JP4106108B2 - 光輝性顔料含有塗料組成物および複合塗膜形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術】
本発明は、熱硬化性塗料とりわけ自動車用上塗り塗料として好適に用いうる、着色アルミニウムとアルミナフレークとを含有する光輝性顔料含有塗料組成物、その光輝性顔料含有塗料組成物を用いた複合塗膜の形成方法およびその複合塗膜を有する物品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に自動車用の上塗り塗料として、金属粉および/または雲母等の光輝性顔料を含有する、いわゆるメタリック塗料と呼ばれる光輝性顔料含有塗料が知られている。このような光輝性顔料の中でも、アルミニウム粉あるいは金属酸化物を被覆したマイカ粉を含有したメタリック塗料は、見る角度により反射光量が変化し(以下「フリップフロップ性」という)、高い意匠性を有している。
【0003】
しかし、フリップフロップ性を向上させることは、ハイライト位置での光輝感向上には繋がるが、シェード位置から見た場合には、黒みを帯びたように見え、シェード位置での光輝感を低下させることにつながる。一方、そのシェード位置からの黒みを向上させるために(明度を高めるために)、カラー感覚をもたせると、光輝感も彩度も低下させることに他ならず、明度および彩度が高い色彩領域でのフリップフロップ性の向上を目的とした塗色設計は、制限をうけていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、明度および彩度が高い色彩領域で、今までにない強い光輝感を有し、更に、高いフリップフロップ性を有する上に、シェード位置から見た場合でも、ハイライトの位置から見るような高い明度および彩度を維持した意匠性の高い複合塗膜を形成することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、着色アルミニウムとアルミナフレークとを含有した光輝性顔料含有塗料組成物を、2コート1ベーク工程の塗膜形成方法により複合塗膜化することで上記課題を解決できることを解明した。
【0006】
すなわち、本発明は、[1]光輝性顔料として、着色アルミニウムとアルミナフレークとを含有する光輝性顔料含有塗料組成物。;
[2]下塗りされた基材上に2コート1ベークで複合塗膜を形成する方法において、第1層を請求項1記載の光輝性顔料含有塗料組成物により形成し、第2層としてクリヤー塗膜を形成することを特徴とする請求項1記載の複合塗膜の形成方法。;
[3]上記の方法により形成された複合塗膜。;ならびに
[4]上記複合塗膜を有する物品。
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物で用いる着色アルミニウム顔料は、アルミニウム顔料の表面に着色顔料を含有した樹脂被膜を形成したものであれば、特に制限はないが、例えば特開平1−315470号公報に記載されている着色メタリック顔料中のりん片状着色アルミニウム顔料が好適に使用できる。
【0008】
すなわち、りん片状アルミニウム顔料の表面に、(1)1個以上の二重結合と2個以上のカルボキシル基とを同一分子中に有する熱重合カルボン酸を介して着色顔料を化学吸着させたもの、あるいは、上記(1)で化学吸着させたものを更に、(2)ラジカル重合性不飽和カルボン酸およびラジカル重合性二重結合を3個以上有するモノマーを重合してなる樹脂によって被覆したもの等が挙げられる。
【0009】
また、上記熱重合カルボン酸としては、例えば、アマニ油脂肪酸または大豆油脂肪酸を熱重合した熱重合カルボン酸、アマニ油脂肪酸または大豆油脂肪酸とアクリル酸とを熱重合した熱重合カルボン酸等が用いられる。熱重合カルボン酸の使用量は、使用するアルミニウム顔料の表面積と使用する着色顔料の量により異なるが、1m2/gのアルミニウム顔料100重量部に対して0.2〜15重量部、特に1〜7重量部が好ましい。
【0010】
具体的には、例えば有機溶剤に上記熱重合カルボン酸あるいは樹脂を、揮発性溶剤に溶解した溶液中に、アルミニウム顔料および着色顔料を混合分散させ、この混合物を噴霧乾燥させてアルミニウム顔料の表面に着色顔料を含有した樹脂被膜を形成させるか、あるいは、二重結合を有するモノマーが可溶で、このモノマーを重合した樹脂が不溶となる有機溶剤中に、上記モノマー、アルミニウム顔料および着色顔料を添加混合した後、これに重合開始剤を加えて、上記モノマーを重合させアルミニウム顔料の表面に着色顔料を含有する樹脂層を形成させて作られるものである。
