JP5087349B2 - イネの低温発芽性に関する遺伝子とその利用 - Google Patents

イネの低温発芽性に関する遺伝子とその利用 Download PDF

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Description

本発明は、低温発芽性遺伝子とその利用技術に関するものであり、更に詳しくは、イネの低温発芽性を向上させる機能を有する単離(isolated)された低温発芽性遺伝子、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列、該低音発芽性遺伝子を利用した環境ストレス(低温、塩、浸透圧のストレス)下での発芽性向上方法、該遺伝子を導入して作出した形質転換植物及び植物の低温発芽性の検出方法等に関するものである。
環境ストレスに対する耐性は、作物における重要な形質であり、これまで、量的形質遺伝子座(QTLs)と呼ばれる複数の遺伝子により制御されている複雑形質であると考えられていた。これらのQTLsを同定することは、世界における安定な作物生産を達成するものとして重要であると思われる。これまでに、本発明者らは、特定の形質を有するイネ科植物の選抜方法と該方法に用いる遺伝子マーカーを提案している(特許文献1)。また、本発明者らは、イネ低温発芽性について研究を進める過程で、イネ発芽性遺伝子のQTL解析により、第3、4染色体に3個のQTL(qLTG−3−1、qLTG−3−2、qLTG−4)を見出した。そして、第3染色体短腕末端領域に見出された遺伝子座qLTG−3−1は、作用力が極めて大きく、イネの低温発芽性の改良において有用であることが示唆された(非特許文献1)。
また、本発明者らは、発芽ステージにおける低温耐性に作用する三つのQTLsのうち、qLTG−3−1について、高精度マッピングを行った(非特許文献2、4)。その結果、qLTG−3−1の候補領域をマーカーSSR125411−4.1からマーカーSTS73−28間の約96kbに絞り込むことができた(非特許文献2)。しかし、これは、イネ低温発芽性QTLの高精度マッピングによりqLTG−3−1の候補領域を推定し得た、というものである。
また、本発明者らは、ストレス下におけるイネ種子発芽性のQTL解析を行った。それにより、qLTG−3−1は、温度、塩(NaCl)及び浸透圧(マンニトール)ストレスを含む多様のストレス応答に関与していることが示唆された。このQTLにおいて、「Italica Livorno」型の遺伝子が発芽性を高くする作用を示すこと、第3染色体短腕末端領域には、塩及び浸透圧のいずれのストレスに対しても高い発芽性を示すQTLが存在すること、が明らかとなった(非特許文献3)。
このように、低温は、世界における作物生産における主要な環境ストレスであり、これまでに、本発明者らは、高い低温発芽性を有する「Italica Livorno」を用いたQTL分析により、低温発芽性に関与する三つのQTLs(量的形質遺伝子座)を明らかにした。しかし、環境ストレスは、複数の遺伝子により制御されている複雑形質と考えられており、qLTG−3−1の表現型の遺伝的な機能の解明、qLTG−3−1遺伝子の単離、同定及びクローニング等については未だ何も行われていなかった。
特開2003−180362号公報 育種学研究5(別2),p.212(2003) 育種学研究8(別1),p.153(2006) 育種学研究5(別1),p.117(2007) Theor.Appl.Genet.,108:794−799(2004)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、qLTG−3−1の表現型の遺伝的な機能の解明、qLTG−3−1遺伝子の単離、同定及び該遺伝子のクローニングによる形質転換体の作出等を目標として鋭意研究を積み重ねる過程で、上記のQTLを分子レベルで解明するために、染色体地図に基づくクローニングにより、qLTG−3−1を同定し、未知の機能を持つ蛋白質をコード化していることを見出した。また、qLTG−3−1は、種子の発芽の時期に胚で強く発現され、GUSに融合させたqLTG−3−1のプロモーターによる形質転換植物において、子葉鞘と種子根をカバーしている芽鱗、前鱗において、特異的なGUS染色が観察された。そして、更に研究を重ねて、qLTG−3−1の機能の解明、qLTG−3−1遺伝子の塩基配列の決定、該遺伝子がコードするアミノ酸配列の決定、該遺伝子による形質転換体の作出及び該遺伝子の利用技術を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、イネの低温発芽性に関する遺伝子、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を持つポリペプチド、該遺伝子を利用した環境ストレス(低温、塩、浸透圧のストレス)下での発芽性の向上方法、該遺伝子を導入して作出した形質転換体及び植物の低温発芽性の検出方法等を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)イネ系統「Italica Livorno」由来の単離(isolated)された低温発芽性能を有するqLTG−3−1遺伝子であって、配列表の配列番号1の塩基配列を有することを特徴とする低温発芽性遺伝子。
)環境ストレスである低温、塩(NaCl)、浸透圧(マンニトール)のストレス下での発芽性向上機能を有する、前記(1)に記載の低温発芽性遺伝子。
)前記(1)の低温発芽性遺伝子によりコードされる低温発芽性を向上させる作用を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドであって、配列表の配列番号20のアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド
)前記(1)に記載の低温発芽性遺伝子を植物に組換えて低温発芽性を向上させたことを特徴とする形質転換植物。
)植物が、イネである、前記()に記載の形質転換植物。
)前記(1)に記載の低温発芽性遺伝子の塩基配列と栽培品種の遺伝子型とを対比して、栽培品種の低温発芽性を分析することを特徴とする低温発芽性の分析方法。
)上記栽培品種が、イネである、前記()に記載の低温発芽性の分析方法。
)前記(1)に記載の低温発芽性遺伝子をイネの栽培品種に導入して、該品種の低温条件下での低温発芽性を向上させることを特徴とするイネの低温発芽性の向上方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、イネ系統「Italica Livorno」由来の単離(isolated)された低温発芽性能を有するqLTG−3−1遺伝子であって、配列表の配列番号1の塩基配列を有することを特徴とするものである。本発明では、上記配列番号1の塩基配列において、該塩基配列の1部に遺伝子変異が存在しており、かつ配列番号1の塩基配列と同等の低温発芽性能を有する低温発芽性遺伝子、上記遺伝子変異が、塩基配列の付加、欠失、置換によるものであること、環境ストレスである低温、塩(NaCl)、浸透圧(マンニトール)のストレス下での発芽性向上機能を有する低温発芽性遺伝子であること、を好適な実施態様としている。
また、本発明は、上記低温発芽性遺伝子によりコードされる低温発芽性を向上させる作用を有するアミノ酸配列であって、配列表の配列番号20のアミノ酸配列を有することを特徴とするものである。また、本発明は、上記低温発芽性遺伝子を植物に導入して低温発芽性を向上させた形質転換植物の点に特徴を有するものである。本発明の形質転換植物において、植物が、イネであること、qLTG−3−1プロモーター+qLTG−3−1遺伝子を植物に導入して低温発芽性を向上させたこと、また、35Sプロモーター+qLTG−3−1遺伝子を植物に導入して低温発芽性遺伝子qLTG−3−1を過剰発現させたこと、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明は、上記低温発芽性遺伝子の塩基配列と栽培品種の遺伝子型とを対比して、栽培品種の低温発芽性を分析することからなる低温発芽性の分析方法の点に特徴を有するものである。本発明の分析方法では、上記栽培品種が、イネであること、を好ましい実施の態様としている。更に、本発明は、上記低温発芽性遺伝子をイネの栽培品種に交雑あるいは遺伝子組換えて、該品種の低温条件下での低温発芽性を向上させることからなるイネの低温発芽性の向上方法の点に特徴を有するものである。
