JP4110615B2 - 透明エアゾール容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレンナフタレート系ポリエステルから形成された透明エアゾール容器に関するもので、より詳細には、エチレンテレフタレート系ポリエステルの二軸延伸ブロー成形で形成され、耐熱圧性、耐衝撃性及び透明性の組合わせに優れた透明エアゾール容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステルから成る延伸ブローボトルは、透明性、耐衝撃性、フレーバー保持性等に優れており、各種飲料、調味料等の包装容器として広く使用されている。また、ポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ガスバリアー性に優れ、耐熱性、透明性、強度にも優れた素材として、包装の分野においても着目されている。
【0003】
ポリエチレン−2,6−ナフタレートから、中空容器を製造することについても既に提案があり、特開昭52−45466号公報には、極限粘度0.4以上の芳香族ポリエステルを素材とする中空容器において、該素材はポリエチレン−2,6−ナフタレートであって、しかも該容器の胴部及び/または底部は、式
N=n・λ/d
ただし、式中
n:偏光顕微鏡で観察される複屈折による干渉縞の数、
λ:nの測定に使用された光源の波長、
d:測定に供せられた試料の厚み、
で定義されるN値が0.01以上であることを特徴とする中空容器が記載されている。
【0004】
また、特開平2−233341号公報には、ポリエチレンナフタレート樹脂からなり、ボトル胴部の中央部周上の複数箇所におけるX線干渉強度分布曲線において、少なくとも80%以上の確率でβ角度0゜±20’及びβ角度90゜±20’の両方の範囲において極大値が認めれることを特徴とするポリエチレンナフタレート樹脂製延伸ボトルが記載されている。
【0005】
更に、特開平4−142275号公報には、容器本体と噴射装置を取り付けた栓体とからなるエアゾール容器において、少なくとも容器本体がポリエチレンナフタレート樹脂からなることを特徴とするエアゾール容器が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
熱可塑性プラスチックから形成されたエアゾール容器は、軽量であり、また内容物の充填量を確認できるなどの利点を有するが、未だ耐熱性、耐圧性に問題があり、特に高温時での耐圧性が不十分であるという問題がある。例えば、夏期において、駐車している自動車の室内では温度が80℃に達する場合があり、このような高温下では、殆どのプラスチックエアゾール容器は変形して、使用に耐えないことが確認されている。
【0007】
ポリエチレンナフタレートから成る容器は、確かに耐熱性、耐圧性には優れているが、未だ耐熱圧性と透明性との組み合わせに関して満足しうるものは知られていない。即ち、ポリエチレンナフタレートは、ボトルへの成形性に難点があり、二軸延伸ブロー成形に際して、球晶化を生じて器壁が不透明となったり、或いはボトルの器壁が蛍光を帯びてやや不透明になる傾向がある。勿論、ポリエチレンナフタレートから透明性に優れたボトルを製造することも可能であるが、このような透明性に優れたものでは、耐熱圧性あるいは落下強度が一般に不十分であり、エアゾール容器として用いた場合には、80℃のような高温で容易に変形したり、落下してわれたりする傾向がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、耐熱圧性と透明性との組み合わせに優れたポリエチレンナフタレート系のエアゾール容器を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、90モル%以上のエチレンナフタレート単位を含有するポリエステルの二軸延伸ブロー成形で形成され、一体に形成された首部、肩部、胴部、及び閉塞底部を有し、胴部の肉厚が0.55乃至1.40mmであり、ヘーズ値が5%以下であり、前記二軸延伸ブロー成形が、面積延伸倍率が2.0乃至7.5倍で、且つ延伸温度(Y、℃)及び胴部の厚み(X、mm)が下記式(1)
【数3】
を満足するように行われることを特徴とする透明エアゾール容器が提供される。
本発明の透明エアゾール容器では、容器全体としての耐熱圧性を一層向上させるために、エアゾール容器の首部は肩部に対して環状厚肉接続部を介して接続されていることが好ましい。
