JP4110233B2 - 農作業機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、走行機体に農作業装置を前後方向のローリング軸回りにローリング可能に装着した農作業機に関し、詳しくは農作業装置をローリングさせるローリング用シリンダ装置の取付部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
走行機体に農作業装置を前後方向のローリング軸回りにローリング可能に装着した農作業機、例えば乗用田植機は、各条の苗植付深さが同じになるように、農作業装置である苗植付部を圃場の左右傾斜に応じてローリング作動させる。苗植付部をローリング作動させる手段としてシリンダ装置を用いる場合、当該ローリング用シリンダ装置は、ローリング軸から上下に偏位する位置に左右方向に設け、そのシリンダ本体及びピストンの一方を走行機体側に連結し他方を苗植付部側に連結する(例えば、特許文献1参照)。なお、この特許文献1に記載の乗用田植機では、ローリング用シリンダ装置のシリンダ本体を走行機体側に連結し、ピストンを苗植付部側に連結している。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−23635号公報
【0004】
上記構成の乗用田植機では、ローリング用シリンダ装置を伸縮させて苗植付部をローリング作動させるとき、シリンダ本体と走行機体側との連結部や、ピストンと苗植付部側との連結部に左右方向及び上下方向の位置ずれが生じる。この位置ずれを吸収してローリング作動が円滑に行われるように、走行機体に対してシリンダ本体を前後方向の軸回りに回動自在に支持するとともに、ピストンと苗植付部とをユニバーサルジョイントを介して連結している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記ローリング軸は、実際には正確に前後方向ではなく、苗植付位置(の前後位置)が該ローリング軸の延長線の近傍に位置するように、若干後ろ下がりに傾斜している。このため、苗植付部のローリング作動により、前記連結部には左右方向及び上下方向の位置ずれだけではなく前後方向の位置ずれも生じる。この前後方向の位置ずれが原因となり、苗植付部の円滑なローリング作動が損なわれ、前記連結部が故障や破損しやすかった。そこで、乗用田植機のように走行機体に農作業装置を前後方向のローリング軸回りにローリング可能に装着した農作業機において、農作業装置のローリング作動を円滑にするとともに、前記連結部の故障や破損を防止することが本発明の課題である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題に対して本発明は下記の対策を採用した。すなわち、請求項1に記載の農作業機は、農作業装置を前後方向のローリング軸回りに走行機体に対してローリング可能に設け、シリンダ本体及びピストンの一方を走行機体側に連結し他方を農作業装置側に連結したローリング用シリンダ装置を伸縮させることにより農作業装置をローリング作動させる農作業機において、前記2箇所の連結部の少なくとも一方は、被連結物同士の間に複数のボールジョイントを介在させた構成としたことを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項2に記載の農作業機は、農作業装置を前後方向のローリング軸回りに走行機体に対してローリング可能に設け、シリンダ本体及びピストンの一方を走行機体側に連結し他方を農作業装置側に連結したローリング用シリンダ装置を伸縮させることにより農作業装置をローリング作動させる農作業機において、前記2箇所の連結部の少なくとも一方は、被連結物同士を左右方向の移動を規制した状態で前後方向又は上下方向の移動に融通を持たせた構成としたことを特徴としている。
【0009】
【発明の効果】
請求項1の場合は、ローリング用シリンダ装置と走行機体側又は農作業装置側との連結部における被連結物同士の間に複数のボールジョイントを介在させることにより、当該連結部の自由度を向上させられる。また、請求項3の場合は、前記連結部における被連結物同士を左右方向の移動を規制した状態で前後方向又は上下方向の移動に融通を持たせることにより、当該連結部にかかる負荷を逃がすことができる。したがって、請求項1、2の構成を有効に組み合わせることにより、農作業装置を円滑にローリング作動させられるとともに、前記連結部の故障や破損を防止できるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1及び図2は本発明による農作業機の一例である乗用施肥田植機を表している。この乗用施肥田植機1は、走行機体2の後側に昇降リンク装置3を介して農作業装置としての10条植え苗植付部4が昇降可能に装着され、走行機体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0011】
