JP4106476B2 - 光学ガラスの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光学性能を劣化させる原因となる失透および脈理の形成を抑制した光学ガラスの製造方法、特に、光学系の色収差を補正するのに有用なフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光学ガラスの製造にあたっては、先ず、粉末状の複数種類のガラス原料を所望の割合に秤量し、秤量した粉末を十分に混合して調合原料とする。次に、この調合原料を、例えば800〜1300℃に加熱された電気炉中の白金坩堝に投入して、これを融解清澄後、撹拌して均質化したガラス融液を得る。次に、このガラス融液を予め加熱された鉄製等の成形型に鋳込み、徐冷して光学ガラスを製造している。
【0003】
ところで、ガラス原料に揮発性の高いガラス組成成分が含まれる場合、ガラス融液の表面からこの高揮発性のガラス組成成分が優先的に揮発する。その結果、ガラス融液の表面付近(表面層)の組成が、ガラス融液の内部の奥深い部分の組成とは異なってしまう。このため、ガラス融液の組成に不均質分布が生じる。この不均質分布は、ガラス融液を徐冷してガラス化した場合はもとより、ガラス融液を急冷してガラス化した場合においても生じる。
【0004】
一方、成形型に鋳込んだガラス融液を大気中で冷却する際には、大気に接しているガラス融液の表面付近と、ガラス融液の内部の奥深い部分との間に温度差が生じる。このため、ガラス融液の粘性が低い程ガラス融液中に対流が生じる。不均一分布が生じたガラス融液で対流が生じると、ガラス融液の内部の奥深い部分とは組成が異なっているガラス融液の表面層が、ガラス融液の内部の奥深い部分に引き込まれる。その結果、ガラス融液を冷却して固化させて得られたガラスの内部に、対流模様の組成の不均質分布(以下、脈理と称する)が形成されてしまう。特に、ガラス融液の粘性が低い場合は、ガラス融液の対流が激しくなる。その結果、脈理が形成される部分が増加する。
【0005】
そこで、従来、高揮発性あるいは低粘性なガラス組成成分を含むガラス原料を用いて光学ガラスを製造するにあたり、脈理の形成を抑制するための方法が研究されおよび開発されている。例えば、鋳込み温度をガラス融液に結晶が析出しない温度範囲内で低温にすることによってガラス融液の粘性を高めて対流を生じ難くさせ、以って脈理の形成を抑制する方法が開発されている。この鋳込み温度は通常、ガラス融液が成形型に流し込むのに適した粘性(103 〜104 dPa・s)となる温度に設定されている。この方法によってガラス融液の対流が抑制されて、対流がガラス融液の表面付近のみにとどまるようにすれば、ガラス融液の表面付近の組成がガラス融液内部へ引き込まれる深さが浅くなる。その結果、脈理の形成を抑制することができる。そして、従来は、製造されたガラスの内、ガラス融液の表面層の引き込みが及ばない領域であって、脈理が形成されていない部分を良品として切り出してブロック材としていた。そして、このブロック材を研磨および加工してレンズ、プリズムその他の光学部品を提供していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
揮発性の高いガラス組成成分が含まれるガラス原料から製造され、かつ、ガラス融液の粘性が低い光学ガラスとして、フッ化物リン酸塩光学ガラスが知られている。フッ化物リン酸塩光学ガラスは、光学設計上魅力的な光学恒数(例えば低い分散能)を持ち、光学系の色収差を補正するのに有用な光学ガラスである。
【0007】
しかしながら、ガラス原料に高揮発性の成分を含みかつ低粘性のガラス融液から製造される光学ガラスの中でも、既存組成のフッ化物リン酸塩ガラスはとりわけ、その製造途中の冷却時にガラス融液中に結晶が析出し易く、そのため失透に対する安定性(耐失透性)が低い。その上、フッ化物リン酸塩ガラスを得るためのガラス融液は、温度に対する粘性変化が小さい。このため、フッ化物リン酸塩光学ガラスを製造するためのガラス融液は、対流を抑制できる高い粘性が得られる鋳込み温度よりも高い温度で、結晶が析出して失透しまう。例えば、従来の製造方法では、フッ化物リン酸塩ガラスのガラス融液は、成形型に鋳込まれる前に既に融解槽で失透してしまうこともある。
【0008】