本発明によればまた、90モル%以上のエチレンナフタレート単位を含有するポリエステルから成り、首部、肩部、胴部、及び閉塞底部が一体的に形成されて成る透明エアゾール容器の二軸延伸ブロー成形方法であって、面積延伸倍率が2.0乃至7.5倍で、且つ延伸温度(Y、℃)及び胴部の厚み(X、mm)が上記式(1)を満足すると共に、容器胴部の肉厚を0.55乃至1.40mmとなるように行われることを特徴とする透明エアゾール容器の二軸延伸ブロー成形方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
[作用]
本発明では、エアゾール容器を、90モル%以上のエチレンナフタレート単位を含有するポリエステルの二軸延伸ブロー成形で形成する。上記量比でエチレンナフタレート単位を含むポリエステルは、一般に融点(Tm)が250乃至270℃及びガラス転移点(Tg)が110乃至120℃の範囲にあって、耐熱性に優れていることが、上記材料を使用する理由の一つである。更に、上記エチレンナフタレート系ポリエステルは引張弾性率が23000kg/cm2 以上と他のポリエステルに比して大きく、耐圧性に優れていること、及び気体の透過性も他のポリエステルに比して小さく、プロペラントの保存性に優れていることも、上記材料を使用する第二の理由である。
【0011】
エチレンナフタレート系ポリエステルも、他のポリエステルと同様に二軸延伸により剛性や耐衝撃性の向上がもたらされ、これが従来技術においてもボトル等の成形に二軸延伸ブロー成形を用いている理由であるが、エチレンナフタレート系ポリエステルでは、延伸成形の際、球晶化により白化を生じるという特有の問題がある。即ち、本発明者らの研究によると、エチレンナフタレート系ポリエステルでは、延伸そのものが引き金となって、ポリエステル中に結晶核が生成し、この核により球晶化が進行して、透明性の低下を生じるものであり、この傾向は延伸倍率が高くなればなるほど顕著である。
【0012】
本発明のエアゾール容器は、エチレンナフタレート系ポリエステルの二軸延伸ブロー成形で形成されるが、胴部の厚みを0.55乃至1.40mmの範囲に規制し、且つヘーズ値を5%以下に抑制したことが顕著な特徴である。
【0013】
エチレンナフタレート系ポリエステル容器における胴部の厚みは、透明性と耐熱圧性との両方に関係し、一般に、厚みが厚くなるほど耐熱圧性が向上し、逆に厚みが薄くなるほど透明性が向上し、両方の特性は両立しがたい関係にある。
従来のエチレンナフタレート系ポリエステル容器の内、未延伸の射出成形容器では厚みが1.5乃至3mmの範囲にあり(例えば、前述した特開平4−142275号公報参照)、一方二軸延伸ブロー成形容器では厚みが0.1乃至0.5mmの範囲にある(例えば、前述した特開平2−233341号公報参照)が、前者の容器では透明性が劣り、後者の容器では耐熱圧性に劣るという問題がある。
【0014】
本発明の容器では、エチレンナフタレート系ポリエステルを二軸延伸ブロー成形するが、この延伸による容器胴部の薄肉化の程度を0.55乃至1.40mmの範囲にとどめることにより、ヘーズ値を5%以内に抑制して透明性を向上させ、且つ耐熱圧性をも向上させることに成功したものである。更に、この容器では、器壁の延伸の程度が低く抑制されているとともに、延伸温度を適性に選択するため、球晶化による白化の程度や蛍光の発生の程度が著しく低いという利点もある。
【0015】
本発明の透明エアゾール容器では、二軸延伸ブロー成形が、周方向延伸倍率が2.0乃至4.0倍、好適には面積延伸倍率が2.2乃至7.2倍で、且つ延伸温度(Y、℃)及び胴部の厚み(X、mm)が下記実験式(1)
(X−1)2 (Y−150)2
────── + ────── <1 ‥(1)
0.2025 100
を満足するように行われていることが、容器の耐熱圧性、透明性、更には耐衝撃性に関して好ましい。
【0016】
添付図面の図1は、後述する実施例及び比較例について、形成される胴部の厚み(X)を横軸、延伸温度(Y)を横軸として、これらの値をプロットした結果を示している。図1中の曲線Aは、下記式(1a)
(X−1)2 (Y−150)2
────── + ────── =1 ‥(1a)
0.2025 100
に対応する楕円曲線である。
この楕円曲線よりも内側の領域では、透明性及び耐熱圧性の両方に関して満足しうるエアゾール容器が形成されているのに対して、外側の領域では、透明性及び耐熱圧性の何れかに関して不満足な容器しか得られないことを示している。
