JP4108971B2 - 軌条走行式荷役機械における固定機構 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軌条走行式荷役機械における固定機構に関する。軌条走行式荷役機械は、レール上を走行する走行装置と、荷物を吊り上げて支持する荷役機械本体とを備えており、両者の間には、免震装置が設けられている。この免震装置は、地震が発生したときに、荷役機械本体を走行装置に対して移動させて軌条走行式荷役機械に加わる力を吸収するためものであり、地震によって軌条走行式荷役機械が転倒したり破損したりすることを防いでいる。ところで、平常時には、荷役機械本体が走行装置に対して移動すると作業が行えないので、走行装置に対して荷役機械本体が移動しないように、走行装置と荷役機械本体とを固定するための固定手段が設けられている。本発明は、軌条走行式荷役機械において走行装置と荷役機械本体とを固定するための固定手段に関する。
なお、軌条走行式荷役機械とは、鋼材置場や造船所、岸壁等において、荷物の運搬を行うジブクレーンやダブルリンク式水平引き込みクレーン、連続アンローダ、コンテナクレーンなどの軌条走行式荷役機械だけでなく、資材倉庫等において、天井に設けられたレール上を走行する天井クレーンをも含んだ概念である。
【0002】
【従来の技術】
従来の軌条走行式荷役機械では、走行装置と荷役機械本体との固定に、シャーピンが使用されている。シャーピンは、軸方向に沿って長い棒状の部材であって、その軸方向の両端部を、走行装置および荷役機械本体にそれぞれ固定することによって、走行装置に対して荷役機械本体が移動しないように、両者を固定している。
このため、平常時には、荷役機械本体に力が加わってもその力をシャーピンが支持するので、走行装置に対して荷役機械本体が移動することを防ぐことができ、安全に作業を行うことができる。そして、地震によって荷役機械本体に非常に大きな力が加わり、シャーピンが切断されると、荷役機械本体が走行装置に対して移動するので、地震によって荷役機械本体に加わる力を免震装置に吸収させることができるのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、走行装置に対して荷役機械本体が移動を開始するタイミングは、シャーピンが切断されるタイミングに依存しているが、シャーピンが切断するタイミングは外部からコントロールすることができないので、荷役機械本体の作業中に地震が発生した場合、シャーピンが切断するタイミングによっては、期待する免震効果が得られず、地震によって荷役機械本体に加わる力が過度に大きくなり、転倒や脱輪等が生じ、作業者等が危険な状態となる可能性がある。
また、通常の軌条走行式荷役機械は、複数の走行装置を備えており、各走行装置と荷役機械本体との間にシャーピンが設けられているが、製作精度や材料特性によって個々のシャーピンの特性が異なったり、各シャーピンに加わる荷役機械本体の重量が異なったりするため、必ずしも全てのシャーピンが同時に切断されない。すると、荷役機械本体に余分な力、例えば最も遅く切断されたシャーピンを支点として荷役機械本体を回転させる力などが発生し、免震装置が荷役機械本体に加わる力を安定して吸収することができないという問題がある。
さらに、地震が収まってから通常の作業に復帰させるには、荷役機械本体を原点位置まで移動させてから、切断された全てのシャーピンを交換する作業を行わなければならず、通常の作業に復帰するまでに時間がかかり、作業能率が低下するという問題がある。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑み、平常時には、走行装置と荷役機械本体を確実に固定することができ、しかも、地震発生時には、荷役機械本体と全ての走行装置の固定を同時に解除することができ、地震が収まった後、早急に作業に復帰させることができる軌条走行式荷役機械における固定機構を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の軌条走行式荷役機械における固定機構は、荷役機械本体と、走行装置と、該走行装置と前記荷役機械本体との間に設けられ、前記走行装置に対して前記荷役機械本体を移動可能に連結する免震装置とを備えた軌条走行式荷役機械において、前記荷役機械本体と前記走行装置を固定するための固定手段と、該固定手段の動作を制御するための制御手段とを備えた固定機構が設けられており、前記固定手段が、前記走行装置の上端に設けられた、突起状の固定用突起を有する固定部と、前記荷役機械本体に取り付けられ、前記固定部に掛合離脱自在に設けられた支持手段とからなり、該支持手段が、前記荷役機械本体における前記固定用突起よりも上方に位置する部分に回転自在に取り付けられ、その外周に前記固定用突起を挟んで支持するための掛合突起が設けられた一対の掛合部材と、該一対の掛合部材の掛合突起を、上下に揺動させる揺動部とからなり、該揺動部によって前記一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させると、該掛合突起が、前記固定用突起における前記走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向の両側面に掛合され、該揺動部によって前記一対の掛合部材の掛合突起を上方に揺動させると、該掛合突起が、前記固定用突起よりも上方に移動されるように配設されており、平常時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部に掛合した状態で保持され、地震発生時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部から離脱されることを特徴とする。
請求項2の軌条走行式荷役機械における固定機構は、請求項1記載の発明において、前記制御手段が、前記荷役機械本体に加わる力の加速度を感知する加速度感知部と、該加速度感知部が感知した加速度が一定の値以上になると、前記支持手段を前記固定部から離脱させる作動制御部とからなることを特徴とする。
請求項3の軌条走行式荷役機械における固定機構は、請求項1または2記載の発明において、前記走行装置が、複数個設けられており、 各走行装置と前記荷役機械本体との間に、前記固定手段がそれぞれ設けられており、地震発生時において、前記制御手段の作動制御部が、前記複数の固定機構の支持手段を前記複数の固定部から同時に離脱させることを特徴とする。
