JP4102327B2 - 厚鋼板の調整冷却装置および調整冷却方法 - Google Patents
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Description
このような調整冷却を行うための冷却装置として、例えば特許文献1には、圧延後の搬送ラインを走行する熱鋼板の上面側よりも、下面側に多数のノズルを配置して下面の冷却水の落下による冷却能力の低下をカバーすることにより鋼板の上下面を均一に冷却して冷却後の熱歪みや材質のバラツキを防止するようにした鋼板冷却装置が開示されている。
しかしながら、これらの冷却装置では、鋼板下面の水はすぐ落下してしまうのに比較して上面の水は鋼板上に板上水として滞留し、板の両側面からしか排出されないため、鋼板の上面と下面の冷却水の流れは基本的に異なり、鋼板の上面と下面を同じように冷却することは困難であった。
さらに、特許文献3には、浸漬槽型の冷却装置も開示されているが、浸漬型にすると上下面での冷却水の状況はほぼ同一となるため、均一な冷却が可能であるが、浸漬型では冷却水の流速が遅くなるため、羽根車で冷却水を撹拌しても充分な冷却能力が得られないという問題がある。
(1) 熱間圧延後の厚鋼板を、前後の拘束ロール間で拘束・搬送しながら噴射冷媒により調整冷却する冷却装置であって、拘束・搬送される厚鋼板を挟んで上面側と下面側に、冷媒を噴射するスプレーノズルと、冷媒流の流動厚みを調整する冷媒ガイド板を昇降可能に配設し、冷媒ガイド板の内面側に、噴射冷媒の流れに乱れをつくる複数の窪みを形成したことを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
(2) 熱間圧延後の厚鋼板を、前後の拘束ロール間で拘束・搬送しながら噴射冷媒により調整冷却する冷却装置であって、拘束・搬送される厚鋼板を挟んで上面側と下面側に、冷媒を噴射するスプレーノズルと、冷媒流の流動厚みを調整する冷媒ガイド板を昇降可能に配設し、上下の冷媒ガイド板間に、厚鋼板の両側端部に近接する位置で厚鋼板の両側端からの冷媒流の排出を調整する複数対の側板を、厚鋼板の板幅に対応し一対選択して昇降可能に配設したことを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
(3) (2)において、冷媒ガイド板の内面側に、噴射冷媒の流れに乱れをつくる窪みを形成したことを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
(4) (2)または(3)において、上面側の冷媒ガイド板が、厚鋼板の板幅に対応して選択使用の一対の側板間領域の単位で分割されていることを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
(5) (2)〜(4)のいずれかにおいて、スプレーノズルヘッダーが、厚鋼板の板幅に対応して選択使用の一対の側板間領域単位で、スプレーノズルからの冷媒の供給制御が可能なものであることを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
(6) (2)〜(5)のいずれかの厚鋼板の調整冷却装置を、前後の拘束ロール間に厚鋼板を上下面側から冷却可能に配置し、スプレーノズルからの噴射冷媒流の厚鋼板幅方向での排出を、板幅に対応して配置した一対の側板で調整するとともに、冷媒流量の調整と冷媒ガイド板と厚鋼板表面間の距離の調整によって冷媒流速を調整して冷却速度を調整し、冷却後の冷媒流を側板の後端部側から厚鋼板の外方に排出することを特徴とする厚鋼板の調整冷却方法。
(7) (6)において、冷媒ガイド板の流れに接する内面側に窪みを形成し、冷媒の流れに乱れを付与して冷媒流を撹拌し、冷媒流による冷却能を高めるようにしたことを特徴とする厚鋼板の調整冷却方法。
ここで、冷媒ガイド板、または冷媒ガイド板と側板の内面側に窪みを形成して、冷媒の流れに乱れを付与して撹拌する(対流させる)ことにより、高い冷却能を安定確保して冷却効率を高め、冷却コストを低減できる。
この調整冷却装置1は、通常、前後の拘束ロール5、5間に配置し、これを1セットとして厚鋼板3の搬送方向に複数列(複数セット)配置されるものであるが、ここでは第一列目の調整冷却装置1を例として説明する。
