JP4104456B2 - 光音響を調べること及びイメージングシステム - Google Patents

光音響を調べること及びイメージングシステム Download PDF

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Description

【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、体内の血中の物質の濃度や体内の物質の濃度を位置の関数として求める、非侵襲性のin-vivo方法及び装置に関する。
【0002】
[発明の背景]
血糖値のin-vivo及びin-vitro計測を行なう方法及び装置が、当業者によって知られている。一般的には、この方法及び装置は、比較的複雑なものであり、また人間の血糖値の計測は、技師の補助の下で、診療所または研究室で行なわれるのが通常であり、また計測コストは比較的高かった。
【0003】
例えば定期的に血糖値をモニタしなければならない糖尿病患者による、家庭での使用のための血糖値を調べる方法及び装置が利用可能である。これらの方法及び関連機器は、一般に侵襲性であり、通常はフィンガープリックによる血液サンプルの取得を伴う。フィンガープリックは不便かつ不快なものであり、フィンガープリックを避けるため、糖尿病患者は血糖値のモニタを推奨されるよりも疎遠に行ないがちである。さらに、多くの従来の血糖値測定器(グルコメータ)は、定期的にサンプル用のスティックとプリック用の針を購入する必要があり、これは面倒かつ使用者にさらなる金銭的負担を強いるものである。使用が容易であり、非侵襲性in-vivoな血糖を調べるグルコメータが必要とされる。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれるPCT公開WO 98/38904には、光音響効果を用いた「非侵襲性in-vivoグルコメータ」が記載されている。光音響効果によって、光エネルギが、人間の血糖計測のための音響エネルギに変換される。その光がグルコースに吸収されるような波長を有する光パルスが、グルコメータから、軟組織を有する指先のような人体の部分を照射するように仕向けられる。光パルスは、一般的に人体の部分の中の比較的小さい焦点領域に集光され、また一般的に光パルスからの光はグルコースに吸収されて焦点領域と隣接する領域の組織内での運動エネルギに変換される。運動エネルギは、吸収組織領域の温度及び圧力を増大させ、音波を生成する。この音波を以下「光音響波」と表記する。これは吸収組織領域から放射される。グルコメータ内に具備された音響センサは、体の部分と当接し、光音響波を検出する。波の強度は、吸収組織領域内のグルコース濃度の関数であり、センサによって計測された強度はグルコースを調べるために使用される。
【0005】
しかしながら、光は生体組織によって拡散し、光が体内の小さな焦点領域に集光したとしても、吸収組織領域の位置及び大きさは正確にはわからない。その結果、得られた光音響効果や人間の血糖値計測値は、必ずしも人間の血液中のグルコース濃度のみを示しているとはいえない。そこでの血管の密集度などの、吸収領域内でのグルコース濃度に影響を与え得る吸収組織領域の特性は、大抵正確には分からない。血糖値の計測値はそれ故に、計測値の信頼性を実質損なうような未知の変数の影響を受ける可能性がある。
【0006】
米国特許 5,941,821には、血糖を調べることに光音響効果を用いる他の非侵襲性のin-vivoグルコメータが記載されている。グルコースによって吸収される波長の光は、適切な周波数に変調されて、体のある領域を照射するためにグルコメータによって注がれる。領域表面近辺の組織内の、血液及び間質液中のグルコースは、光を吸収し、吸収されたエネルギを組織を加熱する運動エネルギに変換する。光の変調に合わせて組織の温度は周期的に上昇と下降を繰り返す。交互に起こる組織の温度上昇と下降によって、照射された領域と接する空気が間欠的に加熱され、音波が空気中に生成される。グルコメータに具備されたマイクロホンによって、グルコースの濃度を求めるために使用される音波の強度が計測される。
【0007】
[発明の概要]
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、人間の血液内のグルコース濃度のみから人間の事実上の血糖値を求める、非侵襲性なin-vivoのグルコメータを提供することに関する。
【0008】
本発明の幾つかの実施形態の一側面は、人体内の少なくとも一本の血管の位置を、超音波を用いて検出する、グルコメータの提供に関する。グルコメータは、位置が検出された少なくとも1本の血管内の血液のみに実質的に含まれるグルコースを調べることによって、人間の血糖値を求める。
【0009】
本発明の実施形態では、グルコメータは、人体に超音波を放射する少なくとも1つの超音波変換器と、放射されて体内の要素を透過または反射した超音波のエネルギを受信する少なくとも1つの超音波センサと、を有する。透過/反射したエネルギから当業者にとって既知の方法を用いて、グルコメータは、少なくとも1本の血管の位置を検出する。本発明の幾つかの実施形態では、グルコメータは、上記少なくとも1本の血管が配置された組織の一部を、グルコースによって吸収される光の波長を有する少なくとも1つの光パルスで照射する、少なくとも1つの光源を有する。上記少なくとも1本の血管内の血液のボリューム、これを以下血液の「ボルス」と称するが、その中のグルコースは、上記少なくとも1つの光パルスからエネルギを吸収する。吸収されたエネルギは、吸収されたエネルギの量の関数である変化をボルス内にもたらし、これはまた、とりわけ、ボルス内のグルコース濃度の関数でもある。
【0010】
吸収されたエネルギによる、ボルスの音響特性の少なくとも1つの変化、及び/またはボルス内で生み出される音響現象は、グルコメータによって計測され、ボルス内のグルコースを調べるために使用される。本発明の幾つかの実施形態では、変化及び/または現象の計測は、少なくとも1つの光パルスでボルスが照射されている間に行なわれる。本発明の幾つかの実施形態では、計測は、少なくとも1つの光パルスでボルスが照射された後に行なわれる。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態の一側面によれば、吸収されたエネルギによって生成された光音響波は、ボルス内のグルコースを調べるために使用される。
【0012】
少なくとも1本の血管が配置されている組織の領域が上記少なくとも1つの光パルスで照射されている時、ボルス及びボルスを囲んでいる組織は、それが上記少なくとも1つの光パルスから吸収したエネルギに反応して光音響波を生成する。グルコメータは、光音響波を検出し、当業者にとって既知の方法を用いてそれらの発信源を特定する。グルコメータは、特定された位置とボルスの位置とを比較して、どの光音響波がボルスから発せられているかを特定する。このように特定された光音響波の振幅は、ボルス内のグルコース濃度の関数であり、人間のグルコースを調べるために使用される。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態の一側面によれば、グルコメータは、ボルスで超音波を反射することによってボルス内のグルコース濃度を計測する。
【0014】
少なくとも1つの光パルスから血液ボルスが吸収したエネルギによって、ボルス内の温度と圧力に変化が生じ、これによりボルスの音響インピーダンスが変化する。音響インピーダンスの変化は、ボルスの音響反射能を変化させる。グルコメータは超音波を人体に送り、これはボルスに入射する。入射した超音波からの音響エネルギのボルスによる反射は、反射能の変化を求めるために検出される。計測された反射能の変化は、ボルス内のグルコースを調べるために使用される。
【0015】
本発明の幾つかの実施形態の一側面によれば、光音響波がボルスによって生成されている間、グルコース濃度を求めるために、ボルス内の変化を計測するため、グルコメータはボルスで超音波を何度か反射させる。光音響波が生成されている間、ボルスの表面は移動し、ボルスで反射した超音波はそれ故にドップラー偏移を生じる。一般に、光音響波が生成されている間は、ボルスの表面領域は、照射された組織内での音速よりもはるかに小さい速度で移動する。結果として、ボルスに入射してボルスで反射された超音波の周波数は、入射した超音波の周波数に比較してかなりドップラー偏移する。これらの反射した波の強度およびドップラー偏移の大きさは、ボルス内のグルコースの濃度を求めるために検知され使用される。本発明の幾つかの実施形態の一側面によれば、グルコメータは、ボルス内のグルコースの濃度を計測するために、ボルスを通過する超音波を伝送する。
【0016】
少なくとも1つの光パルスからのエネルギの吸収によって生じた、ボルス内の温度及び圧力の変化は、ボルス内の音速を変化させる。音速の変化は、ボルスを通過する超音波の伝送時間を変化させる。ボルスを通る少なくとも1つの超音波パルスの伝送時間は、音速の変化およびそこから得られるボルス内のグルコース濃度を計測するため、上記少なくとも1つの光パルスからのエネルギ吸収の前と後に計測される。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態では、エネルギが血管及びボルスを出る前に、ボルスがその中にある血管の壁面間を超音波エネルギのパルスが反復的に前後に「跳ね返り」するが、ボルスを通る超音波の伝送時間はこの反射する超音波エネルギパルスから求められる。結果として、超音波エネルギはボルスを複数回横断、ボルス内での音速は、血管の固有大きさの何倍もの経路長でボルスを通過した音響エネルギパルスの伝送時間から求められる。音速をより正確に求めるには、一般に、伝送時間の計測値が大きくなるように経路をとる。ボルスを複数回横断する超音波エネルギのパルスから求められる血液中の音速は、それ故に1回ボルスを横切ったのみの超音波エネルギのパルスから求められた音速よりも、比較的正確である。
【0018】
超音波パルスが血液ボルスを複数回通過することは、本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの光パルスからのエネルギの吸収によって生じる血液ボルス内での他の変化の計測をも正確なものとする点を留意されたい。例えば、「マルチパス計測」の使用によって、血液内での超音波の吸収係数の変化の計測を正確なものとすることができる。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態の一側面によれば、グルコメータは、ボルスからの超音波の伝送または反射が最大または最小であるような音の波長を求めることによって、ボルス内での変化を計測する。
【0020】
物質層を通過する音の伝送は、音の波長、層の厚さ、層内の物質の音響インピーダンス、および層の両側にある物質の音響インピーダンスの関数である。層の厚さ及び両インピーダンスが与えられれば、層を通過する音の伝送及び層での反射は、特定の「共鳴」周波数でそれぞれ最大となる。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態の一側面によれば、血液ボルスの共鳴伝送及び/または反射波長が、少なくとも1つの光パルスの照射前に、求められる。続いてボルスが少なくとも1つの光パルスで照射され、ボルスおよびボルスの両側の組織の音響インピーダンスに変化が生じる。インピーダンスの変化によって、共鳴波長が変化する。本発明の実施形態によれば、新しい共鳴波長は、複数の波長でボルスを通過する超音波の伝送及び/またはそこでの超音波の反射を計測することによって、求められる。新しい共鳴波長の旧い共鳴波長からの変化量は、血液ボルス内のグルコースの濃度の関数である。偏移の程度は、ボルス内のグルコース濃度を求めるために使用される。ボルスとボルスの両側の組織とのインピーダンスの差が大きくなると、「共鳴」はよりシャープなものとなり、共鳴波長の変化の程度はより明白なものとなる点を、留意されたい。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態によれば、ボルスを通過して伝送される超音波のドップラー偏移はボルス内のグルコースを調べるために計測される。
