JP4106939B2 - 多気筒内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

多気筒内燃機関の排気浄化装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の排気浄化技術に関し、特に、多気筒内燃機関の排気浄化技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、車両などに搭載される内燃機関に対して排気エミッションの向上が要求されている。特に、軽油を燃料とする圧縮着火式の内燃機関では、内燃機関から排出される窒素酸化物(NOx)、又は、煤やSOF(Soluble Organic Fraction)などの微粒子(PM:Particulate Matter)を浄化することが重要である。
【0003】
このような要求に対し、特開平11−294226号公報や特開平11−311138号公報に記載されているように、内燃機関の排気通路に配置されたパティキュレートフィルタと、パティキュレートフィルタより上流の排気通路から吸気通路へ排気の一部(EGRガス)を還流させるEGR通路と、前記EGR通路を流れるEGRガスの流量を調整するEGR弁とを備えた内燃機関が提案されている。
【0004】
上記したような内燃機関は、EGR機構が内燃機関の混合気中に排気を供給することにより内燃機関から排出される窒素酸化物(NOx)量を低減させるとともに、捕集機構が排気中のPMを捕集することにより大気中へ放出されるPM量を低減しようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述した従来の技術がV型内燃機関に代表される多気筒の内燃機関に適用される場合には、内燃機関の気筒を二つ以上の気筒群に分割し、各々の気筒群毎に排気通路を設けるとともに、各排気通路毎にパティキュレートフィルタとEGR通路とEGR弁とを配置する構成が考えられる。
【0006】
しかしながら、個々のパティキュレートフィルタに捕集される微粒子量は必ずしも同量であるとは限らない上、パティキュレートフィルタ毎に微粒子の捕集状態が異なる場合があるため、パティキュレートフィルタ毎に排気の圧力損失が異なる場合がある。
【0007】
このような場合に全てのEGR弁が同一の開度に制御されると、各EGR通路によって還流されるEGRガス量が排気通路毎に異なる事態が発生する。これは、EGR通路を流れるEGRガス量は、EGR通路の上流側端部に相当する排気通路内の圧力と下流側端部に相当する吸気通路内の圧力との差に応じて変化するため、パティキュレートフィルタ毎に圧力損失が異なる場合には、パティキュレートフィルタ上流における排気圧力が排気通路毎に異なり、それに応じてEGR通路の上流側端部と下流側端部との圧力差が排気通路毎に異なるようになるからである。
【0008】
このようにEGR通路によって還流されるEGRガス量が排気通路毎に異なると、内燃機関の各気筒へ供給されるEGRガス量を所望の量とすることが困難となり、内燃機関の運転状態の悪化や排気エミッションの悪化などが誘発されることが想定される。
【0009】
本発明は、上記したような種々の実情に鑑みてなされたものであり、内燃機関に接続された複数の排気通路の各々に捕集機構とEGR機構とが設けられた内燃機関の排気浄化装置において、EGR制御を好適に行うことができる技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記した課題を解決するために以下のような手段を採用した。すなわち、本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関に接続された複数の排気通路と、前記各排気通路毎に設けられ、排気中の微粒子を捕集する捕集機構と、前記各捕集機構による排気の圧力損失を検出する検出手段と、前記各排気通路における前記捕集機構より上流の部位から前記内燃機関の吸気通路へ排気の一部を還流させるEGR通路と、前記各EGR通路毎に設けられ、前記各EGR通路を流れる排気流量を調整するEGR弁と、前記各検出手段により検出された前記各捕集機構の圧力損失を比較し、その比較結果に応じて前記各EGR弁の開度を個別に制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明は、内燃機関に接続された複数の排気通路の各々に捕集機構とEGR機構(EGR通路及びEGR弁)が設けられた内燃機関の排気浄化装置において、複数の捕集機構の圧力損失を比較し、その比較結果に応じたEGR弁の開度制御を行うことを最大の特徴としている。
【0012】
かかる内燃機関の排気浄化装置では、各排気通路毎に検出手段が捕集機構の圧力損失を検出する。制御手段は、各検出手段が検出した圧力損失を比較し、その比較結果に応じて個々のEGR弁の開度を制御する。
【0013】
このように圧力損失の比較結果に応じて各EGR弁の開度が制御されると、各EGR通路により還流されるEGRガス量が略同量となり、内燃機関の各気筒へ供給されるEGRガス量を所望の量にすることが容易になる。
【0014】
本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置では、制御手段は、捕集機構の使用過程において少なくとも一の捕集機構の圧力損失が他の捕集機構に比して多くなった場合は、圧力損失が多くなった捕集機構が配置された排気通路について、EGR弁の開度を他の排気通路のEGR弁より小さくするようにしてもよい。
【0015】
これは、少なくとも一の捕集機構の圧力損失が他の捕集機構に比して多くなった場合は、圧力損失が多くなった捕集機構が配置された排気通路において、捕集機構より上流の排気圧力が他の排気通路より高くなり、それに応じてEGR通路の上流側端部(EGR通路と排気通路との接続部)と下流側端部(EGR通路と吸気通路との接続部)との圧力差が他のEGR通路に比して大きくなるため、当該EGR通路により還流されるEGRガス量が他のEGR通路より多くなるからである。
【0016】
また、本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置では、制御手段は、捕集機構の使用過程において少なくとも一の捕集機構の圧力損失が他の捕集機構に比して少なくなった場合は、圧力損失が少ない捕集機構が配置された排気通路について、EGR弁の開度を他の排気通路より大きくするようにしてもよい。
【0017】
