量47.0%で粘度380mPas(ブロックフィールド“Brookfield”粘度計、20℃、20rpm)及び粒度950nm(Coulter LS 230,Dw)を有する。該粉末を用いたセメント混合物は水/セメント比1.03で初めてセメント安定性である。モルタルの機械的特性、例えば圧縮強さ及び曲げ強さは、製造するために大量の水を使用すると悪くなる。表面張力>40mN/mを有する保護コロイドだけを使用すると、分散液から製造された粉末の再分散性は不満足である。表面張力<40mN/mを有する保護コロイドだけを使用すると、分散液から製造された粉末のセメント安定性は不満足である。
【0014】
WO99/28360によれば、保護コロイドを部分的に先に装入しかつ部分的に配量することにより、保護コロイドだけを用いて、セメント安定性の粉末に噴霧乾燥することができるスチレン−ブタジエン−コポリマーの立体的に安定化された分散液の製造が達成される。この方法における欠点は約2.5μm〜4.5μmの分散液の極めて大きな粒度にある。経験によれば、この粒度(明らかに1μmを越える)を有する分散液は貯蔵安定でない。モノマーの一部を先に装入しかつ部分的に配量しなければならない。重合中に全てのモノマーを加えれば、重合反応は不完全である。
【0015】
WO97/15603においては、メルカプトシランの補助で、部分鹸化したポリビニルアルコールでブタジエン含有の、保護コロイドで安定化された分散液が製造される。この方法の欠点は、メルカプトシランに制限されかつシランのコストが高いことにある。更に、乳化剤が使用される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来の技術の欠点、特に有機溶剤、乳化剤、製造するのに費用がかかる保護コロイド又はメルカプトシランを使用した粘度の調節を克服しかつ1000nmの安定なコロイド状分散液未満の平均粒子直径の調節を可能にし、かつ更に分散液の乾燥により良好に再分散可能なかつセメント安定性プラスチック粉末を製造する可能性を提供する、乳化剤不含の、保護コロイドで安定化された水性分散液の製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の対象は、助剤及び場合によりモノマーの全量に対して0.1質量%〜20質量%の量の別のコモノマーの存在下で、ビニル芳香族化合物、1,3−ジエン及び/又は(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液を製造する方法であり、該方法は、モノマーを反応容器に装入しかつモノマー100%に対する反応率が少なくとも40%になった後初めて、全水量の少なくとも10質量%を反応容器に入れることを特徴とする。
【0018】
適当なビニル芳香族化合物は、スチレン及び/又はメチルスチレンであり、この場合スチレンが有利である。
【0019】
1,3−ジエンの例は1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンであり、この場合1,3−ブタジエンが有利である。
【0020】
有利なメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、メチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートである。
【0021】
該当するコモノマーは、ヒドロキシ(C1〜C8−アルキル)(メタ)アクリル酸エステル、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシ(2−エチルヘキシル)アクリレート、有利にはヒドロキシエチルメタクリレート;エチレン系不飽和モノ−及びジカルボン酸、有利にはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸;エチレン系不飽和カルボン酸アミド及び−ニトリル、有利にはアクリルアミド及びアクリルニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノ−及びジエステル、例えばジエチル−及び/又はジイソプロピルエステル並びに無水マレイン酸;エチレン系不飽和スルホン酸もしくはその塩、有利にはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸である。その他の例は、前架橋するコモノマー、例えば多エチレン系不飽和コモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、又は後架橋するコモノマー、例えばN−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、又はN−メチロールアクリルアミド又はN−メチロールメタクリルアミドのエステルである。エポキシ官能性コモノマー、例えばグリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートも適当である。その他の例は、ケイ素官能性のコモノマー、例えばアクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−及びメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−シラン、ビニルトリアルコキシシラン及びビニルメチルジアルコキシシランであり、この場合アルコキシ基はエトキシ−及びエトキシプロピレングリコールエーテル基であってよい。有利な実施態様によれば、全てのモノマーを重合中にフィードで反応容器に加えるが、しかし部分的に先に装入しかつ配量することもできる。
