JP4114965B2 - ブロー成形用樹脂組成物よりなる医療用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロー成形用樹脂組成物よりなる医療用容器に関するものである。さらに詳しくは、加工性に優れ、透明であり、さらに輸液バックなどの滅菌耐熱性が要求される医療用途に好適なブロー成形用樹脂組成物よりなる医療用容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン(以下、HP−LDPEという)は、分子鎖中に長鎖分岐を持つため、溶融張力が高く、高剪断下での流動性に優れ、肉厚が均一で表面状態の良いブロー成形体が得られることから、ブロー成形用樹脂として広く用いられている。
【0003】
しかし、HP−LDPEは融点が比較的低いために、輸液バックなどの加熱滅菌処理が必要な医療容器として使用する場合には耐熱性が不足するという問題がある。また、HP−LDPEは機械強度が小さいために、ブロー成形体ではピンチオフ部の強度が弱く、加熱処理などの過酷な条件に耐えうる信頼性の面でも問題がある。従って、HP−LDPEは加工性の面で優れた特性を有しているにもかかわらず、その使用範囲が限られていた。
【0004】
一方、加熱滅菌処理に耐えうる耐熱性や機械強度を有するものとしては、従来公知のチーグラー型触媒で得られるエチレン/α−オレフィン共重合体が知られている。しかし、これらは分子鎖中に長鎖分岐を持たないため、同じメルトフローレートのHP−LDPEに比べて溶融張力が低く、ブロー成形時のドローダウンが大きいために成形が困難になるという問題がある。
【0005】
以上のことから、実際のブロー成形材料には、それぞれの特徴を生かす目的でエチレン/α−オレフィン共重合体とHP−LDPEのブレンド物が使用されている。
【0006】
最近、日本薬局方の改正により、輸液バックなどの医療容器に対して、充填物中に混在する異物の識別を容易にするために、透明性に関する規定が導入された。ここで問題となることは、チーグラー型触媒で得られるエチレン/α−オレフィン共重合体とHP−LDPEのブレンドでは上記規定を満足する透明性が得られない点にある。一般に、エチレン/α−オレフィン共重合体は、α−オレフィンの含有量を増加させることによって密度が低下し、透明性は向上するが、チーグラー型触媒で得られるエチレン/α−オレフィン共重合体は組成分布が広いために、低密度においても高結晶成分が存在する。このことは、滅菌耐熱性に対しては好ましい特性であるが、透明性に対して悪影響を及ぼし、HP−LDPEとのブレンドにより透明性の高い容器を得ようとしても、おのずと限界があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エチレン/α−オレフィン共重合体とHP−LDPEとの組成物において、ブロー成形性に優れ、透明であり、さらに輸液バックなどの滅菌耐熱性が要求される医療用途に好適な、これまでにないブロー成形用樹脂組成物よりなる医療用容器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ある特定の密度範囲にあり、分子量分布および組成分布が狭く、かつ滅菌耐熱処理を行う温度以上で融解する結晶の量が特定範囲にあるエチレン/α−オレフィン共重合体に、特定のメルトフローレートを有する低密度ポリエチレンをブレンドした樹脂組成物よりなる医療用容器が、ブロー成形性や滅菌耐熱性に関する従来の特徴に加えて、透明性が著しく向上することを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(a)密度が0.915〜0.930g/cm3の範囲であり、
(b)190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.3〜10g/10分であり、
(c)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3以下であり、
(d)示差走査型熱量計において、200℃で5分間溶融し、その後10℃/分で30℃まで降温し、再度10℃/分で昇温させた時に得られる吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが(1)式で示される関係を満たし、
Tm<−1.5×SCB+138 (1)
(e)上記吸熱曲線から求めた110℃での残存結晶化度が5重量%以上40重量%未満の範囲にある
エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体40〜95重量%、および
(f)密度が0.910〜0.935g/cm3の範囲であり、
(g)190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜3g/10分である
低密度ポリエチレン60〜5重量%
からなるブロー成形用樹脂組成物よりなることを特徴とする医療用容器に関するものである。
【0010】
ここで、エチレン/α−オレフィン共重合体は、密度が0.915〜0.930g/cm3の範囲にある。密度が0.930g/cm3を越える場合は、低密度ポリエチレンとのブレンドによる透明性の改良効果が充分でなく、目的とする透明性が得られない。一方、密度が0.915g/cm3未満であると耐熱性が不足し、滅菌処理等により成形体の変形や透明性の低下が生じるため好ましくない。
【0011】
このエチレン/α−オレフィン共重合体は、190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.3〜10g/10分の範囲にある。MFRが0.3g/10分未満では、溶融粘度が高くなって加工が困難となる。一方、10g/10分より大きい場合は、ドローダウンが大きくブロー成形が困難となる。
【0012】
このエチレン/α−オレフィン共重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が3以下である。Mw/Mnが3を越えるとワックス成分が増加し、医療容器として使用する場合のクリーン性が低下すると共に、滅菌処理等によりブロッキングが生じて、透明性の低下やべたつきの原因となるため好ましくない。
【0013】
このエチレン/α−オレフィン共重合体は、Tm(℃)と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが(1)式の関係を満たすものである。この式を満たさないエチレン/α−オレフィン共重合体は組成分布が広く、透明性に悪影響を及ぼす高結晶成分が存在するため好ましくない。
