JP4115032B2 - 消音装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調設備におけるダクト中伝播騒音の消音などに用いる消音装置に関し、詳しくは、複数の共鳴器を消音対象音の伝播方向に並置して、各共鳴器の応答音との干渉で消音対象音を消音する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の消音装置では、消音対象周波数の異なる共鳴器(すなわち、共鳴周波数の異なる共鳴器)を含む3個以上の共鳴器を消音対象音の伝播方向に並べて配置し、これにより、広い周波数帯域にわたっての消音を図ったものが提案されている(例えば、特開平1−296040号公報、特公昭60−46312号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この種の消音装置において安定した消音性能を得るには、装置全体としての音源側への反射率(二乗値)を小さくして透過損失に対する吸音損失の割合を大きく(略言すれば、音源側への反射音を小さく)し、これにより、消音対象音の伝播方向で消音装置部分よりも上手側における伝播経路の音響特性(ダクト等の音響特性)が外乱要因となって装置の消音性能に与える影響を極力小さくすることが重要であるが、前記の従来装置の如く共鳴周波数の異なる共鳴器を単に並置するだけでは、装置全体としての音源側への反射率が大きく、この点、広い周波数帯域にわたっての消音において安定した消音性能を得ることが難しい問題があった。
【0004】
なお、吸音損失AL及び透過損失TLは、各々次式で与えられる。
AL=−10log (|τ|2 +|γ|2
TL=−10log |τ|2
|γ|2 :反射率(二乗値)
|τ|2 :透過率(二乗値)
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、この種の消音装置についての研究に基づいた改良により、広い周波数帯域にわたっての消音を可能にするとともに、その広帯域消音において、上手側伝播経路の音響特性に影響され難い安定した消音性能を得られるようにする点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
〔1〕請求項1に係る発明では、消音対象音の伝播経路としての風路を内部に形成する筒体の外周部に、筒体の内部風路に対して開口する共鳴口を有する共鳴器の3個以上を、共鳴周波数の異なる共鳴器が隣り合う位置関係となる状態で、かつ、共鳴周波数の等しい共鳴器が隣り合わない位置関係で含まれることを許して、消音対象音の伝播方向に並置し、この共鳴器列において、消音対象音の伝播方向で上手側の上位並び順位に配置する上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を、消音対象音の伝播方向で下手側の下位並び順位に配置する下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値よりも大きくした構成とする。
【0007】
つまり、この構成では、基本的には、音源から伝播する消音対象音に対し、その伝播方向に並置した複数の共鳴器を応答させることにおいて、これら共鳴器を各共鳴器の応答音に対しても相互に応答させて、これら共鳴器どうしの間で共鳴周波数をピーク周波数とする応答音の行き来が生じるようにし、これにより、消音対象音に対する共鳴器応答音の干渉作用を促進して消音対象音を効果的に減衰させ、もって高い透過損失を得る。
【0008】
また、この共鳴器列に共鳴周波数が異なる2個以上の共鳴器を含ませることにより、行き来する応答音が2以上のピーク周波数を有するようにし、これにより、単一のピーク周波数を示す応答音を行き来きさせるだけ(すなわち、共鳴周波数の等しい共鳴器を並置するだけの装置)に比べ、より広い周波数帯域にわたって上記の消音機能が効果的に得られるようにする。
【0009】
そしてまた、3個以上の共鳴器を並置することにより、単に2個の共鳴器の間だけで応答音を行き来させて消音するに比べ、個々の共鳴器の共鳴室容積を小さくしながら高い消音機能を得られるようにして、その共鳴室容積の縮小化により共鳴室内での音圧分布の偏りを抑制した状態で各共鳴器に所期の共鳴特性を確実に発揮させ、また、共鳴器間での相互応答のパターン数を効果的に増加させて消音対象音と共鳴器応答音との干渉機会を増加させ、これらのことで、所期の消音機能(特に、上記の広帯域消音機能)をより確実に得られるようにする。