【0022】
使用可能な保護コロイドの例は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、変性デンプン及びデキストリン、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−b−ポリエチレンオキシド−又はポリ(メタ)アクリレート−b−ポリエチレンオキシド−ブロックコポリマー及びカゼインである。有利には、重合度200〜2000及び加水分解度74〜99.5%を有するポリビニルアルコールをモノマー100部当たり1〜20部の量で使用する。保護コロイド又は保護コロイド混合物は先に装入するが、しかし装入と供給に間に分配するか又は重合中だけにフィードで加えることもできる。
【0023】
ラジカル開始剤は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、ナトリウム−、カリウム−又はアンモニウムペルオキソジスルフェートの個々のもの又は組み合わせたものである。本発明の有利な実施態様においては、水溶性ナトリウムペルオキソジスルフェートをt−ブチルペルオキシドと組み合わせて、全モノマーに対して0.01〜2質量%の全量で装入する。活性剤としては、水溶性還元剤、例えば亜硫酸−又は重亜硫酸ナトリウム、−カリウム、−アンモニウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート又はアスコルビン酸が有効である。有利には、活性剤は、重合中に全モノマーに対して0.01〜2質量%の量で配量する。
【0024】
重合中のpH値を調節するためには、一種以上の緩衝剤、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三カリウム、エチレンジアミンテトラアセテート又はニトリロトリ酢酸を使用する。第三アミンを補助のために使用することができる。
【0025】
分子量を調節するために、重合中に調節剤を使用することができる。これらは全モノマーに対して0.1〜3質量%の量で使用する。分子量調節剤は、先に装入する、添加する又は部分的に先に装入しかつ部分的に添加することができる。このような物質の例は、メルカプトン、例えばn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステル、又は第三アミン、例えばトリエタノールアミンである。重合温度は30〜90℃、有利には50〜80℃である。
【0026】
重合は、有利には、全量の保護コロイドを予め装入しかつモノマー及び別の成分を重合中に供給する形式で実施する。しかし、保護コロイド及びモノマーを部分的に予め装入しかつ部分的に添加する、又は保護コロイド及びモノマーを完全に予め装入することも可能である。
【0027】
モノマーの添加を行った後に初めて全水量の一部を加える。その際水を加える開始時点で反応率はモノマー100%に対して少なくとも40%である。このことは、希釈効果により粘度を低く保つために、有利に水を予め装入するか、又は水をモノマーに平行して加える従来の技術と異なっている。全てのモノマーを反応容器に加えかつ反応率がモノマー100%に対して少なくとも40%になった後に1時間で、全水量に対して水20質量%を加えるのが有利である。モノマーの添加を行った後に加えられる水と共に、別の保護コロイドを加えることもできる。別の実施態様においては、モノマーの添加に並行して全水量の10〜60質量%を、又は全水量の10〜60質量%を保護コロイドと一緒に反応器に加えかつモノマー添加を行った後に、分散液の固体含量に対して、水10〜40質量%を場合により保護コロイドと一緒に反応器に加える。この際、水に溶解した保護コロイド量は、分散液の固体含量に対して0.5〜15質量%である。モノマーの添加を行った後に供給する水量及び添加時間は、粘度が低下するように決定する。そのために必要な水量は、添加を1時間以内で行う場合には、その都度の添加速度に基づき、全水量に対して10〜40質量%、有利には20質量%である。本発明による方法が分散液の粘度及びセメント安定性及びそれから噴霧乾燥により製造された粉末の再分散性及びセメント安定性にプラスに作用することは意想外のことであった。
【0028】
固体の水に対する比は、30〜70%、有利には40〜60%の完成した分散液の固体含量に相応して調節する。
【0029】
モノマー添加の終了後に、公知方法で後開始により重合を低い残留モノマーまで更に進行させることができる。
【0030】