【0014】
Tm<−1.5×SCB+138 (1)
このエチレン/α−オレフィン共重合体は、110℃での残存結晶化度が5重量%以上40重量%未満の範囲にある。残存結晶化度が5重量%未満の場合は耐熱性が不足し、滅菌処理等により成形体の変形や透明性の低下が生じるため好ましくない。一方、40重量%以上の場合は、透明性に悪影響を及ぼす高結晶成分が存在するため、目的とする効果が得られない。
【0015】
以上、上記のエチレン/α−オレフィン共重合体は、例えば、メタロセン系触媒を用いて得ることができる。以下に、その触媒系および重合方法を例示するが、本発明におけるエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法は、これに限定されるものではない。
【0016】
具体的には、メタロセン系触媒は、a)メタロセン化合物、b)イオン性化合物、c)有機アルミニウム化合物を構成成分とする触媒系を例示することができる。
【0017】
a)メタロセン化合物は、下記一般式(2)または(3)
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
[式中、Cp1,Cp2は各々独立してシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基またはこれらの置換体であり、R1は低級アルキレン基、置換アルキレン基、ジアルキルシランジイル基、ジアルキルゲルマンジイル基、アルキルホスフィンジイル基またはアルキルイミノ基であり、R1はCp1およびCp2を架橋するように作用しており、R2,R3は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基またはアリーロキシ基であり、M1はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である]
で示される化合物であり、その具体的な化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシランジイルビス(4−t−ブチル,2−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(2,4,5−トリメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジエチルシランジイルビス(4−t−ブチル−2−メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレンビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、メチルフェニルメチレンビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、イソプロピリデン(インデニル)チタニウムジクロライド、ジフェニルメチレンビス(インデニル)チタニウムジクロライド等のチタニウム化合物や、そのチタニウムをジルコニウムやハフニウムに置換した化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記化合物を1種類または2種類以上混合して用いることもできる。
【0021】
b)イオン性化合物は、
[HL1 l][M2Z4] (4)
[式中、Hはプロトンであり、L1は各々独立してルイス塩基であり、lは0<l≦2であり、M2はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、Zは各々独立して炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、アリール基、アルキルアリール基もしくはアリールアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換アリールオキシ基またはハロゲン原子]
で表されるプロトン酸、
[C][M2Z4] (5)
[式中、Cはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンであり、M2はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、Zは各々独立して炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、アリール基、アルキルアリール基もしくはアリールアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基もしくはハロゲン置換アルコキシ基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリールオキシ基またはハロゲン原子]
で表されるルイス酸、または
[M3L2 p][M2Z4] (6)
[式中、M3は周期表の1族,2族,8族,9族,10族,11族および12族から選ばれる金属の陽イオンであり、M2はホウ素原子、アルミニウム原子またはガリウム原子であり、Zは各々独立して炭素数1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、アリール基、アルキルアリール基もしくはアリールアルキル基、炭素数1〜20のハロゲン置換炭化水素基もしくはハロゲン置換アルコキシ基、炭素数6〜20のハロゲン置換アリールオキシ基またはハロゲン原子であり、L2はルイス酸基またはシクロペンタジエニル基であり、pは0≦p≦2である]