【0023】
このような実施形態においては、グルコメータは、ボルスが少なくとも1つの光パルスによって照射されている間に、ボルスを通して超音波を伝送する。照射されている間は、ボルス中のグルコースが少なくとも1つの光パルスからエネルギを吸収すると、ボルスの温度は上昇し、ボルス内での音速が変化する。結果として、ボルスから出る超音波の周波数は、ボルスに入射する超音波の周波数に対してドップラー偏移する。ドップラー偏移の程度は、入射超音波の周波数ををf、ボルスを通過する超音波の経路長をD、ボルス内での音速をC、時間をtとすると、f(D/C2)(dC/dt)に等価なものとして示され得る。このドップラー偏移に関する式は、ボルスを通る経路長で音速が一定であると想定したものである。微分dC/dtは、少なくとも1つの光パルスからのエネルギの吸収の時間速度に比例する。エネルギ吸収の時間速度は、ボルス内のグルコース濃度と少なくとも1つの光パルスの強度に比例する。
【0024】
グルコメータは、光がグルコースによって吸収されるような波長の光でボルスを照射するものとして記述されている。しかしながら、グルコース以外のボルスの成分が光を吸収しないような光の波長を選択することは不可能である。この結果、ボルスがあらゆる周波数の光を吸収した結果として、グルコメータによって計測された音響効果は、グルコースによるものであると共に、ボルス内でのグルコース以外の物質、例えばコレステロール、アルブミン、および様々な脂質などが光を吸収したことによるものである。グルコースによる効果の寄与およびそれによって得られるボルス内のグルコース濃度を分離するため、ボルスは好適には複数の異なる波長を有する光パルスで照射され、効果は異なる波長ごとに計測される。血液中の物質による光の既知の吸収断面を用いて、効果に対するグルコースからの寄与およびそれによって得られるボルス内のグルコースの濃度が求められる。
【0025】
前段落で述べられた説明より、本発明は血糖を調べることのみに限定されないことが容易く結論付けられる。グルコース濃度を求める過程において、本発明の実施形態によれば、血液中の他の物質の吸収係数が求められ、この吸収係数はこれらの物質の濃度を求めるために使用されてもよい。例えば、光の「N」種類の異なる波長をグルコース濃度を求めるために使用するならば、本発明の実施形態によれば、血液ボルスのN種類の異なる成分の吸収係数が求められ、ボルスの成分の濃度を調べることができるだろう。ボルス中の、その濃度が概算される異なる特定の物質は、本発明の実施形態によれば、血液ボルスを照射するために使用される周波数を適切に「調節」することによって調べられる。さらに、本発明は、血液の成分を調べることに限定されるものではない。本発明の幾つかの実施形態は、例えば超音波で位置を特定された間質液や凝血や血管内のプラークの成分など、他の組織の成分や体の特性を調べる。
【0026】
エネルギを血液ボルスに与える為に使用されるものとして光のみが記載されているが、本発明の実施形態によれば、マイクロ波やRF(無線周波数)放射等の、他の形態の電磁波放射が、組織体内で調べられる成分に、エネルギを分配するために使用されてもよい。本発明の幾つかの実施形態は、体のある領域内の物質の濃度の空間的な分布図を提供する。幾つかの実施形態では、物質の濃度がマッピングされる体のある領域の部分領域が、物質に吸収される平行光によって照射される。前述のように、体の組織内での光の拡散のため、部分領域の大きさ及び位置は正確には分からない。しかしながら、部分領域内の組織の音響特性の変化は、部分領域内で高精度に配置された「ボクセル」ごとに求めることが可能である。この変化は、本発明の実施形態によれば、ボクセル内で生成された光音響波及び/または、ボクセル上で反射した及び/またはボクセルを通って伝送された超音波の特性を、検知することによって求められる。上記のような、伝送、反射または生成された音波に影響を与える音響特性の変化のいずれも、部分領域を調べるために使用される超音波の数波長から約10波長までの範囲の大きさを有する部分領域内のボクセルに対して特定できる。これらの変化は物質の濃度の関数であるので、本発明の好適な実施形態によれば、部分領域内の異なるボクセルごとに物質濃度が求められる。体のある領域内の物質の濃度の分布図は、体のある領域内で、照射される部分領域を異なる「走査」位置に移動させることによって得られる。
【0027】
体のある領域内の異なる器官や特徴は、通常、物質の濃度のレベルの差異により判別されるので、本発明の実施形態によって提供される物質の濃度分布図は、一般に、器官及び/または特徴を可視化したものである。結果として、本発明の幾つかの実施形態は、体のある領域内の器官及び/または器官の特徴を可視化するために利用される。例えば、LDLコレステロールや酸化LDLコレステロールは、プラーク内で高い濃度を示す。人体のある領域内のLDLコレステロールまたは酸化LDLコレステロールの濃度をマッピングすることにより、領域内の血管の管壁に堆積するプラークの画像が得られる。
【0028】
それ故に、本発明の実施形態によれば、a)成分によって放射が吸収されて領域内の音響特性の変化をもたらすような波長を有する少なくとも1つの放射パルスで領域を照射し、b)領域に入射するように超音波を伝送し、c)入射した超音波に起こる変化の少なくとも1つの効果を計測し、d)領域内での放射の吸収係数を求めるために計測された少なくとも1つの効果を使用し、e)領域内の成分の濃度を求めるために求められた吸収特性を使用する、ことから成る、体のある特定関心領域の成分を調べる方法が提供される。
【0029】
選択として、少なくとも1つの他の波長を有する少なくとも1つの放射パルスで領域を照射し、b-dを繰り返し、領域の成分の濃度を求めるために、求められた少なくとも1つの他の波長に対する吸収特性を使用する。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの効果のうちの1つの効果は、領域の音響エネルギ反射能の変化である。
【0031】
選択として、反射能の変化の計測は、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射する前に領域で少なくとも1つの第1の超音波パルスを反射させ、少なくとも1つの反射パルスの振幅を用いて領域からの第1の音響エネルギ反射能を求め、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射した後に領域で少なくとも1つの第2の超音波パルスを反射させ、第2の少なくとも1つの反射パルスの振幅を用いて領域からの第2の音響エネルギ反射能を求め、第1及び第2の音響エネルギ反射能の差異を求める、ことから成る。
【0032】
選択として、反射能の変化の計測は、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射する前に領域での音響エネルギ反射能を計測し、少なくとも1つの放射パルスで照射している間に入射した超音波が反射してドップラー偏移した超音波の振幅を計測し、少なくとも1つの放射パルスで照射している間に領域を特徴付ける音響エネルギ反射能を求めるためにドップラー偏移した超音波の振幅を使用し、照射前と照射中の反射能の差異を求める、ことから成る。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの効果のうちの1つの効果は、領域内での音速の変化である。
【0034】
選択として、音速の変化を計測することは、超音波が領域を横断するように超音波を第1の変換器から第2の変換器に向かって伝送し、超音波が領域内にある間に領域を照射し、第1から第2の変換器への超音波の第1の部分の第1の伝送時間を求め、領域が照射されている間に第1の部分は領域内の第1の位置にあり、第1から第2の変換器への超音波の第2の部分の第2の伝送時間を求め、第1の部分が第1の位置にあるとき第2の部分は領域内の第1の位置にあり、領域内の第1及び第2の位置の間の位置で領域を通過する音速の変化を求めるために両伝送時間の差を使用する。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態では、領域は、超音波が一部反射する第1及び第2の音響界面間に挟まれており、音速の変化を計測することが、照射前に第1の界面で反射した第1及び第2の位置の間の超音波の伝送時間と第2の界面で反射した第1及び第2の位置の間の超音波エネルギの伝送時間との差を計測し、伝送時間の差から照射前の領域の音速を求め、照射後に第1の界面で反射した第1の位置と第2の位置との間の超音波の伝送時間と第2の界面で反射した第1の位置と第2の位置との間の超音波エネルギの伝送時間との差を計測し、伝送時間の差から照射後の領域の音速を求め、求められた照射前及び照射後の音速から音速の変化を求める、ことから成る。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態では、領域は、超音波が一部反射する第1及び第2の音響界面間に挟まれており、音速の変化を計測することが、a)パルスが界面間を前後に跳ね返って反復的に領域を横断するように照射前に超音波のパルスを領域内に導き、b)領域を通過するパルスは複数回前後に横断するがその横断ごとに界面のいずれか一方を通って領域から出るパルスからのエネルギを検出し、c)エネルギが検出された時の領域内での音速を求め、d)パルスが界面間を前後に跳ね返って反復的に領域を横断するように照射後に超音波を領域内に導いてb及びcのステップを繰り返し、e)求められた音速からその差を求める、ことから成る。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態では、領域は、超音波が一部反射する第1及び第2の音響界面間に挟まれており、音速の変化を計測することが、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射する前に領域に入射する超音波を伝送し、領域を通過する超音波の伝送が最大または最小となるような第1の周波数を求め、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射した後に領域に入射する超音波を伝送し、領域を通過する超音波の伝送が最大または最小となり領域を第1の周波数で伝播する超音波と波長がほぼ同一となるような第2の周波数を求め、領域内での音速の変化を求めるために第1及び第2の周波数の差を使用する、ことから成る。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態では、領域は、超音波が一部反射する第1及び第2の音響界面間に挟まれており、音速の変化を計測することが、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射する前に領域に入射する超音波を伝送し、領域を通過する超音波の反射が最大または最小となるような第1の周波数を求め、少なくとも1つの放射パルスで領域を照射した後に領域に入射する超音波を伝送し、領域を通過する超音波の反射が最大または最小となり領域を第1の周波数で伝播する超音波と波長がほぼ同一となるような第2の周波数を求め、領域内での音速の変化を求めるために第1及び第2の周波数の差を使用する、ことから成る。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの効果のうちの1つの効果は、領域を横断する超音波の周波数の変化である。
【0040】