次に、本発明の低温発芽性遺伝子の単離について詳しく説明する。植物材料として、ジャポニカイネ品種である日本由来のイネの「はやまさり」とイタリア由来のイネの「Italica Livorno」を用いた。qLTG−3−1に関する準同質遺伝子系統(ear sogenic ine,NIL)であるNILHYqLTG−3−1は、「はやまさり」に「Italica Livorno」由来のqLTG−3−1近傍の360−kbの染色体領域を導入した。「はやまさり」と「Italica Livorno」の交配から得た組換え自殖系統BILsから、低温発芽性の表現型と遺伝子型に基づいて、BIL116を選抜した。BIL116は、NILを作製するために、マーカーアシスト選抜で「はやまさり」と戻し交配した。
異なったストレス条件下における発芽性を検討するために、Fujinoら(2004年)によって報告されている方法に従って、発芽テストを行った。低温ストレスのために、種子をペトリ皿に入れてインキュベータに載置した。その際に、異なった濃度の植物ホルモン(ABA及びGA)、NaCl及びマンニトールの溶液を、ペトリ皿に加え、インキュベータに載置した。
qLTG−3−1のポジショナルクローニングを行うために、qLTG−3−1の高精度マッピング及び大規模マッピングを行った。そのために、後記する表1に記載した両親の間の分子マーカー及び多型を用いた。BIL116を「はやまさり」と交配し、高精度マッピング及び大規模マッピングのために、戻し交配の後代を作出し、256個体からなるF2個体集団を高精度マッピングに用いた。
qLTG−3−1座における各組換えF2個体の遺伝子型を、F3後代の低温下での発芽テストによって決定した。「Italica Livorno」ホモ接合体、「はやまさり」ホモ接合体、ヘテロ接合体の3つの遺伝子型は、明確に区別可能であった。これらのF2個体を、qLTG−3−1の高精度マップに使用し、加えて、〜3200個体からなるBC1F2集団を、大規模マッピングに用いた。
ゲノムDNAは、Fujinoら(2004年)によって報告されている方法に従って、抽出した。ゲノムDNAは、PCRに基づく分子マーカーを持つ表現型で共分離をするためにPCRに用いた。これまでに開発した2つのSSRマーカー(Fujinoら 2004年)に加えて、8つのSSRマーカー(後記する表1参照)を、Fujinoら(2004年)によって報告された方法に従って、「日本晴」ゲノムを用いて、高精度マッピングのために作製した。
大規模マッピングのために、6つの分子マーカーを「はやまさり」と「Italica Livorno」の間の14のゲノム配列の違いに基づいて作製した(後記する表1、2参照)。96−kb領域の両親の間の多型を検出するシークエンシングのために、両親からのPCR産物の両鎖を、Big Dye Terminator v3.1サイクルシークエンシングキッド(Applied Biosystems)を用いて、直接シークエンシングした。
アソシエーション解析のために、69のジャポニカイネ品種をqLTG−3−1の遺伝子型によって分類した。「はやまさり」型対立遺伝子を検出するために、プライマーS103U及びS103L(後記する表4参照)を用いて、「はやまさり」に見出された欠失領域を増幅するPCRを行った。「日本晴」型対立遺伝子を検出するために、上記のPCR産物を、BseRIにより消化した。「Italica Livorno」型対立遺伝子におけるGGGAGは、BseRIによって消化され、「日本晴」型対立遺伝子におけるGGGAGは、BseRIによっては消化されなかった。「はやまさり」、「日本晴」及び「Italica Livorno」遺伝子型は、各々、28、20及び21のイネ品種で見出された。各遺伝子型の低温発芽性の平均は、分散分析で比較した。
遺伝子発現の分析を行うために、全RNAを、RNAiso(TAKARA)を用いて、イネの種々の器官から抽出した。全RNA(0.5μg)は、製造指針に従って、Oligo(dT)20プライマーを持つRever Tra Ace(TOYOBO)によって逆転写した。PCR反応は、KOD−plus(TOYOBO)を用いて行った。各PCR反応(10μL)は、5倍に希釈された0.5μLのcDNAテンプレートを含んでいた。目標遺伝子に対する各プライマーの特異性を、PCR産物のシークエンシングによって確認した。ノーザンブロット分析のために、全RNA(4μg/試料)を、40mM MOPS(pH7.0)、10mM Na−acetate、1mMEDTA、及び2%(v/v)ホルムアルデヒドを含む2.0%(w/v)アガロース−変性ホルムアルデヒドゲル上で分離した。
RNAを、20×SSCで正にチャージしたナイロン膜(Roche Diagnostics)に移した。ハイブリダイゼーションとシグナルの検出は、各々、DIGシステム及びCDP−star(Roche Diagnostics)で行った。プライマー13−5U及び13−5LからのPCRフラグメントを、ノーザンブロット分析のプローブとして用いた。RT−PCR分析のためのプライマー及び増幅条件は、後記する表5に記載した。
プラスミドの構築及び形質転換を行うために、「Italica Livorno」からのqLTG−3−1の3−kbのゲノムDNAフラグメントを、プライマーAno13−LA5U及びAno13−LA5L(後記する表4参照)を用いて、PCRにより増幅した。qLTG−3−1プロモーターGUS遺伝子融合コンストラクトを作るために、「Italica Livorno」からのqLTG−3−1の5’上流領域の2−kbのゲノムDNAフラグメントを、プライマーAno13−10U及びAno13−10L(後記する表4参照)を用いて、PCRによって増幅した。
真のqLTG−3−1遺伝子を十分に発現させるプロモーター配列は、未同定であるため、qLTG−3−1の開始コドンから2k−bpの5’上流領域を、プロモーターとして用いた。これらのPCR産物は、各々、pBluescript II SK−ベクター(Stratagene)のBamHI/SacI及びHindIII/BamHIサイトにクローニングした。
次いで、これらのフラグメント及びGUS遺伝子を、pPZP2H−lac Ti−plasmidベクター(Fuseら 2001年)に、クローニングした。過剰発現植物を作るために、35Sプロモーターの下にqLTG−3−1遺伝子を連結したコンストラクトを作製した。プライマーAno13−LA5U及びAno13−LA5LからのPCR産物は、BamHI及びSacIで消化された。このフラグメントを、pPZP2Ha3 Ti−plasmidベクター(Fuseら 2001年)のSacIサイトに、クローニングした。
Agrobacteriumを介在した形質転換体を、「はやまさり」(Toki 1997年;Tokiら2006年)の形質転換に用いた。ハイグロマイシン耐性カルス(T0植物)から再生された植物は、隔離した温室で生育させた。T1形質転換体を、導入遺伝子上のPCRによって選択、栽培し、採種(T2世代)を行い、発芽実験に供した。
GUS発現の組織化学分析を行うために、qLTG−3−1::GUSを持った形質転換植物の種子を、30℃でインキュベートした。この条件下で、発芽(子葉鞘の出現)は、処理後2日でわずかのパーセントの種子で起こり始めた。形質転換植物の種子は、処理後0日、1日及び2日で試料とした。形質転換イネの全種子及び縦にカットされた種子を、0.5mM X−Gluc、0.5mK[Fe(CN)]、0.5mM K[Fe(CN)]及び0.5%(v/v)Triton X−100を含む50mM NaHPO(pH7.0)で真空浸透し、37℃で6時間インキュベートした。次いで、70%EtOHを加えて、室温で酵素反応を停止した。