で表される金属塩からなる化合物であり、これらの具体的な化合物としては、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(m−トリル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(m−トリル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフォニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(m−トリル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トロピリウムテトラキス(m−トリル)ボレート、トロピリウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(フェニル)ボレート、リチウムテトラキス(p−トリル)ボレート、リチウムテトラキス(m−トリル)ボレート、リチウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、リチウムテトラフルオロボレート、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(フェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(p−トリル)ボレート、ナトリウムテトラキス(m−トリル)ボレート、リチウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、ナトリウムテトラフルオロボレート、カリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、カリウムテトラキス(フェニル)ボレート、カリウムテトラキス(p−トリル)ボレート、カリウムテトラキス(m−トリル)ボレート、カリウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、カリウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、カリウムテトラフルオロボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(p−トリル)アルミネート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(p−トリル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(p−トリル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、リチウムテトラキス(フェニル)アルミネート、リチウムテトラキス(p−トリル)アルミネート、リチウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、リチウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、リチウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、リチウムテトラフルオロアルミネート、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ナトリウムテトラキス(フェニル)アルミネート、ナトリウムテトラキス(p−トリル)アルミネート、ナトリウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、ナトリウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、ナトリウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、ナトリウムテトラフルオロアルミネート、カリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、カリウムテトラキス(p−トリル)アルミネート、カリウムテトラキス(m−トリル)アルミネート、カリウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)アルミネート、カリウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)アルミネート、カリウムテトラフルオロアルミネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記化合物を1種類または2種類以上混合して用いることもできる。
【0022】
c)有機アルミニウム化合物は、
AlR4R4'R4" (7)
[式中、R4,R4',R4"は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基であり、かつ少なくとも1つはアルキル基である]
で表される化合物であり、これらの具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、ジイソプロピルアルミニウムクロライド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、トリ(t−ブチル)アルミニウム、ジ(t−ブチル)アルミニウムクロライド、t−ブチルアルミニウムジクロライド、トリアミルアルミニウム、ジアミルアルミニウムクロライド、アミルアルミニウムジクロライド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記化合物を1種類または2種類以上混合して用いることもできる。
【0023】
上記触媒系の調製方法には特に制限はないが、例えば、メタロセン化合物、有機アルミニウム化合物およびイオン性化合物の各々に対して、不活性な溶媒下で混合する方法が挙げられる。
【0024】
イオン性化合物は、メタロセン化合物に対して一般に0.01〜1000倍モルの範囲で用いられ、好ましくは0.2〜200倍モルの範囲である。
【0025】
有機アルミニウムの使用量については特に制限はないが、通常、メタロセン化合物に対して1〜1000倍モル程度用いられる。さらに、上記触媒系を用いた重合は、液相でも気相でも行うことができる。仮に、重合を液相で行う場合は、溶媒としては一般に用いられる有機溶剤であればいずれでもよく、具体的には、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン等が挙げられる。また、エチレン、α−オレフィン自身を溶媒とすることもできる。
【0026】
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのうち1種類または2種類以上が用いられる。
【0027】
重合温度に関しては特別な制限はないが、通常、−100〜300℃の範囲で行うことが好ましい。また、重合圧力についても特に制限はなく、通常は大気圧〜30kgf/cm2で行われるが、大気圧〜3500kgf/cm2の範囲で行うことも可能である。
【0028】
