JP4107476B2 - 高耐久性球状無機多孔質体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒、担体、吸着材、充填材、ろ過材、顔料等に有用な無機多孔質体およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、耐薬品性と耐破砕性に優れた複合酸化物型の球状無機多孔質体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機多孔質体は、触媒、担体、吸着剤、充填材、ろ過材、顔料等の用途に供されている。このような分野で無機多孔体が利用される理由は、無機多孔質体が無機材料としての剛性、耐熱性、耐薬品性に優れていることに加え、表面積や細孔径など、様々な設計が可能となってきたためであると考えられる。また、化学的な処理を加えるなど用途に合わせた改質が可能であり、ファインケミカル分野での基礎材料として、さらに高性能化が進められている。こうした中、無機多孔質体に対する要求は多様かつ精密となってきている。特に、表面修飾時や使用環境において侵食ならびに構造変化が生じない耐薬品性に加え、使用環境における能力低下ならびに圧力損失の原因を起こさない耐破砕性をもつことが要求される。また、取り扱い性の面や適用用途の広さから、球状であることが望まれている。例えば、容器や反応器への均一充填や抜き出し操作を容易にし、さらに触媒分野では流動床触媒への適用も可能となる。
【0003】
従来の球状無機多孔質体としては、シリカゲルやアルミナゲルが工業用材料として広く知られている。シリカゲルの製法は、一般に、▲1▼珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸アルキルを相溶性のない溶媒中で乳化し、酸、アルカリ、水などでゲル化する方法、▲2▼珪酸アルカリ水溶液を硫酸等の鉱酸と反応させてシリカゾルとし、気体媒体もしくは非極性溶媒中に噴霧しゲル化する方法、▲3▼珪素アルコキシドを有機溶媒中にて加水分解し液中でゲル化もしくは噴霧熱分解する方法などがある。また、アルミナゲルは、油中滴下法、転動造粒法などが使用されている。例えば、▲1▼硫酸アルミニウムを酸で中和しアルミナゾルとし、アンモニアや尿素を用いて加熱油浴中でゲル化する方法、▲2▼有機アルミニウム化合物または無機アルミニウム化合物から水酸化アルミニウムを調製し、乾燥あるいは焼成をした後に適度な水分調整を行い、転動造粒していく粉体成形法などがある。
【0004】
ただし、これらのシリカゲルおよびアルミナの単独酸化物ゲルは、耐破砕強度が弱く、水あるいは酸性やアルカリ性の薬品に対する耐食性に劣る。そのため、異種酸化物を複合化した多孔質体が、耐破砕性や耐水性などの耐久性を高める目的で提案されている。例えば、特開平11−268909号公報にシリカと他の金属酸化物からなる耐水性球状無機多孔質体、特開2000−70730号公報にアルミナを主成分にした複合酸化物体がある。これらの公知文献に記載される無機多孔質体は、シリカとアルミナもしくはジルコニアあるいはチタニア等の2成分系の複合酸化物が例示されており、単独酸化物ゲルに対しての耐久性効果が記載されている。しかしながら、これらの2成分系の複合酸化物は、耐破砕性ならびに耐薬品性に優れたものとは言えず、決して表面改質剤および溶媒の影響を受けない等の条件を満たすものではない。
【0005】
また、特公平7−112524号公報には、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムのメタルオキサン構造にチタンとアルミニウムを含有した複合酸化物体が記載されている。この文献には、酸性やアルカリ性の薬品に対する耐食性についても述べられており、その性能は従来の2成分系の複合酸化物よりも高い。しかしながら、耐破砕性、ならびに多孔質体表面や細孔構造の変化の有無は言及されておらず、例示される多孔質体は十分満足いく耐薬品性をもつとはいえない。さらに、金属アルコキシドを原料に湿式法にて製造されており、必然的に製造される多孔質体は生産性が低くなる。
【0006】