【0011】
また、アルミニウム顔料を着色するための着色顔料は、その製造時に使用する有機溶剤に溶解しないものであれば、有機顔料、無機顔料の何れでもよく、特に制限されない。
【0012】
本発明で用いられる着色アルミニウムは、表面が平滑で乱反射の少ないりん片状のものが望ましく、粒度は着色アルミニウム顔料の用途によって異なるが、平均粒径1〜100μm、好ましくは2〜60μm、平均厚さ0.1〜5μm、好ましくは0.2〜40μmのものを用いることができる。
【0013】
また、粉砕時にオレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を添加したアルミニウム顔料は、各アルミニウム粒子が脂肪酸に被覆され、表面が酸化しておらず、更に、熱重合カルボン酸と粉砕時に使用した脂肪酸とが置換して、アルミニウムに化学吸着されるので好適である。
【0014】
本発明で用いる着色アルミニウムは、任意の色に着色することができるうえ、金属的光輝感に優れている。また、上記(1)の着色アルミニウムをさらにラジカル重合性不飽和カルボン酸およびラジカル重合性二重結合を3個以上有するモノマーよりなるポリマーによって被覆した着色アルミニウム(2)を、自動車用の上塗り塗料組成物へ用いた場合には、意匠性のみならず、耐水性、耐薬品性に優れ、特に好適である。
【0015】
具体的には、昭和アルミパウダー株式会社より販売されている、「フレンドカラーF500(商品名)」等のフレンドカラーシリーズ、あるいはビーエーエスエフ、コーポレーション(BASF)より販売されている、「パリオクロームゴールドL-2020(商品名)」等が、特に金属的光輝性色感に優れている。
【0016】
上記着色アルミニウムの光輝性顔料含有塗料組成物における含有量(PWC%)は、0.01%〜15.0%であり、上限を越えると塗膜外観が低下し、下限を下回ると着色感および光輝感が低下する。好ましくは、0.1%〜14.0%であり、より好ましくは、1%〜13.0%である。
【0017】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物に用いるアルミナフレークは、特に制限はないが、例えば特開平9−77512号公報に記載されている薄片状酸価アルミニウム顔料が好適に使用できる。
【0018】
すなわち、酸化アルミニウム(Al2O3)を二酸化チタン等の金属酸化物により被覆したもので、平均粒度が3〜60μm、好ましくは5〜30μm、厚みが0.1〜0.8μm、好ましくは0.2〜0.4μmのものである。また、表面平滑性が高く、粒度分布がシャープであるため微粒子による散乱が少ない。
【0019】
更に、アスペクト比(粒子径/厚み)が20以上の薄片状酸価アルミニウムの表面を金属酸化物で被覆しているため、パール感(真珠光沢)を有する顔料となり、塗膜化した場合に、ハイライトおよびシェードの位置から共に従来のマイカ粉では得られなかった強い輝きを有する塗膜が得られ、見栄えとしては透明感があり、立体的な印象を表現できる。
【0020】
上記のアルミナフレークとしては、例えば、メルク・ジャパン(株)より販売されている、「SDA−SILVER W−3(商品名)」等のSDAシリーズが、挙げられる。
【0021】
これらは、金属酸化物(Al2O3、TiO2、SnO2、ZrO2、Fe2O3等)の種・量を変化させることで、シルバー色からカッパー色、シエンナ色干渉色までカバーでき、本発明の複合塗膜形成方法に用いることで、より輝度が高く、太陽光などの強い光を当てると、特に強いキラキラ感を有する塗色を有する塗膜を提供できる。
【0022】
アルミナフレークの光輝性顔料含有塗料組成物における含有量(PWC%)は、0.01%〜15.0%であり、上限を越えると塗膜外観が低下し、下限を下回ると光輝感が低下する。好ましくは、0.1%〜14.0%であり、より好ましくは、1%〜13.0%である。
【0023】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物で使用される着色アルミニウムおよびアルミナフレークは、互いに併用されることで効果を発揮することができる。また、上記の着色アルミニウムとアルミナフレーク顔料とを併用した光輝性顔料含有塗膜層と、クリヤー塗膜層とを組合わせ複合塗膜化することで、今までにない新規な意匠性を有する複合塗膜を得ることができる。