一方、失透を回避するために鋳込み温度を高くしたのでは、ガラス融液の粘性が低くなり、前述の様に対流が生じて脈理が形成されてしまう。このため、従来の製造方法では、良質のフッ化物リン酸塩光学ガラスの量産および実用化が困難であった。
【0009】
従って、高揮発性、低粘性かつ耐失透性が低いガラス組成成分から成る光学ガラスを製造するにあたり、製造途中において失透と脈理の形成とをできるだけ抑制し得る製造方法の実現が望まれていた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
既に説明した通り、従来より、脈利の形成を抑制するあたっては、ガラス融液を鋳込む際の温度を下げて粘性を高くして、以ってガラス融液中の対流を抑制することが考えられてきた。そのためには、ガラス融液において結晶が析出する温度が低く、耐失透性の高いガラス組成を開発することが考えられてきた。しかし、この発明に係る発明者らは、鋭意研究した結果、従来のガラス組成の開発とは異なる見地で、光学ガラスの失透および脈利の形成を共に抑制する方法を見出した。
本発明に係るフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法は、メタリン酸塩及びフッ化物をガラス原料とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法であって、前記原料にSiO 2 を添加する工程と、前記SiO 2 が添加されたガラス原料を加熱融解してガラス融液とする工程と、前記ガラス融液からSiF 4 を揮発させ、前記ガラス融液中のSiを実質的に除去する工程と、Siが実質的に除去された前記ガラス融液を冷却してガラス化する工程とを有し、前記ガラス原料に添加されるSiO2の添加量が、前記ガラス原料に対する重量比(以下wt%)で、0.1wt%以上4.0wt%以下であることを特徴とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法である。
また本発明に係るフッ化物リン酸塩光学ガラスの別の製造方法は、メタリン酸塩及びフッ化物をガラス原料とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法であって、前記原料にH 3 BO 3 を添加する工程と、前記H 3 BO 3 が添加されたガラス原料を加熱融解してガラス融液とする工程と、前記ガラス融液からBF 3 を揮発させ、前記ガラス融液中のBを実質的に除去する工程と、Bが実質的に除去された前記ガラス融液を冷却してガラス化する工程とを有し、前記ガラス原料に添加されるH 3 BO 3 の添加量が、前記ガラス原料に対する重量比(以下wt%)で、B 2 3 に換算して0.1wt%以上3.5wt%以下であることを特徴とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法である。
【0011】
そして、この発明のフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法によれば、メタ燐酸塩及びフッ化物を含むガラス原料を溶融してガラス融液を得、当該ガラス液を冷却してフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造するにあたり、
ガラス融液においてフッ化物を酸化する酸化剤として働くと共に、フッ素と化合して揮発性の物質を生成する添加物を、ガラス原料に添加しておくことによって、ガラス融液を冷却する際に、このガラス融液の表面に、このガラス融液の組成成分の揮発防止のための皮膜が形成される
【0012】
この皮膜は、ガラス原料に含まれるフッ化物を添加物によって酸化して生成された酸化物である。従って、この皮膜の組成は、ガラス融液の組成とは異なる。そして、この皮膜は、ガラス融液が冷却されて凝固するのに先立ち、ガラス表面に形成される。例えば、成形型にガラス融液を鋳込む際に、ガラス融液の温度は、白金坩堝中のガラス融液の温度よりも大幅に低下する。そして、成形型中のガラス融液の、大気に接触する表面には、冷却されてこの皮膜が形成される。
【0013】
