JP4111159B2 - 液晶装置の製造方法、液晶装置、電子機器 - Google Patents
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Description
これに対して、前記配向膜に無機配向膜を用い、この無機配向膜の形状効果によって液晶を配向させる技術が提案されている。例えば特許文献1では、斜方蒸着法により基板に対して斜めに配列した柱状構造物を形成する方法が開示されている。このような無機配向膜は、ポリイミド等の有機配向膜に比べて耐光性や耐溶剤性に優れており、液晶装置の信頼性を向上させることが可能である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、配向能力が高く、配向安定性及び信頼性に優れた配向膜を容易に形成することのできる液晶装置の製造方法を提供することを目的とする。
本方法によれば、液晶が微細孔の内周面に沿って確実に配向されるため、高い配向能力を実現することができる。また、この配向膜は無機材料からなるため、ポリイミド等の有機配向膜に比べて耐光性や耐溶剤性に優れており、又、微細孔で液晶配向を実現している(即ち、形状配向膜の一種である)ので、安定した配向が得られる。さらに、陽極酸化法を用いることで製造装置を小型化でき、斜方蒸着のように影になる部分がないので配向ムラが生じることもない。また、陽極酸化法を用いた場合には、前記微細孔のピッチ,サイズ,形状,深さ等を陽極酸化の条件によって調節することができるため、最適化によって安定な配向状態を容易に実現することが可能である。
また、本方法では陽極酸化を磁界中で行なっているので、この磁界の制御によって微細孔の延在方向を制御することが可能である。つまり、陽極酸化は、電解液中の酸素イオンを電気的な作用によって金属膜の表面に引き寄せて金属表面を酸化するものであるため、陽極酸化を磁界中で行なった場合には、このイオンの動きに異方性が生じ、酸化膜の成長方向が指向性を持つようになる。このような酸化膜の成長方向の異方性は磁界の強さによって変化するため、この磁界の強さを調節することによって微細孔の傾斜量(即ち、液晶のチルト角)を制御することが可能である。
また本発明の液晶装置では、前記一対の基板の他方の基板の表面に有機配向膜を備えたものとすることができる。このように他方の基板の配向膜を配向能力に優れる有機配向膜とすることで、液晶充填後の初期の配向状態を安定させることができる。
[液晶装置]
図1は本実施形態の液晶装置の概略構成を示す模式的断面図である。図1に示す液晶装置1は、対向する一対の基板10,20の間に液晶層30を挟持した構成を有する。下基板10の内面側(液晶層側)には下電極11と配向膜12とが順次形成されており、上基板20の内面側には上電極21と配向膜22とが順次形成されている。この液晶装置1は、アクティブマトリクス型若しくはパッシブ型のいずれの構造をとってもよい。アクティブマトリクス型の構造を採る場合には、画素スイッチング素子として、TFT(Thin Film Transistor;三端子素子)又はMIM構造を有するTFD(Thin Film Diode;二端子素子)のいずれを用いることもできる。また、この液晶装置1は透過型若しくは反射型のいずれの構造であってもよい、さらに、これらの基板には必要に応じてカラーフィルタを設けることができる。
次に、図2,図3を参照しながら、本発明の液晶装置の製造方法の一例について説明する。図2は基板に配向膜を形成する工程の一例を示す模式図、図3は陽極酸化膜の構造を示す模式図である。
ところで、このような微細孔は通常、基板に対して垂直な方向に開いていく。しかし、本実施形態では、このような陽極酸化処理を基板面に平行な磁界中で行なっているため、前記微細孔は基板に対して斜め方向に開孔されることになる。つまり、陽極酸化は、電解液中の酸素イオンを電気的な作用によって金属膜の表面に引き寄せて金属表面を酸化するものであるため、陽極酸化を磁界中で行なった場合には、このイオンの動きに異方性が生じ、酸化膜の成長方向が指向性を持つようになる。例えば、磁界を基板の法線に対して非平行な方向に印加した場合には、酸化膜は、基板の法線方向から磁界の方位角方向側に傾いた方向に成長するようになる。本例では、磁界を基板面に平行な方向に印加しているので、微細孔はその磁界の方向に向けて傾倒した状態で開孔されることになる。