【0010】
ちなみに、図1は次の3個の共鳴器K11〜K13をその順に消音対象音Pの伝播方向上手側から並置した装置、及び、その装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示し、
共鳴器K11:f0 =140,R=1.2
共鳴器K12:f0 =115,R=0.5
共鳴器K13:f0 = 65,R=0.1
0 :共鳴周波数(Hz),R:インピーダンス抵抗値
また、図11は次の2個の共鳴器K1 ,K2 をその順に消音対象音Pの伝播方向上手側から並置した装置、及び、その装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示すが、
共鳴器K1 :f0 =101,R=0.7
共鳴器K2 :f0 = 88,R=0.1
これら図1及び図11に示す装置の比較からも分かるように、2個の共鳴器を並置するだけの装置では、高い消音機能を得るのに共鳴器の共鳴室容積が大きくなって(図11の例では下手側共鳴器K2 の共鳴室容積が大きくなって)、共鳴室内の音圧分布に偏りが生じ易く、また、共鳴器間での相互応答のパターンも図1に示す装置では3パターンであるのに対し1パターンに限られて、消音対象音Pと共鳴器応答音との干渉機会が少なく、この為、図11の(ロ)に示す如き消音性能を確実かつ安定的に得ることが難しいのに対し、3個以上の共鳴器を並置する構成を採れば、この問題を効果的に解消して図1の(ロ)に示す如き消音性能を確実かつ安定的に得ることができる。
【0011】
そしてさらに、これら基本的な消音機能に加え、前記構成では、3個以上の共鳴器を消音対象音の伝播方向に並べて配置するのに、共鳴周波数の異なる共鳴器が隣り合う位置関係となる配置形態(共鳴周波数の等しい共鳴器が隣り合わない位置関係で含まれることを許し、また逆に、全ての共鳴器を共鳴周波数の異なる共鳴器とする場合を含む)を採り、かつ、この共鳴器列において、消音対象音の伝播方向で上手側の上位並び順位に配置する上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を、消音対象音の伝播方向で下手側の下位並び順位に配置する下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値よりも大きくすることにより、装置全体としての音源側への反射率(二乗値)を効果的に低減して、吸音損失を効果的に増大させる。
【0012】
すなわち、図2及び図12〜図14は、次の4つの共鳴器K21〜K24の配置順序を種々変更した装置、及び、各装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示すが、
共鳴器K21:f0 =125,R=0.9
共鳴器K22:f0 = 63,R=0.9
共鳴器K23:f0 =125,R=0.1
共鳴器K24:f0 = 63,R=0.1
0 :共鳴周波数(Hz),R:インピーダンス抵抗値
この例において図2に示す装置と図12〜図14に示す各装置との比較からも分かるように、共鳴周波数の異なる共鳴器が隣り合う位置関係となるようにするとともに、上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値よりも大きくする上記構成を採れば、装置全体としての音源側への反射率(二乗値)を効果的に低減して、吸音損失ALを効果的に増大させることができ、このことは、図2及び図12〜図14の装置例に限らず、一般的に得られる効果であることが種々の実験により確認された。
【0013】
ちなみに、図14に示す装置と図12及び図13に示す各装置との比較からは、上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値より大きくすることだけでも、吸音損失ALをある程度増大し得ることが分かるが、これは、前記の如く共鳴器間で応答音を行き来させる形態を採りながらも、共鳴器応答音のうち共鳴器列から音源側へ反射する応答音(すなわち、上手側伝播経路の音響特性が消音性能に悪影響を及ぼすことの原因となる反射音)を、大きなインピーダンス抵抗値を備える上手側共鳴器の高い吸音性をもって吸音することで得られる効果であり、前記の構成では、この効果と共鳴周波数の異なる共鳴器を隣り合う位置関係とすることで得られる音響上の作用との協動で、吸音損失ALがより効果的に増大するものと考えられる。