これは、少なくとも一の捕集機構の圧力損失が他の捕集機構に比して少なくなった場合は、圧力損失が少なくなった捕集機構が配置された排気通路において、捕集機構より上流の排気圧力が他の排気通路より低くなり、それに応じてEGR通路の上流側端部と下流側端部との圧力差が他のEGR通路に比して小さくなるため、当該EGR通路により還流されるEGRガス量が他のEGR通路より少なくなるからである。
【0018】
尚、制御手段は、捕集機構の使用過程において少なくとも一の捕集機構の圧力損失と他の捕集機構の圧力損失との差が所定値以上となった場合に限り、前記した一の捕集機構が配置された排気通路のEGR弁の開度を変更するようにしてもよい。
【0019】
本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置において、制御手段は、所定期間内に各検出手段が検出した圧力損失の平均値に応じて各EGR弁の開度を制御するようにしてもよい。
【0020】
これは、捕集機構の詰まり以外の要因、例えば、排気脈動の変則的な変化などにより、検出手段が検出する圧力損失が一時的に変化した場合などに、そのような圧力損失に応じてEGR弁の開度が制御されると、EGRガス量が不要に増加或いは減少されてしまうことが想定されるからである。
【0021】
本発明を適用する内燃機関としては、複数の気筒が機関出力軸を中心にV字状の二つのバンクに分割されたV型内燃機関であって、その内燃機関の各バンク毎に独立した排気通路を有するとともに、各排気通路毎に捕集機構とEGR機構とを備えた内燃機関を例示することができる。
【0022】
また、本発明を適用する内燃機関としては、複数の気筒を備えた直列型の内燃機関であって、その内燃機関の気筒が複数の気筒群に分割され、各々の気筒群毎に独立した排気通路を有するとともに、各排気通路毎に捕集機構とEGR機構とを備えた内燃機関であってもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【0024】
<実施の形態1>
先ず、本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置の第1の実施態様について図1〜図3に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明を適用する内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、1番気筒(#1)、3番気筒(#3)、及び5番気筒(#5)の3つの気筒群からなる第1バンク1aと、2番気筒(#2)、4番気筒(#4)、及び6番気筒(#6)の3つの気筒群からなる第2バンク1bとが図示しない機関出力軸を中心にV字型に配置されたV型6気筒の内燃機関である。
【0026】
前記第1バンク1aには第1の吸気枝管2aが接続され、前記第2バンク1bには第2の吸気枝管2bが接続されている。これら第1の吸気枝管2aと第2の吸気枝管2bとは上流において1本の吸気管3に接続されている。
【0027】
前記吸気管3は、エアクリーナボックス4に接続されている。前記吸気管3の途中には、該吸気管3内を流れる空気の質量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ5が配置されている。
【0028】
前記エアフローメータ5より下流の吸気管3には、該吸気管3内を流れる空気の流量を調整する吸気絞り弁6が設けられている。前記吸気絞り弁6には、該吸気絞り弁6を開閉駆動する吸気絞り用アクチュエータ60が取り付けられている。
【0029】
このように構成された吸気系では、先ず大気中の空気がエアクリーナボックス4に流入する。エアクリーナボックス4に流入した空気は、エアクリーナボックス4に内装されたエアフィルタによって埃や塵を取り除かれた後に吸気管3へ流入する。吸気管3に流入した空気は、吸気絞り弁6により流量を調整され、次いで第1の吸気枝管2aと第2の吸気枝管2bとへ分配される。第1の吸気枝管2a及び第2の吸気枝管2bへ分配された空気は、それら第1及び第2の吸気枝管2a、2bの各枝管を介して各気筒の燃焼室へ導かれ、図示しない燃料噴射弁から噴射される燃料と共に燃焼せしめられる。
【0030】
次に、前記第1バンク1aには第1の排気枝管7aが接続され、前記第2バンク1bには第2の排気枝管7bが接続されている。これら第1の排気枝管7aと第2の排気枝管7bとは下流にて1本の排気管8に接続されている。前記排気管8は、図示しないマフラーに接続されている。
【0031】
前記第1の排気枝管7aには、排気中の有害ガス成分、特に煤やSOF(Soluble Organic Fraction)などの微粒子(PM:Particulate Matter)を浄化する第1の排気浄化機構9aが配置されている。
【0032】
前記第1の排気浄化機構9aは、本発明に係る捕集機構の一実施態様であり、排気中に含まれるPMを捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)、多孔質の基材からなるウォールフロー型のパティキュレートフィルタに白金(Pt)に代表される酸化触媒とカリウム(K)やセシウム(Cs)などに代表されるNOx吸蔵剤とが担持されたDPNR(Diesel Particulate NOx Reduction)触媒、或いはDPFとNOx触媒とが直列に配置されたもの等を例示することができる。尚、以下では、第1の排気浄化機構9aを第1のパティキュレートフィルタ9aと称するものとする。
【0033】
前記第1の排気枝管7aには、前記第1のパティキュレートフィルタ9aより上流における排気の圧力と下流における排気の圧力との差(以下、第1のフィルタ前後差圧と称する)に対応した電気信号を出力する第1差圧センサ10aが設けられている。
【0034】
一方、前記第2の排気枝管7bには、前記した第1のパティキュレートフィルタ9aと同一の構造を有する第2のパティキュレートフィルタ9bが配置されるとともに、前記第2のパティキュレートフィルタ9bより上流における排気の圧力と下流における排気の圧力との差(以下、第2のフィルタ前後差圧と称する)に対応した電気信号を出力する第2差圧センサ10bが設けられている。
【0035】
ここで、前記した第1差圧センサ10aと第2差圧センサ10bとは、本発明に係る検出手段の一実施態様である。
【0036】
