JP4099426B2 - パイル造成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔の削孔過程で排出された土と地盤固化材とを利用して孔内にパイル状の硬化体を造成するパイル造成方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
孔の削孔過程で排出された土いわゆる現地土を利用してパイル状の硬化体を造成するパイル造成方法としては、例えば、特許文献1記載のパイル造成方法が公知である。
【0003】
従来のパイル造成方法における具体的な作業工程の一例を図14に、また、この作業工程を視覚化した作用原理図を図15(a)に示すと共に、各作業工程と削孔深度との関係の一例を図15(b)に示す。
【0004】
従来のパイル造成方法では、まず、削孔によって孔壁が崩れない範囲で1回分の限界削孔深度を決め、この限界削孔深度で最終的な目標深度DNを幾つかに分割し、各削孔深度毎に削孔と地盤固化材の混練および孔壁の強化作業を行う。
【0005】
図15(a)および図15(b)では最終的な目標深度DNをN段に分割して削孔と地盤固化材の混練および孔壁の強化作業を行う場合を例示している。
【0006】
具体的には、まず、退避位置D0に削孔スクリュー100の先端を位置させ、i=1段目の削孔に取り掛かること、および、ストップウォッチ等による計時作業が行われていないことを作業者自身が記憶し(ステップb1)、公知の削孔機を作動させて削孔スクリュー100の正転および降下を開始させる(ステップb2)。
【0007】
削孔が進むにつれて切り崩された土が排出されるので、作業者は、i=1段目の削孔で地上に排出されてくる土に地盤固化材を逐次添加しながらスコップ等を利用して土と地盤固化材とを混練する作業を行う(ステップb3)。
【0008】
また、この作業と並行して、作業者は、削孔深度の現在値Dがi=1段目の目標深度Di=D1に達しているか否かを調べ(ステップb4)、目標深度に達していなければ、前記と同様の作業を繰り返し実行し、地上に排出されてくる土に地盤固化材を逐次添加しながらスコップ等による混練を継続し、随時、削孔深度の現在値Dがi=1段目の目標深度Di=D1に達しているか否かを調べる。
【0009】
この段階で投入される地盤固化材の絶対量は、削孔スクリュー100が地上からi=1段目の目標深度Di=D1に達する間に排出される土の量に比例した添加量である。
【0010】
そして、削孔深度の現在値Dがi=1段目の目標深度Di=D1に達したことが確認されたならば、作業者は、削孔機を操作して削孔スクリュー100の先端を退避位置D0に上昇させて削孔スクリュー100の回転を停止させ(ステップb5)、孔の開口部から地盤固化材を纏めて投入する(ステップb6)。
【0011】
ここで投入される地盤固化材の絶対量は、削孔スクリュー100がi=1段目の目標深度Di=D1からi=2段目の目標深度Di=D2に達する間に新たに切り崩される土の予定量に比例した添加量である。
【0012】
次いで、作業者は、i=2段目の削孔に取り掛かることを記憶し(ステップb7)、削孔機を作動させて削孔スクリュー100の正転および降下を再開させる(ステップb8)。
【0013】
そして、作業者は、削孔深度の現在値Dがi=2段目の目標深度Di=D2に達しているか否かを調べ(ステップb9)、目標深度に達していなければ、このまま待機する。
【0014】
このようにして待機を続ける間に、削孔深度の現在値Dがi=2段目の目標深度Di=D2に達したことが確認されると、作業者は、削孔機を操作して削孔スクリュー100の正転を継続したまま削孔スクリュー100の降下動作のみを停止させ(ステップb10)、ストップウォッチ等による計時作業が行われているか否かを判定するが(ステップb11)、この時点では計時作業は行なわれていないので、作業者は、ストップウォッチ等をリセットして再スタートさせることで計時作業を開始すると共に(ステップb12)、計時作業の開始を記憶する(ステップb13)。
【0015】
計時作業を開始した後、作業者は、ストップウォッチ等によって計時される経過時間を見張り、経過時間が予め定められた設定値Tに達するまで待機する(ステップb11,ステップb14)。
【0016】
この間、削孔スクリュー100の先端がi=2段目の目標深度Di=D2に保持された状態で削孔スクリュー100の正転のみが継続される。これにより、削孔スクリュー100がi=1段目の目標深度Di=D1からi=2段目の目標深度Di=D2に達する間に新たに切り崩された土とステップb6の作業で纏めて投入された地盤固化材とが混練され、更には、削孔スクリュー100の正転で生じる移送作用により、混練された土と地盤固化材との混合物が地上に排出される。
【0017】
また、この過程で、混練された混合物が孔壁に塗り付けられることでi=2段目までの孔壁の強化作業が行なわれる。
【0018】
そして、経過時間が設定値Tに達したことがステップb14の処理で確認されたならば、作業者は、ストップウォッチ等による計時作業が完了したことを記憶し(ステップb15)、現在の削孔段数i=2が最終削孔段数Nに達しているか否かを判定するが(ステップb16)、この段階ではi=2<Nであって最終削孔段数Nには達していないので、削孔機を操作して削孔スクリュー100の先端を退避位置D0に上昇させて削孔スクリュー100の回転を停止させる(ステップb5)。
【0019】
混練された土と地盤固化材との混合物がi=2段目までの孔壁に塗り付けられることによって孔壁が強化されているため、削孔スクリュー100を引き抜いても孔壁が崩れることはない。
【0020】
以下、作業者は、削孔段数iの現在値が最終削孔段数Nに達するまでの間、前記と同様の作業(ステップb5〜ステップ16)を繰り返し実行し、各削孔深度毎に削孔と地盤固化材の混練および孔壁の強化作業を行う。