【0014】
以上のことから、請求項1に係る発明の前記構成によれば、広い周波数帯域にわたって高い消音効果を得られるとともに、その広帯域消音において、消音装置部分よりも上手側における伝播経路の音響特性が消音性能に影響を及ぼすことを効果的に抑止した状態で、先述の如き従来装置に比べ一層安定した消音性能を得ることができる。
【0015】
なお、請求項1に係る発明の実施にあたり、奇数個の共鳴器を並置する場合、消音対象音の伝播方向で中央順位に配置する共鳴器は、上手側共鳴器及び下手側共鳴器夫々の平均インピーダンス抵抗値の算出において、上手側共鳴器及び下手側共鳴器の両方に含めるか、あるいは、いずれにも含めないものとするが、その中央順位共鳴器のインピーダンス抵抗値は、それよりも上手側の共鳴器の平均インピーダンス抵抗値、及び、それよりも下手側の共鳴器の平均インピーダンス抵抗値のいずれからもあまり大きくかけ離れない値にするのが好ましい。
【0016】
また、上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値よりも大きくするにあたっては、全ての上手側共鳴器(ないしは、ほぼ全ての上手側共鳴器)を、下手側共鳴器のうち最も大きいインピーダンス抵抗値を備える共鳴器よりも大きいインピーダンス抵抗値の共鳴器とするのが好ましく、その方が装置全体としての音源側への反射率(二乗値)をより効果的に低減できる傾向がある。
【0017】
消音対象音の伝播方向での各共鳴器の共鳴口間隔は、前記構成の下で透過損失TL及び吸音損失ALを最大化できる間隔を選定すればよく、定性的には、上手側共鳴器の共鳴口を、下手側共鳴器からの反射応答音と音源からの消音対象音との干渉により消音対象周波数での音圧が増大する位置(略言すれば、消音対象周波数での音エネルギが集中する位置)に配置することが好ましく、このように配置すれば、集中する音エネルギを上手側共鳴器の吸音性をもって効率的に吸収する形態で、透過損失TL及び吸音損失ALを効果的に高めることができる。
【0018】
共鳴器のインピーダンス抵抗値Rは共鳴器の音響インピーダンス密度Zにおける実部として与えられ、また、共鳴器の音響インピーダンス密度Zは次式で与えられる。
Figure 0004115032
【0019】
〔2〕請求項2に係る発明では、前記した請求項1に係る発明の実施にあたり、前記上手側共鳴器を互いの共鳴周波数が異なる共鳴器にし、かつ、前記下手側共鳴器を互いの共鳴周波数が異なる共鳴器にする。
【0020】
つまり、この構成によれば、上手側共鳴器夫々の共鳴周波数の異なり、及び、下手側共鳴器夫々の共鳴周波数の異なりにより、これら共鳴器間で行き来させる応答音のピーク周波数を効果的に多元化する(換言すれば、行き来させる応答音を広い周波数帯域にわたって効果的に平準化する)ことができ、また、上手側共鳴器の吸音性も広い周波数帯域にわたってより均等に発揮させることができ、これらのことから、前述の如き消音機能を広い周波数帯域にわたり一層均等に得ることができて、その点で広帯域消音性能をさらに高めることができる。
【0021】
〔3〕請求項3に係る発明では、前記した請求項1又は2に係る発明の実施にあたり、前記共鳴器列において、互いの共鳴周波数が等しい又は近い上手側共鳴器と下手側共鳴器の対を設け、
この共鳴器対における上手側共鳴器のインピーダンス抵抗値を、その共鳴器対における下手側共鳴器のインピーダンス抵抗値よりも大きくする。
【0022】
つまり、この構成によれば、上記対を成す共鳴周波数の等しい又は近い上手側共鳴器と下手側共鳴器との間で、それら共鳴器の共鳴周波数ないしそれに近い周波数をピーク周波数とする応答音を行き来させることに対し、共鳴器列から音源側へ反射する応答音のうち、そのピーク周波数部分の音(すなわち、音源側への反射音のうち強度の高い周波数部分)を、この共鳴器対において大きなインピーダンス抵抗値を備える上手側共鳴器の高い吸音性をもって確実かつ効果的に吸音することができ、これにより、吸音損失の増大をより確実かつ効果的に達成することができる。
【0023】