【0017】
前記不等式(1)は、実験の結果から導かれたものであるが、式(1)よりも上方の領域は高温での延伸領域であって、この領域では高延伸による分子配向が有効に行われる反面、球晶化によるヘーズ値の低下も生じるので好ましくなく、一方、式(1)よりも下方の領域は低温での延伸領域であって、この領域では延伸成形そのものが困難となったり、或いは成形が可能であっても容器の形状が不良になったりするので好ましくない。
また、式(1)よりも左方の領域は薄肉化延伸領域であって、この領域では耐熱圧性の低下を生じ、一方、式(1)よりも右方の領域は厚肉化延伸領域であって、この領域では透明性の低下を生じるので、何れも好ましくない。
【0018】
エアゾール容器において、熱圧変形による影響を最も大きく受ける部分は、首部と肩部との接続部であり、この部分に上に持ち上がるような変形を生じると、首部におけるバルブヘッドのカシメが外れて、内容物の漏洩を生じるというトラブルを発生しやすい。
本発明によれば、これを防止するため、容器の首部を肩部に対して環状厚肉接続部を介して接続するようにする。これにより、前記接続部での肩部の持ち上がり変形が防止され、高温時における内容物の漏洩を有効に防止することができる。
【0019】
[エアゾール容器の構造]
本発明のエアゾール容器の一例を示す図2(側断面図)において、この容器1は、エチレンナフタレート系ポリエステルの二軸延伸ブロー成形で形成され、首部(口部)2、円錐台状の肩部3、筒状の胴部4及び閉ざされた底部5から成っている。
この胴部4は、既に述べた厚みとヘーズ値とを有するものでる。
【0020】
首部2と肩部3との接続部には、環状厚肉接続部6が形成され、その上には環状凹部7及び環状厚肉口部8が形成されていて、それ自体公知のバルブヘッド(図示せず)が環状厚肉口部8に被せられ、その外側が環状凹部の型の部分にカシメ等により固定されるようになっている。
また、底部5には、自立安定性を与えるためのそれ自体公知の上向きのドーム構造やペタロイド型谷−足構造が形成されていてもよく、また底部が丸底であって、別個に形成された自立性付与部品が接着等により固定されていてもよい。
【0021】
[エチレンナフタレート系ポリエステル]
本発明の容器は、90モル%以上のエチレンナフタレート単位を含有するポリエステルから形成される。エチレンナフタレート単位としては、エチレン−2,6−ナフタレートが好適であるが、それ以外のエチレンナフタレート単位を含有していても差し支えない。ホモポリエチレン−2,6−ナフタレートが耐熱性の点で好適であるが、エチレン−2,6−ナフタレート単位以外のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
エチレンナフタレート系ポリエステルは、ガラス転移点(Tg)が110乃至120℃、融点(Tm)が250乃至270℃にあることが好適である。
【0022】
2,6−ナフタレンジカルボン酸以外の二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;の1種又は2種以上の組合せが挙げられ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0023】
これらのポリエステルは、単独でも或いはその本質を損なわない範囲で小量のナイロン類、ポリカーボネート、ポリアリレート、或いは変性オレフィン系樹脂等の他の樹脂とのブレンド物の形でも使用し得る。
【0024】
容器の成形に用いるエチレンナフタレート系ポリエステルは、後に述べる方法で求めた固有粘度(IV)が0.5以上、特に0.55乃至0.75の範囲にあるものが、エアゾール容器に要求される諸性能の点で好適である。また、ジエチレングリコール成分(DEG)の含有量が2.5重量%以下、特に2.0乃至0.5重量%のものが好適である。
【0025】
容器形成用のポリエステルには、それ自体公知の任意の配合剤を配合することができ、例えば、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を配合できる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、例えば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ドデシルコハク酸イミド、1−〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、テトラ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)ブタンテトラカルボキシレートなどがあげられる。