選択として、周波数の変化を計測することは、超音波が領域を横断するように超音波を第1の変換器から第2の変換器に向かって伝送し、少なくとも1つの光パルスは超音波が領域を通過する移動時間よりも長いパルス幅を有するように、超音波が領域にある間に領域を少なくとも1つの光パルスで照射し、領域が照射されている間に第1の部分が領域内の第1の位置にあるような超音波の第1の部分の周波数の第1の周波数偏移を求め、第1の部分が第1の位置にあるときに第2の部分が領域内の第2の位置にあるような超音波の第2の部分の周波数の第2の周波数偏移を求め、領域内の第1及び第2の位置の間の位置で超音波に起こる周波数偏移を求めるために第1及び第2の周波数偏移の差を使用する。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態では、前記少なくとも1つの効果の中の効果は、領域内の経路長に沿って起こる超音波の吸収の変化である。
【0042】
選択として、領域は、超音波が部分的に反射する第1及び第2の音響界面間に挟まれており、経路長に沿って起こる吸収の変化を計測することが、a)パルスが界面間を前後に跳ね返って反復的に領域を横断するように照射前に領域内に超音波のパルスを導き、b)領域を通過するパルスは複数回前後に横断するがその横断ごとに界面のいずれか一方を通って領域から出るパルスからのエネルギの量を検出し、c)領域を通過して複数回前後に横断するがその横断が行われるごとにパルスからのエネルギの量を求め、d)パルスが界面間を前後に跳ね返って反復的に領域を横断するように照射後に超音波を領域内に導いてb及びcのステップを繰り返し、e)求められた吸収されたエネルギの量を使用して経路長に沿って起こる超音波の吸収の変化を求める、ことから成る。
【0043】
本発明の一部の実施の実施形態では、方法は、領域の位置を求める。選択として、領域の位置を求めることは、超音波を体内に伝送する。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態によれば、領域に入射するように超音波を伝送することおよび入射した超音波の変化による効果を計測することは、体に連結された少なくとも1つの超音波変換器によって中継され、方法は少なくとも1つの変換器と体の間の連結部の音響特性を計測する。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの放射パルスは、マイクロ波パルスを有する。本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの放射パルスは、RFエネルギパルスを有する。本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの放射パルスは、光パルスを有する。
【0046】
本発明の実施形態によれば、a)成分によって光が吸収されるような波長を有する少なくとも1つの光パルスで領域を照射し、b)光パルスに反応して生成される光音響波を検知してその発生源を求め、c)領域内での光の吸収係数を求めるために領域内に発生源を有するこれらの光音響波の強度を使用し、d)領域内の成分の濃度を求めるために求められた吸収係数を使用する、ことから成る、ある領域の成分を調べる方法がさらに提供される。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの光パルスは、あるパルス反復速度で放射される少なくとも1組の連続するパルスを有する。
【0048】
選択として、光音響波の位置を検知して求めることは、音響参照ビームを領域上に集中させ、音響参照ビームは少なくとも1組の連続する光パルスのパルス反復周波数からあるオフセット周波数だけ偏移した周波数と、領域が音響励起に対して非線形の応答をするような強度とを有し、オフセット周波数の音波を検出することである。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態では、方法は、少なくとも1つの他の波長を有する少なくとも1つの光パルスで領域を照射し、bおよびcを繰り返し、少なくとも1つの他の波長に関する求められた吸収係数を使用して領域内の成分の濃度を求める。
【0050】
選択として、本発明の実施形態による方法において、光音響波の位置を検知し求めることは、音響参照ビームを集中させることを有し、方法は、異なる波長及びパルス反復速度で特徴づけられる少なくとも1つの他の連続する光パルスで領域を照射し、bおよびcを繰り返し、少なくとも1つの他の連続する光パルスに対して求められた吸収係数を使用して領域の成分の濃度を求めることである。選択として、連続する光パルス及び少なくとも1つの他の連続する光パルスは領域をほぼ同時に照射する。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態では、光音響波を検出することは、体に連結された少なくとも1つの超音波変換器によって中継され、方法は少なくとも1つの変換器と体の間の連結部の音響特性を計測する。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態では、方法は、領域の位置を求める。選択として、領域の位置を求めることは、超音波を体内に伝送することである。
【0053】
選択として、領域の位置を求めることは、少なくとも1つの方向が超音波の5波長未満であるような不定領域の中に領域の位置を特定することである。選択として、領域の位置を求めることは、少なくとも1つの方向が超音波の3波長未満であるような不定領域の中に領域の位置を特定することである。選択として、領域の位置を求めることは、少なくとも1つの方向が超音波の約1波長であるような不定領域の中に領域の位置を特定することである。
【0054】
選択として、少なくとも1つの光パルスは赤外光のパルスを有する。選択として、少なくとも1つの光パルスは可視光のパルスである。
【0055】
本発明の幾つかの実施形態では、方法は、体内の物質の音響特性を計測する。選択として、求められた吸収係数は、計測された音響特性に対応して調整される。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態では、体は生体である。選択として、生体は人体である。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態によれば、領域は、体の血管の中の血液ボルスである。選択として、成分はグルコースである。
【0058】
本発明の実施形態によれば、本発明の実施形態による方法によって体内の複数の領域の特徴の成分を調べ、特徴の画像を提供するために要素を調べることによって得られた領域の位置の関数としての計測結果を表示する、ことから成る、体の内部の特徴を画像化する方法がさらに提供される。選択として、方法は、異なる画像化様式によって得られた領域の他の画像の上に、成分を調べることによって得られた画像をオーバーレイ表示する。選択として、異なる画像化様式は、超音波画像である。本発明の幾つかの実施形態では、同一の少なくとも1つの超音波変換器または超音波センサが成分を調べることから得られる画像と超音波画像の両方を得るために使用される。
【0059】
本発明の幾つかの実施形態では、体は生体である。選択として、生体は人体である。
【0060】
本発明の幾つかの実施形態では、特徴は血管内のプラークの堆積である。本発明の幾つかの実施形態では、成分はLDLコレステロールまたは酸化LDLコレステロールである。本発明の幾つかの実施形態では、特徴は腫瘍である。
【0061】
本発明の実施形態によれば、パルス反復周波数を有する光パルスで領域を照射して領域内で光音響波を生成し、生成された光音響波とパルス反復周波数からあるオフセット周波数だけ偏移した周波数を有する音響参照ビームとをヘテロダイン混合し、オフセット周波数で音波を検出することから成る、光によって体のある領域内で生成された光音響波を検出する方法がさらに提供される。
【0062】
選択として、ヘテロダイン混合は、領域内の音響参照ビームからの音響エネルギが充分に音響励起に対して非線形の応答をするように、音響参照ビームを領域内に集中させる。
【0063】
【発明の実施の実施形態】
[図面の簡単な説明]
本発明の非限定の実施形態は本文書内に添付された図面を参照して以下に説明される。図面に於いては、1つ以上の図面に現れる同一の構造、要素または部位には、これらが現れる全ての図面において同一または類似の符号が一般に割り当てられる。図面内の成分及び特徴の大きさは表示の利便性及び明確性を考慮して選択されたものであり縮尺を示す必要はない。
【0064】
[例示的な実施形態の詳細な説明]
図1A−1Cは、本発明の実施の実施形態による、人体の部分24内の血液内で生成される光音響波を検出することによって人間の血糖を計測するグルコメータ20を示したものである。グルコメータ20は、少なくとも1つの超音波変換器26と、グルコースによって吸収される光の波長を有する光を供給する光源28と、少なくとも1つの超音波変換器と光源とを制御するコントローラ30と、を有する。
【0065】
少なくとも1つの超音波変換器26は、音響的に領域24と連結し、また領域24内での音響インピーダンス及び音速の分布を調べるために使用され、また当業者にとって既知の超音波画像技術または方法を用いて領域内の特徴の特定及び位置の検出を行うために使用される。特に、少なくとも1つの超音波変換器24は、当業者にとって既知の方法を用いて、体の部分24内の少なくとも1本の血管22の特定及び位置の検出を行なうために使用される。例えば、血液の速度成分が血管に入射する超音波と平行であるという想定が成立するならば、血管で反射した超音波の、血管内での血液の速度によって生じるドップラー偏移を検出することによって、血管の位置の特定は実施可能である。或いは、血管の管壁での超音波の反射を検出することによって、血管の位置の特定は実施可能である。
【0066】
本発明の実施や血管の位置特定に適した、数多くの様々な超音波変換器、変換器の設定、および超音波画像生成方法は、当業者にとっては既知である。
【0067】
少なくとも1つの変換器26は単一の変換器または複数の変換器を有してもよい。少なくとも1つの変換器26は、超音波を生成するときは点音源として働きまた比較的大きな立体角で超音波を検知する点センサとして働く、比較的小さな変換器を有してもよい。少なくとも1つの変換器26は、超音波の平行ビームを生成し比較的小さい立体角で超音波を検出する、ある形状の変換器を有してもよい。少なくとも1つの変換器は、コントローラ30によって制御されて超音波のビームを生成して偏向する、超音波変換器のフェーズドアレイを有してもよい。
【0068】
少なくとも1つの変換器26は、光学エネルギのパルスを音響エネルギに変換する「光学」超音波変換器のような、圧電変換器または他の当業者にとって既知の変換器を有してもよい。光学超音波変換器は、日本のICPPP2000年第11号に掲載されたO. Masudaによる論文「Theory of Detection of Shear Stress Pulses with Laser Picosecond Acoustics」に記載されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれている。このような変換器は、ピコ秒以下のパルス長を有する超音波パルスを生成し、また検出する。
【0069】
本発明の幾つかの実施形態では、同じ変換器が超音波の生成と検出の両方に使用される。本発明の幾つかの実施形態では、超音波を伝送するために使用される少なくとも1つの変換器は、超音波の検出には使用されない。
【0070】
図1A-1Cおよびそれに続く図面には、表示の利便性のために、少なくとも1つの超音波変換器26は、一例として、超音波の伝送と検出の両方を行いまた平行パルス及び/または集中パルスを生成するよう制御可能なものが想定されている。図1Aにおいては、コントローラ30は、超音波の少なくとも1つの平行パルスを体内に伝送するために、少なくとも1つの超音波変換器26を制御するものであり、超音波パルスは円弧線分32で示されている。少なくとも1つの超音波パルス32の一部のエネルギは、少なくとも1本の血管22のある領域36で反射し、反射した少なくとも1つの超音波パルス38として少なくとも1つの変換器26に戻る。