この調整冷却装置1は、基本的には、図2に示すように、例えば距離0.5〜2m程度間隔で配置した前後の拘束ロール5a、5b間で拘束・搬送状態の厚鋼板3の上面側に、前部拘束ロール5aの近傍に冷媒を噴射するスプレーノズル6群を備えたヘッダー7と冷媒流の流速を調整する上面側の冷媒ガイド板8aを、架台9に設けたシリンダー10で急速昇降可能に配置し、厚鋼板3の下面側に、前部拘束ロール5aの近傍に冷媒を噴射するスプレーノズル6群を備えたスプレーノズルヘッダー7と冷媒流の流速を調整する下面側の冷媒ガイド板8bを架台11に設けた油圧ジャッキ12で昇降可能に配置して、図3に示すように、上下の冷媒ガイド板8a、8b間に、厚鋼板3の板幅に応じて一対選択し厚鋼板3の幅方向での冷媒流の排出を調整する複数対の側板13a、13b、13c、13dを、ノズル8aに支持される架台9に設けたシリンダー14a、14b、14c、14dで昇降可能に配設してなるものである。
厚鋼板3の上下に配置する冷媒ガイド板8a、8bは、厚鋼板3のサイズ(特に厚み)に応じて、表面との距離ao、auを調整することにより、冷媒流を適度に押圧して冷媒流の流動厚みを調整し流速を調整するものである。通常は、ao=auとし、上下面とも同一の流れ状態として上下面の均一冷却を行う。
各側板13a〜13dは、上面側の冷媒ガイド板8aに設けたスッリット15を昇降可能に配置されている。このスリット15は、厚鋼板3の板幅に対応して、各側板が厚鋼板3の両側端に外側で近接する位置で昇降できるように配設されている。
また、板幅の大きい厚鋼板3aの場合には、他の一対の側板13aと13dを下げて下面側の冷媒ガイド板8bの上面に当接し、この一対の側板13aと13dと上下の冷媒ガイド板8aと8bによって形成される空間においてスプレーノズル6群から厚鋼板3の上面と下面に同時に冷媒を噴射して冷却することができる。
上方に退避状態にある側板(ここでは13aと13d)は、その下端を上面側の冷媒ガイド板8aの機能を阻害しない位置にすることが望ましい。また、各側板の下端は、下面側の冷媒ガイド板8bの上面に当接されて機能するるため、当接面間で冷媒流が流出しないように、下面側の冷媒ガイド板8b側の受け面と各側板の下端にシール構造を考慮する。例えば冷媒ガイド板8b側では各側板の受面を平坦にし、各側板の下端面に、例えば軟質ゴムや織布などのシール材を装着することも有効である。また、冷媒ガイド板8a、8bに、図4に示すように窪み16を形成する場合には、側板の下端に窪み16に嵌合する凸面を形成することも有効である。
側板13bと13cの内面と厚鋼板3の両側端との間には、隙間17が生じるようにしているため、厚鋼板3の上面側に噴射された冷媒の一部は、この隙間17から下面側の冷媒ガイド板8b側に流れ、厚鋼板3の下面側に噴射された冷媒と合流して流動する。
冷却後の冷媒流は、空間19の後端と後部拘束ロール5b間において、下側冷媒ガイド板8b上面端部および厚鋼板3の両側端部から排出される。この冷媒流の排出のための排出路20は、冷媒流が逆流してスプレーノズルヘッダー7付近から過度に流出しない範囲で狭くして、厚鋼板3と冷媒ガイド板8aまたは8bと側板で構成する隙間に冷媒が充満するように調整する。
なお、隙間17の幅は、厚鋼板3が円滑に通板可能な幅で狭い方がよいが、あまり小さくすると、側板13を多数配置する必要があり得策ではない。ここでは隙間17は250mmまでとし、厚鋼板幅500m毎に側板を選択するものとする。(請求項1、2の形態例に相当)
厚鋼板3の板幅は、例えば500mm単位で変更する場合には、上面側の冷媒ガイド板8aを500mmの幅で分割するものであり、この分割単位で、スプレーノズルヘッダー7を7a、7b、7c、7dに分割して、この分割単位で、スプレーノズル6群からの冷媒の供給制御が可能にすることが有効である。ここでは、スプレーノズル6群は、ナイフ型のスプレーノズル群にしているが、スプレーノズルヘッダーにノズルチップを多数並設したスプレーノズル群でもよい。
下面側の冷媒ガイド板8bの場合には、上面側の冷媒ガイド板8aと同様に、分割してもよいが、その場合、冷媒ガイド板8b上を冷媒流が流動するため、分割部から冷媒流が流出しないような連結構造を考慮することも有効である。この下面側の冷媒ガイド板8bの場合も、スプレーノズルヘッダ7ーを、上面側の冷媒ガイド板8aの場合と同様に、厚鋼板3の板幅に対応して選択使用の一対の側板間領域の単位で、スプレーノズル6群からの冷媒の供給制御が可能なものにすることも有効である。(請求項4、5の形態例に相当)
特に、図4(a)、(b)、(c)に示すように、冷媒ガイド板8a、8bの冷媒流に接する内面側に窪み16を形成し、冷媒の流れに乱れを付与して厚鋼板3の上下両面に冷媒の撹拌流を充分に到達させるようにした場合には、冷却能を格段に高め厚鋼板全体を均一な冷却速度で強冷却することが可能となり、冷却効率を格段に高めて冷却設備長さを短くすることができる。(請求項6、7の形態例に相当)