このように構成された排気系では、第1バンク1aの各気筒内で燃焼された混合気(既燃ガス)が第1の排気枝管7aへ排出されるとともに、第2バンク1bの各気筒内の既燃ガスが第2の排気枝管7bへ排出される。第1の排気枝管7a及び第2の排気枝管7bへ排出された排気は、第1のパティキュレートフィルタ9a及び第2のパティキュレートフィルタ9bにおいてPMを取り除かれた後に排気管8へ導かれ、排気管8を通って大気中へ放出されることになる。
【0037】
また、内燃機関1の吸排気系には、排気の一部を吸気中へ還流させるEGR機構が設けられている。本実施の形態におけるEGR機構は、第1バンク1aと第2バンク1bとの各々に独立して設けられている。
【0038】
第1バンク1aのEGR機構は、第1の排気枝管7aと第1の吸気枝管2aとを連通させる第1EGR通路11aを備え、第1の排気枝管7a内を流れる排気の一部(以下、EGRガスと称する)が第1EGR通路11aを介して第1の吸気枝管2aへ還流されるようになっている。
【0039】
尚、前記第1EGR通路11aの途中には、該第1EGR通路11a内を流れるEGRガス量を調節する第1EGR弁12aが配置され、この第1EGR弁12aの開度が調節されることにより、第1の排気枝管7aから第1の吸気枝管2aへ還流されるEGRガス量を調節することが可能となっている。
【0040】
第2バンク1bのEGR機構は、第2の排気枝管7bと第2の吸気枝管2bとを連通させる第2EGR通路11bを備え、第2の排気枝管7b内を流れる排気の一部(以下、EGRガスと称する)が第2EGR通路11bを介して第2の吸気枝管2bへ還流されるようになっている。
【0041】
尚、前記第2EGR通路11bの途中には、前述した第1EGR通路11aと同様に、該第2EGR通路11b内を流れるEGRガス量を調節する第2EGR弁12bが配置され、この第2EGR弁12bの開度が調節されることにより、第2の排気枝管7bから第2の吸気枝管2bへ還流されるEGRガス量を調節することが可能となっている。
【0042】
このように構成されたEGR機構では、第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bが開弁されると、第1の排気枝管7a及び第2の排気枝管7bを流れる排気の一部がEGRガスとして第1EGR通路11a及び第2EGR通路11bへ流入し、それら第1EGR通路11a及び第2EGR通路11bを介して第1の吸気枝管2a及び第2の吸気枝管2bへ還流される。第1の吸気枝管2a及び第2の吸気枝管2bへ還流されたEGRガスは、第1の吸気枝管2a及び第2の吸気枝管2bの上流から流れてくる空気とともに各気筒の燃焼室へ流入し、燃料噴射弁から噴射される燃料とともに燃焼に供されることになる。
【0043】
その際、EGRガス中には水(H2O)や二酸化炭素(CO2)などの不活性ガス成分が含まれているため、EGRガスが各気筒の燃焼室に導入された場合には混合気の燃焼温度が低下し、以て窒素酸化物(NOx)の発生量を減少させることが可能となる。
【0044】
ところで、窒素酸化物(NOx)の発生量を低下させる上ではEGRガスの量を増加させる方法が有効であるが、EGRガス量が増加された場合には窒素酸化物(NOx)の発生量が減少する一方で燃焼悪化により煤の発生量が増加してしまうことになる。
【0045】
但し、EGRガス量の増加に伴う煤の増加にはピークが存在するため、そのピークを越えてEGRガス量が増加されると、燃焼室内における燃焼時の燃料およびその周囲の温度が煤の生成温度より低められ、以て窒素酸化物(NOx)及び煤の発生量を効果的に低減させることが可能となる。
【0046】
従って、EGRガス量を煤の発生量がピークとなる量より増加させることにより、燃焼室内の燃焼時における燃料及びその周囲の温度を煤の生成温度より低くすることが可能となり、以て窒素酸化物(NOx)及び煤の発生量を極めて少量とすることが可能となる。
【0047】
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1の運転状態を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)20が併設されている。このECU20は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM、入力ポート、出力ポート、A/Dコンバータ等から構成される算術論理演算回路である。
【0048】
前記ECU20には、前述したエアフローメータ5、第1差圧センサ10a、第2差圧センサ10bに加え、内燃機関1に取り付けられたクランクポジションセンサ13及び水温センサ14や、図示しないアクセルペダルの操作量(開度)に応じた電気信号を出力するアクセルポジションセンサ15等の各種センサが電気的に接続され、各種センサの出力信号がECU20へ流入されるようになっている。
【0049】
前記ECU20は、前述した各種センサに加え、吸気絞り用アクチュエータ60、第1EGR弁12a、及び第2EGR弁12bと電気的に接続され、前記各種センサの出力信号をパラメータとして吸気絞り用アクチュエータ60、第1EGR弁12a、及び第2EGR弁12bを制御することが可能になっている。
【0050】
具体的には、ECU20は、ROMに記憶されているアプリケーションプログラムに従って動作し、燃料噴射制御や吸気絞り制御などの周知の制御に加え、本発明の要旨となるEGR制御を実行する。
【0051】
以下、本実施の形態におけるEGR制御について述べる。
EGR制御では、ECU20は、先ず、クランクポジションセンサ13、水温センサ14の出力信号(冷却水温度)、及びアクセルポジションセンサ15の出力信号(アクセル開度)を入力する。ECU20は、クランクポジションセンサ13の出力信号に基づいて機関回転数を算出し、その機関回転数とアクセル開度とから内燃機関1の負荷(機関負荷)を判定する。
【0052】
次いで、ECU20は、前記した機関負荷、冷却水温度、アクセル開度からEGR制御実行条件が成立しているか否かを判別する。EGR制御実行条件としては、冷却水温度が所定温度以上である、内燃機関1の運転状態が高負荷運転領域にない、内燃機関1の運転状態が減速運転領域にない、等の条件を例示することができる。これらの条件は、冷間時における運転性を確保するとともに、高負荷運転時の黒煙排出量を低減するための条件である。
【0053】
上記したようなEGR制御実行条件が成立していると判定された場合には、機関回転数と機関負荷とをパラメータとして第1及び第2EGR弁12a、12bの共通の目標EGR開度を決定し、その目標EGR開度に応じた駆動電力を第1及び第2EGR弁12a、12bに印加する。
【0054】