請求項4の軌条走行式荷役機械における固定機構は、請求項1、2または3記載の発明において、前記揺動部によって前記一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させたときに、一方の前記掛合部材の掛合突起が、前記固定用突起における前記走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向の一方の側面に掛合し、前記荷役機械本体を原点位置まで移動させることを特徴とする。
請求項の軌条走行式荷役機械における固定機構は、請求項1、2、3または4記載の発明において、前記揺動部が、一端が前記一対の掛合部材の外周に取り付けられた連結軸と、該連結軸の一端を上下に昇降させるための昇降装置と、前記連結軸の一端の移動を拘束解放するための拘束手段とからなり、作動制御部が、平常時は、前記制御手段が前記拘束手段に前記連結軸を拘束させるとともに、前記昇降装置による前記連結軸の一端の移動を停止させ、地震発生時は、前記制御手段が前記拘束手段による前記連結軸の拘束を解放させることを特徴とする。
請求項軌条走行式荷役機械における固定機構は、請求項1、2、3、4または5記載の発明において、前記連結軸が立てて配設されており、前記拘束手段が、前記荷役機械本体に取り付けられ、内面に溝が形成された円筒状の嵌合部材であり、該嵌合部材に、前記連結軸が嵌挿されており、前記制御手段が、前記嵌合部材の溝に高圧の流体を供給排出するための流体供給部を備えており、地震発生時に、該流体供給部によって前記嵌合部材の溝に高圧の流体を供給すると、前記嵌合部材の内面と前記連結軸の外周面との間に前記流体の層が形成されることを特徴とする。
請求項の軌条走行式荷役機械における固定機構は、荷役機械本体と、走行装置と、該走行装置と前記荷役機械本体との間に設けられ、前記走行装置に対して前記荷役機械本体を移動可能に連結する免震装置とを備えた軌条走行式荷役機械において、前記荷役機械本体と前記走行装置を固定するための固定手段と、該固定手段の動作を制御するための制御手段とを備えた固定機構が設けられており、前記固定手段が、前記荷役機械本体の下端に設けられた固定部と、前記走行装置に取り付けられ、前記固定部に掛合離脱自在に設けられた支持手段とからなり、該支持手段が、前記走行装置の上端における前記固定部よりも下方の位置に、該走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向と直交するように配設された支持軸と、該支持軸に取り付けられ、その外周に、前記固定部における前記走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向の側面と掛合される掛合突起を有する一対の掛合部材とからなり、該一対の掛合部材は、一方の掛合部材に設けられた掛合突起が前記固定部の一方の側面に掛合し、他方の掛合部材に設けられた掛合突起が前記固定部の他方の側面 に掛合するように配設されており、前記制御手段が、各掛合部材と前記支持軸の間にそれぞれ設けられ、前記掛合部材の前記支持軸周りの回転を拘束解放するための固定部材を備えており、前記掛合部材に前記支持軸周りの一定の値以上の回転トルクが加わると、前記固定部材によって前記掛合部材が前記支持軸に対して回転可能となり、前記掛合部材の掛合突起が固定部から離脱されるように配設されており、平常時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部に掛合した状態で保持され、地震発生時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部から離脱されることを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、平常時は、固定部に支持手段が掛合しており、荷役機械本体が走行装置に固定されているので、荷役機械本体による作業を安定して行うことができる。そして、地震が発生すると、制御手段によって所望のタイミングで支持手段を固定部から離脱させることができるので、最も安全なタイミングで走行装置に対する荷役機械本体の移動を開始させることができる。また、揺動部によって一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させれば、一対の掛合部材の掛合突起間に固定用突起を挟んで支持するので、荷役機械本体が走行装置に対して移動することを防ぐことができる。さらに、一対の掛合部材の掛合突起を上方に揺動させれば、一対の掛合部材の掛合突起が、固定用突起よりも上方に位置するので、荷役機械本体が走行装置に対して移動可能となる。しかも、荷役機械本体が走行装置に対して移動したときに、固定用部材と掛合部材の掛合突起が接触しないので、荷役機械本体が移動するときの抵抗を小さくすることができる。つまり、揺動部によって一対の掛合部材の掛合突起を上下に揺動させるだけで、荷役機械本体を走行装置に固定解放できるので、装置の構造を簡単にすることができ、固定解放動作を速くすることができる。
請求項2の発明によれば、地震発生時に、荷役機械本体に力が加わると、その力の加速度を加速度感知部が感知し、その値が一定の値以上になると、作動制御部によって支持手段が固定部から離脱される。つまり、支持手段に加わる力の大きさには関係なく、荷役機械本体に加わる力が一定値以上になると、支持手段を固定部から確実に離脱させることができる。よって、支持手段を設けた位置や支持手段に加わる荷役機械本体の荷重に関係なく、常に一定の条件の下で走行装置に対する荷役機械本体の移動を開始させることができるので、地震により荷役機械本体に加わる力を免震装置に安定して吸収させることができる。
請求項3の発明によれば、各固定手段に加わる力には関係なく、荷役機械本体に加わる力が一定値以上になると、制御手段の作動制御部によって全ての支持手段を同時に固定部から離脱させることができるので、荷役機械本体には余分な力が加わらない。したがって、免震装置によって、地震により荷役機械本体に加わる力を安定して吸収することができる。
