JP4102557B2 - 人工組織用材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞が沈降しない条件下において、細胞懸濁液と足場材料とを接触させることによって得ることができる、均一に分布した細胞及び足場材料を含む人工組織用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の細胞工学技術の進展によって、数々の動物細胞の培養が可能となり、またそれらの細胞から組織・器官を再構築するという試みが行われつつある。このような試みにおいて、最も重要なことは、播種した細胞が増殖分化して3次元的な生体組織様構造物を構築するために、足場材料内に細胞を高密度かつ均一に分布させ、保持することである。
【0003】
足場材料として、種々の高分子が開発されているが、細胞を高分子に均一に、高密度に、高い生存率を有して播種し培養することは困難であった。
Kimらは、ポリグリコール酸からなる生体分解性のマトリックスを用いた平滑筋細胞の播種及び培養方法について報告している。これは、50mlチューブ内で、細胞及びポリグリコール酸マトリックス(幅5mm×長さ5mm×高さ2mm)を含む培養液0.3mlを、100rpmで攪拌しながら20時間培養する播種方法である(Biotechnol. and Bioeng., 57, 48-54, 1998)。しかし、この方法による人工組織用材料には、人工組織用材料の上層と下層又は外層と内層との間の細胞密度の分布に、偏りがあるという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、細胞が沈降しない条件下において、細胞懸濁液と足場材料とを接触させることによって得ることができる、均一に分布した細胞及び足場材料を含む人工組織用材料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、人工組織用材料の播種・培養に関する上記の問題点を解決するために鋭意検討した結果、添加する細胞を分散させた培養液(細胞懸濁液)の容量と細胞の足場材料の容量(体積)との比、及び培養条件の組合わせを選択することによって、細胞とその足場材料を含む人工組織用材料内部の細胞分布が均一であり、かつ高い細胞の生存率及び生理活性を有している細胞を含む人工組織用材料の開発に成功し、本発明を完成した。
【0006】
したがって、本発明は、細胞が沈降しない条件下において、細胞懸濁液と足場材料とを接触させることによって得ることができる、均一に分布した細胞及び足場材料を含む人工組織用材料に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の足場材料は、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリε−カプロラクトン、乳酸とグリコール酸との共重合体、グリコール酸とε−カプロラクトンとの共重合体、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリ−α−シアノアクリレート、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリトリメチレンオキサレート、ポリテトラメチレンオキサレート、ポリオルソエステル、ポリオルソカーボネート、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタメート、ポリ−γ−メチル−L−グルタメート、ポリ−L−アラニンなどの合成高分子、デンプン、アルギン酸、ヒアルロン酸、キチン、ペクチン酸及びその誘導体などの多糖、あるいはゼラチン、コラーゲン(コラーゲンのタイプ及びその抽出法はいずれでもよい)、アルブミン、フィブリンなどのタンパク質など種々の高分子及びその混合物あるいは化学反応によって作製した複合物などを挙げることができる。本発明の高分子は、好ましくは、酸、アルカリなどによる単純加水分解あるいは酵素による加水分解によって生体内で分解吸収されるという、生体吸収性の性質を有し、適当な処理をすることによって多孔質状となっており、そして所望の形態に成型してあるものである。また、本発明の足場材料は、不織布状、スポンジ状、編物、織物等の任意の形状に成形することができる。
【0008】