【0071】
反射したパルス38は、少なくとも1つの超音波変換器26によって検出され、変換器26はそれに対応する信号を生成し、この信号をコントローラ30に送る。コントローラ30は、少なくとも1本の血管を特定しまたその位置を検出するために、当業者にとって既知の方法を用いて、受信した信号を処理する。例えば、少なくとも1本の血管22の領域36を通って移動する血液ボルス40が、パルス32または反射したパルス38に平行な速度成分を有する想定する。次いで、ボルス40で反射したパルスによって起こる、反射したパルスのドップラー偏移を検出することによって、少なくとも1本の血管22があることを示すものとして、反射したパルス38は認識されうる。超音波パルス32が伝送された時間とドップラー偏移を起こした超音波パルス38が超音波変換器26に到達した時間との間の時間差から、血管22の位置を求めても良い。加えて、反射したパルス38は、伝送されたパルスのエネルギが少なくとも1本の血管22の管壁での反射することによって発生する。反射は、管壁の音響インピーダンスは管壁に接する組織の音響インピーダンスと異なるために起きる。
【0072】
少なくとも1つの超音波パルス32からのエネルギは、少なくとも1本の血管22やその特徴部のみで反射するわけではないことを留意されたい。一般に、少なくとも1つの超音波パルス32は組織の界面や体の部分24内の音響インピーダンスが急激に変化する領域で反射する。本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの変換器26によって検出される反射エネルギは、例えば音響インピーダンスや音速などの、体の部分24の領域の音響特性を求めるために使用される。本発明の幾つかの実施形態では、音響エネルギの反射は、少なくとも1つの変換器26と体の部分24との連結部の音響特性を求めるために使用される。体の部分24の音響特性の計測は、「音響キャリブレーション計測」として以下に参照される。
【0073】
本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの変換器26によって生成された超音波は、5MHzより大きい周波数を有する。本発明の幾つかの実施形態では、周波数は10MHzにほぼ等しいかそれより大きい。音は体の組織の中を1.5mm/μsecで伝播し、また組織の特徴の検出を行なうに当たっての実用的な侵入深さを有する。この深さは吸収の度合いによって限定され、また周波数が増大すると減少する。超音波の周波数が約10MHzであれば、変換器によって生成される超音波の波長は約0.15mmであり、実用的な侵入深さは約35mmである。この周波数、グルコメータ20は、変換器が超音波パルスを伝送する方向に約0.15mm(換言すればおおよそ波長長さ)の精度で、少なくとも1本の血管22の位置を求めることができる。本発明の幾つかの実施形態において、伝送された超音波パルス32は、平行であり、その断面直径は約1.5mmである。グルコメータ20はそれ故に、例えば人間の手首、前腕、鼠蹊等に位置する典型的な大きさの直径を有する血管の位置を特定するのに充分な空間解像度と侵入深さとを有する。
【0074】
図1Bでは、少なくとも1本の血管22の位置が特定された後に、コントローラ30は、少なくとも1本の血管22の領域36に「照準を合わせ」た平行光の少なくとも1つのパルス42で、体の部分24を照射するよう光源28を制御する。光パルス42は体の部分24に入り、体の部分24の中の組織は光を拡散させ、平行光は横方向に広がる。それ故に、光パルス42が体の部分24の中へより深く侵入すると、体の部分の組織が照射される体積は増加する。ボルス40周囲の領域では、ボルス40の体積よりも大きい組織が照射されている。それ故に、拡散が起こるので、一般に、体の部分24内の組織の、比較的小さくかつ正確に定義された領域に対して、平行光を照射の為に使用することはまずできない。結果として、一般に、体の部分24内にある光パルス42によって、光音響波を生成することができる。この体の部分24は血液ボルス40に限定されるものではなく、血液ボルスのある位置から大きく離れた位置でも光パルスは光音響波を生成するだろう。図1Bでは、線状網掛け44は、光パルスの進行方向に垂直な少なくとも1つの光パルス42の空間的拡大を示すエンベロープ(包絡波形)を概略的に表示したものであり、また、体の部分24の中にある網状線部44の広がりは、少なくとも1つの光パルス42の横方向の広がりを示している。
【0075】
光源28は一例として超音波変換器側に示されているが、光源28が他の位置にあってもよく、またそのほうが都合がよい、ということを留意されたい。本発明の幾つかの実施形態では、例えば、超音波変換器26に穴が形成され、光パルスがこの穴を通るように光源28が位置決めされる。超音波変換器26の穴を通って光パルスを伝送することにより、体の部分24にある変換器の「視野」の照射は比較的一定かつより等方性となる。この「視野」の中で変換器は体の部分の特徴を検出する。さらに、光源28は単光源として示されているが、光源28は、ボルス40のグルコース濃度を求めるに適した波長の光を供給する複数の光源を有していても良い。
【0076】
図1Cは、光音響波を概略的に示したものである。これは、同心円によって表示されるものであり、光42の照射の結果として体の部分24内で生成される。一群の同心円のうち、最も中心にある同心円は、光音響波の発生源の位置を概略的に示すものである。破線で記載されている同心円48は、血管22やボルス40の外で光パルス42からエネルギを吸収することによって生成される光音響波を概略的に示すものである。実線で記載されている同心円50は、ボルス40内を発生源とする光音響波を概略的に示すものである。
【0077】
超音波変換器26は光音響波48および50を検出し、これに対応した信号をコントローラ30に送信する。本発明の実施形態によれば、コントローラ30は、あらかじめ行なわれ図1Aの説明で触れられた音響キャリブレーション計測の結果を用いて、光音響波48および50のそれぞれの発生源の位置を求める。コントローラ30は次いで、これらの位置とボルス40の位置とを比較する。光音響波の発生源の位置を求める方法は、PCT公開WO 98/14118号および米国特許5,713,356号に記載されており、これらは参照によりここに組み込まれる。
【0078】
本発明の実施形態によれば、コントローラ30は、それ故に、ボルス40で生成された光音響波とボルス40の外でで生成された光音響波とを識別することができる。コントローラ30は、光音響波50がボルス40中に配置されていることと、光音響波48がボルス40の外に配置されていることとを、求める。本発明の実施形態によれば、コントローラ30は、それ故に光音響波50及び48の位置及び振幅、およびキャリブレーション計測を用いて、人間の血液中のグルコース濃度を求める。
【0079】
超音波センサ26によって検出された光音響波50による圧力振幅および光音響波50の形状は、少なくとも1つの光パルスからボルス40が吸収したエネルギの量の関数である。少なくとも1つの光パルスから吸収されたエネルギの量は、無論、光パルスの光の血液への吸収係数の関数である。一般に、吸収したエネルギの量は、比較的小さく、この結果、エネルギ量は光42の血液への吸収関数におおよそ比例する。光音響波の振幅と、光音響波を生じせしめる組織の領域に吸収されたエネルギの量との関係は、Bowenによる米国特許4,385,684に記載されており、その開示が参照により本明細書に組み込まれるが、PCT公開WO 98/14118も上記記載に参照される。光音響波の振幅に関する式はまた、Lai, H. M.とYoung, K. J.によるAcoust. Soc. Am. Vol 76, pg 2000(1982)に掲載の論文、MacKenzieらによるClin. Chem. Vol 45, pp 1587-1595(1999)に掲載の論文「Advances in Photoacoustic Noninvasive Glucose Testing」、C. G. A. HoelenらによるAcoust. Soc. Am. 106 2(1999)に掲載の論文「A New Theoretical Approach To Photoacoustic Signal Generation」にもあり、これらの開示は参照によりここに組み込まれる。
【0080】
光音響波50の振幅をPとすると、振幅を求める式は、Hoelenらによれば、P = A(βC2/H)(IOτe- α db である。ここで、Aは比例定数であり、βは血液の温度拡張係数であり、Cは音速であり、Hは血液の特定熱容量である。IOおよびτはそれぞれ少なくとも1つの光パルスの強度及びパルス長である。αは少なくとも1つの光パルス42が体の部分24の組織に吸収されるときの吸収係数であり、dは光パルス42が体内を血液ボルス40に到達するまで移動するときの経路長である。αbは、少なくとも1つの光パルス42に含まれる光におけるボルス40内の血液の吸収係数であり、これは血液中のグルコース濃度の関数である。指数因数e- α dは、減衰率であり、少なくとも1つの光パルス42の強度は経路長dを減る度にこの減衰率に従って減衰する。減衰率は、血液ボルス40の位置から定まるdと実験に基づいて得られた値αによって決まる。本発明の幾つかの実施形態では、吸収係数αは、経路長dに沿う距離の関数として、上記のPに関する式または他の参照となる文書中の式の何れかを用いることによって、および計測された項音響信号を有限要素解析することによって、求められる。
【0081】
少なくとも1つの光パルス42に含まれる光の波長は、光がグルコースに吸収されるような値が選ばれる。吸収係数αbは、それ故に、少なくとも1つの光パルス42に含まれる光と波長の等しい光に対する既知のグルコースの吸収断面積と、血液ボルス40内の未知のグルコース濃度との関数である。血液ボルス40内で生成された光音響波の振幅Pの計測は、それ故に、血液ボルス40内のグルコース濃度を求めるために使用されうる。本発明の幾つかの実施形態では、コントローラ30は、体の部分24内の組織の音響特性や少なくとも1つの変換器26と体の部分との連結によってPに生じたバイアスを除去するために、音響キャリブレーション計測の結果を用いて振幅Pを調整する。コントローラ30は、調整されたPを用いてグルコース濃度を求める。
【0082】
グルコースは、本発明の実施に使用されうる多くの異なる波長に吸収のピークを有する。例えば、グルコースは、中赤外線(IR)中の9.7μm、結合音領域中の2.10, 2.27, 2.32μm、第1倍音領域中の1.73, 1.69, 1.61μm、そして比較的低吸収であるものの近赤外線中の0.76, 0.92, 1.00μmを中心とするバンドに吸収のピークを有する。これらの値は本発明の実施に使用される。しかしながら、血液中のグルコースのみが光を吸収するような波長は存在しない。コレステロール、アルブミンや様々な脂質や蛋白質のような血液中の多くの異なる物質が、グルコースが光を吸収する波長近辺の光を吸収する。その結果、吸収係数αbは、血液ボルス40内のグルコース濃度のみならず、血液ボルス内の他の光吸収物質の濃度(および吸収係数)の関数となる。それ故に、本発明の実施形態によれば、人間の血糖を調べるために、光音響波の振幅の計測を複数の異なる光の波長に対して行なうことによって、人間の血液ボルス40による光の吸収係数αbが求められる。次いで、求められた吸収係数を当業者にとって既知のアルゴリズムで解析することによって、人間の血液中のグルコースの濃度を求める。
【0083】
