JP4110911B2 - 自動車のセンタピラー補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車自動車のセンタピラー補強構造に係り、特にセンタピラーの車室内側方向への移動量を抑制するためのセンタピラー補強構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、センタピラー補強構造においては、センタピラーにおける下側のドアヒンジリテーナが取付けられた下側ドアヒンジ取付部の直下とロッカの上面との間の範囲を脆弱部とし、この脆弱部の上端部での車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値を、センタピラーの上下方向中央部における湾曲部での車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値より小さくした構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−310442号公報(段落[0020])
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなセンタピラー補強構造においては、車高が高く、重量の重い車両がセンタピラーの上下方向中央部に衝突した場合に、センタピラーの上下方向中央部の負担が増加し、センタピラーの上下方向中央部が部分的に折れ曲がることで、センタピラーの車室内側方向への変形量が大きくなる。この点については、センタピラーを補強部材で更に補強することで防止しているが、補強部材によって車体重量が増加する欠点を有している。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車体重量を増加すること無く、センタピラーの上下方向中央部の車室内側方向への変形量を抑制できるセンタピラー補強構造を提供することが目的である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、センタピラーの下側ドアヒンジ取付部直下とロッカ上面との間の範囲が、センタピラーに側方から作用する荷重に対して強度的に他の部位に比べて弱い脆弱部とされ、この脆弱部の上端部での車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値をセンタピラーの上下方向中央部における湾曲部の車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値より小さくした自動車のセンタピラー補強構造であって、
センタピラーの上部におけるシートベルトアジャスタレールの上下方向中央部となる位置に形成され、前記シートベルトアジャスタレールを除いた前記センタピラーの車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントが不連続となる全断面塑性モーメント段差部を有し、
前記全断面塑性モーメント段差部に対して上方側の全断面塑性モーメントの値が、ルーフサイドレールとの接合部における全断面塑性モーメントの値と、上下方向中央部における全断面塑性モーメントの値とを結ぶ全断面塑性モーメント直線に対して、低い値に設定されており、前記全断面塑性モーメント段差部に対して下方側の全断面塑性モーメントの値が、前記全断面塑性モーメント直線に対して、高い値に設定されていることを特徴とする。
【0007】
従って、側面衝突時に、センタピラーの上下方向中央部に車室内側へ向けて荷重が作用すると、センタピラーは車室内側へ折れ曲がろうとする。この時、センタピラーの下側ドアヒンジ取付部直下とロッカ上面との間の範囲が、センタピラーに側方から作用する荷重に対して強度的に他の部位に比べて弱い脆弱部とされており、且つ、センタピラーの上部におけるシートベルトアジャスタレールの上下方向中央部となる位置には、センタピラーの車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントが不連続となる全断面塑性モーメント段差部が形成されている。また、全断面塑性モーメント段差部に対して上方側の全断面塑性モーメントの値が、ルーフサイドレールとの接合部における全断面塑性モーメントの値と、上下方向中央部における全断面塑性モーメントの値とを結ぶ全断面塑性モーメント直線に対して、低い値に設定されており、全断面塑性モーメント段差部に対して下方側の全断面塑性モーメントの値が、全断面塑性モーメント直線に対して、高い値に設定されている。
【0008】
