JP4104865B2 - アリル官能性モノマー含有重合性組成物 - Google Patents
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Description
発明の開示
本発明は、第1および第2アリル官能性モノマーを含有する重合性組成物に関する。特に、本発明は、アリル基を少なくとも2個有する第1アリル官能性モノマーであって、この第1アリル官能性モノマーの実質上完全に硬化した重合物が、少なくとも40の15秒バーコル934硬度を示すように選択されるもの、およびポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)、ポリラクロンジオールビス(アリルカーボネート)、およびこれらの混合物から選択される第2アリル官能性モノマーから成る重合性組成物に関する。本発明は、前記重合性組成物から調製される重合物、およびこの重合物から調製されるフォトクロミック物品にも関する。
【0002】
ポリオール(アリルカーボネート)モノマー(例えば、エチレングリコールビス(アリルカーボネート))やポリ(アリルエステル)モノマー(例えば、ジアリルイソフタレート)などのアリル官能性モノマーをベースとする重合性有機組成物、およびこれから生成される重合物は、当該分野では周知である。ポリオール(アリルカーボネート)モノマーなどのアリル官能性モノマーの重合物は、優れた透明性、硬度および良好な可撓性を有し、その例として、眼科用レンズ、サングラス、および自動車および航空機用の透明体などを包含する。
【0003】
近年、フォトクロミックプラスチック材料、特に光学用途のためのプラスチック材料は、かなり注目されている対象となっている。特に、無機ガラスから製造された眼科用レンズに比べて、与えられるその重量上の利点のために、フォトクロミック眼科用プラスチックレンズが幾分研究されている。自動車や航空機などの乗物用のフォトクロミック透明体も、そのような透明体が与える重量低下や潜在的な安全性のために重要となってきている。フォトクロミズムは、フォトクロミック物質またはこの物質を含有する物品が、紫外線を含む放射線に露光された時に色の変化を伴い、紫外線の影響が停止されると元の色に戻る現象である。紫外線を含む光源の例は、日光や、水銀灯の光を包含する。紫外線照射の停止は、例えば、フォトクロミック物質または物品を暗所で貯蔵するか、紫外線照射光源を取り除くか、または光源から紫外線をフィルターで除去することにより達成される。
【0004】
多数のアリル官能性モノマー、例えば、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)などのポリオール(アリルカーボネート)モノマーの完全に硬化した重合物は、有機フォトクロミック物質の拡散(例えば、熱転移など)による混入にはあまり上手く適合しない。例えば、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)の場合、1種またはそれ以上の有機フォトクロミック物質は、硬化不足の(undercured)重合物への拡散と、その後の、中に有機フォトクロミック物質を混入した前記重合物を完全に硬化する別の硬化工程により組み込まれることがある。このような2段階の硬化プロセスは、余分な時間と出費を要し、しかも有機フォトクロミック物質の重合物中への相反しかつ信頼できない混入をもたらすことがある。
【0005】
その中に有機フォトクロミック物質を混入する実質上完全に硬化した重合物を調製するのに使用できるアリル官能性モノマーの重合性組成物を開発することが望ましい。加えて、このように新規に開発される組成物から調製される重合物は、硬度や熱変形温度などの良好な物理特性を有すること、そしてこのような重合物から調製されるフォトクロミック物質は、(以降の実施例において更に詳細に説明するように、)例えば、光学濃度の変化により測定されるような良好なフォトクロミック特性を有することが望ましい。
【0006】
米国特許第4,742,133号明細書には、少なくとも1種のポリ(アリルカーボネート)官能性モノマーを含有する液体モノマー組成物を酸素と接触させることによるポリ(アリルカーボネート)官能性プレポリマーの調製法が開示されている。この米国特許'133号明細書記載のポリ(アリルカーボネート)官能性モノマーは、エチレンオキサイド延長グリセロールやラクトン延長をベースとする化合物などのようなポリヒドロキシ官能性鎖延長化合物をベースとするものを包含すると記載されている。
【0007】
米国特許第4,666,976号明細書には、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、液体ポリオール(アリルカーボネート)ポリマーまたはこれらの混合物と、ブロモキシレノールブルーを含有する重合性溶液が開示されている。米国特許'976号明細書には、ポリオール(アリルカーボネート)モノマーおよび液体ポリオール(アリルカーボネート)ポリマーのポリオールがポリオール官能鎖延長化合物、例えば、エチレンオキサイド延長グリセロールやラクトン延長をベースとする化合物を包含すると記載されている。
【0008】
米国特許第5,973,093号明細書には、ポリオール(アリルカーボネート)である第1モノマー成分と、アクリレートまたはメタクリレート官能価を有するアルコキシル化ビスフェノールである第2モノマー成分約2〜35重量%から成る重合性有機組成物が開示されている。米国特許'093号明細書記載の前記重合性組成物から調製される実質上完全に硬化した重合物は、フォトクロミック物質を例えば、熱転移により重合物中に組み込むことによりフォトクロミック物品を調製するのに使用されると記載されている。
【0009】
本発明によれば、
(a)アリル基を少なくとも2個有する第1アリル官能性モノマーであって、この第1アリル官能性モノマーの実質上完全に硬化した重合物が(米国標準試験法第D2583-92に準拠してモデルNo.934バーコルインプレッサー(Barcol Impressor)を用いて求められるような)少なくとも40の15秒バーコル934硬度を示すように選択されるもの、および
(b) 第1アリル官能性モノマーとは異なる第2アリル官能性モノマーであって、、
(i)ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)、
(ii)ポリラクロンジオールビス(アリルカーボネート)、および
(iii)前記(i)および(ii)の混合物
から選択されるもの
を含有する重合性組成物であって、前記第2アリル官能性モノマー(b)が、(i')前記(b)を含まない組成物の実質上完全に硬化した重合物に比べて改良された有機フォトクロミック物質混入(これに関しては、波長390nmでの正味の吸光度を測定することにより求められ、本明細書において以降で説明する)と、(ii')少なくとも40℃の熱変形温度(米国標準試験法D-648-86に準拠して254μmの反りで求められるもの)を示す前記組成物の実質上完全に硬化した重合物を提供するような量でこの重合性組成物中に含まれている重合性組成物が提供される。
【0010】
操作実施例に記載する以外、あるいは特に断りのない限り、この明細書および請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などに関する全ての数字または表現は、いずれの場合も、「およそ」という用語で変更できると解されるべきである。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明の重合性組成物の実質上完全に硬化した重合物は、第2アリル官能性モノマーの不存在下で第1アリル官能性モノマーから調製される実質上完全に硬化した重合物に比べて改良された有機フォトクロミック物質の混入を示す。本明細書中およびクレームにおいて使用されるように、「実質上完全に硬化した重合物」という語は、例えば、熱硬化などの硬化条件への更なる曝露が、硬度や熱変形温度などの物理特性に実質的な改良をもたらさない程度まで硬化した重合物(すなわち、硬化不足でないかまたは部分硬化されていない重合物)を意味する。
【0012】
有機フォトクロミック物質は、本発明の重合物中に、当業者に周知の方法により混入され得る。一般に、有機フォトクロミック物質は、拡散またはインビビション(imbibition)プロセスを用いて重合物中に混入される。これらの方法は、有機フォトクロミック物質の溶液を重合物の最小一部に適用した後、例えば、135℃で5時間の特定量の時間加熱することを伴う。適用される有機フォトクロミック溶液と接触すると同時に、フォトクロミック物質は重合物中に拡散されて、その内部に保持される。加熱工程が完了したら、過剰のフォトクロミック溶液を重合物の表面から洗い流す。
【0013】
本発明の重合物が改良されたフォトクロミック物質の混入を示すことを決定するために、波長390nmでの正味の吸光度を算出する。正味の吸光度の決定は、フォトクロミック物質のインビビション前に重合物の(390nmでの)吸光度を測定し、この吸光度値を、インビビションされた漂白状態のフォトクロミック重合物の(390nmでの)吸光度測定値から減ずることを伴う。ここで、「漂白状態」とは、非活性化または非着色状態にあるインビビションされたフォトクロミック重合物をいう。吸光度の測定は、室温において、同等の厚さの重合物から分光光度計(例えば、ヴァリアン(Varian)製モデル・キャリー(Caryy)3分光光度計)を用いて行う。正味の吸光度値0は、フォトクロミック物質が重合物中に混入されていないことを示す。正味の吸光度値は、重合物中に混入される有機フォトクロミック物質の種類や組み合わせによって変化するが、最小でも0.3、例えば、最小1.0の正味の吸光度値が、一般には許容されると考えられる。