請求項4の発明によれば、地震が収まった後、一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させるだけで、少なくともいずれか一方の掛合部材の掛合突起が固定用突起の一方の側面に掛合し、荷役機械本体を原点まで移動させる。つまり、一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させるだけで、荷役機械本体が走行装置に対して一定の位置に配置されるので、地震が収まった後、荷役機械本体の走行装置に対する位置あわせが不要であり、軌条走行式荷役機械の復帰作業が簡単になり、通常の作業への復帰を速くすることができる。
請求項の発明によれば、平常時は、荷役機械本体を走行装置に対して移動させる力が加わると、掛合部材の掛合突起が固定用突起に押され、掛合部材が回転しようとするが、平常時は、拘束部材によって連結軸の一端の移動が拘束されているため、一対の掛合部材が回転することができない。よって、一対の掛合部材が、その掛合突起によって固定用突起を挟んだ状態で保持される。逆に、地震発生時には、連結軸の一端が移動可能となり、しかも連結軸の一端が上方に移動されるので、一対の掛合部材が回転し、その掛合突起が固定用突起から離脱される。したがって、拘束部材によって一対の掛合部材の回転を確実に拘束解放することができるので、荷役機械本体を走行装置に確実に固定解放することができる。
請求項の発明によれば、連結軸は嵌止部材に嵌挿されている、つまり連結軸が嵌止部材に締りばめされた状態にある。このため、平常時は連結軸が嵌止部材に機械的に強固に固定されるので、掛合部材が回転することを防ぐことができる。また、地震発生時には、流体供給部によって嵌止部材の溝に高圧の流体が供給され、嵌止部材の内面と連結軸との間には流体の層が形成される。よって、連結軸を嵌止部材に対して移動可能となるので、連結軸の一端を上方に移動させることができ、一対の掛合部材の掛合突起を固定用突起から離脱させることができる。
請求項の発明によれば、平常時は、掛合部材の掛合突起が固定部に掛合しており、掛合部材の支持軸周りの回転が固定部材によって拘束されているので、荷役機械本体は走行装置に固定される。よって、荷役機械本体による作業を安定して行うことができる。そして、地震が発生すると、固定部から掛合部材の掛合突起に力が加わり、その力によって掛合部材に支持軸周り回転トルクが発生する。この回転トルクが一定の値以上になると、固定部材によって掛合部材が支持軸周りに回転可能となり、掛合部材の掛合突起が固定部から離脱される。よって、走行装置に対する荷役機械本体の移動可能となり、地震により荷役機械本体に加わる力を免震装置に吸収させることができる。また、一対の掛合部材の掛合突起間に固定部を挟んで支持するので、荷役機械本体が走行装置に対して移動することを防ぐことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の軌条走行式荷役機械における固定機構は、例えばジブクレーンやダブルリンク式水平引き込みクレーン、連続アンローダ、コンテナクレーン等、種々の門型荷役機械や、資材倉庫等において天井に設けられたレール上を走行する天井クレーンに適用可能であるが、以下には、代表としてコンテナクレーンに適用した場合を説明する。
【0008】
まず、本発明の軌条走行式荷役機械における固定機構を説明する前に、この固定手段60が設けられたコンテナクレーンAを説明する。
【0009】
図6は第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50が採用されたコンテナクレーンAの概略正面図である。図6において、符号Qは岸壁、符号Sは接岸中の船舶、符号Aは、コンテナクレーンを示している。このコンテナクレーンAは、クレーン本体1と複数の走行装置9を備えている。このクレーン本体1が特許請求の範囲にいう荷役機械本体である。
前記クレーン本体1は、陸脚と海脚からなり、その上部にガーダgが水平に取り付けられている。このガーダgは、海側に起伏自在に取り付けられたブームbと、陸側に固定された固定ガーダcとから構成されている。
【0010】
前記ガーダgに沿って、海側の第1トロリーT1と陸側の第2トロリーT2が横行し、第1トロリーT1と第2トロリーT2の間にコンテナを受け渡すコンテナ受台車eが配置されている。
固定ガーダc上には機械室fが配置され、第1トロリーT1を横行させる第1ドラムd1と第2トロリーT2を横行させる第2ドラムd2が設けられている。
そして、第1ドラムd1と第1トロリーT1との間に第1トロリーT1を横行させる第1横行ロープR1が張設され、第2ドラムd2と第2トロリーT2を横行させる第2横行ロープR2が張設されている。
【0011】
また、ガーダg上には、第1トロリーT1とガーダg海側先端との間に海側カテナリー支持台車C1が配置され、第2トロリーT2とガーダg陸側基端との間に陸側カテナリー支持台車C2が配置され、第1トロリーT1と第2トロリーT2との間に中央カテナリー支持台車C3が配置されている。
【0012】
図1は第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50が採用されたコンテナクレーンAの要部概略説明図である。図1および図6に示すように、前記クレーン本体1の下端に設けられた水平桁2aには、複数の走行装置9が取り付けられている。図示しないが、複数の走行装置9は、平面視で前記クレーン本体1の下端において、その四隅に取り付けられている。
各走行装置9は、それぞれ複数の車輪9aを有しており、この車輪9aが地面に設けられたレールR上に転動自在に載せられている。このため、走行装置9の車輪9aをレールR上で転動させれば、クレーン本体1をレールR上に沿って移動させることができる。
【0013】
また、各走行装置9の上端と水平桁2aの下端との間には、それぞれ免震装置10が設けられている。各免震装置10は、前記クレーン本体1を前記走行装置9に対して、直交する方向に相対的に移動させるリニアレール20と、走行装置9に対するクレーン本体1の相対的な移動を抑制するための油圧ダンパー30と、走行装置9に対するクレーン本体1の相対的な位置を一定の位置に復元させる復元装置40とを備えている。
このため、地震が発生した場合、走行装置9の走行方向に加わる力は、コンテナクレーンAが走行装置9とともにレールRに沿って移動することによって運動エネルギに変換され、走行装置9の走行方向と直交する方向に加わる力は、リニアレール20がクレーン本体1を走行装置9に対して直交する方向(図1では紙面に垂直な方向)に相対的に移動させることによって、その力の一部をクレーン本体1の運動エネルギに変換する。そして、その運動エネルギを油圧ダンパー30が吸収するので、免震装置10によってクレーン本体1に加わる力を低減させることができる。そして、地震が収まれば、復元装置40によってクレーン本体1を走行装置9に対して一定の位置、つまりクレーン本体1を原点近傍まで移動させるのである。
