JP4104256B2 - 高耐水性窒化アルミニウム粉末及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高耐水性窒化アルミニウム粉末及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウムは高熱伝導性、耐熱性、耐食性、絶縁性など、優れた特徴をもったファインセラミックスであり、高熱伝導焼結体用原料、高温・高強度焼結体用原料、セラミックス合成用粉末原料、セラミックス複合材、無機フィラー等多くの用途に用いられ、今後更に種々の用途への展開が期待される材料である。近年は良好な熱伝導性を利用するためにシリコーンゴムや特性改良のためのプラスチック添加剤としても使われるようになってきた。
【0003】
従来、トランジスタ、ダイオート、変圧器などの電子部品は使用中に発熱し、その熱のため電子部品の性能が低下することがある。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられる。しかし、放熱体は金属であることが多いため、電子部品を直接取り付けると漏電などの問題があり、好ましくない。そのためにマイカ絶縁板、熱伝導性グリース、ポリエステルなどが使用されてきたが、取扱いがしにくかったり、熱伝導率が低くかったりして、満足のいく性能を有する放熱体とはいえない。最近では、特公昭62−26906号公報に提案されているように硝子クロスにシリコーンゴムをコートする方法でかなり熱伝導率を向上させている例がある。しかしながら、高熱伝導率を得るには、高い熱伝導性フィラーをシリコーンゴムに添加する必要があり、そうするとコンパウンドが固くなり、押し出し加工が出来なくなるという問題がある。
【0004】
高熱伝導率を有する難燃性・高熱伝導性シリコーンゴム組成物は、特公昭62−26906号公報に提案されているように、硝子クロスにコートする方法または単純にプレス加工をする方法しかなかった。また、窒化物は耐水性のない物が多く、窒化アルミニウムは大気中の水分と反応してアンモニアが発生するという問題がある。そうすると窒化アルミニウムを添加したコンパウンドはその主成分であるシリコーンゴムとアンモニアが化学結合するため固くなり、保存できないという問題がある。この問題を解決するため特開平9−151324号公報では平均粒径が0.1〜50μmの範囲で耐水処理をした窒化アルミニウムを用いることによって押し出し加工が可能であり、かつコンパウンドの長期保存ができることを提案している。
【0005】
ところが、この提案では窒化物である耐水処理をした窒化アルミニウム粉末を使う場合、平均粒径が0.1〜50μmの範囲であっても粒子に凝集物が多く含まれると押し出し加工をする時に、不純物を除去する金網に詰まり、押し出し加工が困難となり均一に分散させることができなくなる。そこで、シリコーンゴムに耐水性窒化アルミニウム粉末と他のフィラーを均一に分散させ容易に押し出し加工できるようにするには、粒子を制御し粉体中の凝集物をできるだけ少なくすることが必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、耐水性窒化アルミニウム粉末は良好な熱伝導性を持つためシリコーンゴムへ添加することにより性能の改善が見込まれるが、その均一な分散が非常に困難でり、分散性の優れた耐水性窒化アルミニウム粉末の開発が望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の問題点を解決しシリコーンゴム等への分散性の優れた高耐水性窒化アルミニウム粉末を得ることを目的として鋭意検討を重ねた結果、特定の粒子径を特定量含み、平均粒子径を特定することにより、シリコーンゴムへの分散性が非常に優れたものであることを見いだし本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は2.0μm以下の粒子径を60重量%以上含み、平均粒子径が2.0μm以下であることを特徴とする高耐水性窒化アルミニウム粉末又は高耐水性窒化アルミニウム粉末をジェット粉砕機で解砕することを特徴とする高耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明を更に詳細に説明する。
本発明に用いる高耐水性窒化アルミニウム粉末は六方晶系で粒子の形状は球状またはフレーク状のどちらでもよいが、粒径の揃ったものがよい。また、本発明の高耐水性窒化アルミニウム粉末は粉砕等の方法により粒子径を調整し分散性の良いものを得るが、その粒径は2.0μm以下の粒子径を60重量%以上含み、平均粒子径が2.0μm以下であることが必要である。また、好ましくは2.0μm以下の粒子径中に1.0μm以下の粒子径を20重量%以上含むのが好適である。
【0010】
