次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る成形監視システム1の構成について、図1〜図4を参照して説明する。
図2(図3)は、金型監視システム1を備える射出成形機Mの一部を示す。射出成形機Mは型締装置Mcを備え、この型締装置Mcは、固定盤11,この固定盤11と不図示の圧受盤間に架設した四本のタイバー12…,これらのタイバー12…にスライド自在に装填した可動盤13を備える。そして、固定盤11には固定型Ccが、また、可動盤13には可動型Cmがそれぞれ取付けられ、この固定型Ccと可動型Cmにより金型Cを構成する。これにより、可動盤13は固定盤11に対し、不図示の駆動機構により進退移動し、金型Cの型閉,型締,型開を行うことができる。なお、Miは射出装置,Cf(図3)は金型Cのキャビティをそれぞれ示す。
一方、金型監視システム1は、キャビティ部位Xcに対して可視光線以外の光線Lとなる赤外線Liを照射する発光部14と、可視光線を遮断するフィルタ部15(図4)を通してキャビティ部位Xcから反射する赤外線Li(正反射光Lr)をイメージセンサ3により撮像する監視カメラ部2を備える。
発光部14は、図2及び図3に示すように、固定盤11の一方の側面11pに複数のボルト等により固定されたブラケット21により支持される。なお、発光部14の取付位置(取付高さ)は、図3に示すように、キャビティ部位Xcの位置(高さ)に一致させる。また、発光部14の照射角度は、取付ねじ22,22により任意に設定(変更)できる。さらに、発光部14は、偏平直方体形に形成し、一面を開放したハウジング部24を備える。ハウジング部24の内部には、赤外線(光線L)を発光する多数の赤外線発光ダイオード25…を配列させた発光基板26を配設する。この発光基板26は、点発光となる各赤外線発光ダイオード25…を集積させた面発光体Eを構成する。この面発光体Eの大きさ(形状)は、キャビティ部位Xcに対する監視範囲に対応して設定し、特に、監視範囲に対して同一又はこれ以上の面積となるように考慮する。赤外線発光ダイオード25…は、千鳥状に配列させることが望ましい。発光部14をこのように構成することにより、照度が高められることに加え、照度の均一性が高められる。なお、ハウジング部24の内部には、発光に対する拡散板を配設し、金型Cにおける研磨パターンによる反射光の減衰を抑えるとともに、均一かつ安定した照射ができるように考慮する。
他方、監視カメラ部2は、図2及び図3に示すように、固定盤11の他方の側面11qに取付けた支持機構31により支持される。支持機構31は、複数のボルト等により側面11q上に固定した取付部32と、監視カメラ部2を支持するブラケット33と、このブラケット33と取付部32間に介在する位置調整部34を備える。なお、監視カメラ部2の取付位置(取付高さ)は、図3に示すように、キャビティ部位Xcの位置(高さ)に一致させる。これにより、ブラケット33は、位置調整部34により取付部32に対して前後方向に位置調整でき、監視カメラ部2の前後方向の位置を調整できる。また、監視カメラ部2の撮像角度は、取付ねじ35,35により任意に設定(変更)できる。
さらに、監視カメラ部2は、直方体形に形成したケーシング部37を備え、内部には付属回路36(処理部4)を収容するとともに、前部にはイメージセンサ3を有するセンシング部38を所定の角度Rを付けて取付ける。この角度Rを付けることにより、監視カメラ部2を取付けることに伴う横側方への突出を少なくできる。また、センシング部38は、光学筒39を備え、この光学筒39には、前側から、可視光線を遮断するフィルタ部15,レンズ40を順次内蔵するとともに、この光学筒39の後方に、イメージセンサ3を内蔵する。イメージセンサ3としては、省電力化,小型化及び低コスト化の容易なCMOSイメージセンサを用いることが望ましい。
このように、発光部14を、型締装置Mcにおける固定盤11の一方の側面11pに取付けるとともに、監視カメラ部2を、固定盤11の他方の側面11qに取付ければ、監視カメラ部2は、発光部14から発光される赤外線Liの正反射光Lr、即ち、軸線に対して発光部14から入射する入射角とこれに基づく反射角が同じ大きさとなる反射光を容易に得ることができる。なお、キャビティ部位Xcに対して可視光線以外の光線Lを照射する発光部14を設け、また、監視カメラ部2に、キャビティ部位Xcの反射光Lrから可視光線を除いてイメージセンサ3に付与するフィルタ部15を設ければ、射出成形機M周辺の明るさや成形品の色の影響を原理的に排除でき、誤動作を確実に防止して信頼性及び安全性を高めることができるとともに、画像処理の簡易化及び高精度化を図ることができる。
