JP4100541B2 - イネの選抜方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の形質を有する植物の選抜方法に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
種子繁殖性の植物は、種子の発芽により生長を開始する。特に、作物植物においては、種子を播種する環境条件における発芽性が、栽培上、問題になる場合がある。種子が播種される環境条件下において、個体間にばらつきがなく、高率で斉一に、かつ、播種後、早期のうちに発芽すること、更に、それに続く旺盛な初期生育が認められる、高度の発芽性を有することが、作物植物として理想的である。このような、高度の発芽性を有する品種の育成を目的として、従来から、種子を湿潤条件下で実際に発芽させて調査する、発芽力検定が行われていた。また、作物の栽培にあたっては、種子の播種される環境条件が、その作物植物にとって好ましくない場合、例えば、高温、低温、高塩濃度のような、環境ストレス下においても、なお、発芽、生長することが要求される場合がある。そのため、播種の環境ストレス下における、高度の発芽性を有する作物植物を作出するための品種改良が試みられている。
【0003】
具体的な例としては、寒冷地において、イネの直播栽培を行う場合の、イネの発芽性の改良が挙げられる。熱帯に起源を有するイネの発芽の最適温度は、約30℃である。長年の品種育成により、現在では、冷涼な気候の高緯度地方においても、イネの栽培が行われているが、この場合、苗代で育苗を行うことにより、播種期に低温に晒されることを、可能な限り回避することが必要である。このような苗代による栽培は、直播栽培に比べると手間がかかり、作付け密度も、直播に比べると粗にならざるを得ず、イネの収率にも限界がある。直播を可能にするためには、高度の発芽性を有する品種を開発して、たとえ、発芽時に低温に晒されても、植物体が生長し、その後も旺盛に発育する手段を提供することが必要となる。
【0004】
イネの低温下での発芽性については、複数の遺伝子が関与すること、また、発芽性に優れる系統は、初期の生育性にも優れることが報告されている(佐々木、(1974)、北海道立農試報告No.24:5−37)。また、多くの遺伝資源から、低温下での発芽性に優れるイネ品種のスクリーニングも行われている(小高、安部(1988)、農業技術43(4):165−168)。現在、わが国では、高度の発芽性を有する母本から、栽培品種への導入が、鋭意すすめられつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、現在行われている、種子の発芽力検定を行うには、種子を収穫して、これを実際に発芽させることが必要である。よって、この発芽力検定においては、発芽力の評価と選抜に多くの時間を要し、さらに、種子の発芽力は、植物の生育条件、特に、種子の登熟環境に影響されるため、年次間の誤差が生じ、正確な形質の評価を行うことが困難な場合があった。また、高度の発芽性を有する品種を育成するために行う発芽力試験では、種子の調製、発芽のための施設と発芽条件の設定、経時的な調査など、多大な労力と時間を必要とする。
【0006】
そのために、高度の発芽性を有する品種の育成を行うに際して、多数の種子検体についても、それぞれの発芽性を、安定的、効率的、かつ、簡便に選抜する手段の確立が望まれている。
【0007】
近年、多くの作物植物において、遺伝子マーカーを用いた遺伝子解析により、容易にゲノムの特定領域の構造を調査することが可能となり、育種における、種々の形質の選抜を、目的形質遺伝子の近傍に位置する遺伝子マーカーを用いることにより、行うことができることが報告されている(特開2000−279170号公報、特開平11−89583号公報、特開平10−127290号公報、特開平10−84965号公報等)。
【0008】