【0021】
そして、最終的に、削孔段数iの現在値が最終削孔段数Nに達したことがステップb16の処理で確認されると、作業者は、削孔スクリュー100の先端を最終得的な目標深度DNに保持したまま、削孔機を操作して削孔スクリュー100の正転を停止して、逆転および上昇を開始させ、削孔スクリュー100の逆転で生じる移送作用を利用して、これまで地上に排出されていた土と地盤固化材との混合物を孔内に埋め戻して充填し、削孔スクリュー100の先端が退避位置D0に復帰するまで待機し(ステップb17,ステップb18)、削孔スクリュー100が退避位置D0に復帰した段階で作業を完了する。
【0022】
【特許文献1】
特公平1−22403号公報(第3−4頁)
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述した従来のパイル造成方法では、孔壁内に充填される土と地盤固化材との混合物の混練の度合いが一定とならず、この混合物を養生して硬化させても適切な硬化強度が得られなくなったり、あるいは、混練の状態が部位によって相違し、養生に必要とされる所要時間が冗長するといった問題が生じる場合があった。
【0024】
その理由としては、まず、i=1段目の削孔で地上に排出されてくる土と地盤固化材との混練がスコップ等を利用した手動作業で行なわれるのに対し、i=2段目からi=N段目の削孔段で切り崩された土と地盤固化材との混練が削孔スクリューの回転による自動作業で行なわれるといった混練方法自体の相違によるバラツキの影響が考えられる。
【0025】
特に、最終的な目標深度が浅い場合、例えば、最終削孔段数Nが2段あるいは3段といったような場合では、スコップ等を利用して混練された混合物と削孔スクリューの回転による自動作業で混練された混合物との割合が1:1あるいは1:2程度となってしまい、混合物の均一性が保証されなくなるといった可能性が高い。
【0026】
また、これとは別に、削孔の開始から混合物の充填完了までに要する作業時間が全体として冗長されるといった問題もある。
【0027】
その理由は、前述した従来のパイル造成方法では、i=2段目以降の削孔段において、次の1段分の削孔で切り崩される土の予定量に見合った地盤固化材を孔内に纏めて投入し、この1段分の削孔過程と混練過程で両者を混練するようにしているため、仮に、孔壁の崩れの問題がないとしても、1段分の限界削孔深度を深く設定すると、纏めて大量に投入された地盤固化材が削孔スクリューの先端部に塊状化して付着してしまい、適切な混練効果が得られなくなるからである。
【0028】
このため、1段分の限界削孔深度を浅く設定して地盤固化材を少量ずつ投入する必要が生じ、その結果、削孔スクリューの上下動作や混練のための定深度回転の繰り返し回数も増大し、混合物の充填完了までに要する作業時間が冗長されるのである。
【0029】
【発明の目的】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の欠点を解消し、バラツキのない十分な硬化強度が得られ、また、総合的な作業時間も短くて済むパイル造成方法を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明は、削孔スクリューを有する削孔機によって孔を形成し、この削孔過程で排出される土と地盤固化材とを含む混合物を前記孔に充填することでパイル状の硬化体を造成するパイル造成方法であり、前記目的を達成するため、特に、
削孔スクリューを正転しつつ目標深度まで降下させた後、削孔スクリューの上下位置を保持して削孔スクリューの正転を継続することで該孔内の土を地上に排出し、
前記孔から排出された土に地盤固化材を添加し地上の自動混練装置により混合して混合物を生成した後、
前記削孔スクリューを逆転させることにより、前記削孔スクリューの正転に際しては切削対象となる土からの抵抗を受けて前記削孔スクリューの外周部に折り畳まれる一方前記削孔スクリューの逆転に際しては切削対象となる土からの抵抗を受けて前記削孔スクリューの径方向外側に突出するように該削孔スクリューの外周部の表裏にピンを介して軸支された上爪と下爪からなる切削刃を360°の倍数系列とならない所定のピッチで該削孔スクリューの径方向外側に複数の箇所で突出させて孔壁の内周面にスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部を形成し、前記孔の開口部に前記混合物を供給して該混合物を前記孔内に移送し充填を完了させ、
前記削孔スクリューの逆転を継続しつつ削孔スクリューの軸方向に沿って作用する荷重をロードセルで検出し、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には前記削孔スクリューの上下位置を保持して孔内に混合物を過充填気味に送り込んで背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には前記削孔スクリューを上昇させて該削孔スクリューの先端部と孔の底部および孔壁とで形成される空間の体積を増大させて背圧を軽減することによって予め設定された背圧を維持して前記削孔スクリューを退避位置まで上昇させることを特長とした構成を有する。
【0031】
以上の構成により、まず、削孔スクリューを正転しつつ目標深度まで降下させて土を切り崩し、更に、削孔スクリューの上下位置を保持して削孔スクリューの正転を継続することで孔内の土を地上に排出する。ここでいう正転とは、削孔スクリューの先端が地面に喰い込む際の削孔スクリューの回転方向であり、削孔スクリューの形状が右ネジに類するものであれば右回転、また、削孔スクリューの形状が左ネジに類するものであれば左回転である。
次いで、孔から排出された土に地盤固化材を添加し、地上に設置されたコンクリートミキサー等の自動混練装置によって混練することで混練状態が均一の混合物を生成する。