グルコース濃度の決定に用いる、異なる波長の光を選択するための適切なクライテリアおよび、吸収係数を解析する方法及び技術は、既知である。Maruoらによる米国特許5,957,841、V. Cliftによる米国特許5,452,716、Caroによる米国特許5,348,002、Robinsonらによる米国特許4,975,581、これらの開示が参照により本明細書に組み込まれるが、これらには、複数の波長での吸収計測からグルコース濃度を求める方法について記載されている。米国特許5,957,841には、組織内での3バンド(1.48-1.55μm, 1.55-1.65μm, 1.65-1.88μm)での光の吸収の計測から、組織内のグルコース濃度を求めることが記載されている。レーザやレーザダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)のような、グルコースを調べるために使用される波長の光を生成する適切な光源が、本発明の実施形態によれば、容易に使用可能である。グルコースを調べる方法の中でも、本発明の実施形態によれば、図4を参照する後述の方法のように、血液ボルスを所望の周波数で継続的に照射することが要求される場合は、フィルタ付のランプを光を供給するために使用することができる。
【0084】
本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの光パルス42によって血液ボルス内で生成された光音響波は、本発明の実施形態によれば、光音響波と音響参照波をヘテロダイン混合することによって検出される。
【0085】
ヘテロダイン混合による検出技術を説明するため、本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの光パルス42は、第1の周波数で放射される1組の連続するパルスを有する。血液ボルスで光音響波が次いで生成され、その時の周波数はほぼ第1の周波数である。参照光源は「参照」音響波が第2の周波数で生成されるよう制御されており、第2の周波数は第1の周波数からのオフセットしており、これは血液ののボルス40上で集光される、という点が想定される。更に、参照音響波によって血液ボルスが非線形的な音響の応答を音響励起に対して行なえるように、参照音響波は充分な強度を有するという点が想定される。この結果、光パルス42によって血液ボルス40内で生成された光音響波は、光パルスの強度や周波数の関数であるのみならず参照音響波の強度や周波数の関数でもある。参照波による、血液ボルスの「音響非線形性」によって、参照波と血液ボルスの光パルス42に対する光音響応答が連結する。
【0086】
特に、参照波の位相および血液ボルス40での光パルス42の光学エネルギのエンベロープが一定であれば、参照波と血液ボルスの光音響の応答が連結して、「ヘテロダイン光音響信号」が生成される。血液ボルスから伝送されるヘテロダイン光音響信号の周波数は、第1及び第2の周波数のうなり周波数とほぼ等しい。ヘテロダイン信号の圧力振幅は、参照ビームのパワーに比例し、通常は光パルス42による照射に応答して血液ボルス40によって生成された光音響波の圧力振幅よりも大きくなる。ヘテロダイン信号は、当業者にとって既知の技術を用いて少なくとも1つの変換器26によって生成された信号を適切にフィルタリングすることによって、検出される。
【0087】
発明者らは、約1mWのパワーで体積約1mm3の血液ボルスに集中して入射される参照音響ビームは、参照音響ビームに対する光音響応答と連結するのに充分なエネルギを血液ボルス内に集中すると、予測されている。ヘテロダイン信号を生成するために、人体内にある2つの音響信号を連結させることについては、Robert T. BayerとStephen V. Letcherによる「Physucal Ultrasonics」(Academic Press 1969)にて説明されており、これはここに参照により本明細書に組み込まれる。この書籍に記載された演算によって、因子を得ることが可能であることが示されている。
【0088】
本発明の実施形態によれば、ヘテロダイン混合による検出技術の使用によって、異なる複数の波長の光によってボルス40内で生成された光音響波を同時に励起し、続いて同時に検出することが可能である、とという点を留意されたい。例えば、血液ボルス内のグルコースの濃度を求めるために、3種類の異なる波長を有する光を同時に照射することが想定される。さらに、波長ごとに光のパルス幅が異なり、また照射中に参照音響波がボルス上で集中することが想定される。血液ボルスの光音響応答の結果、強い音響信号が3つの波長ごとに異なるうねり周波数で生成されるだろう。各周波数の信号は、同時に検出され、当業者にとって既知の適切なフィルタリング及び信号処理技術を用いて識別される。
【0089】
本発明の実施形態によれば、ヘテロダイン混合を用いた検出は、体内で生成された光音響波の発生源の位置を求めるために使用されうる、という点が理解される。参照音響ビームのエネルギは、既知の位置にある比較的小さな焦点ボリュームに集中する。体内で生成された光音響信号は、うねり周波数と等しい周波数を有するという特徴を持ち、参照ビームの焦点ボリュームが発生源であると考えられる。
【0090】
図2A-2Cは、本発明の実施形態による、血液による超音波の反射を検出することによって人間の血液のグルコース濃度を計測する、グルコメータ20と類似のグルコメータ20'を示したものである。
【0091】
図2Aでは、図1Aのように、少なくとも1本の血管22の中の血液ボルス40の位置を特定するために、また選択として音響キャリブレーション計測を行なうために、少なくとも1つの超音波パルス32を体の部分24内に伝送する変換器26をコントローラ30が制御する。コントローラ30は、少なくとも1つの超音波パルス32の強度および、それに対応する血管管壁と血液ボルス40の間の界面で反射した超音波パルスを使用して、血管管壁と血液ボルス40の間の界面の音響エネルギ反射能を求める。
【0092】
図2Bでは、コントローラ30は、ボルス内のグルコースの計測に有用な波長を有する少なくとも1つの光パルス42で血液ボルスを照射するように、光源28を制御する。血液ボルス40および血管管壁41が少なくとも1つの光パルスから吸収するエネルギによって、ボルスと血管管壁の音響インピーダンスは変化する。インピーダンスの変化によって、血液ボルス40と血管管壁41との界面での音響エネルギ反射能が変化する。少なくとも1つの光パルスからボルス40が吸収したエネルギの量と、この結果得られる音響エネルギ反射能の変化は、グルコース及び少なくとも1つの光パルス42の波長の光を吸収する血液中の他の物質の濃度の関数である。
【0093】
ボルス40の音響エネルギ反射能を「R」とすると、反射能の変化の程度「ΔR」は、通常式ΔR≒K(βΔT)2で概算される。ΔRの式に於いて、Kは比例定数であり、ΔTは少なくとも1つの光パルスからのエネルギの吸収によって生じたボルス40と血管管壁41の温度差である。温度差ΔTが、ほぼ血液ボルス40の温度変化によるものであると想定すると、ΔRは、Bを比例定数として、ΔR≒K[B(β/Hρ)(IOτe- α db]2で記述される。ΔRを求める式において、ρは血液ボルス42の密度であり、他の記号は前述のPを求める式における定義と同様である。
【0094】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの光パルス42による「加熱」の結果である、血液ボルス40の音響エネルギ反射能の変化ΔRは、ボルスが少なくとも1つの光パルスに照射された後に、ボルス40で反射した超音波から計測される。ΔRの変化は複数の波長のそれぞれについて計測される。それぞれの波長について、その波長の光に対する血液の吸収係数αbは、計測された反射能の変化を用いて求められる。求められた吸収係数は、光音響波の振幅から吸収係数を求める処理であって血液のグルコース濃度を求めるために行なわれる処理の方法と類似の方法で、処理される。
【0095】
本発明の幾つかの実施形態では、コントローラ30は、体の部分24内の組織の音響特性や少なくとも1つの変換器26と体の部分との連結部の音響特性によって生じるバイアスを除去するために、音響キャリプレーション計測の結果を用いてΔRの値を調整する。コントローラ30は、調整されたΔRの値を使用してグルコースの濃度を求める。
【0096】
図2Cは、ボルスが少なくとも1つの光パルスによって加熱された後に、血液ボルス40と血管管壁41との界面での音響エネルギ反射能を計測しているグルコメータ20'を概略的に示したものである。図2Cでは、コントローラ30は、ボルス40に入射する少なくとも1つの超音波パルスを伝送するために、少なくとも1つの超音波変換器26を制御する。少なくとも1つの超音波パルス46からのエネルギは、ボルス40と血管管壁41の界面で反射し、伝播して反射した超音波の超音波パルス47として超音波変換器26に戻る。変換器26は、反射した超音波パルス47に応答して信号を生成し、この信号はコントローラ30に伝送される。コントローラ30は、当業者にとって既知の方法を用いて、信号を処理してボルス40と血管管壁41の界面の音響エネルギ反射能を求める。コントローラ30は、求められた反射能と少なくとも1つの光パルスによって照射される前の界面の反射能とを比較して反射能の変化量を求める。
【0097】
好ましくは、少なくとも1つの光パルス42によって生成された光音響波が超音波パルスの伝送時には減衰されるように、超音波パルス46はボルス40が少なくとも1つの光パルスに照射された時から充分に長い時間遅れて伝送される。これは、反射した超音波パルス42の計測を妨害することなく光音響波が超音波変換器26に入射することを保証するものである。
【0098】
本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの光パルスは1組の連続する光パルスを有し、グルコメータ20'は、1組の連続する光パルスの各光パルスについて、反射能の変化を計測する。選択として、光パルスと光パルスの間にボルス40の温度がほぼ周囲温度まで下がるように、パルス幅及びパルス反復速度は設定される。選択として、光パルスの照射によって起こる反射能の変化を求めるために、ボルス40のエネルギ反射能は、1組の連続する光パルスの各光パルスの照射の前後に、ボルスで超音波パルス46を反射させることによって計測される。本発明の幾つかの実施形態では、光パルスのパルス幅は約10ナノ秒であり、パルス反復速度は約10kHzである。本発明の幾つかの実施形態では、超音波パルス46は、周波数が少なくとも10MHzの超音波パルスである。
【0099】
本発明の幾つかの実施形態では、少なくとも1つの光パルス42が照射されている間またはそのすぐ後に、血液ボルス40の音響インピーダンスの変化が計測され、血糖値が求められる。計測を行なうために、グルコメータ20'は、光パルスによってボルス40が加熱されている間またはそのすぐ後の、光パルスの照射に応答してボルスが光音響波を生成している時間中に、超音波をボルス40で反射させる。
【0100】
光パルス42からのエネルギを吸収してボルス40が膨張している間にボルス40で反射した超音波は、極めて明確かつ比較的容易に識別されるシグネチャである、極めて大きなドップラー偏移を伴う。膨張中は、光音響波が血液ボルス40内で生成されている間に、血液のボリュームの表面は音速に近い速度で膨張する。この結果、ボルス40が光パルス42によって加熱されている間に、ボルス40で反射した音波は、一般に極めて大きなドップラー偏移を持つ。
【0101】
図3Aおよび3Bに示されているのは、グルコメータ20と類似のグルコメータ21であって、血液に吸収された光によって血液ボルスが加熱されている間に血液ボルス40で超音波を反射させることによって、人間の血液内のグルコースを調べているものである。
【0102】
図3Aでは、図2Aと同様、グルコメータ21が少なくと1本の血管22および血液ボルスの位置を特定し、選択として音響キャリブレーション計測を行う。図3Bでは、コントローラ30は、光源28を制御して光パルス42でボルス40を照射させ、またボルスが照射されている間に、超音波変換器26を制御して血液ボルスに集中する超音波パルスを伝送させる。光パルス42によるボルス40への照射の結果、ボルス40は急速に膨張する。ボルスの表面は、音速に近い速度でボルスから外に移動し、光音響波を生成する。超音波パルス51からのエネルギは、急速に移動するボルス40の表面で反射し、表面の移動速度によって生成される大きなドップラー偏移を有する超音波パルス54となる。ドップラー偏移したパルス54の強度は、血液ボルス40の表面でのエネルギ反射能の関数であり、換言すれば血液ボルス40における光の吸収係数とボルス周囲の組織の吸収係数との差の関数である。