該ポリマーは、ガラス転移温度−40〜+100℃、有利には−20〜+50℃を有する。コポリマーの組成は、前記のガラス転移温度が達成されるように選択されている。この場合には、コモノマーの割合を考慮すべきである。TgはFOX式を用いて近似値的に予め計算することができる。FOX T. G., Bull. Am. Physics Soc. 1, 3, page 123 (1956)によれば、1/Tg=x1/Tg1+X2/Tg2+……xn/Tgnが当てはまり、ここでxnはモノマーnの質量分数(質量%/100)を表し、かつTgnはモノマーnのホモポリマーのケルビン度におけるガラス転移温度である。ホモポリマーのためのTg値は、Polymer Handbook 2end Edition, J. Wily & Sons, New York (1975) に記載されている。ポリマーのガラス転移温度Tgは、公知方法で示差走査熱量法(DSC)により確認することができる。
【0031】
本発明による分散液及びそれから製造された粉末は、接着剤組成物、例えば流動接着剤、パテ、モルタル、例えばセメントモルタル、石灰モルタル、乾燥モルタル、プラスター、石膏建材並びに分散塗料を製造するために適当である。
【0032】
本発明の対象はまた、モノマーを助剤の存在下に反応させ、その際モノマーを反応容器に装入しかつモノマー100%に対する反応率が少なくとも40%になった後初めて、全水量の少なくとも10質量%を反応容器に入れることにより得られた、ビニル芳香族化合物及び1,3−ジエン及び場合によりモノマーの全量に対して0.1質量%〜20質量%の量の別のコモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液である。製造及び使用物質は、前記に詳細に記載されている。
【0033】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明する。実験結果は、第1表にまとめられている。
【0034】
分散液の噴霧乾燥
分散液に分散固体100部当たりPVA(約20%の溶液として)10部を加えかつ固体含量を35%に調節した。該ラテックスを噴霧乾燥装置内で空気並流で乾燥させた。粘着防止剤として、タルク/ドロマイト混合物(1:1)10%(固体含量に対して)使用し、これを乾燥中にフィードに並行して供給した。
【0035】
超音波処理を行うか又は行わないで水中で再分散した後の粒度
粉末を水中に分散させかつ0.1%の濃度に希釈した。粒度分布をマルベルン社(Fa. Malvern)のMicrotrac X-100で900秒の超音波処理前及び後に測定した。
【0036】
分散液及びそれから製造された粉末のモルタル特性の測定
分散液、又は分散粉末をモルタル(砂2−4mm400g、砂1〜2mm600g、砂0.5〜1.2mm1000g、砂H33、セメントPZ35F)において水/セメント比(W/C)0.38又は0.46及びプラスチック/セメント比(W/C)0.1及び消泡剤ベバロイド(Bevaloid)6352 DD5gで加工性について試験した。DIN18555に基づき、この値をスランプ値として測定した。ガラス板の真ん中にスランプコーンを用いて、場合によりポリマー分散液又は粉末を有するモルタルケーキを形成した。モルタルコーンもしくはモルタルケーキを、引き続き15ストロークの突き堅め(1ストローク/秒)により板の衝撃の際の揺動によりスランプさせた。0、20、40及び60分後に測定した、スランプしたケーキの直径は、モルタルのスランプ値を生じ、これはモルタルのセメント安定性もしくは加工性のための尺度を反映する。モルタルプリズム体を製造し、これで曲げ強さ及び圧縮強さを測定した。該測定は、7日間の水中貯蔵及び21日間の乾燥貯蔵後に測定した。モルタル混合物の気泡含量をホルム・ウント・テスト・ザイドナー社(Fa. Form und Test Seidner)の空気含量検査器B2030を用いてDIN18555に基づき測定した。標準サンプルとして、市場で慣用の粉末における技術的標準を代表するビニルアセテート−エチレン−コポリマー粉末ビンナパス(Vinnapas)RE 545 Zを一緒に試験した。試験結果は、第1表ににまとめられている。
【0037】
本発明による分散液の製造
実施例1
翼攪拌機及びジャケット温度調節装置を備えた12リットルの圧力オートクレーブに、水1622g、18.9%のPVA溶液(加水分解度約87%)1058g、EDTA4g及びトリエタノールアミン8gを装入しかつ70℃に加熱した。反応器内部温度が一定に保たれた後に、ペルオキソ二硫酸ナトリウム4g及びt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)34.3gを一回で添加した。その後5分で、フィードの配量を開始した。スチレン2400g、t−ドデシルメルカプタン16g、ヒドロキシエチルメタクリレート200g及びブタジエン1400gを5時間で反応器に供給した。それに並行して、2.8%のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液870gを6時間以内で添加した。モノマー配量の終了後に、t−ブチルヒドロペルオキシド(70%)11.4gを一回で添加した。