【0024】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物に用いる着色アルミニウムおよびアルミナフレークの総含有量(PWC%)は、0.01%〜20.0%であり、上限を越えると塗膜外観が低下し、下限を下回ると光輝感が低下する。好ましくは、0.1%〜17.0%であり、より好ましくは、1%〜14.0%である。
【0025】
また、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物において、アルミナフレークの配合内量比を高く設定することで光輝感を強めることが可能で、ハイライトおよびシェードの位置から共に従来のマイカ粉では得られなかったような強い輝きと透明感を有する塗膜を提供できる。更に、着色アルミニウムを併用することで、シェード位置から見た場合にも高彩度のカラー感覚をもたせるという新規な意匠性を有する塗膜を得ることができる。
【0026】
塗色によっては、他の光輝性顔料を併用することもできる。併用できる他の光輝性顔料としては、アルミニウム粉あるいは二酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物を被覆したマイカ粉が一般的であるが、その他光輝性を有する偏平顔料を使用しても良い。また、有機・無機の着色顔料あるいは体質顔料等を併用して用いることができる。
【0027】
このような、その他の顔料を併用する場合の塗料中の全顔料濃度(PWC%)としては、0.1〜80%であり、好ましくは、0.5%〜70%であり、より好ましくは、1.0%〜60%である。上限を越えると塗膜外観が低下する。
【0028】
本発明の塗料組成物は、熱硬化性被膜形成性樹脂を含んでいる。この樹脂は、光輝性顔料、その他の顔料および添加剤を分散し、硬化塗膜を形成するものであり、特に限定されるものではない。一般には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等からなる群から選ばれた少なくともひとつの水酸基を有する熱硬化性被膜形成性樹脂が使用でき、これらはアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いる。耐候性、顔料分散性あるいは塗装作業性の点から、水酸基を有するアクリル樹脂とアミノ樹脂とを組合わせることが好ましい。
【0029】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物中の熱硬化性被膜形成性樹脂と硬化剤との重量組成比は、90/10〜10/90であり、好ましくは80/20〜50/50である。上限を越えると硬化性が低下し、下限を下回ると固く脆い塗膜となる。
【0030】
また、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物は、粘性制御剤を含んで良い。粘性制御剤は、ムラのない塗膜を良好に形成するために用いられるのである。粘性制御剤としては、一般に”タレ止め剤”としてチクソトロピー性を示すものを使用できる。このようなものとして例えば、ポリアマイド系、ポリエチレン系、有機ベントナイト系のものがあり、この他に極性基の相互作用を利用する非架橋あるいは架橋型の樹脂あるいは粒子を粘性制御剤として挙げることができる。
【0031】
本発明において、粘性制御剤は一種のみで使用することも可能であるが、併用することも可能である。
但し、塗膜化した場合に光沢、発色性に影響を及ぼさないものが好ましく、上述した粘性制御剤の中でも架橋性樹脂粒子が特に好ましい。
【0032】
このような架橋性樹脂粒子としては、例えば特開昭58−129066に記載されたものが好ましく、本発明の塗料組成物に用いられる有機溶剤に不溶で、平均粒子径が0.02〜0.5μmの架橋性樹脂粒子がよい。上限を越えると安定性が低下する。
【0033】
上記の架橋性樹脂粒子は、両イオン性基を分子内に有する単量体を多価アルコール成分のひとつとして合成した、アルキド樹脂あるいはポリエステル樹脂等の乳化能を有する樹脂と、重合開始剤との存在下に、水性媒体中でエチレン性不飽和モノマーを乳化重合させることにより得られるものが好ましい。
【0034】
上記の両イオン性基を分子内に有する単量体としては、−N(+)−R−COO(-)または−N(+)−R−SO3(-)として表され、二つ以上のヒドロキシル基を有するものを用いることができる。このような単量体としては、ヒドロキシル基含有アミノスルホン酸型両性イオン化合物が樹脂合成上好ましい。具体的には、ビスヒドロキシエチルタウリン等が挙げられる。