このため、センタピラーは、上部の全断面塑性モーメント段差部と下部の脆弱部とにおいて折れ曲がり、その上下方向中央部における湾曲部は、部分的に折れ曲がることなく湾曲した形状を保ったまま車室内側へ変形する。この結果、車体重量を増加すること無く、センタピラーの上下方向中央部の車室内側方向への変形量を抑制できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係る自動車のセンタピラー補強構造の第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0010】
なお、図中矢印FRは車体前方方向を、矢印INは車幅内側方向を、矢印UPは車体上方方向を示す。
【0011】
図2に示される如く、本実施形態の車体の側面部は、車体アウタパネル10で構成されており、この車体アウタパネル10の上部は、車体前後方向に沿って延びるルーフサイドレールアウタ12とさている。また、車体アウタパネル10の車体前後方向中央部には、ルーフサイドレールアウタ12からロッカ15(図1参照)に延びるセンタピラーアウタ16が形成されている。
【0012】
図3に示される如く、センタピラー20はセンタピラーアウタ16とセンタピラーインナ22とで閉断面構造とされており、この閉断面構造内には、センタピラーアウタリインフォースメント24が配設されている。
【0013】
図1に示される如く、センタピラー20の下側ドアヒンジ取付部20Aには、下側ドアヒンジ60が配設されている。
【0014】
図2に示される如く、センタピラーアウタリインフォースメント24は、センタピラーアウタリインフォースメント24の下部を構成するセンタピラーアウタリインフォースメントロア32と、センタピラーアウタリインフォースメント24の中央部及び上部を構成するセンタピラーアウタリインフォースメントアッパ34とで構成されている。なお、センタピラーアウタリインフォースメントロア32の板厚はセンタピラーアウタリインフォースメントアッパ34の板厚より薄くなっている。
【0015】
図1に示される如く、センタピラー20の上下方向中央部における湾曲部20Bと対向する部位には、上下方向に延びる第2センタピラーリインフォースメント26が配設されており、湾曲部20Bの全断面塑性モーメントの値を上げている。
【0016】
センタピラー20の上部には、第2センタピラーリインフォースメント26の上端部26Aと対向する部位を跨いで上下方向に延びるシートベルトアジャスターレール36が配置されている。
【0017】
図2に示される如く、シートベルトアジャスターレール36の上端部36Aは、取付ブラケット38を介してセンタピラーアウタ16の上端部近傍16Aに固定されており、シートベルトアジャスターレール36の下端部36Bは、取付ブラケット40を介してセンタピラーアウタ16の中央部の上方16Bに固定されている。
【0018】
なお、シートベルトアジャスターレール36には、ショルダーアンカ42が上下方向へ移動可能に取付けられており、ショルダーアンカ42には、センタピラー20の下部に配設されたリトラクタ44から延びるシートベルト46が挿通されている。
【0019】
図3に示される如く、第2センタピラーリインフォースメント26は、開口部を車幅方向内側へ向けた断面略コ字状とされた板材で構成されており、センタピラーアウタリインフォースメント24の車室内側面に接合されている。また、取付ブラケット40は、センタピラーインナ22に接合されており、シートベルトアジャスターレール36の下部36Bは、ボルト50とナット52によって、取付ブラケット40とセンタピラーインナ22との接合部54に固定されている。
【0020】
なお、図示を省略したが、シートベルトアジャスターレール36の下部36Bと同様に、シートベルトアジャスターレール36の上部36Aもボルトとナットによって、取付ブラケット38とセンタピラーインナ22との接合部に固定されている。
【0021】
図1に示される如く、センタピラー20の下側ドアヒンジ取付部20Aの直下とロッカ15の上面15Aとの間の範囲Wは、車幅方向外側に凹んだ脆弱部62とされている。
【0022】
従って、本実施形態のセンタピラー20は、脆弱部62の上端部62Aでの車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値Bが、第2センタピラーリインフォースメント26が配設されたセンタピラー20の湾曲部20Bの中央部での車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値Aより小さくなっている。
【0023】
更に、本実施形態では、センタピラー20の上部におけるシートベルトアジャスタレール36の上下方向中央部36Cとなる位置に、第2センタピラーリインフォースメント26の上端部26Aが対向しているため、この部位が全断面塑性モーメント段差部70となっている。
【0024】
