JP4113620B2 - 自動車用インストルメントパネルの前部構造 - Google Patents

自動車用インストルメントパネルの前部構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、前端部が車幅方向における複数箇所で車体に締結された自動車用インストルメントパネルの前部構造に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用インストルメントパネルは、例えば特開平2−164622号公報に示されているように、その前端部(特に断面略コ字状の上辺部先端部)が車幅方向における複数箇所で車体に締結されるようになっている。このことにより、前端部の剛性が確保され、前端部が熱変形等して撓むのを防止することができる。
【0003】
また、上記公報には、インストルメントパネルの車幅方向両側壁の内壁面側にリブを一体成形し、インストルメントパネルを取り付けるときに、このリブをボディ側に固定したブラケット上に載置してインストルメントパネルの仮止めを行うようにすることが示されている。
【0004】
一方、例えば特開昭58−112828号公報に示されているように、インストルメントパネルの前端部に、ヒンジ軸を有する薄肉ヒンジ部を介してインストルメントパネルと一体成形された断面V字状の突出片を設け、この突出片を上記薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転させて、インストルメントパネルと突出片との合わせ面にデフロスターノズル溝を設けるようにすることが提案されている。このように薄肉ヒンジ部を介して突出片をインストルメントパネルと一体成形し、その突出片を薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転させるようにすれば、通常の成形方法ではスライド型が必要な場合やスライド型を用いても成形が困難な場合に、スライド型を用いずに容易に成形することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車の設計を行う際、ボディ(車体)は従来の車種のものを流用する一方、インストルメントパネルは従来のものとは異ならせるようにする場合がある。この場合、インストルメントパネルの前端部における車体への締結箇所は従来の車種のボディにより必然的に決められてしまう。
【0006】
しかし、インストルメントパネルのデザインによっては、決められた複数の車体締結箇所のうちの一部(特に車幅方向両端部と中央部との間)は締結困難な場合が生じ、そのままではインストルメントパネルの剛性が低下し、インストルメントパネル前端部が波打つように撓む等して見栄えが悪化してしまう。また、上記前者の従来例(特開平2−164622号公報)のように、インストルメントパネルの前端部を車体又は車体に固定したブラケット上に載置するようにすることが考えられるが、単に載置するだけでは剛性を維持することはできない。
【0007】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前端部が車幅方向における複数箇所で車体に締結された自動車用インストルメントパネルの前部構造に対して、上記後者の提案例(特開昭58−112828号公報)の考え方をさらに推し進めることによって、決められた複数の車体締結箇所のうちの一部が締結困難な場合であっても、インストルメントパネル前端部の剛性を確保して、その前端部が撓んだりするのを防止しようとすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、車体締結箇所間におけるインストルメントパネルの上面前端部に、空調空気吹出口と、該インストルメントパネルから一体的に前方に傾斜して起立しかつ該空調空気吹出口の前方を車幅方向に延びる起立壁とを形成し、車体締結箇所間における上記起立壁の上端に、薄肉ヒンジ部を介してインストルメントパネルと一体成形された補強片を設け、上記起立壁の前方における上記インストルメントパネルの前端部に、上記補強片が嵌合可能な開口部を設け、その補強片を上記薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転させて上記開口部の後縁部に当接した状態で該開口部に嵌合固定するようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、前端部が車幅方向における複数箇所で車体に締結された自動車用インストルメントパネルの前部構造を前提とする。
