JP3959700B2 - 自動車の前部車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ダッシュパネルよりも前側にあるフロントボディの内部空間を有効利用できる自動車の前部車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は、セミキャブオーバタイプの自動車1の前部を示し、図7は図6のX−X線方向の断面図である。図7に示すように自動車の前部は、室内2とフロントボディ3側とを仕切るダッシュパネル4が設けられ、ダッシュパネル4の前面にはフロントフード5とバンパー6等とが配設されている。フロントフード5は、ヒンジ7を回動軸として、その先端部が上方に回動することによって開閉が可能である。
【0003】
図8は、フロントフード5及びバンパー6等を外した自動車1の前部を示す。図に示すように、フロントアッパーメンバ8が左右のダッシュサイドパネル9間に配設され、左右ヘッドランプハウジング10がフロントアッパーメンバ8とクロスメンバ11との間に配設されている。ヘッドランプハウジング10は、ヘッドランプを取付けるとともに、フロントアッパーメンバ8を支えている。また、図7に示すように、クロスメンバ11とフロントアッパーメンバ8との間には、ラジエータ12が取付けられている。
【0004】
図7及び図8に示すように、フロントアッパーメンバ8の中間部にはフロントフード5をロックするためのラッチ14を設け、フロントフード5の裏側先端部には、ラッチ14の位置に対応させて、コ字形のストライカ15が取付けられている。フロントフード5の閉時は、ラッチ14がストライカ15の軸に噛合することにより、フロントフード5がロックされ、ラッチ14とストライカ15の係合状態が解除されると、フロントフード5を開くことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来では、自動車の前部に前開きのフロントフードを設ける場合には、上記のように、フロントアッパーメンバにストライカを係止させるラッチを取付けていた。フロントアッパーメンバは、車幅方向全体にわたって延在するため、特にセミキャブオーバタイプの自動車のように、ダッシュパネルよりも前部の長さが短い車種は、スペースが狭く、フロントアッパーメンバを通すとその位置の他の部品を配設することができなかった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、セミキャブオーバタイプの車体の前部に配設されるフロントアッパーメンバを廃止し、フロントボディの内部空間を有効に利用できる自動車の前部構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を効果的に達成するために本発明の自動車の前部車体構造は、
フロントボディと車室とを区画するダッシュパネルを備え、該ダッシュパネルより車体後方にエンジンが配置され、上記フロントボディには、前端側が上方に開放されるフロントフードが設けられ、該フロントフードは、車体側に設けた係止部材(14)と係脱可能な係合部材(15)を備え、該係合部材により上記フロントフードをロック可能であり、上記係止部材が、上記ダッシュパネルの車幅方向中央から前方に突設された支持ブラケット(18)に固定されている自動車の前部車体構造において、
上記ダッシュパネルの上部は、上記フロントフード面に沿って車体前方から後方に向かう上り傾斜面を形成しており、
上記支持ブラケット(18)は、前記傾斜面から該傾斜面を前下方に延長する方向に延在する上側部分と、該上側部分の前下端と上記ダッシュパネルの下部との間に延在する下側部分とを有し、側面視において略く字状に形成され、前記上側部分と前記下側部分との接続部に前記係止部材(14)が固定され、前記上側部分には、車体を持ち上げるジャッキの保持部(20)が設けられ、前記保持部は、車両前後方向の前下方と後上方とに対向する一対の保持部材を備え、前記ジャッキを、短縮・伸長させる操作で前記一対の保持部材間に保持可能であり、該保持状態において、前記ジャッキが、上記ダッシュパネルの上部傾斜面と上記フロントフードのインナーパネルとの間で、前記インナーパネルに沿った傾斜姿勢で保持されるようにした。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による自動車の前部車体構造について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ名称については、同一の符号を付して説明する。