【0014】
本明細書およびクレーム中で使用されるように、「アリル」およびそれに関連する用語(例えば、「アリル官能性モノマー」や「アリル基」)は、下記の式Iで表される非置換のアリル基および置換されたアリル基をいう。
【化7】
前記式中、R5は、水素、ハロゲン(例えば、塩素または臭素)またはC1〜C4アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル)である。最も一般的には、R5は、水素であり、式Iで表されるアリル基は、非置換のアリル基、H2C=CH-CH2-である。
【0015】
本発明の組成物の第1アリル官能性モノマーは、アリル基を少なくとも2個、例えば、アリル基2〜6個を有する。好ましくは、第1アリル官能性モノマーは、アリル基2個を有する。より好ましくは第1アリル官能性モノマーのアリル基は、アリルカーボネート、アリルエステル基およびこれらの組み合わせから選択される。第1アリル官能性モノマーまたは第1アリル官能性モノマーの混合物は、その実質上完全に硬化した重合物が少なくとも40、例えば、40〜70の15秒バーコル934硬度を有するように選択される。一般に、第1アリル官能性モノマーまたは第1アリル官能性モノマーの混合物から調製される実質上完全に硬化した重合物の15秒バーコル934硬度は、43〜60である。
【0016】
本発明の一態様において、第1アリル官能性モノマー(a)は、
(a)(i)式II:
【化8】
で表されるアリル官能性モノマー(式中、Rは、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)および1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)から選択されるジオールの2価の残基であり、そしてR14は、アリル基(例えば、前述の式Iで表されるような置換または非置換のアリル基)である。)、
(a)(ii)式III:
【化9】
で表されるアリル官能性モノマー(式中、R1およびR2は、互いに独立してかつ各pおよびqについて独立して、C1〜C4アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチル)、塩素および臭素から選択され、pおよびqはそれぞれ独立して、0〜4までの整数であり、および-X-は、-O-、-S-、-S(O2)-、-C(O)-、-CH2-、-CH=CH-、-C(CH3)2-、-C(CH3)(C6H5)-、および
【化10】
から選択される2価の結合基であり、そしてR3は、アリル基(例えば、前述の式Iで表されるような置換または非置換のアリル基)である。)
(a)(iii)式IV:
【化11】
で表されるアリル官能性モノマー(式中、R4は、アリル基(例えば、前述の式Iで表されるような置換または非置換のアリル基)である。)、および
(a)(iv)前記(a)(i)、(a)(ii)および(a)(iii)のうち少なくとも2種の混合物
から選択される。
【0017】
本発明の態様において、第1アリル官能性モノマー(a)(ii)は、4,4'-イソプロピリデンビスフェノールビス(アリルカーボネート)である。これは、式III中、R1およびR2がそれぞれ水素であり、-X-が-C(CH3)2-であり、R3が非置換のアリル基であり、そしてアリルカーボネート基(R3-O-C(O)-O-)が、2価の結合基-X-に対して4位および4'位に配置されたもので表される。本発明の別の態様において、第1アリル官能性モノマー(a)(iii)は、ジアリルイソフタレートである。これは、式IV中、R4が非置換のアリル基であり、そしてアリルエステル基(R4-O-C(O)-)が、芳香環の1位および3位に配置されたもので表される。
【0018】
本発明の好ましい態様において、第1アリル官能性モノマーは、式IIで表されるアリル官能性モノマー(a)(i)である。本発明の特に好ましい態様において、第1アリル官能性モノマーは、式II中のRが1,2-エタンジオール(エチレングリコール)の残基であり、そしてR14が非置換のアリル基である、アリル官能性モノマー(a)(i)である。この場合、第1アリル官能性モノマーは、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)である。本明細書およびクレームにおいて使用されるように、第1アリル官能性モノマーに関するポリオール(アリルカーボネート)モノマーおよびポリオール(アリルエステル)モノマーという用語、およびより特定の関連する用語(例えば、エチレングリコールビス(アリルカーボネート))、4,4'-イソプロピリデンビスフェノールビス(アリルカーボネート)およびジアリルイソフタレート)は、指定されたモノマーまたはそのプレポリマーおよび関連するモノマーまたはオリゴマー種、並びにその中に含まれる合成副生物を意味しかつ包含するものとする。
【0019】
第1アリル官能性モノマーのポリオール(アリルカーボネート)モノマーは、当該分野において周知の手順、例えば、米国特許第2,370,567号明細書および同第2,403,113号明細書に記載の手順によって調製され得る。例えば、エチレングリコールなどの脂肪族ポリオールを、通常0℃〜20℃の間の温度でホスゲンと反応させて対応するポリクロロホルメート(例えば、エチレンビス(クロロホルメート))を形成する。このポリクロロホルメートを次いで、置換または非置換のアリルアルコールと好適な酸受容体(例えば、水酸化アルカリ金属塩)の存在下で反応させる。別法として、アリルまたは置換アリルクロロホルメート(アリルまたは置換アリルアルコールとホスゲンとの反応から形成されるもの)を、ポリオールと酸受容体の存在下で反応させる。
【0020】
第1アリル官能性モノマーのポリ(アリルエステル)は、当業者に周知の手順によって調製され得る。一般に、エステル、例えば、ジエチルイソフタレートを、アリルアルコール、例えば、非置換のアリルアルコールとエステル交換反応させる。
【0021】
第1アリル官能性モノマーは、一般に、本発明の重合性組成物中に少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも40重量%、さらに好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の量で含まれている。ここでこれら重量百分率は、前記組成物の合計モノマー重量を基準とする。第1アリル官能性モノマーは、一般に、前記重合性組成物中に90重量%未満、好ましくは70重量%未満、より好ましくは60重量%未満の量で含まれている。ここでこれら重量百分率は、前記組成物の合計モノマー重量を基準とする。第1アリル官能性モノマーは、本発明の重合性組成物中に、前記の値を包含する、前記上限との下限との組み合わせた範囲の量で含まれていてよい。
【0022】
本発明の重合性組成物は、第1アリル官能性モノマーとは異なる第2アリル官能性モノマーも包含する。第2アリル官能性モノマーは、第1アリル官能性モノマーのポリオール(アリルカーボネート)モノマーに関する前述の、当該分野で知られた方法に従って調製されてよい。
【0023】
第2アリル官能性モノマーは、ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択されてよい。ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのポリエーテルジオールは、ホモポリマー性ポリエーテルジオール、ランダム共重合性ポリエーテルジオール、ブロック共重合性ポリエーテルジオールおよびこれらの混合物から選択されてよい。
【0024】
本発明の一態様において、ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのポリエーテルジオールは、下記の式Vで表されるブロック共重合性ポリエーテルジオールである。
【化12】
上記式中、R6OおよびR8Oは、同一または異なっており、R7Oは、R6OおよびR8Oのそれぞれとは異なり、R6O、R7OおよびR8Oはそれぞれ独立して、エポキシドの2価の残基であり、xおよびzは、xとzの和が0より大きければ、互いに独立して0〜200までの数であり、そしてyは、3〜200までの数である。
【0025】
式Vに更に関連して、-R6O-(R6O)、-R7O-(R7O)および-R8O-(R8O)は、それぞれ独立して、エポキシドの2価の残基である。本発明において使用するように、「エポキシド」という用語は、3員環の環状エーテル、例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドをいう。例示目的で、-R6O-がプロピレンオキサイドであれば、2価の-R6O-残基は、下記の式VIおよびVIIで表すことができる。
【化13】
上記式中、R6Oがプロピレンオキサイドの残基であれば、これは、より具体的には、式VI、式VIIまたは式VIと式VIIの組み合わせによって表され得る。プロピレンオキサイドのペンデントメチル基の立体障害により、当業者に公知の通り、式VIは式VIIよりも有力な表現であると考えられる。
