JP4108886B2 - セメント原料焼成装置における窒素酸化物の低減方法 - Google Patents

セメント原料焼成装置における窒素酸化物の低減方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント原料焼成装置における窒素酸化物の低減方法に関するものであり、さらに詳しくは本発明は、固形可燃性廃棄物の熱量を有効に活用することができ、セメント原料焼成装置における窒素酸化物を低コストで効率よく低減できる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1は、一般的なセメント原料焼成装置を説明するための図である。
図1に示されている焼成装置は、サスペンションプレヒーター1、仮焼炉2(これの無い装置もある)、ロータリーキルン3およびクリンカークーラー4から主に構成されている。これらの工程では、脱炭酸反応と焼成反応により、石灰石や粘土類等のセメント原料の粉末から、セメントクリンカーを製造している。
【0003】
サスペンションプレヒーター1の最上部に供給されたセメント原料の粉末は徐々に下方に向かう。その際、セメント原料は、サスペンションプレヒーター1の下方に設置された微粉炭等(ここでは主燃料と呼ぶ)を燃料とする仮焼炉バーナー5およびロータリーキルン3からの高温ガス31によって予熱されるとともに、石灰石の主成分である炭酸カルシウムが酸化カルシウムおよび炭酸ガスに熱分解(脱炭酸)される。
【0004】
予熱分解されたセメント原料は、続いてインレットチャンバ6を経てロータリーキルン3に入り、出口に向かって転動しながら移動する。原料の出口側にも、微粉炭等の主燃料を燃料にするキルンバーナー7が設置されており、焼成用の空気も供給される。このロータリーキルン3内のセメント原料は、1450〜1500℃程度まで昇温された後、1300〜1350℃程度まで低下し、セメントクリンカーとなってロータリーキルン3からクリンカークーラー4に排出される。ロータリーキルン3で生じた高温ガス31は、インレットチャンバ6からライジングダクト8を経て仮焼炉2に入り、上記のようにセメント原料と接触しながら熱交換し、サスペンションプレヒータ1の上方に向かい、誘引ファンにより排ガスとして大気中に放出される。
【0005】
従来、RDF(REFUSE DERIVED FUEL)等の固形可燃性廃棄物をセメント焼成プロセスに利用することは行われていた。
RDF等の固形可燃性廃棄物とは、木屑、紙屑、プラスチック等が含まれた産業廃棄物、都市ゴミ、下水汚泥等の廃棄物をそのまま或は乾燥、粉砕、成形等の処理をして得られ、熱量を3000〜10000kcal/kg程度、水分を数%〜30%程度、塩素を数ppm〜10000ppm程度有する。
【0006】
従来、RDF等の固形可燃性廃棄物は、サスペンションプレヒーター1の最下段サイクロンとロータリーキルン3の原料入口との間に直接投入されていた。その理由は、固形可燃性廃棄物を例えばロータリーキルン3のキルンバーナー7側から適切な添加量(参考:特願平9−261809(特開平11−100244号公報))を超えて投入した場合、これがセメント原料に落下しながら燃焼し、セメントクリンカー品質に悪影響を及ぼす可能性があり、固形可燃性廃棄物の燃焼速度を考慮すると、サスペンションプレヒーター1のサイクロン最下段とロータリーキルン3の原料入口との間が最も適した投入位置であると考えられたからである。
【0007】
しかしこの場合、次のようなことが原因でセメント生産量の減産が余儀なくされていた。すなわち、▲1▼固形可燃性廃棄物が水分を持ち込む;▲2▼投入時に空気がリークする;▲3▼廃棄物の燃焼速度が遅く、セメント原料の熱分解に寄与せずにサスペンションプレヒーター1の排ガス温度が上昇し、誘引ファンの能力以上に動力が要求される;等である。固形可燃性廃棄物の発熱が原料の熱分解に寄与することなく、サスペンションプレヒーター1の排ガス温度が上昇するということは、固形可燃性廃棄物の熱量が有効に利用されていないことを意味している。このような理由により、固形可燃性廃棄物の使用箇所および使用量が制限されている。
【0008】
そこで本発明者らは、RDF等の固形可燃性廃棄物を多量に使用でき、また、固形可燃性廃棄物の熱量を有効に利用することのできるセメントの製造方法を提案した(特願平10−79688号(特開平11−278888号公報))。この方法は、RDF等の固形可燃性廃棄物を熱分解し、発熱性ガスを得、この発熱性ガスをセメント焼成プロセスの燃料の一部または全部に代替するというものである。さらにこの従来技術は、固形可燃性廃棄物を熱分解し、発熱性ガスを得、この発熱性ガスを、セメント焼成プロセスで発生する窒素酸化物を還元できる量でもってセメント焼成プロセス系内に供給する方法も提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術は、固形可燃性廃棄物を熱分解して得た発熱性ガスを窒素酸化物の低減に用いる方法を開示してはいるが、窒素酸化物の低減に、どのような条件でもって発熱性ガスを利用すればよいかについては、何ら開示していない。