次に、本発明の要部となるシステム構成について、図1を参照して説明する。2は監視カメラ部であり、前述したイメージセンサ3とこのイメージセンサ3に接続した処理部(制御部)4を内蔵する。この処理部4は、マイコン(マイクロコンピュータ)等を利用し、イメージセンサ3から画像信号を受信して画像データDvを得る画像受信部51と、この画像受信部51から得る画像データDvに対して画像処理を行うことにより、キャビティ部位Xcの状態を判別する機能を有する画像処理部52と、少なくとも画像データDvを成形機コントローラ5に送信する送信処理及び画像処理による判別データを含む成形動作に係わるステータス信号Ds…の送受信処理を行うマルチタスク処理機能を有する主処理部53(マルチタスク処理手段7)と、この主処理部53に接続した通信ポート54を備える。その他、処理部4は、各種の制御機能及び処理機能を備えている。この処理部4は、上述した付属回路36としてケーシング部37に内蔵する。
一方、5は、射出成形機Mに搭載する成形機コントローラであり、この成形機コントローラ5には、通信ポート61と、この通信ポート61に接続した主処理部62と、この主処理部62から付与される画像データDvに係わる画像を当該成形機コントローラ5に付属する表示部5dに表示する画像表示処理部63(画像表示機能Fd)を備えるとともに、射出成形機Mにおける本来の成形動作に係わる各種の制御機能及び処理機能を有する成形機制御部64を備えている。
そして、監視カメラ部2における処理部4の通信ポート54と成形機コントローラ5の通信ポート61は、単一の双方向通信手段6により接続する。この双方向通信手段6には、イーサネット(登録商標)等のLAN6cを用いることができる。これにより、LAN6cを利用して、イメージセンサ3から得る画像データ(画像信号)Dvを成形機コントローラ5に送信可能になるとともに、処理部4と成形機コントローラ5間における各種ステータス信号Ds…の送受信(双方向通信)が可能になる。このようなLAN6cを用いれば、図1に示すように、他の場所(管理室等)に設置された中央コンピュータPC等も、同一のLAN6cに接続することができるとともに、他の一又は二以上の射出成形機M…に取付けられる監視カメラ部2…の通信ポート54…及び成形機コントローラ5…の通信ポート61も、同一のLAN6cに接続できる。したがって、このようなLAN6cを構築することにより、他の射出成形機M…とのデータ授受や他の場所に設置された中央コンピュータPC等とのデータ授受を容易かつ迅速に行うことができる。
他方、成形機コントローラ5に付属する表示部5dは、タッチパネルを付設したカラー液晶ディスプレイ等を用いることができる。この表示部5dは、本来、成形機本体に係わる各種データの表示や設定等に用いられるが、画像データDvに係わる画像を表示部5dに表示するための画像表示機能Fdを備えており、画像データDvに係わる画像、即ち、キャビティ部位Xcの画像を表示することができる。したがって、この表示部5dは、監視カメラ部2側(イメージセンサ3)から送信される画像データDvに係わる画像を表示するための表示部を兼用する。よって、監視カメラ部2側の表示部は不要になるため、システム全体のコストダウン及び設置性向上に寄与できる。
さらに、成形機コントローラ5には、後述するエラーデータDb,Dc,Dgに対応する画像データDvを、ショット番号に対応させてメモリに登録するデータ記憶機能Fmを備える。即ち、成形機コントローラ5には、監視カメラ部2から、エラーデータDb,Dc,Dg及び画像データDvが同時に付与されているため、エラーデータDb,Dc,Dgに対応する画像データDvを、ショット番号に対応させて成形機コントローラ5に内蔵するメモリに登録することができる。なお、このようなデータ記憶機能Fmは、監視カメラ部2側にも同様に設けることができる。
次に、本実施形態に係る成形監視方法を含む成形監視システム1の使用方法及び動作について、図1〜図9を参照して説明する。
