JP4112271B2 - 金属製品の塗装方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業性に優れた金属製品の塗装方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、家電製品や、建材、事務機器などへの塗装は、亜鉛メッキ鋼板や冷延鋼板などの板状もしくはコイル状の金属板を予め塗装し、この塗装板を成形加工する、いわゆるプレコート鋼板(以下、PCMという。)法が広く採用されている。しかしながら、PCM法で形成された塗膜は、PCMを成形加工する都合上、加工時の金属素材の伸びや曲げに追従できる加工性が要求され、塗膜に加工性を持たせると、塗膜に他の多くの優れた特性を持たせることは困難であった。特に、近年、塗装作業性を良くするために自動車の分野においてもPCM法が考えられてきているが、自動車においては、耐候性や、耐酸性、耐擦り傷性、耐ガソリン性等の各種優れた性能や意匠性のある塗膜が要求されるため、PCM法は、ほとんど採用されるに至っていない。
【0003】
そこで、PCMを成形加工後、更に、その上に前記優れた性能や意匠性のある塗膜を形成する着色塗料を塗装する方法が採用されるようになってきている。
この方法においては、PCMの上塗塗膜は、前述の通り、加工性が要求されるため、有機潤滑剤が配合されており、そのため、PCMを成形加工後、着色塗料を塗装しても密着性が悪い、即ち、リコート性が悪いという問題点があった。
【0004】
そこで、従来より、PCMを成形加工後、上塗塗膜表面を研磨やトリクロルエタン等の有機溶剤にて粗面化処理し、その後、着色塗料を塗装する方法がとられていた。
しかしながら、この方法では、粗面化処理工程が入るため、工程が複雑となり、また、研磨カスや揮発有機溶剤が発生し、作業性が低下したり、粗面化するため鮮映性のある平滑な仕上げ塗膜が得にくい等の問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の課題を背景になされたものであり、粗面化処理工程が不要で、それ故、作業性がよく、平滑な仕上げ塗膜が得られる金属製品の塗装方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、以下の方法により、前記課題が確実に達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、有機潤滑剤を含有する上塗塗膜を施したPCM(プレコート金属板)を成形加工した後、前記上塗塗膜表面を粗面化処理することなく、該表面に、バインダー樹脂として、塩素化ポリプロピレン及び/又は非晶性ポリプロピレンを含有する下塗塗料を塗装し、次いで、着色塗料を塗装することを特徴とする金属製品の塗装方法を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するPCMとしては、有機潤滑剤を含有する上塗塗膜を施した従来から公知の各種PCMが適用可能である。即ち、金属板を、必要に応じて、前処理を施したもの、プライマーを施したもの、あるいは前処理及びプライマーを施したものに、有機潤滑剤を含有する上塗塗料を塗装したものである。
【0008】
前記金属板としては、例えば、鋼板や、ステンレス板、アルミニウム板、銅板、あるいはこれらの合金板等が代表的なものとして挙げられる。鋼板の例としては、冷延鋼板や、熱延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛−鉄合金メッキ鋼板、亜鉛−アルミニウム合金メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、亜鉛−ニッケル合金メッキ鋼板、錫メッキ鋼板等が挙げられる。
前記前処理としては、例えば、水洗や、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研磨、リン酸塩処理、ジルコン処理、複合酸化被膜処理、シランカップリング剤処理等があり、これらを単独又は組み合わせた方法等が挙げられる。なお、クロメ−ト処理法も代表的なものとして知られているが、安全衛生上望ましくない。
【0009】