走行機体2は、前輪6,6及び後輪7,7,8,8,9,9を備えた四輪駆動車両で、エンジン10の回転動力を第一ベルト伝動装置11及び伝動比を変更可能な第二ベルト伝動装置12を介してミッションケース13に伝達し、該ミッションケースで走行動力とPTO動力とに分離して取り出し、走行動力で前輪6,6及び後輪7,7,8,8,9,9を駆動するとともに、PTO動力で苗植付部4及び施肥装置5を駆動する。機体上部の前後中央部に運転席15があり、その前方に前輪6,6を操向するステアリングハンドル16が設けられている。
【0012】
昇降リンク装置3は、走行機体2の後端部に回動自在に取り付けた上リンク20及び下リンク21,21の後端部に縦リンク22を枢結した平行リンク機構として構成され、縦リンク22の下端部から若干斜め下向きで後方に突出するローリング軸23に苗植付部4が回転自在に連結されている。ローリング軸23の角度は、後述する苗植付装置32,…による苗植付位置(の前後位置)が当該ローリング軸の延長線の近傍に位置するように定められている。昇降用シリンダ装置24を伸縮させると、上リンク20及び下リンク21,21が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。また、ローリング用シリンダ装置25を伸縮させると、苗植付部4がローリング軸23を中心にしてローリングする。ローリング用シリンダ装置25の取付部の構造については後で詳述する。
【0013】
苗植付部4は、伝動機構を内蔵する苗植付部フレーム30、苗を載せて左右に往復動し苗取出口31a,…に苗を一株分づつ供給する苗載台31、前記苗取出口31a,…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置32,…、整地用のフロート33,…等を備え、フロート33,…が泥面に接地する位置まで苗植付部4を下降させて走行機体2を前進させると、フロート33,…が泥面を滑走して整地し、その整地跡に苗植付装置32,…が苗載台31の苗を植付けるようになっている。なお、苗載台31は、図3に示すように、下端部が左右方向の案内枠34に摺動自在に支持されているとともに、苗植付部フレーム30に下端が固着された苗載台ガイドフレーム35に取り付けたローラ36が苗載台の裏面上部に設けた左右方向のレール37に沿って移動するようになっており、両端部が苗載台に固着された横移動棒38を左右に往復動させることにより、苗載台31が左右に往復動する。
【0014】
施肥装置5は、肥料タンク40,40内の肥料を肥料繰出部41,…によって一定量づつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料を送風機42から供給される圧力風によって肥料移送管43,…内を移送し、前記フロート33,…の左右両側に取り付けた作溝体44,…の肥料吐出口から圃場に吐出するようになっている。
【0015】
次に、ローリング用シリンダ装置25の取付部の構造を、図3乃至図5に基づき説明する。
【0016】
ローリング用シリンダ装置25は、シリンダ本体25aから両側にピストンロッド25b,25bが突出する複動型油圧シリンダで、シリンダ本体25aと一体にローリング制御弁26が形成されている。このローリング用シリンダ装置25は、左右方向を向くようにシリンダ本体25aが縦リンク22の上部に取り付けられ、ピストンロッド25b,25bの先端部が前記苗載台ガイドフレーム35に固着の連結板50,50に連結されている。
【0017】
シリンダ本体25aの取り付けに関しては、縦リンク22の上端部から上向きに突設した取付板51に側面視コ字型のシリンダ保持枠52を前後方向の軸53によって回動自在に取り付け、さらにそのシリンダ保持枠52の内部にシリンダ本体25aを上下方向の軸54,54によって回動自在に取り付けている。したがって、シリンダ本体25aは、前後方向の軸回りに回動自在かつ上下方向の軸回りに回動自在である。また、前後方向の軸53が挿通される取付板の穴55は上下に長い長穴になっているため、シリンダ本体25aは上下方向の移動に融通を持たせた状態で取り付けられている。なお、上下方向の軸54が挿通されるシリンダ保持枠52の穴を前後に長い長穴として、シリンダ本体25aを前後方向の移動に融通を持たせた状態で取り付けてもよい。