また、本実施形態では、陽極酸化膜を磁界Hによって斜めに成長させているので、各微細孔Pは基板の法線に対して一定の角度θで傾斜している。この傾斜角θは、酸化膜の成長過程における異方性の大きさ、即ち、磁界Hの強さを変えることによって制御することができる。例えば、磁界Hが1T(10kG)以上になると、微細孔Pは基板法線に対して傾斜を生じ、それに応じて液晶Lはチルト配向を示すようになる。本例では、磁界Hを2Tとして微細孔Pの傾斜角θを5°程度としている。
なお、本例では、長時間(例えば1時間)の陽極酸化を行なうことによって、下地のアルミニウムを略ゼロとした。こうすることによって、可視光が透過可能になり、透過型の表示装置に利用できるようになる。
また、本実施形態では陽極酸化の条件を最適化することによって前述のような2次元配列構造を形成したが、規則的な細孔構造を形成する方法はこのようなものに限定されない。例えば、金属膜M1の表面に予め規則的な突起形状を作っておき、これを陽極酸化する方法も考えられる。この場合、酸化膜は前記突起部を核として成長するため、結果として、微細孔が規則的に2次元配列したポーラスな陽極酸化膜が形成されることになる。
次に、本発明の第2の実施の形態を図4を用いて説明する。本実施形態において、前記第1の実施の形態と同様の部材又は部位については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施形態において前記第1の実施形態と異なる点は、電極と配向膜との間に前記電極を保護するための保護膜を配置した点のみである。すなわち、前記第1の実施形態では、ITO等の電極11,21の表面に直接金属膜M1を形成したが、本実施形態では、金属膜M1を形成する前に予め電極11,21の表面に電解液E(本例では0.5Mのシュウ酸)に対して耐食性を有する保護膜13,23を形成している。このように保護膜13,23を形成してから陽極酸化を行なうようにすることで、下地の電極11,21が電解液Eによって腐食されるのを防止することができる。なお、保護膜13,23はSiO2等の無機絶縁膜によって構成されている。このため、仮に陽極酸化工程において金属膜M1の一部が酸化されずに残ったとしても、これによって電極間に短絡が生じることはない。
なお、本例では磁界等の条件を調節することにより、液晶Lのチルト角を概ね5°(即ち、非選択状態において液晶Lは基板に対して平行配向から概ね5°傾斜したチルト配向をする)とし、液晶Lに誘電異方性が正のネマチック液晶を用いている。
このように本実施形態によれば、液晶装置2の配向安定性や信頼性を更に高めることができ、液晶装置2を製造する際の歩留まりを高めることも可能である。
次に、前述の液晶装置を備えた電子機器について説明する。ここでは、一例として、前記液晶装置を光変調手段として備えた透過型の投射型表示装置について説明する。
図5は、本例の投射型表示装置の一例である3板式のカラー液晶プロジェクタの概略構成を示す図である。この図において、510は光源、513、514はダイクロイックミラー、515、516、517は反射ミラー、518は入射レンズ、519はリレーレンズ、520は出射レンズ、522、523、524は透過型液晶ライトバルブ、525はクロスダイクロイックプリズム、526は投射レンズを示す。
なお、本例では赤色光用,緑色光用,青色光用の各液晶ライトバルブに前記実施形態の液晶装置を用いたが、係る液晶装置は必ずしも全ての液晶ライトバルブに適用される必要はなく、少なくともいずれかの液晶ライトバルブに適用すれば、耐久性の向上を図ることができる。この場合、特に光のエネルギーが高い青色光用の液晶ライトバルブに適用するのが効果的である。
次に、本発明の第3の実施の形態を図6を用いて説明する。本実施形態において、前記第1の実施の形態と同様の部材又は部位については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本実施形態において前記第1の実施形態と異なる点は、下基板10側の電極を高反射率の金属反射電極14とし、上基板20側の配向膜をポリイミド等の有機配向膜24とした点のみである。すなわち、前記第1の実施形態では、電極11,21の表面に、これとは別の金属膜M1を形成し、この金属膜M1を全て陽極酸化することによって電極11,21の表面にポーラスな無機配向膜12,22を形成した。これに対して本実施形態の液晶装置3では、基板10に電極11を設けずに、基板表面に直接陽極としての金属膜M1を成膜する。そして、陽極酸化膜の形成工程において、該金属膜M1の表面のみを陽極酸化し、それ以外の前記金属膜M1を液晶Lに電圧を印加するための電極14として残している。こうすることで、別途、液晶配向用の電極を形成する必要がなくなり、工程を簡単にすることができる。