【0103】
本発明の実施形態によれば、グルコメータ21は、血液ボルスが異なる周波数の光によって照射されている間に血液ボルスで反射したドップラー偏移した波の強度を計測する。計測結果は、その波長での血液における吸収係数と、血液中のグルコース濃度を求めるために使用される。本発明の幾つかの実施形態によれば、計測値は、音響キャリブレーション計測によって修正され、また修正された計測値は、グルコース濃度を求めるために使用される。
【0104】
図4は、本発明の実施形態による、血液中の音速の変化を検出することにって血糖を計測するグルコメータ60を概略的に示したものである。
【0105】
グルコメータ60はグルコメータ20と類似である。しかしながら、グルコメータ20が、体の部分24の異なる位置に配置された複数の超音波変換器であってもよい少なくとも1つの超音波変換器26を伴って示されるのに対して、グルコメータ60は、明示的に少なくとも1つの超音波変換器62と少なくとも1つの超音波変換器64とを伴って示される。少なくとも1つの超音波変換器62および少なくとも1つの超音波変換器64は、体の部分24の互いにほぼ対向する位置に配置される。
【0106】
図1A-3Bに記載された、グルコメータ20および血糖を調べる方法に対して、クルコメータ60は、超音波を用いて少なくとも1つの血管22および血管内の血液ボルス40を検出し、選択として、音響キャリブレーション計測を行う。加えて、グルコメータ60は、超音波変換器62と64との間の組織内の平均音速を求める。当業者にとって既知の異なる技術を、組織内での音速を求めるために使用してもよい。例えば、グルコメータ60は、変換器62と64との間の伝送時間を調べ、この転送時間を用いて組織内での音速を求める。好ましくは、グルコメータ60は、当業者にとって既知の技術を用いて、血管22の管壁41で反射する超音波の、ボルス40における平均音速を求める。組織を超音波パルスの伝送時間を計測する方法は、米国特許4,059,01に記載されており、その開示内容は、ここに参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
図4では、コントローラ30は、ボルス40を通過して少なくとも1つの超音波変換器64に入射する変調された超音波ビーム68を伝送するために、少なくとも1つの超音波変換器62を制御する。本発明の幾つかの実施形態では、ビーム68の振幅が変調されている。図4では、一例として、ビーム68は、ビームの左側に示される、振幅の変調されたエンベロープ70を有する。
【0108】
ビーム70が伝送されている時間t0に、コントローラ30は、光源28を制御して少なくとも1つのボルス40をグルコースによって吸収されるような波長を有する光パルス42で照射させる。ボルス40および体の部分24内のボルス40周辺の組織は、光パルス42からのエネルギを吸収する。吸収されたエネルギはボルス40内及び周囲の組織内の音速を変化させる。この結果、少なくとも1つの変換器62からボルス40を経由して少なくとも1つの変換器64に至る超音波の伝送時間は変化する。
【0109】
光パルスによって照射された組織内での音速の変化が最大になっている間の、光パルス42のパルス幅および立ち上がり時間は、ボルスを通過する音の伝送時間と微視的には関連すると想定される。さらに、変化が最大に達すると、光パルス42に照射されている血液ボルス40周囲の組織内を音が伝送している時間と等しい時間、その変化は比較的安定すると想定される。(換言すれば、光パルス42による音速の変化の立ち上がり時間は、ボルス40を通過する音の伝送時間に近似されると想定される。さらに、変化の減衰時間は、ボルス40の周囲で光パルス42によって照射された組織のボリュームを通過する伝送時間に、巨視的には関連する。)
【0110】
少なくとも1つの変換器62から少なくとも1つの変換器64に至る経路長をDとし、この経路長に沿った少なくとも1つの変換器62からの距離を変数xとする。CO(x)を少なくとも1つのパルス42による照射前の位置xにおける音速とし、TTOを照射前の変換器62から64に至る伝送時間とする。距離xかつ時間tOに位置するビーム68の部分は、伝送時間TT(x)を有し、その量は伝送時間TTOと数1によって求められるΔTT(x)だけ異なる。ΔTT(x)を求める式において、CO(x)は位置xが光パルスによって照射される前の位置xにおける音速であり、C(x)は光パルスによって照射された後の音速である。
【数1】
Figure 0004104456
【0111】
TT(x)のxでの微分は、d[ΔTT(x)]/dx=ΔC(x)/CO(x)C(x)に等しい。ΔC(x)は、一般に、微視的にはCO(x)に近似される。また、xの変化によるCO(x)の変動が比較的小さいと想定すると、Cを少なくとも1つの変換器62から少なくとも1つの変換器64に至る経路長における平均音速として、d[ΔTT(x)]/dxを求める式はΔC(x)/C2に近似される。ΔC(x)のオーダーに対するCO(x)の誤差は、d[ΔTT(x)]/dxの値にほとんど影響を与えず、CO(x)の誤差がd[ΔTT(x)]/dxにもたらす誤差は%表記で100[ΔC(x)/C]%であるという点を留意されたい。C0(x)の変動が経路長に対して小さくない場合は、C0(x)は、ある種の組織内における既知の音速として概算されるか、当業者にとって既知の技術を用いて求められる。
【0112】
位置xにおける微分d[ΔTT(x)]/dxおよびそこから得られるΔC(x)の値は、時間tOにおける位置xに隣接する2つの部分での伝送時間の変化量の差から概算することができる。特に、d[ΔTT(x)]/dxおよびそこから得られるΔC(x)は、ボルス40内の位置xから概算される。
【0113】
例えば、時間t0に位置x1でビーム68の振幅が最小値72を取ると想定すると、その位置はボルスと変換器62が対向する側のボルス40の境界である。最小値72の伝送時間は、伝送時間TTOと比較して、数2で求められる量ΔTT(x1)だけ変化する。時間t0に位置x2でビーム68の振幅が最大値74を取ると想定すると、その位置はボルスと変換器64が対向する側のボルス40の境界である。最大値74の伝送時間は、伝送時間TTOと比較して、数3で求められる量ΔTT(x2)だけ変化する。次いで、[ΔTT(x2)-ΔTT(x1)]/(x2-x1)≒d[ΔTT(xb)]/dx=ΔC(xb)/C2を求める。ここで、xbはボルス40の位置である。それ故に、血液ボルス40でのΔC(x)の値は、最小値72と最大値74との伝送時間の変化から求められる。
【数2】
Figure 0004104456
【数3】
Figure 0004104456
【0114】
ΔC(xb)の程度はボルス40が光パルス42から吸収したエネルギの量の関数であるので、少なくとも1つの光パルス42の光の波長における血液の吸収係数を求めるためにΔC(xb)の値を使用することができる。
【0115】
例えば、ボルスが少なくとも1つの光パルス42を吸収することによって生ずるボルス40内での音速の変化は、一般に、エネルギ吸収によるボルス内での温度変化におおよそ比例する。例えば水の場合、温度の範囲が0°から100°であれば、ΔC≒4.9ΔTである。少なくとも1つの光パルス42の照射によって生じたボルス40内での音速の変化は、それ故に、(温度変化が微小であれば)ΔC=B[(1/Hρ)(IOτe- α db]となる。ここで、Bは比例定数である。ΔCを求めるための式から、ΔCが少なくとも1つの光パルスの光に対する血液の吸収係数αbに比例し、光に対する吸収係数はΔCから求めることが出来ることが分かる。
【0116】
本発明の実施形態によれば、グルコメータ60は、複数の波長の光を照射したときの伝送時間の変化量を用いて、ボルス40内での音速の変化量を求める。グルコメータ60は、求められた音速の変化量を用いて波長ごとの吸収係数を求め、また、吸収係数を用いて血液中のグルコース濃度を求める。本発明の幾つかの実施形態では、求められたボルス40内での音速の変化量は、音響キャリブレーション計測の結果に基づいて調整され、調整された計測値を使用してグルコース濃度が求められる。
【0117】
本発明の幾つかの実施形態では、コントローラ30は、継続的に変調されたビーム68を伝送するため、また複数の光パルス42をボルス40を通して伝送するために、少なくとも1つの変換器62を制御する。連続する1組の光パルスの各光パルスが照射されるわずか前及び照射中に、伝送時間は計測される。
【0118】
本発明の幾つかの実施形態では、グルコメータ60は、グルコースによって吸収される光に血液がさらされている間に、血液を通過する超音波のドップラー周波数の偏移を計測することによって、血糖を求める。
【0119】
再び図4を参照する。グルコメータ60が伝送時間から血糖を調べるときの場合と同様、伝送された超音波のドップラー偏移の測定から血糖を調べるときは、コントローラ30は、変調されたビーム68をボルスを通して伝送するために、変換器62を制御する。しかしながら、「伝送時間測定」モードで動作しているときは、光パルスによって照射される領域を音が伝送される時間に対して比較的短い時間、時間tOにグルコメータ60が光パルス42でボルス40を照射するのに対して、「ドップラー偏移」モードで動作しているときは、伝送時間に対して比較的長い時間、グルコメータ60はボルス40を照射する。この結果、時間tOより、ビーム68の部分がボルス及び照射された領域を横断する間、ボルス40及び周囲の組織の領域は、実質連続的にエネルギを吸収する。吸収されたエネルギは、ビーム68の部分が伝送されている間、ボルス40及び照射された周囲の組織の領域内での音速を連続的に変化させる。
【0120】
上記のように、周波数fを有する音波は音速を換えながら移動し、周波数のドップラー偏移”Δf”を起こす。これは、Δf=(Δx/C(x)2)(dC(x)/dt)で示されてもよい。このΔfを求める式において、Δxは、領域を通る音波の経路長であり、xは領域内のΔx上の位置であり、dC(x)/dtは位置xにおけるC(x)の時間微分である。音速及びその微分は、経路長Δxに渡って一定である。
【0121】
それ故に、ビーム68の部分は、光パルス42に照射されたボルス40及びボルス40周囲の組織を通過し、その部分は周波数のドップラー偏移を引き起こす。変換器64によって受信されたビーム68の部分のドップラー偏移の程度は、その部分は時間tOに変換器62から距離x離れたところにあったものであるが、数4によって求められるΔf(x)によって与えられる。伝送時間の変化から血糖値を求める手法で用いられたものと類似の解析から、時間tOでの位置xの前後のビーム68の2つの部分のドップラー偏移間の相違を用いて、d[Δf(x)]/dxおよびそこから求まる[1/C(x)2][dC(x)/dt]が概算される。
【数4】
Figure 0004104456
【0122】
dC/dtは光パルス42のエネルギ吸収速度の関数であり、これは血液の光の吸収係数の関数でもあるので、位置xにおける光の吸収係数を求めるために、Δfの計測値を使用することが出来る。
【0123】
一例として、ボルス40については、音速の変化量ΔCはボルスによって吸収されたエネルギの関数であり、上記のΔCを求める式から得られ、CおよびdC/dtはボルス内ではほぼ一定であると想定される。次いで、dC/dtを求める式が、ΔCを求める式をτで微分することによって、dC/dt=B[(1/Hρ)(IOe- α db]およびΔf=fB[(1/C2Hρ)(IOe- α db]Xとして求められる。ここで、Xはボルス40を通過する経路長であり、Cはボルス内での平均音速である。Δfを求める式から、吸収係数αbがΔfから求まることが分かる。