その際、ECU20は、内燃機関1の吸入空気量が所定の目標吸入空気量となるように第1及び第2EGR弁12a、12bの開度をフィードバック制御する。前記した目標吸入空気量は、内燃機関1の各気筒において燃焼に供される混合気の空燃比が目標空燃比となるように定められる空気量であり、目標EGR弁開度と同様に機関負荷と機関回転数をパラメータとして決定される。その際、機関負荷と機関回転数と目標吸入空気量との関係を予めマップ化しておき、そのマップとアクセル開度と機関回転数とから目標吸入空気量が算出されるようにしてもよい。
【0055】
内燃機関1の実際の吸入空気量が目標吸入空気量より少ない場合は、ECU20は、第1及び第2EGR弁12a、12bを所定量閉弁させる。この場合、第1及び第2EGR通路11a、11bから第1及び第2の吸気枝管2a、2bへ流入するEGRガス量が減少し、それに応じて内燃機関1の各気筒内へ吸入されるEGRガス量が減少することになる。その結果、内燃機関1の気筒内に吸入される空気の量は、EGRガスが減少した分だけ増加する。
【0056】
一方、内燃機関1の実際の吸入空気量が目標吸入空気量より多い場合は、ECU20は、第1及び第2EGR弁12a、12bを所定量開弁させる。この場合、第1及び第2EGR通路11a、11bから第1及び第2の吸気枝管2a、2bへ流入するEGRガス量が増加し、それに応じて内燃機関1の各気筒内に吸入されるEGRガス量が増加する。この結果、内燃機関1の気筒内に吸入される空気の量は、EGRガスが増加した分だけ減少することになる。
【0057】
ところで、第1及び第2のパティキュレートフィルタ9a、9bの実際の使用過程では、内燃機関1の第1バンク1aの気筒から排出される排気の性状と第2バンク1bの気筒から排出される排気の性状とは必ずしも一致するとは限らない。これは、混合気の燃焼状態が各気筒毎に異なる場合があり、そのような場合には第1バンク1aから第1の排気枝管7aへ排出される排気の性状と第2バンク1bから第2の排気枝管7bへ排出される排気の性状とが異なることになるからである。
【0058】
このように第1バンク1aの気筒から第1の排気枝管7aへ排出される排気の性状と第2バンク1bの気筒から第2の排気枝管7bへ排出される排気の性状とが異なると、第1のパティキュレートフィルタ9aと第2のパティキュレートフィルタ9bとの間でPMの捕集量や捕集状態が異なることが想定される。
【0059】
第1のパティキュレートフィルタ9aと第2のパティキュレートフィルタ9bとの間でPMの捕集量や捕集状態が異なると、第1のパティキュレートフィルタ9aによる排気の圧力損失と第2のパティキュレートフィルタ9bによる排気の圧力損失とが異なるようになる。
【0060】
第1のパティキュレートフィルタ9aによる排気の圧力損失と第2のパティキュレートフィルタ9bによる排気の圧力損失とが異なる場合には、第1のパティキュレートフィルタ9aより上流の第1の排気枝管7aにおける排気圧力と第2のパティキュレートフィルタ9bより上流の第2の排気枝管7bにおける排気圧力とが異なるようになる。
【0061】
この結果、第1EGR通路11aの上流側端部(第1EGR通路11aと第1の排気枝管7aとの接続部)と下流側端部(第1EGR通路11aと第1の吸気枝管2aとの接続部)の圧力差と、第2EGR通路11bの上流側端部(第2EGR通路11bと第2の排気枝管7bとの接続部)と下流側端部(第2EGR通路11bと第2の吸気枝管2bとの接続部)の圧力差とは、異なる圧力差となる。 その際、第1EGR弁12aと第2EGR弁12bとが同一の開度に制御されていると、第1EGR通路11aにより還流されるEGRガス量と第2EGR通路11bにより還流されるEGRガス量とが異なるようになり、内燃機関1の各気筒に対して所望量のEGRガスを供給することが困難となる。
【0062】
特に、本実施の形態に係る内燃機関1のようにバンク毎に吸気枝管が独立している場合には、第1バンク1aの各気筒へ供給されるEGRガス量と第2バンク1bの各気筒へ供給されるEGRガス量とが異なるようになり、その結果、少なくとも一方のバンクにおける燃焼安定性や排気エミッションが悪化してしまう虞がある。
【0063】
本実施の形態に係る内燃機関1のように、エアフローメータ5の出力信号に基づいて第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bの開度がフィードバック制御される場合には、内燃機関1の全ての気筒へ供給されるEGRガスの総量は目標EGRガス量に収束させることができるものの、第1バンク1aと第2バンク1bの何れか一方のバンクの各気筒へ供給されるEGRガス量が過剰に多くなると共に他方のバンクの各気筒へ供給されるEGRガス量が過剰に少なくなる虞がある。
【0064】
そこで、本実施の形態におけるEGR制御では、ECU20は、第1のパティキュレートフィルタ9aの圧力損失(第1のフィルタ前後差圧)と第2のパティキュレートフィルタ9bの圧力損失(第2のフィルタ前後差圧)とに基づいて、第1EGR弁12aと第2EGR弁12bとの開度を個別に制御するようにした。
【0065】
具体的には、ECU20は、EGR制御が実行されているときに、第1差圧センサ10aの出力信号(第1のフィルタ前後差圧)と第2差圧センサ10bの出力信号(第2のフィルタ前後差圧)とを入力し、それら第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧とを比較する。
【0066】
第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧とが異なっている場合には、ECU20は、フィルタ前後差圧が高いバンクのEGR弁の開度を閉弁側に補正、又は、フィルタ前後差圧が低いバンクのEGR弁の開度を開弁側に補正する。
【0067】
その際の補正量は、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差をパラメータとして決定されるようにしてもよく、或いは、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差に加え内燃機関1の運転状態(例えば、機関負荷、アクセル開度、機関回転数など)をパラメータとして決定されるようにしてもよい。
【0068】