【0026】
式Vの-(R6O)x-、-(R7O)y-および-(R8O)z-セグメントまたはブロックは、1種またはそれ以上のエポキシド残基種を包含し得る。好ましくは、それぞれは、単一のエポキシド残基を含有する。R6O、R7OおよびR8Oがそれぞれ独立してその残基であり得るエポキシド類は、C2〜C14アルキレンオキサイド、環中の炭素数が5〜12のシクロアルキレンオキサイドおよびこれらの混合物を包含するが、これらに限定されない。C2〜C14アルキレンオキサイドの例としては、限定されないが、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、(2,3-エポキシプロピル)ベンゼン、1,2-エポキシ-3-フェノキシプロパン、ブチレンオキサイド、例えば、1,2-ブチレンオキサイドおよび2,3-ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、例えば、1,2-ペンチレンオキサイドおよび2,3-ペンチレンオキサイド、ヘキシレンオキサイド、例えば、1,2-ヘキシレンオキサイド、オクチレンオキサイド、例えば、1,2-オクチレンオキサイド、デシレンオキサイド、例えば、1,2-エポキシデカン、ドデシレンオキサイド、例えば、1,2-エポキシドデカン、およびエポキシテトラデカン、例えば、1,2-エポキシテトラデカンが挙げられる。環中の炭素数が5〜12のシクロアルキレンオキサイドの例としては、限定されないが、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、エクソ-2,3-エポキシノルボラン、シクロオクテンオキサイドおよびシクロドデカンエポキシドが挙げられる。一般に、R6O、R7OおよびR8Oはそれぞれ独立して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよびこれらの混合物から選択されるエポキシドの2価の残基である。
【0027】
前記式Vの下付きのyの値は、少なくとも3、例えば、少なくとも5、10、15または20である。下付きのyの値は、200未満、例えば、150未満、100未満、90未満、80未満、70未満、50未満または40未満でもある。yの値は、前記数字を含む、前記数字の組み合わせ範囲内であってよい。下付きのxおよび/またはzが0より大きければ、それらはそれぞれ、一般に、独立して、少なくとも1の値、例えば、2、3、5、10、15または20である。下付きのxおよびzの値は、それぞれ独立して、200未満、例えば、150未満、100未満、90未満、80未満、70未満、50未満または40未満である。xおよびzの値は、それぞれ独立して、前記数字を含む、前記数字の組み合わせ範囲内であってよい。本明細書において示されるように、x、yおよびzの値は、平均値を表す。式Vで表されるブロック共重合性ポリエーテルジオールの数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィーで求められ、広い範囲であってよく、例えば、190〜20,000、または500〜15,000であってよい。
【0028】
式Vで表されるブロック共重合性ポリエーテルジオールは、常套の方法で調製されてよい。一つの方法では、例えば、グリコール、例えば、1,2-プロパンジオールを、エポキシド、例えば、1,2-プロピレンオキサイドと反応させて、ジヒドロキシ末端のポリエーテル中間体、例えば、ジヒドロキシ末端ポリ(1,2-プロピレンエーテル)を形成する。このジヒドロキシ末端のポリエーテル中間体を、次いで、別のエポキシド、例えば、エチレンオキサイドと反応させて、ブロック共重合性ポリエーテルジオールを形成する。これは、式Vを参照すると、R7Oがプロピレンオキサイド残基であり、そしてR6OおよびR8Oが同じエポキシド残基、例えば、エチレンオキサイドである。
【0029】
ポリエーテルジオール(アリルカーボネート)モノマーを調製するのに使用され得るブロック共重合性ポリエーテルジオールの例としては、限定されないが、ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(ブチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(ブチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリエチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)、およびポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(ブチレンオキサイド)を包含する。好ましいブロック共重合性ポリエーテルジオールは、ポリ(エチレンオキサイド)-b-ポリ(プロピレンオキサイド)-b-ポリ(エチレンオキサイド)である。
【0030】
ポリエーテルジオール(アリルカーボネート)モノマーを調製するのに使用され得るランダム共重合性ポリエーテルジオールは、当該分野に公知の方法で調整されてよい。例えば、エチレングリコールなどのグリコールをアルキレンオキサイドの混合物、例えば、プロピレンオキサイドおよびブチレンオキサイドと反応させる。
【0031】
常套の方法を用いて、ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのホモポリマー性ポリエーテルジオールを調製してよい。例えば、、エチレングリコールなどのグリコールをアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイドと反応させる。別法として、ホモポリマー性ポリエーテルジオールは、エポキシド以外の環状エーテル、例えば、テトラヒドロフランから調製されてよい。本発明の一態様において、ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのポリエーテルジオールは、数平均分子量250〜3000のポリテトラヒドロフランジオールである。
【0032】
ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)のランダム共重合性ポリエーテルジオールおよびホモポリマー性ポリエーテルジオールを調製するのに使用され得るアルキレンオキサイドは、前記式Vで表されるブロック共重合性ポリエーテルジオールに関する前述の例から選択されてよい。ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)のランダム共重合性ポリエーテルジオールおよびホモポリマー性ポリエーテルジオールのMnは、前記式Vで表されるブロック共重合性ポリエーテルジオールに関する前述の値から選択されてよい。
【0033】
第2アリル官能性モノマーは、ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーから選択されてもよい。ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのポリラクトンジオールは、当該分野において周知の方法で調製されてよい。一般に、ポリラクトンジオールは、ジオールとラクトンとの反応生成物である。ポリラクトンジオールのジオールは、炭素数2〜20の直鎖または分枝の脂肪族ジオール、ポリ(C2〜C4)アルキレングリコール、環中に炭素原子5〜8個を有する脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノール、水素化ビスフェノールおよびこれらの混合物から選択され得る。
【0034】
ポリラクトンジオールを調製するのに使用され得る、炭素数2〜20の直鎖または分枝の脂肪族ジオールの例としては、限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-および2,3-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデンカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオールおよびアイコサンジオールを包含する。ポリ(C2〜C4)アルキレングリコールの例としては、限定されないが、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-およびより高次のエチレングリコール、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-およびより高次のプロピレングリコール、およびジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-およびより高次のブチレングリコールを包含する。
【0035】