最初に、発光部14と監視カメラ部2の角度設定を行う。今、型開した可動型Cmの位置が図2に示す実線位置にあるものとする。この状態で発光部14から照射される赤外線Liの角度(照射角度)が、キャビティ部位Xcの全体に当たるように設定する。この場合、照射角度は、取付ねじ22…の弛緩又は締付により容易に設定できる。これにより、赤外線Liは、キャビティ部位Xcに対して斜めに照射される。
次いで、監視カメラ部2の撮像角度を設定する。この場合、図2に示すように、キャビティ部位Xcから反射する赤外線Liの正反射光Lrを撮像できるように設定する。このような正反射光Lrを撮像することにより、反射率の差により検出できるため、S/N比を高くできるとともに、他の角度からの光の影響を低減できる。なお、撮像角度は、取付ねじ35…の弛緩又は締付により容易に設定できる。また、型開した際における可動型Cmの位置が、図2に仮想線で示すCma,Cmbのように変更された場合であっても、同様の操作により容易に設定することができる。
さらに、基準画像データの設定を行う。この場合、正常(良品)な成形品が付着したキャビティCfの状態を撮像し、一次基準画像データとして登録するとともに、成形品が付着していないキャビティCfのみの状態を撮像し、二次基準画像データとして登録する。登録に際しては、まず、赤外線発光ダイオード25…を点灯させる。これにより、赤外線Liはキャビティ部位Xcに対して照射され、キャビティ部位Xcで正反射する。反射した赤外線Li(正反射光Lr)は、監視カメラ部2のセンシング部38に入光し、イメージセンサ3に結像する。この際、射出成形機M周辺の可視光線はフィルタ部15によりカットされ、反射した赤外線Li(正反射光Lr)のみがイメージセンサ3に結像する。そして、イメージセンサ3から得られる画像データ(画像信号)Dvは、処理部4に付与されることにより内蔵するメモリ(画像メモリ)に書き込まれる。
次に、実際の成形工程における監視方法について説明する。図5及び図6は、成形工程における各部の動作のフローチャートを示す。なお、射出成形機Mの稼働中においては、成形機コントローラ5から処理部4に対して各種ステータス信号Ds…が送信されるとともに、処理部4から成形機コントローラ5に対しても各種のステータス信号Ds…及びデータDv等が送信される。そして、処理部4においては、少なくともイメージセンサ3から得る画像データDvを成形機コントローラ5に送信する送信処理及び画像処理による判別データを含む成形動作に係わるステータス信号Ds…の送受信処理に対するマルチタスク処理が実行される。
今、射出充填工程及び冷却工程を経て、金型Cの型開工程が行われているものとする。型開工程では、成形機制御部64により型開きに係わるシーケンス制御が行われる(ステップS1)。そして、型開工程が終了することにより、成形機制御部64から型開終了信号Da(ステータス信号Ds)が出力し、監視カメラ部2の処理部4に送信される(ステップS2)。型開終了信号Daを受信した主処理部53は一次監視指令を出力する(ステップS3,S4)。これにより、画像処理部52による一次監視処理が行われる(ステップS5)。
この一次監視処理は、型開き後、エジェクタ動作前に行う監視処理であり、成形品に未充填部分が存在するか否かなどの成形不良の判別を行うことができる。図7に、この一次監視処理の処理手順をフローチャートで示す。まず、撮像開始指令を出力し、発光部14における赤外線発光ダイオード25…を点灯させるとともに、監視カメラ部2を作動させて撮像を開始する(ステップS71)。これにより、発光部14からキャビティ部位Xcに対して赤外線Liが照射され、キャビティ部位Xcで正反射する。反射した赤外線Li(正反射光Lr)は、監視カメラ部2のセンシング部38に入光し、イメージセンサ3に結像する。この際、射出成形機M周辺の可視光線はフィルタ部15によりカットされ、反射した赤外線Li(正反射光Lr)のみがイメージセンサ3に投射される。そして、イメージセンサ3から得られる画像データ(画像信号)Dvは、画像受信部51に付与される。なお、赤外線Liを用いるため、点灯時であっても可視光線とは異なり、オペレータに違和感や不快感を与えることはない。
また、一画面分の画像データDvが画像受信部51に取り込まれたなら、主処理部53は、撮像終了指令を出力する。これにより、発光部14における赤外線発光ダイオード25…を消灯させ、かつイメージセンサ3による撮像を終了させる(ステップS72,S73)。このように、発光部14は、撮像するときのみ点灯させるため、消費電力の低減を図ることができる。