なお、上記の共鳴器対を異なる共鳴周波数について複数対設ければ、広い周波数帯域にわたっての吸音損失の増大をより確実かつ効果的なものにすることができる。
【0024】
〔4〕請求項4に係る発明では、前記した請求項1〜3のいずれか1項に係る発明の実施にあたり、共鳴周波数の異なる共鳴器として、隣り合う1/1オクターブ帯域夫々の中心周波数、又は、それら中心周波数に近い周波数を各々の共鳴周波数とする共鳴器を前記共鳴器列に含ませる。
【0025】
つまり、この構成によれば、前述の如く、共鳴器列に共鳴周波数が異なる2個以上の共鳴器を含ませることで、行き来する応答音が2以上のピーク周波数を有するようにして、広い周波数帯域で高い消音機能が得られるようにするのに、共鳴周波数の異なる共鳴器として、隣り合う1/1オクターブ帯域夫々の中心周波数、又は、それら中心周波数に近い周波数を各々の共鳴周波数とする共鳴器を共鳴器列に含ませることから、それら隣り合う1/1オクターブ帯域にわたる極めて広い周波数帯域について高い消音効果を得ることができる。
【0026】
なお、請求項4に係る発明の実施においては、2つの隣り合う1/1オクターブ帯域夫々の中心周波数又はそれら中心周波数に近い周波数を各々の共鳴周波数とする共鳴器を共鳴器列に含ませるだけに限らず、3以上の隣り合う1/1オクターブ帯域夫々の中心周波数又はそれら中心周波数に近い周波数を各々の共鳴周波数とする共鳴器を共鳴器列に含ませ、これにより、さらに広い周波数帯域で高い消音機能を得られるようにしてもよい。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1は、1/1オクターブ63Hz帯域と1/1オクターブ125Hz帯域とにわたる2オクターブを消音帯域とする本発明の実施例装置、及び、その装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示し、この装置では、消音対象音Pの伝播方向でその上手側から順に次の3つの共鳴器K11〜K13を並置してある。
共鳴器K11:f0 =140,R=1.2
共鳴器K12:f0 =115,R=0.5
共鳴器K13:f0 = 65,R=0.1
0 :共鳴周波数(Hz),R:インピーダンス抵抗値
【0028】
つまり、この図1の実施例装置では、共鳴周波数f0 が互いに異なる3つの共鳴器K11〜K13を消音対象音Pの伝播方向に並置し、この共鳴器列において、消音対象音Pの伝播方向で上手側の上位並び順位に配置する上手側共鳴器K11,K12の平均インピーダンス抵抗値{=(1.2+0.5)/2}を、下手側の下位並び順位に配置する下手側共鳴器K12,K13の平均インピーダンス抵抗値{=(0.5+0.1)/2}よりも大きくしてある。
【0029】
また、隣り合う1/1オクターブ63Hz帯域と1/1オクターブ125Hz帯域とにわたる広帯域消音を可能にするのに、共鳴周波数f0 の異なる共鳴器として、1/1オクターブ63Hz帯域の中心周波数(63Hz)に近い周波数を共鳴周波数f0 とする共鳴器K13と、1/1オクターブ125Hz帯域の中心周波数(125Hz)に近い周波数を共鳴周波数f0 とする共鳴器K11,K12とを用いてある。
【0030】
図2は、同じく1/1オクターブ63Hz帯域と1/1オクターブ125Hz帯域とにわたる2オクターブを消音帯域とする本発明の別の実施例装置、及び、その装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示し、この装置では、消音対象音Pの伝播方向でその上手側から順に次の4つの共鳴器K21〜K24を並置してある。
共鳴器K21:f0 =125,R=0.9
共鳴器K22:f0 = 63,R=0.9
共鳴器K23:f0 =125,R=0.1
共鳴器K24:f0 = 63,R=0.1
0 :共鳴周波数(Hz),R:インピーダンス抵抗値
【0031】
つまり、この図2の実施例装置では、1/1オクターブ63Hz帯域の中心周波数(63Hz)を共鳴周波数f0 とする2個の共鳴器K22,K24と、1/1オクターブ125Hz帯域の中心周波数(125Hz)を共鳴周波数f0 とする2個の共鳴器K21,K23との計4個の共鳴器を、共鳴周波数f0 の異なる共鳴器が隣り合う位置関係となる状態で、消音対象音Pの伝播方向に並べて配置し、この共鳴器列において、消音対象音Pの伝播方向で上手側の上位並び順位に配置する上手側共鳴器K21,K22の平均インピーダンス抵抗値{=(0.9+0.9)/2}を、下手側の下位並び順位に配置する下手側共鳴器K23,K24の平均インピーダンス抵抗値{=(0.1+0.1)/2}よりも大きくしてある。