したがって本発明の目的は、固形可燃性廃棄物の熱量を有効に活用することができ、かつセメント原料焼成装置における窒素酸化物を低コストで効率よく低減できる方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、少なくともサスペンションプレヒーターおよびロータリーキルンを備えたセメント原料焼成装置から発生する窒素酸化物を低減する方法であって、前記方法は、固形可燃性廃棄物を熱分解し、発熱性ガスを得、前記発熱性ガスを前記セメント原料焼成装置内の下記条件(i)および(ii)を満たす特定領域に導入し、前記発熱性ガスに含まれる水素、一酸化炭素および炭化水素によりCaOの触媒存在下で窒素酸化物を還元し、かつ窒素酸化物の還元にあずからない発熱性ガスを前記特定領域およびその後段で完全に燃焼することを特徴とするセメント原料焼成装置における窒素酸化物の低減方法を提供するものである。
特定領域条件:
(i) 800〜1200℃の温度範囲である;および
(ii) 還元性雰囲気である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお本発明の方法は従来から使用されているセメント原料焼成装置に適用できるので、先に示した図1を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
本発明では、RDFのような固形可燃性廃棄物を熱分解して得た発熱性ガスをセメント原料焼成装置内の特定領域に導入する必要がある。その特定領域は(i)800〜1200℃である。また(ii)還元性雰囲気である。そして前記(i)および(ii)は同時に満たされなければならない。
発熱性ガスにより窒素酸化物を還元する反応(脱硝反応)は、発熱性ガスに含まれる水素、一酸化炭素およびメタン等の炭化水素を還元剤とする脱硝反応である。また、この反応は約700℃以上の温度、かつCaO等の触媒存在下で起こる。ただし、これらの還元剤の燃焼反応(還元剤と酸素の反応)が優先されるため、酸素の存在下では燃焼反応により酸素が消費された後、窒素酸化物の還元反応が起こる。
したがって、(i)でいう温度範囲が下限未満であると、脱硝反応の反応速度が低下するという理由から、窒素酸化物の低減効果が著しく低くなり、逆に上限を超えると、窒素酸化物の生成反応が同時に起こるという理由から、窒素酸化物の低減効果が著しく低くなる。また、温度範囲が下限未満であると、窒素酸化物の還元にあずからない発熱性ガスが完全には燃焼せずに一部が前記焼成装置から排出される場合がある。発熱性ガスには一般的に一酸化炭素および炭化水素が含まれ、これが未反応のまま大気中に放出されることは環境上好ましくない。
好ましい温度範囲は、800〜1200℃であり、さらに好ましくは900〜1100℃である。
また、(ii)でいう還元性雰囲気とは、発熱性ガスの還元作用を妨げないような低い酸素濃度の雰囲気であるということもできる。具体的には、酸素濃度は0〜5%程度、好ましくは0〜3%である。
【0012】
上記の特定領域は、例えば一般的なセメント原料焼成装置において、ロータリーキルン3のセメント原料入口部、前記入口部に接続されたインレットチャンバ6およびインレットチャンバ6に接続するライジングダクト8のうちの少なくとも一つの領域が挙げられる。これらの場所は、特定領域の条件を多くの場合でよく満たしている。
【0013】
固形可燃性廃棄物を熱分解し、発熱性ガスを得るには、例えば次の2つの方法が有利である。
(a)固形可燃性廃棄物が燃焼するに必要な理論酸素量以下の酸素量(好適には70%以下)で、固形可燃性廃棄物の一部を燃焼させ、その反応熱を利用して、残りの固形可燃性廃棄物の加熱・熱分解を継続させガス化する方法(部分酸化型ガス化);および
(b)空気などの流入を遮断して固形可燃性廃棄物を間接加熱し、熱分解し、ガス化する方法(完全乾留型ガス化)。
(a)の方法は、固形可燃性廃棄物が有する熱量の一部が燃焼によって失われるが、熱分解に必要な熱量を外部から与える必要がないので、コスト的に有利である。しかし、生成する発熱性ガスに含まれる水素、一酸化炭素および炭化水素といった還元剤となる成分の含有量が少なくなる。
(b)の方法は、生成する発熱性ガスに含まれる還元剤となる成分の含有量は多くなるという利点はあるが、固形可燃性廃棄物の熱分解に必要な熱量を外部から与える必要があり、ロータリーキルン3で生じた高温ガス31や、クリンカークーラー4によって熱交換された高温ガス41をそれに用いることにより、コスト的な問題は解決される。
本発明においては、(b)の方法がとくに好ましい。
【0014】
また本発明による窒素酸化物の低減方法では、発熱性ガスにより窒素酸化物を低減すると同時に発熱性ガスをセメント原料焼成のための燃料の一部として代替することができる。発熱性ガスの燃焼方法の例を以下に示す。