この皮膜を形成することによって脈理の形成が抑制できる理由は次のように考えられる。すなわち、ガラス融液の表面に皮膜を形成することにより、ガラス融液の表面からの当該ガラス融液の組成成分の揮発を抑制できる。その結果、ガラス融液の中の高揮発性の組成成分が優先的に揮発することも抑制することができる。このため、ガラス融液の表面層の組成成分とガラス融液の内部の奥深い部分との組成成分との不均一分布の発生を抑制することができる。ガラス融液中で組成成分の不均一分布がなければ、ガラス融液を冷却する際にガラス融液中に対流が生じても、脈理の形成を抑制することができると推考される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この出願に係る発明のフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法の実施の形態につき詳細に説明するが、この発明はこれに限られるものではない。
【0015】
先ず、添加物の例としてSiO2 を用いる場合について説明する。
【0016】
この発明においては、ガラス融液においてフッ化物を酸化する酸化剤として働き、かつ、フッ素と化合して揮発性の物質を生成する添加物としてSiO2を用いることが望ましい。添加物としてSiO2を添加すると、成形型に鋳込まれたガラス融液の表面にSiO2によって酸化された酸化物の皮膜が形成される。例えば、ガラス原料に、揮発性の高いAlF3が含まれる場合は、ガラス融液の表面は、固体AlOXY(XおよびYはそれぞれ組成比を表し、0<Xおよび0<Yを満たす値)を含む酸化物の皮膜で覆われる。その結果、ガラス融液の表面からのガラス融液の組成成分の揮発が遮断されるので、ガラス融液の表面層とガラス融液の内部の奥深い部分との間に組成物の不均質分布は生じない。従って、ガラス融液の粘性が低く対流が生じても、ガラス融液内部に対流模様の脈理が生じることはない。
【0017】
次に、ガラス原料に添加されたSiO2 の働きについて説明する。SiO2 はガラス中に酸素を導入するために添加される。SiO2 はガラス化反応中に、フッ化物原料と反応する。
【0018】
SiO2 はガラス化反応中に、下記の(1)式の反応式に示す様に、フッ化物を酸化する酸化剤として働き、かつ、フッ素と化合して揮発性の物質を生成する。
【0019】
フッ化物+SiO2 →酸化物+SiF4 ↑・・・(1)
すなわち、フッ化物原料中の一部のフッ素は酸素に置換されて酸化物が生じる。その結果、ガラス融液に酸素が導入される。一方、SiO2 は、フッ素と化合して揮発性の物質SiF4 を生成する。このSiF4 は、融解時に揮発防止のための皮膜が形成されるのに先立って揮発してしまうのでガラス融液には残留しない。そのため、製造されたフッ化物リン酸塩光学ガラスの光学恒数等に多大な影響は与えない。
【0020】
この様にしてフッ化物原料のフッ素を置換して導入される酸素は、酸化物原料として導入される酸素とは異なり、他の元素と自由に結合しやすいため、ガラス融液中で様々な酸化物を作り出すと推量される。すなわち、SiO2 は強力な酸素化剤として添加されるものである。
【0021】
また、成形型にガラス融液を鋳込むと、ガラス融液の温度は白金坩堝中のガラス溶液の温度よりも大幅に低下する。そして、添加物によって酸化されて生成した酸化物は、成形型に鋳込まれたガラス融液の表面において大気と接触して、揮発することなく結晶化し、鋳込まれたガラス融液の表面に揮発防止のための皮膜が形成される。そして、この揮発防止のための皮膜によってガラス融液の表面からのガラス融液の組成成分の揮発が遮断されると推量される。
【0022】
次に、下記の表1に、添加物としてのSiO2 の重量比と得られたガラスの質(脈理および失透の有無)との関係を示す。尚、表1中では、失透および脈理が生じたと認められる場合をそれぞれ「×」印で表し、一方、実用上差し支えない程度にしか失透および脈理が生じなかったと認められる場合をそれぞれ「○」印で示す。
【0023】
先ず、SiO2 を添加しない場合(添加量が0wt%の場合)および添加量がガラス原料に対する重量比で0.1wt%未満の場合には、失透はしないが、酸化物の皮膜が十分に形成されなかった。このため、得られたガラス中に脈理が生じ易くなる。これは、SiO2 の添加量が0.1wt%未満の場合には、ガラス融液に導入される酸素が少ないためと考えられる。
【0024】
次に、SiO2 の添加量がガラス原料に対する重量比で0.1wt%以上4.0wt%以下の場合には、失透することなく、酸化物の皮膜が形成された。このため、得られたガラス中の脈理の発生を抑制することができる
次に、SiO2 の添加量がガラス原料に対する重量比で4.0wt%よりも多い場合には、脈理は生じないが、失透し易くなった。これは、ガラス融液に導入される酸素量が多すぎるため、フッ化物リン酸塩光学ガラスの耐失透性が損なわれるためと考えられる。