ヒンダードアミンを配合すると、エチレンナフタレート系ポリエステルの蛍光発色を抑制する効果があり、エアゾール容器の透明性向上の点で望ましい。ヒンダードアミンは、ポリエステル100重量部当たり1乃至5重量部の量で配合するのが望ましい。同様に、ポリマー鎖に紫外線吸収機能を有した三菱化学(株)製、NOVAPEXRも有効である。また、フタロシアニンブルー、キノフタロンイエロー、群青、モノアゾイエロー、アントラキノン、コバルトブルー等の着色剤も有効である。
【0026】
酸化防止剤としては、分子量400以上の酸化防止剤が好適であり、これに限定されるものではないが、高分子フェノール系酸化防止剤、例えば、
テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン(分子量1177.7)、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(分子量544.8)、
1,3,5−トリメチルー2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(分子量775.2)、
ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル(分子量794.4)、
1,3,5−トリス(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン 2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(分子量783.0)、
トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](分子量586.8)、
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量638.9)
等を用いることができる。中でも特に、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタンが好適である。
分子量400以上の酸化防止剤の他の例として、トコフェロール系酸化防止剤、例えばα−型、β−型、γ−型、δ−型等のトコフェロールを挙げることができる。α−トコフェロールが特に好適である。
これらの酸化防止剤を配合すると、エアゾール容器の成形時或いはその後の経時よるポリエステルの物性低下を抑制できるので、好ましい。酸化防止剤は、前記ポリエステル100重量部当たり0.01乃至1.5重量部の量で用いる。
【0027】
[エアゾール容器及びその製造]
本発明の透明エアゾール容器では、容器胴部の厚みが0.55乃至1.40mm、特に好適には0.6乃至1.30mmであり、容器の目付は一般に0.10乃至0.35g/dl、特に0.13乃至0.30g/dlの範囲が適当である。
また、首部と肩部との間の環状厚肉接続部における厚みは、一般に1.5乃至6.0mm、特に2.0乃至5.0mmの範囲で、しかも接続部近傍の肩部の厚みの1.1乃至2.0倍、特に1.2乃至1.8倍の厚みを有することが、熱圧変形を防止する上で好適である。
同様な見地から、環状厚肉接続部における高さは、一般に1.5乃至5.0mm、特に1.7乃至4.5mmの範囲であることが好ましい。
【0028】
胴部4のASTMD−1003によるヘイズ(Haze)は、5%以下、特に4%以下に抑制されていて、ポリエステルのラメラ化やポリエチレンナフタレートに特有の蛍光化もなく、透明性及び外観特性に優れている。
【0029】
本発明のエアゾール容器は、エチレンナフタレート系ポリエステルから形成されたプリフォームを、前記式(1)が満足される延伸温度で、面積延伸倍率が2.0乃至7.5倍、特に2.2乃至7.2倍となるように、二軸延伸ブロー成形することにより製造される。
【0030】
延伸ブロー成形に使用する有底プリフォームは、それ自体公知の任意の手法、例えば射出成形法、パイプ押出成形法等で製造される。前者の方法では、溶融ポリエステルを射出し、最終容器に対応する口頸部を備えた有底プリフォームを非晶質の状態で製造する。
【0031】