栽培イネの近縁野生イネとして、AAゲノム野生イネ、W0106(O.rufipogon)、W0652(O.barthii)、W1169(O.glmaepatula)、W1413(O.longistaminata)及びW1508(O.longistaminata)のイネ種子を、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所から入手した。62品種を含む栽培イネ(O.sativa)(Kojimaら 2005年)のコアコレクションのイネ種子を、独立行政法人農業生物資源研究所から入手した。
このコレクションは、ジャポニカ、アウス及びインディカに相当するグループA、B及びCの3つのグループからなっていた(Kojimaら 2005年)。全DNAを、Fujinoら(2004年)によって報告された方法により、CTABを用いて、若葉から分離した。qLTG−3−1遺伝子領域を、プライマー(後記する表4参照)を用いて増幅し、Big Dye ターミネータ(Applied Biosystems)でのサイクルシークエンスを用いて、直接シークエンシングした。
シークエンシングは、Prism3700自動シークエンサー(Applied Biosystems)で行った。DNA配列は、BioEdit(http:www.mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.html)を用いて整列化し、次いで、視覚的に確認した。全ての多型は、クロマトグラムから再照合した。
本発明者らの見出した配列では、ヘテロ接合体は観察されなかった。5’及び3’UTRを含んだ933−bpの上流領域と296−bpの下流領域を含んでいるqLTG−3−1の遺伝子領域1784−bp遺伝子は、−433から−384からの50−bp領域のTAの繰り返しを除いて、栽培イネと野生種からシークエンシングした。
遺伝子多型により得られたユニークなDNA配列又は対立遺伝子間の系統関係を示す、ハプロタイプネットワークを、統計学における節約法を用いたコンピュータープログラムTCS(Crandallら 2000年)により、構築した。
環境ストレス耐性の付与は、作物の安定生産において重要な育種目標である。特に、寒冷地におけるイネの栽培においては、低温が主要なストレスであるが、これまで、低温耐性は、量的形質(QTLs)と呼ばれる複数の遺伝子により制御されている複雑形質であると考えられていた。これに対して、本発明では、量的形質であるイネの低温発芽性に関わる遺伝子作用力の大きな遺伝子を単離し、その機能解析を行った。
低温発芽性遺伝子として、低温発芽性に極めて優れるイネ系統「Italica Livorno」の有するqLTG−3−1を単離した。本発明では、ポジショナルクローニング法により、このqLTG−3−1を分子的に同定した。この遺伝子は、555bpよりなり、機能未知の新規の遺伝子であった。機能消失型遺伝子を有するイネ品種「はやまさり」に、アグロバクテリウム法によって機能型の遺伝子の遺伝子導入を行ったところ、「はやまさり」よりも高い低温発芽性を示したことから、この555−bpの配列が、目的とする低温発芽性遺伝子qLTG−3−1であることが明らかとなった。
「Italica Livorno」の有する機能型qLTG−3−1を含む染色体領域を、DNAマーカー選抜・戻し交雑により、機能消失型遺伝子を有するイネ品種「はやまさり」に導入した準同質遺伝子系統は、低温だけではなく、塩(NaCl)及び浸透圧(マンニトール)のストレス下においても、高い発芽性を示した。このことから、qLTG−3−1は、複数のストレスに対する耐性に関わる遺伝子であることが示唆された。
遺伝子の発現解析の結果、qLTG−3−1は、特に種子発芽時の胚において、高い発現が認められた。また、出穂前の穂においても、高い発現が認められた。そこで、開始コドンから5’側上流域の2−kbにGUS遺伝子を連結し、このコンストラクトを、「はやまさり」へ、アグロバクテリウム法により、遺伝子導入した。その結果、発芽時の種子胚において、GUS活性が認められた。これらのことから、qLTG−3−1は、発芽時の種子胚に特異的に発現し、その特異性は、少なくとも5’側上流域の2−kbで制御されていることが明らかとなった。
低温発芽性遺伝子qLTG−3−1の遺伝子配列を比較したところ、高い低温発芽性を示す「Italica Livorno」は、機能型の遺伝子配列を持ち、「はやまさり」は、71−bpの欠失により機能を消失していた。一方、「日本晴」は、アミノ酸変異を生じる1個の塩基置換を有していた。そこで、イネ品種約70系統について、qLTG−3−1の遺伝子型と低温発芽性に関するアソシエーション解析を行った。
その結果、低温発芽性は、「Italica Livorno」型>「日本晴」型>「はやまさり」型、の順に明瞭な関係が認められた。このことから、遺伝子変異を判別することで、低温発芽性を推測できることが明らかとなった。また、「日本晴」に認められた変異アミノ酸は、遺伝子の機能に関係していると考えられた。この変異アミノ酸を含む領域は、植物におけるqLTG−3−1の相同性遺伝子においても、高度に保存されていた。
本発明では、qLTG−3−1の候補領域を絞り込むマーカーを作出のために、候補領域の「Italica Livorno」86−kbと「はやまさり」90−kbを、「日本晴」配列をもとに、PCR増幅し、シーケンス解析を行った。その結果、14箇所の変異を同定し、6個をマーカー化して、大規模集団からの組換え個体の選抜に用いた。約3200個体を供試したところ、qLTG−3−1の候補領域をマーカーDとFの間の4.8−kbに絞り込むことができた。RAP−DBにより、この領域には、1個の機能未知遺伝子の存在が予測された。
「Italica Livorno」の機能型遺伝子と比較して、「はやまさり」では、71−bpの欠失が生じ、機能消失となっていることが明らかとなった。「Italica Livorno」の機能型遺伝子を「はやまさり」へ遺伝子導入したところ、形質転換体T2では、明らかに「はやまさり」よりも高い低温発芽性を示した。このことから、本遺伝子が、低温発芽性遺伝子qLTG−3−1の原因遺伝子であることが確認できた。
qLTG−3−1遺伝子の発現には、高い組織特異性が認められた。特に、種子発芽時の胚において、強い発現があり、胚乳では、発現は認められなかった。該遺伝子は、30℃及び15℃条件のいずれの発芽時においても発現が認められることから、低温ストレスによって誘導される遺伝子ではない。また、登熟過程の胚部分でも発現は認められないこと及び発芽処理後の経過時間によって発現が上昇することから、qLTG−3−1は、発芽時に特異的な遺伝子発現を示すことが明らかとなった。
発芽過程におけるqLTG−3−1合成系遺伝子(OsGA20ox1、OsGA20ox2、OsGA3ox2)及びアミラーゼ遺伝子(Ramy 1A)の遺伝子発現を、qLTG−3−1機能型遺伝子を持つ「Italica Livorno」を用いて解析した。qLTG−3−1は、30℃では処理後6時間後に、15℃では12時間後に、遺伝子発現が認められた。30℃では、同じく6時間後に、OsGA20ox1、OsGA3ox2、Ramy 1Aの遺伝子発現が認められた。一方、15℃では、OsGA20ox1は、qLTG−3−1と同じく、12時間後に遺伝子発現が認められたが、OsGA3ox2、Ramy 1Aは、24時間後となった。このことから、qLTG−3−1の遺伝子発現とほぼ同時に、これらの遺伝子発現が、開始することが明らかとなった。
このような遺伝子発現のパターンは、「Italica Livorno」由来のqLTG−3−1機能型遺伝子に関する「はやまさり」の準同質遺伝子系統NILHYqLTG−3−1においても認められた。また、qLTG−3−1機能消失型遺伝子を持つ「はやまさり」では、これらのいずれの遺伝子の発現も遅くなっていた。このことから、qLTG−3−1によって、これらの遺伝子の発現が、早期に誘導され、そのことにより、高い低温発芽性が形質発現されると考えられた。