尚、多孔質体の製造方法において、湿式法を用いた場合は中実で陥没のない球状な多孔質体が比較的容易に得られるが、製造工程が長く煩雑になる上に、処理液が多量に発生するなど廃棄物等の問題を抱える。一方、噴霧乾燥法など乾式法を用いた場合は簡便に粉体を製造できるが、陥没球や中空球ができやすく、中実球を得る上での技術的課題は多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸性やアルカリ性の薬品等の使用条件下においても侵食ならびに構造変化が生じない耐薬品性に加え、耐破砕性のある、球状な無機多孔質体を工業生産性の有利な噴霧乾燥法を用いて製造する方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記の問題点を解決するために鋭意研究の結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は、下記の通りである。
1.ジルコニウム、珪素、アルミニウムの3種の元素を必須とする複合酸化物であり、含有する各元素が酸化物としての重量濃度に換算して下記(1)、(2)、(3)に記載する範囲内にあり、且つ比表面積30m2/g以上、細孔容積0.1cm3/g以上であることを特徴とする高耐久性球状無機多孔質体。
(1)ジルコニア30〜95wt%
(2)シリカ4〜69wt%
(3)アルミナ1〜20wt%
【0009】
2.該複合酸化物が、さらにマグネシウムを酸化物に換算して20wt%以下の条件で含有していることを特徴とする前記1記載の高耐久性球状無機多孔質体。
3.下記(a)、(b)、(c)を含む混合スラリーを噴霧乾燥し、しかる後に300〜800℃の温度範囲で焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載の高耐久性球状無機多孔質体の製造方法。
(a)コロイド平均粒子径3〜70nmのジルコニアゾル
(b)コロイド平均粒子径3〜50nmのシリカゾル
(c)アルミナゾルあるいはアルミニウム化合物
以下本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の無機多孔質体は、組成およびその製造方法に特徴を有する結果、耐薬品性ならびに耐破砕性のある球状な多孔質体を工業的生産性の有利な噴霧乾燥法を用いても製造できるに至った。
本発明の無機多孔質体は、含有する各元素を酸化物としての重量濃度に換算して、(1)ジルコニア30〜95wt%、(2)シリカ4〜69wt%、(3)アルミナ1〜20wt%の範囲にある。ジルコニウム、珪素、アルミニウムの複合酸化物化により、酸性やアルカリ性の薬品に対しての耐食性が高まり、同時に耐破砕性が向上する。さらに、各成分の含有量が上記範囲内にあるときに、酸性やアルカリ性の薬品処理を行った場合において細孔構造の変化が生じないものとなる。
【0011】
尚、如何なる理由で、高い耐久性能をもつのか解析は不十分であるが、本発明者の推察によれば、各元素が酸素を介在して架橋し合うため耐久性能が向上しているものとみられる。例えば、ジルコニア単独のゲルは―Zr−O−Zr−O―のように結合しているが、複合化により−Zr−O−Al−O−Si−O−結合が新たに形成されることが考えられる。つまり、ジルコニア、シリカ、アルミナが複合化したメタルオキサン構造を形成することにより、高い耐久性能を発現していると考えられる。
【0012】
本発明の無機多孔質体は、比表面積30m2/g以上、細孔容積0.1cm3/g以上の物性をもつ。多孔質体としての効果は、その表面の化学的性質と細孔物性などの物理的性質が如何に用途に適合するか重要であるが、その効果を発揮するためには、比表面積ならびに細孔容積が、ある程度大きいことが要求される。但し、上記値を超える物性に関しては、用いる用途によって適合する値を用いれば良い。
【0013】
次に本発明における無機多孔質体は、ジルコニウム、珪素、アルミニウムの原料として(a)コロイド平均粒子径3〜70nmのジルコニアゾル、(b)コロイド平均粒子径3〜50nmのシリカゾル、(c)アルミナゾルあるいはアルミニウム化合物を用い、これらの原料を混合したスラリーを噴霧乾燥することにより製造することができる。尚、コロイドの粒子径は、レーザードップラー式光散乱法により測定される値である。また、本発明における多孔質体は、製造方法として、従来公知の球状多孔質体を製造する技術を用いることもできる。
【0014】