尚、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差が少ない場合には、第1EGR通路11aを流れるEGRガス量と第2EGR通路11bを流れるEGRガス量との間に差が生じるものの、各EGR通路によって還流されたEGRガスが各バンクの各気筒へ分配された際には第1バンク1aの各気筒へ供給されたEGRガス量と第2バンク1bの各気筒へ供給されたEGRガス量との差が殆ど無くなるため、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差が少ない場合には、第1EGR弁12aおよびまたは第2EGR弁12bの開度を積極的に補正する必要はないと言える。
【0069】
従って、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差が所定量未満である場合には第1EGR弁12aおよびまたは第2EGR弁12bの開度を補正せず、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差が所定量以上である場合には第1EGR弁12aおよびまたは第2EGR弁12bの開度を補正するようにしてもよい。
【0070】
尚、前記した所定量は、内燃機関1の燃焼安定性や排気エミッションを悪化させない範囲内で定められることが好ましく、内燃機関1が如何なる運転状態にあるときも適合可能な固定値であってもよく、或いは内燃機関1の運転状態に応じて変更される可変値であってもよい。
【0071】
また、第1差圧センサ10a及び第2差圧センサ10bの出力信号値は、第1のパティキュレートフィルタ9a及び第2のパティキュレートフィルタ9bの詰まり以外の要因、例えば、排気脈動等の一時的且つ変則的な変化に起因して一時的に変化する場合がある。そのような場合に、第1差圧センサ10a及び第2差圧センサ10bの出力信号値に基づいてEGR弁の開度が補正されると、EGRガス量が不必要に増加或いは減少されてしまうことが想定される。
【0072】
このため、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧をある程度平滑化した上で、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との差を算出するようにすることが好ましい。
【0073】
第1のフィルタ前後差圧及び第2のフィルタ前後差圧を平滑化する方法としては、第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧を同一の条件下で一定時間計測し、その一定時間内に計測された第1のフィルタ前後差圧と第2のフィルタ前後差圧との各々の平均値を求める方法を例示することができる。
【0074】
このように、本実施の形態におけるEGR制御では、第1のフィルタ前後差圧の平均値と第2のフィルタ前後差圧の平均値とに基づいて、第1EGR弁12aと第2EGR弁12bとの開度を個別に制御することにより、内燃機関1の全ての気筒に対して所望量のEGRを均等に供給することが可能となる。
【0075】
次に、本実施の形態におけるEGR制御について図2に沿って具体的に説明する。
図2は、EGR制御ルーチンを示すフローチャート図である。このEGR制御ルーチンは、予めROMに記憶されているルーチンであり、ECU20によって所定時間毎に繰り返し実行されるルーチンである。
【0076】
EGR制御ルーチンでは、ECU20は、先ずS201において、クランクポジションセンサ13、水温センサ14の出力信号(冷却水温度)、及びアクセルポジションセンサ15の出力信号(アクセル開度)等の各種データの入力処理を実行する。
【0077】
S202では、ECU20は、クランクポジションセンサ13の出力信号に基づいて機関回転数を算出し、その機関回転数とアクセル開度とから機関負荷を演算する。
【0078】
S203では、ECU20は、前記S201で入力された冷却水温度及びアクセル開度と、前記S202で演算された機関負荷とをパラメータとして、EGR制御実行条件が成立しているか否かを判別する。すなわち、ECU20は、冷却水温度が所定温度以上である、内燃機関1の運転状態が高負荷運転領域にない、内燃機関1の運転状態が減速運転領域にない等の条件が成立しているか否かを判別する。
【0079】
前記S203においてEGR制御実行条件が成立していないと判定された場合は、ECU20は、S218へ進み、第1EGR通路11a及び第2EGR通路11bを遮断すべく第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bを全閉に制御して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0080】
前記S203においてEGR制御実行条件が成立していると判定された場合は、ECU20は、S204へ進み、ECU20は、機関回転数と機関負荷とをパラメータとして第1及び第2EGR弁12a、12bの共通の目標EGR開度を演算する。その際、機関回転数と機関負荷と目標EGR開度との関係を予めマップ化してROMに記憶しておくようにしてもよい。
【0081】
S205では、ECU20は、第1のフィルタ前後差圧及び第2のフィルタ前後差圧の測定を開始する。すなわち、ECU20は、第1差圧センサ10a及び第2差圧センサ10bの出力信号の入力処理を開始する。
【0082】
S206では、ECU20は、計時カウンタ:Cを起動させる。この計時カウンタ:Cは、第1のフィルタ前後差圧及び第2のフィルタ前後差圧の測定が開始された時点からの経過時間を計測するカウンタである。
【0083】
S207では、ECU20は、計時カウンタ:Cにより計測された時間(第1のフィルタ前後差圧及び第2のフィルタ前後差圧の測定が開始された時点からの経過時間):Cが所定時間以上であるか否かを判別する。
【0084】
前記S207において計時カウンタ:Cにより計測された時間:Cが所定時間未満であると判定された場合は、ECU20は、計時カウンタ:Cにより計測された時間:Cが所定時間判以上となるまで前記S207の処理を繰り返し実行する。
【0085】
前記S207において計時カウンタ:Cにより計測された時間:Cが所定時間以上であると判定された場合は、ECU20は、S208へ進み、第1のフィルタ前後差圧及び第2のフィルタ前後差圧の測定を終了する。
【0086】
S209では、ECU20は、前記所定時間内に測定された第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1を算出するとともに、前記所定時間内に測定された第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2を算出する。
【0087】
