JP4100215B2 - 水蒸気透過膜の製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水蒸気透過膜の製造法に関する。さらに詳しくは、燃料電池用加湿膜等として有効に用いられる水蒸気透過膜の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、多孔質中空糸膜を用いて除湿・加湿を行う方法が注目されている。多孔質中空糸膜方式は、メンテナンスフリーであるばかりではなく、駆動に電源を必要としないなどの多くの利点を有している。
【0003】
水蒸気を選択的に透過させる膜として、現在数種類のものが市販されているが、それぞれ素材および透過原理が異っている。ポリイミド樹脂を素材として用い、溶解拡散法によって本操作を行う膜においては、耐熱性および強度にはすぐれているが、水蒸気透過係数が低いという欠点がみられる。また、フッ素系イオン交換膜を素材に用い、イオン水和法を原理としている膜は、水蒸気透過係数は高いものの耐熱性に乏しく、膜自体が非常に高価であるという欠点がある。
【0004】
一方、ポリエーテルイミド樹脂を素材とし、毛管凝縮法で除湿・加湿を行う膜は、水蒸気透過性と耐熱性の両立が図られており、多くの産業分野で採用されているが、膜の絶対強度が弱く、特に柔軟性に乏しいため、多量の気体の除湿・加湿の際、中空糸膜が切断されるという問題がみられる。
【0005】
この多孔質中空糸膜は、近年燃料電池スタックの隔膜加湿に用いられているが、燃料電池の場合、車載用では4000NL/分程度の多量の空気加湿が必要であり、また定置用では加湿の駆動源に温水が使用される場合が多く、いずれにしても多孔質中空糸膜への耐久性と耐熱性の付与が特に必要とされている。
【0006】
実際に、固体高分子型燃料電池の場合、実稼動温度は約60〜80℃で水蒸気飽和状態での雰囲気となる。ポリエーテルイミド樹脂は、耐熱性にすぐれ、加水分解し難い樹脂ではあるものの、湿潤加熱条件下では従来から伸びや柔軟性の低下の著しいことが指摘されており、多孔質中空糸膜の切断に至っていた。
【0007】
さらに、ポリスルホン樹脂素材は、水ロ過用限外ロ過膜、精密ロ過膜等として一般的に用いられており、湿潤加湿条件下での強度安定性にすぐれていることは知られているが、水蒸気透過膜用途としては実用化が困難とされている。その理由は、毛管凝縮法を適用するために適当な細孔径を得ることが困難であり、従来の技術では水が気体側に浸み出してくるなどの不具合があった。
【0008】
ポリフェニルスルホン樹脂および親水性ポリビニルピロリドンの水溶性有機溶媒溶液よりなる紡糸原液を用い、N-メチル-2-ピロリドン水溶液を芯液として乾湿式紡糸し、多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜を得る方法は、既に本出願人によって提案されているが(特開2001-219043号公報)、ここで得られた多孔質中空糸膜は油水分離用限外ロ過膜等に好適に使用されると述べられており、水蒸気透過を目的とするものではない。
【0009】
また、ポリフェニルスルホン樹脂および親水性ポリビニルピロリドンの水溶性有機溶媒溶液よりなる紡糸溶液中にさらに水を加え、水を芯液として乾湿式紡糸し、多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜を得る方法も本出願人によって提案されているが(特開2001-46867〜8号公報)、ここでもその目的は純水透過係数の改善を図ることにあるとされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリスルホン系樹脂を使用した多孔質中空糸膜において、気体透過性にすぐれているばかりではなく、気体側への水漏れがなく、強度安定性にもすぐれ、燃料電池用加湿膜などとして有効に使用し得る水蒸気透過膜の製造法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、ポリフェニルスルホン樹脂および親水性ポリビニルピロリドンの水溶性有機溶媒溶液よりなる紡糸原液を、水を芯液として乾湿式紡糸し、多孔質ポリフェニルスルホン中空糸膜よりなる水蒸気透過膜を製造することによって達成される。
【0012】
【発明の実施の形態】
ポリフェニルスルホン樹脂は、以下に示されるくり返し単位
Figure 0004100215
即ちビフェニレン基を有し、イソプロピリデン基を有しないものであり、実際には市販品、例えばアモコ社製品RADEL Rシリーズのもの等をそのまま使用することができる。
【0013】
ポリフェニルスルホン樹脂を製膜成分とする紡糸原液は、そこに親水性ポリビニルピロリドンおよび水溶性有機溶媒が添加され、紡糸原液が形成される。水溶性有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が用いられる。ポリスルホン系樹脂は、紡糸原液中約10〜40重量%、好ましくは約15〜30重量%を占めるような濃度で用いられる。このような濃度範囲より少なくてもあるいは多くても、所望の孔径および膜強度を有する多孔質中空糸膜は得られない。