(i)ロータリーキルン3のキルンバーナー7の主燃料の一部代替として使用する方法;
(ii)仮焼炉2の仮焼炉バーナー5の主燃料の一部代替として使用する方法;
(iii)上記(i)および(ii)を同時に行う方法;
(iv)主燃料用のキルンバーナー7および/または仮焼炉バーナー5の周辺に発熱性ガス専用のバーナーを設置し、主燃料の代替として使用する方法;
等である。
【0015】
また、塩素含有量の多いRDF等の固形可燃性廃棄物を使用する場合は、ロータリーキルン3から発生する排ガスの一部を、ダストと共に抽気し、塩素化合物含有ダストを系外に取り出す塩素バイパスシステムを併用することで塩素の問題を解決することができる。
塩素バイパスシステムは、例えばWO97/21638号公報等に開示された技術で既に知られている。
【0016】
なお、固形可燃性廃棄物を熱分解した後の残渣は廃棄することなく、サスペンションプレヒーター1もしくはロータリーキルン3に供給し、セメントの原料の一部として使用される。
【0017】
なお、特開昭53−86719号公報には、還元性ガスを利用してセメントクリンカー焼成炉における窒素酸化物を除去する方法が、また特公昭55−6591号公報には、可燃性の窒素酸化物還元剤を供給してセメント原料焼成設備における窒素酸化物を除去する方法が開示されているが、これらに使用される還元性ガスまたは還元剤は、これを得るためにガス燃料や重油を使用する必要があり、コスト面で著しく不利となる。これら公報には固形可燃性廃棄物を熱分解した後の発熱性ガスを使用する旨は全く開示または示唆されておらず、また該発熱性ガスを前記の特定領域に導入することも、全く記載されていない。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
発熱性ガスとしてメタンを用い、温度に対する窒素酸化物の低減率の変化を調べた。φ40mmの電気炉中の雰囲気を、NO:CH4:O2の容積%が1:1:0(電気炉中の雰囲気は、N2が99.6%、NOが0.2%およびCH4が0.2%である)および1:1:1(電気炉中の雰囲気は、N2が99.4%、NOが0.2%およびCH4が0.2%およびO2が0.2%となる)の比率となるように調整し、700℃〜1100℃の範囲で温度を変化させ、窒素酸化物(NO)の低減率を調べた。
結果を図2に示す。
図2から、800℃以上の温度、とくに900℃以上の温度で良好な窒素酸化物の低減効果が生じることが分かる。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、固形可燃性廃棄物の熱量を有効に活用することができ、かつセメント原料焼成装置における窒素酸化物を低コストで効率よく低減できる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なセメント焼成プロセスを説明するための図である。
【図2】発熱性ガスとしてメタンを用いた場合の、温度に対する窒素酸化物の低減率の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 サスペンションプレヒーター
2 仮焼炉
3 ロータリーキルン
4 クリンカークーラー
5 仮焼炉バーナー
6 インレットチャンバ
7 キルンバーナー
8 ライジングダクト
31,41 高温ガス

Claims (5)

  1. 少なくともサスペンションプレヒーターおよびロータリーキルンを備えたセメント原料焼成装置から発生する窒素酸化物を低減する方法であって、前記方法は、固形可燃性廃棄物を熱分解し、発熱性ガスを得、前記発熱性ガスを前記セメント原料焼成装置内の下記条件(i)および(ii)を満たす特定領域に導入し、前記発熱性ガスに含まれる水素、一酸化炭素および炭化水素によりCaOの触媒存在下で窒素酸化物を還元し、かつ窒素酸化物の還元にあずからない発熱性ガスを前記特定領域およびその後段で完全に燃焼することを特徴とするセメント原料焼成装置における窒素酸化物の低減方法。
    特定領域条件:
    (i) 800〜1200℃の温度範囲である;および
    (ii) 還元性雰囲気である。
  2. 特定領域における温度範囲が900〜1100℃である請求項1に記載の方法。
  3. 特定領域が、ロータリーキルンのセメント原料入口部、前記入口部に接続されたインレットチャンバおよび/または前記インレットチャンバに接続するライジングダクトである請求項1または2に記載の方法。
  4. 発熱性ガスの一部を、セメント原料焼成のための燃料の一部または全部に代替する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 固形可燃性廃棄物の熱分解が、空気の流入を遮断した間接加熱により行われる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
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