【0032】
また、この装置では、上手側共鳴器K21,K22を互いの共鳴周波数f0 が異なる共鳴器にし、かつ、下手側共鳴器K23,K24を互いの共鳴周波数f0 が異なる共鳴器にするとともに、互いの共鳴周波数f0 が等しい上手側共鳴器と下手側共鳴器の対として、共鳴周波数f0 が63Hzについての1対(K22・K24)と共鳴周波数f0 が125Hzについての1対(K21・K23)との計2対を設けるようにし、これら共鳴器対の各々について、上手側共鳴器K21,K22のインピーダンス抵抗値Rを下手側共鳴器K23,K24のインピーダンス抵抗値Rよりも大きくしてある。
【0033】
図3〜図6の各図は、1/1オクターブ63Hz帯域を消音帯域とする本発明の他の実施例装置、及び、各装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示し、また、図7〜図9の各図は、1/1オクターブ63Hz帯域と1/1オクターブ125Hz帯域とにわたる2オクターブを消音帯域とする本発明の他の実施例装置、及び、各装置による透過損失TLと吸音損失AL(夫々の太線グラフは帯域平均損失)を示す。
【0034】
これら図3〜図9のいずれに示す実施例装置も、共鳴周波数f0 の異なる共鳴器が隣り合う位置関係となる状態で、かつ、共鳴周波数f0 の等しい共鳴器が隣り合わない位置関係で含まれることを許して、3個以上の共鳴器Kn を消音対象音Pの伝播方向に並べて配置し、この共鳴器列において、消音対象音Pの伝播方向で上手側の上位並び順位に配置する上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を、消音対象音Pの伝播方向で下手側の下位並び順位に配置する下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値よりも大きくした構成にしてある。
【0035】
また、図3〜図9のいずれに示す実施例装置も、上手側共鳴器を互いの共鳴周波数f0 が異なる共鳴器にし、かつ、下手側共鳴器を互いの共鳴周波数f0 が異なる共鳴器にしてある。
【0036】
そして、1/1オクターブ63Hz帯域と1/1オクターブ125Hz帯域とにわたる2オクターブを消音帯域とする図7〜図9に示す実施例装置では、共鳴周波数f0 の異なる共鳴器として、1/1オクターブ63Hz帯域の中心周波数(63Hz)又はその中心周波数に近い周波数を共鳴周波数f0 とする共鳴器と、1/1オクターブ125Hz帯域の中心周波数(125Hz)又はその中心周波数に近い周波数を共鳴周波数f0 とする共鳴器を共鳴器列に含ませてある。
【0037】
さらにまた、図7に示す実施例装置については、互いの共鳴周波数f0 が等しい上手側共鳴器と下手側共鳴器の対として、共鳴周波数f0 が63Hzについての1対と共鳴周波数f0 が140Hzについての1対との計2対を共鳴器列に含ませ、これら共鳴器対の各々について、上手側共鳴器のインピーダンス抵抗値Rを下手側共鳴器のインピーダンス抵抗値Rよりも大きくしてある。
【0038】
上記の各図に示す装置では、両端部を空調設備のダクト1に対する接続端とする内筒体2と、その内筒体2を外側から囲う外筒体3を設け、これら内筒体2と外筒体3との間の環状空間を筒芯方向で仕切って複数の環状室an を形成し、また、各環状室an について、それら環状室an と内筒体2の内部風路とを連通させる小開口bn を、夫々、筒体周方向に複数個分散させた状態で内筒体2に形成し、これにより、各環状室an を共鳴室とし、かつ、各小開口bn を共鳴口とする共鳴器Kn の並置列を形成して、この共鳴器列により、ダクト1中を伝播する消音対象音Pを消音するようにしてある。
【0039】
また、各共鳴器Kn の共鳴周波数f0 は、各々の共鳴口径、共鳴口数、共鳴室容積などの調整により設定し、各共鳴器Kn のインピーダンス抵抗値Rは、共鳴室an に充填する吸音材の充填量調整や、笛吹き音防止用として共鳴口bn を塞ぐ状態に張設する通気性膜状体cn の厚さ調整などにより設定してある。
【0040】
なお、図中に記した寸法は、各図(ロ)に示す消音性能データを採取した実験装置の各部寸法(単位mm)を示す。