射出成形に際して、前記ポリエステルを冷却された射出型中に溶融射出する。射出機としては、射出プランジャーまたはスクリューを備えたそれ自体公知のものが使用され、ノズル、スプルー、ゲートを通して前記ポリエステルを射出型中に射出する。これにより、ポリエステルは射出型キャビティ内に流入し、固化されて延伸ブロー成形用の非晶質状態のプリフォームとなる。射出型としては、容器の首形状に対応するキャビティを有するものが使用されるが、ワンゲート型或いはマルチゲート型の射出型を用いるのがよい。射出温度は270乃至320℃、圧力は30乃至100kg/cm2 程度が好ましい。
【0032】
プリフォームからの延伸ブロー成形には、一旦過冷却状態のプリフォームを製造し、このプリフォームを延伸温度に加熱して延伸成形を行う方法(コールドパリソン法)や、成形されるプリフォームに与えられた熱、即ち余熱を利用して、予備成形に続いて延伸成形を行う方法(ホットパリソン法)等が採用される。前者の方法が好適である。
【0033】
延伸のための加熱温度は、胴部の厚みの薄肉化の程度にも関連して、前記式(1)を満足する範囲にあることが重要である。この事実は、添付図面の図1及び後述する実施例及び比較例を参照することにより、明らかとなる。
【0034】
ボトル等への二軸延伸ブロー成形に際し、延伸温度にあるプリフォーム乃至パリソンをブロー成形金型内で軸方向に引っ張り延伸すると共に、流体吹き込みにより周方向に膨張延伸する。延伸倍率は、面積延伸倍率(容器外表面積/プリフォーム外表面積基準)を2.0乃至7.5倍、特に2.2乃至7.2倍とすべきであり、比較的低い温度での延伸を可能にするために、周方向の延伸速度を300%/sec以上、特に350乃至600%/secとするのがよい。尚、高圧気体の吹き込みによるブローに先立って、圧力の低い流体によってプリブローを行う場合には、このプリブローによる延伸後のものを基準として、延伸速度を定めるものとする。
【0035】
高速延伸を可能にするために、用いる加圧流体の圧力は可及的に高いことが好ましく、最終容器の容量やプリフォームの厚みによっても相違するが、一般に用いる気体の初期圧力は、20kg/cm2 以上、特に25乃至45kg/cm2 の範囲内にあることが好ましい。プリフォーム内に印加される圧力は成形の途中で一様であっても、また初期に高い圧力が印加されるものであってもよい。加圧用流体としては、未加熱の空気或いは不活性気体でも、或いは加熱された空気或いは不活性気体でも使用し得る。
【0036】
[用途]
本発明のエアゾール容器は、種々の内容物及びプロペラントを充填する軽量且つ小型のエアゾール容器として有用である。
なお、本発明にかかるエアゾール容器に充填することのできる内容物としては、従来公知のものを採用できる。該内容物としては、例えば人体用品、家庭用品、工業用品があり、人体用品には頭髪用品、化粧品、消臭、制汗剤、その他の人体用品があり、家庭用品には殺虫剤、コーティング剤、クリーナ、食品、その他の家庭用品があり、工業用品には自動車用品、その他の工業用品がある。上記頭髪用品としてはヘアセットスプレー、ヘアドレッサーコンデイショナー、ヘアシャンプー、リンス、酸性染毛剤、酸化型2剤タイプ永久染毛剤、カラースプレー、脱色剤、パーマ剤、育毛剤等がある。化粧品としてはシエービングクリーム、アフターシェーブローション、香水、オーデコロン、洗顔料、日焼け止め、ファンデーション、脱毛、脱色剤、浴用剤、歯磨き剤などがある。消臭・制汗剤としては消臭剤、制汗剤、ボデイシャンプー等がある。その他の人体用品としては筋肉消炎剤、皮膚疾患剤、水虫薬、その他の医薬品、害虫忌避剤、冷却剤、清拭剤、口喉剤等がある。殺虫剤としては空間殺虫剤、ゴキブリ殺虫剤、園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、不快害虫剤等がある。コーティング剤としては家庭用塗料、自動車用塗料、アンダーコーティング剤等がある。クリーナとしては家庭用ガラスクリーナ、レンズクリーナ、絨毯クリーナ、浴用クリーナ、床・家具艶だしクリーナ、靴・皮革クリーナ、ワックス艶だし剤等がある。その他の家庭用品としては室内消臭剤、トイレ用消臭剤、防水剤、洗濯糊、除草剤、衣類用防虫剤、防炎剤等がある。自動車用品としては、防曇剤、解氷剤、エンジン始動液、パンク修理液、エンジンクリーナ等がある。その他の工業用品としては潤滑防錆剤、接着剤、金属深傷剤、離型剤等がある。
【0037】