【0014】
さて、本発明の軌条走行式荷役機械における固定機構50を説明する。
まず、第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50を説明する。
図2は図1のII−II線断面矢視図である。同図に示すように、第1実施形態の固定機構50は、前記クレーン本体1と前記走行装置9を固定するための固定手段60と、固定手段60の動作を制御するための制御手段80とを備えたものであり、制御手段80によって固定手段60を作動させるだけでクレーン本体1と走行装置9との固定解放を自在に行えるようにしたことが特徴である。
【0015】
まず、固定手段60を説明する。
図2に示すように、固定手段60は、走行装置9の上部に設けられた固定用突起65と、クレーン本体1の下端に取り付けられた支持手段70とから構成されている。
【0016】
まず、固定用突起65を説明する。
図2に示すように、クレーン本体1と走行装置9との間において、走行装置9の上端には、突起状の固定用突起65が設けられている。この固定用突起65は、走行装置9に対するクレーン本体1の移動方向の両端部が、後述する支持手段70の掛合部材71が掛合可能な掛合面66として形成されている。
【0017】
つぎに、支持手段70について説明する。
図2に示すように、支持手段70は、左右一対の掛合部材71 ,71と揺動部75とから構成されたものである。
【0018】
まず、左右一対の掛合部材71 ,71を説明する。
図2に示すように、前記クレーン本体1の水平桁2aの下端において、走行装置9に対するクレーン本体1の移動方向における固定用突起65の両端の上方には、左右一対の掛合部材71 ,71が設けられている。各掛合部材71は、その上端部がクレーン本体1の水平桁2aの下端に回転自在に取り付けられており、その下端における外周には、前記固定用突起65の掛合面66に掛合離脱可能な掛合突起72が形成されている。このため、左右一対の掛合部材71 ,71を、その上端を支点として上下に揺動させれば、左右一対の掛合部材71 ,71の掛合突起72を固定用突起65の掛合面66,66にそれぞれ掛合離脱させることができる。
【0019】
つぎに、揺動部75を説明する。
クレーン本体1の水平桁2aの下端部には、揺動部75の左右一対の油圧シリンダ76,76が設けられている。各油圧シリンダ76は、そのピストンロッド77を下方に向けて配設されており、そのシリンダボディが、クレーン本体1の水平桁2aの下端部に回転可能に取り付けられている。また、左右一対の油圧シリンダ76,76のピストンロッド77は、その先端が、前記左右一対の掛合部材71 ,71の外周にそれぞれ回転自在に取り付けられている。
このため、左右一対の油圧シリンダ76,76を伸縮して、ピストンロッド77を進退させれば左右一対の掛合部材71 ,71を、その上端を支点として上下に揺動させることができる。この油圧シリンダ76が特許請求の範囲にいう昇降装置であり、油圧シリンダ76のピストンロッド77が特許請求の範囲にいう連結軸である。
【0020】
なお、連結軸は棒状の部材であればよく、昇降手段は上記のごとき油圧シリンダに限られず、連結軸を、その軸方向に沿って、上下に移動させることができるものであれば、特に限定はない。
【0021】
さらになお、揺動部75は上記の構造に限られず、左右一対の掛合部材71,71の掛合突起72を、上下に揺動させることができるのであれば、特に限定はない。
【0022】
図2および図3に示すように、前記左右一対の油圧シリンダ76 ,76のピストンロッド77は、円筒状の部材である左右一対の嵌止部材78 ,78に挿入されている。各嵌止部材78は、その上端が油圧シリンダ76のシリンダボディの下端に取り付けられている。つまり、嵌止部材78は、油圧シリンダ76のシリンダボディを介してクレーン本体1に取り付けられているのである。
この嵌止部材78は、その上端部および下端部は油圧シリンダ76のピストンロッド77に対して摺動可能に設けられているが、その上下方向の中央部は内径が油圧シリンダ76のピストンロッド77の外径よりもわずかに小さくなっている。つまり、嵌止部材78の中央部はピストンロッド77に締りばめされており、嵌止部材78と油圧シリンダ76のピストンロッド77とは機械的に固定されている。
また、嵌止部材78の上端および下端には、流体供給口78a 、78b がそれぞれ形成されており、また、嵌止部材78の内面には、流体供給口78a と流体供給口78b に連通する螺旋状の溝78h が形成されている。この溝78h は、流体供給口78a 、78bを通して、後述する制御手段80の流体供給部85から高圧の流体が供給される部分である。そして、流体供給口78a 、78bのうち、一方の流体供給口、例えば流体供給口78a は予備のポートであり、通常は他方の流体供給口78b からのみ溝78h に高圧の流体を給排させる。
なお、流体供給口78a ,78bの両方から溝78h 内の高圧の流体を給排するようにしてもよい。
【0023】
このため、平常時は、油圧シリンダ76のピストンロッド77は、嵌止部材78に機械的に固定されており、嵌止部材78の上端が油圧シリンダ76のシリンダボディに取り付けられているので、油圧シリンダ76のピストンロッド77は、その進退、つまり上下方向への移動が嵌止部材78によって拘束されている。
そして、地震発生時には、後述する制御手段80の流体供給部85から、流体供給口78b を通して、高圧の流体が溝78h に供給されると、その流体の圧力によって、嵌止部材78の中央部がふくらみ、嵌止部材78の中央部とピストンロッド77との間に流体の層が形成される。すると、嵌止部材78によるピストンロッド77の固定が解除されるので、油圧シリンダ76のピストンロッド77が進退、つまり上下方向に移動可能となる。
逆に、地震が収まると、流体供給口78b から、溝78h 内の流体を排出させれば、嵌止部材78の上下方向中央部の内面がピストンロッド77の外周面と直接接触し、嵌止部材78によってピストンロッド77の移動を再び固定することができる。