ポリラクトンジオールを調製するのに使用され得る、炭素数が5〜8の脂環式ジオールは、限定されないが、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオールおよびシクロオクタンジオールを包含する。ポリラクトンジオールを調製するのに使用され得る、単環式芳香族ジオールの例としては、限定されないが、ベンゼンジオール、例えば、1,2-ジヒドロキシベンゼンおよび1,3-ジヒドロキシベンゼン、C1〜C4アルキル置換ベンゼンジオール、例えば、4-tert-ブチル-ベンゼン-1,2-ジオール、4-メチル-ベンゼン-1,2-ジオール、3-tert-ブチル-5-メチル-ベンゼン-1,2-ジオールおよび3,4,5,6-テトラメチル-ベンゼン-1,2-ジオール、ハロ置換ベンゼンジオール、例えば、3,5-ジクロロベンゼン-1,2-ジオール、3,4,5,6-テトラブロモ-ベンゼン-1,2-ジオールおよび3,4,5-トリクロロ-ベンゼン-1,2-ジオール、およびC1〜C4アルキルおよびハロ置換ベンゼンジオール、例えば、3-ブロモ-5-tert-ブチルベンゼン-1,2-ジオール、3,6-ジクロロ-4-メチル-ベンゼン-1,2-ジオール、3,-ブロモ-4,5-ジメチル-ベンゼン-1,2-ジオールおよび3-クロロ-4,6-ジ-tert-ブチルベンゼン-1,2-ジオールが挙げられる。
【0036】
ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)のポリラクトンジオールを調製するのに使用され得るビスフェノールおよび水素化ビスフェノールは、下記の式VIIIで表され得る。
【化14】
式中、X、R1、R2、pおよびqは、式IIIに関する前述のものと同じであり、そして
【化15】
は、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を表す。ポリラクトンジオールを調製するのに使用され得るビスフェノールの例は、4,4'-イソプロピリデンビスフェノールである。ポリラクトンジオールを調製するのに使用され得る水素化ビスフェノールの例は、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキサノールである。
【0037】
ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)のポリラクトンジオールを調製するのに使用されるラクトンは、ラクトン環中に炭素原子3〜8個を有し、そして下記の式IXで表される。
【化16】
式中、hは、1〜6までの整数、例えば、1、2、3、4、5または6であり、R9、R10およびR11は、R9、R10およびR11基の合計数のうち少なくとも(hプラス2)個が水素であれば、それぞれ独立して、水素、C1〜C12アルキル、C5〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、ベンジルおよびフェニルから選択される。一般に、R9、R10およびR11はそれぞれ水素である。
【0038】
ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのポリラクトンジオールを調製するのに使用されるラクトンの例としては、限定されないが、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、β-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン(valerolactone)、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、モノメチル-、モノエチル-、モノプロピル-、モノイソプロピル-等からモノドデシルまでのε-カプロラクトン、メトキシおよびエトキシε-カプロラクトン、シクロヘキシルε-カプロラクトン、フェニルε-カプロラクトン、ベンジルε-カプロラクトン、ζ-エナトラクトン(zeta-enatholactone)およびη-カプリラクロンを包含する。本発明の好ましい態様において、R9、R10およびR11はそれぞれ水素であり、hは4であり、そして前記式IXで表されるラクトンはε-カプロラクトンである。
【0039】
ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーは、下記の式Xで表され得る。
【化17】
式中、R9、R10およびR11およびhは、前記式IXに関する前述のものと同じである。式Xの下付きのsは、一般に1〜100であり(例えば、1〜10まで、または1〜5まで)、R12は、ポリラクトンジオールを調製するのに使用されるジオールの2価の残基であり、そしてR13は、アリル基(例えば、前記式Iに記載の置換または非置換のアリル基)である。ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーのポリラクトンジオールの数平均分子量は、一般に、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められ、180〜23,000、例えば、200〜2500である。
【0040】
特に好ましいポリラクトンジオールは、ジエチレングリコールとε−カプロラクトンとの反応生成物であって、ゲル浸透クロマトグラフィーによって求められるMnが400〜600のものである。ジエチレングリコールとε−カプロラクトンとの反応生成物から誘導される好ましいポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーは、前記式Xで表されるが、式中、R12はジエチレングリコールの2価の残基であり、R9、R10およびR11はそれぞれ水素であり、hは4であり、sは1〜2までであり、そしてR13は非置換のアリル基である。ジエチレングリコールとε−カプロラクトンとの反応生成物から誘導されるポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーは、より具体的には、ポリ(ジエチレングリコール/ε-カプロラクトン)ジオールビス(アリルカーボネート)モノマーと呼ばれる。
【0041】
第2アリル官能性モノマーに関して本明細書およびクレームに使用されるように、ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート)モノマーおよびポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーという用語や、より具体的な関連する用語{例えば、ポリテトラヒドロフランジオールビス(アリルカーボネート)およびポリ(エチレングリコール/ε-カプロラクトン)ジオールビス(アリルカーボネート)}は、指定したモノマーまたはそのプレポリマーおよび関連するモノマーまたはオリゴマー種、並びにその中に含まれる合成副生物を意味しかつ包含するものとする。
【0042】
第2アリル官能性モノマーは、一般に、本発明の重合性組成物中に少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%の量で含まれている。ここでこれら重量百分率は、前記組成物の合計モノマー重量を基準とする。第2アリル官能性モノマーは、一般に、前記重合性組成物中に60重量%未満、好ましくは55重量%未満、より好ましくは50重量%未満の量で含まれている。ここでこれら重量百分率は、前記組成物の合計モノマー重量を基準とする。第2アリル官能性モノマーの量は、本発明の重合性組成物中に、前記の値を包含する、前記上限との下限との組み合わせた範囲の量で含まれていてよい。
【0043】
本発明の一態様では、重合性組成物は、第3アリル官能性モノマーを更に含有する。第3アリル官能性モノマーは、第1および第2アリル官能性モノマーのそれぞれとは異なり、しかも下記の式XIで表されるポリオールビス(アリルカーボネート)モノマーである。
【化18】
式中、R15は、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールおよびC4〜C6アルカンジオールから選択されるポリオールの2価の残基であり、およびR16は、アリル基(例えば、前記式Iに記載の置換または非置換のアリル基)である。R16置換基は、好ましくは非置換のアリル基である。R15の残基であり得るC4〜C6アルカンジオールの例は、限定されないが、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールを包含する。第3アリル官能性モノマーは、当業者に周知の方法であって、しかも第1アリル官能性モノマー(a)(i)および前記式IIに関する前述の方法によって調製されてよい。
【0044】
第3アリル官能性モノマーが選択され得るポリオールビス(アリルカーボネート)モノマーの例は、限定されないが、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、1,3-プロパンジオールビス(アリルカーボネート)、グリセロール1,3-ビス(アリルカーボネート)、1,4-ブタンジオールビス(アリルカーボネート)、1,5-ペンタンジオールビス(アリルカーボネート)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールビス(アリルカーボネート)、および1,6-ヘキサンジオールビス(アリルカーボネート)を包含する。好ましい第3アリル官能性モノマーは、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーである。第3アリル官能性モノマーに関して本明細書およびクレームに使用されるように、ポリオールビス(アリルカーボネート)モノマーという用語およびより具体的な関連する用語(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))は、指定されたモノマーまたはそのプレポリマーおよび関連するモノマーまたはオリゴマー種、並びにその中に含まれる合成副生物を意味しかつ包含するものとする。