【0008】
図1は、本発明に係るセミキャブオーバ車の前部の断面図であり、従来例の図7に対応する図である。セミキャブオーバ車はエンジンが運転席等の前部座席の下部にあり、通常の乗用車のように運転席の前にエンジンルームがない。そのため、運転席の前にあるダッシュパネル4から車体の前部に配設したバンパー6までの長さが短い。
図に示す自動車1は、フロントウインドガラス16とバンパー6との間にフロントフード5を設け、フロントフード5は先端部がヒンジ7を介して矢印a方向に開き、前部空間17を開放できる構造になっている。
【0009】
ダッシュパネル4は前部空間17と室内2とを仕切り、その上部傾斜面4aの前面が上方に面するように、フロントフード5にほぼ平行になるように傾斜させ、中間部4bはほぼ垂直にし、下部4cは車両の前側に前面が上方に面するように傾斜させている。すなわち、ダッシュパネル4を台形状に曲げ、台形の上底に相当する中間部4bを前方に突出させている。そして、ダッシュパネル4には、中間部4bを跨ぐようにして断面が略く字形のフードラッチブラケット18が取付けられている。
【0010】
図2及び図3は、フードラッチブラケット18の拡大図である。フードラッチブラケット18は、ダッシュパネル4の車幅方向に対して中央位置に取付けられ、その上面18bはフロントフード5面にほぼ平行に配設し、かつジャッキ21を保持するジャッキブラケット20を溶接で固定している。また、ジャッキブラケット20の下部には、クッションストッパ23の取付孔23aを設け、フードラッチブラケット18の下面18cには、ラッチ14の取付孔14aを設けている。
他方、フロントフード5は、図1に示すように裏側に配設されるインナパネル5aに、ラッチ14の位置に対応させてストライカ15を設け、またフロントフード5の開時に、インナパネル5a面がクッションストッパ23に当接するように構成している。
【0011】
図4は、ダッシュパネル4の上部傾斜面4a上にクランク形状のジャッキアップ用のハンドル24が配設されている状態を示す。フードラッチブラケット18の側方には、ウオッシャータンク25が配設され、ウオッシャータンク25は一対のウオッシャータンクブラケット26によりダッシュパネル4に取付けられている。ウオッシャータンクブラケット26には、図5に示すように樹脂製のクランプ27を設け、挿入口を上側に向けてハンドル24の柄を係止させている。ハンドル24はこれらのクランプ27の他、フードラッチブラケット18の縁部に設けられているクランプ18aにも係止されている。
【0012】
以上、説明したように本発明によれば、車両の前方に突出させたフードラッチブラケット18にラッチ14を設けたので、フロントフード5の閉時にラッチ14がストライカ15を噛合して、フロントフード5をロックする。その結果、従来のラッチ取付箇所であったフロントアッパーメンバが不要になり、前部空間17が広くなって車両の構造部品や付属部品を多く収納できるとともに、それら構造部品等のレイアウトに自由度が増してきた。なお、ラッチ14とストライカ15の構造については、公知の技術であるので、説明を省略する。
また、従来では、ラジエータの上部をフロントアッパーメンバに固定していたが、図3に示すように、ラジエータの取付孔12aをフードラッチブラケット18に設けているので、ラジエータ(図示せず)を車両の前部に取付けることが可能である。
【0013】
フードラッチブラケット18にジャッキブラケット20を取付けているので、ジャッキ21をそこに保持させることができ、前部空間17の有効利用が可能になる。ジャッキ21のハンドル24については、ウオッシャータンクブラケット26及びフードラッチブラケット18に跨って配設し、かつハンドル24をダッシュパネル4の上部傾斜面4aに配設しているので、万一クランプ18a,27が緩むようなことがあっても、そのままの状態が維持されハンドル24が落下することを防止できる。
また、フードラッチブラケット18に設けているクッションストッパ23は、フロントフード5の閉時の衝撃を軽減することができる。
【0014】
このように、本実施の形態では、1つのフードラッチブラケット18に、ラッチ14,クッションストッパ23、ジャッキ21及びラジエータの取付孔12aを設けたので、各取付部材を個別に設ける必要がなく、部品点数の削減と重量の軽減を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形及び変更が可能である。