ジルコニアゾルおよびシリカゾルは、一般公知の製造方法にしたがって調製できるほか、市販ゾルをそのまま用いても良い。例えば、ジルコニアゾルの場合は、水溶性ジルコニウム塩の水溶液を約120℃以下の温度で加熱して加水分解するか、あるいはアンモニア等のアルカリ剤によって中和することにより得ることができる。また、シリカゾルは、水ガラスを硫酸などの鉱酸で中和して得られるゾルあるいは水ガラスをイオン交換樹脂で処理して得られるゾルなどが使用できる。但し、ジルコニアゾルは平均粒子径3〜70nm、シリカゾルは平均粒子径3〜50nmの範囲内にあるものを使用することが、球状な耐久性のある多孔質体を形成する上で好ましい。コロイドの粒子径が小さくなると比表面積の増加ならびに耐破砕性が向上する傾向にあるが、球状粒子を得る上で好ましくない。また、コロイドの粒子径が大き過ぎると細孔径および細孔容積が大きくなる傾向にあるが、比表面積の低下ならびに耐薬品性および耐破砕性の低下に影響する。したがって、前述した粒子径の範囲で適宜必要とする多孔質体の物性要求にあわせて選択すればよい。
【0015】
アルミニウム原料としては、アルミナゾルもしくは一般の市販されるアルミニウム化合物を用いることができる。アルミナゾルとしては、ジルコニアゾルおよびシリカゾルと同様に通常の市販ゾルを適用できる。また、アルミニウム化合物としては、例えば、アルミン酸ソーダ、塩化アルミニウム六水和物、過塩素酸アルミニウム六水和物、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、二酢酸アルミニウムなどであり、好ましくは水溶性のアルミニウム化合物、より好ましくは硝酸アルミニウムである。水溶性のものが好ましい理由は、ジルコニアゾルならびにシリカゾルとの混合スラリーを調製する際に水溶液として添加することが可能であり、スラリー中に均一分散しやすいからである。
【0016】
また、硝酸アルミニウムが好ましいのは、球状成形した無機多孔質体を焼成する過程において、アルミニウム以外は窒素酸化物として気化して消失するため、後から不純物を除去する操作等が必要ないからである。同様にアルミナゾルも他の不純物を残存しない利点がある。
また、本発明においては、ジルコニア、シリカ、アルミニウム化合物の混合スラリーに無機物および/あるいは有機物を加えることが可能である。用いられる無機物としては、硝酸、塩酸、硫酸等の鉱酸類およびアルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属塩ならびにアンモニアや硝酸アンモニウム等の水溶性化合物のほか、水中で分散して懸濁液を生じる粘土鉱物も使用できる。また、有機物としては、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド等の重合体などが用いることができる。
【0017】
無機物および有機物を加える効果は様々であるが、大別すると球状多孔質体の成形と細孔径および細孔容積を上げる目的に使用する。球状な多孔質体を得るには混合スラリーの液質が重要であり、無機物あるいは有機物によって粘度や固形分濃度を変更し、球状な多孔質体が得られやすい液質に改良できる。また、細孔径および細孔容積を上げるには、無機物あるいは有機物を加えたスラリーを乾燥成形することにより、乾燥した粉体内部に該無機物あるいは該有機物を包含せしめ、成形後の焼成ならびに洗浄操作により不要な無機物あるいは有機物を除去することにより実施できる。したがって、細孔容積を上げる目的において用いる無機物あるいは有機物は、沸点あるいは分解温度が200〜800℃の範囲にある物質もしくは溶解が容易な溶媒をもつ物質を選択することが好ましい。無機物あるいは有機物の選定により、球状化の促進や要求される物性値に変更できる効果は大きい。
【0018】
さらに、本発明の無機多孔質体は、前述した各種原料ならびに添加物の混合スラリーを噴霧乾燥することにより球状な成形体に製造することができる。混合スラリーを液滴化する方法としては、回転円盤方式、二流体ノズル方式、加圧ノズル方式など公知の噴霧装置を使用できる。
噴霧する液は、よく混合された状態で用いることが必要である。混合状態が悪く同種のものが偏在すると耐久性が上がらなくなるなど、多孔質体の性能に影響する。特に原料調合時には、スラリーの粘度上昇および一部ゲル化(コロイドの縮合)が生じる場合もあり、この生成する微粒なゲル体も各種元素が均一に取り込まれていることが望まれる。そのため、原料の混合を攪拌下で徐々に行うなどの配慮のほか、酸性やアルカリ性の薬品を加えるなどの方法を用いることもよい。
【0019】