【0124】
本発明の実施形態によれば、グルコメータ60は、Δfを計測し、複数の波長についてボルス40内での光の吸収係数を求め、求められた吸収係数から血液ボルス40のグルコース濃度を求める。本発明の幾つかの実施形態では、求められた値Δfは、音響キャリブレーション計測に基づいて調整され、調整された計測値は吸収を求めるために使用される。
【0125】
本発明の幾つかの実施形態では、本発明の実施形態によるグルコメータは、組織の領域がグルコースによって吸収される光パルスで照射されたのち、1回以上その領域を通過する超音波パルスを伝送することによって、領域内のグルコースを調べる。体の部分92の組織の領域90内でグルコメータ20と類似のグルコメータ80が示されるように、このプロセスは図5A及び5Bに概略的に示される。領域90は、骨組織94と変換器26との間に位置し、領域90を複数回横断する少なくとも1つの超音波パルス96を伝送することによって、調べられる。調べることは、領域内の血液に特定されるものではなく、領域内の間質液や他の組織内のグルコースを調べてもよい。本発明の実施形態による他のグルコメータによって得られた計測値と同様、本発明の幾つかの実施形態では、グルコース農奴を求めるためのグルコメータ80によって得られた計測値は音響キャリブレーション計測によって調整される。
【0126】
図5Aでは、コントローラ30は、変換器26を制御して少なくとも1つの超音波パルス96を組織領域90内に伝送する。組織領域90と骨94との音響インピーダンスの違い、および組織領域90と変換器26および/または領域90の空気反射部との音響インピーダンスの違いにより、超音波パルス96は継続的に骨94と変換器26の間を反復する。この結果、少なくとも1つの超音波パルス96は、継続的に変換器26と骨組織との間を反復移動する。(図5Aには、図面の乱雑を避けるため、少なくとも1つの超音波パルス96は組織領域90を2回だけ横切っている状態が、概略的に示されている。)移動中に、領域90内の組織による吸収の結果として、また領域90内の組織と、骨および変換器または空気と、の間の界面での部分的な反射の結果として、少なくとも1つの超音波パルス96はエネルギを失って減衰する。
【0127】
超音波パルスの再反射に対応して、変換器26は、超音波パルス96が骨94と変換器26の間を往復する時間とほぼ等しい時間を有し、信号の振幅が減衰する、1組の連続する信号を生成する。コントローラ30は、この信号を使用して、組織領域90を通過する超音波パルス96の複数の「n」回の往復の伝送時間「TT(n)」を求める。変換器26と骨94との間の距離をDとすると、TT(n)=nD/Cである。ここで、Cは組織90内での音速である。時間計測の精度が一定であるとすると、nの増加に伴ってCの計測値の精度は上昇する。本発明の幾つかの実施形態では、信号の振幅の減少から、組織領域90内での超音波の吸収係数の概算違えられる。
【0128】
図5Bでは、グルコメータ80が組織領域90を通過する少なくとも1つの超音波パルスのn回往復の伝送時間TT'(n)を計測したのちに、コントローラ30は光源28を制御して、組織領域90をグルコースに吸収される光パルス42で照射する。光パルス42によって吸収されたエネルギは、領域90の組織内における音速の変化ΔCをもたらし、TT'(n)=nD/(C+ΔC)である。本発明の幾つかの実施形態では、コントローラ30はΔC=C{TT(n)/TT'(n)-1}からΔCを求め、ΔCを用いて、組織領域90内のグルコースを調べる。本発明の幾つかの実施形態では、コントローラ30は、光パルスから吸収したエネルギによる、超音波の吸収係数を求め、吸収係数の変化から組織領域90内のグルコースを調べる。
【0129】
図5A及び5Bでは、2つのインピーダンス界面間、すなわち骨94と組織90との界面と組織90と超音波変換器26との界面で「跳ね返る」超音波パルス96が示される。本発明の実施形態によれば、他の種の音響インピーダンスが変化する界面間の物質特性を計測するために、この界面間を超音波パルスが反復する。例えば、本発明の実施形態によれば、組織内での音速の変化及び/または吸収係数を求めるために、組織領域の対向する側にある2つの超音波変換器間を超音波パルスが反復する。本発明の幾つかの実施形態では、組織領域内での音速の変化及び/または吸収係数を求めるために、組織領域の一方の側にある超音波変換器と、組織領域の他方の側にある空気と組織との間の界面と、の間で超音波パルスが反復する。本発明の幾つかの実施形態では、血管内の血液内での音速の変化及び/または吸収係数を求めるために、超音波パルスは血管管壁間を反復する。
【0130】
音響インピーダンス界面間の物質の特性を計測するために、超音波をこの界面間を反復させるような、他の方法の変形は、本発明の実施形態に基づいて、容易に当業者に想起されるだろう。
【0131】
例えば、本発明の幾つかの実施形態では、血管内の血液中の音速は、第1の超音波パルスが変換器と対向する血管の「近位」管壁で反射して変換器に戻るように、第1の超音波パルスを変換器から伝送することによって求められる。血管の遠位管壁で反射して変換器に戻るように、第2の超音波パルスが変換器から伝送される。第1のパルスは血管内の血液を通らずに移動して、往復して変換器へ移動する。一方第2のパルスは、往復して変換器へ移動する際、血管の直径の倍にほぼ等しい経路長で、血管内の血液を通る。本発明の実施形態によれば、血管の直径は、血管の位置及び大きさを超音波計測する事によって求められる。血管内の血液中の音速は、第1及び第2の超音波パルスの変換器への往復伝送回数から求めることが出来る。血液への照射による血液中での音速の変化は、照射の前後の血管の近位管壁と遠位管壁との間を往復する伝送回数を計測することによって求められる。この方法で求められた音速の変化は、本発明の他の実施形態によれば、血糖を調べるために使用される。
【0132】
本発明の幾つかの実施形態によれば、領域90内に伝送される超音波の、骨94で反射した超音波が最大または最小であるような、「共鳴」周波数を求めることによって、グルコメータ80は組織領域90内のグルコースの濃度を求める。
【0133】
共鳴周波数とは、超音波の波長と領域90の厚さ(換言すれば変換器26と骨94との間の距離)とが適合する状態であると定義される。例えば、反射が最大値及び最小値(およびそれぞれの伝送が最小値および最大値)を取るのは、組織90内での周波数が「f」である超音波の骨90への入射角をθとすると、波長λ=C/f=4cosθ/nの時である。このλの式において、反射が最大および最小の時に、nはそれぞれ奇数および偶数である。この式から、共鳴周波数の値は、組織領域90内での音速には依存することが分かる。
【0134】
本発明の実施形態によれば、グルコメータ80は、領域90に伝送される音の共鳴周波数を求め、ついで領域をグルコースによって吸収される光で照射する。光から吸収するエネルギによって、領域90内の音速は変化し、その結果、共鳴周波数の偏移が起こる。偏移の程度は計測され、これは領域90内の組織における光の吸収係数が求めるために使用される。本発明の実施形態はグルコースを調べることについて記載されたものであるが、本発明の実施形態によれば、グルコース以外の物質を調べる場合に使用可能であり血液以外の組織内の物質を調べるために使用可能であるという点を留意されたい。
【0135】
例えば、図5Aおよび5Bを参照して記述される方法は、超音波が組織領域を複数回通過するものであり、組織内のグルコースを調べるものであるが、組織内におけるグルコース以外の成分の濃度を求めるために、この方法を使用することが出来る。例えば、骨と軟組織の間の界面で、音響エネルギの反射能は比較的高くなる。超音波を骨組織に伝送し、骨と軟組織の界面間を継続的に反復させ、骨内の音速及び音響吸収係数を求めることが出来る。次いで、骨は、光学、無線周波数またはマイクロ波放射などの、骨のカルシウムによって吸収される電磁放射によって励起される。次いで、励起放射から吸収したエネルギによる音速及び/または音響吸収係数の変化が計測される。計測された変化は、本発明の実施形態によれば、骨密度を求めるために使用される。
【0136】
グルコース以外の物質を調べる一例として、本発明の実施形態によれば、人体のある領域を照射するための適切な周波数の光の一群を選択することによって、領域内でのコレステロールの濃度を求めることが出来る。1.70-1.80μmの波長の光はコレステロールによって吸収され、これらの周波数の光は、人体のある領域のコレステロール濃度を求めるために、本発明の実施に基づいて使用される。
【0137】
体内の物質の濃度を求める方法は、本発明の実施形態によれば、体の位置の関数としての物質の濃度を得る。本発明の幾つかの実施形態によれば、体内の物質の空間分布が、体の特徴及び/または成分を可視化するために使用される。
【0138】
図6Aおよび6Bは、本発明の実施形態による、一例としての、人体のコレステロールを可視化するために使用される「アッセイイメージャ100」として以下参照される、「グルコメータ」100を示したものである。アッセイイメージャ100は、ディスプレイ102を有する。図6Aでは、コントローラ30は、少なくとも1本の血管の領域36の位置を特定するために、少なくとも1つの変換器26を制御する。図6Bでは、アッセイイメージャ100は、次いでコレステロールを調べるのに適した波長の光で領域36を照射し、上記のグルコース濃度を求める方法と類似の方法を用いて、領域36内のコレステロール濃度を求める。コントローラ30は、次いで変換器26を制御して、少なくとも1本の血管の他の領域の位置を特定し、これら他の領域におけるコレステロール濃度を引き続き求める。領域の位置の関数としてのコレステロール濃度の分布図は、ディスプレイ102に表示される。少なくとも1つの血管22は、プラークの沈殿104及び106によって2か所で汚されている。プラークの沈殿104および106の場所は、ディスプレイ102条に表示されたコレステロール分布図110上で可視化される。
【0139】
他の例によれば、アッセイイメージャ100はまた、腫瘍を可視化するために使用されてもよい。腫瘍の成長部は、一般に、成長部及びその周囲の組織内での不自然に高い血管の濃度を伴う。血液によって強く吸収される波長の光を用いて、アッセイイメージャ100で組織の領域を可視化することにより、本発明の実施形態によれば、血管の密度が不自然に高い組織は、通常の血管密度の組織から明確に対比されることが出来る。この結果、可視化された領域内での腫瘍組織は、健康な組織から明確に対比される。
【0140】
本発明の幾つかの実施形態では、アッセイイメージャによって得られた、領域内での物質の濃度に対応した、体のある領域の「アッセイイメージ」は、例えばMRIやCT画像などの他の可視化様式によって得られたこの領域の他の画像上にオーバーレイ表示される。本発明の幾つかの実施形態では、アッセイイージがオーバーレイ表示される画像は、超音波画像である。選択として、超音波画像は、アッセイイメージを得るために使用する超音波検出器を用いて得られる。アッセイイメージとアッセイイメージがオーバーレイ表示される超音波画像の両方を得る、同一の超音波検出器を用いることによって、アッセイイメージは、自動的に超音波画像に記録される。
【0141】
本出願の記述及び請求項において、「有する」「含む」「備える」またはそれらの同根語の動詞のそれぞれは、その動詞の目的語が、動詞の主語の部位、成分、要素または部分の、完全な一覧では必ずしもないことを示すために使用される。
【0142】