【0018】
ピストンロッド25bと連結板50の連結部56に関しては、ピストンロッド25bにねじ込み式に取り付けた第一ボール57Aと連結板50にねじ込み式に取り付けた第二ボール57Bとを突き合わせて設け、前記第一ボール57Aの外周部に摺動自在に接する第一ブーツ58Aと前記第二ボール57Bの外周部に摺動自在に接する第一ブーツ58Bとをハブ59で連結した構造をしている。すなわち、2つのボールジョイントを結合した構造であり、1個のボールだけを有する普通のボールジョイントに比べ、被連結物であるピストンロッド25bと連結板50との角度変更に対する自由度が高い。
【0019】
ローリング用シリンダ装置25を作動して、一方のピストンロッドを突出させ他方のピストンロッドを後退させると、突出側の連結板50が外側に押され、後退側の連結板50が内側に引かれることにより、苗植付部4がローリング軸23を支点にしてローリング作動する。このローリング作動は、以下に説明するローリング制御装置によって制御する。
【0020】
図6にローリング制御装置の構成を示す。走行機体2に対する苗植付部4の角度を検出するローリング角センサ61、走行機体2の左右傾斜を検出する左右傾斜センサ62、走行機体2の左右傾斜の変化速度を検出する傾斜角速度センサ63、エンジン回転数を検出するエンジン回転センサ64、及び苗載台31の左右位置を検出する苗載台位置センサ65がコントローラ66の入力側に接続され、比例ソレノイド弁であるローリング制御弁26の右回り用及び左回り用のソレノイド67R,67L、及び第二ベルト伝動装置12の伝動比を変更する変速モータ68がコントローラ66の出力側に接続されている。このローリング制御装置により、以下の各制御を行う。
【0021】
植付作業中に走行機体2及び苗植付部4が左右何れかに傾斜すると、これを左右傾斜センサ62及び傾斜角度センサ63が検出し、その検出結果に基づき、苗植付部4が左右水平に復帰する側にローリング用シリンダ装置25が伸縮するようにローリング制御弁26のソレノイド26a又は26bに出力する。そして、ローリング角センサ61が苗植付部4の左右水平を検出すると出力を停止する。このように制御することにより、苗植付部4の各フロート33,…が接地して滑走する状態となり、各条の苗植付深さが一定する。
【0022】
上記ローリング制御出力は、傾斜角度センサ63の値が所定範囲内である場合は左右傾斜センサ62の値に基づいて算出し、傾斜角度センサ63の値が所定範囲外である場合は該傾斜角度センサの値に基づいて算出する。傾斜角度センサ63の値が所定範囲外であるということは走行機体2や苗植付部4が急激に左右に傾いたことを意味するから、苗植付部4のローリング作動を迅速に行う必要がある。しかしながら、ローリング用シリンダ装置25の特性上、あまり速く苗植付部4をローリング作動させることは難しいので、実際の傾斜に制御が追いつかず浮き苗や深植えが発生するおそれがある。そこで、これを防ぐために、傾斜角度センサ63の値に応じ、変速モータ68に出力して車速を変更するように制御する。これにより、正確なローリング制御が可能な適正車速に維持することができ、苗植付け精度を向上させられるとともに、フロート33,…による泥押しを防止できる。
【0023】
また、苗載台31が左右中心から大きく偏位した位置にあるときには苗植付部4のローリング作動に大きな出力を要するので、図7に示すように、苗載台位置センサ65の値が予め定めた規定値を超える場合はローリング出力のオンタイムを大きくし、苗載台位置センサ65の規定値内である場合はローリング出力のオンタイムを小さくするように制御する。これにより、ローリング制御の安定化が図れる。
【0024】