更に、削孔スクリューを逆転させることにより、削孔スクリューの正転に際しては切削対象となる土からの抵抗を受けて削孔スクリューの外周部に折り畳まれる一方削孔スクリューの逆転に際しては切削対象となる土からの抵抗を受けて削孔スクリューの径方向外側に突出するように該削孔スクリューの外周部の表裏にピンを介して軸支された上爪と下爪からなる切削刃を360°の倍数系列とならない所定のピッチで該削孔スクリューの径方向外側に複数の箇所で突出させて孔壁の内周面にスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部を形成し、孔の開口部に混合物を供給することで、削孔スクリューの逆転で生じる移送作用を利用して混合物を孔内に移送し、混合物の充填を完了させる。
そして、削孔スクリューの逆転を継続しつつ削孔スクリューの軸方向に沿って作用する荷重をロードセルで検出し、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には削孔スクリューの上下位置を保持して孔内に混合物を過充填気味に送り込んで背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には削孔スクリューを上昇させて削孔スクリューの先端部と孔の底部および孔壁とで形成される空間の体積を増大させて背圧を軽減することによって予め設定された背圧(充填される混合物の内圧)を維持して前記削孔スクリューを退避位置まで引き上げることで、孔壁内の混合物を締固める。
このように、削孔によって切り崩された土を一旦地上に排出し、この土に地盤固化材を添加して地上の自動混練装置により一括して混練するようにしたので、スコップによる作業や削孔スクリューの回転といった複数の混練方法を併用して土と地盤固化材とを混練する従来技術とは違って、混練状態が均一の混合物を生成することができる。従って、この混合物を孔に充填して適切な養生を施すことで、十分な硬化強度を有するパイル状の硬化体が得られる。
また、狭い孔内で削孔スクリューを回転して行なう混練作業とは違い、削孔スクリューの先端部に地盤固化材が塊状化して付着するといった問題はないので、最終的な目標深度を複数に分割して少量ずつ地盤固化材を投入しながら削孔や混練の作業を行う必要はなく、削孔の開始から混合物の充填完了までに要する作業時間も大幅に短縮される。
更に、混合物の充填完了後に削孔スクリューを引き抜く際には、予め設定された背圧が維持されるように削孔スクリューの逆転と上昇を調整しつつ削孔スクリューを退避位置まで引き上げるようにしているので、目標深度を複数に分割して孔壁に対する格別の強化作業を行わなくても、混合物を確実に孔壁に密着させることができる。この結果、混合物が固化して形成されるパイル状の硬化体に対する土の喰い付きも確保され、十分な対荷重強度が保証される。
しかも、孔壁の内周面に形成されたスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部に混合物が充填されて締固められるため、養生後のパイル状の硬化体の外周部にもスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部が形成される。この拡径部により土の喰い付きが強くなるため、一層の対荷重強度が保証される。
【0032】
あるいは、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には削孔スクリューの上下位置を保持して孔内に混合物を過充填気味に送り込んで背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には削孔スクリューを上昇させて削孔スクリューの先端部と孔の底部および孔壁とで形成される空間の体積を増大させて背圧を軽減することに代え、
削孔スクリューの上昇速度を一定とし、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には削孔スクリューの逆転速度を増大させて背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には削孔スクリューの逆転速度を減少させて背圧を軽減することによって予め設定された背圧を維持するようにしてもよい。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明を適用したパイル造成方法の一実施形態について詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明のパイル造成方法を実現するために本実施形態において採用した各種装置の設置状態を示した配置図、また、図2は各種装置の外観を概略で示した立面図である。
【0036】
図2において、削孔機1は削孔スクリュー2と公知の駆動ユニット3により構成され、駆動ユニット3は、クレーン車等の作業機4のブーム先端にアタッチメントとして装着されている。
駆動ユニット3は削孔スクリュー2を正逆に回転させたり其の回転を停止させたりする機能を有し、作業機4内のコンソールに設置されたコントローラにより駆動制御される。
また、駆動ユニット3には、削孔スクリュー2の軸方向に沿って作用する荷重を検出するためのロードセル5が装着され、その検出値は作業機4内のコンソールに設置されたディスプレイに表示されるようになっている。
【0037】
地面に置かれたパレット6は、削孔作業に伴って孔から排出される土を回収するために利用され、パレット7は、地盤固化材の貯溜に利用される。また、パレット8は、自動混練装置9で混練された土と地盤固化材との混合物を一時的に貯溜するために利用される。
ここでいう地盤固化材とは、例えば、石膏,高炉スラグ,普通ポルトランドセメント等の主剤に硬化促進剤等を添加した物質のことである。
【0038】