また、qLTG−3−1の低温以外の環境ストレスへの反応性について、NILHYqLTG−3−1を用いて解析した。その結果、NaCl及びマンニトール下においても、発芽性の向上が認められた。また、ABA下では、「Italica Livorno」及び「はやまさり」は、発芽が遅延されたのに対し、NILHYqLTG−3−1では、発芽の阻害が認められた。
更に、本発明では、qLTG−3−1の遺伝子変異を明らかにした。「Italica Livorno」の機能型遺伝子qLTG−3−1に対し、「はやまさり」は、71−bpの欠失による機能消失型遺伝子であった。機能型遺伝子に対し、「日本晴」では、アミノ酸変異を伴う1個の塩基置換が生じていた。qLTG−3−1の塩基配列によるデータベース解析の結果、相同性遺伝子は、イネ科、ナス科、マメ科、ウリ科に存在していた。これらのアミノ酸配列を比較したところ、N末側に保存性の高い配列(8アミノ酸)が認められた。「日本晴」で生じているアミノ酸変異は、この保存された配列中にあった。
そこで、「日本晴」型のqLTG−3−1遺伝子の機能を明らかにするために、北海道の在来種から現在の品種までの69系統を用いて、アソシエーション解析を行った。その結果、これらqLTG−3−1の遺伝子型と低温発芽性に、明瞭な差異が認められた。「Italica Livorno」型(21系統)では、80.8%、「日本晴」型(20系統)では、69.7%、「はやまさり」型(28系統)では、30.7%と、有意な差異が得られた。このことから、「日本晴」型で生じたアミノ酸変異は、qLTG−3−1の遺伝子機能をやや低下させることが明らかとなった。また、保存されているアミノ酸配列も、遺伝子機能に重要な役割を有していると考えられた。
栽培イネにおけるqLTG−3−1の遺伝子型変異を探索するため、世界コアコレクション62系統について、1784−bpの遺伝子配列を比較した。その結果、構造遺伝子領域では、3箇所のin−frameな挿入・欠失は認められたが、アミノ酸置換は存在しなかった。これらの挿入・欠失は、反復配列領域における反復数の差異を生じるものであった。このことから、qLTG−3−1は、機能的に重要であり、そのために、保存性の高い遺伝子であると考えられた。また、これらの塩基置換により、コアコレクションは、10ハプロタイプによる2ハプログループを構成した。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)イネ系統「Italica Livorno」由来の単離(isolated)された低温発芽性遺伝子及びその塩基配列を提供することができる。
(2)上記遺伝子によりコードされる低温発芽性向上作用を有するアミノ酸配列を提供することができる。
(3)上記低温発芽性遺伝子単独の機能(低温、塩、浸透圧のストレス下での発芽性向上特性)の解明により、該遺伝子の利用技術(低温発芽性の向上方法等)を提供することを実現した。
(4)組織特異的な遺伝子発現機構を解明したことで、例えば、植物の低温発芽性を効率よく、簡便に調査することが可能である。
(5)上記遺伝子を導入した形質転換イネを作出することで、低温発芽性を向上させたイネを開発し、提供することができる。
(6)イネ系統の遺伝子型を同定することにより、イネの低温発芽性のレベルを識別することができる。
(7)栽培品種の遺伝子型と低温発芽性との関係を、遺伝子型を同定することで確認することができる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、qLTG−3−1の遺伝的評価を行った。植物材料として、ジャポニカイネ品種である日本由来のイネの「はやまさり」とイタリア由来のイネの「Italica Livorno」を用いた。「はやまさり」と「Italica Livorno」を交配して得られた組換え自殖系統(BILs)から、低温発芽性の表現型とqLTG−3−1の遺伝子型に基づいて、BIL116を選抜した。図1に、BIL116(A)及びNIL(B)の遺伝子型をグラフで示す。
BIL116は、NIL作製のために、DNAマーカー選抜で「はやまさり」と戻し交配して、BC個体集団を作出した。BCの66の植物の中で、ドナーの「Italica Livorno」由来のqLTG−3−1を含んでいる最小の区分を有している#59を選抜し、戻し交配した。また、#59の全ゲノム領域の遺伝子型を調査した。これに基づいて、BC個体集団の#59の11個体の中の、1つの個体である、#59−11を選抜した。
BC個体の、#59−11の自殖より得られたBC2後代のうち、qLTG−3−1領域の「Italica Livorno」型対立遺伝子のホモ接合体を持つ個体を選抜した(図1のB)。NIL断片は、マーカーSTS73−28(I)とSSR107224−21.1の間で、qLTG−3−1の一方の側で遺伝子組換を有していた(表1、図2)。NILHYqLTG−3−1は、「はやまさり」に、「Italica Livorno」から移入されたqLTG−3−1近傍の360−kbの染色体領域を有している。
これまでに、本発明者らは、低温発芽性のジャポニカ品種の「Italica Livorno」と、普通の「はやまさり」の交配から得た組換え自殖系統(BILs)の戻し交配により、低温発芽性を制御する三つのQTLsをマッピングしている(Fujionoら 2004年)。これらのうち、最も効果的と考えられるQTLの、qLTG−3−1を、第3染色体上にマッピングした。qLTG−3−1の遺伝的根拠を決定するために、戻し交配の後代を用いて、低温発芽性の分離分析を行った。図3に、qLTG−3−1遺伝子の表現型を示す。
戻し交配集団における低温発芽性の頻度分布は、明瞭な単一因子の分離パターンであり(図3のA)、qLTG−3−1が、優性遺伝子であることを示した。qLTG−3−1の正確な遺伝的効果を解明するために、準同質遺伝子系統(NILs)のNILHYqLTG−3−1を、DNAマーカー選抜を用いて、「はやまさり」との戻し交配で作製した。NILHYqLTG−3−1は、明らかに反復親の「はやまさり」と比べて、高い低温発芽性を示した(図3のB及びC)。
本実施例では、qLTG−3−1の単離を行った。qLTG−3−1の高精度マッピング及び大規模マッピングのために、分子マーカーと表1に示した両親の間の多型を用いた。BIL116を、「はやまさり」と交配し、高精度マッピング及び大規模マッピングのために、戻し交配後代を作出した。256個体からなるF2集団を高精度マッピングのために用いた。qLTG−3−1遺伝子座における各遺伝子組換えF2植物の遺伝子型を、それらのF3後代との低温下での発芽テストによって、決定した。3つの遺伝子型の、「Italica Livorno」ホモ接合体、「はやまさり」ホモ接合体及びヘテロ接合体が、明瞭に区分された。
これらの遺伝子組換えF2植物を、qLTG−3−1の高精度マッピングに用いた。加えて、〜3200植物からなるBC1F2集団を、大規模マッピングのために用いた。ゲノムDNAを、Fujinoら(2004年)に記載の方法に従って、抽出した。ゲノムDNAは、PCR分析に使用し、PCRに基づく分子マーカーで表現型を共分離した。
これまでに開発した2つのSSRマーカー(Fujinoら 2004年)に加えて、8つのSSRマーカー(表1)を、Fujinoら(2004年)に記載された方法に従って、「日本晴」のゲノムを用いて、高精度マッピングのために作製した。
大規模マッピングのために、6つの分子マーカーを、「はやまさり」と「Italica Livorno」の間の14のゲノム配列の違いに基づいて、作製した(表1、2)。96−kb領域における両親の間の多型を見つけるシークエンシングのために、両親から得たPCR産物の両鎖を、Big Dye Terminator V3.1 cycleシークエンスkid(Applied Biosystems)を用いて、直接シークエンシングした。
69のジャポニカ品種を、qLTG−3−1の遺伝子型によって分類した。「はやまさり」の対立形質を見つけるために、プライマーS103aU及びS103aLを用いて、「はやまさり」で見出された欠失を増幅するためのPCRを行った。「日本晴」の対立形質を見つけるために、上記のPCR産物を、BseRIで消化した。