上記内容物の形状としては液状、流動体状、半流動体状、発泡体状、気体状の他、これら形状のものに粉体状や粒状の固体を少し混ぜたもの等、適宜選択して採用することができる。
【0038】
該素材にあっては従来内容物として採用される公知のものを採用でき、例えば上記ヘアスプレーであれば変性アルコール、噴射剤としてのLPG(液化石油ガス)を主成分とし、アクリル樹脂アルカノールアミン液、ポリオキシエチレンオイルエーテル、香料等を添加したものがあり、上記ヘアトリートメントであれば変性アルコール、噴射剤としてのLPGを主成分とし、流動パラフィン、プロピレングリコール、メチルフエニルポリシロキサン、香料を添加したものがある。
【0039】
また、他の内容物としては、アルコール、合成樹脂、噴射剤(LPG(液化石油ガス、DME(ジメチルエーテル)、N2 、CO2 等の単体又はこれらの混合物)、セルロース、アンモニウム、水、香料、染料、界面活性剤、顔料等を適宜選択して追加することができる。
【0040】
【実施例】
次に本発明を次の例で更に説明する。実施例中の評価は次の通り行った。
【0041】
[評価方法]
○固有粘度
重量比1:1のフェノール・1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶媒20mlに容器胴中央部の切片を試料として200mg加え、170℃の温度下、20分間攪拌することで溶解した。その後、30℃恒温槽を用いウベローデ型粘度計にて溶液粘度を測定後、固有粘度に換算した。用いた換算式を以下に示した。
【0042】
○透明性(ヘイズ)
容器胴中央部側面の切り出し切片を試料とし、スガ試験機株式会社製S&M Colour Computer Model / SMl4 を用いてへイズ値を測定した。
容器の透明性については以下のようにして判別した。
透明(ヘイズ5以下) :○
やや白化(ヘイズ6〜9) :△
白化(ヘイズ10以上) :×
【0043】
○耐熱、耐圧試験
・水圧試験
容器に80℃の水を充填した後、水圧付加機に接続する。その状態のまま80℃に設定された恒温水槽中に容器を浸水させ20分間放置する。その後、胴部の径を測定しこれを初期胴径とする。容器内に15kg/cm2 を付加し、20分間放置した後、胴径を再度測定し胴部の膨張率を求めた。変形の見極めとしては、胴部が5%以上膨張すると、目視においても変形が明らかになることから、5%以上膨張すると変形と判別した。
E=[(l−lo)/lo]×100 [膨張率(%)]
ここで、l ;水圧付加後の胴径(mm)
lo;初期胴径(mm)
膨張率5%未満 :○
膨張率5%以上 :×
・実充填試験
容器内に水系内容液とLPG(液化石油ガス)を充填し(25℃、内圧5kg/cm2 )、80℃の高温槽中に3時間放置し、容器形状を目視により確認し、以下のように判別した。
変形がみられない :○
変形 :×
【0044】
○胴部蛍光判定法
視覚により次の様に判別した。
透明 :○
やや蛍光有り:△
蛍光有り :×
【0045】
[実施例1]
帝人(株)製エチレンテレフタレート7モル%−エチレンナフタレート93モル%共重合体TN8770を射出ブロー成形機(日精ASB 50−H)を用い280℃で射出成形して、内径11mm、外径19mm、重量24g、肉厚4.0mmで、首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォームを成形し、プリフォーム温度を150℃にコントロールした後、エアゾール容器成形用金型を用い、縦軸方向1.1倍、周方向2.6倍の二軸延伸ブローを行ない、内径38mm、外径40mm、胴部肉厚1.0mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を持つ自立型エアゾール容器を作成した。固有粘度は0.71であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
帝人(株)製エチレンテレフタレート7モル%−エチレンナフタレート93モル%共重合体TN8770を射出ブロー成形機(日精ASB 50−H)を用い280℃で射出成形して、内径11mm、外径20mm、重量27g、肉厚4.5mmで、首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォームを成形し、プリフォ一ム温度を150℃にコントロールした後、エアゾール容器成形用金型を用い、縦軸方向1.1倍、周方向2.5倍の二軸延伸ブローを行ない、内径37.2mm、外径40mm、胴部肉厚1.4mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を持つ自立型エアゾール容器を作成した。固有粘度は0.71であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
