JP4104241B2 - 電子素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子素子、例えば電界を印加されることにより電子を放出する冷陰極素子として用いられる電子素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子としては熱陰極素子と冷陰極素子とが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
熱陰極素子は真空管に代表される分野に用いられているが、熱を付与するために集積化が困難である、といった問題がある。一方、冷陰極素子は熱を用いないため集積化が可能な素子として、フラットパネルディスプレイ、電圧増幅素子、高周波増幅素子等への応用が期待されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、例えば冷陰極素子として用いた場合、低い印加電圧によっても十分に電子を放出することが可能である等高い実用性を持つ前記電子素子を提供することを目的とする。
【0005】
前記目的を達成するため本発明によれば、負イオンビームを用いるイオンビーム蒸着法により形成されて、Cs(セシウム)を膜内及び膜表面に多数点在させるように含む非晶質炭素膜より構成される電子素子であって、前記膜表面には、そこに点在するCsが酸素と化合してできたCs酸化物よりなる複数の円錐状突起が存在し、その突起の平均高さhは、10 nm ≦h≦500 nm であることを特徴とする電子素子が提供される。
【0006】
Csは、そのイオン半径(1.81Å)および金属結合半径(2.66Å)が元素中最も大きいので、これを非晶質炭素膜内に存在させると、その内部に歪みが生じ、これにより、非晶質炭素膜、したがって電子素子の電気絶縁性を弱める一方、導電性を強めることが可能である。またCsは非晶質炭素膜内だけでなく、その表面にも多数点在する。この場合、Csが活性であることから、膜表面のCsは空気中の酸素と化合して安定なCs酸化物となり、そのCs酸化物は、微視的ではあるが、円錐状突起をなす。
【0007】
このような電子素子よりなる冷陰極素子においては、その放出電界が低められるので、その冷陰極素子に対する印加電圧を低くしても十分な電子放出を現出させることが可能である。
【0008】
而して、突起の平均高さhは、h<10 nm では効果がなく、一方、その平均高さhがh >500 nm では素子表面およびその近傍における歪みが増大して冷陰極素子(非晶質炭素膜)にクラックが生じ易くなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は陰極ユニット1を示し、その陰極ユニット1はAl製陰極板2と、その表面に形成された電子素子としての冷陰極素子3とよりなる。その冷陰極素子3は、Csを含む蒸着膜即ち非晶質炭素膜より構成され、膜表面にCs酸化物よりなる複数の極微細な円錐状をなす突起pを有する。その各円錐状突起pの平均高さhは10nm≦h≦500nmである。
【0010】
Csは、そのイオン半径(1.81Å)および金属結合半径(2.66Å)が元素中最も大きいので、これを非晶質炭素膜内に存在させると、その内部に歪みが生じ、これにより、非晶質炭素膜、したがって冷陰極素子3の電気絶縁性を弱める一方、導電性を強めることが可能である。またCsは非晶質炭素膜内だけでなく、その表面にも多数点在する。この膜表面の活性なCsは空気中の酸素と化合して安定なCs酸化物となり、そのCs酸化物は、微視的ではあるが、円錐状突起pをなす。さらに膜内のCsはC(炭素)の仕事関数を低下させる効果も発揮する。
【0011】
このような冷陰極素子3においては、その放出電界が低められるので、その冷陰極素子3に対する印加電圧を低くしても十分な電子放出を現出させることが可能である。
【0012】
ただし、円錐状突起pの平均高さhがh<10nmでは効果がなく、一方、円錐状突起pの平均高さhがh>500nmでは素子表面およびその近傍における歪みが増大して冷陰極素子3にクラックが生じ易くなる。
【0013】
前記のような効果を得るためには、非晶質炭素膜におけるCs含有量を0.1原子%≦Cs≦5.0原子%に設定するのがよい。この場合、Cs含有量がCs<0.1原子%ではCs添加の意義がなく、一方、Cs>5.0原子%では膜内の歪みが過大となって、その膜のsp3 性が低くなるため、その膜の負の電子親和力による電界放出を期待できなくなる。
【0014】
前記非晶質炭素膜は単体で用いられる外、例えばSiよりなる冷陰極素子の性能向上を図るべく、その素子の表面被膜層構成材料としても用いられる。
【0015】
非晶質炭素膜はイオンビーム蒸着法により形成され、その形成に際し、入射イオンとしてCsイオンを用い、また形成条件を調整することによってCsを非晶質炭素膜に均一に含有させることが可能となる。イオンビーム蒸着法においては、正イオンビームまたは負イオンビームが用いられる。この場合、非晶質炭素膜の原子密度は正イオンビーム蒸着法によるもの、負イオンビーム蒸着法によるもの、の順に高くなる、つまり、導電性はこの順序で強くなり、放出電界はこの順序で低くなる。この原子密度の差は、負イオンの内部ポテンシャルエネルギ(電子親和力)が正イオンのそれ(電離電圧)よりも低いことに起因する。
【0016】
以下、具体例について説明する。
【0017】