前記プライマーとしては、金属板の種類に応じて各種公知のプライマーが利用可能である。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂や、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、無機系樹脂等の各種バインダー樹脂と、それを溶解もしくは安定に分散させる水又は有機溶剤などの溶媒とからなり、更に必要に応じて、バイダー樹脂の硬化剤、硬化触媒;無公害防錆顔料もしくは有機系防錆剤、体質顔料、着色顔料;レベリング剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を配合したものである。
【0010】
前記上塗塗料としては、PCM用として公知の、有機潤滑剤を含有する各種上塗塗料が利用可能である。具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂や、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、無機系樹脂等の各種バインダー樹脂と、それを溶解もしくは安定に分散させる水又は有機溶剤などの溶媒と、有機潤滑剤とからなり、更に必要に応じて、バイダー樹脂の硬化剤、硬化触媒、体質顔料、着色顔料、レベリング剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を配合したものである。
【0011】
前記有機潤滑剤としては、ポリ四フッ化エチレンや、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系、天然パラフィン、合成パラフィン等の炭化水素系、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系、脂肪酸の低級アルコール、硬化ひまし油等のエステル系、アセチルアルコール、ステアリルアルコール等のアルコール系、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス等が代表的なものとして挙げられる。
【0012】
これら有機潤滑剤は、通常平均粒径0.1〜10μmの粒状物で、塗膜中0.5〜15質量%配合されている。また、有機潤滑剤は、PCM表面と成形金型との摩擦を低減させ、潤滑効果を発揮させるため、通常上塗塗膜の表面層に主として分布するようになっている。
次に、PCMを成形加工した後、その表面に塗装する下塗塗料について説明する。
【0013】
下塗塗料は、塩素化ポリプロピレン及び/又は非結晶性ポリプロピレンを必須成分として含むバインダー樹脂、それを溶解もしくは安定に分散させる水又は有機溶剤などの溶媒とからなり、更に必要に応じて、塩素化ポリプロピレンや非晶性ポリプロピレン以外のバインダー樹脂、該バインダー樹脂の硬化剤、硬化触媒、着色顔料、体質顔料、導電性顔料、レベリング剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を配合したものである。
【0014】
前記塩素化ポリプロピレン及び/又は非晶性ポリプロピレンは、前記有機潤滑剤を含有する塗膜表面によく密着するために、バインダー樹脂として使用するものであり、ポリオレフィン系成形品用塗料のバインダー樹脂に広く利用されている通常の塩素化ポリプロピレン又は非晶性ポリプロピレンが適用可能である。
【0015】
塩素化ポリプロピレンの塩素含有量は、密着性や塗膜強度等の観点から10〜50質量%、好ましくは、15〜30質量%が適当である。
また、塩素化ポリプロピレンとしては、各種変性物も使用可能であり、例えば、塩素化ポリプロピレンのカルボン酸もしくはカルボン酸無水物変性物(特開7−150107号、特開8−59757号、特開10−36601号、特開2001−139875号等の公報参照);塩素化ポリプロピレンに、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルニトリル等のモノマーをグラフト化した変性物(特開58−176208号等の公報参照);塩素化ポリプロピレンに、ポリジエン類とアクリル系オリゴマーあるいはポリエステル系オリゴマーとをグラフト化したポリオール変性物(特開6−16746号等の公報参照);プロピレン単位とα−オレフィン単位とからなる塩素化ポリプロピレン(特開7−304913号等の公報参照)等が代表的なものとして挙げられる。
