JP4113475B2 - 樹脂フィルム被覆金属板及びその製造方法並びにこれを用いた電子部品用外装容器 - Google Patents
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図1は、本発明に係る1例の樹脂フィルム被覆金属板の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本発明に係る樹脂フィルム被覆金属板1は、金属板4の上に、接着剤より構成される接着層3を介して樹脂フィルム2が被覆されて構成される。
なお、図1では、金属板4の片面のみに樹脂フィルム2が被覆された構成を例示しているが、本発明はこの構成のみに限定されるものではなく、金属板4の両面に樹脂フィルム2を被覆して構成することも可能である。
以下、本発明に係る樹脂フィルム被覆金属板及びそれに必要とされる条件について説明する。
本発明で使用することができる金属板は、特に限定されるものではなく、電解コンデンサ等電子部品用外装容器として適切な強度と耐蝕性とを備えた金属板であれば使用することが可能である。このような金属板としては、例えば、アルミニウム板が挙げられ、その中で、純アルミ系のアルミニウム(JIS H4000、1100)や、Al−Mn系のアルミニウム合金(JIS H4000、3004)からなる板等が好適である。
また、本発明では、このようなアルミニウム板以外に、軟鋼板、ステンレス板、チタン板、銅板等の各種金属板を使用することができる。
更に、本発明で使用することができる樹脂フィルムは、樹脂フィルム表面に、所望の模様を、にじみが生じることなく鮮明に印刷できる良好な印刷性を有し、しかも樹脂フィルム被覆金属板に成形加工を施した際に割れや剥離が発生することなく金属板の成形加工に充分に追従できる成形加工性を備え、なお且つ耐蝕性及び耐熱性に優れた、ポリエステル系樹脂で構成されている。
本発明では、接着剤としてメラミン系硬化剤またはイソシアネート系硬化剤を使用することができる。これらの接着剤は、樹脂フィルムのポリエステル系樹脂の末端に備わる水酸基(−OH)またはカルボキシル基(−COOH)と強固な結合を形成する。
本発明の樹脂フィルムの結晶化度が20%未満であると、前記有機溶剤(トリクレン)または有機成分(GBL)の接触によりこの樹脂フィルムが白濁化する。また、前記樹脂フィルムの結晶化度が90%を超えると、この樹脂フィルムと金属板であるアルミニウム板との密着性が阻害される。
このため、本発明では、前記樹脂フィルムの結晶化度を、20から90%に規制する。
本発明は前述のように、耐溶剤性および金属板と樹脂フィルムの密着性を同時に満足する樹脂フィルム被覆金属板を得ることを目的の一つとしている。このため、密着性を高めるために、接着層と接する面での樹脂フィルムを非晶質化する必要がある。また、耐溶剤性を高めるために、樹脂フィルムの最表面は結晶質である必要がある。
このため、本発明では、接着層と接する面での樹脂フィルムの複屈折率を0.005未満とすることにより、金属板と樹脂フィルムの密着性を高めている。
このため、本発明では、樹脂フィルム最表面から5μmの深さにおける複屈折率を0.005以上とすることにより耐溶剤性を高めている。
この場合の溶融粘度は、樹脂フィルム被覆金属板の状態の樹脂フィルムを対象とし、当該樹脂フィルムを融点以上(本発明では290℃)に加熱し、溶融状態として粘度を規定するものである。この溶融粘度が高いと樹脂は流動し難く、溶融粘度が低いと流動し易くなる。このときの溶融粘度が140Pa・s未満の場合には、樹脂フィルムが流動・変形してディンプルが発生する。すなわち、溶融粘度が十分に高ければ電子部品用外装容器の作製時のハンダ付け等の高温加工においても樹脂フィルムが溶融時に流動・変形し難くなり、ディンプルの発生が抑制される。
このため、本発明では、樹脂フィルムは、290℃温度条件下における溶融粘度を140Pa・s以上とする。
なお、前記温度条件下における本発明で規定する溶融粘度を有し、ディンプルの発生し難い樹脂フィルムとしては、ポリエステル系樹脂である共重合PET(ポリエチレンテレフタレート)を用いて形成されたフィルムを好適に挙げることができる。
樹脂フィルム被覆金属板の製造方法は、(1)金属板に接着剤層を形成する工程と、(2)金属板に接着層を形成する工程と、(3)樹脂フィルム圧着金属板を形成する工程と、(4)樹脂フィルム圧着金属板の再加熱及び冷却工程とから構成される。なお、本発明の製造方法は、前記の工程のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて適宜変更することができ、例えば、前記した金属板の前処理工程、またはラミネート金属の洗浄等の後処理工程を付加することができる。
前記樹脂フィルムを接着させるべき前記金属板の面に、前記接着剤を塗布または噴霧して、これを乾燥させ、接着剤層を形成する。