【0014】
親水性高分子物質として添加されるポリビニルピロリドンとしては、分子量が約1000(K-15)〜1200000(K-90)、好ましくは約10000(K-30)〜1200000(K-90)のものが、ポリスルホン系樹脂100重量部当り約50〜150重量部、好ましくは約50〜100重量部の割合で用いられる。ポリビニルピロリドンのこのような割合での添加は、多孔質膜の表面孔径等の構造制御にも多少の影響はみられるが、それ以上に多孔質膜の空気透過速度を低下させ、すなわちガスバリア性を向上させ、水蒸気透過速度を向上させるという効果を達成させる。
【0015】
このような紡糸原液を用いての乾湿式紡糸は、水を芯液として行われ、水または水性凝固溶中で凝固させた多孔質中空糸膜は水洗後乾燥させる。水洗は、常温あるいは温水、オートクレーブによる高温(例えば121℃)などにより行われる。
【0016】
【発明の効果】
本発明方法により得られる多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜は、膜強度および耐久性の点ですぐれているばかりではなく、水蒸気透過性の点で特にすぐれているので、燃料電池用加湿膜などとして有効に使用することができる。
【0017】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0018】
実施例1
ポリフェニルスルホン樹脂(アモコ社製品RADEL R-5000)20部(重量、以下同じ)、ポリビニルピロリドン(ISP社製品K-30G)15部およびジメチルアセトアミド65部よりなる室温で均一な紡糸原液を、水を芯液として二重環状ノズルから水凝固浴中に乾湿式紡糸し、その後121℃の加圧水中で1時間洗浄してから60℃のオーブン中で乾燥し、多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜を得た。
【0019】
実施例2
実施例1において、ノズル径、紡糸原液の吐出速度などを変更することにより、内、外径の異なる多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜を得た。
【0020】
比較例1
実施例1において、ポリフェニルスルホン樹脂の代りに同量のポリスルホン樹脂(BASF社製品Ultrason S3010)を用い、多孔質ポリスルホン中空糸膜を得た。
【0021】
比較例2
ポリエーテルイミド樹脂(GEポリマー社製品ウルテム1000)20部およびジメチルアセトアミド80部よりなる室温で均一な紡糸原液を用い、実施例1と同様に乾湿式紡糸し、60℃のオーブン中で乾燥して、多孔質ポリエーテルイミド樹脂中空糸を得た。
【0022】
比較例3
比較例 2において、ノズル径、紡糸原液の吐出速度などを変更することにより、内、外径の異なる多孔質ポリエーテルイミド樹脂中空糸膜を得た。
【0023】
以上の各実施例および比較例で得られた多孔質中空糸膜について、いずれも25℃における水蒸気透過速度、純水透過速度および空気透過速度を測定し、さらに引張強度および伸度(95℃の温水浸漬前、280時間浸漬後)も測定した。得られた結果は、次の表1に示される。
表1
実施例 比較例
1 2 1 2 3
〔多孔質中空糸膜〕
外径 (μm) 1000 600 1000 1000 600
内径 (μm) 700 370 700 700 370
〔測定項目〕
水蒸気透過速度 (g/cm2/分/MPa) 0.280 0.360 0.232 0.200 0.310
純水透過速度 (ml/cm2/時間/MPa) 0.0 0.0 0.1 0.0 0.0
空気透過速度 (ml/cm2/分/MPa) 0.0 0.0 0.0 0.2 0.2
引張強度 (g/mm2) 790 785 680 780 772
伸度
95℃温水浸漬前 (%) 49.0 53.5 52.0 53.3 60.0
95℃温水280時間浸漬後 (%) 42.8 49.8 40.1 1.2 1.8
【0024】
さらに、実施例2で得られた多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜(有効長150mm)1700本をモジュール化し、入口空気圧0.5MPa、バージ率20%の条件下で、膜型除湿器を使用して除湿機能を測定すると、次の表2に示されるような結果が得られた。
表2
出口空気流量 (L/ ) 出口大気圧露点 ( )
50 -27.5
70 -24.9
82 -23.8

Claims (3)

  1. ポリフェニルスルホン樹脂および親水性ポリビニルピロリドンの水溶性有機溶媒溶液よりなる紡糸原液を、水を芯液として乾湿式紡糸することを特徴とする水蒸気透過膜の製造法。
  2. 請求項1記載の方法で製造された多孔質ポリフェニルスルホン樹脂中空糸膜よりなる水蒸気透過膜。
  3. 燃料電池用加湿膜として用いられる請求項2記載の水蒸気透過膜。
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