また、噴霧する液は、ある程度の粘度ならびに固形分濃度をもっていることが必要である。粘度や固形分濃度が低すぎると噴霧乾燥で得られる多孔質体が、真球とならず陥没球が多く生成する。また、高すぎると多孔質体同士の分散性に悪影響を及ぼすことがある他、スラリーが噴霧ノズル内部で閉塞しやすくなるなど問題を生じる場合もある。そのため、粘度としては15〜400cpの範囲にあることが好ましく、また、固形分濃度は10〜50wt%の範囲内にあることが好ましい。尚、噴霧乾燥条件としては、噴霧乾燥器の乾燥塔入り口の熱風温度は200〜280℃、乾燥塔出口温度が110〜140℃の範囲内にあることが好ましい。
【0020】
本発明の無機多孔質体の焼成温度は、300〜800℃の範囲内である。焼成条件は多孔質体の物性が変化するため、適切な温度条件ならびに昇温条件の選定が必要である。焼成温度が低いと複合酸化物として耐久性の維持が難しく、高すぎると比表面積ならびに細孔容積の低下に至る。また、昇温条件は、プログラム昇温等を利用し徐々に昇温していくことが好ましい。急激に高い温度条件で焼成した場合は、無機物および有機物のガス化や燃焼が激しくなり、設定以上の高温状態に曝されるたり、粉砕の原因になるため好ましくない。
【0021】
本発明における無機多孔質体の粒径は、1μm以上であり、好ましくは10μm以上である。粒子径が1μmより小さいとジルコニウム、珪素、アルミニウムが偏在し耐久性能が低くなる可能性がある。一方、上限に対しては適宜使用用途に合わせて選択すればよく、特に制限はない。尚、噴霧乾燥により製造する場合は、10〜200μmの平均粒子径範囲のものを得ることができる。
本発明の無機多孔質体は、ジルコニウム、珪素、アルミニウムを含有する複合酸化物に、さらにマグネシウムを酸化物に換算して20wt%以下の条件で含有させることができる。マグネシウムの原料としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが用いることができる。好ましくは水溶性のマグネシウム化合物であり、特に好ましいのは硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムである。
【0022】
無機多孔質体にマグネシウムを含有させる方法としては、噴霧乾燥する混合スラリーにマグネシウム化合物を混在させることによりマグネシウム含有多孔質体を製造することができる。また、その他に多孔質体に後からマグネシウムを吸着担持させる方法が使用できる。例えば、マグネシウム化合物を溶解した液中に無機多孔質体を加え乾燥処理を行うなど浸漬法を用いた方法のほか、細孔容量分のマグネシウム溶液を無機多孔質体に染み込ませて乾燥処理を行うなど含浸法を用いる方法も適用できる。但し、後からマグネシウムを吸着させる方法は、多孔質体にマグネシウムを高分散化するうえで液乾燥処理を緩和な条件で行うなどの注意が必要である。
【0023】
無機多孔質体にマグネシウムを含有させる理由は、耐久性の向上効果の他、多孔質体の改質の利便性上、基礎材料としての高性能化するうえで価値が高い。例えば、多孔質を様々な金属で修飾させるなど表面改質を行う上で、マグネシウムが金属のイオン交換サイトとして働き、多孔質体細孔内部に金属を高分散させることが可能となる。特に触媒用途で使用する場合において高い効果がある。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。また、各種物性の評価方法は下記に示す通りである。
(形状観察)
日立製製作所主製X−650走査型電子顕微鏡を用いて観察した。
(物性測定:細孔径、比表面積、細孔容積)
ユアサ・アイオニクス社/オートソーブ3MP装置により、吸着ガスとして窒素を用いて測定した。尚、表面積はBET法、細孔径ならびに細孔分布はBJH法、細孔容積はP/P0,Maxでの吸着量を採用した。
(耐破砕強度試験)
島津製作所/島津微小圧縮試験機MCM−500によって測定した。室温下破断点の負荷を求め下記式で算出した。
St=2.8P/πd2
Stは強度(MPa)、Pは試験力(N)、dは粒子径(mm)
【0025】
(耐食試験)
120ccのSUS製マイクロボンベに0.01N硝酸18gを仕込み、その溶液中に多孔質体2gを添加した後、60℃の温度条件下にて10分間攪拌した。その後、酸処理された多孔質体をろ過および水洗し、続いて0.01Nの苛性ソーダを18g加え、酸処理と同様な方法でアルカリ処理を行った。以上の操作を各処理とも交互に2回繰り返し、ろ過液中に溶出したジルコニア、珪素、アルミニウムの量を理学/JY−138−ICP発光分析装置により測定した。尚、実施例ならびに比較例に記載する溶出量は処理した多孔質体の全重量に対する各元素の溶出した重量の割合で表した。
【0026】
(構造耐久試験)