なお、本発明では、前記接着剤の塗布の仕方は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種の塗布法を適宜使用することができる。例えば、本発明では、前記接着剤を従来公知のロールコーター法を用いて塗布することや、あるいは前記接着剤を有機溶剤で適宜希釈して従来公知の噴霧法を用いて塗布することにより前記金属板で前記樹脂フィルムを被覆すべき面の上に接着剤層を形成することができる。そして、このようにして前記金属板の上に形成された接着剤層は、その後乾燥されるが、このような乾燥工程を経た接着剤の単位面積当たりの質量は、0.05から5g/m2であることが好ましく、更に好ましくは0.1から2g/m2である。また、接着剤層の乾燥時間は、前記金属板及び接着剤の種類によって、適宜設定される。
前記接着剤層が形成された金属板を、前記樹脂フィルムの(融点−100℃)から(融点未満)の温度に加熱して接着層を形成する。
前記接着剤を塗布した金属板を、樹脂フィルムの(融点−100℃)未満の温度で加熱すると、次工程で、前記接着剤を塗布した金属板に樹脂フィルムが充分に接着されず、次工程で施される再加熱処理で樹脂フィルムが収縮し、場合によっては樹脂フィルムが剥離することとなる。
従来公知のラミネート法により、前記接着層が形成された金属板に、接着層を介して、前記樹脂フィルムを圧着させて、樹脂フィルム圧着金属板を形成する。例えば、前記接着層が形成された金属板を金属板供給手段から連続的に送り出し、このように送り出された金属板の片面または両面に、樹脂フィルム供給手段から送り出された前記樹脂フィルムを接触させ、少なくとも1対のラミネートロールの間で重ね合わせ、挟みつけて前記金属板に前記樹脂フィルムを圧着させる。
前記樹脂フィルム圧着金属板を、前記樹脂フィルムの(融点−50℃)から(融点未満)の温度で再加熱した後、100℃/秒以上の冷却速度で冷却する。
なお、再加熱手段としては加熱ロール等が用いられ、冷却手段としては前記ラミネートロールと径が異なるラミネートロール等が用いられる。
更に、前記樹脂フィルムがラミネートされた金属板を再加熱した後の冷却速度が、100℃/秒未満であると、樹脂フィルムが再結晶化する可能性があり、成形加工により樹脂フィルムの破断や亀裂を生じ易くなる。
金属板に樹脂フィルムを種々条件で被覆し、本発明の必要条件を満たす実施例1から5、及び本発明の条件を満たさない比較例1から8の各種の樹脂フィルム被覆金属板の供試材を作製した。以下に、これら実施例または比較例の構成部材、作製条件を示す。
金属板は、前記実施例及び比較例ともにAA1100−調質H24(JIS H4000)で、板厚が0.30mmのアルミニウム板を用いた。そして、この金属板に予めリン酸クロメート処理の前処理を施した。その際のリン酸クロメート処理の目付け量は、クロム量換算で15mg/m2とした。
樹脂フィルムは、前記実施例及び比較例ともに膜厚が20μmの共重合のポリエチレンテレフタレート樹脂(融点:230℃)を用いた。
接着剤は、前記実施例1から5では、メラミン系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤の両方またはいずれか一方、比較例2から8では、メラミン系硬化剤またはポリエステル系接着剤を用いた。そして、前記金属板への接着剤の塗布量を0.1g/m2とした。また、比較例1では、接着剤を用いずに前記樹脂フィルムを金属板(アルミニウム板)に圧着させたものも作製した。
ラミネート条件は、当該分野で従来公知のフィルムラミネート法を用いた。その際の金属板の加熱温度は、本発明の必要条件を満たしていない120℃(前記樹脂フィルムの融点−110℃)、本発明の必要条件を満たしている190℃(前記樹脂フィルムの融点−40℃)、本発明の必要条件を満たしている220℃(前記樹脂フィルムの融点−10℃)、本発明の必要条件を満たしていない250℃(前記樹脂フィルムの融点+20℃)の4水準で行った。
樹脂フィルムの溶融粘度の測定は、各供試材を塩酸にて処理し、アルミニウム合金板などの金属板部分を溶解した。次に、残された樹脂フィルムをフローテスターCFT−500A(株式会社島津製作所製)を用いて、溶融温度290℃、剪断速度1000s-1の条件下で溶融粘度を測定した。なお、前記フローテスターとは、溶融した樹脂フィルムを細管に通して押し出す時の速度と圧力の測定値から、その粘度を算出する装置である。
(2)耐溶剤性評価
前記実施例及び比較例の各供試材を、沸騰したトリクレンに1分間浸漬し、自然乾燥した後、外観を以下のような基準にて目視評価した。
樹脂フィルムの剥離がなく良好なものを「○」、部分的あるいは全面で樹脂フィルムの剥離が見られたものを「×」とした。
前記の各供試材から樹脂フィルムを剥離させ、示差熱分析計(DSC:differential scanning calorimetry、セイコーインスツルメンツ社製)によって得られたデータ(図2参照)から結晶化度を求めた。図2は、前記示差熱分析計で測定して得られた前記樹脂フィルムの温度と熱量との関係を模式的に示すグラフである。
なお、前記樹脂フィルムを前記樹脂フィルム被覆金属板から剥離させる方法は、希塩酸でアルミニウム板を溶解させることによって行った。