自動混練装置9としては、コンクリートミキサー等を利用することが可能である。
【0039】
また、孔から排出される土の含水率が低い場合には、土と地盤固化材との混練に際し、ホース10とポンプ11とを介して自動混練装置9に貯水槽12の水を供給することができる。
更に、排出される土の土壌によっては、貯水槽12に代えて砂を盛ったパレット等を設置し、この砂を混練過程で水に代えて自動混練装置9に供給する場合もある。
【0040】
パワーショベル13は、各パレット6,7,8と自動混練装置9との間での土,地盤固化材,混合物の受け渡し等に利用される。
【0041】
削孔位置に設置されたホッパー14は、削孔の進行に伴って孔から排出される土をパレット6に円滑に回収するための受け渡し手段であり、また、パレット8の混合物を孔の開口部に供給するための受け渡し手段も兼ねている。
【0042】
ホッパー14の構成の概略を図5に示し、其の機能について簡単に説明する。図5(a)はホッパー14の外形を示した平面図、図5(b)はホッパー14の主要な構造を透視して示した斜視図である。
【0043】
図5(a)に示される通り、ホッパー14は円筒状の本体部14aと、本体部14aの下端外周部に形成されたフランジ部14b、および、本体部14aから径方向外側に向けて突出する排出用樋14cと、この排出用樋14cに略直交して本体部14aから径方向外側に向けて突出する投入用樋14dとによって一体に構成され、フランジ部14bには、ペグ等を利用してホッパー14を削孔位置に固定するための孔15が穿設されている。
【0044】
図5(b)に示されるように、ホッパー14の排出用樋14cは、本体部14aの径方向内側から径方向外側に向けて下降する底面16を有し、径方向外側の先端部が開口されている。
また、これとは逆に、投入用樋14dは、本体部14aの径方向外側から径方向内側に向けて下降する底面17を有し、径方向外側の先端部が閉じられている。
図5(b)に示される通り、排出用樋14cの底面16の位置は投入用樋14dの底面17の位置よりも相対的に高い。
【0045】
従って、例えば、図2に示されるようにしてホッパー14を地面に設置し、削孔スクリュー2を地面に突入させた状態で削孔スクリュー2の上下位置を保持し、削孔スクリュー2を図2中の矢印方向に正転させたとすれば、削孔によって切り崩された土が削孔スクリュー2の正転で生じる移送作用により図5(a)中で時計方向に回転しながら上昇してくることになり、この土がホッパー14の排出用樋14cを伝ってパレット6に回収される。
投入用樋14dの先端部は閉じられているので、投入用樋14dから土が溢れ落ちることはなく、排出土は確実に排出用樋14cから排出される。
【0046】
また、これとは逆に、削孔スクリュー2を地面に突入させた状態で削孔スクリュー2の上下位置を保持し、削孔スクリュー2を図2中の矢印方向と逆方向に回転させたとすれば、投入用樋14dから投入された混合物が削孔スクリュー2の逆転で生じる移送作用により図5(a)中で反時計方向に回転しながら下降し、この土がホッパー14の本体部14aに沿って孔の開口部に充填されていくことになる。
排出用樋14cの先端部は開放されているが、投入用樋14dから投入された混合物は、図5(a)および図5(b)中のSの区間を回転しながら移動する間に削孔スクリュー2のリードに沿って降下するので、投入用樋14dに新たに投入された混合物が排出用樋14cの先端部から溢れ落ちる心配はない。
【0047】
図3は削孔機1の駆動ユニット3に装着される削孔スクリュー2の構造を概略で示した斜視図、また、図4(a)〜図4(d)は、削孔スクリュー2の主要な断面をとって削孔スクリュー2の作動原理を示した図である。ここで、削孔スクリュー2の構造と機能について簡単に説明する。
【0048】
図3に示されるように、削孔スクリュー2は、スクリュー本体18と、その先端部に固設された破砕刃19、および、スクリュー本体の外周部に取り付けられた複数の切削刃20とによって構成される。このうちスクリュー本体18と破砕刃19の部分については既に公知であるので説明を省略する。
【0049】
図4(b)に示されるように、切削刃20は、上爪22と下爪23および両者を接続する接合部24を有して断面略コ字型に一体成形され、スクリュー本体18の外周部の表裏に上爪22,下爪23を位置させた状態で、図4(a)に示されるように、スクリュー本体18の正転に際して土等の切削対象からの抵抗が作用する側の一端部20aをスクリュー本体18の外周部にピン21を介して軸支されることによって、スクリュー本体18の外周部に揺動自在に取り付けられている。
【0050】
切削刃20における接合部24の一側は、切削刃20が図4(a)に示されるようにスクリュー本体18の外周部に沿って折り畳まれた状態で、スクリュー本体18の外周部に外接する第一の支承部として機能する。また、この接合部24の他の一側は、ピン21による軸支の位置を支点として、図4(c)に示されるように切削刃20がスクリュー本体18の外周部から径方向外側に離間する方向に揺動した状態で、スクリュー本体18の外周部に外接する第二の支承部として機能する。
【0051】
従って、例えば、削孔スクリュー2を地面に突入させた状態で削孔スクリュー2を図4(a)中の矢印方向に正転させると、土等の切削対象が切削刃20に与える抵抗により、一端部20aをピン21で軸支された切削刃20の他端部20bが、切削刃20の回転移動方向を基準としてピン21の後方にくるように切削刃20の姿勢が変化し、この切削刃20がスクリュー本体18の外周部に折り畳まれた状態となる。このとき、切削刃20における接合部24の一側は、切削刃20が折り畳まれた状態でスクリュー本体18の外周部に外接する第一の支承部として機能し、切削刃20の姿勢を図4(a)あるいは図4(b)の状態に保持する。
【0052】