本発明の目的は、イネの生育初期の段階で、個体の発芽性を、安定、効率的、かつ、簡便に、選抜するために、イネの寒冷に対する発芽性に関与する遺伝子(以下、発芽性遺伝子ともいう)に対する遺伝子マーカーを見出し、この遺伝子マーカーを用いる、寒冷に対する高度の発芽性を有するイネの選抜方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために、寒冷に対する高度の発芽性を有するイネの選抜を可能とする、遺伝子マーカーについての検討を行った。その結果、イネ寒冷に対する高度の発芽性を発現する遺伝子に連鎖する領域における遺伝子マーカーを指標とすることにより、寒冷に対する高度の発芽性を有するイネを選抜することが可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、イネの第3染色体の短腕における0〜11.2マップ単位の位置に存在する遺伝子マーカーを指標として、寒冷に対する高度の発芽性を有するイネを選抜する、イネの選抜方法(以下、本選抜方法ともいう)を提供する発明である。
【0011】
本発明における、「高度の発芽性」とは、少なくとも、発芽から、生長初期における生長の程度が、その植物の標準的な生長の程度よりも高度であることを意味する。また、ここで「高度」とは、生長のスピードが速いこと、通常では、発芽から生長初期の生長が抑制されるストレス環境においても、そのストレスに対して抵抗性を示し、生長を行うこと等を意味する。「ストレス環境」とは、本発明においては、低温を意味することとする。
【0012】
上述したように、本選抜方法の対象は、イネである。
【0013】
本発明において用いる、cM(センチモルガン)とは、乗換え率の単位(交差単位)であり、同一染色体上の遺伝子間の遺伝的距離を表す単位である。1cMは、2つの遺伝子間に1%の頻度で交差が起こる場合の両遺伝子間の距離を示し、1マップ単位(map unit)と等しい。よって、この数値が小さいほど、遺伝子の乗換えが起こる頻度が小さく、一般的には、2つの遺伝子の染色体上の距離が近いこと、すなわち、2つの遺伝子の連鎖が強いことを意味している。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、未だ、本体が明らかとなっていない「発芽性遺伝子」に連鎖する遺伝子マーカー、すなわち、発芽性遺伝子に対応して何らかの変化を示すイネの遺伝子のマーカーを見出して、この遺伝子マーカーを指標として、寒冷に対する高度の発芽性を形質として有するイネを選抜する、植物の選抜方法である。
【0015】
遺伝子マーカーは、発芽性遺伝子に対応する何らかの変化を、多型として検出することができる遺伝子マーカーであることが好適である。例えば、特定の制限酵素に対応する制限パターンの差異を指標として、多型を検出可能な方法として、RFLP法により検出するRFLPマーカー[Botstein,D,et al.,(1980)AM.J.Hum.Genet.32:314-331] 、AFLP法により検出するAFLPマーカー[Zabeau,M.and P.Vos(1993)European Patent Apprication,EP0534858) 、RLGS法により検出するRLGSマーカー[Hatada,I. et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9523-9527]等が例示可能である。特に、イネにおいては、多数のRFLPマーカーが見出され[Harushima,Y. et al.,(1998)Genetics 148:479-494]、RFLP法が、一般的な方法として挙げられる。
【0016】
また、多型の存在する遺伝子領域を、PCR法等の遺伝子領域を増幅させて、得られた遺伝子増幅産物の塩基長の差異で、多型による遺伝子型の異同を検出可能な方法も用いることができる。特に、遺伝子増幅産物による検出を行う場合には、多型頻度が高い、SSR(Simple sequence repeats) 領域[Powell,W.et al.,(1996) Trends Plant Sci 1:215-222、McCouch,SR.et al.,(1997)Plant Mol Biol 35:89-99]を、本発明で用いる遺伝子マーカーを選択する場合の指標とすることが好適である。SSR領域は、既存のソフトウエアで検索を行うことができる〔例えば、「SSRIT」(http://ars-genome.cornell.edu/cgi-bin/rice/ssrtool.pl) 等〕。
【0017】
本選抜方法における、発芽性遺伝子と連鎖する遺伝子マーカーは、可能な限り、発芽性遺伝子との遺伝的距離が近いことが、発芽性遺伝子との連鎖の信頼性が高く好適である。具体的には、発芽性遺伝子と20cM以内の領域が好適であり、特に好適には、同11.2cM以内、極めて好適には、同7.9cM以内の領域である。