耐食試験と同様な方法で酸性薬品およびアルカリ性薬品による処理をおこなった。ただし、酸性薬品として0.1N硝酸、アルカリ性薬品として0.1N苛性ソーダを用いた。また、温度ならびに処理時間を90℃、100分間とし、処理回数を各1回とした。尚、物性変化の指標として処理後の細孔径、比表面積、細孔容積を測定し、下記の物性変化率式の値に100倍した%で変化率を算出した。
物性変化率(%)=(処理後の値−処理前の値)/処理前の値
【0027】
【実施例1】
硝酸アルミニウム・9水和物(和光純薬製)1.39kgを純水に溶解した水溶液を、攪拌下のコロイド平均粒子径10〜20nmのシリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス−N30、SiO2含有量30wt%)0.71kg中へ徐々に滴下し、シリカゾルと硝酸アルミニウムの混合液を調合した。次に、この混合液を、攪拌下のコロイド平均粒子径50nmのジルコニアゾル(ニューテックス株式会社製、商品名:ZSL−20N、ZrO2含有量20wt%)8kg中へ少量ずつ加え、ジルコニアゾル、シリカゾル、硝酸アルミニウムの混合白色スラリーを得た。尚、スラリー調合および攪拌の際にスラリーの粘度が上昇したため、適宜純水を加えて粘度上昇を抑えた。続いて、この混合スラリーを攪拌しながらスプレードライヤー装置を用いて空気中に噴霧し乾燥された球状成形体を得た。その後、電気炉にてプログラム焼成を行い白色の多孔質体を得た。尚、焼成は、昇温条件を15℃/分として、途中、200℃にて1時間、400℃にて1時間、さらに620℃で4時間焼成する方法をとった。尚、得られた粉体の組成ならびに各評価結果を表1に示す。また、多孔質体の形状を写真の図1、構造耐久試験前後の細孔分布(脱着)の変化を構造の図2に示す。
【0028】
【実施例2】
シリカゾルの量を2.04kg、ジルコニアゾルの量を6kgとし、用いた原料の量を変更した以外は実施例1と同様な方法を用いて多孔質体の製造および評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【実施例3】
ジルコニアゾルの原料としてコロイド平均粒子径10nmのゾル(ニューテックス株式会社製、商品名:ZSL−10T、ZrO2含有量10wt%)をZrO2濃度15wt%まで濃縮したものを8kg用いた以外は実施例2と同様な方法を用いて多孔質体の製造および評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0031】
【実施例4】
実施例1の噴霧乾燥前の各種原料を混合した白色スラリーと同様なものに平均分子量400のポリエチレングリコールを0.2kg加えた以外は実施例1と同様に多孔質体の製造および評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0032】
【比較例1】
シリカゾルの量を4.7kg、ジルコニアゾルの量を2kgとし、用いた原料の量を変更した以外は実施例1と同様な方法を用いて多孔質体の製造および評価をおこなった。結果を表1に示す。尚、本結果より、ジルコニア成分の量を少なくしたことにより、細孔径が小さい側にシフトしていることがわかった。その結果を明確に表すため、構造耐久試験前後の細孔分布の変化を比較構造の図3に示す。
【0033】
【比較例2】
ジルコニウムの原料として硝酸ジルコニル・2水和物(和光純薬製)0.95kg、シリカゾル4.7kgを用いた以外は実施例1と同様な方法を用いて多孔質体の製造および評価をおこなった。得られた多孔質体の組成、形状、物性値、を表1に示す。尚、ジルコニアの原料を変更したことにより、同様な製造方法では真球にならないことがわかった。多孔質体の写真を比較写真の図4に示す。
【0034】
【実施例5】
硝酸アルミニウム・9水和物(和光純薬製)0.83kg、硝酸マグネシウム・6水和物(和光純薬製)0.95kgを純水に溶解した水溶液を、攪拌下のコロイド平均粒子径10〜20nmシリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス−N30、SiO2含有量30wt%)1.2kg中へ徐々に滴下し、シリカゾル、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムの混合液を調合した。次に、この混合液を、攪拌下のコロイド平均粒子径50nmのジルコニアゾル(商品名:ZSL−20N、ニューテックス株式会社製、ZrO2含有量20wt%)1.5kgとコロイド平均粒子径10nmのジルコニアゾル(商品名:ZSL−10T、ニューテックス株式会社製、ZrO2含有量10wt%)11.8Kgを混合した液に少量ずつ加え、各種原料を混合した白色スラリーを得た。このスラリーに硝酸やアンモニア水を少量添加し、続いて硝酸アンモニウム1.5kgを加えた後、実施例1と同様な方法を用いて噴霧乾燥および焼成をおこなった。得られた多孔質体の組成ならびに各評価結果を表1に示す。また、多孔質体の形状を写真の図5、構造耐久試験前後の細孔分布の変化を構造の図6に示す。