また、これとは逆に、削孔スクリュー2を地面に突入させた状態で削孔スクリュー2を図4(c)中の矢印方向に逆転させると、土等の切削対象が切削刃20に与える抵抗により、ピン21で軸支された切削刃20の一端部20aを揺動中心として、図4(c)を基準に切削刃20の他端部20bが時計方向に揺動してスクリュー本体18の径方向外側に突出する。この状態では切削刃20に大きな抵抗が作用することになるが、切削刃20における接合部24の他の一側が第二の支承部として機能することにより切削刃20を支えるため、切削刃20の姿勢は、図4(c)あるいは図4(d)に示されるように、スクリュー本体18の径方向外側に突出した状態に保持される。
【0053】
この実施形態では、切削刃20を折り畳みの姿勢で支える第一の支承部と突出の姿勢で支える第二の支承部とを接合部24における2つの側面によって兼ねさせているが、第一の支承部と第二の支承部とを分割して構成することも可能である。
【0054】
また、スクリュー本体18に対する切削刃20の取り付け個数および取り付け位置についての格別の制限はないが、360°の倍数系列とならない所定のピッチで幾つか取り付けることが望ましい。
【0055】
図6は本実施形態のパイル造成方法における作業工程の一例を示した作業工程図、また、図7〜図13は同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。以下、これらの図面と図1および図2を参照して本実施形態のパイル造成方法の作業工程について詳細に説明する。
【0056】
ここでは、一例として、初期の段取り作業により図1および図2に示されるような状態で削孔機1,ホッパー14,作業機4,パレット6〜8,自動混練装置9,貯水槽12,パワーショベル13等が配置されているものとして説明するが、装置の配置状況は、これに制限されるものではない。
【0057】
図1および図2に示されるようにして各種装置が設置された後、作業機4の作業者は、まず、地上の退避位置に削孔スクリュー2の先端を位置させ、作業機4内のコントローラの操作により削孔機1の駆動ユニット3を作動させて削孔スクリュー2の正転を開始すると共に、作業機4のブームを作動させて削孔スクリュー2の降下を開始させる(ステップa1)。
【0058】
削孔が進むにつれて土が切り崩され、この土は、削孔スクリュー2の正転で生じる移送作用によって孔25から地上に排出され、既に述べたように、ホッパー14の本体部14aおよび排出用樋14cを経て図7に示されるようにして自動的にパレット6に回収される(ステップa2)。このとき、削孔スクリュー2は図4(a)に示されるような正転の状態にあるので、切削刃20はスクリュー本体18の外周部に折り畳まれた状態となっている。
【0059】
また、この作業と並行して、作業機4の作業者は、削孔深度の現在値Dが最終的な目標深度DXに達しているか否かを調べ(ステップa3)、目標深度DXに達していなければ、前記と同様にして、削孔深度の現在値Dの見張りを続ける。
【0060】
そして、削孔深度の現在値Dが目標深度DXに達したことがステップa3の処理で確認されたならば、作業機4の作業者は、駆動ユニット3の作動による削孔スクリュー100の正転を継続したまま作業機4のブームの作動を停止させて削孔スクリュー100の降下動作のみを停止させ(ステップa4)、前記と同様にしてパレット6に土を自動回収しながら(ステップa5)、孔25内から全ての土が排出されるのを待機する(ステップa6)。
【0061】
この結果、図8に示されるように、削孔スクリュー2の上下位置を目標深度DXに保持したまま削孔スクリュー2の正転のみが継続され、最終的には、図9に示されるように、削孔スクリュー2の正転で生じる移送作用によって孔25内の土の全てが地上に排出され、パレット6に回収されることになる。
【0062】
削孔によって切り崩された土の全てが回収されたことがステップa6の処理で確認されると、作業機4の作業者は、作業機4内のコントローラを介して削孔機1の駆動ユニット3を操作し、削孔スクリュー2の正転を一旦停止させる(ステップa7)。
【0063】
次いで、パワーショベル13の作業者が、パワーショベル13のバケット13aを操作し、パレット6内に回収された排出土とパレット7内の地盤固化材とを自動混練装置9に投入することによって排出土に地盤固化材を添加し、更に、自動混練装置9を作動させて排出土と地盤固化材とを混練することで、排出土と地盤固化材との混合物の生成を開始する(ステップa8)。
この際に、排出土の含水率が低ければ、ポンプ11を作動させて貯水槽12の水を自動混練装置9に供給する。また、土壌によっては、貯水槽12に代えて設置されたパレット内の砂をパワーショベル13で自動混練装置9に供給する場合もある。このようにして投入された水あるいは砂も混合物の一部である。
【0064】
ステップa8に示される混練工程の作業は、必ずしも、孔25内から全ての土が排出されるのを待ってから開始する必要はなく、パレット6に或る程度の土が回収された段階で、頃合を見計らって開始しても差し支えない。
【0065】
そして、自動混練装置9内で混練された土と地盤固化材との混合物は、自動的に自動混練装置9から排出され、パレット8に回収される。
【0066】
このように、削孔によって切り崩された土を一旦地上に排出し、この土に地盤固化材を添加して自動混練装置9で一括して混練するようにしたので、混練状態が均一の混合物を容易に生成することができる。
【0067】
また、自動混練装置9による混練作業においては、大量の地盤固化材を纏めて添加しても地盤固化材が塊状化して土と分離するといった問題は殆どないので、大量の排出土と地盤固化材とを一気に混練することが可能であり、少量の土に少量ずつ地盤固化材を投入しながら混練作業を行うといった必要もなくなり、削孔や混合物の混練を短時間で行なうことができるようになる。
【0068】
更に、ポンプ11やパワーショベル13を利用して自動混練装置9に水や砂を供給できるようになっているので、土壌の性質に応じた最適の混練作業が可能となる。