【0016】
これら塩素化ポリプロピレンの市販品としては、例えば、ハードレン14ML、ハードレン14LLB、ハードレンBS−40 [東洋化成工業(株)製商品名] 、スーパークロン804M、スーパークロン822、スーパークロン824LM、スーパークロン223M−35[日本製紙(株)製商品名]、ハードレンB−13、ハードレンB−2000 、ハードレンB−4000 [東洋化成工業(株)製商品名:ポリオール変性ポリプロピレン] 等が挙げられる。
【0017】
非晶性ポリオレフィンは、アタクチックポリプロピレンや、プロピレンを主体としてこれに炭素数2又は4〜10のα−オレフィンをランダム共重合したプロピレン−α−オレフィン共重合体である。
ここで、「非晶性」は、二次結合力が接近し得る最短距離に分子が配列していないことを意味し、例えば、X線回折によって測定される。
前記炭素数2又は4〜10のα−オレフィン成分としては、例えば、エチレンや、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ヘキセン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどを例示することができる。又、プロピレン、ブテン、エチレンの各成分からなるプロピレン−ブテン−エチレン三元共重合体も使用できる。
【0018】
プロピレン−α−オレフィン共重合体におけるプロピレン成分は、50〜95モル%、好ましくは、60〜90モル%であることが、密着性や溶媒への溶解性等の観点から適当である。
これら非晶性ポリオレフィンの市販品としては、例えば、ユニストールP−401や、ユニストールP−802[三井化学(株)製商品名]、ビスタック[チッソ(株)製商品名]等が好適に挙げられる。
【0019】
塩素化ポリプロピレン及び/又は非結晶ポリプロピレン(主成分であるこれらの成分の配合量をまず、規定した方がよいと考えます。)の配合量は、下塗塗料中、通常、15〜80質量%、好ましくは、20〜60質量%であることが適当である。
下塗塗料を構成するバインダー樹脂としては、このような塩素化ポリプロピレン及び/又は非晶性ポリプロピレン単独でも良いが、密着性や、耐候性、耐薬品性等を更に向上させるため、他のバインダー樹脂や、その硬化剤、硬化促進剤を併用することも可能である。
他のバインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂や、アクリル樹脂、アルキド樹脂、繊維素樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる
塩素化ポリプロピレン及び/又は非結晶ポリプロピレンと、その他バインダーとの質量配合割合は、例えば、(100:0〜20:80)、好ましくは、(100:0〜30:70)が適当である。
【0020】
前記溶媒としては、バインダー樹脂を溶解もしくは安定に分散させられるものであれば従来から塗料用に使用されている各種溶媒が利用可能である。具体的には、例えば、トルエンや、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサンや、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ヘキサンや、へプタン等の脂肪族炭化水素類、アセトンや、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチルや、酢酸ブチル等のエステル類、エチルエーテルや、ジフエニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、エチルアルコールや、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水、等が挙げられ、これらは混合溶媒であってもよい。溶媒は、下塗塗料の塗装作業性等を考慮して、通常下塗塗料の固形分が、例えば、20〜80質量%、好ましくは、30〜70質量%となる程度で配合するのが好ましい。
【0021】