t−ブチルヒドロペルオキシドの添加終了後に、5時間目にモノマー100%に対して46%の反応率で水858gを1時間以内で添加した。水の添加終了後に、重合反応器を更に4時間攪拌下に放置した。引き続き、反応器を20分で室温に冷却した。脱臭した分散液のブロックフィールド粘度は、固体含量50.6%で1560mPas(スピンドル3.30rpm)であった。重合後に、固体含量は48.3%であった。粒度をコウルター・ナノ−サイザー(Coulter Nano-Sizer)で測定し、471nmであった。水中に分散した粉末の粒度は、超音波処理を行わない場合D50=37μmでありかつ900秒間の超音波処理後にD50=9.12μm(Microtrac-X100)であった。モルタル混合物は、該分散液から乾燥により製造した粉末で水/セメント比(W/C)0.38でモルタルケーキに加工可能であるが、これはしかしスランプ値を示さない。W/C比0.46で、モルタル混合物は高いスランプ値を示す(第1表)。
【0038】
実施例2:
翼攪拌機及びジャケット温度調節装置を備えた12リットルの圧力オートクレーブに、水667g、19.6%のPVA溶液(加水分解度約87%)1225g、EDTA4g及びトリエタノールアミン8gを装入しかつ70℃に加熱した。反応器内部温度が一定に保たれた後に、ペルオキソ二硫酸ナトリウム4g及びt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)34.3gを一回で添加した。それに並行して、水874gを1時間以内で添加した。ペルオキソ二硫酸ナトリウム4g及びt−ブチルヒドロペルオキシド添加5分後に、フィードの配量を開始した。スチレン2400g、t−ドデシルメルカプタン16g、ヒドロキシエチルメタクリレート280g及びブタジエン1400gを5時間で反応器に供給した。それに並行して、2.8%のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液870gを6時間以内で添加した。モノマー配量の終了後に、t−ブチルヒドロペルオキシド(70%)11.4gを一回で添加した。t−ブチルヒドロペルオキシドの添加終了後に、5時間目にモノマー100%に対して反応率44%で水858gを1時間以内で添加した。水の添加終了後に、重合反応器を更に4時間攪拌下に放置した。引き続き、反応器を20分で室温に冷却した。分散液のブロックフィールド粘度は、固体含量50.5%(重合後47.8%)及び粒度461nm(Coulter Nano-Sizer)で1460mPasであった。超音波処理を行わないで、水中に分散した粉末の粒度はD50=29.23μmであった。900秒間の超音波処理後に、粉末は平均粒度D50=8.20μmに分解した。モルタル混合物は、該分散液から乾燥により製造した粉末で水/セメント比0.38でセメント安定性であった。
【0039】
実施例3(1277):
翼攪拌機及びジャケット温度調節装置を備えた12リットルの圧力オートクレーブに、水861g、19.6%のPVA溶液(加水分解度約87%)1005g、EDTA4g及びトリエタノールアミン8gを装入しかつ70℃に加熱した。反応器内部温度が一定に保たれた後に、ペルオキソ二硫酸ナトリウム4g及びt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)34.3gを一回で添加した。それに並行して、4.5質量%のPVA溶液865gを1時間以内で添加した。ペルオキソ二硫酸ナトリウム4g及びt−ブチルヒドロペルオキシド添加5分後に、スチレン2400g、t−ドデシルメルカプタン16g、ヒドロキシエチルメタクリレート280g及びブタジエン1400gを5時間で反応器に供給した。それに並行して、2.8%のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液870gを6時間以内で添加した。モノマー配量の終了後に、5時間目にt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)11.4gを一回で添加した。t−ブチルヒドロペルオキシドの添加終了後に、4.5質量%bのPVA溶液865gを1時間以内で添加した。反応率は、添加の開始時にモノマー100%に対して47%であった。PVA溶液の添加終了後に、重合反応器を更に4時間攪拌下に放置した。引き続き、反応器を20分で室温に冷却した。分散液のブロックフィールド粘度は、重合後固体含量50.5%及び粒度539nm(Coulter Nano-Sizer)で1500mPasであった。モルタル混合物は該分散液から乾燥により製造した粉末で水/セメント比0.38でセメント安定性であった。該粉末は水中で平均粒度D50=31.95μmに、かつ900秒間の超音波処理後に平均粒度D50=8.88μmに分解した。該粉末はW/C比0.38でセメント安定性であった。
【0040】
比較例1:
このバッチは実施例1に類似して製造したが、但しモノマー添加後の水の配量を行わなかった。翼攪拌機及びジャケット温度調節装置を備えた12リットルの圧力オートクレーブに、水2533g、19.6%のPVA溶液(加水分解度約87%)1015g、EDTA4g、炭酸ナトリウム12g及びトリエタノールアミン8gを装入しかつ70℃に加熱した。反応器内部温度が一定に保たれた後に、ペルオキソ二硫酸ナトリウム4g及びt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)34.3gを一回で添加した。その5分後に、フィードの配量を開始した。スチレン2460g、t−ドデシルメルカプタン16g、ヒドロキシエチルメタクリレート250g及びブタジエン1340gを5時間で反応器に供給した。それに並行して、2.8%のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート溶液870gを6時間以内で添加した。モノマー配量の終了後に、t−ブチルヒドロペルオキシド(70%)11.4gを一回で添加した。その後、重合反応器を更に5時間攪拌下に放置した。引き続き、反応器を20分で室温に冷却した。該バッチは、極めて粘性でありかつ粒状であるので、後処理されなかった。
【0041】
比較例1は、モノマー添加が行われかつ少なくとも40%の反応率が達成された後初めて水を加えることにより固体含量約50%を有する保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の分散液の製造が達成されることを立証する。水を先に装入するか又は既に予めモノマー添加に並行して、又はモノマー100%に対して反応率40%が達成される前に添加すれば、最終生成物の粘度は極めて高くなる。しばしば、残留モノマーの除去後にそうして製造された分散液は凝集することが観察される。
【0042】
比較例2
比較例1に類似して分散液を製造したが、但しこの場合には付加的に理論的固体含量を50%から40%に低下させた。このようにして、固体含量39.7%、ブロックフィールド粘度175mPas(スピンドル2.30rpm)及び粒度267nm(Coulter-Nano-Sizer)を有するラテックスが得られた。超音波処理を行わない場合、再分散した粉末の平均粒度はD50=66.72μmであった。900秒間の超音波処理後に平均粒度は変化せずにD50=63.77μmであった。モルタル混合物の気泡含量は、11%を有する分散液の添加後に実施例1〜3よりも高かった。これから製造した粉末では、水/セメント比0.38及び0.46でモルタルケーキを製造することができなかった。それというのも、モルタル混合物が乾燥しすぎたからである。比較例2は、モノマー添加を行った後の水の添加は粉末のセメント安定性及び再分散性を改良することを立証する。固体含量を50%から40%に低下させることによる希釈した操作法は、確かに乳化剤不含の分散液の製造を可能にするが、しかしこの粉末はセメント安定性及び再分散性において明らかに悪くなる。更に、低い固体含量を有する分散液の製造は経済的に好ましくない。
【0043】
ビニルアセテート−エチレン−コポリマー粉末VinnapasRE 545 Zの場合には、超音波処理を用いた水中での再分散性は本発明による粉末におけるよりも良好である(第1表)。しかしながら、セメント安定性においては本発明による粉末は同等である。
【0044】
本発明による方法を用いると、無極性かつ疎水性のモノマーをベースとする保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の分散液の重合を達成することができる。該分散液の噴霧乾燥により得られた粉末は、良好な再分散性及びセメント安定性を有する。
【0045】
【表1】
Claims (17)
- 開始剤、pH値調節剤、分子量調節剤から選択される助剤及び場合によりモノマーの全量に対して0.1質量%〜20質量%の量の別のコモノマーの存在下で、ビニル芳香族化合物、1,3−ジエン及び/又は(メタ)アクリル酸エステルから選択される少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液を製造する方法において、モノマー及び保護コロイドを反応容器に装入しかつモノマー100%に対する反応率が少なくとも40%になった後初めて、全水量の少なくとも10質量%を反応容器に入れることを特徴とする、少なくとも2種のモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液の製造方法。
- ビニル芳香族化合物としてスチレン及び/又はメチルスチレンを使用する請求項1記載の方法。
- 1,3−ジエンとして1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンを使用する請求項1又は2記載の方法。
- 1〜15個の炭素原子を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステルを使用する請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
- メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを使用する請求項4記載の方法。