なお、本例では磁界等の条件を調節することにより、液晶Lのチルト角を概ね5°(即ち、非選択状態において液晶Lは基板に対して平行配向から概ね5°傾斜したチルト配向をする)とし、有機配向膜24に垂直配向性のポリイミド膜を用いている。そして、液晶Lに誘電異方性が正のネマチック液晶を用いて、これを上下基板間でハイブリッド配向させている。
このように本実施形態によれば、液晶装置3の配向安定性や信頼性を更に高めることができる。
次に、前述の液晶装置を備えた電子機器について説明する。ここでは、一例として、前記液晶装置を光変調手段として備えた反射型の投射型表示装置について説明する。図7は、本例の投射型表示装置の一例である3板式のカラー液晶プロジェクタの概略構成を示す図である。
これらの液晶パネルの画素から反射された色光のうち、S偏光成分はS偏光を反射する偏光ビームスプリッタ740を通過せず、P偏光成分は通過する。この偏光ビームスプリッタ740を透過した光により画像が形成される。
なお、本例では赤色光用,緑色光用,青色光用の各液晶ライトバルブに前記実施形態の液晶装置を用いたが、係る液晶装置は必ずしも全ての液晶ライトバルブに適用される必要はなく、少なくともいずれかの液晶ライトバルブに適用すれば、耐久性の向上を図ることができる。この場合、特に光のエネルギーが高い青色光用の液晶ライトバルブに適用するのが効果的である。
Claims (11)
- 対向する一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶装置の製造方法であって、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板の表面に無機配向膜を形成する工程を備え、
前記無機配向膜の形成工程が、前記一方の基板の表面に金属膜を形成する工程と、前記金属膜を電解液を用いて磁界中で陽極酸化することにより、前記一方の基板の表面に、前記液晶を配向させるための複数の微細孔を有する陽極酸化膜を形成する工程とを含み、
前記陽極酸化膜の形成工程が、前記磁界を前記一方の基板に対して平行又は斜めに印加し、前記複数の微細孔を前記一方の基板に対して傾斜した状態で配列形成する工程であることを特徴とする、液晶装置の製造方法。 - 前記金属膜がアルミニウムからなることを特徴とする、請求項1記載の液晶装置の製造方法。
- 前記電解液が酸性の電解液からなることを特徴とする、請求項1又は2記載の液晶装置の製造方法。
- 前記陽極酸化膜の形成工程が、前記金属膜の表面のみを陽極酸化し、それ以外の前記金属膜を前記液晶に電圧を印加するための電極として残す工程であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法。
- 前記一方の基板の表面に前記液晶に電圧を印加するための電極を備え、
前記無機配向膜の形成工程が、前記電極と前記金属膜との間に前記電極の表面を保護するための保護膜を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法。 - 前記一対の基板の他方の基板の表面に前記無機配向膜を形成する工程を備えたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法。
- 前記一対の基板の他方の基板の表面に有機配向膜を形成する工程を備えたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶装置の製造方法。
- 対向する一対の基板間に液晶を挟持してなる液晶装置であって、
前記一対の基板の少なくとも一方の基板の表面に、前記液晶を配向させるための複数の微細孔を有する無機配向膜を備え、
前記無機配向膜は、円柱状のアルミナ層が細密充填した構造からなり、各アルミナ層の中心に前記微細孔が開孔しており、前記微細孔が前記一方の基板の法線に対して斜めに傾斜して形成されていることを特徴とする、液晶装置。 - 前記一対の基板の双方の基板の表面に前記無機配向膜を備えたことを特徴とする、請求項8記載の液晶装置。
- 前記一対の基板の他方の基板の表面に有機配向膜を備えたことを特徴とする、請求項8記載の液晶装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法を用いて製造された液晶装置を備えたことを特徴とする、電子機器。
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