【0045】
使用されのであれば、第3アリル官能性モノマーは、一般に、本発明の重合性組成物中に少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%の量で含まれている。ここでこれら重量百分率は、前記組成物の合計モノマー重量を基準とする。第3アリル官能性モノマーは、使用されるのであれば、一般に、前記重合性組成物中に50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満の量で含まれている。ここでこれら重量百分率は、前記組成物の合計モノマー重量を基準とする。第3アリル官能性モノマーの量は、本発明の重合性組成物中に、前記の値を包含する、前記上限との下限との組み合わせた範囲の量で含まれていてよい。
【0046】
本発明の重合性組成物は、前記第1、第2および任意に第3のモノマーを調製し、次いで別々に調製した前記第1、第2および任意に第3のモノマーを合わせて混合し、それによって重合性組成物を形成することにより調製されてよい。本発明の別の態様において、第1アリル官能性モノマーは、ポリオール(アリルカーボネート)モノマーであり、重合性組成物は、
(a)第1アリル官能性モノマーの第1クロロホルメート中間体、第2アリル官能性モノマーの第2クロロホルメート中間体および任意に第3アリル官能性モノマーの第3クロロホルメート中間体を別個に調製すること、
(b)第1アリル官能性モノマーの第1クロロホルメート中間体、第2アリル官能性モノマーの第2クロロホルメート中間体および任意に第3アリル官能性モノマーの第3クロロホルメート中間体の混合物を形成すること、および
(c)第1クロロホルメート中間体、第2クロロホルメート中間体および任意に第3クロロホルメート中間体の混合物のクロメート基(-O-C(O)-Cl基)をアリルアルコール(例えば、置換および/または非置換のアリルアルコール)と反応させ、それによって重合性組成物を形成すること
を含む方法により調製される。
【0047】
本発明の別の態様では、第3アリル官能性モノマーを、第1および第2アリル官能性モノマーの同時調製とは別に調製する(すなわち、前述の方法に従い、この方法において第1および第2クロロホルメート中間体の混合物のクロメート基をアリルアルコールと反応させる)。別途調製した第3アリル官能性モノマーを、次いで、第1および第2アリル官能性モノマーの同時調製した混合物に添加し、それによって第1、第2および第3アリル官能性モノマーを含有する重合性組成物を形成する。
【0048】
クロロホルメート中間体の調製およびその後のアリルアルコールとの反応は、常套の方法に従って、例えば、第1アリル官能性モノマーのポリオール(アリルカーボネート)モノマーの調製に関する前述方法の通り行ってよい。当業者に公知のように、クロロホルメート基とアリルアルコールとの反応は、一般に、酸スカベンジャー(例えば、水酸化アルカリ金属塩)の存在下で行い、その後、得られたポリオール(アリルカーボネート)モノマーの混合物を洗浄して単離する。前記工程(c)におけるアリルアルコールとクロロホルメート中間体の混合物のクロロホルメート基のモル当量比は、1:1未満であってよいが、少なくとも1:1であることが好ましい(すなわち、クロロホルメート基全てがアリルアルコールと好ましく反応する)。重合性組成物を調製する前記方法の工程(c)において、アリルアルコールとクロロホルメート基のモル当量比は、一般には1:1〜1.5:1.0、例えば、1.1:1.0である。
【0049】
例示目的のために、第1アリル官能性モノマーがエチレングリコールビス(アリルカーボネート)であれば、第1クロロホルメート中中間体はエチレングリコールビス(クロロホルメート)であり、第2アリル官能性モノマーがポリ(ジエチレングリコール/ε-カプロラクトン)ジオールビス(アリルカーボネート)であれば、第2クロロホルメート中間体はポリ(ジエチレングリコール/ε-カプロラクトン)ジオールビス(クロロホルメート)であり、そして任意の第3アリル官能性モノマーがジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)であれば、第3クロロホルメート中間体はジエチレングリコールビス(クロロホルメート)である。クロロホルメート中間体の混合物は、当業者に周知の方法に従って、例えば、窒素などの不活性雰囲気下でインペラー(impeller)で混合することにより形成されてよい。
【0050】
本発明の重合性組成物の重合は、有機化酸化物などの遊離基を発生する材料(すなわち開始剤)の初期量を前記組成物に添加することによって達成され得る。ポリオール(アリルカーボネート)組成物を重合する方法は、当業者に周知であり、どのような周知の技術を用いて前記重合性組成物を重合してもよい。
【0051】
開始剤として使用され得る有機化酸化物の好適な例としては、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカルボネートなどのペルオキシモノカルボネートエステル、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカルボネート、ジ(sec-ブチル)ペルオキシジカルボネートおよびジイソプロピルペルオキシジカルボネートなどのペルオキシジカルボネートエステル、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシオクチレートおよびt-ブチルペルオキシイソブチレートなどのペルオキシエステル、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシドおよびアゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。好ましい開始剤は、得られた重合物を変色しないものである。好ましい開始剤は、ジイソプロピルペルオキシジカルボネートである。
【0052】
重合性組成物の重合を開始して重合するのに使用される開始剤の量は、変更でき、しかも使用される特定の開始剤に依存する。重合反応を開始して維持するのに必要とされる量、すなわち開始量が要求される。好ましいペルオキシ化合物であるに関して、ジイソプロピルペルオキシジカルボネートは、一般に、モノマー100部につき開始剤2.0〜5.0部(phm)を使用してよい。より一般には、2.5〜4.0phmを使用して重合を開始する。開始剤の量およびその結果生じる硬化サイクルは、0秒バーコル935硬度(すなわち、モデルNo.935バーコルインプレッサーを用いて測定される値)が少なくとも65、好ましくは70、例えば、70〜80の重合物を生成するのに適当でなければならない。一般に、硬化サイクルは、重合性有機組成物を室温から94℃まで15時間〜30時間かけて加熱することを伴う。
【0053】
種々の通常使用される添加物が本発明の重合性組成物に混入されてよい。このような通常使用される添加物は、光安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤、内部離型剤などの離型剤、顔料および容易に重合されない柔軟化添加物、例えば、アルコキシル化フェノールベンゾエートおよびポリ(アルキレングリコール)ジベンゾエートを包含し得る。通常使用される添加物は、一般に、重合性組成物の合計重量に対して10重量%未満、特に5重量%未満、通常は3重量%の量で本発明の組成物中に含まれる。
【0054】
本発明の重合性有機組成物の重合から得られる重合物は、固体で、しかも好ましくは透明または光学的に透明であることから、平面および眼科用レンズ、サングラスなどの光学レンズ、窓、自動車用透明体、例えば、フロントガラス、T-ルーフ、車幅灯およびバックライト、および航空機用透明体などに使用され得る。フォトクロミック物品、例えば、フォトクロミックレンズを調製するのに使用される場合、前記重合物は、マトリックス中に混入されるフォトクロミック物質を活性化する電磁波スペクトルの領域(すなわち、フォトクロミック物質の着色または開放状態を生成する紫外線(UV)の光の波長や、UV活性化形(すなわち、開放形)のフォトクロミック物質の吸収最大波長を包含する可視光領域)まで透明でなければならない。
【0055】
本発明のフォトクロミック物品を形成するのに使用される有機フォトクロミック物質の第1群は、活性化吸収最大を590nm以長の可視領域内、例えば、590〜700nmに有するものである。この物質は、一般に、適当な溶媒またはマトリックス中で紫外光に曝露されると、青色、青味がかった緑色または青味がかった紫色を呈する。本発明において有用な前記物質の類の例は、限定されないが、スピロ(インドリン)ナフトキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンズオキサジンを包含する。これらのフォトクロミック物質および別の類は、公開された文献に開示されている。例えば、米国特許第3,562,172号明細書、同第3,578,602号明細書、同第4,215,010号明細書、同第4,342,668号明細書、同第5,405,958号明細書、同第4,637,698号明細書、同第4,931,219号明細書、同第4,816,584号明細書、同第4,880,667号明細書、同第4,818,096号明細書を参照のこと。また、例えば、特開昭62-195383号公報および論文、テクニクス・イン・ケミストリー、第III巻、「フォトクロミズム」、第3章、グレン・エイチ・ブラウン編、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド、ニューヨーク、1971年も参照のこと。
