JP4110377B2 - ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法に関し、さらに詳述すると、ポリメチレンポリフェニルポリアミンを不活性溶媒中で、いわゆる冷熱2段法(コールド・ホット法)により連続的にホスゲン化させるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、いわゆる粗MDIは、接着剤、エラストマー、繊維等の原料となるジフェニルメタンジイソシアネート、いわゆるピュアMDIの原料として利用されており、さらに、ピュアMDIを採取した後の粗MDIは、一般的にポリメリックMDIと呼ばれ、ポリウレタンフォーム等の原料として利用されている。
【0003】
このような粗MDIは、ホスゲン化反応で生成する塩化水素分を含んでおり、この塩化水素は、最終製品であるピュアMDI、ポリメリックMDIの反応性に悪影響を与える。このため、粗MDIの製造工程では、最終的に180℃以上に加熱し、残存する不活性溶媒とホスゲンとを完全に除去するとともに、塩化水素を除去することが一般的に行われている。
しかしながら、このような加熱による方法を用いた場合、遊離塩化水素の除去は可能であるものの、オーバーホスゲネーションにより生成した酸度成分および加水分解性塩素成分の除去が困難であるため、これらの成分が粗MDI中に残存して最終的なピュアMDIおよびポリメリックMDIの反応性に悪影響を与えるという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するべく、特公昭57−15827号公報では、ホスゲン化反応終了後の反応液に塩化水素を通して脱ガスを行い、酸性および加水分解性塩素含有物質を減少させる方法が提案されている。
しかしながら、この方法で、酸性および加水分解性塩素含有物質を充分に減少させるためには、反応液中で塩化水素を充分に分散させる必要があり、このため、充填塔を設置して塩化水素を向流接触させる必要が生じ、これにより製造コストの上昇を招き、経済的に不利となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、酸度および加水分解性塩素の低いポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを低コストで簡便に製造できるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリアミンを低温下でホスゲンと反応させた後、高温下でホスゲンと反応させて連続的にホスゲン化してポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを製造する、いわゆるコールド・ホット法において、ホスゲン化反応で生じた排ガスを高温下での反応時に系内に吹き込むこと、特に、複数の反応器を用いて高温反応を行う場合には、最終反応器に上記排ガスを吹き込むことで、酸度、加水分解性塩素の低いポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを低コストで簡便に製造し得ることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.ポリメチレンポリフェニルポリアミンを不活性溶媒存在下、50〜90℃の低温下でホスゲンと反応させ、続いて90〜130℃の高温下でホスゲンと反応させて連続的にホスゲン化反応を行ってポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを得るポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法であって、前記高温下のホスゲン化反応を複数個の反応器で行うとともに、これらの反応器のうち最終反応器に前記ホスゲン化反応で生じた排ガスを吹き込むことを特徴とするポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法、
2.前記排ガスの吹き込みを加圧下で行うことを特徴とする1のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法、
3.前記排ガスが、−10℃以下に冷却して生じた凝縮液を除去してなるリサイクルガスであることを特徴とする1または2のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法
を提供する。
【0008】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法は、上述のように、ポリメチレンポリフェニルポリアミンを不活性溶媒存在下、50〜90℃の低温下でホスゲンと反応させ、続いて90〜130℃の高温下でホスゲンと反応させて連続的にホスゲン化反応を行ってポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを得る方法において、高温下でホスゲン化させる際に系内にホスゲン化反応で生じた排ガスを吹き込むものである。
【0009】
本発明において、原料となるポリメチレンポリフェニルポリアミンとしては、例えば、アニリンとホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下で常法により縮合させたもの等を用いることができる。また、ポリアミンの組成についても特に限定はなく、任意の組成のポリアミンを用いることができる。
また、ホスゲン化に用いられる不活性溶媒としても、ホスゲン化反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルトルエン、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサン等を用いることができる。
【0010】
上記ホスゲン化反応は、ポリメチレンポリフェニルポリアミンを上述した不活性溶媒に溶かした反応溶液に、ポリアミン当量に対して1.3〜3倍のホスゲンを供給して、50〜90℃、特に60〜80℃の低温下で反応させた後、90〜130℃、特に100〜120℃の高温下で反応させて連続的にホスゲン化させるものである。
この場合、低温反応の温度が50℃未満であると、系内を循環するホスゲン量が増え、コスト面で不利であるとともに、オーバーホスゲネーション等の好ましくない副反応が生じる虞があり、一方、90℃を超えるとイソシアネートが増え、供給されるポリアミンとのウレア化反応が起こりやすくなり、結果として、ピュアMDIの得率低下や、粗MDIの粘度上昇という問題が生じる虞がある。
【0011】
また、高温反応の温度が90℃未満であると、カルバミルクロライドの分解が進みにくく、粗MDIの酸度が上昇する虞があり、一方、130℃を超えると、不活性溶媒の蒸発が進み、反応液中の粗MDIの濃度が高まり、イソシアネートの自己重合反応等が生じる虞がある。
なお、ホスゲン化反応時の系内の圧力は特に限定されず、低温反応、高温反応のいずれについても、90〜300kPa、特に100〜250kPaとすることができる。