【0035】
上記の単量体を用いて合成された乳化能を有する両イオン性基を分子内に有する樹脂としては、酸価が30〜150mgKOH/g、好ましくは40〜150mgKOH/g、数平均分子量が500〜5000、好ましくは700〜3000のポリエステル樹脂を使用するのが良い。上限を越えると、樹脂のハンドリング性が低下し、下限を下回ると塗膜にした場合に乳化能を有する樹脂が脱離したり、耐溶剤性が低下したりする。
【0036】
また架橋性樹脂粒子の合成で、乳化重合されるエチレン性不飽和モノマーは、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーである。このような分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーは、全単量体中の0.1〜10重量%の範囲で含有させることが好ましい。この量は、微粒子重合体が溶剤に溶解しないだけの充分な架橋が与えられる程度に選択される。
【0037】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物で用いる架橋性樹脂粒子は、一般にエマルジョン樹脂に含有され、塗膜化したときに性能を低下させるような低分子乳化剤あるいは保護コロイドを含まず、しかも分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマーを共重合することにより架橋されているので、塗膜の耐水性、耐溶剤性および光沢等が優れている。
【0038】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物に用いる粘性制御剤の添加量は、塗料組成物の樹脂固形分100重量部に対して0.01〜15重量部であり、好ましくは0.1〜12重量部、より好ましくは0.2〜9重量部の量で添加される。粘性制御剤の添加量が、15重量部を越えると、外観が低下し、0.01重量部を下回ると粘性制御効果が得られず、層間でなじみや反転をおこす原因となる。
【0039】
また更に、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物中には、必要により硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面調製剤等を用いることができる。
【0040】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物の全固形分含有量は、10〜70重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。上限および下限を越えると塗料安定性が低下する。塗布時には、10〜60重量%であり、好ましくは15〜50重量%である。上限を越えると、粘性が高すぎて塗膜外観が低下し、下限を下回ると粘性が低すぎてなじみやムラ等の外観不良が発生する。
【0041】
本発明の塗料組成物の製造方法は、特に限定されず、顔料等の配合物をニーダーまたはロール等を用いて混練、分散する等の当業者に周知の全ての方法を用い得る。
【0042】
本発明の塗料組成物は、いかなる基材、例えば木、金属、ガラス、布、プラスチック、発泡体等、特にプラスチックおよび金属表面、例えばスチール、アルミニウム、これらの合金および鋳造物に有利に用い得るが、カチオン電着塗装可能な金属製品に特に好適に使用できる。
【0043】
上記金属製品としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等およびこれらの金属を含む合金が挙げられる。具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体および部品が挙げられる。これらの金属は予めリン酸塩、クロム酸塩等で化成処理されたものが特に好ましい。
【0044】
一般に、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物による塗装時の塗膜の膜厚は所望の用途により変化するが、多くの場合5〜40μmが有用であり、より好ましくは10〜25μm程度である。上限を越えると、塗装時にムラあるいは流れ等の不具合が起こることがあり、下限を下回ると、下地が隠蔽できず膜切れが発生する。
【0045】