粒子径および平均粒子径がこれらの範囲を外れた場合には、シリコーンゴム等の樹脂中への分散性が悪く表面の平滑性が得られないばかりか、不純物を除去する金網に詰まり押し出し加工ができなくなる。
また、本発明の高耐水性窒化アルミニウム粉末は1.0μm以下の粒子径を20重量%以上含むのが好ましく、更に好ましくは、30重量%以上が好適である。
【0011】
更には、本発明の高耐水性窒化アルミニウム粉末の比表面積は1〜50m2/gが好ましく、更に好ましくは1〜10m2/gが好適である。比表面積が1m2/g未満では、結晶が発達し分散しにくくなるため好ましくない。また、50m2/gを超えると結晶性が低いため、熱伝導性等が悪くなり、シリコーンゴムの性質を改良できないので好ましくない。
【0012】
さらに、上述の粒子径に調整するには種々の粉砕機が一般に用いられるが、ジェット粉砕機は、他の粉砕機には得られない超微粉が得られ、生成する粒度分布がシャープとなるので好ましい。ジェット粉砕機には気流吸込み型、衝突型、複合型等各種の形式のものがあり、いずれの形式のものも用いることができるが、その中でも特に気流吸い込み型は内部構造が簡素化され分解、点検、清掃、水洗等が容易に行なえ異物の混入を防止できるので最も好ましい。
【0013】
また、本発明の高耐水性窒化アルミニウム粉末の解砕後の凝集物量は100mesh onが0.02重量%以下が好ましい。0.02重量%を超えると不純物を除去する金網に詰まり押し出し加工ができなくなる。凝集物の定量方法は、高耐水性窒化アルミニウム粉末30gに純水300gを添加、ゆっくり振って分散、次に100mesh篩上にスラリーを全量流し、更に純水で洗い流す。次に篩ごと乾燥、篩上に残存した粉の重量を測定し凝集物量とする。
【0014】
また窒化アルミニウムは耐水性処理を行ったものを用いる。
窒化アルミニウムは、従来の技術の項で説明したように熱伝導性、機械的強度及び電気絶縁性に優れた特性を持った物質として知られており、構造用材料、機能用材料等多方面に使用されつつある。しかし、同時に窒化アルミニウム粉末は加水分解しやすいという性質も有しており、大気中の水分でさえも容易に分解し、下記(1)式に従って水酸化アルミニウムとアンモニアを生成し、上記した優れた窒化アルミニウム粉末の特性を失ってしまうという問題点がある。
AlN+3H2O→Al(OH)3+NH3 ・・・ (1)
【0015】
従って、高温用炉材等の構造用材料として使用する際、成形時に使用するバインダーが水系の場合、加水分解し窒化アルミニウム粉末の本来の特性を失うため、引火、発火性、かつ有害な有機溶剤を使用せざるを得ない。また、白板、メタライズ基板等の機能材料も加水分解による性能劣化が問題となる。また、半導体用フィルムのフィラーとして使用した場合も大気中の水分がフィルムを透過し、窒化アルミニウム粉末が加水分解を受けてフィルム劣化となる。このように上記用途に窒化アルミニウム粉末を使用する際には、加水分解の進行を抑制する性質を付与する必要がある。
【0016】
従来法では、燐酸化合物で処理し、窒化アルミニウム結晶の表面に燐酸アルミニウムの層を有する窒化アルミニウムが比較的高い耐水性を有する(特開平2−141409号公報、特願平8−84964号公報)ことが知られている。
また、燐酸化合物で処理した際に副生する燐酸アンモニウムの含有量を低減することで、極めて耐水性に優れた窒化アルミニウムを得る(特願平8−027003号公報)方法も知られている。
しかしながら、これらの方法も、100℃の高温多湿条件での耐水性にはまだ充分とはいえず、100℃の高温多湿、長時間の高耐水性能を有する窒化アルミニウムが望まれている。
【0017】
本発明で用いる窒化アルミニウムは、製法による差異は認められず、通常用いられる窒化アルミニウムが使用できる。例えば、アルキルアルミニウムとアンモニアを反応さた後、加熱するアルキルアルミ法、アルミナと炭素の混合物を窒素中で加熱するアルミナ還元法、アルミニウムと窒素で反応させる直接窒化法等で製造した窒化アルミニウムがいずれも好適に使用可能である。
本発明は、まずこれらの窒化アルミニウムに燐酸化合物を作用させて、窒化アルミニウムの表面に燐酸アルミニウムの層を形成する。
【0018】
ここで用いる燐酸化合物とは、表層に燐酸アルミニウム結合(Al−O−P結合)を形成せしめることのできる燐酸化合物を意味し、例えば、オルソ燐酸、メタ燐酸、ピロ燐酸、ポリ燐酸等の無機燐酸やメチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート等の有機燐酸等がその例として挙げられる。
【0019】