S210では、ECU20は、前記S209で算出された第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1と第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2との差の絶対値:△P(=|△P1−△P2|)を演算する。
【0088】
S211では、ECU20は、第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1と第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2との差の絶対値:△Pが所定値:Pb以上であるか否かを判別する。
【0089】
前記S211において第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1と第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2との差の絶対値:△Pが所定値:Pb未満であると判定された場合は、ECU20は、S217へ進み、前記S204で算出された目標EGR開度:Seを第1EGR弁12aの目標EGR開度:Se1及び第2EGR弁12bの目標EGR開度:Se2として設定する。
【0090】
続いて、ECU20は、S216へ進み、前記S217において設定された目標EGR開度:Se1に従って第1EGR弁12aを制御するとともに、前記S217において設定された目標EGR開度:Se2に従って第2EGR弁12bを制御する。
【0091】
この場合、第1EGR弁12aの開度と第2EGR弁12bの開度が同一の開度となるが、第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1と第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2とが略同一の値となるため、第1EGR通路11aにより第1バンク1aの各気筒へ供給されるEGRガス量と第2EGR通路11bにより第2バンク1bの各気筒へ供給されるEGRガス量とは略同量となる。
【0092】
また、前記S211において第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1と第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2との差の絶対値:△Pが所定値:Pb以上であると判定された場合は、ECU20は、S212へ進み、第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1と第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2との差の絶対値:△Pをパラメータとして目標EGR開度の補正量:△EGRを算出する。
【0093】
その際、前記△Pと前記△EGRとの関係を予め実験的に求めておき、それらの関係をマップ化してROMなどに記憶しておくことが好ましい。また、前記△Pと内燃機関1の運転状態とをパラメータとして目標EGR開度の補正量:△EGRを決定する場合には、△Pと内燃機関1の運転状態と△EGRとの関係を予め実験的に求めておき、それらの関係をマップ化してROMなどに記憶しておくようにしてもよい。
【0094】
S213では、ECU20は、第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1が第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2より大きいか否かを判別する。
【0095】
前記S213において第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1が第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2より大きいと判定された場合には、ECU20は、S214へ進み、前記S204で算出された目標EGR開度:Seから前記S212において算出された補正量:△EGRを減算して得られる開度(=Se−△EGR)を第1EGR弁12aの目標EGR開度:Se1として設定し、前記S204で算出された目標EGR開度:Seを第2EGR弁12bの目標EGR開度:Se2として設定する。
【0096】
続いて、ECU20は、S216へ進み、前記S214において設定された目標EGR開度:Se1に従って第1EGR弁12aを制御するとともに、前記S214において設定された目標EGR開度:Se2に従って第2EGR弁12bを制御する。
【0097】
この場合、第1EGR弁12aの開度は第2EGR弁12bの開度に比して小さくなるが、第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1が第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2より大きいため、第1EGR通路11aにより第1バンク1aの各気筒へ供給されるEGRガス量と第2EGR通路11bにより第2バンク1bの各気筒へ供給されるEGRガス量とは略同量となる。
【0098】
また、前記S213において第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1が第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2より小さいと判定された場合には、ECU20は、S215へ進み、前記S204で算出された目標EGR開度:Seを第1EGR弁12aの目標EGR開度:Se1として設定し、前記S204で算出された目標EGR開度:Seから前記S212において算出された補正量:△EGRを減算して得られる開度(=Se−△EGR)を第2EGR弁12bの目標EGR開度:Se2として設定する。
【0099】
続いて、ECU20は、S216へ進み、前記S215において設定された目標EGR開度:Se1に従って第1EGR弁12aを制御するとともに、前記S214において設定された目標EGR開度:Se2に従って第2EGR弁12bを制御する。
【0100】
この場合、第2EGR弁12bの開度は第1EGR弁12aの開度に比して小さくなるが、第2のフィルタ前後差圧の平均値:P2が第1のフィルタ前後差圧の平均値:P1より大きいため、第1EGR通路11aにより第1バンク1aの各気筒へ供給されるEGRガス量と第2EGR通路11bにより第2バンク1bの各気筒へ供給されるEGRガス量とは略同量となる。