基材への塗装後、塗膜を硬化させるが、硬化は100〜180℃、好ましくは120〜160℃で高い架橋度の硬化塗膜を得られる。上限を越えると、塗膜が固く脆くなり、下限以下では硬化が充分でない。硬化時間は硬化温度により変化するが、120℃〜160℃で10〜30分の硬化が適当である。
【0046】
本発明における光輝性顔料含有塗料組成物は、一般には溶液型のものが好ましく用いられ、溶液型であれば有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型のいずれでもよい。
【0047】
上記光輝性顔料含有塗料を水性型塗料で用いる場合には、光輝性顔料含有塗料組成物のバインダーとして、米国特許第5,151,125号および同5,183,504号等に具体的に説明されている熱硬化性被膜形成性樹脂が用い得る。特に米国特許第5,183,504号記載のアクリルアミド基、水酸基および酸基を有するアクリル樹脂とメラミン樹脂とを組み合わせた熱硬化性被膜形成性樹脂は仕上がり、外観性能の点で良好である。
【0048】
本発明の光輝性顔料含有塗料組成物を自動車車体に塗装する場合には、化成処理された鋼板に、下塗りとして電着塗膜、および硬化または未硬化の中塗り塗膜を形成した基材上に、静電塗装、エアースプレー等の塗装方法で行われることが好ましい。光輝感のムラを抑制するためには、1ステージよりも2ステージで塗装することがより好ましい。
【0049】
更に、未硬化の本発明の光輝性顔料含有塗膜の上にウエット オン ウエットでクリヤー塗料を塗布し、その後に両方の塗膜を硬化させる2コート1ベーク塗装方法が意匠性の点から好ましい。
【0050】
上記光輝性顔料含有塗料を水性型塗料で用いる場合には、良好な仕上がり塗膜を得るために、クリアー塗料を塗装する前に予め光輝性顔料含有塗膜を60〜100℃で2〜10分間加熱しておくことが望ましい。
【0051】
本発明の複合塗膜形成方法に用いられる基材上に塗布され下塗り層を形成する電着塗料としては、カチオン型及びアニオン型を使用できるが、カチオン型電着塗料組成物が防食性において優れた複合塗膜を与える。カチオン型電着塗料組成物は、塩基性アミノ基をもつ樹脂をベースにし、酸で中和する事により、水溶化する陰極析出型の熱硬化性電着塗料であり、これは被塗物を陰極にして塗装される。
【0052】
カチオン型電着塗料に用いられる、塩基性アミノ基をもつ樹脂としては、ビスフェノール型のエポキシ樹脂のエポキシ基に第2級アミン(例えば、ジエチレントリアミン等のケチミン化によって1級アミンを封鎖した第2級アミン)の付加した樹脂が好ましい。
【0053】
また、架橋剤としては、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ラクタム類等のブロック剤によって封止されたブロックポリイソシアネートを用いるのが好ましい。
【0054】
上記カチオン型電着塗料は、着色顔料、体質顔料、防錆顔料等の顔料、親水性及び/または疎水性の溶剤、添加剤等を必要に応じ含有する。顔料の配合量は樹脂固形分100重量部に対し5〜150重量部とすることができる。
【0055】
電着塗膜は、通常、焼付け後の膜厚が10〜40μmとなるように形成することが好ましく、より好ましくは15〜25μmとなるように形成する。また、電着塗装の前には通常の化成処理を行うことがより好ましい。
【0056】
本発明の複合塗膜形成方法において下塗り層を形成する中塗り塗料組成物は、下地欠陥を隠蔽し、上塗り塗装後の表面平滑性の確保と耐チッピング性を付与するためのもので、有機系、無機系の各種着色顔料および体質顔料を含む中塗り塗料を用いて塗装する。
【0057】
中塗り塗料の着色顔料としては、例えば有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料など、無機系の黄塩、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンなど、また、体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等が用いられる。標準的には、カーボンブラックと二酸化チタンを主要顔料としたグレー系中塗り塗料が多用されるが、上塗りの隠蔽性に応じて各種の着色顔料を組み合わせた、いわゆるカラー中塗り塗料を用いることもできる。
【0058】