上記触媒系を担体に担持させてなる固体触媒として用い、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンを共重合させることにより、本発明におけるエチレン/α−オレフィン共重合体を得ることもできる。このような固体触媒は、メタロセン化合物、メタロセン化合物とイオン性化合物との混合物、メタロセン化合物と有機アルミニウム化合物との反応生成物、イオン性化合物自体または有機アルミニウム化合物自体を、例えば、シリカ、アルミナ、塩化マグネシウム、スチレン/ジビニルベンゼン共重合体またはポリエチレンのような担体上に付着させることによって得ることができる。
【0029】
次に、本発明における低密度ポリエチレンは、密度が0.910〜0.935g/cm3の範囲である。密度が0.910g/cm3未満の場合は、成形体にブロッキングが生じると共に、医療容器として使用する場合のクリーン性が低下するため好ましくない。また、密度が0.935g/cm3より大きい場合は、エチレン/α−オレフィン共重合体とのブレンドにより、目的とする透明性が得られない。
【0030】
この低密度ポリエチレンは、190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜3g/10分の範囲である。MFRが0.1g/10分より小さい場合は、エチレン/α−オレフィン共重合体との均一な混練が難しくなり、MFRが3g/10分より大きい場合は、エチレン/α−オレフィン共重合体とのブレンドにより、目的とする透明性の改良効果が得られないと共に、ワックス成分が増加し、医療容器として使用する場合のクリーン性が低下するため好ましくない。
【0031】
本発明で用いる低密度ポリエチレンは、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。
【0032】
本発明の組成物は、特定のエチレン/α−オレフィン共重合体に特定の低密度ポリエチレンを重量比で95:5〜40:60の範囲で混合することによって製造することができる。低密度ポリエチレンのブレンド量が5重量%未満の場合は、ドローダウンが大きく、ブロー成形が困難になる。また、60重量%を越えると透明性、耐熱性および機械強度の低下が生じるため、目的とする物性が得られない。
【0033】
この場合、エチレン/α−オレフィン共重合体にブレンドする低密度ポリエチレンは、1種類または2種類以上の混合物であってもかまわない。
【0034】
本発明におけるブロー成形用樹脂組成物は、エチレン/α−オレフィン共重合体と低密度ポリエチレンをドライブレンドして使用してもよいし、押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した後、使用してもかまわない。
【0035】
また、本発明におけるブロー成形用樹脂組成物には、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング剤等のポリオレフィンに一般に用いられている添加剤を、特に医療容器として用いる場合にはクリーン性に問題が生じない範囲内であれば添加してもかまわない。
【0036】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例および比較例におけるエチレン/α−オレフィン共重合体としては、エチレン/1−ブテン共重合体またはエチレン/1−ヘキセン共重合体を用いた。これらを得るために用いた触媒系は、メタロセン化合物としてジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、イオン性化合物としてN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、そして有機アルミニウム化合物としてトリイソブチルアルミニウムであり、メタロセン化合物、イオン性化合物および有機アルミニウムの量は、メタロセン化合物:イオン性化合物:有機アルミニウム(モル比)で1:2:250である。触媒の調製には溶媒としてトルエンを用いた。ここで用いたエチレン/α−オレフィン共重合体は、上記の触媒系を用い、重合温度165℃、重合圧力900kgf/cm2で重合することによって得られたものである。重合操作、反応および溶媒精製は、すべて不活性ガス雰囲気で行った。また、反応に用いた溶媒等は、すべて予め公知の方法で精製、乾燥および脱酸素を行ったものを用い、反応に用いた化合物は公知の方法により合成、同定したものを用いた。
【0038】
また、実施例および比較例における低密度ポリエチレンとしては、高圧ラジカル重合法で得られたものを用いた。
【0039】
実施例および比較例に用いた組成物は、各成分を適当な組成で混ぜ合わせた後、単軸押出機で溶融造粒した。溶融造粒には、東洋精機(株)製のラボプラストミルを用いた。
【0040】
実施例および比較例に用いた上記組成物および各成分の諸物性は、下記の方法により測定した。
【0041】
1)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、ウオーターズ社製 150C ALC/GPC(カラム:東ソー(株)製 GMHHR−H(S)、7.8mmIDX30cm×3本、溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、温度:140℃、流量:1.0ml/分、注入濃度:30mg/30ml(注入量300μl))を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、MwおよびMnを測定し、Mw/Mnを算出した。なお、東ソー(株)製 標準ポリスチレンを用いて、ユニバーサルキャリブレーション法によりカラム溶出体積は校正した。
【0042】
2)MFR:JIS K7210(1976年)に準拠して、190℃,2160gの荷重下で測定した。
【0043】
3)密度:JIS K6760(1981年)に準拠して、100℃の熱水に1時間浸し、その後室温まで放冷した試料について、23℃に保った密度勾配管を用いて測定した。
【0044】
4)融点:融点は示差走査型熱量計(DSC)[パーキンエルマー(株)製DSC−7]を用いて測定した。DSC内で試料を200℃で5分間溶融させた後、10℃/分の速度で温度を30℃まで下げて固化させた試料について、10℃/分の速度で昇温させて得られた吸熱曲線のピーク温度を融点とした。
【0045】
5)残存結晶化度(W):上記吸熱曲線から全融解熱量(Qall)と110℃以上の融解熱量(Q110)を求め、(8)式により算出した。
【0046】