図2は公知の超高真空型負イオンビーム蒸着装置(NIABNIS:Neutral and Ionized Alkaline metal bombardment type heavy Negative Ion Source)を示す。その装置は、センタアノードパイプ5、フィラメント6、熱遮蔽体7等を有するセシウムプラズマイオン源8と、サプレッサ9と、高純度高密度炭素よりなるターゲット10を備えたターゲット電極11と、負イオン引出し電極12と、レンズ13と、マグネット14を有する電子除去体15と、偏向板16とを備えている。
【0018】
非晶質炭素膜3(便宜上、冷陰極素子と同一の符号を用いる)の形成に当っては、(a)図2に示すように、各部に所定の電圧を印加する、(b)Csプラズマイオン源8によりCsの正イオンを発生させる、(c)Csの正イオンによりターゲット10をスパッタしてC等の負イオンを発生させる、(d)サプレッサ9を介して負イオン引出し電極12により負イオンを引出して負イオンビーム17を発生させる、(e)レンズ13により負イオンビーム17を収束する、(f)電子除去体15により負イオンビーム17に含まれる電子を除去する、(g)偏向板16により負イオンのみを陰極板2に向けて飛行させる、といった方法を採用した。
【0019】
図3は負イオンビーム17の質量スペクトルを示す。この負イオンビーム17の主たる負イオンは構成原子数が1であるC- イオンと構成原子数が2である
C2 - イオンである。ただし、イオン電流はC- >C2 - である。
【0020】
表1は負イオンビーム蒸着法による非晶質炭素膜3の例1〜4における形成条件を示す。例1〜4の厚さは0.4〜0.8μmであった。
【0021】
【表1】
【0022】
次に、例1〜4の略中央部についてラマン分光法による分析を行って、それらが非晶質であるか否かを調べた。図4は例2の分析結果を示し、波数1500cm-1付近を中心としたブロードなラマンバンドが観察される。このことから例2は非晶質であることが判明した。他の例1,3,4についても図4と同様の結果が得られた。
【0023】
また例1〜4についてXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)定量分析によりCs含有量を調べたところ、例1〜3はCsを含有していたが、例4は、Csを含有していないことが判明した。
【0024】
さらに、原子間力顕微鏡(AFM)により例1〜4表面を撮影してそれらの表面写真を得た。図5は例2に関する表面写真の要部拡大写図であり、この図面において、非晶質炭素膜3の表面に点在する多数の円錐状突起pはCs酸化物よりなる。他の例1,3についても図5と略同様の結果が得られた。これらの表面写真から、例1〜3における円錐状突起pの平均高さhを求めた。
【0025】
さらにまた、例1〜4について、図6に示す方法で放出電界の測定を行った。即ち、電圧調整可能な電源18にAl製導電板19を接続し、その導電板19上に、中央部に縦0.8cm、横0.8cm(0.64cm2 )の開口20を有する厚さ150μmのカバーガラス21を載せ、また、そのカバーガラス21上に陰極ユニット1の非晶質炭素膜3を載せ、さらに、その陰極板2に電流計22を接続した。次いで、電源18より導電板19に所定の電圧を印加して、電流計22により電流を読取った。そして、測定電流と開口20の面積とから、放出電流密度(μA/cm2 )を求め、実用性を考慮して、その放出電流密度が8μA/cm2 に達したとき、それに対応する電圧とカバーガラス21の厚さとから放出電界(V/μm)を求めた。
【0026】
表2は例1〜4に関するCs含有量、円錐状突起pの平均高さhおよび放出電界を示す。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から明らかなように、表面にCs酸化物よりなる複数の円錐状突起pを持つ例1〜3は、その突起pを持たない例4に比べて放出電界が極端に低いことが判る。
【0029】
この種の冷陰極素子は、フラットパネルディスプレイ、電圧増幅素子、高周波増幅素子、高精度至近距離レーダ、磁気センサ、視覚センサ等に応用される。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、前記のように構成することによって、例えば冷陰極素子として用いることが可能な、高い実用性を持つ電子素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 陰極ユニットの断面図である。
【図2】 超高真空型負イオンビーム蒸着装置の概略図である。
【図3】 前記装置によるビームスペクトルである。
【図4】 非晶質炭素膜の例2に関するラマン分光法による分析結果を示すチャートである。
【図5】 非晶質炭素膜の例2に関する原子間力顕微鏡による表面写真の要部拡大写図である。
【図6】 放出電界測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1 陰極ユニット
2 陰極板
3 冷陰極素子(非晶質炭素膜)
p 円錐状突起
Claims (2)
- 負イオンビームを用いるイオンビーム蒸着法により形成されて、Csを膜内及び膜表面に多数点在させるように含む非晶質炭素膜(3)より構成される電子素子であって、
前記膜表面には、そこに点在するCsが酸素と化合してできたCs酸化物よりなる複数の円錐状突起(p)が存在し、
その突起(p)の平均高さhは、10 nm ≦h≦500 nm であることを特徴とする電子素子。 - 前記非晶質炭素膜は、電界を印加されることにより電子を放出する冷陰極素子である、請求項1記載の電子素子。
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