中塗り塗料の熱硬化性被膜形成性樹脂としては、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の塗膜形成性樹脂が利用でき、これらはアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。顔料分散性あるいは作業性の点から、アルキド樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組合わせが好ましい。
【0059】
中塗り塗料中の固形分含有量は、30〜70重量%であり、好ましくは35〜55重量%である。塗布時には、10〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。中塗り塗料は、加熱硬化させたまたは未硬化の電着塗料塗膜上に、静電塗装、エアースプレー、エアレススプレー等の方法で塗装することが好ましく、形成される塗膜の乾燥膜厚は、一般に10〜60μm程度が好ましく、より好ましくは20〜50μm程度である。上限を越えると、塗装時にワキあるいはタレ等の不具合が起こることもあり、下限を下回ると、下地が隠蔽できない。
【0060】
中塗り塗膜自身は約100〜180℃の温度で加熱硬化させることができ、本発明では、光輝性顔料含有塗膜およびクリヤー塗膜と組合わせ複合塗膜を形成することで、優れた外観および塗膜性能を示すことができる。
【0061】
本発明で用いる中塗り塗料の形態としては、共に溶液型のものが好ましく用いられ、溶液型であれば有機溶剤型、水性(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型のいづれでもよい。また必要により、硬化触媒、表面調製剤等を用いることができる。
【0062】
本発明の複合塗膜形成方法で用いるクリヤー塗料としては、表面平滑性の確保とその他塗膜に要求される性能を付与するために形成されるもので、塗膜の透明感を損なわない程度に、着色顔料を含めても良い。
【0063】
クリヤー塗料の熱硬化性被膜形成性樹脂としては、特に限定されるものではなく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の塗膜形成性樹脂を利用することができ、これらはアミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。透明性あるいは耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組合わせ、あるいは酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0064】
クリヤー塗料中の固形分含有量は、20〜60重量%であり、好ましくは35〜55重量%である。塗布時の固形分含有量は、10〜50重量%であり、好ましくは20〜50重量%である。上記クリヤー塗料は、未硬化の光輝性顔料含有塗膜上に、静電塗装、エアースプレー等の方法で塗装することが好ましく、形成される塗膜の乾燥膜厚は、一般に10〜60μm程度が好ましく、より好ましくは20〜50μm程度である。上限を越えると、塗装時にワキあるいはタレ等の不具合が起こることもあり、下限を下回ると、下地の凹凸が隠蔽できない。
【0065】
クリヤー塗膜自身は約100〜180℃の温度で加熱硬化させることができるが、本発明では、クリヤー塗膜と、光輝性顔料含有塗膜、あるいはカラーベース塗膜と光輝性顔料含有塗膜とを組合わせ複合塗膜を形成し、加熱硬化することで、優れた外観および塗膜性能を示すことができる。
【0066】
尚、クリヤー塗料は、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物とウエット オン ウエットで塗装するため、粘性制御剤を含有することが好ましい。クリヤー塗料への粘性制御剤の添加量は、塗料組成物の樹脂固形分100重量部に対して0.01〜10重量部であり、好ましくは0.02〜8重量部、より好ましくは0.03〜6重量部の量で添加される。粘性制御剤の量が、10重量部を越えると、外観が低下し、0.1重量部を下回ると粘性制御効果が得られず、層間でなじみや反転をおこす原因となる。
【0067】
本発明の複合塗膜形成方法で用いるクリヤー塗料の塗料形態としては、溶液型のものが好ましく用いられ、溶液型であれば有機溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型のいづれでもよい。また必要により、硬化触媒、表面調製剤等を用いることができる。
【0068】