【0056】
本発明のフォトクロミック物品を形成するのに使用される有機フォトクロミック物質の第2群は、少なくとも1つの吸収最大、好ましくは2つの吸収最大を400〜500nm未満の可視領域内に有するものである。この物質は、適当な溶媒またはマトリックス中で紫外光に曝露されると、黄色〜橙色を呈する。この化合物としては、特定のクロメン、すなわちベンゾピランおよびナフトピランを包含する。このクロメンのうち多くは、公開された文献、例えば、米国特許第3,567,605号明細書、同第4,826,977号明細書、同第5,066,818号明細書、同第4,826,977号明細書、同第5,066,818号明細書、同第5,466,398号明細書、同第5,384,077号明細書、同第5,238,931号明細書および同第5,274,132号明細書に開示されている。
【0057】
本発明のフォトクロミック物品を形成するのに使用される有機フォトクロミック物質の第3群は、400〜500nmの可視領域に一つの吸収最大を有しかつ500〜700nmの可視領域に別の吸収最大を有するものである。この物質は、一般には、適当な溶媒またはマトリックス中で紫外光に曝露されると、黄色/茶色〜紫/灰色の色を呈する。この物質の例としては、ピラン環および置換または非置換の複素環(例えば、ベンゾピランのベンゼン部位と融合したベンオチエノまたはベンゾフラノ環)の2位に置換基を有する特定のベンゾピラン化合物を包含する。このような物質は、米国特許第5,429,774号明細書の主題である。
【0058】
意図される他のフォトクロミック物質は、フォトクロミック有機金属ジチゾナート、例えば、米国特許第3,361,706号明細書に記載されている水銀ジチゾナートである。フルギドおよびフルギミド、例えば、3-フリルおよび3-チエニルフルギドおよびフルギミドが、米国特許第4,931,220号明細書の第20欄、第15行〜第21欄第38行に記載されている。
【0059】
前記特許公報中の前記フォトクロミック物質に関する開示内容を全てここに参照として挿入する。本発明のフォトクロミック物品は、所望により、1種のフォトクロミック物質またはフォトクロミック物質の混合物を含有していてよい。フォトクロミック物質の混合物は、ほぼ中間色の灰色または茶色などの特定の活性化色を達成するのに使用され得る。
【0060】
ここで説明したフォトクロミック物質はそれぞれ、化合物の混合物を適用または混入する重合物が、フィルターを通さない日光で活性化されたときに結果として生じる所望の色、例えば、灰色または茶色の影などのような実質上中間の色、すなわち、活性なフォトクロミック物質の色を与えるできるだけ中間色に近い色を呈するような量および(混合物を使用する場合は)割合で使用されてよい。使用される前記フォトクロミック物質の相対量は、変化でき、しかも前記化合物の活性種の色や望まれる最終的な色の相対的な強度に一部依存する。
【0061】
本明細書に記載のフォトクロミック化合物または物質は、当該分野において開示された種々の方法により、重合物に適用または混入されてよい。このような方法は、(a)前記物質を重合物中に溶解または分散させること、例えば、重合物をフォトクロミック物質の熱溶液中に浸漬するかまたは熱転移することによるフォトクロミック物質の重合物へのインビビション、(b)フォトクロミック物質を別の層として、例えば、ポリマーフィルムの一部として重合物の隣接層へ提供すること、および(c)フォトクロミック物質を重合物の表面に配置されるコーティングの一部として適用することを含む。
【0062】
好ましくは、フォトクロミック物質は、重合物、特に本発明の実質上完全に硬化した重合物中にインビビションにより混入される。「インビビション」または「吸収する」という用語は、フォトクロミック物質単独の重合物への浸透、溶媒によって助けられるフォトクロミック物質の多孔性ポリマー中への移動吸収、蒸気相転移および別の移動機構を意味しかつ包含するものとする。
【0063】
フォトクロミック物質、または重合物に適用または混入されるフォトクロミック物質を含有する組成物の量は、充分な量を使用して活性化時に裸眼で識別可能なフォトクロミック効果を達成するのであれば重要ではない。一般に、これらの量は、フォトクロミック量と記載される。使用される具体的な量は、その照射時に望まれる色の強度や、フォトクロミック物質を混入または適用するために用いられる方法にしばしば依存する。通常、適用または混入されるフォトクロミック物質の量が多いほど、色の強度は高まる。一般に、フォトクロミック光学重合物に混入または適用されるフォトクロミック物質の合計量は、フォトクロミック物質が混入または適用される表面積1cm2当たり0.15〜0.35mgであってよい。
【0064】
本発明を以下の実施例においてより詳細に説明するが、以下の実施例は、多数の改良や変更が当業者には自明であることから、例示のみを意図するものである。特に断りのない限り、全ての部および全ての百分率(%)は重量基準である。
【0065】
合成例A〜D
実施例A
エチレングリコールビス(クロロホルメート)中間体を以下の表Aに示す成分から調製した。エチレングリコールビス(クロロホルメート)中間体は、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーの調製において有用である。
【表1】
【0066】
仕込み1を15分間かけてジャケット付きの1リットル四つ口丸底フラスコ加え、同時に5℃に冷却した。このフラスコは、モーター駆動のテフロンポリマー撹拌刃、ホスゲン導入管、熱電対、圧平衡滴下漏斗および水酸化ナトリウムスクラバーに接続された冷却器を装備していた。仕込み1の添加が完了すると、仕込み2および3をそれぞれ5時間および4.6時間かけてフラスコに同時に添加した。仕込み2および3の添加中に、フラスコの内容物の温度が18℃以下まで上がるのを観察した。仕込み2の添加終了時に、フラスコの内容物を15分間撹拌した後、仕込み4を更に15分かけて添加した。仕込み4の添加が完了すると、フラスコの内容物を窒素ガスにより27℃〜30℃の範囲の温度で約24時間スパージした。フラスコの内容物を適当な容器に移し替えた。反応の定量は、滴定に基づいて、生成物とピリジンの混合物96%であることを求めた。
【0067】
実施例B
エチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーを、以下の表Bに示す成分から調製した。エチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーは、以降で更に詳細に説明するように、重合性組成物1〜3中で使用した。
【表2】
(a) エチレングリコールビス(クロロホルメート)中間体は、実施例Aに記載の方法にしたがって調製した。
(b) 溶液の合計重量に対し50重量%の量で水酸化ナトリウムを含有する水溶液。
【0068】
仕込み1の成分を、ジャケット付きの1リットル丸底フラスコに加えた。このフラスコは、モーター駆動のテフロンポリマー撹拌刃、水冷冷却器、(フラスコのジャケット用の)循環冷却装置および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を装備していた。フラスコの内容物を−9℃に冷却し、仕込み2を1時間10分かけてゆっくりと加えた。仕込み2の添加中ずっと、フラスコの内容物の温度が15℃を超えないことを観察した。仕込み2の添加完了時に、フラスコの内容物を温めて、約25℃で更に2.5時間撹拌した。フラスコの内容物を水500mLおよび塩化メチレン200mLをフラスコに加えることで、有機相と水相に分けた。有機相を回収し、脱イオン水約1500mLで2回洗浄した。洗浄した有機相を105℃の温度において10mm水銀圧の真空下でストリッピングして、活性炭素で濾過した。
【0069】
こうして得られた生成物である実施例Bのモノマーは、収率74%であり、高圧液体クロマトグラフィーによる分析とピーク面積の比較に基づいて、92%のエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーを含有することが分かった。
【0070】
実施例C
ポリラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体を、以下の表Cに示す成分から調製した。ポリカプロラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体は、ポリカプロラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーの調製に有用である。
【表3】
(c) ユニオン・カーバイド社から入手したトーン(TONE)0201ポリ(ε-カプロラクトン)ジオール。
【0071】