【0018】
上記の20cM以内の遺伝子領域としては、AP000615、AC097627、AC098695、AC099739、AC098693、AC099399等(イネゲノム研究プログラムhttp://rgp.dna.affrc.go.jp、CCWイネゲノム研究コンソーシアムhttp://www.genome.clemson.edu/projects/rice/ccw/等)を挙げることができる。
【0019】
上述した遺伝子領域内で、イネの表現型として、寒冷に対する高度の発芽性が認められるか否かを指標として、多型の有無を検討することにより、目的とする遺伝子マーカーを見出すことができる。
【0020】
例えば、本発明において用いられ得る、イネのRFLPマーカーとしては、例えば、C814b、S1473、R1713、S1554、C1153、C721、C567、S1714、R1468A、C725等(イネゲノム研究http://rgp.dna.affrc.go.jp)が挙げられ、中でも、C814bが好適である。
【0021】
また、例えば、上記の遺伝子領域AP000615内の増幅遺伝子マーカーを1種または2種以上、本選抜方法で用いる場合、その中の少なくとも1種を、配列番号1で表される塩基配列のSSR配列を含む遺伝子領域を増幅遺伝子マーカーとすることが好適である。このSSR配列を含む遺伝子領域は、イネにおける寒冷に対する高度の発芽性の形質の有無に応じて、塩基長が変化することが認められており(実施例参照)、非常に好適な増幅遺伝子マーカーである。
【0022】
特定の遺伝子領域を、PCR法等の遺伝子増幅法で増幅させて、増幅遺伝子マーカーとする場合、増幅を行う鋳型遺伝子の5’末端と3’末端に対して、実質的に相補的な、遺伝子増幅反応を行うための遺伝子増幅用プライマーが必要である。かかる遺伝子増幅用プライマーの選択は、目的とする遺伝子領域を、遺伝子増幅反応で増幅可能なものである限り、特に限定されず、PCR法等の遺伝子増幅反応を、一般的に行う際における、プライマー選択基準に基づき選択することができる。
【0023】
例えば、配列番号1で表される塩基配列のSSR配列を含む遺伝子領域を増幅遺伝子マーカーとする場合には、センスプライマーとして、配列番号2で表されるヌクレオチド鎖とすることが好適な態様として挙げることができる。また、アンチセンスプライマーとしては、配列番号3で表されるヌクレオチド鎖とすることを好適な態様として挙げることができる。
【0024】
配列番号1と配列番号2で表されるヌクレオチド鎖は、共に、報告されているイネの遺伝子の塩基配列に対して相補的な配列のヌクレオチド鎖であり、後述する実施例に示すように、これらのヌクレオチド鎖を、遺伝子増幅反応のセンスプライマーとアンチセンスプライマーとして用いることが好適である。しかしながら、例えば、これら連続する30塩基全体を用いなくても、少なくとも、これらの配列のうち、少なくとも、連続する15塩基が、鋳型遺伝子における遺伝子増幅反応の開始点において相補的であれば、プライマーの全ての部分が鋳型遺伝子と、完全に相補的である必要はない(センスプライマーであれば、5’末端側15塩基以上が配列番号1の配列と一致し、アンチセンスプライマーであれば3’末端側15塩基以上が配列番号2の配列と一致することが好適である)。また、このような条件を満たす、遺伝子増幅用プライマーの全塩基長は、50塩基以下程度であることが、一般的である。
【0025】
このように、配列番号1にかかわるセンスプライマーと、配列番号2にかかわるアンチセンスプライマーを用いて、遺伝子増幅を行うことにより、被験イネの発芽性遺伝子に応じて、異なる塩基長を与える増幅遺伝子マーカーが得られる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。ただし、この実施例の記載により、本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
〔実施例1〕 RFLP分析
寒冷に対する高度の発芽性が認められる品種のイネ(Italica Livorno)と、寒冷に対する通常の発芽性が認められる品種のイネ(はやまさり)の緑葉から、CTAB法により、DNAを抽出した。ここで行ったCTAB法は、マーレイ・トンプソン法[Murray,H.G. and Thompson,W.F.(1980)Nucleic.Acid Res.8:4321-4325) の改変法であり、各々の緑葉の凍結組織をホモジネートして、これから、DNAを抽出した。