本発明に用いる不織布は、公知の方法によって調製することができる。例えば、短い繊維の層(ウェブ)を多数の針のついたニードルパンチ機に通し繊維を機械的に絡み合わせてフェルト状にするニードルパンチ法、繊維になる前の溶けた原料樹脂を多数のノズルから同時に吹き出して細い糸を作りながらその連続した多数の糸をあらゆる方向にクモの巣状に配置し均一な厚さのウェブを作り、自然に又は機械的に糸同士をくっつけるメルトブロー法である。
【0009】
本発明に用いる不織布を構成する繊維の直径は、好ましくは、1〜50μm、より好ましくは、5〜20μmであり、空隙率は、好ましくは、70〜100%未満、より好ましくは、85〜100%未満、最も好ましくは、90〜100%未満である。その形態としては、ディスク状、フィルム状、棒状、粒子状、およびペースト状、チューブ状などがあるが、これらに限定されない。
【0010】
本発明に用いるスポンジは、公知の方法によって調製することができる。例えば、重量平均分子量が1〜50万を有する高分子又は共重合体の溶液を所望の型枠に入れ、凍結後、真空凍結乾燥することによって得ることができる。この際、サイズの異なる水溶性固体、例えば、食塩、デンプンなどを混合して、凍結乾燥体を得た後、水中にてそれらの水溶性固体を抽出することによって、また、凍結温度や高分子溶液濃度を変化させることによって、所望の孔サイズを有する多孔質体を得ることも可能である。この作製されたスポンジを適当な形にカットすることによって成型することも可能である。
【0011】
本発明に用いることができる多孔体セラミックスは、多孔性であること及びその空隙が連通孔構造を有しており、生体毒性が少なく、生体親和性であることが好ましい。空隙のサイズ(気孔径)、連通孔(連通部径)のサイズは10μm以上であることが好ましい。例えば、ハイドロキシアパタイト(HA)、あるいはF若しくはMgなどが混合されたHA誘導体及び傾斜材料、炭酸アパタイト、トリリン酸カルシウム(TCP)、炭酸カルシウム(サンゴからの天然物も含む)などを用いることができる。また、金属材料としては、すでに生体内で用いられているステンレススチール、チタン、種々の合金などからなる多孔質体も足場材料となり得る。例えば、チタンなどからなるスポンジ、メッシュ構造を有する3次元多孔質体などが好ましい。気孔径及び連通部径は、10μm以上であること、メッシュの場合には、繊維径は1〜500μmが好ましい。また、その空隙率は、60〜100%である。さらに、高分子、セラミックス、金属などの2種類以上からなる混合物あるいは化学反応によって作製された複合体を用いて、上述の3次元多孔体を作製して用いることもできる。
また、高分子、セラミックス、金属のいずれの足場材料に対しても、その材料表面を細胞の接着、増殖、分化などを促進するための物質によって修飾した後に、本発明の目的に用いることができる。多孔質体を作製した後に、修飾を行ってもよいし、また、修飾を行ったものを用いて多孔質体を作製してもよい。修飾方法としては、種々の足場材料に物質をコーティングなどの物理固定、化学固定又は材料内への物理的、化学的混合法などの公知の方法を用いることができる。修飾物質としては、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、種々のムコ多糖類などの細胞接着性を有する物質、細胞増殖因子、分化因子、サイトカイン、ケモカインなどの生理活性物質、及びそれらの誘導体、並びにそれらの細胞接着(細胞接着物質)、増殖、分化などの作用を有する天然ペプチド、合成ペプチドなどが挙げられる。これらの物質は、単独又は2種類以上の混合物として、この目的に用いることができる。
【0012】
本発明に用いる細胞としては、培養することができる正常細胞、癌細胞、胚性及び成体(組織)幹細胞、造血系幹細胞などの細胞であれば、あらゆる種類の細胞を用いることができる。
【0013】
本発明に用いる培養液は、組織培養で従来用いられている動物細胞用の培養液例えば、medium199、MEM、DMEM、RPMI1640、あるいは幹細胞の培養に調製された培地及び細胞の分化培地などを用いることができる。細胞懸濁液は、かかる培養液に細胞を加えて調製する。
【0014】
本発明に用いる培養容器は、あらゆる細胞培養のために通常に用いられる培養容器を用いることができる。例えば、試験管、びん、フラスコ、シャーレの形態であることができる。素材は、プラスチック又はガラスであることができ、プラスチック製品の場合には、表面処理をしてあるかどうかを問わない。