本発明においては、水の存在下で窒化アルミニウム粉末処理を行うことが望ましい。なぜならば、処理時に水の存在が窒化アルミニウム粉末の耐水性向上に寄与していると考えている。すなわち、水の存在する燐酸化合物溶液で処理することで、窒化アルミニウム粉末の表面が強制的に加水分解され、水酸化アルミニウムを生成し、燐酸化合物と反応する活性点が増加し、このことによって燐酸化合物との反応が促進され、耐水性の被膜(燐酸アルミニウムの層)が窒化アルミニウム粉末の表面に形成されることにあると推測している。
【0020】
また、燐酸処理によって窒化アルミニウムの表層には、燐酸アルミニウム以外に燐酸アンモニウムが存在している。また、この燐酸アンモニウムを加熱し熱分解して、NH3をガス化し除去する方法も燐酸の大部分は、窒化アルミニウムと反応し燐酸アルミニウムとなるが、一部に未反応の燐酸が残ってしまう。高温多湿ではこの燐酸アンモニウムや燐酸分が溶出してしまい、その部分から徐々に水分が浸透し、窒化アルミニウム粉末が加水分解を受けることから、充分な耐水性能を得ることができないと考えている。
さらに、燐酸アンモニウムや燐酸の溶出は、半導体用の樹脂フィルム用のフィラーに使用する際、硬化、延性、分散性等に悪影響を及ぼし、特性を損なう恐れがある。
【0021】
燐酸処理とは、以下の方法で処理することをいう。
窒化アルミニウム粉末と燐酸化合物を水の存在下でスラリー又はペースト状に混合、又混合時に水溶性溶媒を加えても特に問題はない。混合時の温度は、0〜70℃の範囲が好ましく、更に好ましくは18〜50℃が好適である。混合時の温度が0℃未満では、燐酸化合物との反応が進行しないので、所望の耐水性が得らない。また、70℃を超えると耐水性は得られるが窒化アルミニウムと燐酸化合物の反応が進行し過ぎ、窒化アルミニウム本来の特性を損なってしまうので好ましくない。その後、過剰の燐酸化合物が残存する場合は洗浄濾過を行う。 窒化アルミニウム粉末を燐酸化合物で処理した被膜層には副生する燐酸アンモニウムが含まれており、充分な耐水性を得るには、これを溶解度の低い燐酸塩に置換する必要がある。
【0022】
本発明でいう副生する燐酸アンモニウムには、主に(NH4)HPO3、(NH4)2HPO4、NH4H2PO4等が挙げられる。
次にこの燐酸アンモニウムを燐酸塩に生成せしむる処理について説明する。
まず、燐酸化合物で処理した窒化アルミニウムを、アルカリ金属を除く金属の水酸塩、炭酸塩、酢酸塩のうち少なくとも1種以上を水を加えて混合する。混合時の温度は、0〜100℃、好ましくは、20〜100℃で行い、燐酸アンモニウムを燐酸塩に置換し、窒化アルミニウムの表層に固着させる。この反応で生成するアンモニア塩や未反応物は、洗浄濾過を行い除去する。
【0023】
また別の方法として、燐酸アンモニウムを190〜800℃、好ましくは250〜500℃の温度で加熱処理して、熱分解することでアンモニアを放出させ燐酸分は、窒化アルミニウムとの反応によって大部分を燐酸アルミニウムとする。そして、一部残存する燐酸分をアルカリ金属を除く金属の水酸塩、炭酸塩、酢酸塩を用い上記と同様の方法で混合し、燐酸アンモニウムを燐酸塩に置換し、窒化アルミニウムの表層に固着させる。
【0024】
この方法では、燐酸塩の水酸塩水溶液を用いることによって、固体の未反応物が残存せず、またアンモニア塩を生成しないので高純度な高耐水性の窒化アルミニウムを得ることができる。
ここでアルカリ金属を除く金属の水酸塩、炭酸塩、酢酸塩としては、アルカリ土類金属、Cd、Cu、Fe、Zn、Ni、Al、Ce、Co、Cr、In、La、Pb、Tl等が好ましく用いられるが、特にMg、Ca、Sr、Ba、Cd、Cu、Fe、Znが好適である。
【0025】
本発明でいう上記の水酸塩、炭酸塩、酢酸塩で生成せしむる燐酸塩を具体的に例示すると、Mg3(PO4)2、CaHPO4、Sr3(PO4)2、Ba3(PO4)2、Cd3(PO4)2、Cu3(PO4)2、FePO4、Zn3(PO4)2、Ni3(PO4)2等が挙げられる。
【0026】
これらは、燐酸アルミニウムと同様水に対する溶解度が低く、化学的に安定であることから優れた耐水効果を発揮することができる。
この高耐水性窒化アルミニウムの表層に形成される燐酸塩の総含有量は、0.1〜5重量%が好ましく、更に好ましくは1〜3重量%の範囲が好適といえる。また、5重量%を超えると、所望の耐水性は得られるものの、窒化アルミニウムの酸素含有量が高くなり窒化アルミニウム本来の特性である熱伝導性を損なう結果となるので好ましくない。
【0027】
このようにして得られた高耐水性窒化アルミニウムは、純水で1重量%の窒化アルミニウムスラリーとし、該スラリーを沸騰させ、18時間経過後のpH値が7.5を超えることのない高耐水性窒化アルミニウムが得られるのである。
【0028】
本発明の方法に従えば、原料窒化アルミニウム粉末の粒子の粒子径に拘らずシリコーンゴムへの分散性の非常に優れたものが得られる。このことにより、シリコーンゴム本来の性質、窒化アルミニウム粉末本来の性質を損なうことが少なく、優れたシリコーンゴムと高耐水性窒化アルミニウム粉末の複合体を得ることができる。