【0027】
得られたDNAを用いて、RFLP分析を行った。このRFLP分析に用いられた、RFLPマーカーは、イネゲノムプログラムにより開発されたものである[Harushima,Yら(1998)Genetics 148-494] 。
【0028】
また、RFLP分析の手法は、常法[Kurata,N.et al.,(1994)Nature Genet.8:365-372]に従って行った。すなわち、DNAは、8種類の制限酵素(BamHI ,BglII ,EcoRV ,HindIII ,ApaI,DraI,EcoRI ,KpnI)で消化し、消化したDNAを、0.6%のアガロースゲルを用いて電気泳動を行い、ナイロンメンブレン(ロシュ社製)へ、サザンブロッティングを行った。サザンハイブリダイゼーションおよび検出は、ECLシステム(アマシャムファルマシアバイオテク社製)により行った。
【0029】
およそ、1000種類のRFLPマーカーを解析したところ、約100種類のRFLPマーカーで、上記の2品種間における、多型が認められた。
これらの約100種類の、多型が認められたRFLPマーカーと、発芽性遺伝子との遺伝的連鎖関係を明らかとする遺伝解析を、以下のように行った。
【0030】
まず、低温に対する高度の発芽性を有するイネ品種である「Italica Livorno 」と、通常の発芽性が認められているイネ品種である「はやまさり」との交雑F1に、「はやまさり」を戻し交配した、BC1F1世代から、単粒系統法により、組換え自殖系統BC1F5世代を作出した。
【0031】
この組換え自殖系統BC1F5世代の発芽性の評価は、従来から行われている種子を用いる発芽力検定(低温下)により行った。
すなわち、発芽力検定を、温度条件を15℃として行い、その発芽率により、各系統の発芽性を評価した。
【0032】
また、各系統の緑葉から、上述した条件で、DNAを抽出して、これについて、RFLP分析を行った。
RFLPマーカーとしては、上述の多型を示した100種類のマーカーを用いた。RFLPマーカーの遺伝子型と発芽率の連鎖関係を解析したところ、RFLPマーカーC814b[Harushima,Yら(1998)Genetics 148-494] が発芽性遺伝子に連鎖していることが明らかとなった。第1表と第1図に、RFLPマーカーを用いたRFLP分析の結果と、低温条件下における発芽性についての関係を示した(第1図において、黒棒は、Italica Livorno の系統数を表し、白棒は、はやまさりの系統数を表す)。
【0033】
【表1】
Figure 0004100541
第1表と第1図により、RFLPマーカーC814bによる遺伝子型分析のパターンが、「Italica Livorno 」の場合には、低温における高度の発芽性が認められ、同「はやまさり」の場合には、通常の発芽性が認められた。
【0034】
この結果、RFLPマーカーC814bは、発芽性遺伝子と強く連鎖しており、高度の発芽性を有するイネを選択するためのRFLPマーカーとして好適であることが判明した。
【0035】
RFLPマーカーC814bは、イネの第3染色体の11.2に位置するRFLPマーカーである。連鎖解析の結果、発芽性遺伝子は、このC814b近傍から短腕末端部に存在することが示された。すなわち、C814bと発芽性遺伝子は、11.2cM以内の連鎖関係にあることが明らかとなった。
【0036】
〔実施例2〕 PCRマーカーによる分析
(1)イネゲノム研究プログラムの公開データー(http://rgp.dna.affrc.go.jp)を用いて、上記実施例1において、発芽性遺伝子と連鎖していることが判明した、RFLPマーカーC814bの座乗する染色体領域近傍の塩基配列である、AP000615の情報を得た。この塩基配列における、SSR配列〔イネにおいて、多型を得やすい繰り返し配列であることが知られている:McCouch,SR.et al.,(1997)Plant.Mol.Biol.35:89-99 〕を、SSR検索ソフトウエア「SSRIT」(http://ars-genome.cornell.edu/cgi-bin/rice/ssrtool.pl) を用いて、配列番号1に示すSSR配列〔(TA)21(TG)12〕の情報を得た。次いで、この配列番号1記載のSSR配列近傍の、イネ遺伝子における塩基配列を基に、このSSR近傍領域を、PCR法により増幅可能なPCRプライマーを、コンピューターソフトウエア「Oligo4.04 」(National Bioscience社製)を用いて設計し、下記の塩基配列のオリゴヌクレオチド(配列番号2,3)を、DNAシンセサイザー(System plus :ベックマン社製)で合成した〔アール・エル・レンジャー等の方法(R.T.Letsinger,W.B.Lursford,J.Am.Chem.Society.98,3655)に従う〕。