【0015】
本発明において振盪培養とは、細胞懸濁液中での細胞の均一性を保持したまま培養することをいう。振盪方法は、細胞懸濁液中の細胞の均一性を保持することができるものであれば何でもよく、往復、回転、八の字等であることができ、振盪は、振盪培養器によって容器の外部から与えることができる。また、培養液を機械的に攪拌しながら培養するスピンナーフラスコ(spinner flask)、フラスコ自体を回転させるタイプの培養器、回転容器(rotary vessel)・微小重力培養器、培地流動型の培養器(perfused culture system)などを用いることもできる。
【0016】
本発明の人工組織用材料の調製方法としては、細胞懸濁液の流動が生じ得る条件下、すなわち、人工組織用材料の容量当たりの細胞懸濁液量が、1を超えること、好ましくは、1を超えて50以下、より好ましくは、1を超えて20以下、最も好ましくは、1を超えて10以下である条件下において、振盪培養することによって調製することができる。
【0017】
細胞懸濁液における細胞密度は、細胞懸濁液の中での細胞の偏りのない均質流動が生じ得る条件、すなわち、101〜109細胞/ml、好ましくは、105〜108細胞/mlである。
【0018】
培養は、細胞の生存率を低下させることなく、細胞の高分子への接着が促進され、そして細胞密度の分布が均一となる条件、すなわち、37℃、5%CO2雰囲気下にて、6〜12時間、振盪回転数250rpm以上、好ましくは250〜300rpmで行う。培養期間中において、培養液交換は不要である。
【0019】
本発明の人工組織用材料は、より長期間、より高機能な人工組織を開発するために用いることができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0021】
実施例1:細胞接着試験
異なる培養容器に、あらかじめ培養液で馴化したPET不織布(直径6mm、厚さ3mm、空隙率94%)を置き、次いで、50μl又は200μlの骨髄から採取した未分化間葉系幹細胞(以下、断りがない限り本細胞種を用いた。)懸濁液(細胞数:105、106又は107細胞)を加え、静置培養又は振盪培養(Bellco社製回転式振盪機、300rpm)条件下で培養した。用いた培養条件を下記に示す。
Figure 0004102557
【0022】
培養は、37℃、5%CO2条件下で6時間行った。
【0023】
接着細胞数の定量は、DNAアッセイ法を用いた。細胞培養後、細胞が接着した不織布をCa2+Mg2+不含リン酸緩衝食塩水(PBS−)で3回洗浄し、−30℃で1晩凍結させた。次に、凍結サンプルに0.2mg/mlラウリル硫酸ナトリウム(SDS)/0.5mg/mlプロテナーゼKクエン酸3ナトリウム溶液の1mlを加え、55℃で12時間緩やかに攪拌しながら細胞成分を消化した。消化した細胞懸濁液100μl、1μg/mlのヘキスト33258溶液500μl、及び0.2mg/mlSDS溶液400μlを混合し、混合液の蛍光強度を測定した(励起波長355nm、蛍光波長460nm)。
【0024】
表1に示すように、a〜cでは、不織布断面の細胞分布が上層に偏っているのに対し、d〜fでは、不織布断面の細胞分布が各層で均一であった。また、a,c,eに対してb、d、fでは、不織布全体の接着細胞数の増加が認められた。したがって、振盪培養を行うことによって細胞を高密度かつ均一に不織布に接着させることできることが分かった。これは、振盪によって細胞懸濁液の均一性が保持されているためと思われた。
【0025】
実施例2:細胞分布試験
上記、a〜fの6種類の培養条件のそれぞれについて、培養後、細胞接着不織布をヘマトキシンエオジン染色し、不織布断面の上層、中層、下層について、接着細胞数を測定し、中層について走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った(図1)。
【0026】
a〜fいずれのサンプルにおいても接着細胞数は、静置培養よりも振盪培養で多くなっていた。特に、培養液量の多いd及びfに関しては接着細胞数の向上割合が大きく、振盪培養における培養液の流動が必要条件であることが示唆された。c及びdとe及びfとの接着細胞数に差が認められないことから、不織布の大きさと培養容器の大きさが同じである必要がないことも明らかとなった。すなわち、不織布容量に対する培養液量が多ければ、振盪による細胞懸濁液の流動により、細胞懸濁液と不織布との接触機会が増加し、不織布の大きさ及び形には制限されずに、組織再生に必要とされる希望形状の足場材料に対して多くの細胞を効率よく接着させることができることが明らかとなった(図2)。