【0069】
次いで、作業機4の作業者が、作業機4内のコントローラを介して削孔機1の駆動ユニット3を操作することで削孔スクリュー2の逆転を開始させると共に(ステップa9)、パワーショベル13の作業者が、パワーショベル13のバケット13aを操作してパレット8内の混合物をホッパー14の投入用樋14dに投入する作業を開始することにより、既に述べたように、この混合物がホッパー14の投入用樋14dおよび本体部14aを経て図10に示されるようにして孔25の開口部に供給される(ステップa10)。
【0070】
また、この作業と並行して、作業機4の作業者は、作業機4内のコンソールに設置されたディスプレイを参照し、ロードセル5の検出値、つまり、削孔スクリュー2の軸方向に沿って作用している荷重の現在値Pを読み、この現在値Pが、混合物の充填完了を示す設定値P0に達しているか否かを判定する(ステップa11)。
【0071】
荷重の現在値Pが設定値P0に達していなければ、孔25に対する混合物の充填が完了していないことを意味するので、パワーショベル13の作業者および作業機4の作業者は前記と同様の作業を繰り返し実行し、ロードセル5の検出値Pが混合物の充填完了を示す設定値P0に達するのを待つ。
【0072】
このようにして孔25の開口部に対する混合物の供給が開始され、かつ、削孔スクリュー2の逆転が開始されると、削孔スクリュー2の逆転で生じる移送作用によって徐々に孔25内に混合物が充填されていく。このとき、削孔スクリュー2は図4(c)に示されるような逆転の状態にあるので、実質的には削孔スクリュー2の外周部の一部である切削刃20が、スクリュー本体18の径方向外側に突出した状態となり、これにより、孔25の内周面に複数のフランジ状の拡径部26が形成されることになる。
【0073】
そして、最終的に、図11に示されるようにして孔25に対する混合物の充填が完了すると、削孔スクリュー2の逆転で生じる移送作用により孔25内の混合物の内圧(背圧)が上昇し、ロードセル5の検出値Pが設定値P0に達し、あるいは、上回る。
【0074】
これにより、作業機4の作業者は、孔25に対する混合物の充填が完了したことを検知する。
【0075】
次いで、作業機4の作業者は、作業機4内のコンソールに設置されたディスプレイを参照してロードセル5の検出値、つまり、削孔スクリュー2の軸方向に沿って作用している荷重の現在値Pを読み、この現在値Pが、設定背圧に相当する設定値P1に達しているか否かを判定する(ステップa12)。
【0076】
ここで、荷重の現在値Pが設定背圧に相当する設定値P1に達していない場合には、孔25内の混合物に作用している背圧が不足気味であることを意味するので、作業機4の作業者は、削孔スクリュー2を上昇させずに其の上下位置を保持し、削孔スクリュー2の逆転で生じる移送作用により孔25内に混合物を過充填気味に送り込むことで背圧を上昇させる(ステップa14)。
これにより、孔25内の混合物が締固められ、また、フランジ状の拡径部26の部分にも混合物が確実に密着して充填される。
【0077】
また、これとは逆に、荷重の現在値Pが設定背圧に相当する設定値P1を上回っている場合には、孔25内の混合物に作用している背圧が高過ぎることを意味するので、作業機4の作業者は、作業機4のブームを操作して削孔スクリュー2を所定量だけ上昇させ、削孔スクリュー2の先端部と孔25の底部および孔壁とで形成される空間の体積を増大させて背圧を軽減し(ステップa13)、過剰な負荷による駆動ユニット3の損傷等を未然に防止する。
【0078】
また、この作業と並行して、作業機4の作業者は、削孔深度の現在値Dが地上近くの予圧完了位置まで上昇しているか否かを調べ(ステップa15)、削孔スクリュー2の先端が予圧完了位置まで上昇していなければ、前記と同様の操作を繰り返し実行し、最終的に、実際の背圧Pを設定背圧P1の周辺に維持した状態で、図12に示すようにして、削孔スクリュー2を徐々に上昇させていく。
【0079】
ここでは、一例として、削孔スクリュー2の回転速度を一定とした状態で削孔スクリュー2の実質的な上昇速度を加減することによって設定背圧P1を維持する例について述べたが、削孔スクリュー2の逆転速度を調整できる構造にあっては、削孔スクリュー2の上昇速度を一定とし、削孔スクリュー2の逆転速度を調整することによって設定背圧P1を維持することも可能である。
【0080】
その場合、具体的には、ステップa12の判定結果が真となった段階で削孔スクリュー2の逆転速度を所定量だけ減少させ(ステップa13に代わる操作)、また、ステップa12の判定結果が偽となった場合には、削孔スクリュー2の逆転速度を所定量だけ増大させるようにする(ステップa14に代わる操作)。
【0081】
このようにして削孔スクリュー2が逆転しながら徐々に上昇していく結果、孔25の内周面にはスパイラル状の拡径部26もしくは複数のフランジ状の拡径部26が形成される。
但し、削孔スクリュー2のピッチに削孔スクリュー2の逆転速度を乗じた値と削孔スクリュー2の上昇速度とが略一致した状態で形成されるのがスパイラル状の拡径部26、また、背圧調整等のために削孔スクリュー2の上昇が一時停止した際に削孔スクリュー2の逆転によって形成されるのが複数のフランジ状の拡径部26である。
【0082】
こうして削孔スクリュー2が上昇する間も、孔25内に充填された混合物には常に一定の背圧が作用するので、削孔スクリュー2の上昇によって新たに形成されたスパイラル状あるいは複数のフランジ状の拡径部26に対しても、孔25内の混合物が確実に充填して締固められることになる。
【0083】
次いで、削孔スクリュー2の先端が地上近くの予圧完了位置まで上昇したことがステップa15の処理で確認されると、作業機4の作業者は、背圧の現在値Pと設定背圧P1との相互関係とは無関係に作業機4のブームを操作し、削孔スクリュー2を予圧完了位置から図13に示されるような退避位置まで所定の上昇速度で引き上げる(ステップa16)。