【0035】
【実施例6】
実施例5と同様な方法を用いて、但し、ジルコニウムの原料としてコロイド平均粒子径10nmのジルコニアゾル(ニューテックス株式会社製、商品名:ZSL−10T、ZrO2含有量10wt%)をZrO2濃度15wt%まで濃縮したものを10.7kg、硝酸アルミニウム0.83kg、硝酸マグネシウム1.05kg、シリカゾル0.4kg、としてジルコニア原料および各原料の用いた量を変更し、さらに硝酸ならびに硝酸アンモニウムの添加を行わない条件にて多孔質体の製造および評価をおこなった。結果を表1に示す。
【0036】
【比較例3】
ジルコニアゾルの量を2.7kg、シリカゾルの量を4.4kgとし、用いた原料の量を変更した以外は実施例6と同様な方法で多孔質体の製造および評価をおこなった。結果を表1に示す。ジルコニア成分の量を少なくしたことにより、比表面積の増加および細孔径の低下が起きていることがわかった。その結果を明確に表すため、構造耐久試験前後の細孔分布の変化を比較構造の図7に示す。
【0037】
【比較例4〜7】
実施例1と同様な方法により、但し、ジルコニウムの原料をコロイド平均粒子径50nmのジルコニアゾル(ニューテックス株式会社製、商品名:ZSL−20N、ZrO2含有量20wt%)、珪素の原料をコロイド平均粒子径10〜20nmのシリカゾル(日産化学株式会社製、商品名:スノーテックス−N30、SiO2含有量30wt%)、アルミニウムの原料を硝酸アルミニウム・9水和物(和光純薬製)、マグネシウムの原料を硝酸マグネシウム・6水和物(和光純薬製)と用いる原料種を定めて、使用量を変更し、各種酸化物多孔質体の製造をおこなった。得られた多孔質体の組成ならびに各評価結果を表1に示す。本結果より、ジルコニアーマグネシウムの多孔質体以外は、耐食試験で耐久性能が低いことが示された。尚、ジルコニアとマグネシウムの多孔質体も構造耐久性試験では、構造が大きく変化していることがわかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、酸性やアルカリ性の薬品等の使用条件下においても侵食ならびに構造変化が生じない耐薬品性に加え、耐破砕性のある、球状な無機多孔質体を工業的生産性の有利な噴霧乾燥法を用いて製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、多孔質体の形状拡大写真
【図2】図2は、構造耐久試験前後の細孔分布の脱着変化の構造図
【図3】図3は、構造耐久試験前後の細孔分布の脱着変化の比較構造図
【図4】図4は、多孔質体の形状拡大比較写真
【図5】図5は、多孔質体の形状拡大写真
【図6】図6は、構造耐久試験前後の細孔分布の脱着変化の構造図
【図7】図7は、構造耐久試験前後の細孔分布の脱着変化の比較構造図
Claims (3)
- ジルコニウム、珪素、アルミニウムの3種の元素を必須とする複合酸化物であり、含有する各元素が酸化物としての重量濃度に換算して下記(1)、(2)、(3)に記載する範囲内にあり、且つ比表面積30m2/g以上、細孔容積0.1cm3/g以上であることを特徴とする高耐久性球状無機多孔質体。
(1)ジルコニア30〜95wt%
(2)シリカ4〜69wt%
(3)アルミナ1〜20wt% - 該複合酸化物が、さらにマグネシウムを酸化物に換算して20wt%以下の条件で含有していることを特徴とする請求項1記載の高耐久性球状無機多孔質体。
- 下記(a)、(b)、(c)を含む混合スラリーを噴霧乾燥し、しかる後に300〜800℃の温度範囲で焼成することを特徴とする請求項1又は2に記載の高耐久性球状無機多孔質体の製造方法。
(a)コロイド平均粒子径3〜70nmのジルコニアゾル
(b)コロイド平均粒子径3〜50nmのシリカゾル
(c)アルミナゾルあるいはアルミニウム化合物
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