「Italica Livorno」の対立形質におけるGGGAGは、消化され、「日本晴」におけるGGGAGの対立形質は、BseRIでは消化されなかった。「はやまさり」、「日本晴」及び「Italica Livorno」の遺伝子型が、28、20及び21の米品種から各々見出された。各遺伝子型の低温発芽性の平均は、分析分散によって比べた。
戻し交配の後代を用いて、遺伝子の高精度マッピングを行った。qLTG−3−1は、マーカーSSR125411−4.1(A)とSTS73−28(I)の間の96−kb領域に位置していた。図4に、qLTG−3−1遺伝子のポジショナルクローニングを示す。qLTG−3−1をクローニングするために、〜3,200個体で詳細な染色体地図を作成した。両親は、遺伝的に近い関係にあるので、目標の領域には、適用できるSSRマーカーはなかった。そこで、「はやまさり」の目標領域(〜90kb)と「Italica Livorno」の目標領域(〜86kb)をシークエンシングした。SSR、SNP及び挿入/欠失を含む14の多型が検出された(表2)。
それらのうちの6つを大規模マッピングに用いた。その結果、qLTG−3−1は、S103a(E)と共分離し、マーカーSSR118673−13.1(D)及びS107(F)の間の4.8−kb領域に定めた。この領域では、唯一つの遺伝子、Os03g0103300が、RAP−DBで予測されている(http://rapdb.nig.ac.jp/index.html)。
図5に、qLTG−3−1のアミノ酸配列を示す。図6及び7に、qLTG−3−1のヌクレオチド配列及びそのアミノ酸配列を示す。「Italica Livorno」のqLTG−3−1の配列は、555−bp長の一つのエクソンを有している。qLTG−3−1は、「日本晴」のイネゲノムでは、単一遺伝子である。qLTG−3−1遺伝子は、184アミノ酸の新規蛋白質をコード化している(図5、6、7)。バイオインフォマティク分析により、qLTG−3−1蛋白質は、2つの保存されたドメイン(GRP of glycine rich protein family from amino acid 1 to 100 and Tryp_alpha_amyl of protease inhibitor / seed storage / LTP family from amino acid 100 to 182 by Pfam(http://motif.genomo.jp))を有することが示された。
「Italica Livorno」のqLTG−3−1の配列と比べて、コード領域の71−bpの欠失が、「はやまさり」で検出された。それは、ストップコドンをもたらすフレームシフトを起こした。この事実は、「はやまさり」のqLTG−3−1の対立形質は遺伝子の機能を失うことを示している。「日本晴」では、コード領域の+50位置におけるTのAへの変異は、LeuをHisに変えることが予測される。
データベース調査により、植物でのみqLTG−3−1に著しい相同を有する21の遺伝子が見出された。qLTG−3−1を含むこれらの蛋白質の系統発生分析により、これらの蛋白質は、2つの主要なクラスに分けられることが分かった。図8に、qLTG−3−1及び関連の蛋白質の系統樹を示す。クラスIは、qLTG−3−1を含み、単子葉植物、双子葉植物の2つのサブクラスからなっていた。クラスIIは、単子葉植物の3つの蛋白質のみを含んでいた。GRR及びLTPドメインに加えて、N末端領域に、アミノ酸、AxxLALNLLFFxxxxACが高度に保存されていた。図9に、qLTG−3−1及び関連蛋白質のN末端アミノ酸配列を示す。
「日本晴」の配列において、変換されたアミノ酸の9番位置のLeu残基は、Hisに変異された。変換されたアミノ酸の機能を決定するために、qLTG−3−1の遺伝子型と低温発芽性の表現型の間のアソシエーション解析を行った。69のイネ品種をqLTG−3−1の3つの遺伝子型に分類した(表3、図10)。「Italica Livorno」型対立遺伝子を持った品種(80.0%)は、「はやまさり」型対立遺伝子を持った品種(30.7%)より高い低温発芽性を示した。「日本晴」型対立遺伝子を持った品種(69.7%)は、わずかに低下した低温発芽性を示した(p=0.0434)。「日本晴」型対立遺伝子で置換されたアミノ酸は、qLTG−3−1遺伝子機能において、重要な役割をはたし、置換されたアミノ酸は、遺伝子の機能を減らすことを示唆した。
本実施例では、相補性検定を行った。「Italica Livorno」からのqLTG−3−1の3−kbのゲノムDNAフラグメントを、プライマーAno13−LA5U及びAno13−LA5L(表4)を用いて、PCRによって増幅した。このPCR産物を、pBluescriptIISK−ベクター(Stratagene社)のBamHI/SacIサイトに、クローニングした。次いで、このフラグメントを、pPZP2H−lac Ti−Plasmidベクター(Fuseら 2001年)に、クローニングした。図11に、qLTG−3−1の相補性検定のための導入遺伝子コンストラクトを示す。Agrobacteriumを介した形質転換体を、「はやまさり」の形質転換に用いた(Toki 1997年;Tokiら 2006年)。
ハイグロマイシン抵抗性カルス(T0植物)から再生された植物を、隔離した温室で生育させた。各T0植物の自殖からT1植物を得た。T1形質転換体を、導入遺伝子のRCRによって選抜し、T2種子を発芽実験を行うために集めた。
相補性検定のために、qLTG−3−1プロモーター領域及び遺伝子領域を含む「Italica Livorno」の3−kbのフラグメントを、Agrobacteriumを介した形質転換体によって、「はやまさり」に導入した。ベクターを持った形質転換系統は、「はやまさり」と同様の低温発芽性を示した。形質転換遺伝子のホモ接合体を有する全ての5つの形質転換体は、「はやまさり」より高い低温発芽性を有している(図12)。これらの各系統の中で、至適発芽温度25℃では、発芽性に違いは見られなかった。この結果より、「Italica Livorno」の3−kbのフラグメントにおける遺伝子は、低温発芽を向上させることが確認された。
本実施例では、qLTG−3−1遺伝子の発現を調べた。RNAiso(TAKARA)を用いて、全RNAを、イネの各器官から抽出して、DNaseI(TAKARA)で処理した。ノーザンブロット分析のために、全RNA(4μg/試料)を、40mM MOPS(pH7.0)、10mM酢酸Na及び2%(v/v)ホルムアルデヒドを含む2.0%(w/v)アガロース−変性ホルムアルデヒドゲル上で分離した。
RNAは、20XSSCで正にチャージしたナイロン膜(Roche Diagnostics)にブロッティングした。ハイブリダイゼーションとシグナルの検出は、製造指針に従って、DIGシステムとCDP−Star(Roche Diagnostics)によって、行った。プライマー13−5U及び13−5Lから得たPCRフラグメントを、ノーザンブロット分析のプローブとして、用いた(表5)。
ノーザンブロット分析により、qLTG−3−1は、「Italica Livorno」及びNILHYqLTG−3−1で各々30℃及び15℃で発芽処理後、12時間及び1日目に発現し、発現は、発芽開始により増加した(図13のA及びB)。30℃及び15℃における発現レベルを増加させるパターンは、同じであった。この事実により、qLTG−3−1は、低温のストレスによって誘導されないことを示した。「はやまさり」の発現レベルは、「Italica Livorno」とNILqLTG−3−1のそれよりも低かった。また、発現の誘導は、「はやまさり」では遅れた。3つの品種における発現のパターンは、低温発芽性の表現型によく相当した。qLTG−3−1は、組織特異的に発現した(図13のC)。発現は、胚乳と葉で検出されなかった。低いレベルの発現は、根で検出された。強い発現は、発芽時の種子胚、幼苗の地上部及び幼穂で検出された。