【0029】
本発明の高耐水性窒化アルミニウム粉末はシリコーンゴムに用いることによりその特性を大いに発揮できる。
シリコーンゴム:100重量部に対して下記のA〜Eからなる組成コンパウンドであって押し出し加工が可能なゴム成形体であり、熱伝導率が優れたものが得られる。
A.塩基性金属酸化物:10〜490重量部
B.耐水処理をした窒化アルミニウム:10〜500重量部
C.補強剤:0〜500重量部
D.白金系化合物:0.01〜10重量部
E.加硫剤:0.5〜20重量部
【0030】
前記組成物においては、塩基性金属酸化物が、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化ジルコニウムから選ばれる少なくとも一つの酸化物であることが好ましい。また前期組成物においては、窒化アルミニウムが大気中の水分にたいして安定となる処理であることが好ましい。
また前記組成物においては、白金系化合物が、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金オレフィン錯体、メチルビニルポリシロキサン白金錯体から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0031】
また前記組成物においては、さらに酸化鉄、酸化チタン、水酸化アルミ
ニウム、水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも一つの難燃助剤を1〜150重
量部含むことが好ましい。本発明において使用するシリコーンゴムはミラブル型シリ
コーンあるいは液状シリコーンが好ましく、加硫方法は熱、光、電子線のどれを用い
ても良い。またシリコーンゴムは、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂で
変性したシリコーンゴムを用いてもよい。
【0032】
可塑剤としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性シリコーンなどがあり、ここに挙げた限りではなく、また、必要に応じて使用しても良い。
加硫剤はベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)−ヘキサンなどがあり一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。
【0033】
補強剤には補強シリカ、石英、炭酸カルシウム、ポリテトラフルオロエチレン、などがあり、必要に応じて添加して良い。また難燃性付与のため、白金化合物は塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金オレフィン錯体、メチルビニルポリシロキサン白金錯体、などの一種または二種以上の混合物が好適に用いられる。
【0034】
本発明の方法に従えば、ゴムに耐水性窒化アルミニウム粉末とその他フィラーを添加することで押し出し加工が可能でありコンパウンドの長期保存でき、かつ加硫後のゴム成形体の熱伝導率が優れたものが得られる。このことにより、シリコーンゴム本来の性質、窒化アルミニウム本来の性質を損なうことが少なく、優れたシリコーンゴムと耐水性窒化アルミニウムの複合体を得ることができる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。尚、実施例において部及び%は特記する以外は重量基準を表わす。
実施例1
容量1Lのガラス製容器に3.3%のオルト燐酸水溶液100部を入れ、これに窒化アルミニウム粉末150部を加えて混練し120℃で乾燥した。更に、200℃で2時間加熱、処理した。次に、燐酸処理した窒化アルミニウム10部を純水50部に懸濁させCa(OH)2で中和処理(PH≒7)し、これを濾過洗浄後150℃で乾燥した。このようにして得られた高耐水性窒化アルミニウム粉末を下記方法により耐水性試験を行なった結果、18時間経過後のpH値は6.25であった。
こうして得られた高耐水性窒化アルミニウム粉末をジェット粉砕機を用いて解砕した。得られた粉末の粒子径は平均粒子径が1.33μm、2.0μm以下の粒子径は79%であった。またこの高耐水性窒化アルミニウム粉末の凝集物量は0.006%であった。
この高耐水性窒化アルミニウム粉末を150部、シリコーンゴム:100部、酸化マグネシウム:250部、難燃助剤として酸化鉄:5部、塩化白金酸:0.3部、加硫剤:3部、可塑剤:10部をコンパウンドにした。それを押し出し成形によって厚さ0.3mmの難燃性・高熱伝導性シリコーンゴムシートを得た。コンパウンドは2月間たっても固くならなかった。このシートの熱伝導率を迅速熱伝導率計QTM−D1(昭和電工製)で比較試験法により測定したところ2.78W/m・Kであった。