【0010】
そして、上記車体締結箇所間における上記インストルメントパネルの上面前端部に、空調空気吹出口と、該インストルメントパネルから一体的に前方に傾斜して起立しかつ該空調空気吹出口の前方を車幅方向に延びる起立壁とが形成され、上記車体締結箇所間における上記起立壁の上端に、車幅方向に延びるヒンジ軸を有する薄肉ヒンジ部を介してインストルメントパネルと一体成形された補強片が設けられ、上記起立壁の前方における上記インストルメントパネルの前端部に、上記補強片が嵌合可能な前方が開放された開口部が設けられ、上記補強片が上記薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転されて上記開口部の後縁部に当接した状態で該開口部に嵌合固定されているものとする。
【0011】
上記の構成により、補強片が開口部に嵌合固定された箇所は補強片によりインストルメントパネルの肉厚が増大したのと略同じ状態となるので、車体締結箇所間におけるインストルメントパネル前端部の補強がなされる。このため、車体締結箇所が従来よりも減少したとしても、車体締結箇所間の熱変形等による撓みが抑制され、その撓みによりインストルメントパネルの見栄えが悪化するのを防止することができる。一方、補強片は薄肉ヒンジ部を介してインストルメントパネルと一体成形するので、成形を容易に行うことができると共に、補強片を薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転させるだけでインストルメントパネル前端部の剛性を容易に確保することができる。また、補強片を起立壁よりも下側に位置するように回転させることで、その補強片が起立壁により前席に座っている乗員からは見えなくなる。よって、補強片によるインストルメントパネルの見栄えの悪化をも防止することができる。
【0012】
請求項の発明では、請求項の発明において、補強片は、該補強片の車幅方向両側面に車幅方向に突出する爪部を有していて、該爪部にて開口部の車幅方向両側縁部に固定されているものとする。このことで、簡単な構成で補強片を開口部に固定することができる。
【0013】
請求項の発明では、請求項1又は2の発明において、開口部の後縁部に、前方に突出するピンが設けられ、補強片は、上記ピンに嵌合されているものとする。こうすることで、補強片の開口部に対する位置決めを確実に行うことができる。
【0014】
請求項の発明では、請求項1〜3のいずれか1つの発明において、補強片は、ネジ部材により開口部に固定されているものとする。この発明により、補強片を強固に開口部に固定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7は、本発明の実施形態に係る自動車用インストルメントパネル1を示し、このインストルメントパネル1はポリプロピレンからなっている。そして、インストルメントパネル1の前端部が車幅方向(図2の左右方向)における複数箇所で車体35に締結されるようになっている。すなわち、図2に示すように、インストルメントパネル1の前端部における車幅方向中央部に1つの中央部締結部2が、また車幅方向両端部に2つの端部締結部3,3(図2では1つのみ示す)がそれぞれ設けられている。尚、この中央部締結部2と各端部締結部3との間におけるインストルメントパネル1の前端部には、複数の空調空気吹出口30,30,…が車幅方向に並んで形成されている。
【0016】
上記中央部締結部2は、図3に示すように、前方に向かって下方に凹まされた凹陥部5の底部に設けられており、この中央部締結部には、図4に示すように、前後方向に延びる長孔状のボルト貫通孔6が形成されている。そして、車体35における上記ボルト貫通孔6に対応する部分にはナット7が溶接されており、ボルト8を上記凹陥部5の開口側からボルト貫通孔6に差し込んで上記ナット7に螺合させることにより、中央部締結部2が車体35に締結されるようになっている。尚、上記凹陥部5は、インストルメントパネル1に取付固定されたセンターパネル10により覆われて塞がれるようになっている。
【0017】
一方、上記各端部締結部3には、車幅方向に延びる長孔状のボルト貫通孔13が形成されている。そして、図5に示すように、上記中央部締結部2と同様に、車体35における上記各ボルト貫通孔13に対応する部分にナット14が溶接されており、ボルト15を上方からボルト貫通孔13に差し込んで上記ナット14に螺合させることにより、各端部締結部3が車体35に締結されるようになっている。尚、上記各端部締結部3は、該各端部締結部3の後方に設けられたスピーカ設置部17の上方に位置するようにインストルメントパネル1に取付固定されたスピーカグリル18の前方延出部により覆われるようになっている。
