JP4099836B2 - ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びその製造方法及びハーフトーン型位相シフトマスク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造プロセス中のフォトリソグラフィー工程においてパターンを形成する際の露光転写用フォトマスク及びこのフォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクに関するものであり、特にハーフトーン型位相シフトマスク及びハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のフォトマスクでは微細なパターンの投影露光に際し近接したパターンはマスクの光透過部を通過した光が回折し、干渉し合うことによってパターン境界部での光強度を強め合いフォトレジストが感光するため、ウエハー上に転写されたパターンが分離解像しないという問題が生じていた。この現象は露光波長に近い微細なパターンほどその傾向が強く、原理的には従来のフォトマスクと従来の露光光学系では光の波長以下の微細パターンを解像することは不可能であった。
【0003】
そこで、隣接するパターンを透過する投影光の位相差を互いに180度とすることにより微細パターンの解像力を向上させるという、位相シフト技術を用いた位相シフトマスクが開発された。すなわち、隣接する開口部の片側に位相シフト部を設けることにより、透過光が回折し干渉し合う際、位相が反転しているために境界部の光強度は弱め合い、その結果転写パターンは分離解像する。この関係は焦点の前後でも成り立っているため、焦点が多少ずれていても解像度は従来法よりも向上し、焦点裕度が改善される。
【0004】
上記のような位相シフト法はIBMのLevensonらによって提唱され、特開昭58−173744号公報や、原理では特公昭62−50811号公報に記載されている。
パターンを遮光層で形成する場合は、遮光パターンに隣接する開口部の片側に位相シフト部を設けて位相反転させるが、遮光層が完全な遮光性を持たない半透明遮光層の場合にも位相が反転され、同様な解像度向上効果が得られる。この場合は特に孤立パターンの解像度向上に有効である。
【0005】
図5(a)〜(c)はハーフトーン型位相シフトマスクを使ってウエハー上に投影露光する際の解像性を説明するための図である。この図よりマスク面に対して垂直に入射した露光光のうち、露光光I及びIIIは半透明膜パターン32を通過する際に振幅が減衰するが、8%程度の光が透過する。露光光IIは透光性基板31を100%通過する透過光であるため、ウエハー上での露光光の振幅分布は図5(b)のようになる。ここで、光の振幅の2乗が光強度に比例するという関係から、ウエハー面上に投影される露光光の強度分布は図5(c)のようになり、半透明遮光パターン32と透過部との境界部の光強度は0になる。このことからパターンエッジのコントラストが向上し、パターンの解像度は向上する。さらに、焦点の前後においても同様な効果が維持されるため、多少の焦点ズレがあっても解像度は維持され、よって焦点裕度が向上する効果が得られる。
【0006】
このような効果を与える位相シフトマスクを一般にハーフトーン型と称する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ハーフトーン型位相シフトマスク(マスク用ブランクを含む)では、本来の位相シフトマスクとしての光学定数である位相反転量:180度及び露光波長での透過率:5〜15%の他に、露光波長での反射率:25%以下、検査波長での透過率:30%以下という特性を同時に満足する必要がある。
この理由として、露光波長でのフォトマスクの反射率が高いと、フォトリソグラフィーを行う際に半透明膜とウエハーとの間で多重反射がおこり、パターン精度が低下してしまう。
また、位相シフトマスクの検査・寸法測定では主に超高圧水銀灯のi線(365nm)やAr+イオンレーザー光(488nm)といった可視光領域の光が用いられるが、この検査波長に対する透過率が30%を超えると、透過部と半透明部のコントラストが低下し、検査・寸法測定が困難になるという問題が生じる。
【0008】
また、半透明膜の導電性が低い場合、半透明膜上に形成された電子線レジストに電子線を露光してパターン形成する電子線描画において、電子が電子線レジスト上にチャージアップして、正確にパターンが形成できないという問題が発生する。また、静電気の帯電により、マスクの製造工程や使用時にごみが吸着し易くなってしまうという問題も生じている。
【0009】
以上のような問題点を回避するために、2層以上の膜を重ね合わせた位相シフトマスクが用いられている。例えば、モリブデンシリサイドやクロム等を主体としたハーフトーン型位相シフトマスクでは、露光波長が短波長化するに従い、成膜工程での膜の制御性や再現性に問題があり、また検査波長域での透過率が高い等々の問題点が数多く指摘されている。
【0010】
本発明は、上記従来のハーフトーン型位相シフトマスクの問題を解決するために、位相シフトマスクとしての光学定数を満たすと共に、露光光での反射率や検査波長での透過率を制御し、且つ高いパターン形成精度を有するハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に於いて上記課題を解決するために、まず請求項1においては、透光性基板上に半透明膜又は透明膜と半透明膜を設けてなるハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクにおいて、前記透明膜及び半透明膜が炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜(ZrSiCO)からなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクとしたものである。
【0012】
また、請求項2においては、透光性基板上に半透明膜又は透明膜と半透明膜を設け、該半透明膜又は透明膜と半透明膜をパターン化してなるハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、前記透明膜及び半透明膜が炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜からなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクとしたものである。