帝人(株)製エチレンテレフタレート7モル%−エチレンナフタレート93モル%共重合体TN8770を射出ブロー成形機(日精ASB 50−H)を用い280℃で射出成形して、内径11mm、外径18mm、重量20g、肉厚3.5mmで、首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォームを成形し、プリフォーム温度を150℃にコントロールした後、エアゾール容器成形用金型を用い、縦軸方向1.1倍、周方向2.8倍の二軸延伸ブローを行ない、内径38.8mm、外径40mm、胴部肉厚0.6mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を持つ自立型エアゾール容器を作成した。固有粘度は0.71であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0048】
[実施例4]
上記実施例で使用した共重合体樹脂に帝人(株)製ポリエチレンテレフタレートTR8580Hを10重量%ブレンドし、実施例1と同様の方法で容器を成形した。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0049】
[実施例5]
帝人(株)製エチレンナフタレートTN8070を射出ブロー成形機(日精ASB 50−H)を用い280℃で射出成形して、内径11mm、外径19mm、重量24g、肉厚4.0mmで、首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォームを成形し、プリフォーム温度を155℃にコントロールした後、エアゾール容器成形用金型を用い、縦軸方向1.1倍、周方向2.6倍の二軸延伸ブローを行ない、内径38mm、外径40mm、胴部肉厚1.0mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を持つ、実施例1と同形状の自立型エアゾール容器を作成した。固有粘度は0.71であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0050】
[実施例6]
帝人(株)製エチレンテレフタレート7モル%−エチレンナフタレート93モル%共重合体TN8770を(株)新潟鉄工所製射出成形機NN75JSにて、内径14mm、外径25mm、重量34g、肉厚5.5mmで首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォームを成形した。そのプリフォームを赤外線ヒーターにて152℃に再加熱し、延伸ロッドで軸方向に延伸しながら、縦軸方向1.5倍、周方向2.7倍の二軸延伸ブローを行ない、内径48.3mm、外径50.0mm、胴部肉厚0.85mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を有した。自立型エアゾール容器を作成した。固有粘度は0.70であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0051】
[実施例7]
帝人(株)製ポリエチレンナフタレートTN8065を用い、実施例6と同様に自立型エアゾール容器を作成した。ただし、プリフォームの再加熱温度は156℃であった。固有粘度は0.65であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験の結果を表1に示す。
【0052】
[実施例8]
胴部の蛍光対策として、上記実施例で使用した樹脂にCiba Specialty Chemicals K.K.製TINUVIN234 紫外線吸収剤を3.2wt%添加した。三菱化学(株)製NOVAPEX u−110紫外線吸収剤を30倍希釈して添加した。
また東洋インキ(株)製 PEM7285BLUE、PEM7284BLUE、PEM2172YELL0Wを40倍に希釈して着色した。
胴部蛍光判定の結果を表2に示す。
【0053】
[比較例1]