光輝性顔料含有塗膜を少なくとも一つの層として含有する複合塗膜としては、多くの場合30〜300μmである。好ましくは50〜250μmである。上限を越えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下し、下限を下回ると膜自体の強度が低下する。
【0069】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。なお部は、とくにことわらない限り、重量部を意味する。
【0070】
製造例
架橋性樹脂粒子の調製
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管、冷却管およびデカンターを備えた反応容器に、ビスヒドロキシエチルタウリン213部、ネオペンチルグリコール208部、無水フタル酸296部、アゼライン酸376部、及びキシレン30部を仕込み昇温した。反応により生成した水はキシレンと共沸させて除去した。還流開始より約3時間かけて反応液温を210℃とし、カルボン酸相当の酸価が135mgKOH/g(固形分)になるまで攪拌と脱水とを継続して反応させた。
【0071】
液温を140℃まで冷却した後、カージュラーE10(商品名;シェル社製のバーサティック酸グリシジルエステル)500部を30分で滴下し、その後、約2時間攪拌を継続して反応を終了した。固形分の酸価55mgKOH/g、ヒドロキシル価91mgKOH/g、および数平均分子量1250の両性イオン基含有ポリエステル樹脂を得た。
【0072】
この両性イオン含有ポリエステル樹脂10部、脱イオン水140部、ジメチルエタノールアミン1部、スチレン50部及びエチレングリコールジメタクリレート50部をステンレス製ビーカー中で激しく攪拌することによりモノマー懸濁液を調製した。また、アゾビスシアノ吉草酸0.5部、脱イオン水40部およびジメチルエタノールアミン0.32部を混合することにより開始剤水溶液を調製した。
【0073】
攪拌加熱装置、温度計、窒素導入管および冷却管を備えた反応容器に上記両性イオン基含有ポリエステル樹脂5部、脱イオン水280部およびジメチルエタノールアミン0.5部を仕込み、80℃に昇温した。ここに、モノマー懸濁液251部と開始剤水溶液40.82部とを同時に60分かけて滴下し、更に、60分反応を継続した後、反応を終了させた。
【0074】
動的光散乱法で測定した粒子径55nmを有する架橋性樹脂粒子エマルジョンを得た。この架橋性樹脂粒子エマルジョンにキシレンを加え、減圧下共沸蒸留により水を除去し、媒体をキシレンに置換して、固形分含有量20重量%の架橋性樹脂粒子のキシレン溶液を得た。
【0075】
実施例1
光輝性顔料含有塗料組成物の調製
予め、下記に示す配合中の熱硬化性アクリル樹脂の一部と着色顔料とを、ガラスビースを分散媒体とする卓上ディスパーで粒径が5μm以下になるまで分散し、顔料ペーストとして調製した。また、架橋性樹脂粒子を、樹脂と溶剤の混合液の攪拌中に徐々に添加し、溶液中に均一に分散させた。後に、顔料ペーストおよび残りの成分を順次、添加し、光輝性顔料含有塗料組成物を調製した。
【0076】
樹脂固形分/硬化剤固形分比=7/3
PWC=10.3%
架橋性樹脂粒子含有量(対樹脂固形分比)=2.0%
【0077】
外観評価用複合塗膜の形成方法
りん酸亜鉛処理した厚さ0.8mm、10cm×30cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料、パワートップU−50(商品名、日本ペイント社製)を乾燥膜厚が約20μmとなるように電着塗装し、160℃、30分間焼き付けた。次に得られた電着塗装塗膜上にグレー中塗り塗料、オルガTO−H850グレー(商品名、日本ペイント社製)を乾燥膜厚約30μmとなるようにスプレー塗装し、140℃、20分間焼き付け塗膜を作成した。
【0078】
得られたグレー中塗り塗膜上に、実施例1で調整した光輝性顔料含有塗料組成物を酢酸エチル/トルエン/ソルベッソ100/ソルベッソ150=20/50/20/10の希釈シンナーを使用し、No.4フォードカップを使って20℃で13秒に希釈、粘度調整したものを、乾燥膜厚約18μmとなるように静電塗装機(「Auto REA」,ランズバーグ・ゲマ社製)により霧化圧4kg/cm2で2ステージ塗装でスプレー塗装し、3分間セッティング放置した。
【0079】