【0013】
また、請求項3においては、ジルコニウムシリサイドターゲットを用いてアルゴンと二酸化炭素の混合ガス雰囲気中で炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜を透光性基板上に成膜し、半透明膜又は透明膜と半透明膜を形成することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造方法としたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明のハーフトーン型位相シフトマスクは透明なガラス基板上に炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜からなる半透明膜又は透明膜と半透明膜をパターン化したものであり、位相シフトマスクとして満足すべき光学条件(半透明膜又は透明膜と半透明膜を透過する露光光の透過率:5〜15%、半透明膜又は透明膜と半透明膜パターンと透明なガラス基板を透過する光との位相差:180度)の他に、露光波長での反射率を25%以下、検査波長での透過率を30%以下とし、さらに半透明膜にある程度の導電性を付与して電子線描画時のチャージアップを防止し、パターン形成精度の向上を計り、トータル的に露光転写時のパターン解像度の向上を図るようにしたものである。
【0015】
透明膜及び半透明膜はキャリアガスとしてアルゴンガスを用い、二酸化炭素(CO2 )を含む反応性ガス雰囲気中でジルコニウムシリサイドターゲットを使用したスパッタリングにて、透明な石英ガラス基板上に炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜を成膜して形成する。
透明な石英ガラス基板上に半透明膜又は透明膜と半透明膜を炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜で形成することによりハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクを作製する。
【0016】
上記のハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクに電子線レジストを塗布し、電子線レジスト層を形成し、電子線描画、現像、ドライエッチング、レジスト剥離等の一連のパターニングプロセスを経て、ハーフトーン型位相シフトマスクを得る。
ここで、透明膜と半透明膜は単一金属化合物からなるため、マスクパターン形成を精度良く、容易に行うことができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明のハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクの実施例について図面を用いてより具体的に説明する。
<実施例1>
図1(a)〜(c)は半透明膜からなるハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。尚、以下の例は単層ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及び位相シフトマスクについてのものである。
【0018】
まず、透明な石英ガラスからなる透光性基板1上に、RFスパッタ装置を用いて、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス及び二酸化炭素(CO2 )ガスを導入し、ジルコニウムシリサイドターゲットを用いて反応性スパッタを行い、位相差が180度となるような炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜(ZrSiCO)からなる半透明膜2を形成し、ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクを作製した(図1(a)参照)。この時の半透明膜2の膜厚は1070Åであった。
成膜条件
電 力:200W
圧 力:0.40Pa
Ar流量:13SCCM
CO2 流量:1.4SCCM
【0019】
上記成膜条件で成膜した炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜(ZrSiCO)からなる半透明膜2の分光透過率特性及び分光反射率特性を図3に示す。露光光であるi線の波長365nmにおける分光透過率は7.3%、反射率は24.8%を示し、位相シフトマスクとしての光学条件とi線露光時における多重反射の影響という点からも満足する値を得た。
さらに、検査波長488nmでの透過率は21.3%となり、検査時におけるコントラストは十分に得ることができる。
【0020】
次に、上記ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク上に電子線レジストをスピナーにより塗布し、電子線レジスト層を形成し、所定のパターンを電子線描画、現像して開口部4を有するレジストパターン3を形成した(図1(b)参照)。ここで、上記成膜条件で成膜した炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜(ZrSiCO)のシート抵抗は5.5×105 Ω/□であったので、電子線描画の際のチャージアップはほとんど問題にならなかった。
【0021】
次に、レジストパターン3が形成された位相シフトマスク用ブランクを塩素系ガス及びフッ素系ガスを用いたドライエッチングによりパターニングした後、レジストパターン3を剥膜処理して、半透明膜パターン2aからなる単層ハーフトーン型位相シフトマスクを得た(図1(c)参照)。
【0022】
<実施例2>
図2(a)〜(c)は透明膜と半透明膜からなるハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。尚、以下の例は2層ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及び位相シフトマスクについてのものである。
【0023】
まず、DCスパッタ装置を用いて、チャンバー内にアルゴン(Ar)ガス及び二酸化炭素(CO2 )ガスを導入し、ジルコニウムシリサイドターゲットを用いた反応性スパッタリングにより、透明な石英ガラスからなる透光性基板21上に、位相差180度で透過率が6%となるような炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜からなる透明膜22と半透明膜23を形成し、ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクを作製した(図2(a)参照)。この時の透明膜22と半透明膜23を合わせた膜厚は1220Åであった。