仕込み1を、ジャケット付きの5リットル四つ口丸底フラスコに15分間かけて加え、同時に5℃に冷却した。このフラスコは、モーター駆動のテフロンポリマー撹拌刃、ホスゲン導入管、熱電対、圧平衡滴下漏斗および水酸化ナトリウムスクラバーに接続された冷却器を装備していた。仕込み1の添加が完了すると、仕込み2および3をそれぞれ8.5時間および7.5時間かけて同時にフラスコに添加した。仕込み2および3の添加中に、フラスコの内容物の温度は、38℃以下まで上がるのを確認した。仕込み2の添加終了時に、加熱マントルをフラスコに配置して、仕込み3の添加の残りの時間中、フラスコの内容物を32℃の温度に保持した。仕込み3の添加が完了したら、フラスコの内容物を、32℃において窒素ガスにより約24時間スパージした。フラスコの内容物を適当な容器に移し替えた。反応の定量は、滴定に基づいて、生成物とピリジンの混合物99%であることを求めた。
【0072】
実施例D
ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーを、以下の表Dに示す成分から調製した。ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)モノマーは、実施例2および3に記載する、本発明の重合性組成物で使用した。
【表4】
(d) ポリラクトンビス(クロロホルメート)中間体は、実施例Cに記載の方法にしたがって調製した。
【0073】
仕込み1を、ジャケット付きの1リットル丸底フラスコに加えた。このフラスコは、モーター駆動のテフロンポリマー刃、水冷冷却器、(フラスコのジャケット用の)循環冷却装置および温度フィードバック制御装置を介して接続された温度計を装備していた。フラスコの内容物を−9℃に冷却し、仕込み2を1時間かけてゆっくりと加えた。仕込み2の添加中ずっと、フラスコの内容物の温度が25℃を超えないことを確認した。仕込み2の添加完了時に、フラスコの内容物を約25℃の温度で更に2時間撹拌した。脱イオン水600mLをフラスコに加えることにより、フラスコの内容物を有機相と水相に分けた。有機相を回収し、脱イオン水約1200mLで2回洗浄した。洗浄した有機相を110℃の温度において10mm水銀圧の真空下でストリッピングして、活性炭素で濾過した。
【0074】
こうして得られた生成物である実施例Dのモノマーは、収率74%であり、モノマー試料100g当たりヨウ素66gのヨウ素価を有することが分かった。
【0075】
重合組成物例1〜3
表1に、2種類の重合性モノマー組成物を示す。実施例1は比較例である。実施例2および3は本発明の態様の代表例である。実施例1〜3においてそれぞれ使用したジイソプロピルペルオキシジカルボネートの量は、それらから得られる重合物が実質上完全に硬化するように選択した。
【表5】
(e) ピーピージー・インダストリーズ・インコーポレイテッドから市販されているCR-39(登録商標)モノマー。
【0076】
表1の重合性モノマー組成物のキャストシートを以下の方法で作成した。各モノマー組成を好適な容器に移し替えて、設計された量のジ-イソプロピルペルオキシジカルボネートを加えた。得られた初期重合性モノマー組成物を、マグネチックスターラープレートとマグネチックスターラーバーを用いて4℃で混合した。次いで、この初期モノマー組成物を、316ステンレス鋼製1.5リットル加圧濾過器ホルダーを用いて0.45μmMAGNAナイロンフィルターにより、窒素ガス20ポンド/cm2(138kPa)下で濾過した。得られた濾過後の組成物を、その後、内径15.24×15.24×0.32cmのガラス鋳型に流し入れた。
【0077】
次いで、充填した鋳型を加熱した水浴中に配置し、以下の5段階の硬化サイクルを用いて硬化した。(1)38℃で6時間等温に保持し、(2)38℃から60℃に8時間かけて線形に温度上昇させ、(3)60℃から94℃に7.5時間かけて線形に温度上昇させ、(4)94℃から82℃に1.5時間かけて線形に温度を低下させ、そして(5)水浴から取り出して、室温まで冷却させた後、鋳型から取り出す。このシートの物理特性を測定した。結果を表2に示す。
【0078】
【表6】
1N.D.=確定できず。実施例2および3のキャストシートは、モデルNo.934バーコルインプレッサーによる分析には柔らかすぎたが、同様のモデルNo.935バーコルインプレッサーを用いたバーコル935硬度データは得られた。
【0079】
(f)透過率%は、ASTM D 1003に準拠して、ルーメン(Lumen)C光源を用いたハンター・ラボ社製モデルD25P-9比色計を用いて求めた。
(g)a*(赤色〜緑色)およびb*(黄色〜青色)値は、ASTM D 1925-70に準拠して、ルーメンC光源を用いたハンター・ラボ社製モデルD25P-9比色計を用いて求めた。正のa*値は、赤色を表し、負のa*値は緑色を表し、正のb*値は、黄色を表し、そして負のb*値は青色を表す。
(h)バーコル934硬度は、ASTM D 2583-92に準拠して(モデルNo.934バーコルインプレッサーを用いて)バーコルインプレッサーの先端が試料に挿入した直後とそれから15秒後の読みを測定することにより求めた。
(i)バーコル935硬度は、モデルNo.935バーコルインプレッサーを用い、バーコルインプレッサーの先端が試料に挿入した直後の読みを測定することにより求めた。
(j)熱変形温度は、254μm(10ミル)の反りにおいて、ASTM D 648-86に準拠して、カスタム・サイエンティフィック・インストルメンツ社製モデルHDV3 DTUL/バイキャット(Vicat)軟化点測定器を用いて測定した。
(k)実施例1のキャストシートについては、130℃の温度まで変形が検出されなかった。
(l)130℃での合計反りは、ASTM D 648-86に準拠して、カスタム・サイエンティフィック・インストルメンツ社製モデルHDV3 DTUL/バイキャット(Vicat)軟化点測定器を用いて測定した。
(m)フィッシャーマイクロ硬度(単位:ニュートン/mm2)は、ヘルマット・フィッシャー・ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング(Helmut Fischer GmbH)製フィッシャースコープ(FISCHERSCOPE)(登録商標)H100硬度試験システムを用い、製造者の操作使用説明書にしたがって求めた。
【0080】
表2のデータは、本発明の重合性モノマー組成物から生成した重合物(例えば、実施例2および3)の熱変形温度が少なくとも40℃であることを示している。加えて、表2のデータは、第1アリル官能性モノマー単独の重合体、例えば、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)の15秒バーコル934硬度が少なくとも40であることも示している(実施例1)。
【0081】
フォトクロミック物品実施例4〜6
前述の実施例1〜3の重合性組成物から調製したキャストシートから別の試験試料を切り出した。実施例4は、実施例1の重合性組成物からキャストしたシートをインビビションする試みを表している。実施例5および6は、実施例2および3の重合性組成物からそれぞれキャストしたシートを表しており、それぞれフォトクロミック物質で上手くインビビションした。試験試料は、PHOTOSOL(登録商標)7-219フォトクロミック物質40重量%、PHOTOSOL(登録商標)7-330フォトクロミック物質16重量%およびPHOTOSOL(登録商標)7-232フォトクロミック物質44重量%を含有する樹脂溶液でインビビションした。ここで、重量%は、樹脂溶液に含まれるフォトクロミック物質の合計重量を基準とする。前記物質PHOTOSOL(登録商標)7-219、PHOTOSOL(登録商標)7-330およびPHOTOSOL(登録商標)7-232は、ピーピージー・インダストリーズ・インコーポレイション製ナフトピラン系フォトクロミック物質である。
【0082】
フォトクロミク物質の樹脂溶液を試験試料シートの片面にスピン塗布した。塗布した試験シートを、次いで赤外線ランプの下で20分間乾燥させた後、135℃に設定した強制気流オーブンにおいて5時間加熱した。インビビションした試験試料を、オーブンから取り出して、室温まで冷却させた。その後、インビビションした試験試料を32℃の水で完全に洗浄して樹脂溶液を除去した。
【0083】
インビビションした試験シートについてのフォトクロミック性能を光学ベンチを用いて求めた。光学ベンチでの試験前に、インビビションした試験シートを365nm紫外光に約15分間露光してフォトクロミック化合物を活性化させた後、76℃のオーブン内に約15分間置いて、フォトクロミック物質を漂白または不活性化させた。インビビションした試験シートを、次いで、室温まで冷却させて、室内蛍光灯に少なくとも2時間曝露させた後、23.9℃に保持した光学ベンチで試験する前に、少なくとも2時間カバーを掛けておいた。
【0084】
光学ベンチは、約200ワットで操作される300ワットキセノンアーク灯、リモートコントロール可能なシャッター、短波長の放射線を除去するスコット(Schott)WG-320nmカットオフフィルター、中間濃度フィルターおよび試験しようとする試料を浸漬するための恒温水浴を備えていた。タングステン灯からの光の平行ビームを試験試料に試験試料の中心の垂線から少し傾けて通過させた。試験試料を通過した後、タングステン灯からの光を、ビームを等しい強さの2次ビームに分けるビームスプリッターに当てた。反射した2次ビームは、480nmバンドパスフィルターを介して検出器に向けた。非反射の2次ビームは、620nmバンドパスフィルターを介して検出器に向けた。明所視フィルターは、検出器が人の目の応答を真似るように波長を通過させる。検出器からの出力信号をラジオメーターによって処理して、コンピュータにデータを送った。以下の表3には、インビビションした試験シートから得たフォトクロミック性能データを示す。