前記顔料としては、従来から塗料用に使用されている各種顔料が利用可能である。具体的には、例えば、酸化チタンや、酸化鉄、フタロシアニン等の着色顔料、硫酸バリウムや、タルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ等の体質顔料、更には、後述する着色塗料を静電塗装する場合は、導電性を付与させるためのカーボンブラックや、グラファイト、あるいは金、銀、ニッケル等の金属化合物などの導電性顔料等が挙げられる。顔料は、下塗塗料中、通常、0〜50質量%、好ましくは、0〜30質量%になる程度が適当である。
【0022】
次に、前述の下塗塗料塗膜表面に塗装する着色塗料について説明する。
着色塗料は、バインダー樹脂、着色顔料、更に必要に応じて、それを溶解もしくは安定に分散させる水又は有機溶剤などの溶媒、前記バインダー樹脂の硬化剤、硬化触媒;体質顔料;レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、静電防止剤等の各種添加剤等を配合したものである。
着色塗料は、従来から通常利用されている有機溶剤型塗料、水系塗料、無溶剤型塗料等の各種塗料形態のものが特に制限なく使用可能であり、また、焼付型や、自然硬化型、紫外線硬化型等の各種硬化形態の塗料が使用可能であり、これらは、各種塗装環境や、金属製品の使用目的応じて必要とされる塗膜性能などを考慮して、任意の公知の着色塗料を選択すればよい。
【0023】
次に本発明の金属製品の塗装方法について説明する。
通常の方法に従って製造したPCMを、切断加工、折り曲げ加工等の手段により成形加工した後、その表面を必要に応じて脱脂等の清浄処理する。
次いで、従来法とは異なり、粗面化処理することなく、前述の下塗塗料をスプレー塗装や、浸漬塗装、刷毛塗装、ロール塗装等の手段により、通常、2〜50μm、好ましくは、5〜20μmの乾燥膜厚になるよう塗装し、自然乾燥もしくは焼付乾燥することにより硬化塗膜を形成する。なお、乾燥条件は、使用するバインダー樹脂あるいはバインダー樹脂と硬化剤(硬化促進剤)の組合せの種類に応じて、任意に選択すればよい。
【0024】
次いで、下塗塗料塗膜表面に、前述の着色塗料を同様な手段により塗装し、硬化塗膜を形成する。なお、下塗塗料と着色塗料の塗装間隔は、前者の塗膜が硬化した後、後者を塗装するのが適当であるが、場合により、前者が硬化する前に、後者を塗装する、いわゆる、ウエット−オン−ウエット方式で塗り重ね、同時に硬化させることも可能である。
また、着色塗料として、汚れ易い場合や、着色塗料として、鱗片状のアルミニウム系や、雲母系等のメタリック顔料を配合したメタリック塗料を使用した場合には、形成した着色塗膜表面に、更に、クリヤー塗膜を施すことも可能である。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中「部」、「%」は、特に断らない限り質量基準で示す。
〈塩素化ポリプロピレン溶液Aの調製〉
質量平均分子量が約20,000である結晶性ポリプロピレン200gを、攪拌機と滴下口とモノマーを還流するための冷却管とを取り付けた四口フラスコに入れ、160℃に保たれた湯浴中で完全に溶融した。次いで、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌を行いながら、メタクリル酸16gと、4mlのヘプタンに溶解したジ−t−ブチルパーオキシド1.6gとを別々の滴下口より30分間かけて添加した。このとき、系内は160℃に保たれ、更に30分間グラフト化反応を継続した後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら約30分間かけて未反応物を取り除き、次いで、反応生成物をグラスライニングされた反応釜に投入し、3.2リットルのクロロホルムを加え、0.2MPa(2kg/cm2)の圧力下、100℃で充分溶解した後、紫外線を照射しつつ塩素ガスを反応釜底部より吹き込み、塩素含有率が20%になるまで塩素化反応を行った。次いで、溶媒のクロロホルムをエバポレーターで留去し、トルエン置換することにより、固形分30%のグラフト化塩素化ポリプロピレン溶液Aを得た。
【0026】
〈塩素化ポリプロピレン溶液Bの調製〉