この実施例1では、径が350mmφの拘束ロール5a、5bを、1000mmの間隔で配置し、拘束ロール5a、5bを1セットとして搬送方向に15セット配設し、長さ15mの冷却装置を形成した。スプレーノズル群6としては1.1m幅のナイフ型のスプレーノズルを厚鋼板3の幅方向に2列配置した。
[冷媒ガイド板条件]
上面側の冷媒ガイド板(8a)
使用幅:2500mm
長さ :800mm
配置位置
ao=20〜30mm
噴射水流を厚鋼板3側に若干押しつけ状態
下面側の冷媒ガイド板(8b)
使用幅:2500mm
長さ :800mm
配置位置
au=20〜30mm
噴射水流を厚鋼板3側に若干押しつけ状態
一対の側板(13b、13c)の内面間距離:2500mm
厚鋼板3の側端との隙間(17):250mm
[スプレーノズル条件]
(上面側と下面側共通)
噴射角度(α):20度
水噴射量:2000リットル/m2 ・分×2列=4000リットル/m2 ・分
水噴射圧力:0.2〜0.3MPa
厚鋼板3の上面側を冷却後の水は、下面側の冷媒ガイド板8b上に落下するものもあるが、殆どは厚鋼板3上に板上水として滞留した後、後部拘束ロール5bに衝突して鋼板3の両側端経由で排出路20から排出され拘束ロール5b(下ロール側)上に落下する。このとき、厚鋼板3への冷却には殆ど影響はなかった。また、厚鋼板3の下面側を冷却後の水は、冷媒ガイド板8b上に滞留した後、後部拘束ロール5b(下ロール側)に衝突し排出路20から落下する。
このようにして冷却後の厚鋼板3のサンプルを採取して組織分析したところ、表層の組織の均一性は充分に満足できるものであり、機械的性質の低下要因は認められなかった。
3 厚鋼板 4 ホットレベラー
5、5a、5b 拘束ロール 6 スプレーノズル
7 スプレーノズルヘッダー 8a、8b 冷媒ガイド板
9 架台 10 シリンダ
11 支持台 12 油圧ジャッキ
13a〜13d 側板 14a〜14d シリンダ(側板用)
15 スリット(側板用) 16 窪み
17 隙間(厚鋼板の側端と側板との隙間)
18 連結材
19 空間(冷却水の流路断面)
20 排出路(拘束ロールと冷媒ガイドとの隙間)
Claims (7)
- 熱間圧延後の厚鋼板を、前後の拘束ロール間で拘束・搬送しながら噴射冷媒により調整冷却する冷却装置であって、拘束・搬送される厚鋼板を挟んで上面側と下面側に、冷媒を噴射するスプレーノズルと、冷媒流の流動厚みを調整する冷媒ガイド板を昇降可能に配設し、冷媒ガイド板の内面側に、噴射冷媒の流れに乱れをつくる複数の窪みを形成したことを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
- 熱間圧延後の厚鋼板を、前後の拘束ロール間で拘束・搬送しながら噴射冷媒により調整冷却する冷却装置であって、拘束・搬送される厚鋼板を挟んで上面側と下面側に、冷媒を噴射するスプレーノズルと、冷媒流の流動厚みを調整する冷媒ガイド板を昇降可能に配設し、上下の冷媒ガイド板間に、厚鋼板の両側端部に近接する位置で厚鋼板の両側端からの冷媒流の排出を調整する複数対の側板を、厚鋼板の板幅に対応し一対選択して昇降可能に配設したことを特徴とする厚鋼板の調整冷却装置。
- 冷媒ガイド板と側板の内面側に、噴射冷媒の流れに乱れをつくる複数の窪みを形成したことを特徴とする請求項2に記載の厚鋼板の調整冷却装置。
- 上面側の冷媒ガイド板が、厚鋼板の板幅に対応して選択使用の一対の側板間領域の単位で分割されていることを特徴とする請求項2または3に記載の厚鋼板の調整冷却装置。
- スプレーノズルヘッダーが、鋼板の板幅に対応して選択使用の一対の側板間領域単位で、スプレーノズルからの冷媒の供給制御が可能なものであることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の厚鋼板の調整冷却装置。
- 請求項2〜5のいずれか1項に記載の厚鋼板の調整冷却装置を、前後の拘束ロール間に厚鋼板を上下面側から冷却可能に配置し、スプレーノズルからの噴射冷媒流の厚鋼板幅方向での排出を、板幅に対応して配置した一対の側板で調整するとともに、冷媒流量の調整と冷媒ガイド板と厚鋼板表面間の距離の調整によって冷媒流速を調整して冷却速度を調整し、冷却後の冷媒流を側板の後端部側から厚鋼板の外方に排出することを特徴とする厚鋼板の調整冷却方法。
- 冷媒ガイド板、または冷媒ガイド板と側板の流れに接する内面側に窪みを形成し、冷媒の流れに乱れを付与して冷媒流を撹拌し、冷媒流による冷却能を高めることを特徴とする請求項6に記載の厚鋼板の調整冷却方法。
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