即ち、センタピラー20の車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントMは、全断面塑性モーメント段差部70に対して上方側の全断面塑性モーメントの値M1が、センタピラー20とルーフサイドレール72との接合部P1における全断面塑性モーメントの値M3と、センタピラー20の上下方向中央部P2における全断面塑性モーメントの値M4とを結ぶ全断面塑性モーメント直線Lに対して、所定量S低い値に設定されている。例えば、全断面塑性モーメント段差部70における全断面塑性モーメント直線L上の値M5に対して、15%〜25%程度低い値M6=0.75M〜0.85Mに設定されている。
【0025】
また、全断面塑性モーメント段差部70に対して下方側の全断面塑性モーメントの値M2は、全断面塑性モーメント直線Lに対して、高い値に設定されている。
【0026】
この結果、全断面塑性モーメント段差部70において、シートベルトアジャスタレール36を除いたセンタピラー20の車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントMが不連続となっている。
【0027】
なお、全塑性モーメントを算出する場合用いられる降伏応力の値は、JIS規格G3113、G3134、G3135等の下限値とする。
【0028】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0029】
本実施形態の自動車のセンタピラー補強構造によれば、側面衝突時に、センタピラー20の上下方向中央部に車室内側へ向けて荷重が作用すると、センタピラー20は車室内側へ折れ曲がろうとする。この時、図1に示される如く、センタピラー20の下側ドアヒンジ取付部20A直下とロッカ15の上面15Aとの間の範囲Wが、センタピラー20の上下方向中央部に側方(図1の矢印F1方向)から作用する荷重に対して強度的に他の部位に比べて弱い脆弱部62となっており、且つ、センタピラー20の上部におけるシートベルトアジャスタレール36の上下方向中央部となる位置には、センタピラー20の車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントMが不連続となる全断面塑性モーメント段差部70が形成されている。また、全断面塑性モーメント段差部70に対して上方側の全断面塑性モーメントの値M1が、全断面塑性モーメント直線Lに対して、低い値に設定されており、全断面塑性モーメント段差部70に対して下方側の全断面塑性モーメントの値M2が、全断面塑性モーメント直線Lに対して、高い値に設定されている。
【0030】
この結果、センタピラー20は脆弱部62の上端部62Aと全断面塑性モーメント段差部70とにおいて折れ曲がり、その上下方向中央部における湾曲部20Bは、図1に二点鎖線で示される如く、部分的に折れ曲がることなく湾曲した形状を保ったまま車室内側へ変形する。このため、別途補強部材を設ける必要がないので、車体重量を増加すること無く、センタピラー20の上下方向中央部の車室内側方向への変形量を抑制できる。
【0031】
また、本実施形態では、全断面塑性モーメント段差部70を跨いで配設したシートベルトアジャスタレール36が変形する際に、シートベルトアジャスタレール36の車室内側面には、上下方向の張力F2が作用する。この結果、シートベルトアジャスタレール36によって変形荷重を分担することができるため、センタピラー20の上下方向中央部の車室内側方向への変形量を更に抑制できる。
【0032】
次に、本発明の自動車のセンタピラー補強構造の第2実施形態を図4及び図5に従って説明する。
【0033】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図4に示される如く、本実施形態では、第2センタピラーリインフォースメント26が断面円形のパイプ材で構成されている。
【0035】
図5に示される如く、第2センタピラーリインフォースメント26は、センタピラーアウタリインフォースメント24の車室内側面に接合されている。
【0036】
次に本実施形態の作用を説明する。
【0037】
本実施形態の自動車のセンタピラー補強構造によれば、側面衝突時に、センタピラー20の上下方向中央部に車室内側へ向けて荷重が作用すると、第1実施形態と同様に、センタピラー20は脆弱部62の上端部62Aと全断面塑性モーメント段差部70とにおいて折れ曲がり、その上下方向中央部における湾曲部20Bは、図1に二点鎖線で示される如く、部分的に折れ曲がることなく湾曲した形状を保ったまま車室内側へ変形する。この結果、車体重量を増加すること無く、センタピラー20の上下方向中央部の車室内側方向への変形量を抑制できる。
【0038】
また、本実施形態では、全断面塑性モーメント段差部70を跨いで配設したシートベルトアジャスタレール36が変形する際に、シートベルトアジャスタレール36の車室内側面には、上下方向の張力F2が作用する。この結果、シートベルトアジャスタレール36によって変形荷重を分担することができるため、センタピラー20の上下方向中央部の車室内側方向への変形量を更に抑制できる。