質量平均分子量が約100,000である、プロピレン−α−オレフィン共重合物(プロピレン:68モル%、ブテン:25モル%、エチレン:7モル%)200gを、前述と同様なフラスコに入れ、180℃に保たれた湯浴中で完全に溶融した。次いで、フラスコ内を窒素で置換し、攪拌を行いながら、滴下口より無水マレイン酸4gを約5分間かけて添加し、次に、滴下口より2mlのヘプタンに溶解したジクミルパーオキシド0.4gを約30分間かけて添加した。このとき、系内は180℃に保たれ、更に15分間グラフト化反応を継続した後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら約30分間かけて未反応物を取り除き、次いで、反応生成物を前述と同様な方法で塩素化反応を行い、塩素含有率が18%で、固形分が30%のグラフト化塩素化ポリプロピレンのトルエン溶液Bを得た。
【0027】
〈非晶性ポリプロピレン溶液Cの調製〉
攪拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ内で、質量平均分子量が約15000である非晶性ポリプロピレン100gを、キシレン100gに加熱溶解した後、系の温度を110℃に保った。次いで、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート8gを添加した後、無水マレイン酸14g及びシクロヘキシルメタクリレート86gから成るラジカル重合性不飽和モノマーにキシレン33gを混合した溶液を、3時間かけて滴下させ、更に7時間に亘ってグラフト化反応を行い、次いで、トルエンで固形分濃度を30%になるよう調整した非晶性ポリプロピレン溶液Cを得た。
【0028】
〈下塗塗料Iの調製〉
塩素化ポリプロピレン溶液A100部とエポキシ樹脂(固形分100%、エポキシ当量250;シェル化学社製商品名「エピコート828」)30部とシクロヘキサノン50部とを混合して、固形分33%の樹脂溶液を製造した。該樹脂溶液150部と酸化チタン20部を分散混合し、下塗塗料Iを調製した。
【0029】
〈下塗塗料IIの調製〉
塩素化ポリプロピレン溶液B100部とアクリル変性エポキシ樹脂溶液(固形分45%、酸価1.0KOHmg/g、水酸基価29KOHmg/g、;大日本インキ化学工業社製商品名「アクリディックA−1650」)125部とキシレン120部とを混合して固形分25%の樹脂溶液を製造した。該樹脂溶液150部と酸化チタン20部を分散混合し、下塗塗料IIを調製した。
【0030】
〈下塗塗料IIIの調製〉
非晶性ポリプロピレン溶液C100部とエポキシ樹脂(固形分100%、エポキシ当量250、シェル化学社製商品名「エピコート828」)12部とキシレン8部とを混合して固形分35%の樹脂溶液を製造した。該樹脂溶液150部と酸化チタン20部を分散混合し、下塗塗料IIIを調製した。
【0031】
〈下塗塗料IVの調製〉
塩素含有率20%の塩素化ポリプロピレン溶液(固形分20%、日本製紙社製商品名「スーパークロン824LM」)100部と二酸化チタン24部を分散混合し、下塗塗料IVを得た。
【0032】
(実施例1)
リン酸亜鉛処理した溶融亜鉛メッキ鋼板に下記組成からなるプライマーを乾燥膜厚5μm、下記組成からなる上塗塗料を乾燥膜厚15μmになるようバーコーターで塗装し、PCMを得た。そのPCMをブランク径110mmφ、1辺50mmの角筒ポンチで角筒絞りを行い、成形加工した。
次いで、下塗塗料Iを乾燥膜厚5μmになるよう塗装し、2時間自然乾燥させた後、アクリルメラミン樹脂系白色塗料A(大日本塗料株式会社製商品名「アクローゼ♯6000」)を乾燥膜厚40μmになるよう塗装し、150℃で、20分間焼き付けた。
【0033】
〈プライマー〉
ポリエステル樹脂溶液 1) 225.0部
メラミン樹脂溶液 2) 12.5部
トリポリリン酸アルミニウム防錆顔料 80.0部
ドデシルベンゼンスルホン酸 1.0部
シクロヘキサノン 132.0部
注1)ポリエステル樹脂溶液(固形分40%;東洋紡社製商品名「バイロンGK−880」)
【0034】
注2)メラミン樹脂溶液(固形分80%;三井サイテック社製商品名「サイメル325」)
〈上塗塗料〉
ポリエステル樹脂溶液 1) 225.0部
メラミン樹脂溶液 2) 12.5部
アマイド系有機潤滑剤3) 8.0部
ドデシルベンゼンスルホン酸 0.8部
シクロヘキサノン 61.0部
注3)アマイド系有機潤滑剤(平均粒径7μm;ヘキスト社製商品名「セリダスト3910」)
塗装された金属製品を、1時間放置後、リコート性(密着性)、光沢、鮮映性、塗膜外観及び耐チッピング性の各評価試験を行い、その結果を表2に示す。