【0037】
センスプライマー:AGCCAGGTATGTCATAAATGATAATAACAA(配列番号2)
アンチセンスプライマー:AATCAGAATCTACACTATAAATGGCCGAAG(配列番号3)
【0038】
これらのPCRプライマーを、実施例1に記載した要領で、被験イネの緑葉から抽出したDNAを鋳型として、PCR反応を行い、配列番号1で示すSSR配列近傍の遺伝子増幅産物を調製して、被験イネ毎のこの遺伝子増幅産物の塩基長の差異を検出することにより、この増幅遺伝子マーカーが、発芽性遺伝子に連鎖した遺伝子であるか否かを検討した。本例において、PCR反応は、ウイリアムズ(Williams)らの方法に従い、反応混液を調製し、ジーン・アンプPCR9700(パーキンエルマー社製)とiサイクラー(バイオラッド社製)を用いて、DNAの増幅を行った[Theor.Apple.Genet.82,489-498(1990)]。このPCR反応より得られたDNA増幅産物の検出は、PCR反応が終了した反応液に、泳動用色素液を添加し、電気泳動装置(フォーラックサブマリン電気泳動装置:日本エイドー社製)を用い、180Vで、約90分間通電し、泳動終了後、0.5μg/mlエチジウムブロマイド溶液に、20分間浸漬することにより行った。なお、泳動用バッファーとしては、TBEバッファーを用い、ゲルは、1.5または2%(W/V)アガロース(シグマ社製:タイプI)を、TBEバッファーに溶解して調製した。写真撮影は、上述のエチジウムブロマイドで染色したゲルを、軽く水洗し、透過型紫外線照明装置の上に置き、紫外線を照射して撮影した。その結果を、第2図に示す(レーン1:はやまさりのDNA増幅産物のバンド、レーン2:Italica Livorno のDNA増幅産物のバンド、M:分子マーカー(Φ×174-HaeIII ))。
【0039】
第2図により、寒冷に対する高度の発芽性を有する、Italica Livorno のDNA増幅産物のバンドは、約750bp、通常の発芽性を有する、はやまさりのDNA増幅産物のバンドは、約720bpであり、両DNA増幅産物の塩基長は、明らかに異なっており、電気泳動像において、明確な識別が可能であることがわかった。
【0040】
(2)次に、実施例1において行った、組換え自殖系統BC1F5世代の発芽性の評価を、低温下(15℃)で行い、この発芽性の評価結果と、上述のPCRプライマー(配列番号2,3)を用いて、各々の系統の緑葉から抽出したDNAの遺伝子増幅反応を、上記(1)に準じて行い、遺伝子型を明らかにし(第3図:レーン1:はやまさりのDNA増幅産物のバンド、レーン2:Italica Livorno のDNA増幅産物のバンド、レーン3〜12:組換え自殖系統のDNA増幅産物のバンド、M:分子マーカー(Φ×174-HaeIII ))、得られたDNA増幅産物(増幅遺伝子マーカー)の塩基長と、発芽性の連鎖関係を検討した。その結果を、第2表と第4図に示す(第4図において、黒棒は、Italica Livorno の系統数を表し、白棒は、はやまさりの系統数を表す)。
【0041】
【表2】
Figure 0004100541
この結果、▲1▼Italica Livorno 型の増幅断片を示す系統の平均発芽率は、42.8%であるのに対し、はやまさり型の増幅断片を示す系統の平均発芽率は、20.6%であり、約2倍の明らかな差異が認められた。▲2▼発芽率が50%を超える、高度の寒冷に対する発芽性を示す系統は、組換え自殖系統において13.1%(122系統中16系統)存在したが、その16系統のうちの75%は、Italica Livorno 型の増幅断片を示した。
【0042】
この結果により、配列番号2,3で表される塩基配列の遺伝子増幅用プライマーによって得られる増幅遺伝子マーカーは、高度の寒冷に対する発芽性を有するイネの系統を選抜するマーカーとなり得ることが示唆された。