- 保護コロイドとしてポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、変性デンプン、デキストリン、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−b−ポリエチレンオキシド−又はポリ(メタ)アクリレート−b−ポリエチレンオキシド−ブロックコポリマー又はカゼインを単独で又は混合して使用する請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
- 開始剤としてペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、ナトリウム−、カリウム−又はアンモニウムペルオキソジスルフェート、アゾ化合物を単独で又は混合して使用する請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
- pH値調節剤として炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸三カリウム、エチレンジアミンテトラアセテート、又はニトリロトリ酢酸を単独で又は混合して使用する請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
- 分子量調節剤としてn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メチルエステル、及び/又はトリエタノールアミンを単独で又は混合して使用する請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
- ヒドロキシ(C1〜C8−アルキル)(メタ)アクリル酸エステル、エチレン系不飽和モノ−及びジカルボン酸、エチレン系不飽和カルボン酸アミド及び−ニトリル、フマル酸又はマレイン酸のモノ−及びジエステル、エチレン系不飽和スルホン酸もしくはその塩、前架橋するコモノマー、後架橋するコモノマー、エポキシ官能性コモノマー、及びケイ素官能性コモノマーを単独で又は混合して使用する請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
- コモノマーとしてヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシ(2−エチルヘキシル)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミド、アクリルニトリル、フマル酸及びマレイン酸のジエチル−及び/又はジイソプロピルエステル、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸、ジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド(NMMA)、N−メチロールアクリルアミド又はN−メチロールメタクリルアミドのエステル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−及びメタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)−シラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルメチルジアルコキシシラン(この場合アルコキシ基は例えばエトキシ−及びエトキシプロピレングリコールエーテル基であってよい)を単独で又は混合して使用する請求項10記載の方法。
- 重合温度が30〜90℃である請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
- 固体の水に対する比を、30〜70%の完成した分散液の固体含量に相当して調節する請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
- 全量の保護コロイドを装入しかつモノマー及び助剤を重合中に供給する請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
- モノマーを、開始剤、pH値調節剤、分子量調節剤から選択される助剤の存在下に反応させ、その際モノマー及び保護コロイドを反応容器に装入しかつモノマー100%に対する反応率が少なくとも40%になった後初めて、全水量の少なくとも10質量%を反応容器に入れることにより得られた、ビニル芳香族化合物及び1,3−ジエン及び場合によりモノマーの全量に対して0.1質量%〜20質量%の量の別のコモノマーをベースとする、保護コロイドで安定化された、乳化剤不含の水性分散液。
- 請求項1から14までの少なくとも1項に基づき製造された分散液の、再分散可能な粉末を製造するための使用。
- 請求項1から14までの少なくとも1項に基づき製造された分散液の、接着剤組成物、パテ材料、モルタル、石膏建材又は分散塗料を製造するための使用。
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