【0035】
(実施例2〜実施例6及び比較例1〜比較例3)
表1に示す金属板、表面処理、プライマー、上塗塗料を使用して、実施例1と同様にしてPCMを製造し、成形加工した。
該成形品につき、実施例2〜6については、表1に示す下塗塗料、着色塗料を実施例1と同様にして塗装し、乾燥させた。なお、実施例3、5及び6については、着色塗料を150℃、20分間焼付、実施例2及び4については、着色塗料を自然乾燥させた。また、比較例1においては、下塗塗料塗装の代わりに粗面化処理した以外は、実施例1と同様に塗装し、比較例2においては、下塗塗料塗装の代わりに粗面化処理した以外は、実施例2と同様に塗装し、比較例3においては、粗面化処理及び下塗塗料の塗装ともせず、それ以外は、実施例3と同様にして塗装した。塗装された金属製品を、1時間放置後、リコート性、光沢、鮮映性、塗膜外観及び耐チッピング性の各評価試験を行い、その結果を表2に示す。なお、表1中の組成は、不揮発成分のみ記載しており、「部」は、固形分量を表示している。
【0036】
【表1】
表1 塗装システム
Figure 0004112271
【0037】
【表2】
表1 塗装システム(続き)
Figure 0004112271
注4)ポリエステル樹脂溶液(固形分35%;東洋紡社製商品名「バイロンGK−290」)
注5)メラミン樹脂(固形分100%;三井サイテック社製商品名「サイメル303)
注6)ふっ素系有機潤滑剤(平均粒径5μm;ダイキン工業社製商品名「ルブロンL−2」)
注7)常乾型白色自動車補修用塗料(大日本塗料社製商品名「オートスウィフト2Kグロス」)
注8)フェノキシ樹脂溶液(固形分35%;大日本インキ化学工業社製商品名「H303−35MX」)
注9)ブロック化ポリイソシアネート溶液(固形分75%;住友バイエルウレタン社製商品名「デスモデユールbl-3175」)
【0038】
注10)ポリエチレン系有機潤滑剤(平均粒径5μm;ヘキスト(株)社製商品名「セリダスト9630F」)
注11)焼付型白色自動車用上塗塗料(大日本塗料社製商品名「デリコン#1500上塗」)
注12)エステル系有機潤滑剤(平均粒径7μm;味の素社製商品名「フェイメクスA−12」)
注13)カルナバ系有機潤滑剤(平均粒径7μm;シャムロック社製商品名「S−NAUBA 5021」)
【0039】
【表3】
表2 塗膜評価結果
Figure 0004112271
【0040】
注14)塗膜表面をカッターナイフで1mm碁盤目を100個作成し、その表面をセロハンテープにて剥離試験を行い残存碁盤目の数を測定。
注15)ガードナー社製光沢計にて60度/60度の光沢測定。
注16)スガ試験機株式会社製の写像鮮映性測定器HA−NSICでNSIC*を測定。
注17)塗膜外観を目視観察。
注18)−20℃の雰囲気において30度に傾けた塗装した金属製品に2Kgの圧力で砕石を吹き付ける。
【0041】
表2より明らかの通り、本発明の方法である実施例1〜6で得られた塗膜は、優れた塗膜特性を有していた。一方、従来方法である粗面化処理をした比較例1及び2では、粗面化処理の作業性が悪いだけでなく、塗膜の光沢、鮮映性等が悪かった。また、粗面化処理及び下塗塗料を塗装しない比較例3では、リコート性、光沢、鮮映性、耐チッピング性等が悪かった。
【0042】
【発明の効果】
本発明によって、有機潤滑剤を含有する上塗塗膜を施したプレコート金属板を成形加工した後、前記上塗塗膜表面を粗面化処理する工程を省略しても、密着性のよい塗膜の形成が可能なので、作業性のよい金属製品の塗装方法を提供することが可能である。

Claims (2)

  1. アマイド系又はカルナバ系から選ばれる有機潤滑剤を含有する上塗塗膜を施したプレコート金属板を成形加工した後、前記上塗塗膜表面を粗面化処理することなく、該表面に、バインダー樹脂として、塩素化ポリプロピレン及び/又は非晶性ポリプロピレンを含有する下塗塗料を塗装し、次いで、着色塗料を塗装することを特徴とする、金属製品の塗装方法。
  2. 前記下塗塗料が、バインダー樹脂中、塩素化ポリプロピレン及び/又は非晶性ポリプロピレンを20質量%以上含有することを特徴とする、請求項1に記載の金属製品の塗装方法。
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