【0085】
【表7】
2N.D. =確定できず。実施例1の重合製組成物からキャストしたシートは、ほとんどインビビションできず、それと同様の実施例4に関してはフォトクロミック性能が決定できなかった。
【0086】
(n)390nmでの正味の吸光度(すなわち、漂白状態のインビビションしたレンズの吸光度から非被覆レンズの吸光度を減じたもの)は、室温においてヴァリアン社製モデルキャリー(Model Cary)3分光光度計を用いて求めた。
(o)光学濃度の変化(ΔOD)は、光学ベンチにおいて、漂白状態のインビビションしたレンズを試料ホルダーに挿入し、透過率を100%に調整して、キセノン灯からのシャッターを開けて紫外線を当てて、試験面を漂白状態から活性化(すなわち、実質上真っ黒な)状態へ変化させて、活性化状態での透過率を測定し、そして光学濃度の変化を式:
【数1】
ΔOD=log(100/%Ta)
にしたがって算出することにより求めた。ここで、前記式中、%Taは活性化状態での透過率%であり、対数の底は10である。この透過率%を求めた時のキセノン灯からの紫外光への露光時間および水浴の温度を共に記録する。
【0087】
(p)漂白半減期(T1/2)は、インビビションしたレンズの活性化状態の吸光度が、活性化光源を取り除いた後、23℃において最も高い吸光度の2分の1に達するまでの時間(秒)である。
【0088】
表4のデータは、本発明の実質上完全に硬化した重合体から作製したフォトクロミック物品が、第1アリル官能性モノマー、例えば、エチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマー単独から調製された実質上完全に硬化した重合物に比べて改良された有機フォトクロミック物質混入と良好なフォトクロミック性能特性を示すことを表している。
【0089】
本発明は、その特定の態様の具体的な詳細を参照して説明している。この詳細は、特許請求の範囲に包含されることを除いて、特許請求の範囲に包含されること以外や特許請求の範囲に包含される範囲への本発明の範囲に関する限定と考えるべきではない。
Claims (15)
- (a)アリル基を少なくとも2個有する第1アリル官能性モノマーであって、この第1アリル官能性モノマーの完全に硬化した重合物が少なくとも40の15秒バーコル934硬度を示すように選択され、
(a)下記の式で表されるアリル官能性モノマー:
および
(b)前記第1アリル官能性モノマー(a)とは異なるポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)である第2アリル官能性モノマー、
を含有する重合性組成物であって、
前記第2アリル官能性モノマー(b)が、前記(b)を含まない組成物の完全に硬化した重合物に比べて改良された有機フォトクロミック物質混入と、少なくとも40℃の熱変形温度を示す前記組成物の完全に硬化した重合物を提供するように、前記組成物の合計モノマー重量を基準として10重量%〜60重量%の量で該重合性組成物中に含まれており、かつ前記ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)(b-i)のポリラクトンジオールが、ジオールとラクトンの反応生成物であり、ポリラクトンジオールのジオールが、炭素数2〜20の直鎖または分枝の脂肪族ジオール、ポリ(C2〜C4)アルキレングリコール、環中に炭素原子5〜8個を有する脂環式ジオール、水素化ビスフェノールおよびこれらの混合物から選択され、およびポリラクトンジオールのラクトンが、ラクトン環中に炭素原子3〜8個を有するラクトン少なくとも1種から選択されることを特徴とする重合性組成物。 - ラクトンがε-カプロラクトンである請求項1記載の重合性組成物。
- 第1アリル官能性モノマー(a)が、前記組成物中に、前記組成物の合計モノマー重量を基準として40重量%〜90重量%の量で含まれている請求項1記載の重合性組成物。
- 第1アリル官能性モノマー(a)が、前記式中のRが1,2-エタンジオールの残渣であるアリル官能性モノマーであり、および第2アリル官能性モノマー(b)がポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)である請求項1記載の重合性組成物。
- ポリラクトンジオールのジオールがジエチレングリコールであり、ポリラクトンジオールのラクトンがε-カプロラクトンである請求項1記載の重合性組成物。
- ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)のポリラクトンジオールの数平均分子量が400〜600である請求項5記載の重合性組成物。
- 第1アリル官能性モノマーが、ポリオール(アリルカーボネート)モノマーであり、そして重合性組成物が
(a)第1アリル官能性モノマーの第1クロロホルメート中間体および第2アリル官能性モノマーの第2クロロホルメート中間体を別個に調製すること、
(b)前記第1および第2クロロホルメート中間体の混合物を形成すること、および
(c)前記第1および第2クロロホルメート中間体の混合物のクロメート基をアリルアルコールと反応させ、それによって重合性組成物を形成すること
を含む方法で調製される請求項1記載の重合性組成物。 - (a)アリル基を少なくとも2個有する第1アリル官能性モノマーであって、この第1アリル官能性モノマーの実質上完全に硬化した重合物が少なくとも40の15秒バーコル934硬度を示すように選択され、
(a)下記の式で表されるアリル官能性モノマー:
(b)前記第1アリル官能性モノマー(a)とは異なるポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)である第2アリル官能性モノマーであって、
および
(c)前記第1および第2アリル官能性モノマーとは異なる第3アリル官能性モノマーであって、下記の式で表されるもの:
を含有する重合性組成物であって、
前記第2アリル官能性モノマー(b)が、前記(b)を含まない組成物の完全に硬化した重合物に比べて改良された有機フォトクロミック物質混入と、少なくとも40℃の熱変形温度を示す前記組成物の完全に硬化した重合物を提供するように、前記組成物の合計モノマー重量を基準として10重量%〜60重量%の量で該重合性組成物中に含まれており、かつ前記ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート)のポリラクトンジオールが、ジオールとラクトンの反応生成物であり、ポリラクトンジオールのジオールが、炭素数2〜20の直鎖または分枝の脂肪族ジオール、ポリ(C2〜C4)アルキレングリコール、環中に炭素原子5〜8個を有する脂環式ジオール、水素化ビスフェノールおよびこれらの混合物から選択され、およびポリラクトンジオールのラクトンが、ラクトン環中に炭素原子3〜8個を有するラクトン少なくとも1種から選択されることを特徴とする重合性組成物。 - 第1アリル官能性モノマーが、前記組成物中に、前記組成物の合計モノマー重量を基準として25重量%〜90重量%の量で含まれており、および第3アリル官能性モノマーが、前記組成物中に、前記組成物の合計モノマー重量を基準として1重量%〜50重量%の量で含まれている請求項8記載の重合性組成物。
- R15が、ジエチレングリコールの残基である請求項8記載の重合性組成物。
- ポリラクトンジオールのジオールがジエチレングリコールであり、およびポリラクトンジオールのラクトンがε-カプロラクトンである請求項8記載の重合性組成物。
- 第1アリル官能性モノマーが、ポリオール(アリルカーボネート)モノマーであり、そして重合性組成物が
(a)第1アリル官能性モノマーの第1クロロホルメート中間体、第2アリル官能性モノマーの第2クロロホルメート中間体および第3アリル官能性モノマーの第3クロロホルメート中間体を別個に調製すること、
(b)前記第1、第2および第3クロロホルメート中間体の混合物を形成すること、および
(c)前記第1、第2および第3クロロホルメート中間体の混合物のクロメート基をアリルアルコールと反応させ、それによって重合性組成物を形成すること
を含む方法で調製される請求項8記載の重合性組成物。 - (a)請求項1記載の重合性組成物の重合物、および
(b)フォトクロミック量の有機フォトクロミック物質
を含有するフォトクロミック物品。 - (a)請求項5記載の重合性組成物の重合物、および
(b)フォトクロミック量の有機フォトクロミック物質
を含有するフォトクロミック物品。 - 有機フォトクロミック物質が、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ベンズオキサジン、ベンゾピラン、ナフトピラン、クロメン、有機金属ジチゾナート、フルギドおよびフルギミドおよび前記有機フォトクロミック物質の混合物から成る群より選択される請求項14記載のフォトクロミック物品。
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