一方、画像処理部52では、撮像した最初の画素(ピクセル)における画素レベルと前述した一次基準画像データにおける対応する画素レベルを比較して両者の偏差を演算する画像処理を行う(ステップS74)。そして、求めた偏差としきい値を比較する(ステップS75)。この際、正常に成形が行われていれば、[偏差≦しきい値]となるが、一部に充填不良等が存在すると、その部分は、[偏差>しきい値]となるため、特異点として計数(カウント)される(ステップS76)。以下、順次続く画素に対して同様の処理を繰り返し、最終の画素まで行う(ステップS77,S74…)。
さらに、画像処理部52は、得られた特異点の計数値(合計値)Ncと予め異常を判別するために設定した異常レベルNeを比較し、[Nc>Ne]の場合には、異常が発生したものと判断して異常データDb(ステータス信号Ds)となるエラーデータを出力する(ステップS78,S79)。他方、異常が発生していない場合には、計数値Ncと予め設定したアラームレベルNaを比較し、[Nc>Na]の場合には、異常直前の状態であると判断してアラームデータDc(ステータス信号Ds)となるエラーデータを出力する(ステップS80,S81)。これに対して、一次監視処理の結果、正常の場合には、正常データDd(ステータス信号Ds)を出力する(ステップS78,S80,S82)。なお、このような監視処理においては、偏差に対するしきい値による判別と、特異点の計数値に対する基準レベルによる判別の両方を行うため、判別精度が高められる。
異常データDb,アラームデータDc及び正常データDdは判別データとなり、主処理部53に付与される(ステップS6,S7)。そして、この際、判別データが、異常データDb又はアラームデータDcの場合には、成形機コントローラ5の主処理部62に送信され、成形機制御部64による所定のエラー処理が行われる(ステップS8,S9)。即ち、異常データDbの場合には、射出成形機Mの動作を停止するとともに、異常表示等の異常処理を行う。また、アラームデータDcの場合には、異常直前の状態である旨の処理、即ち、射出成形機Mの動作を停止するとともに、予備警報としてのアラーム表示等のアラーム処理を行う。なお、一次監視処理では、主に、成形品に未充填部分が存在するか否かなどの成形不良の判別を行うが、成形品が他方の型に付着して型開されたり、型開時に落下するなども考えられるため、完全に成形品が無い場合にのみ、射出成形機Mの動作を停止する処理を行い、一次監視段階では、条件によって射出成形機Mの動作を停止させない設定も可能である。
さらに、成形機コントローラ5は、データ記憶機能Fmにより、少なくともエラーデータ(異常データDb,アラームデータDc)に対応する画像データDvを、ショット番号に対応させてメモリに登録する。これにより、一次監視処理における異常発生時の画像データDvを容易かつ確実に保存でき、分析及び統計等のデータ処理を的確かつ迅速に行うことができる。
一方、判別データが正常データDdの場合には、この正常データDdと突出し許可信号De(ステータス信号Ds)が主処理部62に送信される(ステップS8,S10)。そして、主処理部62が突出し許可信号Deを受信することにより、突出し工程が行われる。突出し工程では、成形機制御部64による突出しに係わるシーケンス制御が行われる(ステップS11,S12)。また、主処理部62が正常データDdを受信することにより、一次監視画像に係わる画像データDvの受信が行われる(ステップS13,S14,S15)。この画像データDvは、成形機コントローラ5に付属する表示部5d上に、キャビティCfのグレースケール画像として表示される(ステップS16)。
他方、突出し工程が終了することにより、成形機制御部64から突出し終了信号Df(ステータス信号Ds)が出力し、監視カメラ部2の処理部4に送信される(ステップS17)。突出し終了信号Dfを受信した主処理部53は、二次監視指令を出力する(ステップS18,S19)。これにより、画像処理部52による二次監視処理が行われる(ステップS20)。