【0025】
従って、表1に示す実験結果から、添加物としてのSiO2 の添加量は、ガラス原料に対する重量比で、0.1wt%以上4.0wt%以下であることが望ましいことが理解できる。
【0026】
【表1】
Figure 0004106476
【0027】
次に、添加物として、(B23 を生成する)H3 BO3 を用いる場合について説明する。
【0028】
この発明においては、ガラス融液中でSiO2 のかわりにB23 を用いても、同様にガラス化反応中にフッ化物原料と反応するので、酸化剤としての効果が期待できる。しかし、B23 は、反応性が高く不安定な物質であるため、保存することが困難である。このため、ガラス原料としてH3 BO3 を用い、このH3 BO3 がガラス融液においてB23 を生成するという性質を利用する。
【0029】
ガラス融液において生成されたB23 は、下記の(2)式の反応式に示す様に、フッ化物を酸化する酸化剤として働き、かつ、フッ素と化合して揮発性の物質を生成する。
【0030】
フッ化物+B23 →酸化物+BF3 ↑・・・(2)
すなわち、フッ化物原料中の一部のフッ素が酸素に置換されて酸化物が生じる。その結果、ガラス融液に酸素が導入される。一方、B23 は、フッ素と化合して揮発性の物質BF3 を生成する。このBF3 は、融解時に揮発防止のための皮膜が形成されるのに先立って揮発してしまうのでガラス融液には残留しない。そのため、BF3 は、製造されたフッ化物リン酸塩光学ガラスの光学恒数等に多大な影響は与えない。
【0031】
この様にしてフッ化物原料のフッ素を置換して導入される酸素は、既存組成のガラス原料において酸化物として導入される酸素とは異なり、他の元素と自由に結合しやすく、ガラス融液中で様々な酸化物を作り出すと推量される。すなわち、B23 は強力な酸化剤として添加されるものである。
【0032】
また、成形型にガラス融液を鋳込むと、ガラス融液の温度は白金坩堝中のガラス溶液の温度よりも大幅に低下する。そして、添加物により酸化されて生じた酸化物は、ガラス融液を成形型に鋳込む際にガラス融液の表面において大気と接触して冷却されるので、揮発することなく結晶化する。その結果、鋳込まれたガラス融液の表面に揮発防止のための皮膜が形成される。そして、この皮膜によってガラス融液の表面からの組成成分の揮発が遮断されると推量される。
【0033】
次に、下記の表2に、添加物としてのB23 の重量比と得られたガラスの質(脈理および失透の有無)との関係を示す。尚、表2中では、失透および脈理が生じたと認められる場合をそれぞれ「×」印で表し、一方、実用上差し支えない程度にしか失透および脈理が生じなかったと認められる場合をそれぞれ「○」印で示す。
【0034】
先ず、H3 BO3 を添加しない場合(添加量が0wt%の場合)および添加物としてのH3 BO3 の添加量が、B23 に換算したガラス原料に対する重量比で、0.1wt%未満の場合には、失透はしないが、酸化物の皮膜が十分に形成されなかった。このため、得られたガラス中に脈理が生じ易くなる。これは、B23 に換算した添加量が、ガラス原料に対する重量比で0.1wt%未満の場合には、ガラス融液に導入される酸素が少ないためであると考えられる。
【0035】
次に、B23 に換算した添加量がガラス原料に対する重量比で0.1wt%以上3.5wt%以下の場合には、失透することなく、酸化物の皮膜が形成された。このため、得られたガラス中の脈理の発生を抑制することができる
次に、B23 に換算した添加量がガラス原料に対する重量比で3.5wt%よりも多い場合には、脈理は生じないが、失透し易くなった。これは、ガラス融液に導入される酸素量が多すぎるため、フッ化物リン酸塩光学ガラスの耐失透性が損なわれるためと考えられる。
【0036】
表2に示す実験結果から、B23 に換算したH3 BO3 の添加量は、ガラス原料に対する重量比で0.1wt%以上3.0wt%以下であることが望ましいことが理解できる。
【0037】
【表2】
Figure 0004106476
【0038】
【実施例】
以下、この出願に係る発明のフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法の実施例につき詳細に説明するが、この発明はこれに限られるものではない。尚、下記の比較例および各実施例におけるガラス原料および添加物を図1の表にまとめて示す。尚、図1中の添加物の重量比は、その添加物を除くガラス原料に対する重量比で示す。