【0024】
上記のごとき構成であるので、支持手段70によれば、揺動部75の油圧シリンダ76によって左右一対の掛合部材71 ,71の掛合突起72を下方に揺動させれば、左右一対の掛合部材71 ,71の下端間に固定用突起65を挟んで支持することができる。
そして、地震発生時には、揺動部75の油圧シリンダ76によって、左右一対の掛合部材71,71の掛合突起72を上方に揺動させれば、左右一対の掛合部材71,71の掛合突起72が、固定用突起65よりも上方に位置するので、クレーン本体1が走行装置9に対して移動可能となり、しかも、クレーン本体1が走行装置9に対して移動したときに、固定用部材65と掛合部材71が接触しないので、クレーン本体1が移動するときの抵抗を小さくすることができる。
つまり、揺動部75の油圧シリンダ76によって左右一対の掛合部材71 ,71の掛合突起72を上下に揺動させるだけで、クレーン本体1を走行装置9に固定解放できるので、装置の構造を簡単にすることができ、固定解放動作を速くすることができる。
【0025】
しかも、平常時には、嵌止部材78によって油圧シリンダ76のピストンロッド77は、その上下方向の移動が拘束されているので、左右一対の掛合部材71、71は回転しない。よって、左右一対の掛合部材71、71の掛合突起72が、固定用突起65を挟んだ状態で確実に保持する。
また、地震発生時には、制御手段80の流体供給部85から嵌止部材78の溝78h に高圧の流体を供給すれば、油圧シリンダ76のピストンロッド77が嵌止部材78に対して移動可能とすることができる。つまり、油圧シリンダ76のピストンロッド77によって左右一対の掛合部材71、71を回転させることができる。よって、左右一対の掛合部材71、71の掛合突起72による固定用突起65の拘束を解放することができる。
したがって、嵌止部材78によって左右一対の掛合部材71、71の回転を確実に拘束解放することができるので、クレーン本体1を走行装置9に確実に固定解放することができる。
【0026】
つぎに、制御手段80を説明する。
図4に示すように、制御手段80は、加速度感知部81、作動制御部82、流体供給部85、油圧シリンダ制御部86を備えている。
流体供給部85は全ての固定手段60の嵌止部材78の溝78h に高圧の流体を供給排出するためのものであり、油圧シリンダ制御部86は全ての固定手段60の油圧シリンダ76を伸縮させるためのものである。
加速度感知部81は、クレーン本体1の適所に取り付けられており、クレーン本体1に、前記免震装置10のリニアレール20と平行な方向の力、つまり走行装置9に対してクレーン本体1が移動する方向の力が加わると、その力の加速度を感知し、その加速度に対応する出力信号を発信するものである。
作動制御部82は、加速度感知部81が発信した出力信号を受信し、その値に応じて、油圧シリンダ制御部86および流体供給部85を作動させ、固定手段60の油圧シリンダ76の伸縮および嵌止部材78による油圧シリンダ76のピストンロッド77の固定解放を制御するものである。
流体供給部85は、全ての固定手段60の嵌止部材78の溝78h に同時に高圧の流体を供給したり、全ての固定手段60の嵌止部材78の溝78h から流体を排出させたりすることができるものである。
油圧シリンダ制御部86は、全ての固定手段60の油圧シリンダ76を同時に伸縮させるためのものである。
【0027】
したがって、制御手段80は、以下のようにして固定手段60の油圧シリンダ76の伸縮および嵌止部材78による油圧シリンダ76のピストンロッド77の固定解放を制御する。
【0028】
まず、地震発生時に、クレーン本体1に、その走行装置9に対する移動方向の力が加わると、その力の加速度を加速度感知部81が感知し、その加速度に対応した出力信号を発信する。すると、その出力信号を受信した作動制御部82は、その値が危険値以上になると、流体供給部85によって全ての固定手段60の嵌止部材78による油圧シリンダ76のピストンロッド77の拘束を同時に解除するとともに、油圧シリンダ制御部86によって全ての固定手段60の油圧シリンダ76を同時に収縮させる。したがって、作動制御部82によって全ての支持手段が同時に固定部から離脱される。つまり、各支持手段70に加わる力には関係なく、クレーン本体1に加わる力が危険値以上になると、制御手段80によって全ての支持手段70の掛合部材71を固定用突起65から確実に同時に離脱させることができるのである。
【0029】
また、地震が収まり、加速度感知部81の出力信号の値が安全値以下になると、油圧シリンダ制御部86によって、全ての固定手段60の油圧シリンダ76を伸長させれば、一対の掛合部材71 ,71を固定用突起65の両端に掛合させて支持させて、元の状態に復帰できる。そして、その後流体供給部85によって固定手段60の嵌止部材78に油圧シリンダ76のピストンロッド77を拘束させれば、走行装置9に対するクレーン本体1の移動を再び固定することができる。
【0030】
なお、地震発生時において、クレーン本体1の移動する方向前方側の支持手段70の油圧シリンダ76だけを収縮させてもよい。
さらになお、嵌止部材78による油圧シリンダ76のピストンロッドの拘束を解除したときに、油圧シリンダ76を収縮させずに油圧シリンダ76内の油が自由に流れるようにするだけでもよい。この場合、掛合部材71がその上端を支点として自由に回転できるので、掛合部材71が固定用突起65と接触しても、クレーン本体1の移動の抵抗とならない。
【0031】
つぎに、第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50の作用と効果を説明する。
【0032】
図2に示すように平常時には、各走行装置9の上端に設けられた固定用突起65を各固定手段60の支持手段70の左右一対の掛合部材71、71の掛合突起72が、それぞれ固定用突起65の両端に掛合している。つまり、左右一対の掛合部材71、71によって固定用突起65が挟んで支持されているので、クレーン本体1が全ての走行装置9に対して固定されている。
しかも、各掛合部材71を回転させる油圧シリンダ76のピストンロッド77の移動が嵌止部材78によって拘束されているので、クレーン本体1に対して、その走行装置9に対する移動方向(図2では左右方向)力が加わり、掛合部材71の掛合突起72を固定用突起65に押し付ける力、つまり掛合部材71を回転させる力が加わっても掛合部材71は回転しない。