本発明は、その実施形態の詳細な説明を用いて一例として記述されているが、これは本発明の範囲を限定使用とするものではない。記述された実施形態は、異なる特徴を有するが、それらの全てが本発明の全ての実施形態で必要とされるわけではない。本発明の幾つかの実施形態は、特徴の一部のみまたは可能な特徴の組み合わせを活用している。記述された本発明の実施形態の変形および、記述された実施形態に記載された特徴の異なる組み合わせを有する本発明の実施形態は、当業者によって想起されるだろう。本発明の範囲は、請求項によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【図1A】 本発明の実施形態による、人体のある領域をグルコースに吸収される光で照射することによって領域内の血液中で生成された光音響波を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図1B】 本発明の実施形態による、人体のある領域をグルコースに吸収される光で照射することによって領域内の血液中で生成された光音響波を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図1C】 本発明の実施形態による、人体のある領域をグルコースに吸収される光で照射することによって領域内の血液中で生成された光音響波を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図2A】 本発明の実施形態による、血液での超音波の反射を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図2B】 本発明の実施形態による、血液での超音波の反射を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図2C】 本発明の実施形態による、血液での超音波の反射を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図3A】 本発明の実施形態による、血液中の音速の変化を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図3B】 本発明の実施形態による、血液中の音速の変化を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図4】 本発明の実施形態による、グルコースに吸収される光で照射されて血液が急速に加熱されている間に、血液で反射した超音波のドップラー偏移を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図5A】 本発明の実施形態による、グルコースに吸収される光で照射されて血液が急速に加熱されている間に、血液を通過して伝送される超音波のドップラー偏移を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図5B】 本発明の実施形態による、グルコースに吸収される光で照射されて血液が急速に加熱されている間に、血液を通過して伝送される超音波のドップラー偏移を検出することによって、人間の血糖を計測するグルコメータを概略的に示したものである。
【図6A】 本発明の実施形態による、人体のコレステロールを調べて可視化するグルコメータを概略的に示したものである。
【図6B】 本発明の実施形態による、人体のコレステロールを調べて可視化するグルコメータを概略的に示したものである。
【符号の説明】
【0138】のディスプレイ102条→ディスプレイ102上

Claims (30)

  1. 成分によって放射が吸収されて血液ボルス中に光音響波を生成するような波長を有する光パルスを供給するように制御されることが可能な光源と、
    超音波を検知してそこに入射する超音波のエネルギに対応する信号を生成するように制御されることが可能な少なくとも1つの検知変換器と、
    超音波を体内に伝送するように制御されることが可能な少なくとも1つの伝送変換器と、
    コントローラであって、
    a)血液ボルスを含む体のボリュームにおいて血液ボルスの位置を特定し、
    b)前記ボリューム内で少なくとも1つの検知変換器に入射する光音響波を生成するように、前記成分により光が吸収される波長を持つ、少なくとも1つの光パルスで、領域を含む体のボリュームを照射するように光源を制御し、
    c)光音響波に対応する、少なくとも1つの検知変換器によって生成された信号を受信し、光音響波の発生源を求めるためにこの信号を用い、
    d)超音波を前記領域に伝送するために、少なくとも1つの伝送変換器を制御し、
    e)血液ボルス内での光の吸収係数を求めるために血液ボルス内に位置すると判断される発生源を有するこれらの光音響波の強度を使用し、
    f)前記領域内の前記成分の濃度を求めるために、その求められた吸収係数を使用する、
    ものと、
    備える、体の血液ボルスの成分を調べる装置。
  2. コントローラが、少なくとも1つの他の波長において少なくとも1つの光パルスでボリュームを照射するよう光源を制御し、前記c,e及びfを繰り返す、請求項1に記載の装置。
  3. 前記少なくとも1つの光パルスが、あるパルス反復速度で放射される少なくとも1組の連続するパルスを含む請求項1又は2に記載の装置。
  4. コントローラが、
    音響参照ビームを前記領域に集中させるように前記少なくとも1つの伝送変換器のうちの1つの伝送変換器を制御し、
    変換器に入射するオフセット周波数の音波に対応した、検知変換器によって検出される信号を受信し、
    前記信号を用いて吸収係数を求める、ものであって、
    前記音響参照ビームは前記少なくとも1組の連続する光パルスのパルス反復周波数からあるオフセット周波数だけ偏移した周波数と、領域が音響励起に対して非線形の応答をするような強度とを有する、請求項3に記載の装置。
  5. コントローラが、異なる波長およびパルス反復速度で特徴づけられる少なくとも1組の他の連続する光パルスでボリュームを照射するように光源を制御し、前記c、e及びfを繰り返す、請求項1ないし4のいずれかに記載の装置。
  6. 前記連続する光パルス及び少なくとも1つの他の連続する光パルスが領域をほぼ同時に照射する、請求項5に記載の装置。
  7. 少なくとも1つの伝送変換器及び/または検知変換器のうちの1つの変換器が体に連結され、
    コントローラが、
    超音波を伝送するために、前記少なくとも1つの伝送変換器を制御し、
    前記超音波は入射した超音波に対応した信号を生成する検知変換器に入射するが、その生成された信号を受信し、
    信号を処理して、体連結された変換器と体との間の連結部の音響特性を求める
    ものである、請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
  8. コントローラが、前記領域の位置を求めるために、前記少なくとも1つの伝送変換器を制御し、前記少なくとも1つの検知変換器からの信号を処理する、請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
  9. 前記領域の位置が、少なくとも1つの方向において、超音波の5波長未満であるような不定性の範囲で、特定される、請求項1ないし8のいずれかに記載の装置。
  10. 前記領域の位置が、少なくとも1つの方向において、超音波の3波長未満であるような不定性の範囲で、特定される、請求項9に記載の装置。
  11. 前記領域の位置が、少なくとも1つの方向において、超音波の約1波長であるような不定性の範囲で、特定される、請求項9に記載の装置。
  12. 前記少なくとも1つの光パルスが赤外光のパルスを含む、請求項1ないし11のいずれかに記載の装置。
  13. 前記少なくとも1つの光パルスが可視光のパルスを含む、請求項1から12のいずれかに記載の装置。
  14. コントローラが、体内の材料の音響特性を求めるために、前記少なくとも1つの検知変換器からの信号を処理する、請求項1から13のいずれかに記載の装置。
  15. 前記求められた吸収係数が、求められた音響特性に対応して調整される、請求項14に記載の装置。
  16. コントローラが、成分の濃度を体の位置の関数として求めるために、体の複数の異なった局所的領域での吸収係数を求める、請求項1ないし15のいずれかに記載の装置。
  17. コントローラが、体の特徴を画像化するために、位置の関数としての成分の濃度を使用する、請求項16に記載の装置。
  18. コントローラが、他の成分の分析を行うことを目的として体の領域の位置を特定するために、体の特徴の画像を使用する、請求項17に記載の装置。
  19. ディスプレイを有し、コントローラが、物質の濃度の空間分布図を得るために、体の領域の位置の関数として、成分の濃度をディスプレイに表示する、請求項16ないし18のいずれかに記載の装置。
  20. コントローラが、物質の濃度の空間分布図を、異なる画像診断法によって得られた体の画像の上に、オーバーレイ表示する、請求項19に記載の装置。
  21. 前記異なる画像診断法が超音波画像である、請求項20に記載の装置。
  22. 超音波画像を得るために、コントローラが、少なくとも1つの伝送変換器を制御し、また少なくとも1つの検知変換器からの信号を処理する、請求項21に記載の装置。
  23. 検知変換器が伝送変換器でもある、請求項1ないし22のいずれかに記載の装置。
  24. 前記体が生体である、請求項1ないし23のいずれかに記載の装置。
  25. 前記生体が人体である、請求項24に記載の装置。
  26. 前記領域が、体の血管の中の血液のボルスである、請求項24又は25に記載の装置。
  27. 前記成分がLDLコレステロールまたは酸化LDLコレステロールである、請求項24ないし26のいずれかに記載の装置。
  28. 前記成分がグルコースである、請求項24ないし26のいずれかに記載の装置。
  29. 血液ボルスの位置を特定するために、コントローラが、
    a)少なくとも1つの検知変換器に入射する光音響波をボルスを有する体のボリューム内で生成するように光が血液に優先的に吸収される波長を有する少なくとも1つの光パルスを用いて、ボリュームを照射するように光源を制御し、
    b)ボリュームにおける血液の濃度を位置の関数としてマップする光音響波に対応する、少なくとも1つの検知変換器によって生成された信号を使用し、
    c)血液ボルスの位置を判断するために求められた濃度マップを使用する、
    請求項1ないし28のいずれかに記載の装置。
  30. 成分によって放射が吸収されて血液ボルス中に光音響波を生成するような波長を有する光パルスを供給するように制御されることが可能な光源と、
    超音波を検知してそこに入射する超音波の強度に対応する信号を生成するように制御されることが可能な少なくとも1つの変換器と、
    コントローラであって、
    a)血液ボルスを含む体のボリュームにおいて血液ボルスの位置を特定し、
    b)前記ボリューム内で少なくとも1つの検知変換器に入射する光音響波を生成するように、前記成分により光が吸収される波長を持つ、少なくとも1つの光パルスで、領域を含む体のボリュームを照射するように光源を制御し、
    c)少なくとも1つの検知変換器によって生成された光音響波に対応する信号を受信して、光音響波の発生源を求めるためにこの信号を用い、
    d)血液ボルス内での光の吸収係数を求めるために血液ボルス内に位置すると判断される発生源を有するこれらの光音響波の強度を使用し、
    e)領域内の成分の濃度を求めるために求められた吸収係数を使用する、ものと、
    を備える、体の血液ボルスの成分を調べる装置であって、
    血液ボルスの位置を特定するために、コントローラが、
    f)少なくとも1つの検知変換器に入射する光音響波を、ボルスを有する体のボリューム内で、生成するよう、光が血液に優先的に吸収されるような波長を有する少なくとも1つの光パルスで、ボリュームを照射するように光源を制御し、
    g)ボリュームにおける血液の濃度を位置の関数としてマップする光音響波に対応する、少なくとも1つの検知変換器によって生成された信号を使用し、
    h)血液ボルスの位置を判断するために求められた濃度マップを使用する、
    装置。
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