【0039】
[比較例]
この発明の説明に先立ち、この発明の理解を容易にするため従来の製造方法によるフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法について比較例として説明する。
【0040】
比較例では、従来の製造方法によりフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造し、脈理の測定を行った。
【0041】
比較例では、ガラス原料を以下の重量比(wt%)で、100kgの秤量調合を行った。メタリン酸塩として、Al(PO33 :26.10,フッ化物としてMgF2 :5.10,BaF2 :14.40,AlF3 :12.40,CaF2 :16.10,SrF2 :25.90を使用した。この組成はガラス組成データブック1991年版(日本硝子製品工業会)によった。尚、このガラス原料は、蒸気圧が高く、揮発が顕著で製造が困難であったAlF3 を含有している。
【0042】
この比較例では、ガラス原料として、メタリン酸塩、フッ化物および酸化物を用いている。メタリン酸塩は、製造された光学ガラスにおいて、ガラス構造の骨格を構成するガラス形成酸化物のP25 の材料となる。また、フッ化物(例えば、アルカリ土類金属フッ化物、アルカリ金属フッ化物、希土類フッ化物、AlF3 )は、この骨格の修飾部分の材料となる。尚、ガラス原料としては、従来、メタリン酸およびフッ化物に加えて酸化物(例えば、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物、希土類酸化物、Al23 )を用いることもある。その場合、酸化物もガラス構造の骨格の修飾部分の材料となる。
【0043】
比較例における光学ガラスの製造にあたっては、先ず、粉末状の複数種類のガラス原料を所望の割合に秤量し、秤量した粉末を十分に混合して調合原料とする。次に、この調合原料を、1100℃に加熱された電気炉中の白金坩堝に投入して、これを融解清澄後、撹拌して均質化したガラス融液を得る。次に、このガラス融液を800℃の鋳込み温度まで冷却した。この鋳込み温度は失透が生じる温度よりも十分に高い温度である。次に、予め加熱された鉄製の70×70×30mmの成形型に鋳込み、徐冷してブロック材の光学ガラスを製造した。
【0044】
ところで、フッ化物リン酸塩光学ガラスのガラス原料に含まれるフッ化物は、一般に揮発性が高く、さらにイオン結合性が強い。このため、フッ化物リン酸塩光学ガラスを得るためのガラス融液の結合力は、共有結合性の強い通常の酸化物ガラスのガラス融液のものよりも弱くなる。その結果、揮発性の高い成分をガラス融液に拘束する力も通常のガラス融液より弱い。
【0045】
特に、AlF3 は、フッ化物原料の中でもきわめて蒸気圧の高い化合物である。このため、AlF3 を含む場合は、ガラス融液を成形型に鋳込んでから冷却している間におけるガラス融液の表面からのAlF3 の揮発は、他のフッ化物原料よりも顕著である。そのため、従来の技術においては、ガラス融液が冷却固化するまでの間に相当量のAlF3 がガラス融液の表面から揮発してしまう。
【0046】
次に、この様にして製造されたブロック材の脈理の測定を、日本光学ガラス工業会規格11の光学ガラスの脈理の測定方法に従って行った。具体的には、先ず、ブロック材の中央部から50×50×20mmの大きさの測定用試料を切り出す。次に、50×20mmの両面をそれぞれ平行に研磨する。そして、測定試料の研磨面を目視により標準試料と比較して脈理の測定を行う。
【0047】
その結果、測定試料の全体にわたって脈理が多く観察された。この脈理は標準試料に比較しても多く、測定試料は4級であった。従って、従来の製造方法で製造したこのブロック材からは良品を得ることができなかった。
【0048】
[実施例1]
実施例1では、比較例と同一組成のガラス原料に、SiO2 をガラス原料に対して1.3wt%の重量比で添加してフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造した後、この光学ガラスの脈理の測定を行った。融解温度および鋳込み温度も同一とし、それぞれ1100℃および800℃とした。そして、ガラス融液と比較例と同様の70×70×30mmの成形型に鋳込み、冷却してブロック材を製造した。