したがって、クレーン本体1によって作業を安定して行うことができる。
【0033】
図5に示すように、地震が発生し、クレーン本体1に、その走行装置9に対する移動方向の力が加わると、その力の加速度を制御手段80の加速度感知部81が検知する。そして、その力の加速度が危険値以上になると、作動制御部82は、流体供給部85によって全ての固定手段60のピストンロッド77の拘束を同時に解除するとともに、油圧シリンダ制御部86によって全ての固定手段60の油圧シリンダ76を同時に収縮させる。
すると、全ての固定手段60におけるピストンロッド77が上方に移動され、掛合部材71の掛合突起72が固定用突起65から離脱されるので、クレーン本体1が走行装置9に対して移動可能となり、免震装置10によってクレーン本体1に加わる力を吸収することができる。
【0034】
地震が収まると、まず、制御手段80の作動制御部82は、油圧シリンダ制御部86によって油圧シリンダ76が伸張させる。すると、ピストンロッド77が下方に移動され、掛合部材71の掛合突起72が下方に揺動する。このとき、免震装置10の復元装置40によってクレーン本体1は、その原点近傍まで移動されているので、左右一対の掛合部材71,71の掛合突起72のうち、いずれか一方の掛合突起72が、固定用突起65のいずれか一方の掛合面66に掛合する。すると、油圧シリンダ76のピストンロッド77が掛合突起72を揺動させる力によって、掛合突起72が固定用突起65の掛合面66を押して、クレーン本体1を走行装置9に対する原点位置まで移動させることができる。
そして、左右一対の掛合部材71,71の掛合突起72の両方が、固定用突起65の掛合面66に掛合すれば、作動制御部82が、油圧シリンダ制御部86によって油圧シリンダ76の伸張を停止させる。最後に、作動制御部82が、流体供給部85によって全ての固定手段60のピストンロッド77を拘束させるので、クレーン本体1を走行装置9に対して原点位置で固定することができる。
【0035】
したがって、第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50によれば、平常時には、走行装置9とクレーン本体1を確実に固定することができ、しかも、地震発生時には、クレーン本体1と全ての走行装置9の固定を同時に解除することができ、地震が収まった後、早急に作業に復帰させることができる。
【0036】
つぎに、第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bを説明する。
図7は第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bの概略説明図である。図8は図7のVIII−VIII線断面図である。図7および図8に示すように、第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bは、固定用突起65Bと、支持手段90とから構成されている。
【0037】
まず、固定用突起65Bを説明する。
図7および図8に示すように、クレーン本体1と走行装置9との間において、クレーン本体1の下端には、突起状の固定用突起65が設けられている。この固定用突起65は、走行装置9に対するクレーン本体1の移動方向の両端部が、後述する支持手段90の掛合部材91が掛合可能な掛合面66として形成されている。
【0038】
つぎに、支持手段90について説明する。
図7および図8に示すように、支持手段90は、支持軸91と、一対の掛合部材92a ,92bと固定部材95とから構成されたものである。
【0039】
前記走行装置9の上端において、前記固定用突起65Bの下方には、水平に支持軸91が設けられている。この支持軸91は、その中心軸が走行装置9に対するクレーン本体1の移動方向に対して直交するように配設されている。
この支持軸91には、その軸方向に沿って一対の掛合部材92a ,92bが、後述する固定部材95を介して、取り付けられている。各掛合部材71は、その上端における外周には、前記固定用突起65Bの掛合面66に掛合離脱可能な掛合突起93が形成されている。
そして、一対の掛合部材92a ,92bの掛合突起93のうち、掛合部材92aの掛合突起93は固定用突起65Bの右側の掛合面66に掛合しており、掛合部材92bは固定用突起65Bの左側の掛合面66に掛合している。つまり、一対の掛合部材92a ,92bの掛合突起93によって、固定用突起65Bを挟んで支持しているのである。
【0040】
図9は固定部材95の概略断面図である。なお、図9には、固定部材90の一例として、セーフセット(NAJIKO社製)を示している。同図に示すように、前記支持軸91と一対の掛合部材92a ,92bとの間には、それぞれ一対の固定部材95のスリーブ96が取り付けられている。各固定部材95のスリーブ96は、外壁と内壁を有する二重円筒状をした部材であり、その内壁の内面が前記支持軸91の外面に接触しており、その外壁の外面が前記掛合部材92の内面に接触している。そして、このスリーブ96は、その外壁と内壁のとの間に、オイル等の液体を液密に収容しうる液体収容部96hを備えている。
このスリーブ96の外壁には、供給口96aおよび排出口96bが形成されている。この供給口96aは、外部から液体収容部96hに液体を供給するためのものであり、液体が供給されたあとは、供給プラグによって液密に密封されるものである。
また、排出口96bには、リミットプラグ97の軸方向の一端が取り付けられている。このリミットプラグ97には、軸方向を貫通する排出通路が形成されており、排出通路の他端部には雌ねじが形成されている。このリミットプラグ97の他端には、リミットピン97pが取り付けられており、このリミットピン97pの下端部が前記排出通路の雌ねじに螺合している。
【0041】
また、掛合部材92の側方には、制限部材98が支持軸91に固定されている。この制限部材98には、支持軸91の中心軸に対して前記リミットピン97pの上端部と同じ距離に、一対の切断部98aが設けられている。この切断部98aは、前記掛合部材92が支持軸91に対して、その軸周りに回転すると、リミットプラグ97のリミットピン97pの上端を切断するためのものである。
【0042】
つぎに、第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bの作用と効果を説明する。