前記の各供試材に、50%の冷間圧延を施した。その後、長さ100mm、幅20mmに切り出し、フィルムの180°剥離強度を測定した。
なお、密着性は、以下のような基準にて評価した。すなわち、剥離強度が、4.0N/20mm以上のものを「◎」、3.0から4.0N/20mm以上のものを「○」、2.0から3.0N/20mmのものを「△」、そして、剥離強度が2.0N/20mm以下のものを「×」とした。
前記の各供試材に、樹脂フィルムが外表面になるようにして、しごき率を30%として絞りしごき加工を施し、10mmφ×20mm高さのコンデンサケースを作製し、このコンデンサケース側面の樹脂フィルムの状態を目視評価した。そして、前記コンデンサケースの全面で、樹脂フィルムに剥離が見られなかったものを「○」、部分的あるいは全面で剥離が見られたものを「×」とした。
各条件で作製した供試材を250℃で2分間加熱し、樹脂フィルム表面(10cm2)に発生した局部的な窪み(ディンプル)の数をカウントし、同時に、光学式非接触3次元表面粗さ測定装置(Veeco社製)を用いて、ディンプルの形状を測定した。
深さが3μm以上、直径が0.1mm以上の局部的なディンプルの数が、5個以下のものを問題なしとして「◎」、6乃至20個のものを「○」、21個以上のものを問題ありとして「×」として評価した。
前記の各供試材を塩酸にて処理し、アルミニウム合金板などの金属板部分(接着層を含む)を溶解した。残された樹脂フィルムを熱硬化性樹脂(樹脂:Struers社製SpeciFix冷間埋込樹脂、硬化剤:Struers社製SpeciFix−20硬化剤)に埋め込み、これをミクロトームにより樹脂フィルムの断面を薄片状に切り出した。そして、透過偏光顕微鏡を用いて、樹脂フィルムの厚さ方向について、接着層と接する面及び最表面から5μmの深さにおける複屈折率を偏光顕微鏡OPTIPHOT2−POL(株式会社ニコン製)にて測定した。なお、複屈折率を測定する際の前記接着層と接する面としては、この接着層の表面から深さ1μm程度までのことをいい、その測定に当たっては1μm程度の深さを測定したものであればよい。また、前記最表面から5μmの深さとしては、5μmであることが最も望ましいが、±0.5μm程度の幅は許容されるものとする。
以上述べた実施例及び比較例の構成並びに各供試材の評価結果を表1に示す。
2 樹脂フィルム
3 接着層
4 金属板
Claims (5)
- 金属板の少なくとも片面に、接着剤より構成される接着層を介して樹脂フィルムを被覆した樹脂フィルム被覆金属板であって、
前記接着剤は、メラミン系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤の中から選ばれた少なくとも1種で構成され、単位面積当たりの質量が0.05〜2g/m 2 であり、
前記樹脂フィルムは、20〜90%の結晶化度を有し、更に、
前記接着層と接する面での前記樹脂フィルムの複屈折率が0.005未満であって、かつ、
前記樹脂フィルム最表面から5μmの深さにおける前記樹脂フィルムの複屈折率が0.005以上、
であるポリエステル系樹脂で構成されることを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板。 - 前記樹脂フィルムは、290℃温度条件下における溶融粘度が140Pa・s(パスカル・秒)以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 前記金属板が、アルミニウムまたはアルミニウム合金よりなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂フィルム被覆金属板。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム被覆金属板の製造方法であって、
(1)前記樹脂フィルムを接着させるべき金属板の面に、メラミン系硬化剤及びイソシアネート系硬化剤の中から選ばれた少なくとも1種で構成された接着剤を、乾燥後の単位面積当たりの質量が0.05〜2g/m 2 となるように、塗布または噴霧して、これを乾燥させ、接着剤層を形成する工程と、
(2)前記接着剤層が形成された金属板を、前記樹脂フィルムの(融点−100℃)から(融点未満)の温度に加熱して接着層を形成する工程と、
(3)前記接着層が形成された金属板に、接着層を介して、前記樹脂フィルムを圧着させて、樹脂フィルム圧着金属板を形成する工程と、
(4)前記樹脂フィルム圧着金属板を、前記樹脂フィルムの(融点−50℃)から(融点未満)の温度で再加熱した後、100℃/秒以上の冷却速度で冷却する工程とを含むことを特徴とする樹脂フィルム被覆金属板の製造方法。 - 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム被覆金属板を用いて成形加工されたことを特徴とする電子部品用外装容器。
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