【0012】
本発明では、上記ホスゲン化反応で生じた排ガスを、高温下でホスゲン化させる際に系内に吹き込むものであるが、この場合の吹き込み方法は、反応系内に吹き込み可能な方法であれば、特に限定はない。例えば、反応器に吹き込み管等を設置し、これを通じて、反応溶液中に直接バブリングする、または反応器内に送気(反応溶液中にはバブリングさせない)する方法等を用いることができるが、反応系内における排ガスの分散性を向上させ、生成物の酸度の低下を図るという点から、反応溶液中にバブリングする方法を用いることが好適である。
【0013】
また、排ガスの吹き込み量は、多ければ多いほど好ましいが、吹き込みにより排ガス系の圧力損失を伴うことから、これによる悪影響の無い範囲とすることが好ましく、例えば、原料のポリメチレンポリフェニルポリアミン1ton当たり、5〜100Nm3、特に10〜30Nm3とすることが好適である。
なお、排ガスの吹き込み時の温度は、高温下のホスゲン化反応を行う温度範囲であればよいが、より効率よくホスゲン付加体を除くという点から、110〜130℃とすることが好ましい。
【0014】
さらに、高温下のホスゲン化反応を複数個の反応器を用いて行う場合、いずれか1つの反応器または全ての反応器に対して排ガスの吹き込みを行うことができるが、ホスゲンのパージ効率を高めるとともに、製造コストの上昇を招くことなく、最終生成物のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの酸度を効率的に低下させることを考慮すると、最終反応器のみに排ガスの吹き込みを行うことが好ましい。
【0015】
また、排ガス吹き込み時の系内の圧力は特に限定されるものではなく、通常90〜300kPa(絶対圧)とすることができるが、塩化水素の溶解性を高め、効率よくオーバーホスゲネーションにて生成したホスゲン付加体を分解させるという点から、加圧下で行うことが好ましく、特に150〜300kPa(絶対圧)の加圧で行うことが好適である。
【0016】
以上において、吹き込みに用いられる排ガスは、ホスゲン化反応により生じた塩化水素を主成分とする排ガスであれば、特に限定はないが、−10℃以下、特に−15℃以下に冷却して生じた凝縮液を除去してなるリサイクルガスを用いることが好ましい。すなわち、上記排ガスには、微量のホスゲン、不活性溶媒、フェニルイソシアネート、四塩化炭素等の不純物が含まれるが、上記温度以下に冷却して凝縮液を除去したものであれば、これらの不純物により受ける影響が低減され、純水な塩化水素ガスを用いた場合と同等の効果を得ることができ、結果として、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート中の酸分の低減効果をより一層向上することができる。
【0017】
上述のような本発明によれば、ホスゲン化反応終了後ではなく、ホスゲン化反応中に系内に排ガスを吹き込んでいるから、反応時の撹拌等により効率よく排ガスを反応溶液中で分散させることができ、生成物中の酸分を効率的に低減させることができる。しかも、排ガスを吹き込み管等を通じて吹き込むだけでよいから、分散性を高めるための特別な装置や操作を必要とせず、製造工程の簡便化、製造コストの低減化を図ることができる。
また、ホスゲン化反応により副生した排ガスを再利用しているため、純粋な塩化水素ガスを用いる方法と比べて経済性に優れた方法である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0019】
[実施例1〜3、比較例1]
公知の方法にて得られたポリメチレンポリフェニルポリアミン(アミン基濃度:9.5mol/kg、2,2’体および2,4’体:合計14.3質量%、4,4’体:53.7質量%、3核体:32.0質量%)を12%モノクロルベンゼン溶液とし、アミン基当量に対し2倍のホスゲンを供給し、160kPa、64℃で低温反応(断熱反応)を行い、その後、3基の反応器で連続的に98℃,102℃,106℃にて高温反応を行った(なお、圧力は低温反応と同じ)。この際、3基目の反応基にはホスゲン化反応排ガス注入管を設置し、ホスゲン化反応排ガスを撹拌翼の下から、表1に示される各注入量でバブリングした。
【0020】
さらに、ホスゲン化反応終了後、常圧、160℃で不活性溶媒の大部分を除去、回収した後、最終的に、26.6kPaの減圧下、225℃で熱処理および窒素通気を行って粗MDIを得た。
上記各実施例および比較例で得られた粗MDIの酸度の分析結果を表1に併せて示した。なお、酸度は、JIS K−1603に準拠し、加水分解性塩素は、試料採取量を1/10の1mlとした以外は、JIS K−1556に準拠した方法により測定した。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示されるように、高温でのホスゲン化反応時にホスゲン化反応排ガスを注入した実施例1〜3の製法により得られたポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの酸分および加水分解性塩素は、排ガスを注入していない比較例で得られたものよりも低いことがわかる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、高温下でホスゲン化させる際に系内にホスゲン化反応で生じた排ガスを吹き込むポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法であるから、簡便な方法で効率的に生成物の酸度および加水分解性塩素を低減することができるとともに、排ガスを利用するため、製造コストを低減することもできる。
Claims (3)
- ポリメチレンポリフェニルポリアミンを不活性溶媒存在下、50〜90℃の低温下でホスゲンと反応させ、続いて90〜130℃の高温下でホスゲンと反応させて連続的にホスゲン化反応を行ってポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを得るポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法であって、
前記高温下のホスゲン化反応を複数個の反応器で行うとともに、これらの反応器のうち最終反応器に前記ホスゲン化反応で生じた排ガスを吹き込むことを特徴とするポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法。 - 前記排ガスの吹き込みを加圧下で行うことを特徴とする請求項1記載のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法。
- 前記排ガスが、−10℃以下に冷却して生じた凝縮液を除去してなるリサイクルガスであることを特徴とする請求項1または2記載のポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの製造方法。
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