そして、最終的に、作業機4の作業者は、作業機4内のコントローラを介して削孔機1の駆動ユニット3を操作し、削孔スクリュー2の逆転を停止して全ての作業を終了する(ステップa17)。
【0084】
なお、ここでいう予圧完了位置とは、削孔スクリュー2の上昇速度や削孔スクリュー2の逆転速度の調整を実際の背圧に反映させることが可能な削孔深度の最小値である。
削孔スクリュー2の上昇速度や削孔スクリュー2の逆転速度を調整したとしても、孔25内の混合物が孔壁と削孔スクリュー2によって適切にシールされていない場合には背圧の調整は行なえず、また、シールが不十分な状態で過剰な背圧を印加すると混合物が孔25から溢れ出る場合もあるため、削孔スクリュー2の先端部が或る程度以上の深さで孔25内に突入している間に、つまり、削孔スクリュー2が予圧完了位置まで上昇するまでの間に、削孔スクリュー2の上昇速度や削孔スクリュー2の逆転速度の調整による背圧調整を終了させるようにすることが望ましい。
【0085】
そして、予圧完了位置から退避位置までの削孔スクリュー2の引き上げ操作は、削孔スクリュー2のピッチに削孔スクリュー2の逆転速度を乗じた値と削孔スクリュー2の上昇速度とが略一致するようにして、実質的な背圧を零とした状態で行なうようにする。
【0086】
以上に述べた通り、本実施形態においては、硬化体となる混合物の充填作業は、目標深度DXまでの削孔作業および土の排出回収作業(ステップa1〜ステップa7)と、土の排出回収作業と独立あるいは重複して自動混練装置9を利用して行なわれる地上での混練作業(ステップa8)、および、混練の完了した混合物の再充填作業(ステップa9〜ステップa11)と、設定背圧P1を保持した状態での締固めと削孔スクリュー2の引き上げ操作(ステップa12〜ステップa17)のみであり、この間に何度も削孔スクリュー2を上下動させたり、あるいは、混練工程を何回にも分けて行なったりする必要は全くないから、削孔の開始から混合物の充填完了までに要する作業時間は短かなもので済む。
【0087】
また、削孔工程と充填工程との間に孔壁を強化するといった格別な作業は行なっていないが、最終的に削孔スクリュー2の引き上げ操作を行なう段階で、充填済の混合物に対して継続的に設定背圧P1を印加するようにしているので、孔壁に対する混合物の密着度は十分である。
【0088】
このようにして混合物の充填作業が完了した後、最終的に、孔25内に充填された混合物を所定の養生時間だけ放置して硬化させ、均一かつ十分な硬化強度を有するパイル状の硬化体を得る。
【0089】
孔25内に充填された混合物の混練の度合は部位に関わらず一定であるから、混合物の硬化過程で生じる硬度や靱性のバラツキでクラック等の損傷が生じることはなく、環境条件に応じた所定の養生時間経過後、どの部位をとってもバラツキのない十分な硬化強度を得ることができる。
この結果、例えば、混練の不均一で生じる局部的な含水率の相違等を考慮してマージンをとって養生時間を設定するといった必要もなくなり、全体的な養生時間の短縮も可能となる。
【0090】
そして、硬化したパイルの表面には削孔スクリュー2の逆転によって形成されたスパイラル状の拡径部26もしくは複数のフランジ状の拡径部26がそのまま残り、この部分に土壌が強力に喰い付くので、従来のストレート形状のパイルに比べ、更に強力な対荷重強度を確保することができる。
【0091】
【発明の効果】
本発明のパイル造成方法は、削孔スクリューを正転しつつ目標深度まで降下させた後、削孔スクリューの上下位置を保持して削孔スクリューの正転を継続することで孔内の土を地上に排出し、孔から排出された土と地盤固化材とを地上の自動混練装置により混練して混合物を生成し、この混合物を削孔スクリューの逆転によって孔の開口部から孔内に移送するようにしたので、削孔工程を複数に分割して各削孔工程毎にスコップや削孔スクリューの回転といった異なる混練方法を併用して土と地盤固化材とを混練する従来技術に比べ、混練状態が均一の混合物を得ることができる。従って、混合物の硬化過程における硬度や靱性のバラツキの影響でパイルにクラック等の損傷が生じることはなく、環境条件に応じた所定の養生時間経過後、どの部位をとっても品質にバラツキのない十分な硬化強度を有するパイルを得ることができる。
また、混練の不手際により混合物に生じる局部的な含水率の相違等を考慮して過剰なマージンをとって養生時間を設定するといった必要もなくなるため、全体的な養生時間の短縮も可能となる。
しかも、地上に設置した自動混練装置を採用しているため、大量の地盤固化材を纏めて土に添加した場合であっても地盤固化材が塊状化して土と分離するといった問題は殆どなく、大量の排出土と地盤固化材とを一気に混練することが可能となり、少量の土に少量ずつ地盤固化材を投入しながら混練作業を行うといった必要もなくなるので、削孔や混合物の混練を短時間で行なうことができるようになった。
更に、混合物の充填完了後、削孔スクリューの逆転および上昇により予め設定された背圧が維持されるようにして削孔スクリューを退避位置まで上昇させて孔壁内の混合物を締固めるようにしたので、孔壁に対する格別の強化作業を行わなくても混合物を確実に孔壁に密着させることができ、この結果、混合物が固化して形成されるパイル状の硬化体に対する土の喰い付きも確保され、十分な対荷重強度を有するパイル状の硬化体を得ることができる。
【0092】