まず、スリーブ96の外壁の供給口96aから、高圧の液体を供給すると、スリーブ96の内壁内面が支持軸91の外面に押しつけられ、スリーブ96の外壁外面が掛合部材92の内面に押しつけられる。すると、スリーブ96と、支持軸91および掛合部材92との間の摩擦抵抗が非常に大きくなり、スリーブ96を介して支持軸91と掛合部材92とが固定される。
【0043】
クレーン本体1の下端に設けられた固定用突起65Bは、走行装置9の上端に設けられた一対の掛合部材92a ,92bの掛合突起93によって挟んで支持されている。
したがって、平常時には、固定機構50Bによってクレーン本体1と走行装置9が固定されいるので、クレーン本体1によって作業を安定して行うことができる。
【0044】
地震発生時において、クレーン本体1に、その走行装置9に対する移動方向の力、例えば右向きの力が加わると、クレーン本体1の下端に設けられた固定用突起65の掛合面66が、掛合部材92aの掛合突起93を右向きに押すことになる。すると、掛合部材92aに、支持軸91周りの回転トルクが発生する。
そして、この回転トルクが一定の値以上になり、固定部材95のスリーブ96の内壁内面と支持軸91の外面、または固定部材95のスリーブ96の外壁外面と掛合部材92aの内面との間の摩擦抵抗よりも大きくなると、掛合部材92aが支持軸91周りに回転する。
【0045】
すると、支持軸91に固定されている制限部材98の切断部98aによって、リミットプラグ97のリミットピン97pが切断されるので、スリーブ96の液体収容部96hから液体が排出される。すると、スリーブ96の内壁内面および外壁外面を、支持軸91の外面および掛合部材92aの内面に押しつける力がなくなるので、掛合部材92aが支持軸91に対して回転可能となる。
同様に、左向きの力が加わると、掛合部材92bが支持軸91に対して回転可能となるので、支持手段90による固定用突起65Bの固定が解放され、クレーン本体1が走行装置9に対して移動可能となるので、免震装置10によってクレーン本体1に加わる力を吸収することができる。
【0046】
したがって、第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bによれば、平常時には、走行装置9とクレーン本体1を確実に固定することができ、しかも、地震発生時には、クレーン本体1と走行装置9の固定を解除することができる。
【0047】
なお、図10に示すように、走行装置9の上端に支持軸91を垂直に設け、この支持軸91に前記固定部材95を介して一対の掛合突起93を有する掛合部材92Bを取り付け、この掛合部材92Bを挟むように固定用突起65Bを設けれてもよい。
この場合、掛合部材92Bおよび固定部材95が一つでよいので、装置の構造を簡単にすることができる。
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、平常時は、荷役機械本体による作業を安定して行うことができ、地震が発生すると、最も安全なタイミングで走行装置に対する荷役機械本体の移動を開始させることができる。また、揺動部によって一対の掛合部材の掛合突起を上下に揺動させるだけで、荷役機械本体を走行装置に固定解放できるので、装置の構造を簡単にすることができ、固定解放動作を速くすることができる。
請求項2の発明によれば、常に一定の条件の下で走行装置に対する荷役機械本体の移動を開始させることができるので、地震により荷役機械本体に加わる力を免震装置に安定して吸収させることができる。
請求項3の発明によれば、全ての支持手段を同時に固定部から離脱させることができるので、免震装置によって、地震により荷役機械本体に加わる力を安定して吸収することができる。
請求項4の発明によれば、地震が収まった後、荷役機械本体の走行装置に対する位置あわせが不要であり、軌条走行式荷役機械の復帰作業が簡単になり、通常の作業への復帰を速くすることができる。
請求項の発明によれば、拘束部材によって一対の掛合部材の回転を確実に拘束解放することができるので、荷役機械本体を走行装置に確実に固定解放することができる。
請求項の発明によれば、平常時は連結軸が嵌止部材に強固に固定されるので、掛合部材が回転することを防ぐことができ、地震発生時には、連結軸が嵌止部材に対して移動可能となるので、一対の掛合部材の掛合突起を固定用突起から離脱させることができる。
請求項の発明によれば、平常時は、荷役機械本体は走行装置に固定されるので、荷役機械本体による作業を安定して行うことができる。そして、地震が発生すると、走行装置に対する荷役機械本体の移動可能となり、地震により荷役機械本体に加わる力を免震装置に吸収させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50が採用されたコンテナクレーンAの要部概略説明図である。
【図2】図1のII−II線断面矢視図である。
【図3】嵌止部材78の動作説明図である。
【図4】制御手段80の概略ブロック図である。
【図5】支持手段70が固定用突起65から離脱した状態の説明図である。
【図6】第1実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50が採用されたコンテナクレーンAの概略正面図である。
【図7】第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bの概略説明図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】固定部材95の概略説明図である。
【図10】第2実施形態の軌条走行式荷役機械における固定機構50Bの概略説明図である。
【符号の説明】
1 クレーン本体
9 走行装置
50 固定機構
60 固定手段
65 固定用突起
70 支持手段
71 掛合部材
72 掛合突起
75 揺動部
76 油圧シリンダ
77 ピストンロッド
78 嵌止部材
78h 溝
80 制御手段
81 加速度感知部
82 作動制御部
85 流体供給部
R レール
A コンテナクレーン

Claims (7)

  1. 荷役機械本体と、走行装置と、該走行装置と前記荷役機械本体との間に設けられ、前記走行装置に対して前記荷役機械本体を移動可能に連結する免震装置とを備えた軌条走行式荷役機械において、