本実施例では、qLTG−3−1の生理学的な評価を行った。発芽テストを、Fujinoら(2004年)によって報告されている方法によって、行った。低温ストレスのために、ペトリ皿の種子を、インキュベータに設置した。その際に、異なる濃度の植物ホルモン(ABA及びGA)及びマンにトールの溶液をペトリ皿に加え、インキュベータに設置した。
内在性のABA及びGAは、種子の休眠と発芽を促進する主要な役割をはたす(Leung and Girandat 1998年)。qLTG−3−1は、発芽期間におけるABA及びGAに対する応答に影響するかどうか、を検討した。図14に、異なったストレス条件下でのqLTG−3−1の発芽反応を示す。また、図15に、異なったストレス条件下での「はやまさり」、NILHYqLTG−3−1及び「Italica Livorno」の発芽反応を示す。
至適温度(25℃)下では、「はやまさり」、「Italica Livorno」とNILHYqLTG−3−1で、発芽性に非常にわずかの違いが観察された(図14のA)。ABA処理においては、両親で発芽の遅れが観察されたが、NILHYqLTG−3−1は、より低い発芽性を示した。300mM ABAより低濃度では、NILHYqLTG−3−1は、両親と同様に発芽の遅れを示した(図15)。500mM ABAで、両親よりもABAに対してより感受性であった(図14)。
250mMマンニトール及び150mM NaClより低濃度では、全ての品種は、発芽の遅れを示した(図15))。しかし、NILHYqLTG−3−1は、300mM NaCl下、500mMマンニトール及び13℃下で、「はやまさり」に比べて、発芽性の向上を示した(図14)。これらの結果より、qLTG−3−1は、低温、塩、浸透圧を含む多様のストレスに対する応答に関連していることが示された。また、外因性のGAは、どの遺伝子型でも種子の発芽を促進しない(図16)。
本実施例では、qLTG−3−1の発現と種子の発芽の関係を調べた。全RNA(0.5μg)を、製造指針に従って、Oligo(dT)20 プライマーを持つReverTra Ace(TOYOBO)によって逆転写した。PCR反応は、KOD−Plus(TOYOBO)を用いて、行った。各PCR反応(10μL)は、5倍に希釈された0.5μLのcDNAテンプレートを含んでいた。目標遺伝子に対する各プライマーの特異性は、PCR産物をシークエンシングすることにより確認した。RT−PCR分析のためのプライマー及び増幅条件は、表5に示した。
RT−PCR分析による「Italica Livorno」、「はやまさり」及びNILHYqLTG−3−1の種子発芽時の胚におけるqLTG−3−1の発現を決定した。図17に示されるように、qLTG−3−1の発現は、「Italica Livorno」とNILHYqLTG−3−1で各々30℃及び15℃の処理の後、6及び12時間で検出され、発芽開始が促進された。開花後の種子の登熟の間、qLTG−3−1の発現は、胚では非常に低いレベルであった(図18)。
qLTG−3−1の発現パターンを、ABA(500mM)、NaCl(250mM)及びマンニトール(500mM)によって処理された胚において、調べた。全てのストレス条件下で、qLTG−3−1発現の遅れと抑制が観察された(図19)。これらの現象は、これらのストレス条件下で、発芽の阻害及び遅れの表現型に良く関連した。
本実施例では、qLTG−3−1発現の組織化学的分析を行った。qLTG−3−1プロモーターGUS遺伝子融合構造物を作製するために、「Italica Livorno」からのqLTG−3−1の5’上流領域の2−kbのゲノムDNAフラグメントを、プライマーAno13−10U及びAno13−10L(表4)を用いて、PCRにより増幅した。
真のqLTG−3−1遺伝子を十分に発現するプロモーター配列が不明であるので、qLTG−3−1の開始コドンから5’上流領域の2−kbを、プロモーターとして用いた。このPCR産物を、pBluescript II SK−ベクター(Stratagene)のHindIII/BamHIサイトへ、クローニングした。次いで、このフラグメント及びGUS遺伝子を、pPZP2H−lac Ti−plasmid ベクター(Fuseら、2001年)に、クローニングした。図20に、qLTG−3−1::GUSのコンストラクトを示す。
Agrobacteriumを介した形質転換体を、「はやまさり」の形質転換のために用いた(Toki 1997年;Tokiら 2006年)。ハイグロマイシン耐性カルス(T0植物)から再生した植物を、隔離した温室で生育させた。各T0植物(T1)の自殖種子をこの実験に用いた。T0形質転換体を、導入遺伝子についてのPCRによって選抜した。
GUS発現の組織化学分析のために、qLTG−3−1::GUSを持った形質転換植物の種子を、30℃で培養した。この条件下で、発芽、子葉鞘の発現が処理の1日後で種子のわずかの割合で起き始めた。形質転換植物の種子を、処理後0.1及び2日の時間で供試した。
形質転換体の全種子及び縦方向にカットした種子を0.5mM X−Gluc、0.5mM K[Fe(CN)]、0.5mM K[Fe(CN)]及び0.5%(v/v)TritonX−100を含む50mM NaHPO(pH7.0)で真空浸透させ、37℃で6時間培養した。次いで、70%EtOHを加えて、酵素反応を温度で停止した。
qLTG−3−1::GUS(ベーターグルクロニダーゼ)リポーター遺伝子融合を持った形質転換イネ植物におけるqLTG−3−1プロモーター活性を分析した。GUSの発現は、芽根を囲う芽鱗、及び前鱗で強く検出された(図21)。形質転換体でない「はやまさり」植物では、シグナルは検出されなかった。ノーザンブロット分析、RT−PCR分析及びGUSリポーター発現と合わせて、qLTG−3−1遺伝子は、種子発芽時の胚において、強く発現された。
本実施例では、qLTG−3−1によるGA生合成遺伝子及びRamy1A発現の誘導を調べた。種子発芽時の胚で強く発現されるqLTG−3−1が、多様のストレス条件下で高い発芽性を発揮するかどうかは明らかでない。qLTG−3−1の機能を評価するために、種子の発芽性に重要であることが知られている、6つのGA生合成遺伝子、α−アミラーゼ遺伝子、Ramy1Aの発現プロファイルを、種子の発芽期間の胚における半定量的なRT−PCRによって決定した。OsGA20ox3、OsGA20ox4及びOsGA3ox1の発現は、この実験では検出されなかった。
qLTG−3−1は、明瞭に、qLTG−3−1の発現パターンと同様の、OsGA20ox1、OsGA20ox2、OsGA3ox2及びRamy1Aの発現を誘導した(図17)。OsGA20ox1とOsGA3ox2の発現は、各々、30℃及び15℃で処理した後、6及び12時間で検出された。この時間は、qLTG−3−1のそれと同じであった。OsGA20ox2の発現は、他の遺伝子のそれより遅れた(図17)。次いで、Ramy1Aの発現が観察された。
全てのテストされた遺伝子における発現の遅れは、「はやまさり」で観察された。「Italica Livorno」とNILHYqLTG−3−1は、同じ発現パターンを示したが、これは、qLTG−3−1によって、GA生合成及びRamy1Aにおけるそれらの遺伝子の発現を誘導することを示唆している。加えて、GA生合成及びアミラーゼに関する8つの遺伝子の発現が決定された(表5、図22)。それらのうちの6つの発現は、qLTG−3−1で高く制御され、このことは、qLTG−3−1が、GA生合成を誘導していることを示唆している。
本実施例では、qLTG−3−1の過剰発現を行った。過剰発現植物を作るために、qLTG−3−1を作動する35Sプロモーターのコンストラクトを作製した。プライマーAno13−LA5UとAno13−LA5L(表4)を用いて増幅させたPCR産物を、BamHI及びSacIで消化した。このフラグメントを、pPZP2Ha3 Ti−Plasmidベクター(Fuseら 2001年)のSacIサイトに、クローニングした。図23に、qLTG−3−1の過剰発現のためのコンストラクトを示す。