【0027】
【表1】
Figure 0004102557
【0028】
実施例3:細胞代謝活性測定
静置培養と振盪培養における細胞の代謝活性を測定するために、乳酸脱水素酵素(LDH)活性を測定した。LDH活性は、細胞障害の増加に伴って高くなることが知られている。
【0029】
細胞接着試験と同様に、a〜fの6種類の条件について、静置培養及び振盪培養を適用した。培養時間は、それぞれ6及び24時間とした。
【0030】
LHD活性の測定は、LDH−UVテストワコー(和光純薬)を用いて行った。LDH基質緩衝液(NADH/50mmol/mlリン酸緩衝液+0.62mmol/lピルビン酸リチウム)2mlに培養器中の培養液50μl((a)の場合には、培養液量を200μlに調整したもの)を加え、軽く混和した。この混合液の波長340nmにおける、0分後及び2分後の吸光度を測定し、吸光度の減少量からLDH活性の量を算出した。
【0031】
LDH活性は、6時間培養では、いずれの培養条件においても有意差は認められないが、24時間培養時には、静置培養で高いのに対して振盪培養では低かった(図3)。したがって、振盪培養では静置培養に比べて細胞障害が抑制されており、振盪培養は、細胞の不織布への接着効率の向上、細胞分布の均一化のみならず、細胞障害を低減させることが明らかとなった。
【0032】
実施例4:培養容器の形状の細胞分布への影響
振盪培養を行う際の、培養容器の形状による細胞分布への影響を調べるために、種々の形状の培養容器を用いて細胞接着試験を行った。
【0033】
培養容器として、台形底50mlチューブ、24穴マイクロプレート及び丸底チューブ(φ12mm×長さ75mm)を用いた。それぞれの容器の底にあらかじめ培養液で馴化させたPET不織布(直径6mm、厚さ3mm、空隙率94%)を置き、その不織布に間葉系幹細胞(1×107個)をマイクロピペットを用いて加えた。培養液量は、台形底50mlチューブでは200μl、24穴マイクロプレート及び丸底チューブでは500μlとした。これらを静置培養又は振盪培養(Bellco社製回転式振盪機、300rpm)条件下で6時間培養(37℃、5%CO2)した。培養終了後、細胞接着不織布の断面「中層」のSEM観察を行った。
【0034】
3種類の培養容器ともに、静置培養では細胞接着数が少ないが、振盪培養では細胞接着数が多く、不織布断面のどの層においても高密度に細胞が接着した(図4)。この結果より、培養容器の形状にかかわらず、細胞は不織布に均一に付着することが明らかとなった。
【0035】
実施例5 細胞分布に対する空隙率の影響
細胞分布に対する空隙率の影響を調べるために、種々の空隙率を有する不織布を作製し、この不織布に対する細胞接着試験を実施した。PET不織布に加温(150℃)圧縮を行うことによって、種々の空隙率(93.5〜80.7%)を有する不織布を作製した。これらのPET不織布(直径6mm、厚さ3mm、空隙率94%)を培養液で馴化させ、50ml遠心管の底に置き、その不織布に間葉系幹細胞(1×107個)をマイクロピペットを用いて加えた。培養液量は、500μlとした。これらを静置培養又は振盪培養(Bellco社製回転式振盪機、300rpm)条件下で6時間培養(37℃、5%CO2)した。培養終了後、細胞接着不織布の断面「中層」のSEM観察を行った。
【0036】
図5に示すように、より空隙率の低い不織布ほど接着細胞密度は高かったが、4種類の空隙率の異なる不織布の細胞分布は均一であった。また、広範囲の空隙率において振盪培養が有効であることが示唆された。
【0037】
実施例6 細胞懸濁液の均一性を保持するために必要な振盪条件の検討
実施例2の結果より、不織布内で均一な細胞分布を達成するためには、細胞を不織布に付着させるための培養期間中に細胞懸濁液の均一性を保持することが重要であることが示された。そこで、細胞懸濁液の均一性を保持するために必要な振盪条件の検討を行った。
下記の条件下:
培養容器:12/75チューブ、24穴マイクロプレート、96穴マイクロプレート及び50mlチューブ、
播種細胞数:1×106個及び1×107個、
振盪回転数:100及び300rpm、