【0041】
〔別実施形態〕
前述の実施形態では、内筒体2周りの環状室an を共鳴室として各共鳴器Kn を形成する例を示したが、本発明の実施において、消音対象音Pの伝播方向に並置する各共鳴器Kn の具体的形状・構造は種々の変更が可能であり、例えば、図10の(イ)〜(ニ)に示す如く、消音対象音Pの伝播方向に並置する共鳴器Kn の夫々について、各々の共鳴室an を複数室an-1 ,an-2 ,……に分割し、これら分割室an-1 ,an-2 ,……を消音対象音Pの伝播経路を形成する角筒体2′の外周部に分散配置する構造を採用するなどしてもよい。
【0042】
消音対象音は空調設備におけるダクト中伝播騒音に限られるものではなく、本発明による消音装置は、各種分野における種々の伝播音の消音に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図2】別の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図3】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図4】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図5】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図6】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図7】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図8】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図9】その他の実施例装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図10】別の実施形態を示す概略斜視図
【図11】比較装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図12】その他の比較装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図13】その他の比較装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【図14】その他の比較装置を示す縦断面図と、その装置の消音性能を示すグラフ
【符号の説明】
0 共鳴周波数
K 共鳴器
P 消音対象音
R インピーダンス抵抗値

Claims (4)

  1. 消音対象音の伝播経路としての風路を内部に形成する筒体の外周部に、筒体の内部風路に対して開口する共鳴口を有する共鳴器の3個以上を、共鳴周波数の異なる共鳴器が隣り合う位置関係となる状態で、かつ、共鳴周波数の等しい共鳴器が隣り合わない位置関係で含まれることを許して、消音対象音の伝播方向に並置し、
    この共鳴器列において、消音対象音の伝播方向で上手側の上位並び順位に配置する上手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値を、消音対象音の伝播方向で下手側の下位並び順位に配置する下手側共鳴器の平均インピーダンス抵抗値よりも大きくしてある消音装置。
  2. 前記上手側共鳴器を互いの共鳴周波数が異なる共鳴器にし、かつ、前記下手側共鳴器を互いの共鳴周波数が異なる共鳴器にしてある請求項1記載の消音装置。
  3. 前記共鳴器列において、互いの共鳴周波数が等しい又は近い上手側共鳴器と下手側共鳴器の対を設け、
    この共鳴器対における上手側共鳴器のインピーダンス抵抗値を、その共鳴器対における下手側共鳴器のインピーダンス抵抗値よりも大きくしてある請求項1又は2記載の消音装置。
  4. 共鳴周波数の異なる共鳴器として、隣り合う1/1オクターブ帯域夫々の中心周波数、又は、それら中心周波数に近い周波数を各々の共鳴周波数とする共鳴器を前記共鳴器列に含ませてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の消音装置。
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