Agrobacteriumを介した形質転換体を、「はやまさり」(Toki 1997年;Tokiら 2006年)の形質転換に用いた。ハイグロマイシン耐性カルス(T0植物)から再生した植物を、隔離した温室で生育させた。各T0植物(T1)の自殖植物を生育させた。T1形質転換体を導入遺伝子について、PCRにより選抜し、養成してT2を得て、発芽実験を行うために集めた。
qLTG−3−1は、組織特異的な発現を有している。発現パターン、組織特異性及び量が、植物における発芽性又はストレス応答の調節の効果を検討するために、35SプロモーターでqLTG−3−1をドライブする過剰発現植物を作出した。形質転換植物において、qLTG−3−1は、強く葉及び穂で発現され、発現は、非形質転換植物では検出されなかった(図24)。この過剰発現植物は、高い低温発芽性を発揮した(図25)。3つの独立したT1個体集団における導入遺伝子の有無で、低温発芽性の分離分析を行った。導入遺伝子を持った植物は、それを持たない植物と比べて、高い低温発芽性を示した。これらの結果は、qLTG−3−1の過剰発現は、低温発芽性を高めることを示した。
本実施例では、栽培イネと野生種の中のqLTG−3−1遺伝子におけるDNA多型を調べた。62品種を含む栽培イネ(O.sativa)のコアコレクションの種子(Kojimaら 2005年)を独立行政法人農業生物資源研究所から得た。このコアコレクションは、3つのグループからなっていた。グループA、B及びCは、広い地域からのジャポニカ、アウス及びインディカに各々相当した(Kojimaら 2005年;Garrisら 2005年)。
AAゲノム野生種、W0106(O.rufipogon)、W0652(O.barthii)、W1169(O.glumaepatula)、W1413(O.longistaminata)及びW1508(O.logistaminata)のイネ種子を大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所から得た。Fujinoら(2004年)に記載されたCTAB法を用いて、全DNAを若葉から分離した。
qLTG−3−1遺伝子をプライマー(表4)を用いて、増幅させ、BigDyeターミネータ(Applied Biosystems)によるサイクルシークエンシングを用いて、直接シークエンシングした。シークエンシングは、Prism3700自動シークエンサー(Applied Biosysitems)で行った。DNA配列は、Bio Edit(http://www.mbio.ncsu.edu/BioEdit/bioedit.html)を用いて、一列に並べ、次いで、視覚で確認した。全ての多型を低頻度の多型に特に注意して、クロマトグラムから再照合した。
本発明者らの配列では、ヘテロ接合性は観察されなかった。完全な5‘及び3’UTRを含んでいる933−bpの上流領域及び296−bpの下流領域を含むqLTG−3−1の1784−bp遺伝子を、TAの繰り返しの−433から−384の50bpの領域を除いて、栽培イネ及び野生種でシークエンシングした。ユニークDNA配列又は変異ステップで分離された対立形質を表す、最少の範囲(ハプロタイプ)を、統計の節約法を用いたコンピュータープログラムTCS(Crandallら 2000年)を使用して、構築した。
qLTG−3−1遺伝子の全1784ヌクレオチドの配列を決定した。機能的対立遺伝子としての「Italica Livorno」の配列と比べて、挿入、欠失及び置換を含む32の変異が検出された(表6)、これらの変異に基づいて、10の違ったハプロタイプが、イネのコアコレクションにおける62品種の中で、見つかった(表7、DNA配列:図26−34、アミノ酸配列:図35−37)。
遺伝子コード領域において、2つの欠失、一つの挿入及び一つの同義でない置換が起こった。暗号領域の全ての欠失及び挿入は、3nbpのin−frame変異として起こった。一つの同義でない置換は、「日本晴」のみで検出された。ハプロタイプ9及び10は、ハプログループI及びIIの間における遺伝子内組み換えから得られた、と見られる。
ハプロタイプネットワークを全qLTG−3−1における遺伝子変異から構築した。2つのハプロタイプは、遺伝子内の組み換えから生じたので、ネットワークに含めなかった。ネットワークは、2つのハプログループI及びIIからなっていた(図38)。このネットワークは、遺伝子配列系統樹の結果から強く支持された。
これらのハプログループは、18の変異のステップで相互に分離された。5つのハプロタイプを含むハプログループIは、31の品種からなり、そのほとんどは、イネのコアコレクションのグループA及びBからであった。3つのハプロタイプを含むハプログループIIは、25の品種からなり、そのほとんどは、グループB及びCからであった。
AAゲノムにおける近縁イネのqLTG−3−1の配列を、「Italica Livorno」のqLTG−3−1の機能型対立遺伝子(ハプロタイプI)と比べた。挿入、欠失及び置換を含む、多くのヌクレオチドの変化が検出され、それらは、栽培イネでは、検出されなかった。これらのほとんどのヌクレオチドの変化は、O.longistaminata(W1413及びW1508)で起こっており、他の系統と明らかに異なっていた。
遺伝子コード領域において、13の同義置換、6つの欠失及び11の挿入が検出された。全ての欠失、挿入は、GRPの領域でin−frameとして起こった(図26−34)。トランスポゾンと遺伝子コード領域を除く全qLTG−3−1において、26の挿入及び欠失が検出された。それらのうちの10は、3nで、残りは3nではなかった。栽培イネにおけるqLTG−3−1の保存に加えて、これらの野生イネの結果により、qLTG−3−1蛋白質配列は、イネにおける機能の重要性により、完全に保存されていることが示唆された。
以上詳述したように、本発明は、イネの低温発芽性に関する遺伝子とその利用方法に係るものであり、本発明により、イネ系統「Italica Livorno」由来の単離(isolated)された低温発芽性遺伝子及びその塩基配列を提供することができる。本発明は、上記低温発芽性遺伝子単独の機能、例えば、低温、塩、浸透圧のストレス下での発芽性向上特性を利用した該遺伝子の利用技術を提供すること、上記遺伝子を導入して低温発芽性を向上させた形質転換植物を提供すること、また、本発明の低温発芽性遺伝子の配列に基づいて遺伝子変異を同定することにより、栽培品種の低温発芽性のレベルを識別すること、を可能とするものである。従来、「Italica Livorno」に認められる高度の低温発芽性は、QTL解析から複数の遺伝子が関与している量的形質と考えられていたが、本発明は、物質として単離した単独の低温発芽性遺伝子及びその塩基配列及びその利用技術を提供するものとして有用である。
BIL116(A)及びNIL(B)の遺伝子型をグラフで示す。黒、白及び斜線は、「Italica Livorno」、「はやまさり」及びヘテロ接合体由来の染色体断片を表わす。マッピングしたマーカーは、高密度RFLP連鎖マーカー(Harushimaら 1998年)で割り当てられた染色体位置に対応させた。 qLTG−3−1近傍のNILの遺伝子型を示す。白と斜線は、各々、「はやまさり」とヘテロ接合体由来の染色体断片を表わす。 qLTG−3−1遺伝子の表現型を示す。 (A)は、戻し交配された後代における低温発芽性の頻度分布を表わす。 矢頭は、「Italica Livorno」(IL)及び「はやまさり」(HY)を示す。マーカーGBR3001で評価された、これらの分類された遺伝子型の「Italica Livorno」対立遺伝子のホモ接合体(黒)、ヘテロ接合体(斜線)及び「はやまさり」対立遺伝子のホモ接合体(白)が示された。 (B)は、15℃の低温下での「はやまさり」(白マル)、NILHYqLTG−3−1(黒マル)及び「Italica Livorno」(白三角)の発芽反応を表わす。数値は、3反復の平均値±標準偏差(SD)である。 (C)は、25℃で3日及び15℃で7日間発芽した「はやまさり」(上)、NILHYqLTG−3−1(中)及び「Italica Livorno」(下)の発芽の表現型を表わす。