【0018】
本発明の特徴は、上記中央部締結部2と各端部締結部3との間におけるインストルメントパネル1の前端部にそれぞれ設けられた2つの補強片21,21(図2では1つのみ示す)にあり、この各補強片21は、図1に示すように、車幅方向に延びるヒンジ軸を有する薄肉ヒンジ部21aを介してインストルメントパネル1と一体成形されている。また、上記各補強片21に対応するインストルメントパネル1前端部には、図6に示すように、前方が開放されかつ車幅方向の大きさが各補強片21よりも僅かに大きい略矩形状の開口部22がそれぞれ設けられ、この各開口部22に各補強片21がそれぞれ嵌合固定されている。上記各補強片21は、成形時には図1の二点鎖線の状態で成形されていて、上記薄肉ヒンジ部21aのヒンジ軸を中心に、図1で反時計回り方向に各補強片21が各開口部22の後縁部に当接するまで回転されて上記各開口部22に嵌合固定されたものである。
【0019】
上記各補強片21の薄肉ヒンジ部21aは、該ヒンジ部21aよりも後方位置にてインストルメントパネル1から一体的に起立した起立壁23の上端に形成されており、各補強片21は、各開口部22に嵌合固定された状態では、上記起立壁23よりも下側に位置している。尚、この起立壁23は、上記2つの端部締結部3,3間に亘って上記各空調空気吹出口30の直ぐ前方を車幅方向に延びるように形成されている。
【0020】
上記各補強片21は、該各補強片21の車幅方向両側面に車幅方向に突出する爪部21b,21bをそれぞれ有していて、該爪部21b,21bにて各開口部22の車幅方向両側縁部に固定されている。つまり、この両爪部21b,21bは、各補強片21が薄肉ヒンジ部21aのヒンジ軸を中心に図1で反時計回り方向に回転されたときに各補強片21が撓むことにより各開口部22の車幅方向両側縁部を乗り越え、各補強片21が各開口部22の後縁部に当接した状態では、各開口部22の車幅方向両側縁部よりも下側に位置するようになっている。このことで、各補強片21は図1で時計回り方向及び反時計回り方向のどちらにも回転不能となって固定されることになる。
【0021】
上記各開口部22の後縁部には、前方に突出するピン25が植設されている一方、各補強片21の後部(成形時の状態では下部)には、図7に示すように、上記ピン25が嵌合可能な嵌合孔21cが形成されている。そして、各補強片21が各開口部22に上記各爪部21bにより固定された状態でピン25が嵌合孔21cに嵌合するようになっている。
【0022】
また、上記各補強片21の後部には、上記嵌合孔21cと車幅方向に並んでビス貫通孔21dが形成され、このビス貫通孔21dを通してビス26(ネジ部材)が各開口部22の後縁部に形成した下穴27にねじ込まれており、このビス26により上記各爪部21bと共に各補強片21が各開口部22に固定されている。
【0023】
したがって、上記実施形態では、中央部締結部2と各端部締結部3との間において各補強片21が各開口部22に嵌合固定された箇所は、インストルメントパネル1の肉厚が増大したのと略同じ状態となって剛性が向上する。このため、各補強片21を設けた箇所は、本来は、各空調空気吹出口30が形成されていることで車体35に締結することが必要であるが、締結しなくても各補強片21によりインストルメントパネル1前端部が補強されるので、中央部締結部2と各端部締結部3との間の熱変形等による撓みが抑制され、このような撓みによるインストルメントパネル1の見栄えの悪化を防止することができる。しかも、各補強片21は起立壁23により前席に座っている乗員からは見えず、各補強片21による見栄えの悪化をも防止することができる。尚、各補強片21は、フロントガラスの周囲のマスキングにより、フロントガラスの外側からも見えることはない。
【0024】
そして、各補強片21は、その車幅方向両側面の両爪部21b,21bとビス26とにより各開口部22に確実に固定することができると共に、ピン25が各補強片21の嵌合孔21cに嵌合することで各補強片21を各開口部22に対して上下方向及び車幅方向に確実に位置決めすることができる。
【0025】