成膜条件
下層(透明膜)の成膜条件
電 力:200W
圧 力:0.44Pa
Ar/CO2 (%):87/13
上層(半透明膜)の成膜条件
電 力:200W
圧 力:0.42Pa
Ar/CO2 (%):91/9
【0024】
上記成膜条件で成膜した透明膜22と半透明膜23からなるハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクの分光透過率特性及び分光反射率特性を図4に示す。KrFエキシマレーザーの波長である248nmにおける分光透過率は5.9%、反射率は24.0%を示し、位相シフトマスクとしての光学条件と露光時における多重反射の影響の低減という点からも問題ない値を得た。
さらに、検査波長488nmでの透過率は30.7%、検査波長365nmでの透過率は17.3%であり、検査時のコントラストは十分に得ることができる。
【0025】
また、この透明膜はほとんど光吸収がないので半透明膜の厚さを変えることで容易に露光波長での透過率の異なるブランクを作製できる。このとき位相差は透明膜の厚さによって調整すればよい。
【0026】
上記位相シフトマスクブランクを洗浄後電子線レジストをスピナーにより塗布して電子線レジスト層を形成し、所定のパターンを電子線描画、現像して開口部25を有するレジストパターン24を形成した(図2(b)参照)。ここで、上記成膜条件で成膜した2層炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜のシート抵抗は、10.35kΩ/□であり、電子線描画の際のチャージアップはほとんど問題にならなかった。
【0027】
次に、レジストパターン24が形成された位相シフトマスク用ブランクをドライエッチングによりパターニングした後、レジストパターン24を剥膜処理して、透明膜パターン22aと半透明膜パターン23aからなる2層ハーフトーン型位相シフトマスクを得た(図2(c)参照)。
【0028】
【発明の効果】
ハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及び位相シフトマスクの透明膜及び半透明膜に炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜を用いることにより、位相シフトマスクとしての光学定数のほかに露光光での反射率や検査波長での透過率を容易に制御でき、露光光での多重反射の影響もなく、高いパターン形成精度が得られる。すなはち、
1)単一の金属化合物であるため、高いパターン形成精度を有し、且つパターン形状再現性に優れている。
2)膜自体が適度の導電性を有しているため電子線描画の際のチャージアップを防止できる。
3)上記透明膜及び半透明膜は、膜が硬いため、位相シフトマスクを作製する工程及び検査工程での損傷や擦傷による不良を抑えることができる。
4)洗浄工程において使用される熱濃硫酸には充分な耐性を持つので安心して使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は、本発明のハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクの実施例1の構成を示す模式断面図である。
(b)〜(c)は、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの実施例1の製造工程及び構成を示す模式断面図である。
【図2】 (a)は、本発明のハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクの実施例2の構成を示す模式断面図である。
(b)〜(c)は、本発明のハーフトーン型位相シフトマスクの実施例2の製造工程及び構成を示す模式断面図である。
【図3】 本発明のハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクの実施例1を構成している半透明膜の分光透過率特性及び分光反射率特性を示す説明図である。
【図4】 本発明のハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクの実施例2を構成している透明膜と半透明膜からなる2層膜の分光透過率特性及び分光反射率特性を示す説明図である。
【図5】 (a)は、ハーフトーン型位相シフトマスクを用いて投影露光する場合を示す説明図である。
(b)は、ウエハー上での露光光の振幅分布を示す説明図である。
(c)は、ウエハー上での露光光の強度分布を示す説明図である。
【符号の説明】
1、11……透光性基板
2、23……半透明膜
2a、23a……半透明膜パターン
3、24………レジストパターン
4、25………開口部
22……透明膜
22a…透明膜パターン
31……透光性基板
32……半透明膜パターン
Claims (3)
- 透光性基板上に半透明膜又は透明膜と半透明膜を設けてなるハーフトーン型位相シフトマスク用ブランクにおいて、前記透明膜及び半透明膜が炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜(ZrSiCO)からなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク用ブランク。
- 透光性基板上に半透明膜又は透明膜と半透明膜を設け、該半透明膜又は透明膜と半透明膜をパターン化してなるハーフトーン型位相シフトマスクにおいて、前記透明膜及び半透明膜が炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜からなることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク。
- ジルコニウムシリサイドターゲットを用いてアルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO2 )の混合ガス雰囲気中で炭化酸化ジルコニウムシリサイド膜を透光性基板上に成膜し、半透明膜又は透明膜と半透明膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造方法。
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