振盪時間:0.5、1、3及び6時間
で振盪培養を行い、上層から経時的に細胞懸濁液を採取し、その570nmにおける吸光度を測定し懸濁液の濁りの変化を評価した。コントロール値(0時間)の値に対する割合(%C:percent of control)を算出した。
【0038】
振盪回転数が300rpmにおいては、12/75チューブ、24穴マイクロプレート、96穴マイクロプレート及び50mlチューブなどのいずれの培養容器、播種細胞数、振盪時間においても吸光度に変化は認められず、細胞懸濁液が均一であることが証明された。それに対して、100rpmにおいては、培養容器の種類又は播種細胞数にかかわらず、振盪培養30分後には、上層部から採取された細胞懸濁液の吸光度は測定限界まで減少し、上層部には細胞が存在しないこと、すなわち、細胞が底部に沈降し、細胞懸濁液が不均一であることが証明された。したがって、細胞懸濁液の細胞の分散均一性を保持するためには、250〜300rpmの振盪回転数における振盪培養が必要であることが明らかとなった(図6、図7)。
【0039】
実施例7 異なる細胞種における細胞懸濁液の均一性を保持するために必要な振盪条件の検討
異なる細胞種(異なる直径)における細胞懸濁液の均一性を保持するために必要な振盪条件を検討した。
下記の条件下:
細胞種:赤血球(直径8μm)、肝細胞(直径20μm)
培養容器:12/75チューブ
播種細胞数:1×106
振盪回転数:100、150、200、250、300及び350rpm
振盪時間:0.5、1、3及び6時間
で振盪培養を行い、上層から経時的に細胞懸濁液を採取し、その570nmにおける吸光度を測定し懸濁液の濁りの変化を評価した。コントロール値(0時間)の値に対する割合(%C)を算出した。
【0040】
赤血球では、200rpm以下の振盪回転数で濁度が緩やかに減少し、250rpmを超える振盪回転数で細胞懸濁液の均一性が保持された。それに対して、より直径の大きい肝細胞では、250rpm以下の振盪回転数で濁度の急速な減少が認めれた。赤血球や間葉系幹細胞とは異なり、細胞懸濁液の均一性が保持されたのは振盪回転数が300rpm以上の場合のみであった。したがって、本発明の方法において、振盪回転数が250rpmであれば、直径の異なる細胞種においても細胞懸濁液の均一性が保持されることが明らかとなった(図8)。
【0041】
【発明の効果】
再生医学を目指した生体組織様構造物を構築するために必要とされる足場材料への細胞播種の際に、細胞が沈降しない条件下で細胞懸濁液と足場材料とを接着させ、足場内に均一にしかも高密度で細胞が分布、またその生存率も高い人工組織材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】細胞接着不織布のSEM観察。a:96穴マイクロプレート、50μl、静置培養;b:96穴マイクロプレート、50μl、振盪培養;c:96穴マイクロプレート、200μl、静置培養;d:96穴マイクロプレート、200μl、振盪培養;e:50mlチューブ、200μl、静置培養;f:50mlチューブ、200μl、振盪培養。
【図2】異なる培養条件による接着細胞数。
【図3】細胞代謝活性測定。
【図4】培養基材による細胞分布効果(不織布断面中層のSEM観察)。
【図5】細胞分布に対する空隙率の影響。
【図6】異なる振盪条件による細胞懸濁液の均一性への影響。
【図7】異なる振盪速度による細胞懸濁液の均一性への影響。
【図8】異なる細胞種による細胞懸濁液の均一性への影響。

Claims (3)

  1. 細胞が沈降しない条件下において、細胞懸濁液と足場材料とを接触させることによって得ることができる、均一に分布した細胞及び足場材料を含む人工組織用材料の製造方法であって、細胞が沈降しない条件が、
    1)人工組織用材料の容量当たりの細胞懸濁液量が、1を超えること、及び
    2)250rpmを超える回転数で振盪しながら細胞懸濁液と足場材料とを接触させることである、材料の製造方法
  2. 足場材料が、高分子、セラミックス、金属及びその複合体からなる群より選択される、請求項1記載の人工組織用材料の製造方法
  3. 足場材料が、不織布、織物、メッシュ、スポンジ、編物又は多孔質体の形状である、請求項1または2記載の人工組織用材料の製造方法
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