【0101】
以上述べたようにECU20がEGR制御ルーチンを実行することにより、第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bの各々は、第1のパティキュレートフィルタ9a及び第2のパティキュレートフィルタ9bの各々の圧力損失に応じて個別に制御されることとなり、本発明に係る制御手段が実現されることになる。
【0102】
従って、本実施の形態における多気筒内燃機関の排気浄化装置によれば、第1のパティキュレートフィルタ9aの圧力損失と第2のパティキュレートフィルタ9bの圧力損失とが異なる場合であっても、第1EGR通路11aにより第1バンク1aの各気筒へ供給されるEGRガス量と第2EGR通路11bにより第2バンク1bの各気筒へ供給されるEGRガス量とを略同量にすることが可能となる。
【0103】
この結果、内燃機関1の各気筒に対して所望量のEGRガス量を供給することが可能となり、以て内燃機関1に対して好適なEGR制御を実現することが可能となる。
【0104】
尚、本実施の形態におけるV型内燃機関では、各バンクのEGR弁を個別に制御することにより各バンクの気筒へ供給されるEGRガス量を調節する例について述べたが、図3に示すように、第1バンク1aの第1の吸気枝管2aと第2バンク1bの第2の吸気枝管2bとの各々に吸気絞り弁6a、6b及び吸気絞り用アクチュエータ60a、60bが独立して設けられている場合には、第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bに加え、吸気絞り弁6a、6bを個別に制御することによって各バンク1a、1bのEGRガス量を調節するようにしてもよい。
【0105】
また、本実施の形態では、パティキュレートフィルタの圧力損失を検出する手段として差圧センサを用いたが、前述した図3の説明で述べたように、第1バンク1aの第1の吸気枝管2aと第2バンク1bの第2の吸気枝管2bとの各々に吸気絞り弁6a、6b及び吸気絞り用アクチュエータ60a、60bが独立して設けられている場合には、第1バンク1aの吸気絞り弁6aを全開とし且つ第2バンク1bの吸気絞り弁6bを全閉としたときのエアフローメータ5の出力信号値に基づいて第1のパティキュレートフィルタ9aの圧力損失を演算するとともに、第1バンク1aの吸気絞り弁6aを全閉とし且つ第2バンク1bの吸気絞り弁6bを全開としたときのエアフローメータ5の出力信号値に基づいて第2のパティキュレートフィルタ9bの圧力損失を演算するようにしてもよい。
【0106】
<実施の形態2>
次に、本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置の第2の実施態様について図4〜図5に基づいて説明する。ここでは前述した第1の実施の形態と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0107】
図4は、本実施の形態における内燃機関とその吸排気系の概略構成を示す図である。
前述した第1の実施の形態と本実施の形態との差異は、本実施の形態に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置では、第1EGR通路11aの途中に該第1EGR通路11a内を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ16が設けられている点にある。
【0108】
これに対応して、本実施の形態に係るEGR制御では、水温センサ14の出力信号値(冷却水温度)が低い場合や機関負荷が低い場合は、第2EGR弁12bの開度に比して第1EGR弁12aの開度が小さくされ、或いは第1EGR弁12aが全閉とされることにより、主に第2EGR通路11bによって還流されるEGRガス、言い換えれば、EGRクーラ16によって冷却されていないEGRガスが内燃機関1へ供給されるようにする。
【0109】
これは、EGRクーラ16によって冷却されたEGRガスは低温で密度の高いガスとなるため、冷却水温度が低い場合や機関負荷が低い場合にEGRクーラ16によって冷却されたEGRガスが内燃機関1へ供給されると、各気筒の圧縮端温度(圧縮行程上死点近傍における気筒内の温度)が過剰に低下し、燃料が着火及び燃焼し難くなる虞があるからである。
【0110】
尚、冷却水温度や機関負荷がある程度高い場合は、前述した第1の実施の形態と同様に第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bが制御され、第1EGR通路11a及び第2EGR通路11bの双方を利用して内燃機関1へEGRガスが供給されるものとする。
【0111】
以下、本実施の形態におけるEGR制御について図5に沿って説明する。
図5は、本実施の形態におけるEGR制御ルーチンを示すフローチャート図である。
【0112】
EGR制御ルーチンでは、ECU20は、先ずS501において、クランクポジションセンサ13、水温センサ14の出力信号(冷却水温度)、及びアクセルポジションセンサ15の出力信号(アクセル開度)等の各種データの入力処理を実行する。
【0113】
S502では、ECU20は、クランクポジションセンサ13の出力信号に基づいて機関回転数を算出し、その機関回転数とアクセル開度とから機関負荷を演算する。
【0114】
S503では、ECU20は、前記S501で入力された冷却水温度及びアクセル開度と、前記S502で演算された機関負荷とをパラメータとして、EGR制御実行条件が成立しているか否かを判別する。
【0115】
前記S503においてEGR制御実行条件が成立していないと判定された場合は、ECU20は、S520へ進み、第1EGR弁12a及び第2EGR弁12bを全閉に制御して、本ルーチンの実行を一旦終了する。
【0116】
前記S503においてEGR制御実行条件が成立していると判定された場合は、ECU20は、S504へ進み、前記S501で入力された冷却水温度が所定温度:T以上であるか否かを判別する。
【0117】
前記S503において前記冷却水温度が所定温度:T以上であると判定された場合は、ECU20は、S505へ進み、前記S502で算出された機関負荷が所定負荷:L以上であるか否かを判別する。
【0118】
前記S503において前記冷却水温度が所定温度:T未満であると判定された場合、又は、前記S505において前記機関負荷が所定負荷:L未満であると判定された場合は、ECU20は、S521へ進む。
【0119】