【0049】
このとき、比較例では見られなかった、ガラス融液の表面の皮膜の形成が観察された。この表面の皮膜は、その厚さが高々数100μmの薄いものである。
【0050】
この様にして製造されたブロック材の脈理を比較例と同様に次の方法で測定した。脈理の測定は、日本光学ガラス工業会規格11の光学ガラスの脈理の測定方法に従って行った。具体的には、ブロック材の中央部から50×50×20mmの大きさの測定用試料を切り出す。次に、50×20mmの両面をそれぞれ平行に研磨する。そして、測定試料の研磨面を目視により標準試料と比較して脈理の測定を行う。
【0051】
その結果、測定試料には脈理が認められず、1級であった。従って、この発明の製造方法によれば、フッ化物リン酸塩光学ガラスを、失透および脈理の形成を共に抑制して製造することができた。
【0052】
[実施例2]
実施例2では、比較例と同一組成のガラス原料に、ガラス原料に対する重量比が1.3wt%のB23 に相当する量のH3 BO3 を添加してフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造した。
【0053】
実施例2では、融解温度および鋳込み温度も実施例1の場合と同一とし、それぞれ1100℃および800℃とした。そして、ガラス融液を比較例と同様の70×70×30mmの成形型に鋳込み、冷却してブロック材を製造した。
【0054】
そして、実施例2においても、ガラス融液の冷却時に、比較例では見られなかった、ガラス融液の表面の皮膜の形成が観察された。
【0055】
この様にして製造されたブロック材の脈理を実施例1における測定と同一の方法で測定した。その結果、測定試料には脈理が認められず、1級であった。従って、この発明の製造方法によれば、フッ化物リン酸塩光学ガラスを、失透および脈理の形成を共に抑制して製造することができた。
【0056】
[実施例3]
実施例3では、ガラス原料を以下の重量比(wt%)で、100kgの秤量調合を行った。メタリン酸塩として、Al(PO33 :5.0,フッ化物としてMgF2 :6.0,BaF2 :10.0,AlF3 :30.0,CaF2 :32.0,SrF2 :9.0,LiF:8.0を使用した。この組成は、特公昭58−14378号公報に記載されたものと同じである。そして、この実施例では、この組成のガラス原料に、SiO2 をガラス原料に対して4.0wt%の割合で添加したものを用いてフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造した。
【0057】
光学ガラスの製造にあたっては、先ず、ガラス原料および添加物の粉末を十分に混合した。次に、この混合物を1000℃に加熱された電気炉中の白金坩堝に投入して、これを融解清澄後、攪拌して均質化したガラス融液を得た。次に、このガラス融液を鋳込み温度800℃まで冷却した。この鋳込み温度は、失透が生じる温度よりも十分に高い温度である。その後、このガラス融液を予め加熱された鉄製の70×70×30mmの成形型に鋳込み、徐冷して、ブロック材を製造した。
【0058】
この様にして製造されたブロック材の脈理を実施例1における測定と同一の方法で測定した。その結果、測定試料には脈理が認められず、1級であった。従って、この発明の製造方法によれば、フッ化物リン酸塩光学ガラスを、失透および脈理の形成を共に抑制して製造することができた。
【0059】
[実施例4]
実施例4では、ガラス原料を以下の重量比(wt%)で、100kgの秤量調合を行った。メタリン酸塩として、NaPO3 :15.35,フッ化物としてMgF2 :12.50,BaF2 :33.41,AlF3 :21.90,CaF2 :14.87,LaF3 :1.97を使用した。この組成は、特公昭32−7430号公報に記載されたものと同じである。そして、この実施例では、この組成のガラス原料に、SiO2 をガラス原料に対して0.5wt%の割合で添加したものを用いてフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造した。
【0060】