【0043】
AP000615は、RFLPマーカーS1554を含む領域であることが知られており、このS1554は、イネの第3染色体の7.9に位置するRFLPマーカーである。つまり、ここで用いた増幅遺伝子マーカーと発芽性遺伝子とは、7.9cM以内の連鎖関係にあることが明らかとなった。
【0044】
(3)この増幅遺伝子マーカーによる、高度の発芽性を有するイネの選抜の汎用性を検討するために、他品種のイネ(全て、寒冷に対する発芽性は、通常程度であることが認められている:きたいぶき,きらら397,ほしのゆめ,彩,農林20号,キタアケ)について、上記(1)(2)と同様の、配列番号2,3で表される塩基配列の遺伝子増幅用プライマーを用いて、PCR法を行うことにより得た、遺伝子増幅産物の塩基長を検討した。その結果(電気泳動像)を、第5図に示す(レーン1:Italica Livorno ,レーン2:はやまさり,レーン3:きたいぶき,レーン4:きらら397,レーン5:ほしのゆめ,レーン6:彩,レーン7:農林20号,レーン8:キタアケ,M:分子マーカー(Φ×174-HaeIII ))。第5図において、被験系統の増幅遺伝子マーカーの塩基長は同一ではなかったが、通常の寒冷に対する発芽性の系統に由来する、いずれのマーカーも、高度の寒冷に対する発芽性が認められているItalica Livorno の増幅遺伝子マーカーの塩基長とは異なっていた。
【0045】
このことにより、配列番号2,3で表される塩基配列の遺伝子増幅用プライマーによって、遺伝子増幅産物として得られる増幅遺伝子マーカーは、高度の寒冷に対する発芽性を有するイネの系統を選抜するマーカーとなり得ることが明らかとなった。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、イネの生育初期の段階で、個体の発芽性を、安定、効率的、かつ、簡便に、選抜するために、イネの発芽性に関与する遺伝子に対する遺伝子マーカーが見出され、この遺伝子マーカーを用いる、寒冷に対して高度の発芽性を有するイネの選抜方法が提供される。
【0047】
【配列表】
Figure 0004100541
Figure 0004100541

【図面の簡単な説明】
【図1】RFLPマーカーを用いたRFLP分析の結果と、低温条件下における発芽性についての関係を示したグラフを表した図面である。
【図2】はやまさりと、Italica Livorno の、本発明にかかわる遺伝子増幅産物の塩基長を比較した電気泳動像を示す図面である。
【図3】組換え自殖系統の、本発明にかかわる遺伝子増幅産物の塩基長を比較した電気泳動像を示す図面である。
【図4】増幅遺伝子マーカーの塩基長と、低温条件下における発芽性との関係を示したグラフを表した図面である。
【図5】複数の品種のイネについての、本発明にかかわる遺伝子増幅産物の塩基長を比較した電気泳動像を示す図面である。

Claims (6)

  1. イネの第3染色体の短腕における0〜11.2マップ単位の位置に存在する遺伝子マーカーを指標として、寒冷に対する高度の発芽性を有するイネを選抜する、イネの選抜方法。
  2. 前記選抜方法において、遺伝子マーカーが、イネの第3染色体の短腕における0〜7.9マップ単位の位置に存在する遺伝子マーカーである、請求項1記載のイネの選抜方法。
  3. 前記選抜方法において、遺伝子マーカーが、RFLPマーカーおよび/または増幅遺伝子マーカーである、請求項1または2に記載のイネの選抜方法。
  4. 前記選抜方法において、増幅遺伝子マーカーが、配列番号1で表されるSSR配列を含む増幅遺伝子マーカーである、請求項1〜3のいずれかに記載イネの選抜方法。
  5. 配列番号1で表されるSSR配列を含む遺伝子領域の遺伝子増幅産物を得るためのセンスプライマーが、配列番号2で表されるヌクレオチド鎖であり、同アンチセンスプライマーが、配列番号3で表されるヌクレオチド鎖である、請求項4記載のイネの選抜方法。
  6. イネの遺伝子から配列番号1で表される SSR 配列を含む遺伝子領域の遺伝子増幅産物を、寒冷に対する高度の発芽性を有するイネを選抜する指標として得るための、配列番号2で表されるヌクレオチド鎖および配列番号3で表されるヌクレオチド鎖からなる、遺伝子増幅用プライマーセット。
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