実施例1の容器においてプリフォーム温度を170℃にコントロールする以外は、同様の成形を行った。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験結果を表1に示す。
【0054】
[比較例2]
実施例1の容器においてプリフォーム温度を130℃にコントロールする以外は、同様の成形を行った。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3]
帝人(株)製エチレンテレフタレート7モル%−エチレンナフタレート93モル%共重合体TN8770を射出ブロー成形機(日精ASB 50−H)を用い280℃で射出成形して、内径11mm、外径17.8mm、重量19g、肉厚3.4mmで、首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォームを成形し、プリフォーム温度を150℃にコントロールした後、エアゾール容器成形用金型を用い、縦軸方向1.1倍、周方向2.9倍の二軸延伸ブローを行ない、内径39mm、外径40mm、胴部肉厚0.5mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を持つ自立型エアゾール容器を作成した。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験結果を表1に示す。
【0056】
[比較例4]
帝人(株)製エチレンテレフタレート7モル%−エチレンナフタレート93モル%共重合体TN8770を射出ブロー成形機(日精ASB 50−H)を用い280℃で射出成形して、内径11mm、外径20.2mm、重量28g、肉厚4.6mmで、首部にバルブをカシメることが可能な形状を持つプリフォ一ムを成形し、プリフォ一ム温度を150℃にコントロールした後、エアゾール容器成形用金型を用い、縦軸方向1.1倍、周方向2.5倍の二軸延伸ブローを行ない、内径37mm、外径40mm、胴部肉厚1.5mm、首部と肩部との接合部に環状厚肉形状を持つ自立型エアゾール容器を作成した。固有粘度は0.71であった。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験結果を表1に示す。
【0057】
[比較例5]
実施例1においてエアゾール容器成形金型を縦軸方向1.1倍、周方向1.8倍の形状とする以外は同様の条件で、内径27mm、外径30mm、胴部肉厚1.5mmの自立型エアゾール容器を作成した。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験結果を表1に示す。
【0058】
[比較例6]
実施例6においてエアゾール容器成形金型を縦軸方向2.5倍、周方向3.1倍の形状とする以外は同様の条件で、内径44.6mm、外径45mm、胴部肉厚0.4mmの自立型エアゾール容器を作成した。
胴部の透明性、耐熱・耐圧試験結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【発明の効果】
本発明の容器では、エチレンナフタレート系ポリエステルを二軸延伸ブロー成形するが、この延伸による容器胴部の薄肉化の程度を0.55乃至1.40mmの範囲にとどめることにより、ヘーズ値を5%以内に抑制して透明性を向上させ、且つ耐熱圧性をも向上させることができる。更に、この容器では、器壁の延伸の程度が低く抑制されているため、球晶化による白化の程度や蛍光の発生の程度が著しく低いという利点もある。
更に、首部と肩部との接続部に環状厚肉接続部を形成したので、この接続部の変形が防止され、バルブヘッドカシメ部からの漏洩をも有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】後述する実施例及び比較例について、形成される胴部の厚み(X)を横軸、延伸温度(Y)を横軸として、これらの値をプロットした結果を示すグラフである。
【図2】本発明の延伸ブローによるエアゾール容器の一例を示す側面図である。
【記号の説明】
1 エアゾール容器
2 首部(口部)
3 円錐台状の肩部
4 筒状の胴部
5 閉ざされた底部
6 環状厚肉接続部
Claims (3)
- 前記首部は前記肩部に対して環状厚肉接続部を介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載の透明エアゾール容器。
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