尚、ビス26を省略して両爪部21b,21bのみで各補強片21を固定するようにしてもよく、逆に両爪部21b,21bを無くしてビス26のみで固定するようにしてもよい。また、ピン25を省略してもよい。さらに、各補強片21の各開口部22に対する嵌合固定方法は、これらに限らず、どのような方法であってもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によると、前端部が車幅方向における複数箇所で車体に締結された自動車用インストルメントパネルの前部構造として、車体締結箇所間における起立壁の上端に、薄肉ヒンジ部を介してインストルメントパネルと一体成形された補強片を設け、上記起立壁の前方における上記インストルメントパネルの前端部に、上記補強片が嵌合可能な開口部を設け、この補強片を上記薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転させて上記開口部の後縁部に当接した状態で該開口部に嵌合固定するようにしたことにより、簡単な構成で車体締結箇所間におけるインストルメントパネル前端部の熱変形等による撓みを抑制して、その撓みによるインストルメントパネルの見栄えの悪化を防止することができる。また、補強片によるインストルメントパネルの見栄えの悪化をも防止することができる。
【0027】
請求項の発明によると、補強片は、該補強片の車幅方向両側面に車幅方向に突出する爪部を有していて、該爪部にて開口部の車幅方向両側縁部に固定されているものとしたことにより、簡単な構成で補強片を開口部に固定することができる。
【0028】
請求項の発明によると、開口部の後縁部に、前方に突出するピンを設け、補強片をそのピンに嵌合するようにしたことにより、補強片の開口部に対する位置決めを確実に行うことができる。
【0029】
請求項の発明によると、補強片をネジ部材により開口部に固定するようにしたことにより、補強片の開口部に対する固定の確実化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図2のI−I線断面図である。
【図2】 本発明の実施形態に係る自動車用インストルメントパネルを示す平面図である。
【図3】 図2のIII −III 線断面図である。
【図4】 図3のIV方向矢示図である。
【図5】 図2のV−V線断面図である。
【図6】 図1のVI方向矢示図である。
【図7】 図1のVII 方向矢示図である。
【符号の説明】
1 インストルメントパネル
2 中央締結部(車体締結箇所)
3 端部締結部(車体締結箇所)
21 補強片
21a 薄肉ヒンジ部
21b 爪部
22 開口部
23 起立壁
25 ピン
26 ビス(ネジ部材)
35 車体

Claims (4)

  1. 前端部が車幅方向における複数箇所で車体に締結された自動車用インストルメントパネルの前部構造において、
    上記車体締結箇所間における上記インストルメントパネルの上面前端部に、空調空気吹出口と、該インストルメントパネルから一体的に前方に傾斜して起立しかつ該空調空気吹出口の前方を車幅方向に延びる起立壁とが形成され、
    上記車体締結箇所間における上記起立壁の上端に、車幅方向に延びるヒンジ軸を有する薄肉ヒンジ部を介してインストルメントパネルと一体成形された補強片が設けられ、
    上記起立壁の前方における上記インストルメントパネルの前端部に、上記補強片が嵌合可能な前方が開放された開口部が設けられ、
    上記補強片が上記薄肉ヒンジ部のヒンジ軸を中心に回転されて上記開口部の後縁部に当接した状態で該開口部に嵌合固定されていることを特徴とする自動車用インストルメントパネルの前部構造。
  2. 請求項記載の自動車用インストルメントパネルの前部構造において、
    補強片は、該補強片の車幅方向両側面に車幅方向に突出する爪部を有していて、該爪部にて開口部の車幅方向両側縁部に固定されていることを特徴とする自動車用インストルメントパネルの前部構造。
  3. 請求項1又は2記載の自動車用インストルメントパネルの前部構造において、
    開口部の後縁部に、前方に突出するピンが設けられ、
    補強片は、上記ピンに嵌合されていることを特徴とする自動車用インストルメントパネルの前部構造。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動車用インストルメントパネルの前部構造において、
    補強片は、ネジ部材により開口部に固定されていることを特徴とする自動車用インストルメントパネルの前部構造。
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