次に、ウエット・オン・ウエット塗装で、下記に示した、オルガTO−563クリヤー(商品名)塗料をソルベッソ100/キシレン=60/40の希釈シンナーを使用し、No.4フォードカップで20秒に希釈したものを、乾燥膜厚が約30μmとなるように塗装し、約7分間のセッティングの後、140℃、20分間焼き付け、評価用塗板を作成し評価に供じた。
【0080】
複合塗膜の形成に使用したクリヤー塗料
「オルガTO−563クリヤー(商品名)」
日本ペイント(株)社製、アクリル樹脂・メラミン樹脂硬化型クリヤー塗料
樹脂固形分/硬化剤固形分比=65/35
PWC=0%
【0081】
塗膜外観評価
変角色差の測色データは、ミノルタCR−354変角色差計により測色した。
【0082】
意匠性評価基準
塗膜の仕上がりを評価できる10人により、太陽光が射し込む室内で、塗板の一部に太陽光を当てた状態で目視により評価を行い、光輝感(粒子がキラキラと輝いている感覚)と深み感(塗膜内部から光がきている様な感覚)について結果を、各々下記の基準で総合的にまとめた。
5;かなり優れている
4;優れている
3;普通の感覚
2;やや劣る
1;かなり劣る
【0083】
上記の項目についての評価結果を下記の表1に示す。
【0084】
実施例2〜3
着色アルミニウムおよびアルミナフレークの種類を下記の表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様の手順により、光輝性顔料含有塗料組成物を製造および外観評価用塗板を作成し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
比較例1〜5
着色アルミニウムの添加量あるいはアルミナフレークの代わりにマイカ粉を用いて表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様の手順により、光輝性顔料含有塗料組成物を製造および外観評価用塗板を作成し、評価を行った。その結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【発明の効果】
電着塗料と中塗り塗料とを下塗りした基材上に、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物による層を形成し、更にその上にクリヤー塗料層を形成する複合塗膜形成方法を採ることで、仕上がり外観などを低下させることなく、今までにない強い光輝感と新規で高意匠性の複合塗膜を形成することができる。
【0088】
従来、着色アルミニウム顔料と他の顔料(光輝性顔料を含む)を組合わせると、着色アルミニウム顔料に由来する有色光沢は、埋もれて目立たないものになっていた。しかし、本発明の光輝性顔料含有塗料組成物により形成した複合塗膜は有色光沢が顕著であり、明度および彩度の高い塗色を設定した場合にも、塗膜面の傾きの程度に応じた微妙な有色光沢の変化が認識でき、見る角度に応じて色調が多様に変化する。更に、光沢強度の弱いシェード位置では、着色アルミニウムに由来する有色光沢とアルミナフレーク顔料および/またはその他の着色顔料が相俟って現す光輝感と透明感が勝るようになる。
【0089】
そのため、例えば、広い面積の下側部分と上側部分とで見る角度が違い下側部分では光沢強度が高く、有色光沢が勝り、一方、上側部分では光沢強度が弱く、アルミナフレーク顔料および/またはその他の着色顔料が相俟って現す色が勝る状態が生じる。この場合、ひとつの塗膜面で異なる色調が同時に併存し、従来にない高い意匠効果を発現する。
Claims (5)
- 光輝性顔料として、
着色アルミニウム、と
金属酸化物によって被覆された酸化アルミニウムからなるアルミナフレークと、
を含有し、塗料組成物中における該着色アルミニウムおよびアルミナフレークの総含有量(PWC%)は0.01%〜20.0%である、光輝性顔料含有フリップフロップ性塗料組成物。 - 更に、架橋性樹脂粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の光輝性顔料含有フリップフロップ性塗料組成物。
- 下塗りされた基材上に2コート1ベークで複合塗膜を形成する方法において、第1層を請求項1記載の光輝性顔料含有フリップフロップ性塗料組成物により形成し、第2層としてクリヤー塗膜を形成することを特徴とする複合塗膜の形成方法。
- 請求項3記載の複合塗膜形成方法により形成された複合塗膜。
- 請求項4記載の複合塗膜を有する物品。
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