ここで、ρは試料密度、ρcはポリエチレンの完全結晶の密度(1.000g/cm3)、ρaは完全非晶密度(0.855g/cm3)である。
【0047】
6)短鎖分岐数(SCB):分子鎖中の短鎖分岐数(SCB)は、フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル装置[パーキンエルマー(株)製 FT−IRスペクトロメーター1760X]を用いて、1378cm-1に位置するメチル基の変角振動に対する吸収バンドの強度から求めた。
【0048】
7)ヘーズ:圧縮成形機(関西ロール(株)製)を用いて、厚さ200μmのプレスシートを作製し、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製)を用いて、JIS Z8722(1982年)に準拠して測定した。
【0049】
8)滅菌処理後外観:ヘーズ測定に用いたものと同様のプレスシート(幅80mm×長さ160mm×厚さ200μm)を2枚を用いて、ヒートシールにより純水を充填した密封容器を作製し、110℃で40分間蒸気滅菌処理を行った後、容器表面の変形状態を目視により評価した。
【0050】
9)滅菌処理後ヘーズ:上記滅菌処理した容器からフィルムを切り出し、ヘーズを測定した。
【0051】
10)ドローダウン性:ブロー成形機[プラコー(株)製 3B−65型]により、コンバージタイプダイス[ダイコア(20φ/18φ)]を用いて、成形温度170℃、スクリュー回転数10rpmの条件下で、樹脂がダイス出口から500mmに達するまでの時間(秒)として評価した。
【0052】
実施例1〜8
表1には、実施例1〜8に用いたエチレン/1−ヘキセン共重合体とエチレン/1−ブテン共重合体[A]([A1]、[A2]、[A3]、[A4]、[A5])の特徴を示す。また、表2には、実施例1〜8に用いた低密度ポリエチレン[B]([B1]、[B2]、[B3])の特徴を示す。
【0053】
表3には、[A1]、[A2]、[A3]、[A4]または[A5]と[B1]、[B2]または[B3]とからなり、[A]:[B]重量比が80:20、70:30または40:60である組成物の密度、MFR、ドローダウン、ヘーズ、滅菌処理後ヘーズおよび滅菌処理後外観を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
比較例1〜6
比較例1〜3は、請求範囲外のエチレン/1−ヘキセン共重合体とエチレン/1−ブテン共重合体[C]([C1]、[C2]、[C3])と上記低密度ポリエチレン[B1]との組成物である。表4には、[C1]、[C2]および[C3]の特徴を示す。表5には、[C1]、[C2]または[C3]と[B1]とからなり、[C]:[B1]重量比が70:30である組成物の密度、MFR、ドローダウン、ヘーズ、滅菌処理後ヘーズおよび滅菌処理後外観を示す。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
比較例4は、従来公知のチーグラー型触媒を用い、高圧イオン重合法で得られたエチレン/1−ヘキセン共重合体[Z]([Z1])と上記低密度ポリエチレン[B1]との組成物である。表6には、[Z1]の特徴を示す。表7には、[Z1]と[B1]とからなり、[Z1]:[B1]重量比が80:20である組成物の密度、MFR、ドローダウン、ヘーズ、滅菌処理後ヘーズおよび滅菌処理後外観を示す。
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
比較例5は、エチレン/1−ヘキセン共重合体[A1]と請求範囲外の低密度ポリエチレン[D]([D1])との組成物である。表8には、[D1]の特徴を示す。表9には、[A1]と[D1]とからなり、[A1]:[D1]重量比が70:30である組成物の密度、MFR、ドローダウン、ヘーズ、滅菌処理後ヘーズおよび滅菌処理後外観を示す。
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】
比較例6は、エチレン/1−ヘキセン共重合体[A1]と低密度ポリエチレン[B1]とからなるが、[A1]:[B1]重量比が請求範囲外にある組成物である。表10には、[A1]と[B1]とからなり、[A1]:[B1]重量比が30:70である組成物の密度、MFR、ドローダウン、ヘーズ、滅菌処理後ヘーズおよび滅菌処理後外観を示す。
【0067】
【表10】
【0068】
【発明の効果】
以上述べたとうり、本発明におけるブロー成形用樹脂組成物よりなる医療用容器は、ブロー成形性が良好で、透明であり、さらに滅菌耐熱性に優れたものである。
【0069】
従って、本樹脂組成物よりなる医療用容器は、透明性と滅菌耐熱性が要求されるブロー成形物、例えば、輸液バックなどの医療用容器に対して好適な素材となる。
Claims (1)
- a)メタロセン化合物、b)イオン性化合物、c)有機アルミニウム化合物を構成成分とする触媒系を用いて得られた、
(a)密度が0.915〜0.930g/cm 3 の範囲であり、
(b)190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.3〜10g/10分であり、
(c)重量平均分子量(M w )と数平均分子量(M n )の比(M w /M n )が3以下であり、
(d)示差走査型熱量計において、200℃で5分間溶融し、その後10℃/分で30℃まで降温し、再度10℃/分で昇温させた時に得られる吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm(℃))と赤外線吸収スペクトルの測定から求められる炭素数1000個当りの短鎖分岐数(SCB)とが(1)式で示される関係を満たし、
T m <−1.5×SCB+138 (1)
(e)上記吸熱曲線から求めた110℃での残存結晶化度が5重量%以上40重量%未満の範囲にある
エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体40〜95重量%、および
(f)密度が0.910〜0.935g/cm 3 の範囲であり、
(g)190℃,2160gの荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1〜3g/10分である
低密度ポリエチレン60〜5重量%
からなることを特徴とするブロー成形用樹脂組成物よりなることを特徴とする滅菌耐熱性医療用容器。
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