また、削孔スクリューを逆転させる際に削孔スクリューの外周部の切削刃を径方向外側に突出させることで孔壁の内周面にスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部を形成するようにしたので、養生後のパイル状の硬化体の外周部にもスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部が形成されることになり、拡径部に対する土の喰い付きを利用して一層の対荷重強度が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパイル造成方法を実現するために一実施形態で採用した各種装置の設置状態の一例を示した配置図である。
【図2】同実施形態で採用した各種装置の外観を概略で示した立面図である。
【図3】同実施形態で採用した削孔スクリューの構造を概略で示した斜視図である。
【図4】図4(a)と図4(b)は同実施形態の削孔スクリューの切削刃が折り畳まれた状態について示した断面図、図4(c)と図4(d)は切削刃がスクリュー本体の径方向外側に突出した状態について示した断面図である。
【図5】図5(a)は同実施形態で採用したホッパーの構成の概略を示した平面図、図5(b)はホッパーの主要な構造を透視して示した斜視図である。
【図6】本実施形態のパイル造成方法における作業工程の一例を示した作業工程図である。
【図7】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図8】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図9】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図10】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図11】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図12】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図13】同実施形態の作業工程を視覚化して示した作用原理図である。
【図14】従来のパイル造成方法における具体的な作業工程の一例を示した作業工程図である。
【図15】図15(a)は従来のパイル造成方法における具体的な作業工程を視覚化して示した作用原理図、図15(b)は各作業工程と削孔深度との対応関係の一例を示した図である。
【符号の説明】
1 削孔機
2 削孔スクリュー
3 駆動ユニット
4 作業機
5 ロードセル
6,7,8 パレット
9 自動混練装置
10 ホース
11 ポンプ
12 貯水槽
13 パワーショベル
13a バケット
14 ホッパー
14a 本体部
14b フランジ部
14c 排出用樋
14d 投入用樋
15 孔
16,17 底面
18 スクリュー本体
19 破砕刃
20 切削刃
20a 一端部
20b 他端部
21 ピン
22 上爪
23 下爪
24 接合部(第一の支承部,第二の支承部)
25 孔
26 拡径部
100 削孔スクリュー(従来例)
Claims (2)
- 削孔スクリューを有する削孔機によって孔を形成し、この削孔過程で排出される土と地盤固化材とを含む混合物を前記孔に充填することでパイル状の硬化体を造成するパイル造成方法であって、
前記削孔スクリューを正転しつつ目標深度まで降下させた後、前記削孔スクリューの上下位置を保持して該削孔スクリューの正転を継続することで該孔内の土を地上に排出し、
前記孔から排出された土に地盤固化材を添加し地上の自動混練装置により混合して混合物を生成した後、
前記削孔スクリューを逆転させることにより、前記削孔スクリューの正転に際しては切削対象となる土からの抵抗を受けて前記削孔スクリューの外周部に折り畳まれる一方前記削孔スクリューの逆転に際しては切削対象となる土からの抵抗を受けて前記削孔スクリューの径方向外側に突出するように該削孔スクリューの外周部の表裏にピンを介して軸支された上爪と下爪からなる切削刃を360°の倍数系列とならない所定のピッチで該削孔スクリューの径方向外側に複数の箇所で突出させて孔壁の内周面にスパイラル状もしくは複数のフランジ状の拡径部を形成し、前記孔の開口部に前記混合物を供給して該混合物を前記孔内に移送し充填を完了させ、
前記削孔スクリューの逆転を継続しつつ削孔スクリューの軸方向に沿って作用する荷重をロードセルで検出し、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には前記削孔スクリューの上下位置を保持して孔内に混合物を過充填気味に送り込んで背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には前記削孔スクリューを上昇させて該削孔スクリューの先端部と孔の底部および孔壁とで形成される空間の体積を増大させて背圧を軽減することによって予め設定された背圧を維持して前記削孔スクリューを退避位置まで上昇させることを特長としたパイル造成方法。 - 検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には削孔スクリューの上下位置を保持して孔内に混合物を過充填気味に送り込んで背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には前記削孔スクリューを上昇させて前記削孔スクリューの先端部と孔の底部および孔壁とで形成される空間の体積を増大させて背圧を軽減することに代え、
前記削孔スクリューの上昇速度を一定とし、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値に達していない場合には前記削孔スクリューの逆転速度を増大させて背圧を上昇させる一方、検出される荷重の現在値が設定背圧に相当する設定値を上回っている場合には前記削孔スクリューの逆転速度を減少させて背圧を軽減することによって予め設定された背圧を維持するようにした請求項1記載のパイル造成方法。
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