光学ガラスの製造にあたっては、先ず、ガラス原料および添加物の粉末を十分に混合した。次に、この混合物を1000℃に加熱された電気炉中の白金坩堝に投入して、これを融解清澄後、攪拌して均質化したガラス融液を得た。次に、このガラス融液を鋳込み温度800℃まで冷却した。この鋳込温度は、ガラス融液に失透が生じる温度よりも十分に高い温度である。その後、このガラス融液を予め加熱された鉄製の70×70×30mmの成形型に鋳込み、徐冷して、ブロック材を製造した。
【0061】
この様にして製造されたブロック材の脈理を実施例1における測定と同一の方法で測定した。その結果、測定試料には脈理が認められず、1級であった。従って、この発明の製造方法によれば、フッ化物リン酸塩光学ガラスを、失透および脈理の形成を共に抑制して製造することができた。
【0062】
上述した各実施例では、これらの発明を、特定の材料を使用し、特定の条件で形成した例についてのみ説明したが、これらの発明は多くの変更および変形を行うことができる。例えば、上述した実施例では、ガラス原料の組成を特定の値としたが、この発明では、ガラス原料の組成は、図1の表に示す値に限定されるものではない。
【0063】
また、上述の実施例では、ガラスの溶融温度を1100℃または1000℃、鋳込時の温度を800℃としたが、この鋳込み温度は、失透が生じる温度よりも高い温度ならば800℃には限定されない。
【0064】
【発明の効果】
この発明のフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法によれば、ガラス融液においてフッ化物を酸化する酸化剤として働き、かつ、フッ素と化合して揮発性の物質を生成する添加物をガラス原料に添加しておく。その結果、フッ化物が酸化されて生じた酸化物は、成型時にガラス融液の表面において大気と接触し、ガラス融液の表面で結晶化する。このため、鋳込まれたガラス融液の表面に皮膜が形成される。ガラス融液の表面に皮膜が形成された状態でガラス融液を冷却することによって、ガラス融液の表面からの組成成分の揮発を抑制することができる。揮発が抑制されることにより、ガラス融液の表面層とガラス融液の内部の奥深い部分との間に組成の不均一分布が発生することを抑制することができる。このため、冷却時にガラス融液中に対流が発生しても脈理の発生を抑制することができる。
【0065】
従って、この発明によれば、ガラス融液の粘性を高くしてガラス融液の対流を抑制する必要がない。このため、結晶析出の恐れのある低温度領域にまでガラス融液の鋳込み温度を下げる必要がない。その結果、失透および脈理の形成を共に抑制してフッ化物リン酸塩光学ガラスを製造することができる。従って、フッ化物リン酸塩光学ガラスの安定量産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】比較例および各実施例におけるガラス原料および添加物の組成を示す表である。

Claims (2)

  1. メタリン酸塩及びフッ化物をガラス原料とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法であって、
    前記原料にSiO2を添加する工程と、前記SiO2が添加されたガラス原料を加熱融解してガラス融液とする工程と、前記ガラス融液からSiF4を揮発させ、前記ガラス融液中のSiを実質的に除去する工程と、Siが実質的に除去された前記ガラス融液を冷却してガラス化する工程とを有し、
    前記ガラス原料に添加されるSiO 2 の添加量が、前記ガラス原料に対する重量比(以下wt%)で、0.1wt%以上4.0wt%以下であることを特徴とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法。
  2. メタリン酸塩及びフッ化物をガラス原料とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法であって、
    前記原料にH3BO3を添加する工程と、前記H3BO3が添加されたガラス原料を加熱融解してガラス融液とする工程と、前記ガラス融液からBF3を揮発させ、前記ガラス融液中のBを実質的に除去する工程と、Bが実質的に除去された前記ガラス融液を冷却してガラス化する工程とを有し、
    前記ガラス原料に添加されるH 3 BO 3 の添加量が、前記ガラス原料に対する重量比(以下wt%)で、B 2 3 に換算して0.1wt%以上3.5wt%以下であることを特徴とするフッ化物リン酸塩光学ガラスの製造方法。
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