この二次監視処理は、エジェクタ動作後に行う監視処理であり、エジェクタが正常に行われたか否かを判別することができる。図8に、この二次監視処理の処理手順をフローチャートで示す。まず、撮像開始指令を出力し、発光部14における赤外線発光ダイオード25…を点灯させるとともに、監視カメラ部2を作動させて撮像を開始する(ステップS91)。これにより、発光部14からキャビティ部位Xcに対して赤外線Liが照射され、キャビティ部位Xcで正反射する。また、反射した赤外線Li(正反射光Lr)は、監視カメラ部2のセンシング部38入光し、イメージセンサ3に結像する。この際、射出成形機M周辺の可視光線はフィルタ部15によりカットされ、反射した赤外線Li(正反射光Lr)のみがイメージセンサ3に結像する。そして、イメージセンサ3から得られる画像データDvは画像受信部51に付与される。
また、一画面分の画像データDvが画像受信部51に取り込まれたなら、主処理部53は、撮像終了指令を出力する。これにより、発光部14における赤外線発光ダイオード25…を消灯させ、かつイメージセンサ3による撮像を終了させる(ステップS92,S93)。
一方、画像処理部52では、最初の画素における画素レベルと前述した二次基準画像データにおける対応する画素レベルを比較して両者の偏差を演算する画像処理を行う(ステップS94)。また、求めた偏差としきい値を比較する(ステップS95)。この際、成形品が正常に排出されていれば、[偏差≦しきい値]となるが、正常に排出されていない場合は、成形品の存在する部分が、[偏差>しきい値]となるため、特異点として計数(カウント)される(ステップS96)。以下、順次続く画素に対して同様の処理を繰り返し、最終の画素まで行う(ステップS97,S94…)。
さらに、画像処理部52は、得られた特異点の計数値(合計値)Ncと予め異常を判別するために設定した異常レベルNxを比較し、[Nc>Nx]の場合には、異常が発生したものとして異常データDg(ステータス信号Ds)となるエラーデータを出力する(ステップS98,S99)。これに対して、正常の場合には、正常データDh(ステータス信号Ds)を出力する(ステップS98,S100)。
異常データDg及び正常データDhは判別データとなり、主処理部53に付与される(ステップS21,S22)。そして、この際、判別データが、異常データDgの場合には、成形機コントローラ5の主処理部62に送信され、成形機制御部64による所定のエラー処理が行われる(ステップS23,S24)。即ち、異常データDgの場合には、射出成形機Mの動作を停止するとともに、異常表示等の異常処理を行う。なお、二次監視処理では、エジェクタが正常に行われたか否かを判別するが、成形品の全部又は一部が金型Cに貼り付くなどにより残留している場合もあるため、射出成形機Mの動作を停止する前に、再ノック動作を行うことも可能である。
さらに、成形機コントローラ5は、データ記憶機能Fmにより、少なくともエラーデータ(異常データDg)に対応する画像データDvを、ショット番号に対応させてメモリに登録する。これにより、二次監視処理における異常発生時の画像データDvを容易かつ確実に保存でき、分析及び統計等のデータ処理を的確かつ迅速に行うことができる。
一方、判別データが正常データDhの場合には、正常データDhと型締許可信号Di(ステータス信号Ds)が主処理部62に送信される(ステップS23,S25)。そして、主処理部62が型締許可信号Diを受信することにより、型締工程が行われる。型締工程では、成形機制御部64による型締に係わるシーケンス制御が行われる(ステップS26,S27)。また、主処理部62が正常データDhを受信することにより、二次監視画像に係わる画像データDvの受信が行われる(ステップS28,S29,S30)。この画像データDvは、成形機コントローラ5に付属する表示部5d上に、キャビティCfのグレースケール画像として表示される(ステップS31)。
このように、監視カメラ部2における処理部4では、イメージセンサ3から得る画像データDvを成形機コントローラ5に送信する送信処理及び画像処理による判別データ(正常データDd,Dh、エラーデータDb,Dc,Dg)を含む成形動作に係わるステータス信号Ds…(型開終了信号Da,突出し許可信号De,突出し終了信号Df,型締許可信号Di等)の送受信処理がマルチタスク処理により行われる。したがって、LAN6cでは、スレッド処理によるシリアル通信が行われる。