バーは1cmである。 qLTG−3−1遺伝子のポジショナルクローニングを示す。第3染色体(中)のqLTG−3−1の96−kb領域の範囲を定めた高精度マッピングを示す。大規模マッピング(下)は、qLTG−3−1はマーカーD及びFの間の4.8−kb領域に位置しており、マーカーEと共分離していることを示した。マーカー間の数値は、マーカーの間の組換え個体数を示す。 qLTG−3−1のアミノ酸配列を示す。 「はやまさり」と「日本晴」型対立遺伝子で示された変異は、配列により示される。Pfamにより、規定された2つのドメイン(GRP及びLTP)は、アンダーラインを付した。LTPドメインにおける保存された8つのC残基はドットで示した。 イネ品種のqLTG−3−1のヌクレオチド配列「Italica Livorno」「はやまさり」「日本晴」を示す。 イネ品種のqLTG−3−1のアミノ酸配列「Italica Livorno」「はやまさり」「日本晴」を示す。 qLTG−3−1及び関連の蛋白質の系統樹を示す。 この系統樹は、CLUSTAL Wを用いて構築した。ブートストラップ分析値を、中心点の枝で示す。示したスケールは、サイト当たり0.05のアミノ酸置換を示す。登録番号及び植物品種を示す。 qLTG−3−1及び関連蛋白質のN末端アミノ酸配列を示す。共通アミノ酸残基はドットで示す。 イネ品種のqLTG−3−1の遺伝子型と低温発芽性の間の関係を示す。 イネ品種は、3つのqLTG−3−1、「Italica Livorno」タイプ(黒マル)、「日本晴」タイプ(白三角)及び「はやまさり」タイプ(白マル)に分類した。 qLTG−3−1の相補性検定のための導入遺伝子コンストラクトを示す。 「Italica Livorno」からの機能性qLTG−3−1の「はやまさり」への導入において、Agrobacteriumを介した形質転換によって得られたホモ接合形質転換体の発芽を示す。15℃の低温下における「はやまさり」(白三角)及び5つの独立した形質転換体(黒の符号)の発芽反応、15℃の低温下での「はやまさり」(白マル)、NILHYqLTG−3−1(黒マル)及び「Italica Livorno」(白三角)の発芽反応を表わす。数値は、3反復の平均値±標準偏差(SD)である。 qLTG−3−1遺伝子発現を示す。 ノーザンブロット分析を、「はやまさり」(HY)、NILHYqLTG−3−1(NIL)及び「Italica Livorno」(IL)の異なる組織から抽出された全RNAにおけるqLTG−3−1の遺伝子発現レベルを測定するために用いた。 エチジウムプロマイド染色rRNAをコントロールとして用いた。(A)は30℃での発芽、(B)は15℃での発芽、(C)は組織特異性、である。 異なったストレス条件下でのqLTG−3−1の発芽反応を示す。 (A)は25℃の至適温度での発芽、(B)は13℃での発芽、(C)はNaCl(300mM)、(D)はマンニトール(500mM)、(E)はABA(500mM)感受性、である。 「はやまさり」(白マル)、NILHYqLTG−3−1(黒三角)及び「Italica Livorno」(白マル)の例を示す。数値は、3反復の平均値±標準偏差(SD)である。 異なったストレス条件下での「はやまさり」、NILHYqLTG−3−1及び「Italica Livorno」の発芽反応を示す。(A)では種子を、25,15,13,10℃で水でインキュベートした。(B)では、15℃でGA(100,200,500μM)を加えて、25℃で(C)ABA(200,300,500mM)、(D)NaCl(150,250,300mM)及び(E)マンニトール(250,500,600mM)を加えて、インキュベートした。 白マルはコントロールを表わす。低濃度〜高濃度を、開いたマル、三角及び四角で示した。 15℃での発芽反応におけるGA(500mM)の効果を示す。 白又は黒の符号は、各々、GA有り又は無しを示す。「はやまさり」、NILHYqLTG−3−1及び「Italica Livorno」は、各々、マル、三角及び四角で示す。 RT−PCR分析による30℃及び15℃下での発現の期間のqLTG−3−1、GA生合成及びアミラーゼ遺伝子の発現を示す。 Ubi2を、RT−PCR実験におけるコントロールとして用いた。 種子発芽の間の胚及びRT−PCR分析による発芽の間の胚乳におけるqLTG−3−1の発芽を示す。 Ubi2をRT−PCR実験におけるコントロールとして用いた。 RT−PCR分析によるABA(500mM)、NaCl(300mM)及びマンニトール(500mM)処理における、発芽の期間のqLTG−3−1の発現を示す。 Ubi2をRT−PCR実験でコントロールとして用いた。 qLTG−3−1::GUSのコンストラクトを示す。 qLTG−3−1遺伝子プロモーターの制御下でのGUS発現を示す。プロモーターとしてのqLTG−3−1の2−kb上流領域の制御下でGUSを発現している形質転換植物をGUS活性のために染色した。形質転換していない植物の「はやまさり」はバックグラウンドのGUS活性を示さなかった。バーは1mmである。 RT−PCR分析による30℃及び15℃での発芽の期間におけるqLTG−3−1、GA生合成及びアミラーゼ遺伝子の発現を示す。 Ubi2はRT−PCR実験におけるコントロールとして用いた。 qLTG−3−1の過剰発現のためのコンストラクトを示す。 RT−PCR分析による過剰発現の形質転換植物におけるqLTG−3−1の発現を示す。 Ubi2はRT−PCR実験におけるコントロールとして用いた。 過剰発現の形質転換植物の低温発芽性を示す。 3つの独立したT1個体集団における低温発芽性の頻度分布を示す。 黒及び白のバーは導入遺伝子の有無を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のヌクレオチド配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のアミノ酸配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のアミノ酸配列を示す。 イネのコアコレクションとその野生種におけるqLTG−3−1等のアミノ酸配列を示す。 qLTG−3−1のハプロタイプのネットワークを示す。マルのサイズは、所定のハプロタイプ内での系統数に比例している。黒マルの間の白マルは未同定のハプロタイプを表わす。ハプロタイプの間の線は、各ハプロタイプの間の変異のステップを表わす。ハプロタイプ組成は、系統数のパーセントとして示される。青、赤及びオレンジは、各々、イネのコアコレクションのグループA、B及びCを表わす。

Claims (8)

  1. イネ系統「Italica Livorno」由来の単離(isolated)された低温発芽性能を有するqLTG−3−1遺伝子であって、配列表の配列番号1の塩基配列を有することを特徴とする低温発芽性遺伝子。
  2. 環境ストレスである低温、塩(NaCl)、浸透圧(マンニトール)のストレス下での発芽性向上機能を有する、請求項1に記載の低温発芽性遺伝子。
  3. 請求項1の低温発芽性遺伝子によりコードされる低温発芽性を向上させる作用を有するアミノ酸配列を持つポリペプチドであって、配列表の配列番号20のアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド
  4. 請求項1に記載の低温発芽性遺伝子を植物に組換えて低温発芽性を向上させたことを特徴とする形質転換植物。
  5. 植物が、イネである、請求項に記載の形質転換植物。
  6. 請求項1に記載の低温発芽性遺伝子の塩基配列と栽培品種の遺伝子型とを対比して、栽培品種の低温発芽性を分析することを特徴とする低温発芽性の分析方法。
  7. 上記栽培品種が、イネである、請求項に記載の低温発芽性の分析方法。
  8. 請求項1に記載の低温発芽性遺伝子をイネの栽培品種に導入して、該品種の低温条件下での低温発芽性を向上させることを特徴とするイネの低温発芽性の向上方法。
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