図8は油圧装置の一部を表す油圧回路図である。ローリング制御弁26により、油圧ポンプ70からの圧力油をパイロットチェック弁71Lを経由してローリング用シリンダ装置25の左シリンダ室25cLに供給する状態と、パイロットチェック弁71Rを経由してローリング用シリンダ装置25の右シリンダ室25cRに供給する状態と、何れのシリンダ室にも供給せずにタンク72に戻す状態とに切り替える。両シリンダ室25cL,25cRにつながる油圧経路間には、圧力差が一定以上になると圧力油を高圧側から低圧側へ逃す調圧弁73(図9参照)が設けられている。これにより、ローリング用シリンダ装置25に一定圧以上の外力が加わった場合、調圧弁73が開いて高圧側のシリンダ室から低圧側のシリンダ室に油が移動して外力を吸収し、ローリング用シリンダ装置25が破損するのを防止する。なお、調圧弁73のスプール73aにおける左シリンダ室25cL側の圧力を受ける面F1と、右シリンダ室25cR側の圧力を受ける面F2とは同面積である。
【図面の簡単な説明】
【図1】乗用施肥田植機の側面図である。
【図2】乗用施肥田植機の平面図である。
【図3】苗植付部の正面図である。
【図4】ローリング用シリンダ装置の取付状態を示す背面図である。
【図5】ローリング用シリンダ装置のシリンダ本体の取付状態を示す側面図である。
【図6】ローリング制御装置のブロック図である。
【図7】苗載台の左右位置に係るローリング制御のフローチャートである。
【図8】油圧装置の一部を表す油圧回路図である。
【図9】調圧弁の構造を示す図である。
【符号の説明】
1 乗用施肥田植機(農作業機)
2 走行機体
3 昇降リンク装置
4 苗植付部(農作業装置)
5 施肥装置
23 ローリング軸
25 ローリング用シリンダ装置
26 ローリング制御バルブ
25a シリンダ本体
25b ピストンロッド
31 苗載台
53 前後方向の軸
54 上下方向の軸
55 前後方向の軸を挿通する穴
56 連結部
57A 第一ボール(ボールジョイント)
57B 第二ボール(ボールジョイント)
Claims (2)
- 農作業装置を前後方向のローリング軸回りに走行機体に対してローリング可能に設け、シリンダ本体及びピストンの一方を走行機体側に連結し他方を農作業装置側に連結したローリング用シリンダ装置を伸縮させることにより農作業装置をローリング作動させる農作業機において、前記2箇所の連結部の少なくとも一方は、被連結物同士の間に複数のボールジョイントを介在させた構成としたことを特徴とする農作業機。
- 農作業装置を前後方向のローリング軸回りに走行機体に対してローリング可能に設け、シリンダ本体及びピストンの一方を走行機体側に連結し他方を農作業装置側に連結したローリング用シリンダ装置を伸縮させることにより農作業装置をローリング作動させる農作業機において、前記2箇所の連結部の少なくとも一方は、被連結物同士を左右方向の移動を規制した状態で前後方向又は上下方向の移動に融通を持たせた構成としたことを特徴とする農作業機。
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JP2003004390A JP4110233B2 (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 農作業機 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003004390A JP4110233B2 (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 農作業機 |
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JP2004215524A JP2004215524A (ja) | 2004-08-05 |
JP4110233B2 true JP4110233B2 (ja) | 2008-07-02 |
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JP2003004390A Expired - Lifetime JP4110233B2 (ja) | 2003-01-10 | 2003-01-10 | 農作業機 |
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JP (1) | JP4110233B2 (ja) |
-
2003
- 2003-01-10 JP JP2003004390A patent/JP4110233B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP2004215524A (ja) | 2004-08-05 |
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