例えば、ジャッキ21においては、ジャッキブラケット20のジャッキ21の出入口とフロントフード5のインナパネル5aを近接させて、ジャッキ21が緩んでも、フロントフード5面に規制されて落下しないようにできる。
【0015】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の自動車の前部車体構造は、フロントボディと車室とを区画するダッシュパネルを備え、該ダッシュパネルより車体後方にエンジンが配置され、上記フロントボディには、前端側が上方に開放されるフロントフードが設けられ、該フロントフードは、車体側に設けた係止部材と係脱可能な係合部材を備え、該係合部材により上記フロントフードをロック可能であり、上記係止部材が、上記ダッシュパネルの車幅方向中央から前方に突設された支持ブラケットに固定されている自動車の前部車体構造において、上記ダッシュパネルの上部は、上記フロントフード面に沿って車体前方から後方に向かう上り傾斜面を形成しており、上記支持ブラケットは、前記傾斜面から該傾斜面を前下方に延長する方向に延在する上側部分と、該上側部分の前下端と上記ダッシュパネルの下部との間に延在する下側部分とを有し、側面視において略く字状に形成され、前記上側部分と前記下側部分との接続部に前記係止部材が固定され、前記上側部分には、車体を持ち上げるジャッキの保持部が設けられ、前記保持部は、車両前後方向の前下方と後上方とに対向する一対の保持部材を備え、前記ジャッキを、短縮・伸長させる操作で前記一対の保持部材間に保持可能であり、該保持状態において、前記ジャッキが、上記ダッシュパネルの上部傾斜面と上記フロントフードのインナーパネルとの間で、前記インナーパネルに沿った傾斜姿勢で保持されるようにしたので、セミキャブオーバタイプの車体の前部に配設され、従来係止部材を取付けていたフロントアッパーメンバを廃止でき、フロントボディの内部空間を有効に利用できる。また、ジャッキの固定が緩んでも、ジャッキが脱落することはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による自動車の前部車体構造の断面図である。
【図2】図1のフードラッチブラケットの拡大側面図である。
【図3】図1のフードラッチブラケットの拡大正面図である。
【図4】本発明の実施の形態による自動車の前部車体構造のダッシュパネル上に配設されたフードラッチブラケット及びウオッシャータンク等を示す正面図である。
【図5】図4のウオッシャータンクブラケットに設けたハンドルのクランプの拡大図である。
【図6】セミキャブオーバ車の前部を示す斜視図である。
【図7】図6におけるX−X線方向の断面図である。
【図8】従来の自動車の前部車体構造に配設されていたフロントアッパーメンバの取付状態を示す図である。
【符号の説明】
1 自動車
4 ダッシュパネル
4a 上部傾斜面
5 フロントフード
14 ラッチ
15 ストライカ
17 前部空間
18 フードラッチブラケット
18a,27 クランプ
20 ジャッキブラケット
21 ジャッキ
23 クッションストッパ
24 ハンドル
26 ウオッシャータンクブラケット
Claims (1)
- フロントボディと車室とを区画するダッシュパネルを備え、該ダッシュパネルより車体後方にエンジンが配置され、上記フロントボディには、前端側が上方に開放されるフロントフードが設けられ、該フロントフードは、車体側に設けた係止部材と係脱可能な係合部材を備え、該係合部材により上記フロントフードをロック可能であり、上記係止部材が、上記ダッシュパネルの車幅方向中央から前方に突設された支持ブラケットに固定されている自動車の前部車体構造において、
上記ダッシュパネルの上部は、上記フロントフード面に沿って車体前方から後方に向かう上り傾斜面を形成しており、
上記支持ブラケットは、前記傾斜面から該傾斜面を前下方に延長する方向に延在する上側部分と、該上側部分の前下端と上記ダッシュパネルの下部との間に延在する下側部分とを有し、側面視において略く字状に形成され、前記上側部分と前記下側部分との接続部に前記係止部材が固定され、前記上側部分には、車体を持ち上げるジャッキの保持部が設けられ、前記保持部は、車両前後方向の前下方と後上方とに対向する一対の保持部材を備え、前記ジャッキを、短縮・伸長させる操作で前記一対の保持部材間に保持可能であり、該保持状態において、前記ジャッキが、上記ダッシュパネルの上部傾斜面と上記フロントフードのインナーパネルとの間で、前記インナーパネルに沿った傾斜姿勢で保持されるようにしたことを特徴とする自動車の前部車体構造。
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