S521では、ECU20は、先ず、第1EGR弁12aの目標EGR開度:Se1を全閉に設定する。次いで、ECU20は、単一のEGR通路(この場合は第2EGR通路11b)によって内燃機関1へEGRガスを供給するための目標EGR開度:Sesを算出し、その目標EGR開度:Sesを第2EGR弁12bの目標EGR開度:Se2として設定する。
【0120】
前記した目標EGR開度:Sesは、内燃機関1の機関回転数や機関負荷をパラメータとして決定される開度であるため、機関回転数と機関負荷と目標EGR開度:Sesとの関係を予め実験的に求めておき、それらの関係をマップ化してROM等に記憶しておくようにしてもよい。
【0121】
ECU20は、上記したS521の処理を実行し終えると、S518へ進み、前記S521において設定された第1EGR弁12aの目標EGR開度:Se1及び第2EGR弁12bの目標EGR開度:Se2に従って、第1EGR弁12aと第2EGR弁12bとを制御する。
【0122】
この場合、第1EGR弁12aが閉弁されるとともに第2EGR弁12bが開弁されるため、第1EGR通路11aが遮断され且つ第2EGR通路11bが導通することになる。
【0123】
この結果、第2EGR通路11bのみによって内燃機関1へEGRガスが供給されることになるため、EGRクーラ16により冷却されたEGRガスが内燃機関1へ供給されることがなく、以て内燃機関1の燃焼状態が悪化するようなことがない。
【0124】
ここで図5のEGR制御ルーチンに戻り、前記したS505において前記機関負荷が所定負荷:L以上であると判定された場合には、ECU20は、S506へ進むことになる。尚、S506〜S519の処理は、前述した第1の実施の形態におけるEGR制御ルーチンのS204〜S217の処理と同一であるため、説明を省略する。
【0125】
以上述べたようにECU20がEGR制御ルーチンを実行することにより、EGRクーラを備えた内燃機関において、前述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることが可能となる上、EGRクーラに起因した燃焼安定性の低下を防止することも可能となるため、内燃機関1に対して好適なEGR制御を実現することが可能となる。
【0126】
尚、前述した第1及び第2の実施の形態では、本発明に係る内燃機関として、V型の内燃機関を例に挙げて説明したが、直列型の多気筒内燃機関の気筒を二つ以上の気筒群に分割し、各気筒群毎に排気通路を独立させるとともに、それら排気通路の各々にパティキュレートフィルタとEGR機構とを備えた内燃機関であってもよい。このような内燃機関としては、例えば、図6に示すように、直列型の6気筒内燃機関30の気筒を3気筒毎に二つの気筒群に分割し、それら二つの気筒群の各々に排気通路31a、31bを接続するとともに、各排気通路31a、31b毎に、パティキュレートフィルタ32a、32bと、EGR通路34a、34bと、EGR弁35a、35bと、を備えたものを例示することができる。
【0127】
【発明の効果】
本発明に係る多気筒内燃機関の排気浄化装置によれば、内燃機関に複数の排気通路が接続され、各排気通路毎に捕集機構とEGR通路とEGR弁とが配置された内燃機関の排気浄化装置において、各捕集機構の圧力損失に応じて各EGR弁の開度が制御されるため、各EGR通路により還流されるEGRガス量を略同量とすることが可能となる。
【0128】
この結果、内燃機関の各気筒に対して所望量のEGRガスを供給することが容易になり、以て内燃機関に対して好適なEGR制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態における内燃機関の概略構成を示す図
【図2】 第1の実施の形態におけるEGR制御ルーチンを示すフローチャート図
【図3】 本発明を適用可能な内燃機関の他の実施態様を示す図(1)
【図4】 第2の実施の形態における内燃機関の概略構成を示す図
【図5】 第2の実施の形態におけるEGR制御ルーチンを示すフローチャート図
【図6】 本発明を適用可能な内燃機関の他の実施態様を示す図(2)
【符号の説明】
1・・・・内燃機関
2a・・・第1の吸気枝管
2b・・・第2の吸気枝管
7a・・・第1の排気枝管
7b・・・第2の排気枝管
9a・・・第1のパティキュレートフィルタ
9b・・・第2のパティキュレートフィルタ
10a・・第1差圧センサ
10b・・第2差圧センサ
11a・・第1EGR通路
11b・・第2EGR通路
12a・・第1EGR弁
12b・・第2EGR弁
20・・・ECU

Claims (4)

  1. 内燃機関に接続された複数の排気通路と、
    前記各排気通路毎に設けられ、排気中の微粒子を捕集する捕集機構と、
    前記各捕集機構による排気の圧力損失を検出する検出手段と、
    前記各排気通路における前記捕集機構より上流の部位から前記内燃機関の吸気通路へ排気の一部を還流させるEGR通路と、
    前記各EGR通路毎に設けられ、前記各EGR通路を流れる排気流量を調整するEGR弁と、
    前記検出手段により検出された前記各捕集機構の圧力損失を比較し、その比較結果に応じて前記各EGR弁の開度を個別に制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする多気筒内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記制御手段は、前記捕集機構の使用過程において少なくとも一の捕集機構の圧力損失が他の捕集機構に比して多くなった場合に、圧力損失が多くなった捕集機構が設けられた排気通路について、他の排気通路に比してEGR弁の開度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記制御手段は、前記捕集機構の使用過程において少なくとも一の捕集機構の圧力損失が他の捕集機構に比して所定値以上多くなった場合に、圧力損失が多くなった捕集機構が設けられた排気通路について、他の排気通路に比してEGR弁の開度を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記制御手段は、所定期間内に各検出手段が検出した圧力損失の平均値に応じて前記各EGR弁の開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の多気筒内燃機関の排気浄化装置。
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