【0036】
実施例2
実施例1と同様に調整し、得られた高耐水性窒化アルミニウム粉末の耐水性試験を行なった結果、18時間経過後のpH値は6.26であった。これをジェット粉砕機を用いて解砕した。その結果、得られた粉末の粒子径は平均粒子径が1.51μm、2.0μm以下の粒子径は71%であった。またこの高耐水性窒化アルミニウムの凝集物量は0.015%であった。
この高耐水性窒化アルミニウム粉末を用いて実施例1と同様にシリコーンゴムシートを得た。コンパウンドは2月間たっても固くならなかった。このシートの熱伝導率を測定したところ2.70W/m・Kであった。
【0037】
比較例1
実施例1と同様に調整し、得られた高耐水性窒化アルミニウム粉末の耐水性試験を行なった結果、18時間経過後のpH値は6.26であった。得られた粉末の粒子径は平均粒子径が2.2μm、2.0μm以下の粒子径は50%の粉末を用いた。またこの時の耐水性窒化アルミニウム粉末の凝集物量は0.22%であった。この高耐水性窒化アルミニウム粉末を実施例1と同様にコンパウンドにした。それを押し出し成形を試みたができなかった。
【0038】
比較例2
実施例1と同様に調整し、得られた高耐水性窒化アルミニウム粉末の耐水性試験を行なった結果、18時間経過後のpH値は6.25であった。得られた粉末の粒子径は平均粒子径が2.5μm、2.0μm以下の粒子径は40%の粉末を用いた。またこの時の耐水性窒化アルミニウム粉末の凝集物量は0.36%であった。この高耐水性窒化アルミニウム粉末を実施例1と同様にコンパウンドにした。それを押し出し成形を試みたができなかった。
【0039】
本発明における試験は下記の方法で行った。
・粒子径の測定
マイクロトラック(日機装製9320−X100)を使用して、溶媒に水、超音波(出力40W)で3分間分散した。
・耐水性試験
窒化アルミニウム粉末1%のスラリー100gを加熱し、100℃を維持したままスラリーのpH変化を経時的に測定した。
【0040】
【発明の効果】
本発明は高耐水性窒化アルミニウム粉末の平均粒子径及び粒子径を特定することにより、シリコーンゴム等への分散性が非常に優れた品質良好な添加剤とすることができる。その結果、シリコーンゴムに非常に分散しやすい高耐水性窒化アルミニウム粉末の製造を可能にし電子部品などの熱伝導部品、電気絶縁用部品などとして適用され、その経済的効果は極めて大なるものがある。
Claims (5)
- 水の存在下で窒化アルミニウムを燐酸化合物で処理したのち、アル カリ金属を除く金属の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩のうち少なくとも1種以上の化合 物で処理し、燐酸塩を生成せしめ、ジェット粉砕機で解砕することで、粒子径が 2.0μm以下の粒子を60重量%以上含み、平均粒子径が2.0μm以下である ことを特徴とする高耐水性窒化アルミニウム粉末。
- 粒子径が2.0μm以下の粒子中に、粒子径が1.0μm以下の粒 子を20重量%以上含む請求項1記載の高耐水性窒化アルミニウム粉末。
- 高耐水性窒化アルミニウム粉末の比表面積が1〜50m2/gであ る請求項1記載の高耐水性窒化アルミニウム粉末。
- 流動性改良剤を用いない高耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法 であって、水の存在下で窒化アルミニウムを燐酸化合物で処理したのち、アルカリ 金属を除く金属の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩のうち少なくとも1種以上の化合物で 処理し、燐酸塩を生成せしめた高耐水性窒化アルミニウム粉末をジェット粉砕機で 粉砕することで、粒子径が2.0μm以下の粒子を60%重量以上含み、平均粒子 径が2.0μm以下である高耐水性窒化アルミニウム粉末を得ることを特徴とする 高耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
- 流動性改良剤を用いない高耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法 であって、水の存在下で窒化アルミニウムを燐酸化合物で処理したのち、アルカリ 金属を除く金属の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩のうち少なくとも1種以上の化合物で 処理し、燐酸塩を生成せしめた高耐水性窒化アルミニウム粉末をジェット粉砕機で 解砕することで解砕後の凝集物量の100mesh onが0.02重量%以下で あることを特徴とする高耐水性窒化アルミニウム粉末の製造方法。
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