【0039】
以上に於いては、本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば、上記各実施形態では、図2に示される如く、センタピラーリインフォースメント24を上下2分割したが、これに代えて、センタピラーリインフォースメント24を2分割しない構成としても良い。
【0040】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明は、センタピラーの下側ドアヒンジ取付部直下とロッカ上面との間の範囲が、センタピラーに側方から作用する荷重に対して強度的に他の部位に比べて弱い脆弱部とされ、この脆弱部の上端部での車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値をセンタピラーの上下方向中央部における湾曲部の車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値より小さくした自動車のセンタピラー補強構造であって、センタピラーの上部におけるシートベルトアジャスタレールの上下方向中央部となる位置に形成され、シートベルトアジャスタレールを除いたセンタピラーの車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントが不連続となる全断面塑性モーメント段差部を有し、全断面塑性モーメント段差部に対して上方側の全断面塑性モーメントの値が、ルーフサイドレールとの接合部における全断面塑性モーメントの値と、上下方向中央部における全断面塑性モーメントの値とを結ぶ全断面塑性モーメント直線に対して、低い値に設定されており、全断面塑性モーメント段差部に対して下方側の全断面塑性モーメントの値が、全断面塑性モーメント直線に対して、高い値に設定されているため、車体重量を増加すること無く、センタピラーの上下方向中央部の車室内側方向への変形量を抑制できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の自動車のセンタピラー補強構造におけるセンタピラー上の位置と車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントとの関係を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態の自動車のセンタピラー補強構造を示す車体斜め前方内側から見た分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態の自動車のセンタピラー補強構造を示す図2の3−3線に沿った部位の拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の自動車のセンタピラー補強構造を示す車体斜め前方内側から見た分解斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態の自動車のセンタピラー補強構造を示す図4の5−5線に沿った部位の拡大断面図である。
【符号の説明】
10 車体アウタパネル
15 ロッカ
16 センタピラーアウタ
20 センタピラー
20A センタピラーの下側ドアヒンジ取付部
20B センタピラーの湾曲部
24 センタピラーリインフォースメント
26 第2センタピラーリインフォースメント
60 下側のドアヒンジリテーナ
62 脆弱部
70 全断面塑性モーメント段差部
Claims (1)
- センタピラーの下側ドアヒンジ取付部直下とロッカ上面との間の範囲が、センタピラーに側方から作用する荷重に対して強度的に他の部位に比べて弱い脆弱部とされ、この脆弱部の上端部での車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値をセンタピラーの上下方向中央部における湾曲部の車体前後方向を軸とした全断面塑性モーメントの値より小さくした自動車のセンタピラー補強構造であって、
センタピラーの上部におけるシートベルトアジャスタレールの上下方向中央部となる位置に形成され、前記シートベルトアジャスタレールを除いた前記センタピラーの車両前後方向を軸とした全断面塑性モーメントが不連続となる全断面塑性モーメント段差部を有し、
前記全断面塑性モーメント段差部に対して上方側の全断面塑性モーメントの値が、ルーフサイドレールとの接合部における全断面塑性モーメントの値と、上下方向中央部における全断面塑性モーメントの値とを結ぶ全断面塑性モーメント直線に対して、低い値に設定されており、前記全断面塑性モーメント段差部に対して下方側の全断面塑性モーメントの値が、前記全断面塑性モーメント直線に対して、高い値に設定されていることを特徴とする自動車のセンタピラー補強構造。
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