    前記荷役機械本体と前記走行装置を固定するための固定手段と、該固定手段の動作を制御するための制御手段とを備えた固定機構が設けられており、
    前記固定手段が、
    前記走行装置の上端に設けられた、突起状の固定用突起を有する固定部と、
    前記荷役機械本体に取り付けられ、前記固定部に掛合離脱自在に設けられた支持手段とからなり、
    該支持手段が、
    前記荷役機械本体における前記固定用突起よりも上方に位置する部分に回転自在に取り付けられ、その外周に前記固定用突起を挟んで支持するための掛合突起が設けられた一対の掛合部材と、
    該一対の掛合部材の掛合突起を、上下に揺動させる揺動部とからなり、
    該揺動部によって前記一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させると、該掛合突起が、前記固定用突起における前記走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向の両側面に掛合され、
    該揺動部によって前記一対の掛合部材の掛合突起を上方に揺動させると、該掛合突起が、前記固定用突起よりも上方に移動されるように配設されており、
    平常時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部に掛合した状態で保持され、
    地震発生時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部から離脱される
    ことを特徴とする軌条走行式荷役機械における固定機構。
  2. 前記制御手段が、
    前記荷役機械本体に加わる力の加速度を感知する加速度感知部と、
    該加速度感知部が感知した加速度が一定の値以上になると、前記支持手段を前記固定部から離脱させる作動制御部とからなる
    ことを特徴とする請求項1記載の軌条走行式荷役機械における固定機構。
  3. 前記走行装置が、複数個設けられており、
    各走行装置と前記荷役機械本体との間に、前記固定手段がそれぞれ設けられており、
    地震発生時において、前記制御手段の作動制御部が、前記複数の固定機構の支持手段を前記複数の固定部から同時に離脱させる
    ことを特徴とする請求項1または2記載の軌条走行式荷役機械における固定機構。
  4. 前記揺動部によって前記一対の掛合部材の掛合突起を下方に揺動させたときに、一方の前記掛合部材の掛合突起が、前記固定用突起における前記走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向の一方の側面に掛合し、前記荷役機械本体を原点位置まで移動させる
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の軌条走行式荷役機械における固定機構。
  5. 前記揺動部が、
    一端が前記一対の掛合部材の外周に取り付けられた連結軸と、
    該連結軸の一端を上下に移動させるための昇降装置と、
    前記連結軸の一端の移動を拘束解放するための拘束手段とからなり、
    作動制御部が、
    平常時は、前記制御手段が前記拘束手段に前記連結軸を拘束させるとともに、前記昇降装置による前記連結軸の一端の移動を停止させ、
    地震発生時は、前記制御手段が前記拘束手段による前記連結軸の拘束を解放させる
    ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の軌条走行式荷役機械における固定機構。
  6. 前記連結軸が立てて配設されており、
    前記拘束手段が、前記荷役機械本体に取り付けられ、内面に溝が形成された円筒状の嵌合部材であり、
    該嵌合部材に、前記連結軸が嵌挿されており、
    前記制御手段が、前記嵌合部材の溝に高圧の流体を供給排出するための流体供給部を備えており、
    地震発生時に、該流体供給部によって前記嵌合部材の溝に高圧の流体を供給すると、前記嵌合部材の内面と前記連結軸の外周面との間に前記流体の層が形成される
    ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の軌条走行式荷役機械における固定機構。
  7. 荷役機械本体と、走行装置と、該走行装置と前記荷役機械本体との間に設けられ、前記走行装置に対して前記荷役機械本体を移動可能に連結する免震装置とを備えた軌条走行式荷役機械において、
    前記荷役機械本体と前記走行装置を固定するための固定手段と、該固定手段の動作を制御するための制御手段とを備えた固定機構が設けられており、
    前記固定手段が、
    前記荷役機械本体の下端に設けられた固定部と、
    前記走行装置に取り付けられ、前記固定部に掛合離脱自在に設けられた支持手段とからなり、
    該支持手段が、
    前記走行装置の上端における前記固定部よりも下方の位置に、該走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向と直交するように配設された支持軸と、
    該支持軸に取り付けられ、その外周に、前記固定部における前記走行装置に対する前記荷役機械本体の移動方向の側面と掛合される掛合突起を有する一対の掛合部材とからなり、
    該一対の掛合部材は、
    一方の掛合部材に設けられた掛合突起が前記固定部の一方の側面に掛合し、他方の掛合部材に設けられた掛合突起が前記固定部の他方の側面に掛合するように配設されており、
    前記制御手段が、
    各掛合部材と前記支持軸の間にそれぞれ設けられ、前記掛合部材の前記支持軸周りの回転を拘束解放するための固定部材を備えており、
    前記掛合部材に前記支持軸周りの一定の値以上の回転トルクが加わると、前記固定部材によって前記掛合部材が前記支持軸に対して回転可能となり、前記掛合部材の掛合突起が固定部から離脱されるように配設されており、
    平常時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部に掛合した状態で保持され、
    地震発生時は、前記制御手段によって前記支持手段が前記固定部から離脱される
    ことを特徴とする軌条走行式荷役機械における固定機構。
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