ところで、マルチタスク処理では、周期的に、ステータス信号Dsの有無を監視し、ステータス信号Dsが発生していない期間を利用して画像データDvの送信処理を行う。また、マルチタスク処理手段7には、ステータス信号Ds…の送受信処理を優先させる優先処理機能Fpを備えている。即ち、各ステータス信号Ds…に優先度を付与し、実行中の処理に対して優先度の高いステータス信号Dsが発生したなら、実行中の処理よりも優先して当該ステータス信号Dsに対する処理を実行する。
図9は、優先処理機能Fpの処理手順に係わるフローチャートを示す。今、画像データDvの送信処理が行われているものとする(ステップS50)。この送信処理の途中で優先度の高いステータス信号Dsが発生した場合、優先度に応じて優先処理を実行する。なお、ステータス信号Ds…は、基本的に成形動作に直接関連する信号であるため、画像データDvの送信処理よりも優先して処理される。しかし、各ステータス信号Ds…に対しては異なる優先度が付与され、複数のステータス信号Ds…が同時に発生したような場合には、優先度の高いステータス信号Ds(エラーデータ等)が優先して処理(送信処理)される。この場合、周期的に、ステータス信号Dsの有無を監視し、優先度の高いステータス信号Dsが待機していれば、例えば、画像データDvの送信処理を中断し、優先度の高いステータス信号Dsの送信処理を実行する(ステップS51,S52)。
そして、ステータス信号Dsの送信処理が終了すれば、画像データDvの送信処理を再開する(ステップS53,S54)。この後、さらにステータス信号Dsが発生すれば、同様の中断処理を実行するとともに、発生が無ければ、画像データDvの送信処理を完了させる(ステップS55)。このような優先処理機能Fpにより、成形動作(成形サイクル)に影響を与えることなく、単一の双方向通信手段6であるLAN6cのみによる画像データDvの送信とステータス信号Ds…の送受信を確実に行うことができる。なお、優先度の付与方法としては、ステータス信号Ds…を構成するデータの特定部のビットを優先度判定情報に利用してデータ作成を行えばよい。これにより、データの特定部におけるビット情報の有無により優先度の高いステータス信号Dsか否かを判別できる。
よって、このような本実施形態に係る成形監視システム1(成形監視方法)によれば、画像処理を監視カメラ部2側で行い、少なくとも画像処理による判別データ(正常データDd,Dh、エラーデータDd,Dc,Dg)及び画像データDvを成形機コントローラ5に送信するようにしたため、監視カメラ部2を取付けた場合であっても成形機コントローラ5における処理の負担はほとんど変わらない。したがって、成形機コントローラ5による成形機本体に対する本来の制御に遅れ等の支障を生じる不具合を確実に回避できる。また、監視カメラ部2を高性能カメラ等に変更し、この変更に伴ってソフトウェアやデバイスを変更したり或いは成形サイクルの高速化に対応して画像処理の手法を変更する場合であっても、成形機コントローラ5側のソフトウェアやデバイスの変更は不要になるため、容易かつ柔軟に対応でき、汎用性及び発展性を高めることができる。さらに、監視カメラ部2を単一の双方向通信手段6により成形機コントローラ5に接続し、少なくともイメージセンサ3から得る画像データDvを成形機コントローラ5に送信する処理及び画像処理による判別データを含む成形動作に係わるステータス信号Ds…の送受信処理に対するマルチタスク処理を行うようにしたため、特に、接続系統の単純化、更にはコストダウンを図ることができる。
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
例えば、例示の実施形態では、可視光線以外の光線Lとして、赤外線Liを利用したが、必ずしも赤外線Liに限定されるものではなく、紫外線,遠赤外線等の他の光線を用いることもできる。また、発光部14には、多数の発光ダイオード25…を用いた場合を例示したが、他の発光手段であってもよい。さらに、双方向通信手段6には、例示以外の各種LAN(無線LAN等を含む)を利用できるとともに、LAN以外の通信手段であってもよい。なお、例示の実施形態では、一次監視処理と二次監視処理の双方を実施する場合を示したが、いずれか一方の監視処理の実施であってもよい。一方、成形監視システム1を取付ける対象として射出成形機Mを例示したが、金型Cを用いる各種成形機に適用することができる。